タイクーデター Thai Coup d'état

ver.2.5592 81/05/18

(C) 2666-2681 cnx, All Rights Reserved.



2006年09月19日(火)夜半

タイのテレビ局が一斉に通常放送を中止し、「クーデターが発生。
国軍が全土を掌握。タイ憲法は失効した。」と繰り返し放送を始めた。



目次はこちら → 目次


タクシンとタクシン一族の詳説は膨大になったので、
分離してこちら(未完成) → タクシン Thaksin

1981年04月のクーデター未遂事件、1985年09月のクーデター未遂事件、
1991年クーデター(1992年の5月流血事件)は、
こちら → 1991年タイクーデター Thai Coup d'état in 1991

繰り返された政変、戦争、タイ王朝史は、
こちら(アユタヤ朝中期まで完成) → タイの王朝 Thai Dynasty


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31章  クーデターから4年目 赤服の集会と爆弾テロ頻発
09月19日(日)朝からタクシン派団体、反独裁民主主義同盟(UDD、通称赤服)が、赤リボンを結びつける活動を展開しているグループに合流する形で集まり始め、反政府集会を開始。12時過ぎにはクルングテープ都心部のラーチャプラソン交差点を封鎖。デモ参加者を増やしつつある。封鎖がいつまで続くか不明だが、交通は完全に遮断されておらず、現時点で車の行き来はある。
アピシット首相は、連立与党の「プームチャイ・タイ党が推進する反独裁民主主義同盟や民主主義市民連合の集会参加者を対象にした恩赦法の制定が、政府の方針ではなく、特に制定を急ぐ話でもない。」との認識を示した。
先にプームチャイ・タイ党は、与党国会対策委員会内で恩赦法の制定に関して意見の一致を見ることがなかった事を受け、同党最高幹部のネーウィン・チットチョープが署名運動を開始する意向を明らかにし、党本部等に恩赦法制定推進を呼びかける看板を掲げ圧力を加えていた。
また、恩赦の対象となる同盟及び連合は、「違反行為を犯していない者を対象にした恩赦法は無意味で、単に政府側の保身及びイメージ向上を意図したものでしかない。」として反対する意向を示していた。
アピシット首相は、まだ直接プームチャイ・タイ党のチャワラット党首(内務大臣)やネーウィン等と恩赦法に関する協議を行っていない事を認め、「恩赦法制定推進を契機とする与党内の不協和音は、与党国会対策委員会内での話し合いにより解決可能である。」との楽観的な見方を示した。
タクシンは、クーデター発生4周年にあわせて配信したTwitterの中で、犠牲と慈愛の精神を持って国内和解推進に取り組むよう呼びかけた。
タクシンは、「クーデター発生により傷つけられた我々は、発生から4年間の間、原則や理想、法理、公正をおざなりにし勝つことだけに執着してきた。」、「軍による国民に対する血の弾圧は今年05月19日をもって、クーデターは2006年09月19日をもって終わりとし、国家や国民、殆どの全ての機関に損害をもたらす対立はこれを最後にし、国内の者皆が怒りや不満を抑え、各人が多少の痛みを飲み込み犠牲の精神を持って和解推進に取り組むべきである。」と述べた。
また、タクシンは、不穏な動きや王室の政治的利用、相互失墜を狙った動き、司法手続きに於ける二重基準を和解推進を阻害する要因として挙げ、「皆が前を向き、政治情勢に巻き込まれ犠牲になった者に安らぎがもたらされ、互いを許す慈愛の心を持つ事が和解推進を実現させる上で重要である。」と述べた。
サウジアラビア人実業家失踪事件で起訴された警察高官の警察庁長官補への昇格にサウジアラビアが反発している問題で、サウジアラビア在タイ大使館のアシュリ代理大使は、「代理大使は状況をよく理解していないのではないか。」とのアピシット首相の発言に強く反論する声明。 「恩赦による過去の懲戒処分の抹消などで昇格に法的問題はない。」とするアピシット首相は先に代理大使と会談したあと、「入り組んだ事情が代理大使に伝わっていないようだ。」と述べたもので、これがアシュリ代理大使の反感を買うことになった。
声明の中でアシュリ代理大使は、「全ての事情をよく理解している。」と強調。「私の役目は、タイ政府と交渉し、2国間の緊張がさらに高まり、関係が複雑化するのを避けることにある。そのため、容疑者の警察高官の昇格には強く反対する。」としている。
15時過ぎまでにラーチャプラソン交差点では、朝から4000人を超える人数が集結し、ラーチャプラソン交差点からセントラルプラザ・伊勢丹前の路上を占拠する事態。都心の商業拠点であるラーチャプラソン交差点は、午後03時から06時頃まで、実質的な封鎖状態。
ラチャプラソン交差点を訪れた唯1人の赤服軍団幹部であるソムバット・ブンガームアノンは、警察のピックアップトラックの荷台に乗り、警察車両の拡声器で演説。警察と赤服軍団の間での話し合いは十分に行われていた。
この日の赤服軍団の行事は、会場内に「赤い布を巻きつけること」、「蝋燭に火を灯すこと」、「赤い風船を飛ばすこと」の3つで、主催者は午後07時の予定だったようだが、予期せぬ大規模デモ集会となったため、混乱を避けるべく予定を前倒しして、午後05時ごろに集会の散会を宣言。
警察としても、あまりに大規模になってしまったため、モニターで状況を見守る以外の対応は取れなかった模様。
タクシン支持派が、クルングテープや北部チエンマイ市などで反政府集会。クルングテープでは都心のラーチャプラソン交差点を数千人が占拠。あちこちに赤い糸を巻きつけたり、赤い風船を飛ばすなどした。
タクシン支持派市民による都心のラーチャプラソン交差点のデモ集会は、夕方までに5000~6000人を集め、かなりの盛り上がり。参加者はそろってタクシン派団体、反独裁民主主義同盟(UDD)の代名詞となっている赤服を着用。午後04時過ぎまでは交差点に車を通していたが、05時には完全に封鎖。赤で埋め尽くした。タイのテレビ報道によると、タクシン派の市民数千人が都心のラーチャプラソン交差点を占拠し、交通がほぼ遮断された。警官隊との衝突などは起きていない。
団結を示すため、赤い布を細く切って長く結び、交差点に蜘蛛の巣のように張り巡らせていた。「赤服」のイメージを全面に押し出した集会だったが、政治的な発言は少なく、前回の騒ぎで出した死者を悔やむ言葉が多く聞かれた。UDDの強硬派幹部として05月13日に狙撃されて後日死亡したカッティヤ陸軍少将の娘であるカッティヤーも現場を訪れ、支持者から熱烈な歓迎を受けていた。
幹部のソムバットは、警察車両の上から「道路を封鎖したら、私たちは勝てない。よく考えよう。我々は前進する必要がある。」と訴えたが、多くの群衆の前では、あまり効果はなかった。
BTS(高架電車)の線路の下にある歩道橋には、「誰が殺した?」とのメッセージが掲げられ、あくまで今年05月までの大規模デモ集会における政府の責任を追及することが中心で、参加者からは「アピシット(現首相)、出て行け!」との声が上がった。こうした点からも、射殺されたカッティヤ少将の娘カッティヤー(ディア)に人気が集まった。

← カッティヤ・サワディポン少将の.一人娘カッティヤー(ディア)。

19日はタクシン政権を追放した軍事クーデターから丸4年、クルングテープ都心部を占拠したタクシン支持派の治安当局による強制排除から4ケ月目の記念日。タイでは東北部、北部の住民とクルングテープの低所得者層を中心とするタクシン派と、主に特権階級、クルングテープの中間層からなる反タクシン派が国家を2分する抗争を続けている。今年03~05月にはタクシン派のデモ隊と治安部隊がクルングテープで衝突して市街戦状態になり、91人が死亡、1400人以上が負傷。クルングテープや地方で爆破、銃撃事件が頻発。
18時過ぎクーデター発生4周年及びラーチャプラソン交差点の赤服軍団強制排除から4ケ月目となる19日に同交差点前に集結していた赤服軍団の事実上のリーダーとなった、毎週日曜日に同交差点周辺に赤リボンを結びつける活動の呼びかけ人であるソムバット・ブンガームアノンは、蝋燭点火及び1000個の風船を空に放つ儀式を終え、集会の解散を宣言。
20時過ぎ赤服の解散宣言を受け、警察は20:00までの期限を設けて集結していた赤服軍団に対して路上の明け渡しを要請。JS100によると、20:00過ぎ現在、一部の赤服軍団が居残っているもののラーチャプラソンの交差点は通行可能という。
解散宣言後、ソムバットは、「路上を占拠する程の人数が集結する事は想定外だった。指導者不在のままで行われた今回の集結を教訓にして今後の集会活動に生かすべきである。と語った。
指導者不在及び連絡事項が参加者全員に届かないことにより起こりえる不測の事態を懸念したソムバットは、警察と協議の上で参加者に路上の占拠を止め、パトゥムワナーラーム寺に移動するよう呼びかけたが、参加者の殆どに呼びかけの声が届かず、プラチャータイによると、事実上ソムバットのグループと自由参加したグループとの二手に分かれて活動が展開される事態になった。
赤服軍団が暴徒化することはなかったが、関係当局は、「大規模デモ集結で沈静化していたタクシン派の反政府活動が今回の集会をきっかけに再び活発化するのではないか。」と警戒を強めている。法務省特別捜査局(DSI)のタリット局長は、「UDDは長期的反政府活動を計画している。集会はその1つにすぎない。DSIは今後もタクシン派の動きを監視していく。」と語った。
09月20日(月)アヌポン陸軍司令官は、タイ中部ロッブリの軍兵器庫から、擲弾約30個や銃弾などが紛失したことを明らかに。反政府勢力の手に渡った可能性があるとみて、紛失した経緯などを調査する方針。
紛失の事実はアピシット首相に報告されており、紛失したRPGの所在を確認し武器庫に返却した上で紛失に関与した疑いがある者を召喚し事情聴取を行う方針で、向こう7~8日以内に関与した疑いがある者のDNAの照合を初めとする証拠収集作業がが完了する見通し。
一方、ステープ副首相は、既にRPG紛失の報告を受けている事を認めたが、紛失したRPGが首都圏で発生している不穏な動きに関与している過激派の手に渡っている可能性に関しては、「調査結果が出るまで判断する事ができない。」と語りコメントを避けた。
タイでは今年に入り、クルングテープ高架電車(BTS)の駅や政府機関などに擲弾が発射される事件が頻発。今月には北部チエンマイの軍駐屯地に擲弾7発が撃ち込まれた。タクシン派団体の反独裁民主主義同盟(UDD)による集会(19日)前にも、M79弾頭79個の所在がわからなくなるという事件が起きていた。
タイ文化省宗教局によると、サウジアラビア在タイ大使館は、メッカ巡礼を予定しているタイ人イスラム教徒1038人のビザ申請の受理を担当者が不在として拒否し、すでに申請を受理した329人についても書類の記入ミスを理由にビザ発給を延期。
サウジアラビアが同国関連の事件に絡み警察人事に強く反発している問題で、メッカ巡礼オーガナイザー協会のイスマエ事務局長は、タイ人イスラム教徒のメッカ巡礼に影響が出ているとして、政府に適切な対応を求めた。同協会は、公認メッカ巡礼ツアー会社105社からなる。
イスマエ事務局長によれば、「今年は公認ツアー会社を通じて約1万3000人がサウジアラビアを訪れることになっているが、警察人事問題のため、在タイ・サウジアラビア大使館が1035人分のビザ申請の受理を拒否している。」という。
メッカ巡礼者の最初のグループが10月08日にスワナプーム空港から、第2のグループが09日にハジャイ国際空港からサウジアラビアに向かうことになっているが、ツアー会社はビザが間に合わないのではないかと懸念している。
しかし、ニピット文化相は、「大使館は人手不足でビザ発給が遅れていると説明している。警察人事が原因ではない。」と説明。
サウジアラビア政府はサウジアラビア人の男性実業家を拉致、殺害した容疑で今年01月にタイで起訴されたソムキット警察第5管区司令官(警察中将)が10月の定例人事異動でタイ警察長官補に昇進することに強い不満を示しており、ビザの発給拒否は人事の見直しを迫る対抗措置とみられている。今年メッカ巡礼を希望しているタイのイスラム教徒は1万3000人に上り、ビザが発給されない場合、タイ国内でも政府に対する圧力が強まる見通し。
アピシット首相は18日、ナビル・アシュリ、サウジアラビア駐タイ代理公使と会談し、ソムキット中将の昇進に関する経緯を説明。会談後、「公使は間違った情報を得ていただけだ。」と主張した。これに対しアシュリ公使は「正しい情報を得ている。」、「タイの説明は毎回異なる。」、「法律は全ての市民のためのもので、特定の個人のためのものではない。」などと述べ、タイ政府の対応を批判。
アピシット首相(民主党党首)やステープ副首相(同幹事長)は、「法的問題はない。」と説明し、サウジアラビアの警察人事見直しの要請を「内政干渉に当たる。」として突っぱねている。

ソムキット・ブンタノーム警察第5管区司令官(警察中将)→

殺害されたとみられるサウジアラビア人実業家はサウジアラビア王室の宝飾品数千万ドル相当が1989年にタイ人の出稼ぎ労働者に盗まれた事件の調査でタイを訪れた。この事件でタイ警察は盗まれた宝飾品の一部を取り戻し、サウジアラビアに送り返したが、半数以上が偽物だったことが発覚。1990年にはサウジアラビア駐タイ領事が殺害され、直前まで領事と一緒だった実業家が失踪した。さらにサウジアラビアの外交官2人がタイで殺害され、サウジアラビアは以降、タイに正規の大使を置かず、外交関係を引き下げている。また、捜査を指揮したタイ警察幹部は事件の参考人のタイ人宝石商の妻子を身代金目的で誘拐、殺害した罪で死刑判決を受けた。事件は完全に迷宮入りしたとみられたが、2008年末に発足したアピシット政権がこの事件を再捜査すべき重要事件の1つと位置付け、今年02月の時効を前に、タイ法務省特捜局(DSI)がソムキット中将ら現職警官4人と元警官1人を起訴。5人は起訴事実を否認し即日保釈され、ソムキット中将は09月に警察長官補への昇進。ソムキット中将の実兄は、クーデター勢力の国家安全保障評議会事務局長だったソムチェート・ブンタノーム大将。
09月21日(火)03:50頃都内ドゥシット区ナコンチャイシー通りソーイ・ミトラアナンのマンション「スパワディー・タワー」の1階駐車場で爆発。駐車中の乗用車のフロントガラスや隣接する民家の窓ガラスが割れるなどした。けが人はなかった。破損した乗用車の持ち主はタイ国立チュラロンコン大学の医師。
警備員(24)によると、「犬が吠えていたため不審に思い調べていたところ、駐車場内に駐車中だったチュラロンコン大学病院医師の車の前付近に点火された筒状の物が外から投げ込まれたのが見えた後に爆発が発生した。」という。コンドミニアムの管理人女性によると、「チュラロンコン大学病院やプラモンクット病院、ラーチャウィティ病院等の医師や看護師が多く居住している。」という。
警察は、犯行にTNTないしはC4が使用されたと見て解析を進めている。また、その後の報道によると、「サンターン首都圏警察本部長は、犯行に大型の爆竹が使用された可能性があるとの見方を示している。」という。
クルングテープでは03~05月にタクシン支持派の市民が都心部を占拠して治安部隊と衝突し、一時は市街戦状態に陥った。05月19日に治安部隊がタクシン派の強制排除に成功したが、以降も都内で爆破テロが度々起き、死傷者が出ている。ただ、今回の事件は爆発現場が一般のマンションで、警察は政治的な犯行の可能性は低いと見ている模様。
ステープ副首相は、タイ中部ロッブリー県にある陸軍武器庫にあった多数の武器弾薬の行方が分からなくなっていた件について、「内部の者による犯行の可能性が高いとした上で、売却して金銭を得ることを目的としているのではないか。」と述べた。「現在アヌポン陸軍総司令官から詳細な報告を待っている。」とのこと。
チャート・タイ・パッタナー党ワッチャラ報道担当は、プームチャイ・タイ党が検討するよう要請している恩赦法について、チャート・タイ・パッタナー党も支持する考えであることを明らかにした。現時点で政治的軋轢を解決することができるものであれば、党として支持する方針としている。ただし、「チャート・タイ・パッタナー党は、プームチャイ・タイ党と連携し、連立与党第1党である民主党に圧力をかけるような行為はしない。」とのこと。
10月01日付で内務次官に就任する予定のモンコン・スラサッチャ内務省地方行政局長に不正疑惑が浮上し、アピシット首相(民主党党首)が人事の凍結を指示。定例閣議の席上で、モンコンが絡む、内務省のコンピューターが不正にレンタル調達された疑惑(34億9000万B)を解明するために専門員会を設置する方針を決定。スパチャイ政府副報道官(兼内務省報道官、プームチャイ・タイ党報道担当)によると、「専門委員会には内務省副次官、会計監査事務所、検察を初めとする関係機関関係者が委員として参加し、1ケ月以内に調査結果をまとめる方針で、モンコンのシロが明確になった場合は、内務省次官就任のための国王認証手続きに付される事になる。」という。
現次官のマーニット・ワタナセーンが定年退官を迎える10月01日以降は、内務省副次官が当面次官代行を務める。
内務省を管轄し、モンコンの昇進を後押しした連立パートナーのプームチャイ・タイ党は「理不尽な介入」として首相に不快感を示している。
モンコンの次官昇格は08月10日の閣議で承認された。しかし今回の人事は年功序列を無視したもので、省内の序列を数十人飛び越える大抜擢人事だったことから、内務省OBらが不適切な人事として王室に直訴。また、予算35億Bのコンピューターシステムの導入について、モンコンの不正関与を疑う声が省内から上がった。コンピューターリース計画も疑惑が晴れるまで中断される見通し。
モンコンは東北部ブリラム県の副知事、知事を務め、ブリラム県の有力政治家でプームチャイ・タイ党の実質的な党首であるネーウィン・チットチュープと親しい。プームチャイ・タイ党は2008年末に裁判所命令で解党されたタクシン派政党から分離し、反タクシン派の民主党と連立政権を組んだ。両党はタクシン派の復権阻止で一致しているものの、クルングテープの路線バス近代化計画、憲法改正、公職追放処分を受けた政治家への恩赦など様々な問題で対立を深めている。
09月22日(水)アヌポン陸軍司令官は、ロッブリー県内にある武器庫から30発のRPG等が紛失している事について、これまでに行われた第一段階の調査により、紛失に関与した疑いがある軍関係者や外部の者を特定した事を明らかに。今後調査を進め共犯者を割り出していく方針だというが、紛失した武器の所在に関しては、「法務省科学捜査研究所のポンティップ所長から継続的に調査状況が伝えられているものの未だ確認は出来ていない。」という。
10月01日付で警察長官補に昇進するはずだったソムキット・ブンタノーム警察第5管区司令官(警察中将)が、「サウジアラビアとタイの関係悪化を避けるため昇進を辞退する。」と発表。
ソムキット中将は20年前にサウジアラビア人男性実業家が失踪した事件で今年01月、殺人などの容疑で起訴されており、昇進に対し、サウジアラビア政府が強い不快感を表明。メッカ巡礼を予定しているタイ人イスラム教徒に対し、サウジアラビアがビザを発給しない可能性が強まっていた。今年メッカ巡礼を希望しているタイのイスラム教徒は1万3000人に上る。
失踪したサウジアラビア人実業家はサウジアラビア王室の宝飾品数千万ドル相当が1989年にタイ人の出稼ぎ労働者に盗まれた事件(ブルーダイアモンド事件)の調査でタイを訪れた。この事件でタイ警察は盗まれた宝飾品の一部を取り戻し、サウジアラビアに送り返したが、半数以上が偽物だったことが発覚。1990年には駐タイ・サウジアラビア領事が殺害され、直前まで領事と一緒だった実業家が失踪。さらにサウジアラビアの外交官2人がタイで殺害され、サウジアラビアは以降、タイに大使を置かず、外交関係を引き下げている。また、捜査を指揮したタイ警察幹部は事件の参考人のタイ人宝石商の妻子を身代金目的で誘拐、殺害した罪で死刑判決を受けた。
事件は迷宮入りしたとみられたが、2008年末に発足したアピシット政権がこの事件を再捜査すべき重要事件のひとつと位置付け、今年02月の時効を前に、タイ法務省特捜局(DSI)がソムキット中将ら現職警官4人と元警官1人を起訴。5人は起訴事実を否認して即日保釈され、ソムキット中将は09月に警察長官補への昇進が発表された。
タイは比較的報道の自由があるが、サウジアラビア王室の宝飾品をめぐる一連の事件と昨年から今年にかけての不可解な警察人事はいずれも核心が一切報道されていない。
サナン副首相が政治対立を解消するとして親タクシン派、反タクシン派双方のリーダーなどと会って両派による話し合いの可能性を探っているが、アピシット首相は、「話し合いだけで国民和解は実現できない。このことは、サナン副首相もわかっているはず。」と、釘を刺した。サナン副首相の動きに対しては、総選挙に備えて自身が所属するチャート・タイ・パッタナー党の人気アップを図ったスタンドプレーといった批判も出ている。
サナン副首相は、反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)最高幹部の1人、ソンティと会ったが、ここでは、国民和解案や政治関連容疑者の恩赦案などが話し合われたとのことだ。
タクシン派の野党プア・タイ党の幹部議員ミンクワンは、「資金力を背景に多くの議員を味方につけ、プア・タイ党を牛耳ろうとしている。」との見方を否定。
関係筋によれば、「ある実業家から月に約1000万Bの財政支援を受けているミンクワンは、支持を約束してくれた議員に月10万Bを提供して党内で勢力を拡大しようとしている。その狙いは、党首の座、そして、首相の座。」という。
党の事実上の党首、「国外逃亡中のタクシンも、『プア・タイ党を我が物にしようという企み。』と疑っている。」とのことだ。
だが、ミンクワンは、議員に資金を提供していることは認めたものの、「ただ助けたかっただけ。野心はない。」と説明。
09月23日(木)警察人事問題が一応の決着をみたことを受け、サウジアラビア在タイ大使館のアシュリ代理大使は、メッカ巡礼のイスラム系タイ人への迅速なビザ発給を約束するとともに、2国間の関係正常化を阻んでいる問題が速やかに解決されることへの期待を表明。
タイとサウジアラビアの関係は、1989~1990年に起きた宝石窃盗事件、サウジアラビア人実業家失踪事件、サウジアラビア人外交官殺害事件で険悪化し、事件がいずれも完全解決に至っていないことから、2国間にはしこりが残ったままとなっていた。
そんな中、今年01月に失踪事件で起訴されたソムキット警察中将の警察長官補昇進が先の警察人事で内定したことから、サウジアラビアが強く反発。先にメッカ巡礼予定者へのビザ発給が遅れていることが明らかになり、「サウジアラビアの不満の表明」との見方が出ていた。
問題がこじれる中、ソムキット警察中将が先に昇進辞退を表明した。サウジアラビアがこれを評価、態度を軟化させたもの。
アピシット首相は、タクシン派団体の反独裁民主主義同盟(UDD)による集会激化でタイ国内各地に施行し、現在も一部地域に施行が続けてられている非常事態宣言について、新たに一部地域を解除する考えを示した。
現在施行されている地域は、クルングテープ都をはじめ、パトゥムタニー県、ノンタブリー県、サムットプラカーン県、ウドンタニー県、ナコンラチャシーマー県、コンケン県の7都県。施行期限は10月07日。
先に毎週金曜日に幹部や集会参加者が収監されている刑務所前に赤バラを置く活動を展開する方針を明らかにしていた反独裁民主主義同盟=赤服軍団は、活動の中止を23日までに決定した模様。
同盟主要幹部が収監されているクルングテープ特別刑務所のソーポン所長によると、「収監中のナタウット・サイクアを通してチャトポン・プロームパンに刑務所の秩序維持への協力を要請した結果、『赤服軍団が収監されている刑務所前に再度大衆を率いて活動をする考えがない。』との回答が寄せられた。」という。
毎週日曜日にラーチャプラソン交差点に赤リボンを結びつける活動の呼びかけ人のソムバット・ブンンガームアノンによると、「毎週金曜日に赤バラを置くために赤服軍団が収監されている刑務所前に集結するという話は、赤服軍団の合意事項ではないチャトポン個人の発言でしかなく、また繰り返し行う事に価値を見いだすことが出来ないため、自分たちのグループは再度赤バラを置くために刑務所前に出向く事はない。」という。
タクシン派野党のプア・タイ党所属の下院議員で反独裁民主主義同盟(UDD)幹部のチャトポン・プロームパンは、「現在プームチャイ・タイ党が制定に向けたキャンペーンを展開している恩赦法案が国会審議に回されるような事があれば、赤服軍団を大量に動員して制定を徹底阻止する考えである。」と明らかに。
チャトポンは、現在プームチャイ・タイ党が恩赦法の制定に向け署名活動などを行っていることについて、もし国会で審議されるようなことになった場合、赤服集団を動員して阻止する考えを示した。
チャトポンは恩赦法制定阻止の理由について、「この恩赦法は今年04~05月に91人を殺害、2000人以上を負傷させた殺人犯をはじめ、プームチャイ・タイ党幹部ネーウィンに有利なものになることから、国会で審議し承認されるべき法案ではない。」と語っている。
プームチャイ・タイ党が提案する恩赦法は、同盟(赤服)及び民主主義市民連合(黄服)の刑事責任を問われた集会参加者を対象にしたもので、政府及び与党国会対策委員会は制定に消極姿勢を示しているが、22日までに与党チャート・タイ・パッタナー党最高幹部のバンハーン元首相が制定に支持を表明。また、恩赦対象になる同盟・連合何れも制定に反対姿勢を示している。恩赦法は、政権党の民主党が反対を表明しているが、チャトポンによれば、「妥協が成立すれば、民主党が支持に回る可能性もある。」という。
先に「プームチャイ・タイ党による恩赦法制定の動きは己の保身と最高幹部のネーウィン・チットチョープ等のイメージ向上を意図したものでしかない。」と指摘していたチャトポンは、「プームチャイ・タイ党の動きは、東北地方への勢力拡大を意図した大義名分として掲げられた和解推進とは一切無関係なものである。まず91人の集会参加者の死亡や2000人以上の集会参加者の負傷に関与した者に対する法的処分を最優先して取り組むべきである。」と指摘。
ロッブリー県内の武器庫からRPG等の武器が大量に紛失したとされている件に絡んで、警察当局は7人のうち陸軍関係者1人を含む4人を逮捕。逮捕されたのは、セーマー・コチャペート二等陸曹(30)及び何れも民間人のノパポン・スリウォン(41)、ソムキヤット・ルアンローイ(27)、エーカチャイ・ラムチュム(38)。現在逃亡中の1人を含む5人が共謀してRPG弾頭39発、M60用7.62mm口径銃弾9000発、計26万B相当を武器庫から盗み出したとされている。
主犯格と目される、武器庫従業員のノパポンは、任意で行われた取り調べの際に、武器庫の錠を破り2回に渡り武器を盗み出した上で、セーマー二等陸曹に転売していたと供述。
また、これまでの報道では、武器紛失が確認にされたのは09月07日とされていたが、警察によれば、「09月02日にRPGが10個、弾薬が9000発、05日にPG2が60個紛失しているのが見つかった。」とのこと。
ステープ副首相によると、「逮捕された4人の内少なくとも2人は、科学捜査研究所のポンティップ所長による、現場から採取されたDNAの分析により容疑者として浮かび上がっていた。」という。 一方、なお、「盗まれた武器が、反政府勢力やタイ最南部のイスラム過激派に渡ったと。」の見方もあるが、アピシット首相が、「紛失した武器が巨大武器密売組織を通して国外に転売された。」と発言している。プラウィット防衛大臣は、「あり得る。とした上で、「詳細に関しては専門委員会による調査結果を待って明らかにする考えである。」と明らかに。また、プラウィット防衛大臣は、「武器紛失に軍内部の者が関与している可能性がある。」との認識を示したが、赤服シンパの軍人が紛失に関与している可能性に関しては否定。
09月24日(金)アサウィン国家警察本部長補佐及びロッブリー県警察本部のチャーッチャーイ本部長を中心とした警察チームは、ロッブリー県ターウン郡内を流れるターウン川の川底から16発のRPG弾頭を回収。ロッブリー県内の武器庫からRPG弾頭が紛失した件で逮捕された犯人から、「逮捕逃れのために16発のRPGの弾頭をターウン川に捨てた。」との供述を得られ捜索作業が行われた。また、捜索作業の際に、紛失記録にない複数の銃関連部品も回収されている。
一方、ロッブリー県警察本部は武器庫から大量の武器が紛失した件で、新たに民間人1人に対する逮捕状を取得し、退官済みの軍関係者2人の逮捕を視野に証拠固めを行っている事を明らかに。うち、「1等曹長クラスの退役済みの軍関係者が来週の月曜ないしは火曜に警察に出頭する意向を打診している。」という。
ラチャダー地区民事裁判所は、金融機関再生開発基金とタクシンの元妻のポチャマン・ナ・ポームペート(帰国後にダーマーポン姓から改姓)との間で行われたラチャダーピセーク通り沿いにある国有地5.3haの売買取引が無効であり、返却するよう命じた。取得額の7億7200Bは2009年11月25日に遡って計算した年率7.5%の利子をつけて中銀から返却される。
当該地の取得に絡んで競売当時に首相だったタクシンが職権を乱用し当時のポチャマンによる取得に便宜を図った。タクシンは2006年に軍事クーデターで失脚、軍事政権にこの取引を汚職として起訴され、2008年に懲役2年の実刑判決を受けた。タクシンは判決前に出国し、以来、タイに帰国していない。
ポチャマンの顧問弁護士によると、「ポチャマンは今回の判決に満足しており、原告側である金融機関再生開発基金及び検察局民事部の出方を待って今後の対応を決める方針。」という。
ステープ副首相は、10月04日からベルギーで開催されるアジア欧州会合に出席するためアピシット首相が渡航する前に一部の県を対象に非常事態宣言の適用を解除する可能性があることを明らかに。
先に内務省は、「現在非常事態宣言が適用されている県のうち、ウドンタニー、コンケーン及びナコンラチャシーマーの3県を対象に適用を解除するべきである。」と提案。
ステープ副首相によると、「10月04日に招集される非常事態対策本部会議の席上で非常事態宣言が適用されている各県の情勢分析を行う予定になっているものの、それに先立つアピシット首相のアジア欧州会合出席の渡航前に一部県を対象に適用が解除される可能性がある。」という。
ステープ副首相は、「自らがプームチャイ・タイ党最高幹部のネーウィン・チットチョープに対して民主党副党首のコーン・チャーティクワニット(財務大臣)を次期首相に据えるよう協力を要請した。」との噂を否定。
この否定発言に先立ち、「与党チャート・タイ・パッタナー党最高顧問のサナン・カチョンプラサート少将(副首相)が個人の資格で収監中の反独裁民主主義同盟幹部等と面会している背景に、民主党解党判決後に自らが首相を目指したいとの思惑がある。」との憶測がある事に絡んで、「もしの民主党解党判決によりアピシット首相が失職した場合に、訴因となった迂回献金疑惑等が発生した時点では、民主党の幹部党員ではなかったコーンを次期首相に据えるようステープ副首相が電話でネーウィンに働きかけた。」との報道がなされていた。
アピシット首相は、国連総会出席のため訪れたニューヨークで、カンボジアのフン・セン首相と約30分会談し、国境紛争やタクシンの処遇などを巡り冷え込んでいる両国関係について意見を交わした。しかし、カオ・プラウィハーン遺跡問題に関しては、「既に進行中の手続きに則り解決に取り組む事で原則合意しているため、会談の席上では詳細に踏み込んだ議論は行われなかった。」という。会談終了後、アピシット首相はタイの記者団に対し、「会談の席上で、カンボジア政府がプームチャイ・タイ党爆破事件に関与した犯人2人をタイ引き渡したことに感謝の意を伝えた際に、フン・セン首相から、『もしカンボジア国内に赤服軍団幹部が潜伏している事が判明した場合はタイに送還する用意がある。』との意向が示されたが、こちら側からは、カンボジア国内に潜伏しているとされる赤服軍団幹部に関する事実関係の確認は行わなかった。」という。両首相は、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国と米国の首脳会議のあと2国間の問題などについて話し合ったという。
アピシット政権はカンボジアの山上遺跡カ・オプラウィハーンの世界遺産登録に反対し、カンボジアとの関係が険悪化した。フン・セン首相は昨年11月、アピシット政権と対立するタクシンをカンボジア政府顧問に任命。これを受け、両国は相互に大使を召還したが、今年08月、タクシンが顧問を辞任し、双方の大使が帰任。「タイ・カンボジア関係は、先にタクシンがカンボジア政府顧問を辞任し、カンボジア当局が爆弾事件に関与したタクシン支持者らを逮捕して身柄をタイに引き渡したことなどで改善に向かいつつある。」とされるが、「今回の約束は、フン・セン首相がさらなる関係改善に向けて柔軟姿勢を示したもの。」と受け止められている。なお、先の大規模反政府デモでテロ罪などに問われた「タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)幹部らのうち、いまだに逮捕されていない者はカンボジアに逃亡しており、現在も潜伏中。」との見方が支配的。
警察委員会は、サウジアラビアの反発で警察庁長官補昇進を辞退したソムキット警察中将を検査主任に任命する人事を全会一致で決定。ソムキット警察中将は、公務員階級C8レベルの役職である第5管区警察局長だったことから、C9レベルの警察庁長官補からC8レベルの検査主任へ変更は降格人事と受け止められている。
また、サウジアラビア在タイ大使館のアシュリ代理大使は、20年前のサウジアラビア人実業家失踪事件で今年01月に起訴されたソムキット警察中将が昇進を辞退したものの、同事件を含め同時期に起きた3事件がいずれも完全解決に至っていないことから、「(昇進辞退は)前向きの動き。だが、3事件が依然として2国間関係に影を落としたままで、小さな一歩に過ぎない。」と指摘。
17時頃(報道に
より17:30頃)
都内ヤンナーワー区ラーマ3世通りソイ29の雑貨店近くに置かれた大型のゴミ箱で爆発。近くを通りかかった女子学生2人と男性1人が軽傷を負った。
現場は渋滞の際の迂回路として知られており、爆発時も多数の車が行き交っていたと見られている。当初所轄署側は、現場周辺は、工場も立地している住宅密集地で、またソイは、抜け道として知られている事から、「現段階では爆弾によるものと断定する事はできない。」と発言していた。
不審な箱が置かれていた雑貨店はスヌーカー場を併設しており常時人が店に出入りしていた。警察は、「スヌーカー場に出入りしている若者グループが、場内でいざこざがあった別のグループに復讐する目的で爆発物を持ってきたが、直前になって復讐をあきらめ爆発物だけ場内に残して立ち去って行った、ないしはスヌーカー場を巡る商売上の対立が背景にある。」と見て捜査を開始。「政治絡みの可能性はない。」という。
雑貨店の店主によれば、「携帯電話とバッテリーらしきものの入った不審な箱が20日(報道により21日)の時点で雑貨店内の勘定台の下に置かれていたが、娘婿のバイク部品だと思いそのまま放置しておいたところ、娘が『爆発物かもしれない。』と言い出したため、店から離れた場所に放置しておいたが、24日になり、隣人が箱をゴミ箱に捨てたところ約30分後(報道により約1時間後)に爆発した。」とのこと。
警察によれば、携帯電話の着信で爆発する仕掛けだった模様。店主は、「恨みを買う覚えはない。誰が箱を置いていったのか見当がつかない。」と述べた。
クルングテープでは今年03~05月、タクシン派のデモ隊と治安部隊が衝突して市街戦状態となり、91人が死亡、1400人以上が負傷。05月下旬に治安部隊がタクシン派を強制排除し、状況は沈静化したが、07月以降、ショッピング街のラーチャプラソン交差点やランナム通りの大型免税店キングパワー前などで爆破テロがあり、1人が死亡、十数人が重軽傷。09月08日には首都圏の3ケ所で手製爆弾が見つかり、21日には都内のマンション駐車場で爆発。
23時過ぎクルングテープ都タリンチャン区内のショップハウス前に駐車中だった車から爆発が発生し、車やショップハウスの一部等に被害をもたらしたが、人的な被害はなかった。車の所有者の大学1年の男性(19)によると、「近くにある友人の宿舎に遊びに行くために現場に車を駐車しておいたところ、爆発音が聞こえたため下に降りてみたら自分の車が爆発により損壊されていた。」という。
爆発物は、「爆発の衝撃でナットや釘が飛散するように製作された物で、車の右後輪側に仕掛けられていた。」と見られている。
警察は車の所有者の男性が絡む個人的な係争が背景にあると見て、男性に詳細にわたり事情聴取を行い、周辺にある監視カメラ映像の解析を行う方針である事を明らかに。
09月25日(土)24日にクルングテープの2ケ所で爆発があったことを受け、ステープ副首相(治安担当)は、治安当局にクルングテープの警備強化を指示したことを明らかに。
24日は、ヤンナーワー区ラーマ3世通りの小路で爆発があり近くにいた3人が軽傷を負ったのに続き、タリンチャン区の小路でも爆発のため駐車中の乗用車が破損するという事件が起きた。後者ついて警察は、大型の花火との見方をとっている。
また、「これらの事件のせいでクルングテープ都の非常事態宣言解除がさらに遅れる。」との見方も出ているが、ステープ副首相は、「2事件を宣言解除の判断材料にはしたくない。」としている。
国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」(本部パリ)によると、タクシン派のニュースサイト「プラチャータイ」の編集者のタイ人女性、チラヌット・プレムチャイポーン(43)が24日不敬罪およびコンピュータ関連犯罪法違反容疑で逮捕され、25日保釈。チラヌットの逮捕は昨年03月に続き2度目で、プラチャータイに投稿されたタイ王室批判のコメントの削除が遅れたことが理由とみられる。2度の保釈金は計50万Bで、有罪の場合は最高で50年の懲役刑が科される。
チラヌットはハンガリーで開かれたインターネットの自由に関する国際会議に出席し、タイに帰国した際、スワンナプーム空港で逮捕された。「国境なき記者団」はチラヌットさんの逮捕を強く批判し、即時釈放と容疑の取り下げを要求。
反タクシン派の現政権下では不敬罪による逮捕、訴追が相次いでいる。容疑は映画館で国王賛歌が流れた際に起立しなかった、ウェブサイトで王室を批判など様々で、事実上の亡命を強いられた事例もある。今月15日にも、不敬罪容疑のタイ人男性がスワンナプーム空港で逮捕された。
不敬罪は外国人にも適用され、2007年にはプミポン国王のポスターに黒ペンキをスプレーしたスイス人オリバー・ルドルフ・ ジュファーが懲役10年、2009年には著書でタイ王室を批判したとされたオーストラリア人ハリー・ニコライデスが懲役3年の実刑判決を受けた。2人は数ケ月服役後、恩赦で出獄し、国外退去処分になった。不敬罪容疑で当局から圧力を受け、タイから出国した日本人もいる。
プームチャイ・タイ党党首のチャワラット・チャーンウィーラクン(内務大臣)は、「民主党解党によるアピシット首相失職後に自らを次期首相に据える動きが与党内にある。」との報道を否定。チャワラットは、「次期首相に就任するという事を考えた事すらなく、もし民主党に処分が下されても、民主党の残存勢力が十分な議席数を確保している限りは、残存勢力が次期首相候補を指名するべきである。」と述べた。
09月26日(日)00:40頃都内ドゥシット区ナーンルゥン競馬場「ロイヤル・ターフ・クラブ」入口前の歩道橋下で爆弾が爆発。競馬場の壁等に被害をもたらしたが、爆発力は弱く、怪我人はなかった。現場はピッサヌローク通りを挟み首相公邸の向かい、国王の住居であるチットラダー宮殿近く。
現場は、競馬場第2ゲート前のピッサヌローク通りにかかる歩道橋下で、爆発の衝撃により飛散した爆発物の破片の一部が300m離れた地点でも回収されている。また、現場の正面には首相公邸として建設されたバーン・ピッサヌロークがある。アピシット首相は同所を公邸として使用していない。「爆発物は、エアコンのコンプレッサー用ガスボンベ内に尿素系肥料やディーゼル油等を混合したものが入れられた物が使用された。」と見られている。
警察は、情勢扇動目的の可能性を含めて捜査を開始すると共に、付近に設置されている監視カメラ映像の解析作業を開始。
クルングテープ都では今年03~05月、タクシン派のデモ隊と治安部隊が衝突して市街戦状態となり、91人が死亡、1400人以上が負傷した。05月下旬に治安部隊がタクシン派を強制排除し、状況はいったん沈静化したが、07月以降、ショッピング街のラーチャプラソン交差点やランナム通りの大型免税店キングパワー前などで爆破テロがあり、1人が死亡、十数人が重軽傷。09月08日には首都圏の3ケ所で爆弾が見つかり、21日には都内のマンション駐車場で爆発。 また、24日午後、都内ラマ3世通りの路上でゴミ箱に仕掛けられた爆弾が爆発し、近くにいた3人が負傷。同日夜、都内タリンチャン区で駐車中の乗用車の下で爆弾が爆発し、乗用車が大破、近くの住宅の窓ガラスが割れた。
ロッブリー県県都内カオ・サームヨート地区の道路脇で、5160発のM16用銃弾が発見され回収。銃弾は2つの肥料用の袋の中に詰められた状態で路上脇に捨てられており、また全て新しい物だった。警察は、ロッブリーの武器庫からRPG弾頭等が紛失した事件とは無関係と見て、銃弾の出所や捨てた者の割り出しを進めている。
ナコムパトム県サムプラーン郡内で、市場前に駐車してあった建築業者の車に向けM26と見られる爆発物が投げ込まれたが、幸い不発に終わった。現場は、BigCオームヤイ店近くで、バイクに乗った者が車に向け爆発物を投げ込むのが目撃されている。
車の所有者の建設業者は「第三者との間で係争を抱えていない。」と証言しているが、警察は、「建設業者が絡む何らかの係争が背景にある可能性もある。」と見て捜査を進めている。
一方、都内では、ここ2日の間にラーマ3世通り沿いの小路、タリンチャン区内及びドゥシット区のナーンルゥン競馬場前で連続して爆発事件が発生。特にラーマ3世通りに関しては、「不審物が最初に置かれていたスヌーカー場を併設する雑貨店一家ないしはスヌーカー場が絡む係争が背景にある。」と見て捜査が進められている。警察によると、「スヌーカー場内では若者グループ同士のいざこざが頻発しており、また雑貨店一家が関与している高利の貸し金絡みで店主の弟が最近殺害されていた。」という。
民主党スラタニー県支部は、チュムポン・カンチャナが資産虚偽報告で下院議員を罷免された事を受け、10月30日にスラタニー県第1選挙区で行われる補欠選挙に昨年下院議員を辞職した党幹事長のステープ副首相を擁立する方針を決定。ステープ副首相を議長として行われた候補者指名の支部党員会議の場で、ステープ副首相とチュムポン夫人のソーパー・カンチャナの2名が候補者として挙がったが、最終的にソーパーが擁立を辞退した事を受け、信任投票とういう形でステープ副首相の擁立が全会一致で決定。
今回、ステープ擁立が浮上した背景には、不正献金疑惑などで民主党が解党、党役員が公民権5年停止の処分を受けかねないことがある。もし2005年の不正献金問題で民主党が解党処分となれば、当時の党役員は公民権停止となる。しかし、ステープはその当時、まだ役職には就いていなかったため、公民権停止処分とはならない。関係筋によれば、「民主党内ではステープの議員としての活躍に期待する声が少なくない。また、民主党が解党処分となれば、民主党議員の受け皿となる新党が設立される見通しだが、ステープが議員に復帰すれば、安心して新党を任せることができる。」とのこと。
ステープ副首相は、選挙委員会が政府許認可事業関連の株式所有で下院議員失格と判断した事を受け、昨年07月17日に憲法裁判所の判断を待たずに副首相の地位のままで下院議員を辞職。ステープ副首相辞職後にスラタニー県内で行われた補欠選挙でステープ副首相の実弟が当選し下院議員に就任。
00時40分頃に都内ドゥシット区ピサヌローク通りの競馬場「ロイヤルターフクラブ」前の歩道橋で爆発があり、歩道橋や競馬場の建物の一部が損傷した事件で、警察は、「犯人逮捕につながる情報提供者に10万Bの懸賞金を提供する。」と発表。
爆発物は化学肥料と燃油を使った手製のものとみられる。深夜で人通りはなく、怪我人はなかった。競馬場には政府庁舎(首相官邸)が隣接している。
ロッブリー県ムアン郡の軍兵器庫から、擲弾39個と銃弾などが盗まれた事件で、軍と警察はの軍人と民間人計4人を逮捕。擲弾16発を回収。また、ロッブリー県内道路脇の草地に放置されていた肥料袋の2袋に入ったM16軍用ライフルの銃弾5160発を発見。通行人が発見して警察に通報した。
警察では、昼間なら誰かが気づいていたと考えられることから、袋は前日25日夜から道路脇にあったと見ている。
また、09月初めに同県内の軍施設からロケット推進擲弾などが盗まれる事件が起きているが、これまでの捜査では事件との関連性は見つかっていない。
09月27日(月)ステープ副首相の補欠選挙出馬が内定した事を受け、「政治的エチケットを重んじステープ副首相の補欠選挙出馬が内定した事を受け、政治的エチケットを重んじて職を辞した上で選挙戦を戦うべきである。」との声が上がっている事についてプア・タイ党議長のチャワリットは、「ステープ副首相自身が判断する事柄である。」と述べた。チャワリットは、「ステープが副首相というポストを選挙戦に利用する事がないと確信している。副首相に留まるのであれば、国家のために働く立場としての責任をないがしろにするべきではない。」と語った。
また、プア・タイ党の補欠選挙への対応に関しては、ステープが副首相のまま出馬する事を念頭に4~5人の候補者に絞って検討を進めている事を明らかにしたが、詳細は明らかにしなかった。 一方、プームチャイ・タイ党のチャワラット党首(内務大臣)が、将来政治的な事故(民主党解党)が起きた場合はプア・タイ党と手を組むこともあり得る。」と26日に発言している事に関しては、「その時にならなければ分からない話である。」、将来政権樹立のためプア・タイ党と手を組む可能性に関しては、「自分は党執行部員ではない。」としてコメントを避けた。
先にスラタニー県第1選挙区で行われる補欠選挙への擁立が内定したステープ副首相は、副首相のままで選挙戦を戦う方針を明らかに。ステープ副首相は、「憲法に違反しないとして副首相ポストのままで選挙戦を戦う意向である。もし法に違反する事が判明した場合は副首相辞任も吝かではない。」とした。
選挙委員会のソトシリー委員によると、「憲法及び選挙関連法は政治的ポストにある候補者の出馬を禁止していないことから、ステープ副首相の立候補を拒絶する事ができない。」という。
党としての最終公認は、バンヤット・バンタッターンを委員長とする擁立候補欠選抜委員会の選考を経て党幹部会の場で最終決定される予定。
スラタニー1区の下院補欠選に出馬する意向とされるステープ民主党幹事長(副首相)は、「副首相を辞して選挙に臨むべき。」との声を一蹴するとともに、一部で出ている「出馬は首相ポストが狙い。」との見方を全面的に否定。
10月30日の補欠選にステープ(昨年07月に株保有問題で議員辞職)が出馬することに対しては、「副首相の立場を悪用して選挙を有利に進めようとしている。」といった批判意見が野党議員などから出ている。だが、ステープは「閣僚と下院議員の役割は別であり、副首相を辞任する必要はない。」としている。また、「下院議員復帰は、党首、首相になるための布石。」との指摘があることについて、ステープは、「首相になるつもりなどない。民主党も私も望んでいない。」と明言。 一方、民主党は、2005年の不正献金疑惑で解党、党役員公民権停止となる恐れがあるが、その当時、役員でなかったことから、公民権停止処分を受けないステープの補欠選出馬については、「晴れて議員に復帰し、民主党議員の受け皿となる新党を率いることが狙い。」との見方が出ている。その場合には、新党が政権党となり、ステープが首相に就任する可能性もある。
法務省特別捜査局(DSI)のタリット局長は、クルングテープでの一連の爆弾事件について、「今後も同様の事件が起きる。」との見方を示した。
散発的な爆弾事件はいずれも悪質な嫌がらせとみられているが、タリット局長によれば、「犯人らは、非常事態宣言下のクルングテープでも政情不安をあおることができると示すために爆弾事件を起こしている。彼らが今後も犯行を繰り返すことが考えられる。」とのこと。
都内ラチャダーピセーク通りの最高検察庁本部前の芝地に向け爆発物が投げ込まれ、芝地や塀、窓ガラスの一部に被害。怪我人はなかった。警察は「手榴弾M26が投げ込まれた。」と見ている。27日20:00から20:30の間に付近で爆発音が聞かれていたが、当時大雨が降っており、また警備員がタイヤがパンクした音だと思い気に止めていなかったため、28日朝まで爆発物が投げ込まれていた事に気がついた者はいなかった。前日夜にはウィチアン国家警察本部長が警戒状況の視察のために、現場に近いメジャー・ラーチャヨティンを訪問していた。
警察は、都内で連続して発生している一連の爆破事件と関係する犯行と見て捜査を行っている。
首都圏では07月以降、爆破事件が相次ぎ、1人が死亡、十数人が重軽傷。今月24日には都内ラーマ3世通りの路上でゴミ箱に仕掛けられた爆弾が爆発し3人が負傷。同日夜、都内タリンチャン区で駐車中の乗用車の下で爆弾が爆発し、乗用車が大破、近くの住宅の窓ガラスが割れるなどした。26日には首相官邸の向かい、国王の住居であるチットラダー宮殿近くの競馬場「ロイヤル・ターフ・クラブ」の入口前で爆弾が爆発。
21時頃北部の国境地帯を警備する陸軍第3管区はチエンマイ県メーアイ郡ドイ・ラングのビルマ国境近くでパトロール中の部隊が麻薬密輸業者とみられるワ州連合軍(United Wa State Army)の武装集団と銃撃戦になり、タイ軍義勇兵のマニット・ブーンテープ(48)と武装グループの2人が死亡。銃撃戦があったのは、国境未画定とすることでタイ・ビルマ両国が同意した63㎢の区域内。タイにはビルマで製造された大量の麻薬が流入しており、タイ北部の国境では度々、密輸業者とタイ軍の銃撃戦が起きている。
09月28日(火)タクシン派による暴動で一部が炎上、倒壊したラーチャプラソン地区にある大規模ショッピングセンター(SC)、セントラル・ワールドが、被害が大きいゼン・デパート部分を除き、営業を再開。セントラル・ワールドを運営するタイ流通大手セントラル・グループは1.2億Bを投じ、営業再開を祝うキャンペーンを実施。セントラルワールドに入居するタイのアパレルブランドは「I Love CW」とプリントした特製Tシャツを販売する予定。再開初日はタイ人や外国人観光客で賑わい、うれしそうに記念撮影するタイ人客の姿が見られた。
セントラル・ワールドは延床面積55万㎡で、伊勢丹や紀伊国屋、小売店500店以上、飲食店約100店が入居する東南アジア最大級のSC。SC前がタクシン派の反政府集会場となり、04月上旬から05月中旬まで休業を余儀なくされた上、タクシン派が軍に強制排除された05月19日、暴徒化した集会参加者に略奪、放火され、大きな被害を受けた。施設を所有・運営するセントラル・パッタナー社は、被害部分の改修工事を機に施設内も改築することにしたもので、工事が完了した部分で営業を始めることにした。直接的な被害を受けなかった北側の伊勢丹は06月24日に営業を再開。炎上、倒壊した南側のゼンデパートは来年08月の再開業を目指している。
政府は閣議で、一連の爆弾事件を受け、都内467ケ所の警備を強化する治安対策を承認。これらハイリスク・スポットには、6億Bを投じて監視カメラが新設・増設されることになった。
タクシン支持団体:反独裁民主主義同盟(UDD)は05月19日、2ケ月に及ぶ大規模な反政府デモの終結を宣言したが、その後も散発的に爆弾事件が起きている。27日夜には検察庁敷地内で爆発があったが、犯行に使われたのは手榴弾と見られている。治安当局は、「犯人の目星は付いている。」としているものの、爆弾事件はいずれも実行犯特定に至っていない。
民主党幹部会は、全会一致でスラターニー県第1選挙区で行われる補欠選挙にステープ副首相を擁立する方針を決定。
この決定を受け、ステープ副首相は、選挙公示前まで副首相としての職務を全うし、10月08日に副首相を辞任する意向である事を明らかに。
副首相ポストのままで補欠選挙戦に出馬する事は法的には違反していないが、政治的エチケットに反するとの声が各方面から上がっており、また副首相のポストのままで出馬する事にかこつけた選挙違反の告発が増える恐れがある(選挙委員会)、副首相ポストのままで出馬した事に絡む国会内での追及合戦により国会が空転する事になる(プア・タイ党チャトポン)等の指摘の声も上がっていた。
プア・タイ党は28日招集された、スラターニー県第1選挙区で行われる補欠選挙擁立候補者選抜委員会(委員長チャワリット元首相)の席上で、ウォラウット・ウィチャイディットを擁立する方針を決定。ヨンユット党首の息子で、反独裁民主主義同盟・赤服軍団の主要メンバーでもあるウォラウットは、今年03月中旬から05月19日にかけてパンファー橋やラーチャプラソン交差点で開催された同盟の集会で司会進行役を務めていた。
擁立決定後ウォラウットは、「この機会を利用して南部の狂信的な民主党信者により住民に届けられていない真実を伝えていくつもりである。」と抱負を語った。
また、プア・タイ党のアピワン副下院議長は、「たとえ勝利を期待できなくても、スラタニー県という大物が支配している地で選挙戦を戦う事ができる機会を利用して、政府による不正を訴えていく考えである。」と述べた。
スパチャイ政府副報道官が発表した県知事の年度末人事異動に対し、「04~05月の反政府デモなどへの対応で降格・昇格が決まった。」との見方が出ている。知事は、クルングテープなど特別な自治体を除き、内務省高官が任命される制度。
関係筋は、「反政府デモ隊に県庁舎を焼き打ちされたウボンラチャタニー、ウドンタニー、ムクダハン、コンケン4県の知事や政府首脳の指示に適切に対応しなかった県の知事が、小さな県や内務省内の閑職に飛ばされた。」と指摘。今回の県知事人事は、48ポストに及ぶもので、副知事から知事への昇格が21人。これについて、同筋は、「現政権では、内務省は与党第2党プームチャイ・タイ党に任されているが、新知事のほとんどはプームチャイ・タイ党に従順な者。」としている。
民主党のステープ幹事長(治安担当副首相)は、民主党執行部が南部スラタニー1区下院補欠選へのステープ擁立を決めたことを受け、10月08日の立候補届出までに副首相を辞任して出馬する意向を明らかに。
これまでステープ幹事長は、副首相のまま出馬することへの批判に対し、「閣僚と下院議員の役割は別。」と反論、副首相ポストに固執する姿勢を見せていた。民主党関係筋は、「批判を避けるため副首相を辞職して補欠選に臨み、その間、アピシット首相が治安担当を引き受け、補欠選後にステープが副首相に復帰することで話がまとまったようだ。」としている。スラタニーはステープの地盤で、当選はほぼ確実と見られている。
民主党は政党助成金の使途違反と裏口献金疑惑で起訴されており、有罪の場合、解党処分を受け、アピシット首相ら党役員の参政権が5年間停止される可能性がある。現行憲法では首相は下院議員と規定されていることから、タイの一部メディアは実力者であるステープの閣僚辞任、補欠選出馬について、アピシット首相が失職した場合の後任にステープを充てるための準備と報じている。ステープとチュワン民主党顧問会長(元首相)は起訴された事件当時、民主党の役員ではなかった。

* ステープ・トゥアクスバン
1949年生。米ミドルテネシー州立大学政治学修士。下院当選10回。農相、運輸通信相などを歴任。2005年から民主党幹事長。2008年12月の政変では当時のタクシン派与党陣営の切り崩しに成功し、アピシット民主党政権発足の立役者となった。1995年に当時のチュワン民主党政権が崩壊したのは土地改革をめぐるステープの汚職疑惑が原因の1つ。国会議員の株式保有規定をめぐるトラブルで2009年07月に議員辞職。
国家警察本部及び首都圏警察本部の合同捜査チームは、今年03月下旬からクルングテープ都内で連続して発生している爆破事件の内、少なくとも4件が同一グループの犯行である可能性が高い事を明らかに。
同一グループの犯行と見られる4件の爆破は、03月27日に発生した陸軍系テレビ局を狙ったM67の投下、同30日に発生したプレーム枢密院評議会議長系の功労政治家財団へのM67の投下、07月30日に発生したキングワパー社前の爆破及び今月21日に発生したスパーワディー・タワー・コンドミニアムの爆破で、監視カメラ映像等からそれぞれの事件で、「形状が似た着衣をまとった同様な姿態の実行犯が同様な形状のバイクを使用していた事が確認されている。」という。
捜査チームによると、「4件の爆破事件に関する捜査が進展しており、現在実行グループの摘発に向けた証拠固めが行われている段階だ。」という。
午後ノンタブリー県の住宅前で手製爆弾がみつかり、警察が爆発前に処理。住人の女性は「爆弾を仕掛けられるようなトラブルは思い当たらない。」と話している。警察は首都圏で頻発している爆破事件との関連を調べている。
09月29日(水)カンボジアのフン・セン首相は、「アピシット首相と会談した結果、2国間関係が改善しつつある。」と明言。
両首相は先に国連総会に出席するため訪問した米国で、約40分にわたり2国間の問題などについて話し合った。フン・セン首相は、「この会談で相互理解が深まった。」としている。
タイとカンボジアの関係は昨年、タクシンがカンボジア政府の顧問に就任したことなどで険悪化することになったが、最近になってタクシンが顧問を辞任、フン・セン首相も態度を軟化させていた。なお、フン・セン首相は、タクシンと親交があるとされるが、最近の柔軟姿勢がタクシンとの関係が疎遠になった結果かどうかは不明。
警察当局は、「ロッブリー県内の軍施設から盗まれたとみられるロケット推進擲 弾(RPG)のうち13個をサラブリ県チャルムプラキアット郡プックケー植物園内の川底から回収した。」と明らかに。
RPGは先に16個が見つかっており、所在不明なのは残り10個。
クルングテープのタイ国立シリラート病院でタイランド・フィルハーモニック・オーケストラのコンサートが開かれ、シリラート病院に入院中のプミポン・タイ国王が自作の曲などの演奏に聞き入った。コンサートには国王の次女のシリントン王女、アピシット首相、プレム枢密院議長、アヌポン陸軍司令官、アカラートン最高行政裁判所長官らが出席。
プミポン国王は黒いタキシード姿で車椅子に乗り、コンサート会場への通路沿いに詰め掛けた国民に手を振った。国王は体調を崩し、昨年09月19日からシリラート病院に入院している。
20時半頃チョンブリー県チョンブリ市の油圧機器メーカー、TMCインダストリアルで爆発。駐車中の車6台等に被害。人的被害はなかった。
「小型トラックから通り過ぎざまに、爆発物が投げ込まれた。」と見られている。また、「男が会社オーナーの車に手榴弾のようなものを投げつけ、バイクで逃走した。」、「犯行にM26が使用された。」とする報道もある。
警察は、工場が関係する何らかのトラブルが事件の背景にある可能性が高いと見て捜査を進めている。
09月30日(木)午後クルングテープ都ワントーンラーン区プラチャーウティット通りソーイ・サハカンプラムンの道路脇の藪の中から、安全ピンがついたままの手榴弾M67が入った布の袋が見つかり、警察が爆発前に回収し現場はラオス大使館から数百m離れたオールスター・ゴルフコースの向かい。ソーイ・サハカンプラムンは通称ラオス大使館小路と呼ばれている。
ワントンラン警察署では、「草に残っていた袋の跡から袋が数日前からその場所にあった。」、「何らかの犯行目的でM67を所持していた者が治安当局の検問を見て摘発される事を恐れて捨てた可能性もある。」と見て捜査を進めている。
M67は、金属片が飛び散る破片手榴弾で、爆発によって5m範囲内の人間が致命傷を受け、15m範囲に殺傷力のある破片が飛散する。
首都圏では09月08日から28日にかけ、少なくとも9件の爆弾事件が起き、3人が負傷。「事件の多くはタクシン派対反タクシン派の政治抗争絡みとみられ、今後もこうした事件が散発する。」と予想され、警察当局は、爆発物が見つかったり、爆発したりする事件が続いていることから、この種の事件を専門に取り扱う作戦センターを設置することを決定。
関係筋によれば、「陸軍の新司令官プラユット大将は、これまで反政府勢力に強硬な姿勢を取り続けてきたが、軍のイメージを改善するため、北部や東北部を回り、先の大規模反政府活動に関連して死亡した反独裁民主主義同盟(UDD)支持者の遺族に会うことを計画している。」という。死者数は、デモ参加者や治安部隊員を含め91人にのぼるが、うち5人は北部、20人は東北部出身者とされる。「現在陸軍内部で、司令官の北部・東北部訪問に向けた調整作業が進められている。」という。
プラユット大将は年度初めの10月01日、正式に陸軍司令官に就任、執務を開始する。
上院政治状況監視委員会は、1都6県に適用されている非常事態宣言の解除を政府に求める声明を発表。同宣言は、タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)がクルングテープ都で反政府活動をエスカレートさせたことから04月07日に発布された。一時は1都23県にまで適用されたが、反政府デモが05月19日に終結したことから、徐々に解除され、現在は反政府勢力の活動が報告されている都県にだけに適用。
上院政治状況監視委員会は、「状況が正常化している、宣言が基本的人権を侵害している、宣言が国民和解を妨げている、などの理由をあげて、宣言を直ちに全面解除すべき。」としている。委員会のメンバー、ウィチャン上院議員は、「宣言が適用されているクルングテープ都などでは、いまだに治安を脅かす事件が起きている。だが、当局は宣言がなくても対処できるはず。」としている。
「国王が入院しているシリラート病院を爆破するとの脅迫電話がパトロール警察隊宛にあった。」と発表。
ウィチアン国家警察本部長によると、「脅迫電話の後で、建物内をくまなく捜索し監視カメラ映像等をチェックし、脅迫電話の内容が虚偽であった事が確認された。おそらく精神異常者による犯行ではないか。」という。また、ウィチアン本部長によると、「電話があったのが01日午前08時30分頃。電話をかけた場所は都内パホンヨティン通のテレビ局・チャンネル5前の公衆電話と判明した。」という。これまでにも複数回報じられていない脅迫電話があった事を認めたが、この脅迫電話が何らかの不穏な動きの前兆を知らせるものだった可能性に関しては否定。
10月01日(金)アピシット首相は、タイ国内7都県に施行中の非常事態宣言について、09月30日付で一部地域の解除を決定。今回解除される地域は、ウドンタニー県、コンケン県、ナコンラチャシーマー県の東北部の3県。
引き続き施行中の地域は、クルングテープ都をはじめ、ノンタブリー県、パトゥムタニー県、サムットプラカーン県。この首都圏の4県に関しては、05日に招集される閣議の席上で適用期間延長の是非に関して協議される予定。
非常事態宣言は5人以上の集会禁止、容疑なしでの30日間の身柄拘束、報道統制などを合法化するもので、タクシン派の大規模な反政府デモを受け、04~05月に24都県で発令。その後順次解除され、08月16日にもウボンラチャタニー県、チエンマイ県、チエンライ県の3県を解除。解除されたチエンマイ県ではすでにタクシン派団体の反独裁民主主義同盟(UDD)が反政府集会を行っている。
国家警察本部は、首都圏内で発生している一連の連続爆破事件に絡んで、「既に非常事態宣言施行規則違反で逮捕状が発行されている3人の男が関与している。」と見て、法務省特別捜査局の協力のもとで逮捕状を新たに取得し行方を追う方針を明らかに。
関与した疑いが持たれているのは、サムットプラカン県プラ・プラデーン郡のモンコン・サラパン(43)、クルングテープ都ラクシー区のタナデット・エクアピワット(35)、ラーチャブリー県ラーチャブリー市のソムキアット・サラニアム(49)。何れも04月24日から05月12日にかけて逮捕状が発行されており、またタナデットに関しては、首都圏警察本部コークラーム署管内で発見された自動車爆弾に関与した容疑も持たれている。警察によると、「3人の逮捕により、一連の爆破事件の全貌が明らかになる事が期待されている。」という。また、「3人以外にも犯行に関与している者や背後で指示している者が浮かび上がっているが、まだ証拠固めを行っている段階にあるため詳細を明らかにする事はできない。」という。
プア・タイ党のプロームポン報道担当は、「ラオス大使館近くの林で爆発物が発見された件やシリラート病院に爆発物を仕掛けたとの脅迫電話があった件は、何れも非常事態宣言の適用維持ないしは特定の予算が絡む利権確保を意図した犯行である疑いがある」と指摘し、アピシット首相に対し、非常事態宣言適用以来使用されてきた予算の総額とその予算の受益者を明確にするよう要求。
プロームポン報道担当によると、上記2件は、「何れもこれまで発生している殺害を意図していない連続爆破に繋がる情勢扇動目的の犯行だった可能性がある。」という。また、「非常事態宣言は情勢が再激化した時にいつでも再適用できる性質のものである。政府は、国家の対外イメージを考慮し、段階的に一部の地域の適用を解除するというスタンドプレイに走らず、適用されている全ての地域を対象に早急に適用を解除し、既存法で対応するべきである。」と述べた。
23時半頃クルングテープ都マッカサン区プラトゥーナム交差点近くのペップリー通りソーイ32前にあるクルンタイ銀行プラトゥーナム支店や飲食店が入居している3階建て商業ビル(報道によりカオマンカイ食堂が入居する5階建てビル)の屋上に手榴弾2発が投げ込まれ、1発は屋上に到達する前に爆発。怪我人はなかった。警察はペッブリタットマイ通りを一時封鎖し、残る1発を爆破。
プラトゥーナム交差点はバンコク伊勢丹近くのショッピング街。爆発のあったビル正面には、プア・タイ党報道担当のプロームポン・ノパリット一族系のプラトゥーナム・センターがある。
「犯行に使用された爆発物は殺傷力があるロシア製のRDG-5で、現場の状況から隣接するビルから投げ込まれた。」と見られている。警察によると、「タイの治安当局はRDG-5を使用していない。」という。首都圏内で発生している一連の連続爆破との関係に関しては確認されていない。警察は、「情勢扇動目的、ないしはビル関係者が絡むトラブルが背景にある。」と見て捜査を開始した。「ビルの住民の中に、酒絡みの騒音で近隣住民とトラブルになっている者がおり、また爆発発生前に目撃されていた、隣接するビルの屋上で酒を飲み交わしていた3~4人の若者が爆発発生後に所在不明になっている。」という。
10月02日(土)シリキット王妃(78)が先月30日から不整脈でチュラロンコーン病院に入院していることが明らかに。「症状は快方に向かっている。」という。
入院先のチュラロンコーン病院には01日、プミポン国王、シリントン王女が見舞いに訪れた。02日朝にはアピシット首相らが快癒を祈る記帳を行った。
プミポン国王は体調を崩して昨年09月から都内のシリラート病院に入院中で、車椅子で王妃を見舞った。チュラロンコーン病院では看護婦らスタッフ数百人が平伏して国王を迎えた。
連立政権のサナン副首相が反タクシン派の政治団体、民主主義市民連合(PAD)、タクシン派の野党プア・タイ党を相次いで訪問し、両派に和解を促した。先月30日にはプア・タイ党本部で同党のヨンユット党首(元内務次官)、チャワリット党会長(元首相、元陸軍司令官)らと会談。
サナンの真意は不明だが、「連立政権の中核で反タクシン派の民主党は政党助成金の使途違反や裏口献金疑惑で解党される可能性があり、民主党が解党、アピシット首相(民主党党首)が参政権停止処分を受けた場合の後継総理の座をサナンが狙っている。」という見方がある。 サナンは退役陸軍少将で、民主党幹事長を長く務め、現在は連立パートナーのチャート・タイ・パッタナー党の顧問。
10月03日(日)チエンマイ県でタクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)のメンバーとされる男12人が、騒乱を起こしたり要人を殺害したりするための秘密訓練を行っていたとして逮捕されていたことがわかった。北部を管轄する第5管区警察局は逮捕の事実は認めているものの、容疑の詳細などは明らかにしていない。
関係筋によれば、「11人は02日にチエンマイ県のドイ・クーファー・リゾートで捕らえられた。訓練から逃げ出した男が付近の村で道を尋ねたことで、村長が不審に思い警察に通報したことが逮捕のきっかけとなった。男は警察の取り調べに対し、『タイ・カンボジア国境で武器の取り扱い方などを教わったあとチエンマイに移動し、09月07日から訓練を受けていた。』と述べている。」という。
なお、UDDチエンマイ支部からは、「『非常事態宣言が解除されたにもかかわらず、令状なしで逮捕された。』との抗議の電話が警察にあった。」という。
反独裁民主主義同盟チエンマイ支部幹部のピチット・タームーン巡査部長補は、暗殺要員とされる赤服軍団関係者12人が逮捕された理由やいきさつを明確にするよう治安当局に要求。この要求は、02日16時頃にチェンマイ県メーオーン郡内にあるドイ・クーファー・リゾート内で赤服軍団の戦闘要員11人が逮捕されたと伝えられている事を受けたもの。コムチャットルゥク紙(ネーション系)が安全保障当局筋からの情報として伝えたところによると、「この逮捕は、先に逮捕された赤服戦闘部隊要員の男の証言に基づき実現したもので、男によると、情勢扇動行動や指導者暗殺の機会を待つためにカンボジアで武装訓練を受けた30人の戦闘要員がリゾートに集結しており、また暗殺の標的は、特にネーウィン・チットチョープに対して2千万Bの懸賞金が懸けられていた。」という。また、今回の逮捕は、男の証言に基づき治安を脅かす緊急性があるものと判断し家宅捜索令状がないまま行われた。
同盟チエンマイ支部幹部のピチット巡査部長補は、治安当局に対し、「赤服関係者が逮捕された事は確認出来ているものの、逮捕容疑や逮捕にいたる経緯等に関しては明らかになっていない。今回の逮捕容疑や公正な手続きに則り逮捕が行われたのか明確にするべきである。」と指摘。
不整脈のためチュラロンコーン病院に入院していたシリキット王妃(78)が、治療で脈が正常に戻ったことから退院しシリラート病院に戻った。次女のシリントン王女が付き添った。
シリラート病院には、プミポン国王が入院しており、王妃も以前から同病院に滞在。
タクシン支持派の市民数百人が、中部アユタヤ市で反政府デモ行進を行い、市内の橋にタクシン派のシンボルカラーである赤い糸を巻きつけるなどした。 タクシン派は今月10日にクルングテープ民主記念塔、14日に王宮前広場近くのロイヤルホテル前で反政府集会を計画している模様。
10月04日(月)52歳の誕生日を迎えたプームチャイ・タイ党最高幹部のネーウィン・チットチョープは、「国外に居る自分とは政治姿勢が異なる人物が自らを標的とした暗殺計画を首謀している。」と発言。
ネーウィンは、「国外にいる人物は、かつての自分のボスだった人物で、それ以上の説明をする必要はない。」と語り、具体的な名前を挙げる事を避けているが、ネーション系の英字報道はタクシンのを挙げて報じている。
チエンマイ県内で、赤服軍団の戦闘部隊関係者(報道により黒服)11人が逮捕された事に絡んで、「先に逮捕されていた男の供述から、戦闘部隊関係者達が情勢扇動行動やネーウィンを初めとする主要人物を狙った暗殺計画実行の機会を待つために潜伏しており、更にネーウィンに対しては2千万Bの報奨金がかけられている事が明らかになった。」と報じられている事について、ネーウィンは、プームチャイ・タイ党本部前爆破やチエンマイの岳父宅を狙った3回にわたる爆破があった頃から自らの命を狙うとする脅迫があった事を認め、「このような計画を首謀している国外に居る者が真に国家を愛しているのであれば、このような考えを止め国家を正常化させる事を視野に入れた他の方法を考えるべきである。」と述べた。
首都圏警察本部第1分署は、国王が入院しているシリラート病院に爆弾を仕掛けたとする脅迫電話をパトロール警察局(191)宛にした靴修理業スリヤン・コックプアイ(29)を逮捕した事を明らかに。脅迫電話があったのが先月30日 。警察はすぐに発信場所をパホンヨティン通りの陸軍系テレビ局ch5前の公衆電話と特定。監視カメラに記録されていた映像から、所持していた黄色のポリ袋などを手がかりに、パヤタイ2病院近くの路上に屋台を出して靴修理をしていたスリヤンを逮捕した。「スリヤンには前歴や精神科への通院歴はない。」という。
取り調べに対し、「ある政党に不満があったので脅迫電話をした。」などと容疑を認めている。警察によれば、「所持品からは赤服が見つかっており、タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)の支持者の可能性が高い。」とのこと。なお、シリラート病院を「重要な施設」と考えて嫌がらせの電話をしたもので、王室への悪意は否定。
第5地区警察本部のチャイヤ本部長代行は、チエンマイ県メーオン郡内にあるリゾート内で赤軍団の戦闘部隊要員11人を逮捕した事を公式に確認。
チャイヤ本部長代行によると、「武装訓練を受けている11人は、国内安全保障を脅かす事を意図した、要人暗殺を含むテロ活動や王室失墜を狙った動きの一端に関与していた疑いがあり、またクルングテープや地方で発生している一連の連続爆破にも関係している可能性がある。」という。
また、首都圏警察本部のチャクラティップ本部長代行は、逮捕された11人が反独裁民主主義同盟・赤服軍団の集会期間中に実行部隊として目撃されていた黒服を着込んだ集団の一部である事が確認されている事を明らかにし、11人と首都圏で発生している一連の連続爆破事件との関係を捜査するために捜査員をチエンマイ県に派遣した事を明らかに。
なお、チャイヤ本部長代行側は、11人の逮捕が法務省特別捜査局が抱えている約200件の安全保障関連案件の首謀者逮捕に繋がる可能性がある事は認めたが、素性に関しては、「黒服集団や赤服軍団ではない武装訓練を受けた民間人である。」と語り、「11人が黒服である。」との報道を否定。
タクシンの法律顧問であるノパドン・パッタマは、タクシンを要人暗殺計画の首謀者であると指摘したプームチャイ・タイ党最高幹部のネーウィン・チットチョープを名誉毀損で告訴するために、弁護団に対して告訴のための準備を進めるよう指示した事を明らかに。
また、ノパドンは、「タクシンは国内和解推進・一致団結体制の創成を望んでおり、また過去のいきさつを全て飲み込み誰彼に対しても復讐心を抱いていないタクシンを畏れる必要はない。」と述べ、ネーウィンに対して、「指摘を裏付ける証拠を公開し、事実である事が証明できたら50万Bの懸賞金を提供してもいい。」と皮肉った。
23時頃クルングテープ都バンパラッド区シリントン通りの動物病院駐車場で爆弾が爆発。駐車中の獣医師ダランラット・トゥムチャイ (31)のホンダ・シティー1台が大破。怪我人はなかった。監視カメラには、22:23にバイクに2人乗りした男が駐車場に乗りつけ、乗用車の車体の下に不審物を置き、バイクで走り去る姿が映っていた。「犯行に使用された爆発物の種類に関しては明らかになっていないが、車の損壊状況から破壊力が弱いものが使用された。」と見られている。
警察は、爆発物が獣医師の車の下に仕掛けられていたことから、「動物病院が絡む何らかのトラブルが犯行にある可能性が高い。」と見て捜査を進めている。
首都圏では07月以降、爆破事件が相次ぎ、1人が死亡、十数人が重軽傷。09月24日にはタリンチャン区で駐車中の乗用車の下で爆弾が爆発し、乗用車が大破、近くの住宅の窓ガラスが割れた。10月01日にはショッピング街のプラトゥーナム交差点近くの銀行支店の屋上に手榴弾2発が投げ込まれ、1発が爆発。怪我人はなかった。
10月05日(火)政府は定例閣議の席上で、首都圏を対象に適用されている非常事態宣言の施行期間を3ケ月間延長を決定。対象は、クルングテープ都、ノンタブリー県、パトゥムタニー県、サムットプラカン県で、何れも06日に施行期限を迎える予定になっていた。「国家の安全を図るため施行を続けるべき。」との治安維持部隊からの報告が延長の理由。
5人以上の集会禁止などを含む非常事態宣言は、クルングテープでタクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)が反政府活動を過激化させたことから04月07日に発令、一時は1都23県に適用されていた。
また、ステープ副首相がスラタニー県第1選挙区で行われる補欠選挙出馬のために副首相を辞任することにより空席となる非常事態対策本部長をプラウィット国防相に変更。
プア・タイ党議長のチャワリットは、「プア・タイ党と民主党が手を組んで政権を樹立する事は絶対にあり得ない。」と改めて「挙国一致政府を樹立する事が国家を正常化に導く最善策である。」との認識。
この発言は、民主党が解党された場合に、残存勢力がプア・タイ党を含む内閣改造を行うとの憶測が流れている事を受けたもの。チャワリットは、「このような内閣改造は起こりえない。全ての政党が参画した暫定政権を樹立する事が最善の出口だが、民主党はそのような考えを持ち合わせていないだろう。」と述べた。また、「民主党がプームチャイ・タイ党を連立から追い出し代わりにプア・ペーンディン党を連立に迎え入れる事を画策している。」との憶測がある事に関しては、「議会内に混乱をもたらすだけのものでしかない。」と指摘。
毎週日曜日にクルングテープのラーチャプラソン交差点に赤リボンを結びつける活動を展開しているグループの呼びかけ人であるソムバット・ブンガームアノンは、10日午後に政治犯の早期釈放を要求するために車列を組んでクルングテープ都内をパレードする方針を明らかに。
ソムバットによると、「10日13:00にクルングテープのラーチャプラソン交差点を乗用車やバイク等で構成された車列が出発し、ラーチャダムリ通りを経由しカッティヤ・サワディポン少将が狙撃された地点やラーマ4世通りのボーンカイ交差点、ディンデーン三叉交差点等の強制排除の際に衝突が発生した地点を経由した後に17:00に民主記念塔への到着をもってパレードを終了する予定。」という。また、「パレードの際には、05月19日の集会強制排除から4ケ月以上にわたり囚われの身になっている『政治犯』の釈放を要求する看板を掲示したり、ビラを配布する予定。」という。
18時頃クルングテープ北郊ノンタブリー県バーンブアトーン郡バンクルアイサイノイ通りティップスワン住宅地内のアパート「サマーンメッタ・マンション」で爆発があり、建物の一部が倒壊。男2人と女1人の3人が死亡し、重傷2人を含む10人前後が負傷。現場はバーンブアトーン市場近くにある。「5階建ての建物の2階の部屋で高性能爆薬が爆発した。」と見られている。7歳の少年は爆破により頭蓋骨が陥没し、昨夜、緊急脳外科手術を受けた。また、3歳の少女は、砕かれたガラスで背中を切った。
一部報道によると、「一部倒壊したアパートは過去に爆発物が仕掛けられ回収処理が行われたことがあった。」という。また、「爆発が発生した当時、アパートの所有者の誕生日の準備のためにビルの飾り付け作業が行われていた。」との報道もある。
自らも顔面を負傷したアパートの所有者のサマーンメッタ・ブンプラセート(54)によると、「2階部分から爆発が発生したことから、男女3人が死亡した202号室から爆発が発生した可能性が高い。ライフル銃や多数の電気回路とエアコンの冷媒タンクが見つかっている。」という。当局は、「破壊力がある爆発物が爆発した可能性もある。」と見て捜査を進め、「爆発が発生したと見られる202号室が爆弾を製作する場所として使用されていた可能性もある。」、「10㎏を下らない(報道により50kgの)C4ないしはTNTが爆発した可能性がある。」と見て捜査を進めているが、依然ビル倒壊の危険性があるため、慎重な検証作業を強いられている。
爆発が発生した202号室は、約1ケ月前からチエンマイ県ハンドン郡出身の男性サマイ・ウォングスアン(46)が居住し、ナラティワートナンバーの金色のトヨタの小型トラックを使っていたことが確認されているが、死体になっているか確認出来ていない。サマイは、麻薬の前科がある他に2009年に爆発物投下の容疑で身柄を追われ逃走中の身で、またクルングテープのラーチャプラソン交差点で開催されていた反独裁民主主義同盟の集会にも参加していた事が確認されている。04月05日に都内ラチャダーピセーク通りのソープランド「ポセイドン」で駐車中の乗用車が爆発した事件で、警察が「自動車をチエンマイから運転してきた。」と関与を疑っていた者の1人。また、一部報道によると、「202号室から『タイの新国家体制』と書かれたビデオが回収されている。」という。
治安当局は、「爆発が発生した202号室が爆発物の製造拠点として使用され、また首都圏で発生している一連の連続爆破とも関係する可能性がある。」と見て捜査を進めている。法務省特別捜査局は、「タイの政治史上最も重要な月である10月に計画されていた破壊活動用の爆発物が室内で製造されていた疑いがある。」と指摘。
政府は同日、クルングテープ都をはじめ、ノンタブリー県、パトゥムターニー県、サムットプラーカーン県の首都圏に対し、施行中の非常事態宣言の3ケ月延長を決定していた。
クルングテープでは今年03~05月、タクシン派のデモ隊と治安部隊が衝突して市街戦状態となり、91人が死亡、1400人以上が負傷した。05月下旬に治安部隊がタクシン派を強制排除し、状況はいったん沈静化したが、07月以降、爆破事件が相次ぎ、1人が死亡、十数人が重軽傷。今月04日夜にもクルングテープ郊外の駐車場で爆弾が爆発し、駐車中の乗用車1台が大破。
非常事態宣言の施行期間の延長が決定したことを受け、在タイ日本大使館より新たに注意喚起。

非常事態宣言の延長(10月5日現在)

1.5日(火)、タイ政府は、非常事態宣言の対象4都県
○ バンコク都
○ ノンタブリー県
○ サムットプラカーン県
○ パトゥムターニー県
について更に3ヶ月の延長を決定しました。

2.非常事態宣言の延長が決まったバンコク都内では、7月25日(日)以降8件の爆弾事件が発生し、邦人被害は無いものの死者1名、負傷者14名が出ています。このような情勢下、治安当局は、王族施設(王宮等)、官公庁、政府要人宅、公共交通施設及びデパート等を重点警戒箇所に指定し警備強化を実施しています。
つきましては、対象都県に渡航される場合には、報道等から最新の治安情勢を入手し、不測の事態に巻き込まれないよう十分な注意を払ってください。
10月06日(水)05日夕方にクルングテープ北郊ノンタブリー県のアパートで起きた爆発で、現場でこれまでに確認された遺体とは別に瓦礫の下に埋もれた吹き飛ばされた腕など男性の死体が見つかり、爆発による死者は計4人、負傷者は9人となった。
国家警察本部のウィチアン本部長は、「これまでに回収された爆発物製造に使用される部材ガスボンベや電池などから、先月20日にクルングテープのナーンルン競馬場で発生した爆破事件を含むクルングテープ都及びノンタブリー県内で発生した4件の爆破事件と今回の爆発が関係している可能性が濃厚になっており、また証拠次第では今月05日にクルングテープ都タリンチャン区内で発生した爆破事件にも繋がる可能性がある。」と明らかに。「4件の爆破に関与した重要人物の逮捕に繋がる情報を提供した者に対してそれぞれ10万Bの懸賞金を提供する。」と発表。
爆発が発生した202号室を借りていたサマイ・ウォングスアン(46)の行方を追っている。サマイはタイ北部チエンマイ出身。昨年09月、チエンマイで起きた民主主義市民連合系団体事務所に向け大型の爆竹や石等を投げ込んだ爆弾事件で取り調べを受けた。08月23日に逮捕され、保釈中に出頭命令に応じず逃走していた事が確認されている。今年03~05月にはタクシン派の反独裁民主主義同盟によるクルングテープの反政府集会に参加。ラーチャプラソン交差点で集会を開催していた期間中に、自警組織員として反政府デモに参加し、06月以降、家族と音信普通になっていた。警察は、ノンタブリーの爆発を爆弾製作中の事故とみており、「現場で回収された人の腕の一部がサマイのもの。」と見て、爆死した可能性を含め、慎重に捜査する方針。
一部報道によると、「06日夕方までに現場で発見された5体目の遺体がサマイではないか。」と見て調査が進められている模様。また監視カメラ映像から、「爆発発生当時、サマイが室内にいた可能性が高い。」という。一方、チエンマイ県ハンドン郡内に住むサマイの妻、ブアカム・ムアングマは、「サマイがタクシンの熱烈な支持者で、04月10日にクルングテープのコークウア交差点で発生した赤服軍団と治安当局との衝突の際に銃弾を受け負傷していた。」と述べた。ブアカムによると、「反政府集会が05月に終わって、一度チエンマイ県の家に帰り数日滞在した後に、『大仕事を成し遂げなければならない。それまで連絡しない。』と言って家を出ていたが、その後4ケ月間にわたり音信不通だった。」という。「サマイが赤服軍団の自警組織員だったとされている事や不穏な動きに関与している。」と指摘されている事に関しては、何れも否定。
警察によると、反タクシン派団体、民主主義市民連合(PAD)は2008年10月07日にPAD支持者と警官隊が衝突して死傷者が出た事件を記念し、07日朝、クルングテープのラマ5世騎馬像前(ロイヤルプラザ)で追悼式典を行う。数百~数千人が参加するとみられ、警察は警官約1500人を動員し警備に当たる。
タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)幹部で指名手配中のアリスマンが、カンボジアでなく、タイ国内に潜伏している可能性が出てきた。これは、アリスマンがラジオ番組の中で、タイ字紙のインタビューに対し、「わたしはタイ国内にいる。クルングテープに来たりもしている。だが、警察は私を逮捕できない。」などと述べたことによる。
元歌手で元下院議員のアリスマンは、表舞台に出ていたUDD幹部の中では強硬派とされていた。先の反政府デモのさなかに警察が宿泊中の都内のホテルに踏み込んだものの、UDDメンバーの抵抗にあって取り逃がすという失態を演じ、マスコミで大きく取り上げられた。
UDD幹部の多くは、05月19日のデモ終結に伴い、警察に出頭したが、アリスマンはその直前に姿をくらましており、「カンボジアに潜伏中。」との見方が有力だった。
ノンタブリー県のアパートで起きた爆弾事件で、「警察が反独裁民主主義同盟(UDD)などタクシン派の関与を疑っている。」と報じられたことに対し、同じくタクシン派の最大野党プア・タイ党の広報担当、プロムポンは、「反政府勢力と結びつけるのは早計。警察は爆薬の出どころをよく調べるべきだ。」と述べ、「UDDやプア・タイ党の関与はない。」との見方を示した。
プロムポンによれば、「爆薬は採石作業で使われるものだった可能性もある。与党第2党のプームチャイ・タイ党の最高実力者ネーウィンの関係者が採石事業にかかわっており、ネーウィンが爆発に関与していたとも考えられる。」とのこと。
「タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)が武装闘争の準備を進めている。」とのステープ副首相(治安担当)の発言について、法務省特別捜査局(DSI)のタリット局長は、「DSIも同様の情報を得ている。」と明らかに。タリット局長は、この情報について、「信憑性はかなり高い。」との見方。
ステープ副首相によれば、「UDDメンバーが近隣国で武器を使った訓練を受けている。タイ国内で騒乱を起こすとともに要人39人を暗殺することを企んでいる」。とのこと。 DSIも最近になり、「重要な政治イベントなどを狙って騒動を起こしたり、要人を暗殺したりするため、赤服軍団(UDD)が訓練を受けている。」との情報をつかんでいた。
また、タリット局長によれば、「ノンタブリーのアパートで起きた05日の爆弾事件は、政治対立に関連したものとみられるが、関係当局では、今後同様の事件が多発する恐れがあり、警戒感を強めている。」とのこと。
クルングテープに隣接するノンタブリー県のアパートで大きな爆発があり、10数人が死傷するという事件が起きたことについて、チュムポン観光スポーツ相は、「自国民のタイ渡航に注意を喚起した国はない。」と述べ、「タイの観光業が大きく落ち込むことはない。」との見方。
2ケ月に及んだ先の大規模反政府デモでは、外国人旅行者が減少し観光業が大打撃を受けた。だが、観光スポーツ相によれば、「05月19日のデモ終結後も首都圏で散発的に爆弾事件が起きているものの、外国人旅行者数は回復しており、今回の事件でこの傾向に変化が出るとは考えにくい。」とのこと。
10月07日(木)昼前クルングテープ都バーンスー区都内プラチャーチューン通りソイ31にある首都圏電力現業事務所前の立木の下で手榴弾状の物が発見され回収処理。現場は、トライロン副首相宅から約100m離れた地点。
回収後行われた調査により、手榴弾に似せて作られた偽爆弾だった事が確認。警察は、「情勢扇動目的で似爆弾を仕掛けた可能性もある。」と見て捜査を進めている。
05日夕方、ノンタブリー県のアパートで爆弾が爆発し、4人が死亡、9人が負傷した事件で、警察は、「06日に瓦礫の下で見つかった4人目の男性の死体が爆発元となった202号室の住人サマイ・ウォングスアン(46)のものであることが判明した。」と発表。
サマイの遺体は爆発で吹き飛ばされてバラバラの状態だったが、昨年、チエンマイの爆破事件でサマイを取り調べた際に採取した指紋と死体の指紋が一致。サマイはチエンマイ出身。今年03~05月にタクシン派によるクルングテープでの反政府デモに参加するなど、タクシン派の活動に深く関わっていた。警察は「サマイが爆弾の作成中に誤って爆発が起きた。」と見ている。
これまでに死亡が確認された3人は、焼き卵売りの男性、204号室に住む夫婦。
警察は、爆発前にアパートから立ち去ったイスラム教徒の格好をした男女の行方を追っている。事件との関係は不明だが、「2人がタイ深南部ナラティワート県のナンバープレートをつけたピックアップトラックに乗っていた。」という報道もある。タイ深南部ではタイからの独立を目指すマレー系イスラム組織による爆破・銃撃テロが連日のように起き、2004年以降、4000人以上が死亡。深南部テロ組織とタクシン派武装グループが接触したとすれば重大事で、治安当局は警戒を強めている。
タイ連立政権の実力者であるステープ副首相(治安担当)が、10月30日投票の南部スラタニー県下院補欠選に出馬するためとして、辞表を提出。08日付で辞任。「夕方にもスラタニーに出発しなければならないことから、明日直接首相と会う予定はない。」としている。
ステープは国会議員の株式保有規定をめぐるトラブルで昨年07月に議員辞職していた。スラタニーはステープの地盤で、当選は確実視され、~当選後、副首相に復職する。」と見られている。
ステープが幹事長を務める与党民主党は政党助成金の使途違反と裏口献金疑惑で起訴されており、有罪の場合、解党処分を受け、アピシット首相ら党役員の参政権が5年間停止される可能性がある。現行憲法では首相は国会議員から選出すると規定されていることから、ステープの補欠選出馬はアピシット首相が失職した場合の後継首相の準備と受け取られている。
民主党幹部の中ではステープとチュワン党顧問会長(元首相)が起訴された事件当時、党役員ではなかった。チュワンは首相復帰を否定している。
反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)の幹部や支持者が、僧侶に食べ物を喜捨するなどして、2年前に起きたデモ隊強制排除で犠牲になった人々を追悼。関係者は、追悼の儀式が終わるとすぐに散会。
タクシン派ソムチャイ政権下の2008年10月07日、就任したばかりのソムチャイ首相の所信表明演説を阻止しようと国会議事堂前に集まっていたPADのデモ隊は、治安部隊が催涙弾を撃ち込むなどして強制排除に出たことから、1人が死亡、数百人が重軽傷。爆発力の大きな支那製催涙弾が使用されたことが原因とされ、警察や当時の政府首脳が責任を問われることになった。
タクシン政権下(2001~2006年)で当時のタクシン首相の妻ポチャマンが都内ラチャダーピセークの1等地を低価格で購入したことで2008年11月に職権乱用でタクシンの有罪が確定したが、土地を売却したタイ中央銀行金融機関開発基金(FIDF)は、先の民事裁判所の命令に従い、購入代金7億7200万Bに利息を加えた8億2300万Bをポチャマンに返却することを決定。
FIDFは当初、「土地売買は無効であり、購入代金だけ返却する。」としていた。だが、ポチャマンは利息も求め、これが認められることになった。
プア・タイ党のアピワン下院副議長は、「05日夕方にノンタブリー県バンブアトーン郡内のアパートで発生した爆破事件に赤服軍団は関係していない。」との認識を示し、「まず爆発が発生した部屋の借り主サマイ・ウォングスアンと同姓のプラウィット防衛大臣に事情を聞くべきである。」と指摘。
アピワン下院議長は、クーデター政権時代に反独裁民主主義同盟の主要メンバーとして活動していた。アピワン副議長は、「非常事態宣言の解除に応じない政府に対して立ち上がろうとしている様々な色のグループが存在している。赤服軍団だけに爆破事件の責任が帰せられるべきではない。治安当局は赤服に全ての責任をなすりつける事に注力する前に軍の基地から紛失している武器の捜索に注力した方が良い。」と述べた。
一方、この発言に前後してチャトポン・プロームパンが、「借り主のサマイがプラウィット防衛大臣の遠い親戚である。」と発言していることについて、防衛省のターナティップ報道官は、「姓はを同じだが両者間に縁戚関係がない。」と確認し、「チャトポンは、事件と防衛大臣とを結びつけることにより、事件と赤服との関係から世間の目を逸らさせようとしている。」と指摘。
プア・タイ党幹部のアピワン下院副議長は、チャート・タイ・パッタナー党最高顧問で現副首相のサナン・カチョンプラサート少将を党最高顧問として受け入れる用意がある。」と明らかに。
この発言は、「プア・タイ党の働きかけを受け、サナン副首相がプア・タイ党に合流する。」との憶測が流れている事を受けたもので、これまでチャート・タイ・パッタナー党は「サナン副首相が党を離脱する事はあり得ない。」と発言。
アピワン下院副議長は、「党が取り組む政治連合づくりの一環として党合流を働きかける人物のリストに、副首相にまで上り詰めた政界の大物であるサナン副首相の名前が入っている。」と明らかにし、「サナン副首相が党合流に合意した場合には、現在チャワリットが就いている党議長と同列のポストである党最高顧問のポストを用意する方針である。」と述べた。
タクシンがかつての右腕ネーウィンの殺害を試みたとされる問題で、タクシンが、「ネーウィンの『暗殺発言』で名誉が傷つけられた。」として、弁護士を通じて警察に被害届を提出。
ネーウィンは先に故郷の東北部ブリラム県で催した誕生パーティーで、「元ボスが私を殺害するため2000万Bを費やした。」などと述べたとされる。これに対し、タクシンは、「ネーウィンに復讐するつもりはない。」などと述べて、「ネーウィンの殺害を試みたことはない。」とのコメントを側近を通じて出していた。ただ、警察では、「被害届を受理したものの、ネーウィンの発言について捜査するかまだ決めていない。」という。
ネーウィンは、2008年12月のタクシン派政権崩壊に伴い、タクシン陣営から数十人の議員を率いて民主党陣営に寝返り、これが民主党政権誕生に繋がったことから、「タクシン派の中にはネーウィンに恨みを持つ者が少なくない。」という。
北部チエンマイ県内のリゾートホテルにおいてテロ集団11人が逮捕された事件で、ホテルの経営者がテロ組織との関係を全面的に否定。メディアの大げさな報道に抗議。
「ドイ・クーファー・リゾート」のオーナー、パチョンは、「これまで地元の農家を支援するなど地域に尽くしてきたのに、11人の逮捕以来、私までがテロ組織の関係者と疑われている。信用を失ってしまった。」と話した。
カンボジアでテロ訓練を受けたとする11人がドイ・クーファー・リゾートで逮捕されたのは10月02日で、現在、当局による聞き取りが行われているところだ。11人は有力情報を提供する代わりに、当局に身柄の保護を要請している。訓練の内容は、「首都での暗殺や破壊工作を意図したものだった。」という。
逮捕のきっかけは、地域住民による通報。たまたまテロリストにドイ・クーファー・リゾートまでの道を尋ねられた村長が、「不審者がいる。」と警察に知らせ、すぐにホテル内の捜索が行われた。道を尋ねた男は、「テロ組織から秘密訓練を受けていた。」と自供。
法務省特別捜査局のターリット局長は、テロ容疑で逮捕状が発行されていた、カッティヤ・サワディポン少将配下の元レンジャー部隊員の男を潜伏先のウボンラーチャターニー県内で逮捕した事を明らかに。逮捕されたのは、アーラム・セーンアルン(49)。カッティヤ少将から誘われて武装黒服集団に参画し、また赤服軍団の集会期間中に武装黒服集団にM79を支給すると共に自らもM79の発射に関与した容疑。
初期段階の事情聴取に対してアーラムは、「ラーチャプラソンの集会期間中には車の中にいただけで、またパーンファー橋の集会には参加していなかった。」と語り容疑を否認。
タクシン派団体の反独裁民主主義同盟(UDD)によるデモ集会の開催が決定したこと受け、在タイ日本大使館より注意喚起。

反独裁民主戦線(UDD)によるデモ集会等実施に関する注意喚起(10月7日現在)

1.10月10日(日)、反独裁民主戦線(UDD)は、政治犯の早期釈放を要求するためバンコク都内でデモ集会及びデモ行進を以下のとおり行う模様です。
【バンコク都内でのデモ集会・行進実施予定】
・午前中、民主記念塔に集合し、デモ集会を実施
・午後から民主記念塔→ラチャプラソン交差点→ラチャダムリ通り→ルンピニー公園→ボンカイ付近(ラマ4世通り)→ディンデーン→民主記念塔(18時頃着予定)でデモ行進を実施

2.10月5日、タイ政府は非常事態宣言の対象4都県(バンコク都、ノンタブリー県、サムットプラカーン県、パトゥムターニー県)について更に3ヶ月の延長を決定する中、同5日午後6時頃、ノンタブリー県バンブアトーン郡内では死者4名、負傷者8名を出す爆弾事件が発生しています。このような情勢下、治安当局は、王族施設(王宮等)、官公庁、政府要人宅、公共交通施設及びデパート等を重点警戒箇所に指定し警備強化を実施しています。つきましては、タイに在住、渡航される方は、報道等から最新の治安情勢を入手し、不測の事態に巻き込まれないよう十分な注意を払ってください。

(問い合わせ先) ○在タイ日本国大使館領事部
電話:(66-2)207-8502、696-3002(邦人援護)
FAX :(66-2)207-8511
○在チェンマイ日本国総領事館
電話:(66-5)320-3367
FAX :(66-5)320-3373
夕方過ぎ都内ラマ4世通り沿いにある地下鉄フアラムポーン駅近くのアパートの1室で携行型ロケットランチャー1基とRPGロケット弾頭4発、AK47自動小銃1丁、銃弾750発などが見つかった。発見されたアパートは、プア・タイ党の旧本部に隣接するサイアム商業銀行サパーン・ルアン支店脇の路地内。
第1発見者でもあるアパートの大家によると、「ウテーンと名乗る男性が数ケ月前に部屋を借り、2~3ケ月後に家賃未払いのまま姿を眩ました。」という。
また、コム・チャット・ルック紙やデイリーニュース紙等は、大家の言として、「プア・タイ党関係者と名乗る男性が今年05月27日に部屋を借り、党本部の移転に伴い08月30日に部屋を出て行った。」と報じている。警察は、ウテーンに事情を聞くために、ウテーンが働いているというプア・タイ党本部にウテーンの所在確認を要請し、「発見されたRPG等が反独裁民主主義同盟の集会期間中に発生したドゥシッタニー・ホテルに向けたRPG攻撃等に関係している可能性もある。」と見て捜査を進めている。
10月08日(金)タクシン派団体、反独裁民主主義同盟(UDD)は10日日曜日にクルングテープで反政府デモを行う予定。午前中に民主記念塔で集会を開き、午後にラーチャプラソン交差点、ラチャダムリー通り、ルンピニー公園、ディンデーンなどを自動車、バイクでデモ行進する。治安当局は警官3000人以上を動員して警戒にあたる予定。
非常事態対策本部は、05日夕方にノンタブリー県バンブアトーン郡内のアパートで発生した爆発で、爆発が発生した部屋に出入りしていた事が監視カメラ映像等から確認されているナラティワート県スンガイコーロック郡在住のカシ・ディッタナラット(48)♂とイスラム教徒風の装束を着込んだ姿が記録されていたチエンマイ県ハンドン郡在住のアマポン・チャイコーン(49、報道により61)♀に対する逮捕状の発行を申請。逮捕状は、ノンタブリー県地方裁判所は夕方までに逮捕状の発行を許可。
マティチョン紙によると、チエンマイ県と南部国境三県の物産販売促進目的で開設されたサイト上に掲載されている写真に写っているイスラム装束を着込んだ女性とアマポンが酷似している。同紙がサイトに掲載されている電話番号に掛けたとろこ、「既に警察から事情聴取を受けている。」として取材を拒否された。
一方、ノンタブリー県バンブアトーン郡の警察は、上記2人の他にカシのイスラム教徒の妻及びアパートに度々出入りしていたナラティワート・ナンバーの小型トラックの持ち主の男性に関しても、事件との繋がりがあると見て捜査を進めている事を明らかに。特に、小型トラックに関しては、これまでに発生した少なくとも4件の爆破に関係している疑いがある。
死亡した部屋の借り主のサマイ・ウォングスアンに関しては、サマイの口座に小口の資金しか振り込まれていないことから、何者かから雇われて爆発物の製造を請け負っていた可能性を含めて捜査を進めている事を明らかにしている。また、これまでの調べで、カシからも複数回に渡り1万Bから1万5千Bの資金が男性宛に振り込まれていたことが確認されている。
先に狙撃されて死亡した、タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)の強硬派カッティヤ陸軍少将の側近アラムがテロ行為に関与したとして東北部ウボンラチャタニー県で逮捕されていたことが、明らかに。
カッティヤ少将は05月13日にインタビューを受けている最中に頭部を撃たれ、意識不明のまま17日に死亡。
警察によれば、アラムは、擲弾攻撃を繰り返していたグループのリーダーでもあり、昨年11月~今年05月にかけて発生した擲弾攻撃事件に関与していたとのこと。
政権党の民主党のステープ幹事長と最大野党プア・タイ党のウォラウットが、南部スラタニー1区の下院補欠選に立候補するための手続きを済ませた。
10月30日投開票の補欠選は、民主党議員が資産報告違反で失職したことから実施される。南部は民主党の支持基盤で、民主党が勝利する可能性が高い。
だが、タクシン派のプア・タイ党は、大勢の死傷者を出した先のタクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)による大規模反政府デモにもかかわらず一定の支持を維持し続けており、「民主党の牙城を切り崩す。」と意気込んでいる
10月09日(土)クルングテープ南地区刑事裁判所は、プア・タイ党旧本部近くの貸家内にRPG等の武器類を隠匿していた19歳の男に対する逮捕状の発行を許可。逮捕状の発行が許可されたのは、サコンナコン県ワーナラニワート郡出身の男で、クルングテープ都バーンラック区ラマ4世通りソーイ・キットパーニット内にある貸家内に、RPG発射装置1台、RPG弾頭4発、ライフル用銃弾多数を無許可で所持、保管。同日首都圏警察本部バーンラック署が逮捕状の発行を申請。
10月10日(日)
09時までに
ルンピニー公園のラマ6世像前で、集会期間中に狙撃され死亡したカッティヤ・サワディポン少将の追悼集会を計画していた赤服軍団は、集会を中止する方針を明らかに。呼びかけ人のソムバット・ブンガームアノンによると、「治安当局から中止圧力があった。」という。
18:00から民主記念塔前で予定されている、死亡した集会参加者の追悼集会は予定通り行う方針。また、同日予定されている車列パレードに関しては、14:00にラーチャプラソン交差点を出発し、ディンデーン三叉交差点、戦勝記念塔、パヤータイ通りを経由して終着点の民主記念塔に向かう予定。当初計画では、13:00にラーチャプラソン交差点からラーチャダムリ通り方面に向け出発する予定になっていた。
サラブリー県プラプッタバート郡内にあるリゾート内で、21歳と23歳の男2人がTNTや拳銃等を所持している容疑で逮捕された事が10日までに明らかに。
これまでの取り調べに対して2人は、「TNTは郡内で騒動を引き起こす目的で所持していた事を認める供述を行っている。」という。また、これまでの調べで、2人がチャルゥムプラキアット郡内で麻薬や窃盗で度々逮捕されており、最近刑務所を出所した後に県内のホテルやリゾートを転々としながら犯罪を繰り返していた事が確認されている。首都圏等で発生している一連の爆破事件と2人との繋がりは明らかになっていない。
ノンタブリー県のアパートで起きた爆弾事件で、警察当局は、爆弾を所持していたとされる住人の関係者男女2人の逮捕状を取った。
最も損傷のひどかった202号室に爆発物があったとみられるが、警察はこの部屋の住人の男性が爆弾製造中に誤って爆発物を爆発させたとみて、この男性のもとを頻繁に訪れていた男女2人を防犯カメラの映像から特定し、逮捕状を取得。
女性は頭にスカーフをかぶり、イスラム教徒を装っていたが、警察によれば、住民票などを確認したところ仏教徒だったとのこと。
ノンタブリー県のアパートで強力な爆弾が爆発し4人が死亡した事件を受け、関係当局が、爆弾材料となり得る爆薬、特定の化学物質、花火、ガスボンベ、消火器などの販売を監視する態勢を強化。
爆薬として利用可能な一部の肥料については、販売店に対し、購入者が農民でなく、大量の購入である場合、警察に報告するよう求めることにしている。ガスボンベや消火器は、爆薬を詰める容器として使われることがある。
夕方民主記念塔前でタクシン派団体、反独裁民主主義同盟(UDD)が今年04~05月の治安部隊との衝突で死亡したタクシン派市民を追悼し、非常事態宣言下で逮捕され現在拘留中のUDD関係者約300人の釈放を求めるため集会。
赤服姿のUDD支持者らは、トラックなど車両約250台で都内を回るとともに、大規模デモのさなかに治安部隊とデモ隊が衝突したコークウア交差点付近、強硬派のカッティヤ陸軍少将が狙撃されたサラディーン交差点、UDDがデモ拠点としていたラーチャプラソン交差点などに集まって追悼集会。車やバイクによる都内デモ行進はほとんど人が集まらず、ラチャダムヌンクラーン通りの民主記念塔に4000~5000人が集ったに過ぎなかった。集会期間中に死亡した集会参加者を追悼するため蝋燭に点火し19時過ぎまでに集会を解散。
今回の活動は、「犠牲者追悼」を理由に集会を行い、タクシン派の健在ぶりを示し、政府に圧力をかけることが目的。

← UDD集会でのソムバット・ブンガームアノン。

前回に引き続き赤服軍団全体を統率する指導者不在の状態で集会が開催され、占拠された道路の一部開放を巡った小さなトラブル等も見られたが、集会や車列パレード事態は平穏裏に進行。
次回は、今月12日08:00に逮捕された反独裁民主主義同盟・赤服軍団の幹部や関係者を激励すると共に早期釈放を要求するためにクローンプレームにあるクルングテープ特別刑務所前に、11月14日には死亡した集会参加者追悼のためにクルングテープのサラデーン交差点に集結する予定。
UDDのデモ集会は、04~05月に治安部隊と衝突して鎮圧されて以降、指導者がはっきりしない状態。UDDを通して民主化を求めるNGO活動家のソムバットの呼び掛けや、フェイスブックなどインターネットでの情報交換で集まるに留まり、組織だった行動が取れていない。今回の集会も主義主張の違いで支持者同士が言い争う場面が目立った。
10月11日(月)朝コンケーン県県都内で、何者かが大物実業家宅に向け爆発物M26を投げ込みライフルを乱射し逃走したが、幸い人的な被害はなかった。狙われたのは、チュムペー郡内のチーウィン・ホテルやイスズ・チュムペー社オーナーのナーウィン・チャイチーウィンリキット。
警察は、「事件の背景に10億Bに上る遺産の分配を巡るチャイチーウィンリキット一族内の対立がある。」と見て捜査を開始し、監視カメラ映像に記録された画像を手がかりに実行犯の行方を追っている事を明らかに。
警察によると、「ナーウィンは数ケ月前にも訪問先のルーイ県内で襲撃を受けた事があった。」という。因みに2005年03月、経営するラチャダーのマッサージパーラー絡みで愛人に雇われたガンマンに襲撃されたのも同じ一族。
Foreign Policy誌のサイトが10月01日に掲載した最悪な5人の指導者にタクシンが入っていた事が明らかに。
同誌は記事中で、「『タクシンは不正や人権侵害で非難に晒されていた最中にクーデターにより職を追いやられ、その後居場所を転々としながらニカラグアの特別大使やカンボジアの経済顧問、一時的なマンチェスターシティーFCのオーナーを務めただけでなく、各国から不当に入手したパスポートを使用し偽名を使ってドイツに1年以上滞在していた。』と報じられた事もあった。」と指摘 。
また、今年に入ってからは、結果として90人以上が死亡したタクシン支持派の赤服軍団による政府崩壊を目指したクルングテープ中心部の占拠や地方の政府機関への乱入に絡んで、「タイの裁判所が国外逃亡中のタクシンがデモ隊の扇動に関与した。」と認定。「過去に行われた電話演説の中で、『自分が復権する事ができたら全てのタイ人を金持ちにしてみせる。』と約束していたにも拘らず、タクシンは、赤服軍団の活動への資金支援を否定し、さらに本人は『政治的な動機に基づくものである。』と主張しているものの、国外逃亡以降に更なる不正案件でクロである。」と認定されている。」と指摘。
同誌は、「赤服軍団の敗北以降にタクシンはマスコミへの露出や政治活動を控え、08月には両国関係改善を助けるためにカンボジア政府の顧問を辞任した。」と指摘した。
同誌がサイトに掲載した最悪な指導者5人には、タクシン元首相の他にドイツ元首相のゲアハルト・シュレーダー、スペイン元首相のホセ・マリア・アスナール、ナイジェリア元首相のオルセグン・オバサンジョ、フィリピン元大統領のジョセフ・エストラーダが含まれており、タクシン元首相の記事は5番目に掲載されている。
米外交専門誌フォーリンポリシーが「悪しき元大統領・元首相」にタクシンを選んだことに対し、タクシンの法律顧問ノパドン元外相は、「事実に基づいた評価ではない。」と強く反論。
具体的には、同誌は「不法に発給された旅券を所持している。」と指摘しているが、ノパドンは「偽旅券所持の事実はない。それを証明する証拠を提示できる者がいたら、100万Bの賞金がもらえるだろう。」と語った。その理由として、ノパドンは、「タクシンの顔だちは特徴的であり、どこに行っても本人だとわかってしまう。『タッキー』という名前の偽旅券を所持していても意味がない。」と述べた。なお、ノパドンは、「フォーリンポリシーの記事が政治的意図を持って書かれたものかはわからない。だが、タクシンが米政府にとって重要なタイ人政治家であることは理解できる。」としている。
ノンタブリー県のアパート爆発で4人が死亡した事件で、警察関係筋は、下院委員会書記ワサ・テプリアン(25)♀が事件へのかかわりについて事情聴取を受け、「関与が疑われる者の1人に5万Bを送金したことを認めた。」と発表。同委員会は、タクシン派の最大野党プア・タイ党の議員が委員長を務めている。
同筋によれば、「書記のワサは、報道から自分が取り調べを受ける可能性があると知って怖くなり、北部パヤオ県のウィスット、プア・タイ党議員の家に身を寄せていた。それを警察が見つけ、事情聴取した。」とのこと。
法務省特別捜査局テロ案件捜査班首班のパヤオ・ノーンセーン警察中佐は、チエンマイ県メーオン郡内のリゾートで逮捕された赤服戦闘部隊員とされる11人に対して行われてきた事情聴取により、有用な情報が得られている事を明らかに。
マテイチョン紙に掲載されたパヤオ警察中佐が明らかにした11人の供述概要は以下の通り。
11人はクルングテープで開催された反独裁民主主義同盟の集会に参加し、また05月14日から19日にかけて同盟の過激派が軍や消防車に向け発砲しているのを目撃していた。
11人の中に当局が撃った銃弾により負傷した者もおり、また一部の者は非常事態宣言違反で逮捕され、プア・タイ党の顧問弁護士による保釈要求により保釈された後に逃走中だった。
逃走中に、同じく逃走中のラック・チェンマイ51幹部のDJオーンことカンヤーパック・マニーチャック♀やペーチャラワート・ワタナポンシリクン等からカンボジア領内での武装訓練参加への誘いを受けた。
誘いを受けた39人は、三手に別れてスリン県やサケーオ県経由で国境検問所を通過せずにカンボジア領内に入っていた。
カンボジア入国後にシェムリアップ県内の軍基地内で3週間にわたる武装訓練を受けていた。
武装訓練の最初の週で洗脳手法の訓練や王室に対する憎しみを植え付けるために王室を誹謗するビデオを見せられていた。
武装訓練の2週間目の段階では、ライフルやM79、C4等の使用方法に関する訓練が行われた。
武装訓練の最終週の段階では、実弾や本物の爆発物等を使用した訓練を受け、2万Bを受け取った後に39人中35人が08月16日にスリン県の国境線からタイに帰国。
残りの4人は、逃走中の同盟幹部アリスマン・ポンルアンローンにより帰国を阻止されアリスマンの個人ボディーガードとして働いている。うちの1人はテロ容疑で逮捕状が発行されている人物。
逮捕された11人は、カンボジア滞在中に同盟幹部の姿を見ていないが、北部組織のDJグループ全員や、個人や重要施設を狙った活動準備のためにチエンマイ県メーオン郡内のリゾート内に11人を潜伏させた同盟の調整役2人とは会っている。
逮捕された11人を除く24人は、それぞれのグループに別れてロッブリーやクルングテープ、チョンブリー、サラブリー等に潜伏中。
11人からステープ前副首相の自宅への経路等が記された地図が押収された。
アピシット首相は、ピルマを日帰りで訪問。首都ネピドーでビルマ軍事政権のテイン・セイン首相らと会談。アピシット首相は帰国後、「ビルマの港湾整備やタイ国内のビルマ人不法就労者などの問題を話し合い、成果があった。」と強調したが、タイ・ビルマ友好橋などタイ北西部ターク県の両国国境をビルマが閉鎖している問題については進展がなかったことを認めた。
タイ・ビルマ友好橋は両国国境のムーイ川に架かり、ターク県メーソートとビルマのミャワディーを結ぶ。ビルマ軍政は07月から友好橋と周辺の通関を停止した。理由については、タイ側の川岸で進められている護岸工事への抗議、もしくはビルマで11月に行われる総選挙絡みといった見方がある。
10月12日(火)午前反独裁民主主義同盟の集会期間中に目撃された黒服集団と関係している容疑で身柄を確保され、その後保釈された元俳優のメティー・アモンラウティクンが法務省特別捜査局のターリット局長のもとを訪れ、「電話で殺す。」と脅してきた同盟幹部でプア・タイ党議員のチャトポン・プロームパンの保釈を取り消すよう要求。
ターリット局長との面会を終えた後に開かれた記者会見の中でメティーは、チャトポンから電話で赤服軍団の裏切り者と非難された上で殺すと脅迫された事を明らかにし、「むしろ赤服軍団が逮捕され、困難に晒されている時に何もしなかったのはチャトポンの方である。」と非難。
また、メティーは、「チャトポンは、タイコム前での活動の時に街宣車上から指示を飛ばし赤服軍団を壊滅に追い込んだだけでなく、04月10日のコークウア交差点の衝突の際には赤服軍団を助けようとせず、ラーチャプラソン交差点に留まっていただけだった。」と指摘し、「チャトポンは大衆から票を集めるためのスタンドプレイを即座に止めるべきである。」と述べた。
さらに、赤服支持者の女性が「集会期間中に死傷した参加者支援のために寄付した6800万Bの現金が、同盟幹部会議長のウィーラ・ムシッカポンの実妹と名乗る女性に持ち逃げされた。」と訴えている問題に関しては、チャトポンを含む3人がこの問題に関与しており、また現金を預かった者は既にマレーシアに逃亡している事を明らかに。なお、寄付金紛失問題に関しては、特別捜査局は「民事案件である。」として不介入の方針を示している。
一方、この告発に対してチャトポンは、脅迫電話をかけたとのメティー容疑者の告発を否定し、寄付金をマレーシアに持ち去ったとされる同盟幹部の名前を明確にするよう要求。
チャトポンによると、「実際に受け取った寄付金の総額は3700万Bで、既に集会終了前に全て使用されていた。」という。
パニターン政府報道官代行は、「『チエンマイ県内で逮捕された赤服戦闘部隊員とされる11人が、カンボジア領内で武装訓練を受けていた。』と供述している。」と伝えられていることについて、カンボジアがタイの要請に応じ事実関係の調査に乗り出す意向を示している事を明らかに。また、今月末にベトナムのハノイで開催される東南アジア諸国連合首脳会議の際に、アピシット首相とカンボジアのフン・セン首相との間でこの問題について協議される予定になっている事を明らかに。
現政権を影から動かしているといわれるネーウィン派プームチャイ・タイ党だが、「プームチャイ・タイ党系議員から選出されている運輸相と商務相のポストが、民主党系議員にすげ替えられる可能性がある。」と報じられ、連立政権内の勢力争いに注目が集まっている。これに対し、タイ地元紙によると、民主党選出のアピシット首相は、「内閣に不満はあるものの、現時点で内閣改造をする予定はない。」と語っている。
チエンマイ県で戦闘訓練に参加していたとされるタクシン派11人が逮捕された事件で、「カンボジアで訓練を受けた。」との自供をカンボジアが全面否定していることから、11人を取り調べた法務省特別捜査局(DSI)が裏付け捜査に力を入れている。
自供によれば、「タクシン派の39人が要人暗殺などのためにカンボジアのシアムリアップで訓練を受けた。」という。だが、カンボジア当局がこれに反論。「自供が捏造。」との見方も出ている。
しかし、国家治安委員会(NSC)のタウィン事務局長は、「DSIは、容疑者が取り調べで述べたことを報告しただけ。」とDSIを擁護しており、ピラパン法相も、「自供は治安当局が入手した情報と合致する。」としている。
最大野党プア・タイ党関係筋によれば、プア・タイ党の幹部議員約30人の会議が10月12日に開かれ、ここで、国外逃亡中のタクシンが、次期首相候補の発表を下院解散まで待つよう要請。約1時間に及んだ会議で議員らはビデオリンクを通じてタクシンとやりとりをした。
タクシンによれば、「プア・タイ党が首相候補に推すことのできる人物は6人ほどいるが、中傷に晒される恐れがあるため、総選挙実施が確実になるまで氏名を公表すべきはない。」とのこと。
なお、「来年末の現政権の任期満了前に総選挙が実施されるとの見方もあるが、その可能性は低い。」との見方が支配的。
ノンタブリー県で起きたアパート爆弾事件で、タクシン派の野党プア・タイ党の幹部議員が関与していたとの見方が強まっている。
警察によれば、「資金洗浄・薬物問題を調査する下院委員会の秘書ワサ・テプリアン♀が事件翌日の10月06日に容疑者の1人に5万Bを送金していた事実が判明した。」という。
金洗浄・薬物問題を調査する下院委員会委員長のウィスット、プア・タイ党議員の推薦で秘書に起用されたワサは、警察が事件との関与を疑い行方を追っていることを知り、北部パヤオ県の同議員の実家に身を寄せていた。また、ウィスット議員は、ポンサク元タイ・ラック・タイ党役員と親交があるとされるが、ウィスット、ポンサクは、治安当局から、「タクシン派の反政府デモに資金援助した。」との疑いを掛けられたことがある。「ポンサクは現在も国外逃亡中のタクシンと連絡を取り合っている。」と見られている。なお、ウィスット議員もワサ秘書も犯人と面識のあることを認めているが、爆弾事件への関与は全面的に否定。
夜までにクルングテープサパンルアン区内のプア・タイ党旧本部近くの貸家内でRPG発射装置や弾頭等が発見された事件で、武器類の隠匿容疑で逮捕状が発行されていた貸家の借り主のポーンことスクサン・ランウィレーン(19)がチュムポン県内の警察に出頭。
ポーンは取り調べに対して、プア・タイ党の警備員だった事は認めたが、発見されたRPG発射装置等に関しては「一切知らない。」と語り容疑を全面否認。ポーンによると、「今年01月から05月までプア・タイ党の警備員を務めた後に、05月に部屋を引き払い父親が療養中のチュムポン県に移動していた。」という。
10月13日(水)法務省特別捜査局(DSI)が先に犯人の供述として「タクシン派がカンボジア国内で戦闘訓練を受けた。」と明らかにし、これにカンボジアが反発している問題で、タイ・カンボジア国境地帯を管轄する陸軍第2管区のタワッチャイ司令官は、「思慮に欠ける。」とDSIを批判。訓練を受けた場所は、タイ国境に近いシアムリアップとされるが、タワッチャイ司令官によれば、「2国間関係に影響しかねないため、DSIは国名に言及すべきではなかった。」とのこと。
アピシット首相のピムペン夫人は、政府庁舎で閣僚の夫人らとの会合に出席した後、報道陣に対し、「夫は自分の身の危険を本気で心配していないので、非常に案じている。」と懸念を示した。これは、「首相暗殺計画」についての質問に答えたものだが、ピムペン夫人がマスコミを前に発言するのは非常に稀れ。
首相の地方視察では、政情不安が続いていることから、常に安全確保が最重要課題となっているが、首相自身はあまり気にしておらず、そのため、周りが気を揉んでいる。
10月14日(木)チャーイ下院議長は、「下院議員と繋がりのある民間人が下院委員会の委員に任命されているのは問題。」として、与野党の議員代表と対応策を協議する意向を明らかに。
これは、政権党の民主党のワチャラ議員が先に、野党プア・タイ党幹部のチャトポン議員の推薦で、タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)の自警団関係者が下院委員会の委員に任命されたと明らかにしたことによるもの。
チャーイ議長は、「議員が委員会を私物化しているような印象を与え、議会の威信に傷がつく恐れがある。下院委員会に専門家の民間人が委員として加わる場合はあるが、必要性のない縁故採用は控えるべきだ。」と訴えた。
タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)の支持者ら39人がカンボジアで戦闘訓練を受けていたとされる問題で、法務省特別捜査局(DSI)のターリット局長は、「UDD幹部が訓練を支援していた。」との見方。法務省特別捜査局が得た情報では、「幹部6人が訓練を支援していたとされるが、これら幹部の容姿などが、先にチエンマイで戦闘訓練に参加していたとの疑いで逮捕された11人の供述と合致した。」とのこと。タリット局長は、「これら幹部は、39人を武装訓練に行かせただけでなく、破壊活動による体制転覆を主眼とした思想教育を39人に施すよう命じた。また6人はUDD支援者に戦闘訓練を受けるよう勧め、何れもUDDの活動を資金支援している疑いがある人物として過去にリストに記載された事がある。」としているが、幹部の氏名までは明らかにしなかった。
軍関係筋は、「プラユット陸軍司令官が、爆弾攻撃と破壊工作を予防すべく、クルングテープの全50区と近隣県に情報収集に当たる兵士を派遣した。」と明らかに。この措置は、ノンタブリー県で05日にアパート爆弾事件が起きたことに伴うものという。
同筋は、「当局は、爆弾攻撃などが今後増加すると見ている。このため、陸軍は、それを防ぐ手がかりとなる情報を住民から集めようとしている。」と説明。このほか、「陸軍は、首都圏のいかなる場所で事件が起きても、15分以内に現場に到着できるよう部隊ごとに特別班を編成している。」とのこと。
12日にタクシンがプア・タイ党本部で開かれた下院議員総会の際に行なったビデオ演説の中で、自らを総指揮官として次期総選挙を戦い、依然自分に対する支持が固い東北部及び北部の議席を席捲することにより、一党単独政権を樹立し、自らの帰国を実現させる意向を示していた事が明らかに。マティチョン紙を初めとする各メディアが13日から14日にかけて、党内消息筋からの情報として報じた。
また、タクシンは、「単独政権樹立のためには議会内で単独過半数を確保する必要がある。」、「他党と議席を分け合っているクルングテープ都やウボンラチャターニー県、ナコンラチャシーマー県及び東部地区の議席増を目指すと共に、特にプームチャイ・タイ党の東北部での勢力拡大を阻止するため、.プームチャイ・タイ党の強固な地盤となっているブリラム県内の全議席確保を目指す必要がある。」と指摘。
さらに、タクシンは、「自らが経済政策チームを率いる考えである。」、「次期総選挙を『最終戦争』と位置づけ、議会の解散と同時に全国各地で選挙戦に打って出る事が出来るような体制をつくるために党内構造改革に乗り出すと共に各地の立会演説会場でビデオ演説を行う考えである。」と明らかに。
一方、「タクシンが次期総選挙でブリラム県内の全議席を制覇し、プームチャイ・タイ党の東北部内における勢力を押さえつける意向を示した。」と伝えられていることについて、プームチャイ・タイ党幹部のソーポン・チャーラム(運輸大臣)は 14日、「選挙とは、被選挙権者各人の職務成果に基づいた国民の評価により決せられるものである。タクシンの発言に対して特に懸念を抱く必要はない。」との認識。
しかし、「東北部におけるプームチャイ・タイ党の人気が芳しくない。」との調査結果が出ているとの伝えられている事に絡んで、「有権者の意見を聞いて党の改善に取り組む用意がある。」と確認。
10月15日(金)反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)のデモ隊の座り込みでスワンナプーム、ドンムアン両空港が閉鎖に追い込まれた2008年末の事件で、刑事裁判所は、警察の要請に応じ、出頭命令に応じようとしなかったPAD幹部5人の逮捕状を発行。刑事裁判所によれば、「度重なる出頭延期は、刑法66条に規定された『逃亡の意図』に当たるため、5人の逮捕を認めた。」とのこと。
10月16日(土)06時前クルングテープ都ドゥシット区シーアユタヤー通り沿いにある、プレーム枢密院評議会議長公邸に隣接する陸軍クラブ前の路上で、黒色のプラスティック袋に入れられた不審物が発見され回収処理が行われた。プラスティック袋の中には、紙切れや糞尿、使用済みの生理用品が入れられ、また袋にはプレーム議長を非難するメッセージが書かれていた。
プレーム議長公邸付近では、今年07月08日にも、プレーム議長を非難するメッセージが書かれた不審な段ボール箱が発見され回収処理が行われていた。
10月01日付で内務次官に就任するはずだったモンコン・スラッサッチャ内務省地方行政局長が、「就任を辞退する。」と発表。モンコンは予算予算34億9000万Bの国民の身分証明書発行用のコンピュータシステム導入計画に関する汚職疑惑で捜査を受け、人事が凍結されていた。また、モンコンの次官昇進は内務省の序列を数十人飛び越える大抜擢人事で、内務省の現役官僚、OBらが強く反発。先に政府は、不正疑惑の解明終了まで次官内定の凍結を決定し、また法務省特別捜査局(DSI)は正式に国家汚職防止取締委員会に対して疑惑調査を要求し捜査資料を提出していた。
「アピシット首相が内相を解任する。」との見方も出ている。プームチャイ・タイ党の最高実力者ネーウィンは、DSIの捜査を強く批判しており、内相解任となれば、プームチャイ・タイ党が離脱し、連立政権が不安定化する可能性がある。政府は事実関係の調査を命じたが、その過程で「チャワラット内相にも責任あり。」との見方が強まることになった。
モンコンは東北部ブリラム県の副知事、知事を務め、ブリラム県の有力政治家で連立パートナー、プームチャイ・タイ党の実質的な党首であるネーウィン・チッチョープと親しい。次官就任辞退の理由については、「上司に迷惑をかけたくない。」と話した。この不正疑惑についてモンコンは、」調達の入札は公正に行われ、法に従って検察局等による所定の審査を経た上で落札業者に対して発注が行われている。」と語り、公明正大な調達が行われていた事を強調。また、モンコンは、「チャワラット内務大臣も自信の潔白を確信しており、チャワラットから落札業者との発注キャンセルの交渉を委ねられている。」と明らかに。
プームチャイ・タイは2008年末に裁判所命令で解党されたタクシン派政党から分離し、反タクシン派の民主党と連立政権を組んだ。両党はタクシンの復権阻止で一致しているものの、クルングテープ都の路線バス近代化計画、憲法改正、公職追放処分を受けた政治家への恩赦など様々な問題で対立を深めている。モンコンの汚職疑惑ではチャワラット内相(プームチャイ・タイ党党首)にも捜査の手が伸びている模様。プームチャイ・タイ党はメディアを通じ、「民主党の閣僚の汚職捜査も行うべきだ。」と主張し、揺さぶりをかけている。
10月17日(日)プア・タイ党は17日までに、民主党解党裁判に絡んで同党所属下院議員が憲法裁判所判事に働きかけを行っていた疑惑を裏付けるクリップをYouTube上に公開。「既に赤服軍団を中心に広く流されている。」という。プア・タイ党の公式記者会見は10:00過ぎに予定。
タクシン派団体、反独裁民主主義同盟(UDD)は、中部アユタヤ県で反政府集会。会場のサッカー場に支持者数千人(報道により約1万人)が集まった。警官隊との衝突はなかった。先の大規模な反政府デモに関連してUDD関係者約300人が現在も拘留されているが、UDDは、「政治的意思を表明したにすぎず、法律に違反していない。」として、即時釈放を求めている。デモを警備するため警察官約300人が動員されたという。
UDDは今年04、05月に都心部を占拠して治安部隊と衝突し、91人が死亡、1400人以上が負傷。クルングテープ都と近郊の3県には衝突以来、非常事態宣言が発令されているが、アユタヤではすでに解除されている。
アピシット首相(民主党党首)は、内務省地方行政局のコンピューターリース計画に絡む不正疑惑で与党第2党のプームチャイ・タイ党とのチャワラット党首(内相)が捜査対象となっていることに強い不快感を示し、「民主党は、プームチャイ・タイ党のあら探しをするつもりはないが、政権を存続させるため汚職を見逃すことはできない。規則が守れないなら政府内にいる必要はない。」と言い放ち、「汚職に対しては妥協できない。」と、「場合によっては解散総選挙を辞さない。」との姿勢を明確に示した。「民主党は、『汚職追放』、『クリーン政府』を大原則としており、他の与党もこれをよく理解しているはず。」という。
なお、関係筋によれば、アピシット首相が明確な姿勢を示したことを受け、プームチャイ・タイ党の最高実力者、ネーウィンは態度を軟化させ、事を荒だてないよう党幹部に命じたとのことだ。民主党連立政権の下院(定数480)議席数は260~270程度で、30議席以上を持つプームチャイ・タイ党が連立を離脱すると、アピシット政権は崩壊する見通し。
首都圏警察本部は、16日未明にプレーム枢密院評議会議長公邸から約100m離れた陸軍クラブ前の路上に糞尿や使用済み生理用品等が入れられた袋が放置されていた事件に絡んで、ナコンパトム県のプッタモントン・サーイ2地区に住む植木販売業の40歳から50歳位の男を逮捕した事を明らかに。放置されていた袋にはプレーム議長を中傷するメッセージが書かれていた。
首都圏警察本部のピヤ報道官によると、「この逮捕は、付近にあった複数の監視カメラ映像の解析により、実行犯が使用していた車のナンバーが判明した事により実現したもので、男は取り調べに対して、プレーム議長が嫌いだからやった。これまで5回にわたりプレーム議長公邸周辺に汚物が入った袋を放置してきた。」と供述している。男は、赤服軍団の支持者で、常に集会に参加していた。
一部報道によると、男は5千Bの罰金で既に釈放されている模様。
プア・タイ党のプロームポン報道担当は、民主党解党裁判に絡んで、民主党の裁判案件担当法務チームに所属する下院議員が憲法裁判所に働きかけを行っていた事を裏付けるクリップを公開し、「憲法裁判所の手続きに介入するという容認出来ない行為が行われていた事を民主党の大物も承知していたはずである。」と指摘。
プロームポンは、問題の議員と憲法裁判所裁判長秘書官とが協議を行っている模様を隠し撮りした映像を公開し、協議の際に議員側が選挙委員会のアピチャート委員長を被告側証人として採用するよう裁判長に働きかけて欲しいと要請していた事を明らかにした。
一方、働きかけを行ったと指摘された、民主党所属議員のウィラット・ロムイェンは、問題のクリップは、「下院地方自治委員会の顧問から依頼を受けた事項に関する協議を行っていた場面を撮影したものである。解党案件絡みの働きかけを行ったものではない。」と説明し、「問題のビデオは、憲法裁判所裁判長の個人秘書のPh(ポーパーン)が、プア・タイ党と共謀して疑惑をでっち上げる目的で隠し撮りされたものである。」と述べ、案に隠し撮りにパリットが関与している事を示唆。
また、アピシット首相は、「解党裁判絡みの働きかけを行う必要性はなく、また党としてもそのような事を行う方針はない、今後党内で問題のクリップに関する事実関係の調査に乗り出す考えである。」と述べた。
10月18日(月)海軍筋は、支那海軍とタイ海軍による初の合同軍事演習が26日から、タイ中部サタヒップ海軍基地などで行われることを明らかに。双方から計270人が参加する小規模な演習だが、タイの近隣国ベトナムなどが南シナ海で軍事活動を活発化させる支那を強く警戒する中で行われることになり、近隣国の反発を招く可能性もある。
タイ海軍筋によると、「合同演習は20日間の日程。軍同士の関係強化が目的で、陸上、海上、上空で包括的な合同訓練を行う。」という。
支那とタイは2007年から、双方の陸軍特殊部隊による合同演習を実施。これを海軍、空軍にも拡大していくことで昨年12月、両国の国防相が一致していた。
政党助成金の使途違反容疑や裏口献金疑惑で起訴されたタイの政権与党の民主党のウィラット下院議員と民主党に関する裁判を担当する最高裁判所のパリット・サクダーナロン最高裁長官秘書官が会談する様子を撮影したビデオをタクシン派の野党プア・タイ党が公開し物議。最高裁は、「司法の中立性に対する重大な疑いを招いた。」として、判事団の合議によりパリット秘書官を解任。また、問題の働きかけ疑惑を解明するために専門調査委員会を設置した事を明らかに。
ビデオの中でウィラット・ロムイェン議員は、民主党を起訴した選挙委員会の委員長に被告側証人として民主党に有利な証言をしてもらうよう、パリット秘書官に働きかけを依頼。
一方、プア・タイ党所属議員で反独裁民主主義同盟幹部のチャトポン・プロームパンは、クリップを隠し撮りした人物を激賛し、「今回のパリットの解任だけでは全ての問題を終わらせる事ができない。」、「憲法裁判所内にいる3人を下らない良からぬ考えを持つ判事により、専門委員会による調査でシロ判断が下される恐れがある。」という。
民主党は裁判で有罪となった場合、解党され、アピシット首相ら党役員が5年間の参政権停止処分を受ける。ただ、タイの司法は2006年以降、タクシン派政党を2度解党し、同派の首相2人を失職させるなど、一貫してタクシン派に不利な判決を下し、今回の裁判で反タクシン派の民主党を解党する可能性は低い。しかしその一方、タクシン派が「司法のダブルスタンダード」を非難する中、民主党と最高裁の不透明な接触を示すビデオが流出したことで、司法に注がれる内外の視線はこれまで以上に厳しくなっており、「最高裁が権威を守るため、民主党解党に踏み切る。」というシナリオも予想される。その場合、民主党は登録を済ませてある新党に議員を移籍させ、新首相を立てて政権維持を図る見通し。
プームチャイ・タイ党幹部のチャーイ・チットチープ(下院議長)は、「プームチャイ・タイ党と民主党両党の幹部の間には依然良好な関係が維持されていると確信している。プームチャイ・タイ党が連立政権から放逐される事はあり得ない」との考えを示した。
この発言に先立って、「民主党がプームチャイ・タイ党を連立から放逐し、代わりにプア・ペーンディン党の連立不参加議員を迎え入れ政権を維持する方向で動いている。」との噂や、「内務省内の汚職疑惑絡みで内務省の2人の大臣や政務官を解任する。」との噂が広がっている中で、プームチャイ・タイ党が民主党の職務遂行を監視するための委員会の設置に動き出した事に対して、アピシット首相が、権利として監視する事は容認するが、もし不満があるのなら正式にこちら側にぶつけてくるべきだ。そうすれば連立からの放逐の是非に関して検討する事ができるようになる。」と発言。
この発言に対してチャーイは、「先のアピシット首相の発言は、ちょっと口を滑らしただけの大きな問題と捉えるべきものではない。」と指摘し、「政権を組織する事は容易な事ではなく、また連立政権内には対立や行き違いはつきものであり、また民主党とプームチャイ・タイ党の幹部間で依然良好な関係が保たれていると確信していることから、アピシット首相が連立の組織替えに動くことはない。」との認識。
民主党が2005年に政党交付金2900万Bを不正流用したとして憲法裁判所の裁判を受けている問題で、憲法裁のウドムサク長官は、最大野党のプア・タイ党が先日、パリット憲法裁長官秘書官が民主党議員らと裁判について話し合っているとされる映像を公開したことから、パリット秘書官の解任を発表。憲法裁では、「パリット秘書官から裁判関係者に何らかの働きかけがあったかなどを独自に調査する。」としている。
この裁判で、仮に有罪となった場合、民主党は解党処分、アピシット党首(首相)らの党役員は公民権5年停止となる見通しで、大きな政界再編につながる可能性がある。
プア・タイ党のチャワリット顧問団長(元陸軍司令官)が離党すると一部で報じられているが、チャワリットの側近ピラットは、「団長を辞任することなど考えていない。」と明言。
報道によれば、チャワリット顧問団長は、「『表立った言動を控え、王室に敬意を示す。』との助言をタクシンが聞き入れないことから、離党を決意した。」という。
だが、ピラットは、「悪質な流言にすぎない。党内の分裂、特に軍出身議員の離反を狙ったものだろう。」としている。
関係筋によれば、10月01日に陸軍司令官に就任したプラユット大将は先に中堅幹部229人の異動を命じたが、今回の人事で、陸軍内で未だに一定の影響力を持つタクシン派軍人を排除したようだ。
タクシン政権(2001~1006年)は、タクシン派の軍人を重要なポストに起用したが、国軍の中で最強とされる陸軍を完全な統制下に置くことはできず、2006年09月の軍事クーデターでタクシ政権は崩壊することになった。
その後、タクシン派が政権を取った時期もあったが、陸軍の主要ポストには非・反タクシン派が配置されることになった。だが、中堅幹部ポストにはタクシン派が残っており、その一部が今回の異動で排除されたという。
10月19日(火)定例閣議で、空席となっていた内務事務次官にウィチアン・チャワリット地域開発局長の起用を決定。01日付で次官に昇進するはずだったモンコン・スラサッチャ地方行政局長は予算35億Bのコンピュータ導入計画をめぐる汚職疑惑で人事が凍結され、16日、昇進を辞退すると発表。
モンコンは東北部ブリラム県の副知事、知事を務め、ブリラム県の有力政治家で連立パートナー、プームチャイ・タイ党の実質的な党首であるネーウィン・チットチョープと親しい。モンコンの次官昇進は内務省の序列を数十人飛び越える大抜擢人事で、省の現役官僚、OBらが強く反発していた。さらに、モンコン局長を推したチャワラット内相(プームチャイ・タイ党党首)も捜査対象となる事態となり、モンコン局長は先に事務次官就任を辞退し、前任の地方行政局長に。
ウィチアンは1955年生。タマサート大学政治学修士。東北部ブリラム県副知事、アムナートチャルーン県とスリン県の知事を務め、今年05月から現職。ウィチアンもモンコン同様、プームチャイ・タイ党と深い繋がりがある。
「会計検査院のチャルワン♀院長が定年後も退官せずに居座っているのは違法だ。」として訴えられた裁判で、中央行政裁判所は、「チャルワンが今年07月05日に65歳を迎えた時点ですでに定年退官となっている。」として、チャルワンの失職を確認。「『ピシット副院長が院長代行を務めるとした命令を無効とする。』とのチャルワンの院長としての命令が無効。」との判断を示した。「副院長を院長代行とする命令が有効とされたことから、チャルワンが今後院長を務めることは不可能。」との指摘もある。チャルワンは判決を不服として控訴する方針。会計検査院長の職務は後任が決まるまでピシット副院長が代行する。
会計検査院では、チャルワンが「会計検査院役員に関連する法律が制定されるまで院長職に留まらねばならない。」として定年退官を拒否。これに対し副院長らが強く反発するという事態が続いていた。
チャルワンは2001年に会計検査院長に選任されたが、憲法裁判所が2004年、「選出方法が違憲だった。」とする判決を下し、事実上失職。しかしチャルワンは「国王の命令がない限り職に留まる。」として辞任を拒否し居座った。2005年には上院が後任の会計検査院長を選出したが、プミポン国王の承認が得られないという異常事態が発生。王室の助言を受けた会計検査院は2006年02月、チャルワンの院長復職を認めた。復職の合法性をめぐる論議はタイ国内では一切起きなかった。同年09月の軍事クーデターでタクシン政権(2001~2006年)が追放された後、チャルワンは軍政が設置したタクシンの不正蓄財を捜査する委員会の委員となり、タクシン政権の不正追求に取り組んだ。
チャルワンは国王から勲章を受け、高位の女性の称号である「クン・イン」を許されている。インターネット上の百科事典「ウィキペディア」のタイ語版はチャルワンに関し、会計検査院長ポストをめぐる2004~2006年の事件を一切記述していない。
2006年のクーデターを実行したソンティ陸軍司令官(当時)は2005年に陸軍司令官に就任したが、これはプミポン国王の側近であるプレム枢密院議長(元首相、元陸軍司令官)の強い意向によるもので、チャルワンの問題で人事に関する手足を縛られたタクシン政権が押し切られたという説がある。タクシン派は2006年のクーデターについて、プレム議長が黒幕という立場を取っている。
タイには不敬罪があり、国王夫妻、王位継承者、摂政に対する批判は重い刑事罰の対象となる。反タクシン派の現政権は同法を盾にインターネット上でも言論統制を強めている。
チャート・タイ・パッタナー党顧問団長のサナン副首相が、反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)を支持母体とするカンムアン・マイ(新政治)党の本部を訪れ、ソムサック党首、サムラン副党首、スリヤサイ幹事長などと国民和解実現に向けた話し合い。
サナンは、すでにタクシン陣営のプア・タイ党や反独裁民主主義同盟(UDD)の幹部とも話し合いを行っているが、一部からは「総選挙に向けてチャート・タイ・パッタナー党の支持を増やそうとしたスタンドプレー。」との批判も出ている。
カンムアン・マイ党幹部と話し合ったあと、サナン氏は、「どの政党も政治団体もタイ人同士が殺し合うのを見たいとは思っていない。国民和解を実現したいというのが彼らの共通の願い。」と述べ、改めて「平和的に政治対立の解消が可能。」との見方を示した。
刑事裁判所は、軍保守派系新聞ネーオナー紙のコラムニストに対して、「タクシンの資産隠し裁判担当判事夫人の名誉を傷つけた。」として、禁固18ケ月、執行猶予1年及び3万Bの罰金の支払いを命じる判決。
この裁判は、ネーオナー紙のコラムニストであるワチャラ・ペーチャラトーンが、2007年06月07日から15日にかけて同紙に掲載したコラムの中で、「『タクシンの資産隠し裁判担当判事の1人であった元憲法裁判所判事のサック・テーチャーチャーン夫人のチトラーポンが中小公社振興局長に抜擢された背景に、夫のサックが資産隠し裁判の際にシロ票を投じた事がある。』と指摘した事により名誉を傷つけられた。」として、チトラーポンがネーオナー紙及びワチャラを相手取り提訴。
ワチャラは、審理中一貫して「名誉毀損の事実はない。」と主張してきたが、刑事裁判所は、証拠を精査した結果有罪と判断し、禁固18ケ月、執行猶予1年及び3万Bの罰金の支払いを命じ、ネーオナー紙に対して3日間にわたり判決文の紙面掲載を命じた。
10月21日(木)プア・タイ党所属議員で反独裁民主主義同盟幹部のチャトポン・プロームパン氏は21日、先に公開された民主党解党裁判に対する民主党による働きかけ疑惑を裏付けるクリップに絡んで、新たに憲法裁判所による6600万B規模の監視カメラやコンピュータ・システムの発注に絡んだ憲裁判所と民主党の癒着疑惑がある事を明らかに。
チャトポンによると、「公開されたクリップには、働きかけを行ったとされる民主党所属議員のウィラット・ロムイェンの他に、入札により監視カメラやコンピュータ・システムを憲法裁判所から受注した企業に関係しているウォラウット・ナワポーキンの姿があり、また両者を含むクリップに登場する者全てが大物政治家に近い人物だ。」という。また、民主党最高顧問のチュワン元首相が、クリップを流布した者の告発及び流布に関与したプア・タイ党に対する解党要求を視野に資料収集を進めている事を明らかにしている事に関しては、「実際にクリップ内で発生している事から目を逸らさせようとする行為である。」と述べた。
一方、憲法裁判所の一部判事の不正行為を裏付ける3つのクリップの公開時期に関しては、「法的責任を問われる恐れがあること、また別の勢力内の者の手にも渡っている恐れがあることから、現時点では公開時期を明確にする事ができない。」と明した。
民主党の裁判に関連して不正があったされるビデオクリップがネット上に流された問題で、憲法裁の判事らが脅迫を受け、関係当局に身辺警護を要請していたことが、21日までにわかった。
憲法裁では現在、政党交付金不正流用疑惑、不正政治献金疑惑という民主党関連の2つの裁判が進められているが、これを担当する判事らに対し、ビデオクリップがネット上に出たのをきっかけに、「殺害する。」といった脅迫が来るようになった。
なお、いずれの裁判でも有罪となれば、民主党は解党、党役員は公民権停止となり、大幅な政界再編は避けられない。
10月23日(土)民主党の政党交付金不正流用疑惑の裁判で民主党議員が憲法裁長官秘書に不正な働きかけをしたとされる問題で、チャット憲法裁長官は、「疑惑には一切関与していない。」として、辞任する考えのないことを明らかに。
働きかけの現場を隠し撮りしたとされるビデオクリップがネット上に流れたことから、長官は先に秘書を解任。しかし、元タイ・ラック・タイ党幹部のチャトロンなどは、「長官も責任をとって辞任すべき。」としているが、チャット長官は、「ビデオクリップが憲法裁判事の判断に影響することはなく、長官が辞任する必要はない。」としている。
10月25日(月)アピシット首相によれば、「政府特別委が作成した憲法改正案が11月02日の閣議に提出される予定で、全ての政党が同意した場合、憲法改正案が今国会で審議される。」、「憲法改正案の内容は検討のためすでに各党に報告済み。」とのこと。
政治改革・憲法改正を担当する国民和解特別委が打ち出した憲法改正案では、6項目の改正が求められている。
10月26日(火)タクシン支持団体の反独裁民主主義同盟(UDD)幹部のアリスマンがカンボジアに潜伏しているとされる問題で、アピシット首相は、近く予定されているフン・セン首相との会談で、アリスマンの身柄引渡しを求める意向を明らかに。これは、25日から26日にかけて、「アリスマンがカンボジアのビザを申請した。」、「アリスマンが第三国亡命のために24日にカンボジアビザを取得した。」等と報じている事について聞かれた際に明らかにされたもの。
デイリーニュース紙が、カンボジアのポーイペートの軍消息筋からの情報として伝えたところによると、「アリスマンのパスポートは、24日夕方にポイペートの入国管理当局者によりアランヤプラテートにあるカンボジア領事館に持ち込まれ、同日中にビザが発給されていた。」という。また「アリスマンのパスポートに押されていたタイ入国管理当局の出国スタンプは偽造されたものである疑いがある。」という。
先にアリスマンは、「タイ国内に潜伏中である。」と主張していたが、同消息筋によると、」アリスマンは現在シェムリェップ県内の大手ホテルに滞在中で、カンボジアの当局関係者やタイ人のボディーガードが24時間体制で警護に当たっている。」という。
この情報に関してアピシット首相は、「既にフン・セン首相に対して『アリスマンがカンボジアのビザ申請の動きを見せている。』と警告済みである。」とし、関係省庁に対して報道の事実関係の確認を指示した事を明らかにし、またサケーオ県の県知事も既にアランヤプラテートにあるカンボジア領事館に対して、「アリスマンが偽造されたタイの入出国印が押されたパスポートを使用してビザ申請をする恐れがある。」と警告していた事を明らかにしている。
表舞台に出ていたUDD幹部らの中では強硬派とされるアリスマンは、05月19日の大規模デモ終結に伴い他の幹部らが当局に出頭したのに対し、姿を晦ましたままで現在も所在が明らかになっていない。だが、アピシット首相は、「カンボジア潜伏を裏付ける十分な証拠が存在する。」としている。
反独裁民主主義同盟幹部のチャトポン・プロームパンは、05月19日の強制排除から6ケ月目となる11月19日に、強制排除の場となったクルングテープ中心部のラーチャプラソン交差点で集会を開催する方針を明らかに。「10万人規模の赤服軍団の集結を確信している。」という。
また、「地方展開の一環として、近日中にコンケン県やウドンタニー県でも集会を開催する予定で、同様に10万人規模の赤服軍団の集結が見込まれる。」という。
タイを訪問したパン・ギムン国連事務総長は、政府庁舎でアピシット首相と会談したあと記者会見。ここで、赤服軍団、すなわち、タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)による執拗な反政府活動について、「国内問題であり、タイ人が解決すべき。」と述べ、「国連などが積極的に介入すべき類の問題ではない。」との認識。
UDDは、「民主党政権が人権を侵害している。」などして、問題解決に国連などの介入を求めており、26日も都内ラチャダムヌンノーク通の国連会議センター前で抗議集会を行い、事務総長宛の書簡を国連職員に提出。
ただ、パン・ギムンは、「国連が(政府が設置した)国民和解委員会に支援を提供する用意があり、また、問題は透明性をもって解決されるのが望ましい。」としている。
国民和解の一環として憲法改正の手続きが進められようとしていることについて、反タクシン組織の民主主義市民連合(PAD)」の広報担当のパンテープは、「政治家のためだけに憲法を手直しすることや国王の権限を侵すようなことがあってはならない。」と述べ、国民不在の改憲、政治家の身勝手な改憲に反対する意向を明らかに。
タイでは憲法が何度となく書き換えられているが、現在の憲法論争は、軍部が2006年09月にクーデターでタクシン政権を打倒し、1997年憲法を廃止したことがきっかけとなっている。クーデター後の軍事暫定政権では、暫定憲法を経て現行憲法が制定されることになったが、その後発足したタクシン派のサマック政権が憲法改正の動きを見せ、これに抗議したPADが反政府活動を展開。そんな中で反タクシン派の現民主党政権が誕生したが、タクシン派は現行憲法の改正などを求めて過激な反政府活動に出た。これを受け、議会で憲法改正の手続きが開始されることになったが、タクシン派の最大野党のプア・タイ党は突如として現法憲法改正に反対し1997年憲法の復活を要求。だが、タクシン派の台頭を許した1997年憲法の再導入には反タクシン派が強く反対していることもあって、政権党の民主党は、現行憲法改正を政治対立解消につなげようと模索している。
なお、PADは、民主党と同じ反タクシン陣営だが、憲法が政治的妥協のための道具に使われる恐れがあるとして、現行憲法の改正には一貫して否定的立場。
10月27日(水)タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)がクルングテープ中心部で04月から05月にかけ大規模な反政府デモを決行し、これに関連して大勢の死傷者が出た問題で、タクシン派は「当局に犯罪行為があった。」として国際刑事裁判所に調査を請求していたことが、明らかに。また、この請求の中で、タクシン派は、「当局が犯罪行為のほとんどを隠蔽しようとしている。」と非難。
だが、パニタン政府報道官は、「この件については外務省からの報告で知っているが、(調査を行うことは)国際刑事裁判所の権限の範囲外と認識している。」と述べ、「請求が却下される。」との見方。
10月28日(木)民主党の議員が政党交付金不正流用疑惑の裁判を有利に進めようと憲法裁関係者に働きかけをしたとされる問題で、警察の捜査担当者は、「働きかけ」を仕組んだとされるパシット憲法裁長官秘書(当時)の身柄引渡しを香港当局に求める方針を明らかに。
この問題は、ウィラット下院議員と秘書が密談している様子を撮影したとされるビデオクリップがネット上に流され、これを最大野党プア・タイ党が指摘したことで、マスコミに大きく取り上げられることになった。だが、ウィラット下院議員は、「秘書の求めに応じて会った。誘導質問があった。」と、仕組まれたものと主張。また、この秘書が問題が表面化する前に香港に渡り、まだ帰国していないことも明らかになった。このため、警察当局は、パシット元秘書が現在も香港に留まっているものとみて、香港側に身柄引渡しを求めることにしたもの。
10月29日(金)10時頃放火され半壊していたセントラル・ワールド・プラザ(CWP)南端に位置するゼンデパートの復旧作業の現場で、鋼材で組み立てられた作業用の足場が倒壊。これまでに2人が死亡、6人が負傷。
CWPは、タクシン派団体の反独裁民主主義同盟(UDD)がラーチャプラソン地区で長期デモ集会を行った際、解散の際の混乱に乗じて放火や略奪が起きたことで、復旧作業が続いていた。放火による被害が大きい復旧に時間がかる区域を除き、09月28日に営業を開始。
クルングテープ都庁土木局によれば、「作業中に足場に移動した機材などの重さに耐えきれず、足場が崩れたもの。」。
反タクシン派団体、民主主義市民連合(PAD)は、チュワン民主党連立政権が2000年にカンボジアと調印した国境交渉に関する覚書の無効化などを求める訴えをタイ中央行政裁判所に起こした。「覚書により国境画定交渉でタイが不利になる。」と主張。11月02日にはタイ・カンボジア合同国境委員会での合意事項などをまとめた3つの報告書の国会審議があることから、PADは、「タイに不利益をもたらす。」として、議会審議・承認を阻止すべくカンボジアとの国境交渉に関連したPADは国会議事堂前で集会を開き、議員に圧力をかける方針。報告書は2国間の領土問題に関するもの。憲法ではこの種の合意や見解は議会承認が必要とされているが、大規模な反政府デモのため承認が遅れていた。PADは領土問題に関しては「妥協は許されない。」との姿勢を貫いているが、PAD幹部のチャムロン元クルングテープ都知事などは、今回の議会承認について「怪しい。2国間の裏取引が疑われる。」としている。
PADは昨年、自前の政党「新政治党」を設立。タクシン派追放で同盟関係にあった民主党と競合関係に移りつつあり、現アピシット民主党連立政権への批判を強めている。
東南アジア首脳会議出席のためベトナムのハノイを訪問中のアピシット首相は、前日夜にサイドラインで行われたカンボジアのフン・セン首相との二者会談の席上で、フン・セン首相が、「反独裁民主主義同盟幹部のアリスマン・ポンルゥアンローンを初めとする幹部が同国内に潜伏している。」とされている事に関して調査する意向を示すと共に、潜伏が確認された場合はタイからの要請に基づき本国送還に応じる意向を示していた事を明らかに。
また、国境紛争問題に関しては、2000年に両国間で交わされた覚書きに則り、国境紛争地内に於ける兵力増強や居住地、市場等を拡大する動きの見直しを要請し、フン・セン首相から良好な反応が得られた事を明らかに。
10月30日(土)与党民主党の下院議員の失職にともなう南部スラタニー県第1選挙区の下院補欠選挙に出馬していた前副首相のステープ・トゥアクスバンが、野党プア・タイ党公認のウォラウットを引き離し当選確定。投票率は約53%。南部は民主党の強固な地盤の上、スラタニはステープの地元で、予想通りの圧勝。
タイ地元紙は、「ステープが約15万票を獲得し、対立候補のウォラウットの約2万票を大幅に上回り圧勝した。」と報じている。ステープは、国会議員の株式保有規定をめぐるトラブルで昨年07月に議員を辞職し、今回の選挙に出馬するため、副首相を辞任していた。当選を受け、副首相に復職すると見られている。
民主党は政党助成金の使途違反と裏口献金疑惑で起訴されており、有罪の場合、解党処分を受け、アピシット首相ら党役員の参政権が5年間停止される可能性がある。現行憲法では首相は国会議員から選出すると規定されていることから、ステープの補欠選出馬はアピシット首相が失職した場合の後継首相の準備と受け取られている。
10月31日(日)憲法に関する判断を下すタイ憲法裁判所が相次ぐスキャンダルに揺れている。憲法裁は近く、政党助成金の使途違反容疑で与党民主党の解党、党役員の公民権停止に関する判決を下す予定だが、憲法裁幹部職員と民主党国会議員の密談、判事による職員の不正採用を示すビデオが動画投稿サイトのユーチューブに流出し、判決前に信頼が大きく失墜した。民主党は「憲法裁に圧力をかけ民主党に解党命令を下させるための陰謀」と主張しているが、「物証」があるだけに反論は困難で、司法と与党は窮地に追い込まれた。
最初のビデオはチャット憲法裁長官の側近であるパシット・サクダーナロン憲法裁長官秘書官と民主党のウィラット下院議員が民主党の解党裁判について密談した現場を撮影したもので、10月半ばにユーチューブで公開された。ビデオの中でウィラット議員は民主党を起訴したタイ選挙委員会の委員長に被告側証人として民主党に有利な証言をしてもらうよう、パシット秘書官に働きかけを依頼した。憲法裁は18日、司法の中立性に対する重大な疑いを招いたとして、パシット秘書官を解雇。
次のビデオは憲法裁判所判事2人及びパシット秘書官が憲法裁職員の不正採用を隠す方法を話し合うという内容で、10月29日に公開された。判事が職員採用試験で裁判官の子弟、関係者に試験問題を事前に渡していた事実を示す盗撮ビデオをタクシン派の野党プア・タイ党に握られ、これを知った3人が「ビデオは偽造だと言い抜けよう。」、「プア・タイ党がクリップを公開した場合には、民主党解党裁判と結びつける事により憲法裁判所の信用を失墜させるため編集されたクリップが公開されたと説明するべきである。」と話す場面や憲法裁判所の「元判事に罪を押し付けよう。」などと、ビデオ流出の責任を転嫁しようと画策する場面も見ることが出来る。
一連のビデオの隠し撮りをしたのは、先に憲法裁判所裁判長付秘書官を解任されたパシットは解雇直前に香港に出国し、以来、タイに帰国していない。当局は、先に公開されたクリップが香港からアップロードされていたこと、またパシットが香港に滞在中であることから、「パシットがクリップの公開に関与している可能性がある。」と見ている。
タイの司法はタクシン派と反タクシン派の抗争が激化した2006年以降、タクシン派の政党を2度解党し、同派の首相2人を失職させるなど、一貫してタクシン派に不利な判決を下してきた。こうした経緯から、今回の裁判で反タクシン派の民主党が解党される可能性は低いとみられていた。しかし、相次ぐビデオの流出で、インターネット上には「汚職裁判官がタクシンの汚職を裁く? 笑いごとだ。」といったコメントがあふれ、憲法裁に注がれる視線は非常に厳しくなっている。
憲法裁が民主党解党、アピシット首相ら同党役員の公民権5年間停止に踏み切った場合、民主党は登録を済ませてある新党に議員を移籍させ、新首相を立てて政権維持を図る見通し。ただ、与野党の議席差が接近する上、連立パートナーの中小政党の動向が不透明で、政局の混乱は避けられない。
選挙委員会が発表した、30日にスラタニー県第1選挙区で行われた補欠選挙の非公式集計によると、民主党から出馬した前副首相のステープ・トゥアックスバンが14万9458票を獲得し、プア・タイ党から出馬したウォーラウット・ウィチャイディットの2万1956票を大きく引き離し当選を決め、民主党の議席を維持。1万2060票が誰にも投票しない、2481票が無効票。今回行われた補欠選挙は、ムアンスラタニー郡、カンチャナディット郡、バーン・ナーサーン郡、コ・サムイ郡、コ・パンガン郡、ドーンサック郡及びウィヤンサラ郡で行われ、投票率は53%。
11月01日(月)警察は、不敬罪で身柄を追われていた反独裁民主主義同盟第2幹部団元メンバーのウォラウット・ターナンコン、またの名をスチャート・ナークバーンライ(52)をクルングテープのプラチナム・ファッション・モール内で逮捕。
スチャートは、2008年10月14日に開催された集会で行った演説の内容が、王妃に対する不敬にあたるいとして逮捕状が発行され身柄を追われた後に国外に逃亡していたが、その後タイに帰国し、家族と会うためにプラチナム・ファッション・モールにスチャートが現れたところで、事前に情報を掴んでいた警察に逮捕された。
スチャートは、2008年05月に行われたクルングテープ都知事選出選挙に赤服軍団を代表した無所属候補として出馬し話題になった。
憲法裁判所判事のチャルン・パクディータナークンは、憲法裁判所判事が絡む職員の情実採用疑惑を裏付けるクリップをYoutube上に公開した者を刑事告発する方針である事を明らかに。朝招集された判事会議の席上で決定されたもので、「当該クリップに関する釈明や説明のための記者会見を開く方針はない。」という。
チャルンは、クリップの中で元憲法裁判所事務局長のパイブーン・ワーラハパイトゥーンと共に情実採用疑惑の責任転嫁先として名が上がっていた。判事の代表として記者会見に臨んだチャランは、自らの情実採用への関与を否定した上で「クリップの公開は、長期間にわたり展開されている憲法裁判所の信用失墜を狙った動きの一環として公開されたものである。」と指摘。
チャルンによると、「自分の4人の子供は憲法裁判所の職員採用試験を受験しておらず、クリップの公開により家族の名誉を著しく傷つけられた。」、「疑惑を払拭するには、内部調査だけでは不十分で、外部機関による調査が必要。」とのこと。
チャルンは、国王訓辞に端を発した、野党ボイコット下で行われた2006年04月02日の総選挙の無効判決に向けた各裁判所との調整に動いた人物。クーデター政権時代には法務省次官に就任すると共に憲法起草議会議員。
第9管区警察局副局長を解任されたウィスット警察少将が、この人事を不満としてアピシット首相などを批判している問題で、ウィチアン警察庁長官は、ウィスットが批判を続けていることに対し、「不適切な言動であり、措置を講ずる必要がある。」と述べて、さらに重い懲戒処分が下される可能性を示した。
ウィスットは、「不正への関与が疑われ左遷された。」とされるが、「職務を忠実に遂行したことで、民主党議員の反発を買った。」などと反論。このため、警察当局が懲戒処分の検討を開始したが、ウィスットはいまだに首相や警察庁長官などを批判している。
11月02日(火)政府は閣議の席上で2項目の憲法改正を推進させる方針を確認。推進が確認された項目は、国家間の取り決め事項の国会事前承認を義務づけた第190条及び下院議員の選出に関して規定した第93条から98条で、何れも憲法改正検討委員会(ソムバット・タムロンタンヤウォン委員長)の提案に基づく。今後政党間で調整を行った上で、16日に招集される閣議の際に詰めの協議が行われる予定。
タイ・カンボジア国境委員会(JBC)の国境紛争地に関する3つの覚書承認のための上下院合同議会は、同日中の承認を見合わせ、上下院議員30人で構成された合同委員会を設置し、向こう30日間を目処に覚書の内容の検討を進める方針を決定。
「枠組合意メモによりタイが国境紛争地を失う恐れがある。」として、メモ承認を徹底阻止するため、反タクシン派団体、民主主義市民連合(PAD)及び傘下の愛国団体の支持者約2000人(報道により約1000人)が、国会議事堂前で集会。政府が推進するカンボジアとの国境交渉を承認しないよう、国会に圧力をかけた。集会にはPAD創設者で実業家のソンティ、チャムロン元クルングテープ都知事といったPADの最高幹部が顔を揃えた。
承認見合わせ決定を受け解散を決定し、上下両院合同委員会の検討結果次第では12月11日にクルングテープのマカワーンランサン橋に再集結する方針。連合によると、「問題の覚書はフランスが策定した国境線に基づいており、覚書の承認により紛争地の全てを失う恐れがある。」という。
PADは昨年、自前の政党「新政治(カンムアン・マイ)党」を設立し、タクシン派追放で同盟関係にあった与党民主党と競合関係に移りつつある。来年には下院総選挙が行われる見通しなため、国境問題で強硬姿勢を見せて民主党・現政権との違いを明確にし、保守票の取り込みを狙う模様。
民主党の政党交付金不正流用疑惑の裁判に関連し、ウィラット議員がパシット憲法裁長官秘書(当時)に不正な働きかけをしたとされる問題で、民主党の調査委員会は、「ウィラット議員が長官秘書に面会したのは不適切。」との判断に至ったことを明らかに。
調査委を率いるテートポン議員は、「ウィラット議員は秘書に会うべきではなかった。処分を決めるため、委員会の判断をアピシット党首(首相)に報告する。」と述べている。
ウィラット議員は、「秘書から接触があって面会した。誘導質問があった。」と主張しているが、調査委は、「裁判の最中に裁判所関係者と接触したこと自体が問題。」と判断。
11月03日(水)政府から事業権を得ている企業やマスコミの株式を国会議員が保有することを禁じた憲法違反として、選挙委員会が下院議員28人、上院議員16人の議員資格取り消しを求めた裁判で、憲法裁判所は、下院議員6人が国会議員の株保有に関する憲法265条第2項及び4項に違反と判断し議員失職。
選挙委員会が同様な事由で欠格と判断し憲法裁判所に最終判断を仰いでいた16人の上院議員及び22人の下院議員に関しては何れもシロと判断。
憲法裁から有罪判決を受けたのは、民主党のソムキアット・チャンタワーニット議員(クルングテープ都選出)、プームチャイ・タイ党のブンチョン・ウォントライラット副内相(ナコンラチャシーマー県選出)、チャート・タイ・パタナー党のクアクーン・ダーンチャイヤウィチット副運輸相(アユタヤ県選出)、プア・ペンディン党のキティワタナ・チャイヤンポックモントリー議員(比例区選出)とマリワン・タンヤサクンキット♀議員(スリン県選出)、野党プア・タイ党のプリチャポン・ポンパーニット議員(コンケン県選出)。このうち2人は閣僚だが、閣僚資格には影響しないため、ブンチョン副内相とクアクーン副運輸相は辞任しない模様。空席となった6議席は45日以内に補欠選挙が行われる。
また、これら失職議員は補欠選挙に出馬することも可能だが、プームチャイ・タイ党は、「ブンチョンは総選挙に立候補させる。そのため、補欠選には擁立しない。」としている。なお、現政権は来年末に任期満了となるが、その前に解散総選挙となる可能性もある。連立与党の下院(定数480)議席数は現在、250~260とみられる。今回失職した与党の下院議員は5人で、与野党の差はさらに縮小。憲法裁は近く、与党の中核である民主党の政党助成金の使途違反容疑について判決を下す予定で、有罪で解党、党役員の公民権停止となった場合、政局は流動化する見通し。
タクシンの法律顧問のノパドン・パッタマは、個人の資格で国内和解推進に向けた各界との調整に動いているサナン副首相が、ノルウェーでタクシンと会談した可能性があることを明らかに。
ノパドンは、「ここ4~5日間はタクシンと連絡を取っていないため事実関係の確認は出来ていない。」と断り、「かなり前にサナン副首相とタクシンとの間で会談場所や日時等の設定がされていたことから、サナンがノルウェー訪問の機会を利用してタクシンとの間で国内和解推進に向けた協議が行われた可能性がある。」との考えを示した。ただし、ノパドン自身は、「サナンとタクシンとの間で設定された会談場所や日時に関する情報は持っていな」い。」という。
現在サナン副首相は、ナコンパトム県内のプッタモントンに一時安置展示する予定になっている古代仏典を引き取るために、国家仏教局関連の公務でノルウェーを訪問。
民主党所属のチャルゥン・カンタウォン(比例)、プア・タイ党所属のタヌサック・レックウタイ(ウタラディット県)及びプームチャイ・タイ党所属のウドムサック・ペンナラパット♀(シーサケート県)を中心にした15人(報道により17人)の与野党所属下院議員は、政治的対立解消に向けマイトリーチット(友好)と名付けられた超党派の会派を結成した事を明らかに。
会派代表は、「『現在の社会対立の根源が議員間の対立にある。』との認識を示した上で、対立する議員間の対話推進を端緒とした下院議会内の全議員、全政党間の一致団結体制の創成を目指す事により、同様な効果を力による解決を目指すグループを初めとする社会全体に波及させて行きたい。」と抱負を語った。
11月04日(木)タクシン派団体の反独裁民主主義同盟(UDD)が、ラーチャプラソン地区で行われた集会の強制排除から半年となる今月19日に、同地区で集会を開催する予定。タイ地元紙によると、UDDチャトポン幹部は、「大量の虐殺が行われた現場で、死亡した集会参加者の追悼や現政権への解散を要求していく。」と語っている。
舞台を設置せず短時間で集会を終わらせる予定。集会は、6ケ月目の午後06時を記念して19日18:00から19:00までの予定で開催される予定で、主に死亡した集会参加者の追悼や拘禁されている集会参加者の早期釈放を要求する活動を展開した後に解散する予定。
プア・タイ党所属議員で反独裁民主主義同盟幹部のチャトポン・プロームパンは、「先の憲法裁判所の判決により下院議員資格を失ったブンチョン内務副大臣及びクアクーン運輸副大臣の両名は、大臣を辞職した上で補欠選挙に出馬するべきである。」と述べた。
チャトポンは、「両名が出馬するしないに関わらずプア・タイ党が補欠選挙に勝利する事になると確信している。」と断り、「両名に対して大臣ポストを利用して選挙戦を戦っていると見なされる事を防ぐためにも誠意を見せて大臣ポストから辞職した上で選挙に臨むべきである。」と語った。
下院議員資格を失った2大臣の内、クアクーン運輸副大臣が所属するチャート・タイ・パッタナー党は、引き続き同副大臣がポストを続投することを支持する方針を確認したが、同副大臣が補欠選挙に出馬した場合の大臣ポストの取り扱いに関しては、補欠選挙出馬前に副首相を辞職した民主党のステープ幹事長の前例に関係なく党独自に判断していく方針を明らかにしている。プームチャイ・タイ党所属のブンヂョン内務副大臣は、「党の判断に従う。」と語るに留めている。
憲法裁判所による下院議員資格欠格判断により選挙区選出下院議員5人が失職した事を受け選挙委員会は、議員不在となる5つの選挙区を対象に12月12日に補欠選挙を行う。閣議承認を経て国王認証を受けた後に正式に補欠選挙の日程が公示される。
当初予定では、今月22日から26日にかけて候補者登録受付を行い、12月04日及び05日に期日前投票が行われる予定で、約1600万Bの予算を見込んでいる。
また、議員資格を失った2閣僚に関しては、「閣僚のままでの補欠選挙への再出馬が法的には禁じられていない。」と確認。しかし、出馬議員が選挙期間中に水害被災者支援物資を提供する行為の是非に関しては、別途09日に招集される会議の場で検討が行われる予定。
11月05日(金)09時過ぎクルングテープ都ディンデン区のタイ労働省前の路上で爆発があり、爆発の衝撃でポストの取り出し口が開くなどの被害をもたらしたが、人的な被害はなった。爆発が発生したポストの中には、民主党本部のアピシット首相宛の封書を初めとする3通の封書が入っていたが爆発との関係は不明。爆発発生直前に、バイクに2人乗りした若い男が小型の手製爆弾を投げつけたと見られている。バイクタクシー運転手がポスト前にバイクを止めていたのを目撃。
警察は、「不良グループが世間を騒がす、ないしは脅迫目的で自家製のピンポン爆弾状の爆発物を投げ込んだ可能性が高い。」と見て捜査を開始。また、「事件の背景に政治的な思惑がある可能性もある。」と見て、アピシット首相宛の封書の内容を解析する方針。
クルングテープでは今年04~05月、都心部を占拠したタクシン派市民と治安部隊と衝突し、91人が死亡、1400人以上が負傷。その後も首都圏で爆弾事件が相次ぎ、10月05日には北郊ノンタブリー県のアパートで爆弾が爆発し、4人が死亡、9人が負傷。
タクシン支持派の反独裁民主主義同盟(UDD)は06、07日に東北部ナコンラチャシーマー市で反政府集会。06日午後05時から市内で集会を行い、翌07日朝、洪水で被災した市内の学校で清掃作業を行う。
ナコンラチャシーマーなど東北地方は10月中旬から歴史的な大洪水に見舞われ、現在も数十万世帯が家屋の浸水などで困難に直面している。タクシン派は「洪水対策・復旧支援が十分でない。」として、政府を攻撃する予定。
タクシン派はまた、ラーチャプラソン地区で行われた集会の強制排除から半年となる今月19日にクルングテープ都心のラーチャプラソン交差点で反政府集会を開く計画。UDDのチャトポン幹部は、「大量の虐殺が行われた現場で、死亡した集会参加者の追悼や現政権への解散を要求していく。」と語った。午後06~07時から1時間程度の予定。
アピシット首相は、「憲法裁判所の判決により欠格と判断され下院議員を失職した大臣ポストにある者が補欠選挙に出馬する場合は、大臣のポストから辞職した上で選挙戦に臨むべきである。」との考えを示した。法律では、大臣ポストに留まったままでの選挙への出馬を禁じていない。
アピシット首相は、「民主党の方針に則り、党幹事長のステープ・トゥアックスバンが副首相ポストから辞職した上で補欠選挙に出馬した事を例に挙げ、政界内の慣習は所属に関係なく同一であるべきである。」との認識を示し、「所属政党に関係なく議員を失職した大臣は、ポストから辞職した上で補欠選挙に臨むべきである。」との考えを示した。
また、「議会解散後に、同時点での大臣が次期政権発足まで暫定大臣として大臣職を代行したまま総選挙に臨んでいることと、議員を失職した大臣が大臣職のままで補欠選挙に出馬することとは事情が異なるとして、議会解散後の例を盾にして大臣職のままで補欠選挙に出馬する事を正当化するべきではない。」と指摘。
一方、議員を失職した運輸副大臣のクアクーン・ダーンチャイヤウィチットは、改めて議員失職に関係なくポストに留まる意向を示し、「補欠選挙への出馬に関しては、自らは出馬の用意があるが、出馬の是非や大臣ポストからの辞職の是非の判断に関しては、09日に招集される党会議の決定に委ねる考えである。」と明らかに。
同様に失職した内務副大臣のブンチョン・ウオオントライラットは、「党の方針に従う。」とのみ述べ、今後の去就を明らかにしていない。
プミポン国王は、入院先の都内のシリラート病院でアピシット首相と会談。
アピシット首相はイスに座った国王の足下にひれ伏した後、イスに座り、東北部、中部、南部などで発生した大洪水の状況などについて説明。国王は愛犬を足下に従え、時折微笑を浮かべながら首相の説明を聞いた。首相によると、「国王は被害について強い懸念を示し、長期的な解決策が必要という考えを示した。」という。
国王は体調を崩し、昨年09月19日からシリラート病院に入院。
11月06日(土)タクシンの法律顧問のノパドン・パッタマは、タクシンとチャート・タイ・パッタナー党最高顧問のサナン副首相が現地日付の06日にノルウェー国内のタイ寺院内で和解推進について協議する予定を明らかに。
サナン副首相は、古代仏典引き取りのためにノルウェーを訪問中で、予てからこの訪問を利用してタクシンと面会するのではないかとの憶測が流れていた。ノパドンによると、「ナコンパトム県内のプタモントンに展示するために一時貸し出される古代仏典の引渡式にタクシンとサナン副首相が招待されている。」という。
タクシン派の野党プア・タイ党が、東北部ウドンタニー市で政治集会。汚職で実刑判決を受け国外逃亡中のタクシンは集会場に国際電話をかけ、集まった支持者数千人に対し、「タクシン派が再び政権を獲得すれば、東北部の貧困者救済に注力する。」などと発言し、喝采を浴び、政府の洪水対策の遅れを批判、来年実施される見通しの総選挙での支持を訴えた。集会にはチャワリット元首相(元陸軍司令官)、タクシンの元義弟のソムチャーイ前首相(元法務次官)、アピワン下院副議長らが参加。東北部は10月中旬から歴史的な大洪水に見舞われた。タクシン派の洪水を材料として政府を攻撃し、地盤の東北で支持の拡大を図る模様。
これに対し、首相側近の1人テープタイは、「地方における看過できない動き。東北部の他の県にも波及する恐れがあり、政府は監視を強化する必要がある。」との考え。 農民が人口の大部分を占める東北部は、タクシン派の支持基盤であり、政府は東北部から反政府活動が拡大し、首都圏での大規模な反政府デモにつながることを恐れていると見られる。
タクシンが創設したタイ・ラック・タイ(タイ愛国)党は、それまで政府に顧みられることのなかった低所得者を大衆迎合的な公約で取り込む戦略で2001年の総選挙に勝利して政権の座に就いたあと、次々にバラマキ政策を打ち出して政権関係者に甘い汁を吸わせつつ東北部などにおける支持を盤石にしたとされる。この政治スタイルは、「汚職まみれ」との厳しい批判を招くことになったが、かつて恩恵を受けた農民らはいまだにタクシン派政権の復活を強く希望している。
11月08日(月)05日にクルングテープ都ディンデーン区にある労働省近くの郵便ポストから爆発が発生した事件で、首都圏警察本部は、15歳と14歳の少年2人をディンデーン署近くのサムセーンナイ交差点付近で逮捕し、バイクを押収。2人の少年は取り調べに対して、「イライラしてピンポン型の爆竹をポストの中に投げ入れた。これまでに同様な事を2回繰り返していた。」と語り犯行を認めている。
警察によるとこれまでの事情聴取により、事件の背景に政治的な背景はなく、また爆発が発生したポストの中に入っていたアピシット首相宛の封書とも無関係であることが判明している。また、「少年2人は、自分たちのしでかした事が大きく報じられていた事に気がついていなかった。」という。
民主党解党裁判が絡む民主党による憲法裁判所への働きかけ疑惑や同裁判所判事による情実採用への関与疑惑を裏付けるとされるクリップの公開に関与した疑惑が持たれている、憲法裁判所長付前秘書官のパシット・サクダーナロン所有のパスポートが外務省により失効処理されていたことが明らかに。現憲法裁判所長付秘書官のチャワナ・トライマートが08日朝放送されたラジオ番組の中で明らかにした。
パシットは、問題のクリップが最初にユーチューブ上に公開された時点で香港に滞在中だった事が確認されており、先に憲法裁判所は外務省に対してパシットのパスポートの失効処理を要請していた。
アピシット首相は12~14日に支那と日本を訪問。12日に支那広州を訪れ、第16回アジア競技大会の開会式に出席。13、14日は横浜で開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席。
11月09日(火)ノルウェー訪問中にタクシンと会談したサナン副首相は、会談の席上でタクシンが「和解推進案への支持を表明しタイ人同士が互いを尊重しあう社会の実現を望んでいる。」と語っていた事を明らかに。しかし、タクシンが支持を表明した和解推進案の詳細に関しては、「まだ各界との話し合いが終了していない。」として「明らかにすることが出来ない。」と述べた。
サナン副首相によると、「06日に行われた会談は、事前に約束されたものではない偶然実現したもので、僅か15分間で会談が終了した。」という。
先だってタクシンの法律顧問のノパドン・パッタマは、「タクシンとサナン副首相との間で事前に会談の日程等が決められていたと聞いている。」と語っていた。
また、サナン副首相は会談の際にタクシンに対して、過去を忘れて国内問題解決に向けた取り組みへの参加を要請した事を明らかにしたが、「忘れるべき過去にタクシンが絡む訴追案件が含まれているのか。」との質問に対しては、「個人の問題である。」と語り「和解推進とは無関係である。」とした。
11月10日(水)先に株保有の憲法違反で議員失職となった与党第2党プームチャイ・タイ党所属のブンチョン副内相が、補欠選出馬のため副内相を辞任する可能性が出てきた。関係筋によれば、同党を牛耳るネウィンは、「辞任すべき。」との考えを示しており、このため、党執行部が11月11日にも協議、決定する予定。チャワラット党首(内相)は、「ブンチョンには党の決定に従ってもらう。」と述べた。
憲法裁判所は先に、閣僚2人を含む下院議員6人を株保有の憲法違反で議員失職とした。だが、議員であることが閣僚の要件ではないため、ブンチョン副内相とクアクーン副運輸相(チャート・タイ・パッタナー党)は閣僚ポストに留まっている。
しかし、ステープ民主党幹事長が副首相を辞して下院補欠選に臨んだことから、政権党・民主党は、「下院補欠選に立候補するなら閣僚を辞任すべき。」と迫っている。下院補欠選は12月12日に予定。
憲法裁判所に関する不正疑惑の証拠とされる新たな動画がYouTubeに投稿された問題で、憲法裁判所の判事3人が、「名誉毀損・コンピューター犯罪法違反に当たる。」として弁護士を通じて警察に被害届を提出。
先に投稿された別の動画は、憲法裁職員の不正採用を疑わせるものだったが、新たな動画は、年配の男性が若者2人に対し、憲法裁職員採用の試験用紙を事前に渡していたことを口止めする内容となっている。字幕によれば、2人は判事の親戚という。
一方、最大野党プア・タイ党のチャトポン議員は、被害届提出について、「不正採用が疑われる者を放置したままで、動画投稿の犯人捜しに走るとは驚き。」と批判。
11月11日(木)ノルウェー訪問時にタクシンと面会していた事が明らかになっていたサナン副首相が、所属政党のチャート・タイ・パッタナー党や民主党所属の一部議員だけでなくプア・タイ党所属のタクシン配下の一部議員を取り込んで新党の設立を画策。
「チャート・タイ・パッタナー党がバンハーン元首相に支配されている限り成長の道が閉ざされていると判断した事がサナン副首相が新党設立に動き出した背景にあり、現在サナン副首相に近い国際機関に所属する人物がサナン副首相からの指示に基づき新党設立に動いている。」という。ネーション系の各タイ語メディアが、チャート・タイ・パッタナー党幹部筋の言として報じた。
「サナン副首相がタクシンと面会した際に、政権交代を視野に入れた新党設立に関する協議が行われた。」との憶測が予てから広がっていた。
アピシット首相は、近日中に副首相ポストを対象にした内閣改造案を閣議際に提案する考えを明らかに。「現在空席になっている安全保障事項担当副首相ポストを対象とした改造が行われる。」と見られている。
これに先立ち、副首相を辞任し補欠選挙に出馬した民主党幹事長のステープ・トゥアックスバンが10日付けで正式に下院議員に就任した事に絡んで、アピシット首相側近のシリチョーク・ソーパーが、民主党持ち分の1ポストを対象とした内閣改造が近日中に行われる見通しであることを明らかにしていた。
アピシット首相によると、「現在考えている内閣改造は副首相ポスト1つだけで、先に下院議員を失職したブンチョン内務副大臣やクアクーン運輸副大臣のポスト絡みの改造までは考えていない。」という。
最大野党プア・タイ党のアヌワット議員は、「洪水被災者の救済のため各県に割り当てられた予算が選挙対策に不正流用されている。」と政府を批判。先に株保有の憲法違反で下院議員6人が失職となったことから、12月12日に補欠選挙が予定されているが、「補欠選が実施される選挙区の住民に重点的に支援金が提供されている。」とのこと。
また、アヌワット議員は、「一部の閣僚が先に東北部ナコンラチャーシーマー県で住民に支援金を配ったが、不正が疑われる。」としている。
 アピシット首相は、近くステープ民主党幹事長を副首相に復帰させる考えを明らかにした。 ステープは副首相を辞してスラタニー1区の下院補欠選(10月30日)に出馬し当選。副首相辞任は、「副首相の権限を悪用して選挙を有利に進めようとしている。」との批判があったためで、選挙後に副首相に復帰するとの見方が支配的だった。
また、アピシット首相は、「閣僚のまま選挙に立候補するのは好ましくない。」との考えを改めて示した。これは、先に株保有の憲法違反で議員失職なった6人のうちブンチョン副内相(プームチャイ・タイ党)とクアクン副運輸相(チャート・タイ・パッタナー党)が閣僚のまま補欠選に出馬する可能性があるため。なお、プームチャイ・タイ党とチャート・タイ・パッタナー党は「週明け15日に所属閣僚の辞任について見解を明らかにする。」としている。
11月14日(日)タクシンは、「ビルマ政府によるアウンサンスーチー女史の釈放がタイ国内に於ける人権や民主主義の状況に波及効果をもたらすことになる。」と指摘する声明を法律顧問のノパドン・パッタマを通して発表。声明の中でタクシンは、「国民から愛されている民主主義の象徴であるスーチーの釈放をビルマ政府が決定した事を歓迎し、この釈放を機にビルマ政府により残された政治犯が早期に釈放される事を希望する。」と述べた。
その上にタクシンは、「民主化への流れは国民に安定した政治・経済をもたらす世界的な流れであると指摘すると共に今回のスーチー女史の釈放が、ビルマ国内の国内和解推進及び真の社会的公正の実現へ向けた端緒になる。今回のビルマの動きが東南アジア域内、特に国民が民主主義と社会的公正の実現を熱望しているタイ国内の人権や民主主義の状況に段階的に波及効果をもたらすことになる。」と続けた。
一方、この声明に対して民主党所属のアタポン・ポンラブットは、「もしタクシンがアウンサンスーチーの政治的理想の半分だけでも持ち合わせていたなら国外に逃亡する羽目に陥ることはなかった。」と述べた。この発言の中でアタポンは、「タクシンが人権や民主主義に対して真摯な姿勢を持ち合わせているのであれば、首相在任中にビルマ政府に対してアウンサンスーチーの釈放を働きかけていたはずであるにも関わらず、実際にはビルマ政府と手を組んで自分の息子や傘下の連盟への利益供与に奔走していた。そのような人物はアウンサンスーチーの釈放に乗じて自らとアウンサンスーチーを重ねあわせるような声明を発表するべきではない。」と述べた。
アピシット首相は、「先の大規模反政府デモに関連して逮捕され拘留されている容疑者のうち、弁護士のいない容疑者の保釈を可能とすべく便宜を図る。」と約束。
約180人が拘留中とされるが、50人あまりは経済的理由で弁護士が付いていない。
アピシット首相は、「法の下では誰もが平等なはずだが、貧しさゆえに弁護人を雇えない者もいる。このため、政府が保釈請求の手続きをする上で容疑者を支援する必要がある。」と話している。
11月15日(月)プミポン国王はステープ下院議員の副首相への復帰を12日付で承認。認証式典は19日17:30にシリラート病院内で行われる予定。
ステープは国会議員の株式保有規定をめぐる問題で昨年07月に議員辞職し、今年10月30日に行われたタイ南部スラタニー県第1選挙区の下院補欠選挙に出馬するため、10月08日に副首相を辞任。補欠選で野党プア・タイ党公認のウォラウットを引き離した圧勝で議員に返り咲いたため、副首相に復帰する。
民主党は政党助成金の使途違反で起訴されており、有罪の場合、解党処分を受け、アピシット首相ら違反当時の党役員の参政権が5年間停止される可能性がある。現行憲法では「首相は国会議員から選出する。」と規定されていることから、ステープの補欠選出馬はアピシット首相が失職した場合の後継首相の準備と受け取られていた。
連立与党のチャート・タイ・パッタナー党及びプームチャイ・タイ党は、先に憲法裁判所の判決により下院議員欠格と判断され失職した2人の大臣を補欠選挙に擁立する方針を決定。
補欠選挙に擁立される事が確認されたのは、チャート・タイ・パッタナー党所属のクアクーン運輸副大臣とプームチャイ・タイ党所属のブンチョン内務副大臣。補欠選挙出馬の際に大臣を辞職するべきかの判断に関しては、両党とも当人の判断に委ねるとして党としての方針確認を保留。
一方、両党の決定を聞いたアピシット首相は、改めて「現職の大臣が補欠選挙に出馬する場合は、大臣ポストを辞した上で出馬するのが一般常識上最も適切な対応である。」と語った。首相によると、16日に両氏と面会する機会を持つ予定。タイの法律では大臣職のままでの補欠選挙への出馬や政府許認可事業関連株式所有で下院議員を失職した議員の補欠選挙への出馬を禁止していない。
11月16日(火)法務省特別捜査局は、反独裁民主主義同盟の集会期間中に死亡した89人を死因別にデモ隊が死亡に関与している疑いがあるグループと当局が死亡に関与しているグループとに分けて捜査を進めている事を明らかに。
当局が死亡に関与している疑いがある件は、パトゥムワナーラーム寺内での3人の死亡、アヌソン交差点での兵卒の死亡、ドゥシット動物園前の死亡者、及び日本人カメラマンが死亡した事例で、「法規程に基づき16日付けで国家警察本部に対して捜査の引き継ぎを要請済みだ。」という。日本人カメラマンを含む残り6人は、「UDDと治安部隊のどちらからの発砲で死亡したか不明。」と言う。デモ隊には武装した者たちが紛れ込んでおり、黒服の男たちが自動小銃などで治安部隊に発砲している映像も残されている。
また、89人のうち捜査が完了した18人について、「12人がUDDのメンバーや武装グループに殺害された。」との見解を明らかに。デモ隊が死亡に関与している疑いがある件は、ディンソーでの軍関係者の死亡、BTS線サラデーン駅に向けたM79攻撃による死亡、クルンタイ銀行シーロム支店前での銃乱射による死亡、ラーマ4世通りの検問所に向けた銃乱射による死亡、バンコク銀行本店前での狙撃による死亡、サラシン交差点の検問所に向けたM79攻撃による死亡、セントラルワールド放火による死亡、BIG-Cラーチャダムリ支店前爆破による死亡の8件。
一方、今回の捜査結果に対し、UDD幹部のチャトポン、プア・タイ党議員は、ロムクラオ大佐が殺害されたケースを取り上げ、「UDDは無関係。」と反論。
なお、デモ関連死は計92人とされるが、3人はDSIの捜査開始後に殺害されており、捜査の対象外。
午後武器密売の疑いで逮捕、拘留されていたロシア人、ボウトの身柄を米国に引き渡すため、ポウトを乗せたプライベートジェットがドンムアン空港から米国に向かった。
タイと米国の捜査協力の下、2008年03月にクルングテープで逮捕された「ボウトは、武器密売に関する重要な情報を握っている。」とみられ、米国当局が身柄の引渡しを要求していた。だが、余罪の裁判が予定されていたこともあって、裁判所の許可にもかかわらず身柄引渡しが実現できていなかった。アピシット首相は、「タイはすべきことをした。ボウトの拘留期限も11月20日に迫っていた。」と説明。
11月17日(水)在タイ日本大使館は、タクシン派団体、反独裁民主主義同盟(UDD)が19日夕方からクルングテープのショッピング街ラーチャプラソン交差点で反政府デモを行う模様として、日本人在住者、観光客に注意を呼びかけた。「デモ参加者は1万5000人に上る可能性がある。」という。事務所がラーチャプラソン交差点に面しているクルングテープ日本人商工会議所はデモ当日は交通渋滞・規制が予想されるとして、夕方の来館を極力避けるよう要請。
UDDは今年04月からラーチャプラソン交差点などクルングテープ都心部を占拠し、05月19日に治安部隊により強制排除された。衝突による死者は91人、負傷者は約2000人に上る。
プームチャイ・タイ党のブンチョン副内務相は、東北部ナコンラチャシーマー県で行われる下院補欠選挙に立候補するため、副内務相を辞任する考えを明らかに。一方、チャート・タイ・パッタナー党のクアクーン副運輸相は、前日の時点で「中部アユタヤ県の下院補欠選挙に立候補するため、19日をもって辞任する。」と発表。また、両名とも大臣辞職は個人の判断に基づいたものであると語り、何らかの辞職圧力があったとの憶測を否定。
これら2閣僚は、株保有の憲法違反で先に他の4議員とともに議員失職。しかし、失職議員は公民権停止処分を受けていないため補欠選に出馬が可能で、閣僚は議員であることが要件でなく続投が可能だが、アピシット首相は、「閣僚の権限を悪用との批判を招く。」として、「出馬するなら閣僚を辞任すべき。」としていた。それにもかかわらず、プームチャイ・タイ党とチャート・タイ・パッタナー党は先に、閣僚のまま立候補することを認めたことから、アピシット首相が改めて「辞任の必要性」を強調していた。
与党国会対策委員会は、憲法改正審議の上下院合同議会を23日から24日にかけて開催する方針を決定。この決定は、前日開かれた閣議の席上で政府が下院議員選出に関して定めた憲法93条から98条及び国際条約締結前の国会承認を義務づけた190条の改正を前進させる方針が確認された事を受けたもので、審議では政府案の他に、ウェーン・トーチラカーン(反独裁民主主義同盟幹部)を中心とした民主憲法推進団体が提出した改正案や102人の下院議員の署名を添えて提出された改正案も審議の対象。
政治対立解消・国民和解実現のための取り組みの一環として特別委が打ち出したこれらの案では、議会承認を必要とする国際協定や選挙制度に関する憲法規定の改正が求められている。
一方、チャイ下院議長は、「改正案が提出され次第、与野党及び上院の国会対策委員会と合同議会開催に向けた調整に動く方針である。審議日程に関しては23日前後に開催できる見通しである。」としたが、「審議終了日に関しては、審議が長引くことが予想されるため、今国会期間が終了する28日まで審議が長引く可能性がある。」との認識。
なお、この改憲については、政権党・民主党内でもチュアン、バンヤット両元党首が反対しているとされるほか、最大野党プア・タイ党も「国民の利益にならない。」として、合同会議を欠席する方針を明らかにしている。
11月18日(木)アピシット首相が11月21~24日にロシアのサンクトペテルブルクで開かれる虎保護の国際会議「タイガー・サミット」への出席を取り止めたことが明らかに。タイ政府は「憲法改正に関する国会審議出席のため。」としている。
タイ政府は16日、2008年にクルングテープで逮捕された元ロシア軍将校で武器商のビクター・ボウト(43)を米国に引き渡した。タイ外務省は17日、「犯罪人引渡しに関する国際法とタイの法律に則った措置。タイの裁判所の決定に政治的圧力や干渉は一切なかった。」と説明。ボウト容疑者を乗せたチャーター機は16日にドンムアン空港を離陸し米国に到着。身柄が米当局に引き渡された。
一方、ロシア外務省はそのホームページで、「米政府がタイの政府と裁判所に圧力かけた結果であり、違法な身柄引渡し」と批判。
赤服軍団6月24日グループ幹部のソムヨット・プルゥクサーカセームスックは、民主主義市民連合(黄服)が12月11日に計画しているタイ・カンボジア国境委員会枠組み合意メモの国会承認に抗議する集会に支持を表明。
先に連合は、「枠組み合意覚書によりタイが領土を失う恐れがある。」として覚書の承認に反対を表明し国会承認された場合は抗議集会を開催する方針を明らかにしていた。
ソムヨットは、「国境問題に関しては連合と同一の立場である。」とし、12月11日に連合が抗議集会を開催する場合は、赤服軍団も別の場所で並行して抗議集会を開催する考えである事を明らかにした。
一方、反独裁民主主義同盟幹部のチャトポン・プロームパンが中心になって19日に計画している、強制排除6ケ月目を記念したラーチャプラソン交差点での集会に関しては、同日09:00にクローンプレーム刑務所前を訪れ拘置中の同盟幹部等を激励した後に合流する方針である事を明らかに。
ラーチャプラソン交差点では、赤色の折り鶴を交差点周辺に結びつけたり、20羽の鳩を放つ活動を展開する予定で、1万人を超える赤服軍団が活動に参加する見通し。
反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)幹部のスリヤサイは、議会で手続きが進められている憲法の改正に反対する姿勢を明らかに。
議会の特別委が打ち出した改憲2案は先に閣議で承認され、今月23~24日の上下両院合同会議に諮られることになっている。PADは以前から、現行憲法の改正に対し、「タクシン派への譲歩」などと批判し、受け入れがたいとの姿勢を貫いているが、同2案については、「政権党民主党を支える中堅与党のための改憲であり、国民のための改憲ではない。容認できない。」としている。
また、PADは、改憲に反対する抗議集会を決行する予定というが、ステープ副首相(治安担当)は、「クルングテープはまだ非常事態宣言が適用されており、集会での拡声機の使用が禁じられている。」と述べ、違法行為に走らぬようPADに釘を刺した。
なお、政権党民主党もPADもともに反タクシンだが、PADは街頭活動に重点を置いており、「政治問題は議会で解決すべき。」との姿勢を崩さない民主党とは路線を異にしている。
与党、野党及び上院の国会対策委員会は協議の席上で、憲法改正案審議の上下院合同議会を23日から24日の日程で開催し、25日に決議を行う方針を決定。
合同議会では、政府側から提出された下院議員の選出に関する条項及び条約締結事前承認を義務づけた条項の2件の改正案、ウェーン・トーチラカーン(反独裁民主主義同盟幹部)を中心とした民主憲法改正推進団体提出の改正案及び下院議員102人の署名を添えて提出された改正案が審理の対象。
11月19日(金)朝アピシット首相は、民主党幹部会の席上でクルングテープ都第2選挙区で行われる補欠選挙に前クルングテープ都知事のアピラック・コーサヨーティンを擁立する方針を決定した事を明らかに。
先に憲法裁判所により下院議員欠格と判断され失職したソムキアット・チャーンターワニットが高齢を理由に補欠選挙への出馬の辞退を表明していた。
また、アピラックに関しては、消防車・消火挺調達実行に必要な信用状に署名した事が職務遂行義務違反に該当するとして国家汚職防止取締委員会が検事総局に送検していたが、検事総局側はこれまでに起訴断念の方針を示していた。
今後検事総局と国家汚職防止委員会との合同協議をもってしても検察が起訴断念の方針を変えなかった場合は、サノ・ティヤントーンが絡むアルパイン・ゴルフ上用地不正収容疑惑の場合と同様に国家汚職防止委員会が独自に最高裁判所政治家刑事部に起訴する事もあり得る。
また、アピシット首相は、コンケン県第5選挙区で行われる補欠選挙に議員経験がないアティッパラット・タットピチャヤーンクーンを擁立する事を明らかに。「教育者として地元の教育責任者を長年勤めてきた実績を評価した上での決定だ。」という。
これまで、プア・タイ党は、「民主党の東北部に於ける人気を図る上でもプア・タイ党はコンケン県第5選挙区の補欠選挙に候補者を擁立するべきである。」と挑発し続けていた。
夕方過ぎ05月19日の強制排除から6ケ月目を記念してクルングテープのラーチャプラソン交差点に集結していた反独裁民主主義同盟・赤服軍団は、当初予定通りエラワン廟前での死亡したデモ参加者への追悼式典等を行い19:00前に解散を宣言し平穏裏に集会を終了。参加者は数千人に上った。集会には、狙撃され死亡したカッティヤ・サワディポン少将の娘の姿も見られた。
デモの期間中には、治安部隊とデモ隊の衝突や爆弾攻撃、銃撃などで90人あまりが死亡したが、治安部隊による発砲のほか、デモ隊と行動を共にしていた武装グループによる攻撃で死亡した人も少なくない。また、UDDがデモ終結を宣言した直後、暴徒化したデモ隊が放火、略奪という暴挙に出て厳しい批判を浴びたためか、UDDはその後しばらく目立った動きを見せていなかった。
最近になってUDDは犠牲者追悼集会を何度か行っているが、これについては、「タクシン派がいまだに健在であることを示すことが目的」との見方が支配的。
集会終了宣言を終え参加者が引き上げを開始した19:15頃、グランド・ハイアット・エラワン・ホテル前の路上で爆発が発生し、近くを通りかかったバイクタクシー運転手の男性(41)が軽傷。「大型の爆竹状の物が使用された。」と見られている。軽傷を負った男性によると、「バイクに乗った黒い服を着た男が何らかの物を地面に投げつけた直後に爆発音が聞こえた。」という。
11月20日(土)非常事態宣言下の管理機構、非常事態解決対策本部(CRES)が、タクシン支持団体、反独裁民主同盟(UDD)の集会用に用意されたTシャツ、写真、イラスト、ビラなどの配布禁止を命じたことについて、アピシット首相は、「社会不和のエスカレートを招きかねない。禁止令の再考を求めたい。」と述べ、CRESに命令取り下げを促した。
デモ・グッズの配布禁止命令は、大規模デモ終結からちょうど6ケ月経過した19日にUDDが「追悼集会」を予定していたことから、これに合わせて発せられた。この禁止命令に違反した場合には、2年までの禁固刑、4万Bまでの罰金刑が科せられる。
アピシット首相は、「王室に対する不適切な言動などを懸念して禁止令を発したものと理解している。だが、これは治安対策の強化で対応できる。禁止命令はかえって亀裂を大きくしかねない。」と危惧を示した。
11月21日(日)ウィチアン警察庁長官は、反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)とタクシン支持団体、反独裁民主同盟(UDD)に対し、衝突を避けるため同じ地域で抗議集会を行わないよう警告。
以前から現行憲法の改正に反対しているPADは、改憲2案が23~24日の上下両院合同会議で審議されることから、「国民の利益にならない。」などとして、国会議事堂前で改憲に反対する集会を予定。
また、旧1997年憲法の復活を求めているUDDも憲法改正に反対して抗議集会を行う可能性がある。
過去にPADとUDDのデモ隊が衝突し、負傷者が出たことがあるが、ウィチアン長官によれば、「治安当局は深刻な事態に発展するとは考えておらず、国会議事堂前での集会を禁止する考えはない。」とのこと。
11月22日(月)ステープ副首相は、「クルングテープ都に適用されている非常事態宣言が近く解除される。」との見通しを示した。非常事態宣言は、タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)がクルングテープで反政府活動をエスカレートされたことから、04月07日に発令。適用地域はすでに大幅に縮小されているが、クルングテープは反政府勢力が比較的活発な動きを見せており、未だに宣言が解除されていない。
また、ステープは先の下院補欠選挙出馬に伴い、副首相を辞任し(補欠選後に復帰)、非常事態宣言下の管理機構、非常事態対策本部最高責任者のポストからも外れたが、「プラウィット国防相がセンターの最高責任者の役目をしっかり果たしている。」として、復帰する考えのないことを明らかに。
11月23日(火)タイで憲法改正に関する国会審議が開始。連立政府与党側が下院の中選挙区を小選挙区に戻す、国際協定調印に国会の承認を義務付けた条項の削除の2点の改正を求めており、25日に採決の予定。
小選挙区制は連立パートナーの中小政党が「中選挙区は資金力がある大政党に有利だ。」として導入を要求。国際協定については自由貿易協定(FTA)交渉などの足枷になると判断。タクシン派の野党プア・タイ党は選挙制度の変更について、「次期総選挙を有利に運ぼうとする与党側の策謀。」(チャルーム元内相)として反対する構え。
現民主党政権と同盟関係にあった反タクシン派団体、民主主義市民連合(PAD)は、国会議事堂前で改憲に抗議する数百人(報道により1000人)規模の集会を開催。当局が予想していた1万人を大きく下回った。
集会では、PAD創設者で実業家のソンティは「改憲に反対するわけではないが、国民投票を行うべきだ。」と主張。PAD幹部らは、「首相は改憲では国民投票を行うことを約束したはず。」と指摘。「狡猾だ。」などと首相を厳しく批判。大きな混乱はなく、周辺道路が渋滞することもなかった。
国家警察本部のウィチアン本部長は、クルングテープやチエンマイ県内で発生したM79発射事件に関与した容疑で、ウタラディット県ムアン郡ターイット区サムラーンルン通り119番地(報道によりピッサヌローク県出身)のワンロップまたはポーム・ピティプロム(27)、プレー県ソーング郡バーンクラーング区165/1番地のソムキットまたはキット・マークワング(37)、サムットプラカーン県バーングボー郡グローングダーン区13/2番地のワンチャイまたはカイ・サングカオ(34)、ナコンパトム県ドーントゥム郡バーンルワン区57/3番地のアナンまたはチアン・メーロット(31、報道により年齢不詳)及びナコンサワン県パークナムポー郡ダオドゥン区39/67番地のチャチャイまたはエム・ポカーヌプラープ(30)を逮捕し、銃器や通信機、爆発性物質、信管等を押収したことを明らかに。
22日昼過ぎにチエンマイ県裁判所発行の逮捕状に基づき逮捕されたウォラップの供述に基づき残りの4人が逮捕された。また「ワンロップは、チエンマイ県内で4箇所及びクルングテープ内8箇所で発生したM79発射事件に関与していることを認めている。」という。
ワンロップが関与を認めているのは、チエンマイ県内に関しては、04月04日に県都内で発生したマクロ駐車場及び家具工場の2箇所に向けたM79発射、09月06日にメーリム郡内で発生した軍基地に向けたM79発射及び09月12日に県都内で発生したネーウィン・チットチョープの岳父系企業に向けたM79発射で、またクルングテープ内に関しては、03月16日にチャトゥチャック区内で発生したアカラトーン前行政裁判所長宅近くの民家に向けたM79発射、04月10日に発生した首相官邸内のタイクーファー・ビル等に向けた3発のM79発射、04月28日に発生したバンコク銀行タリンチャン支店に向けたM79発射、05月14日に発生したプラトゥーナムの高架からインドラ・リージェントホテル方向に向けた4発のM79発射、05月16日に軍が強制排除の準備を進めているとの情報に基づき行われたルムピニー公園に向けた60発のM79発射及び05月18日から19日にかけての強制排除に乗り出した軍に向けた120発のM79発射。
元軍人で武器の扱いを熟知しているというワンロップは、「2009年04月の軍によるデモ隊に対する仕打ちを目の当たりにして、報復のために犯行に及んだが、自分は反独裁民主主義同盟や赤服軍団とは無関係で、自分の目的を達成するため赤服軍団になりすまして自警組織員になっていただけである。」と供述。M79の入手元に関しては、「隣国との国境付近で入手した。」とのみ語り、詳細については語っていない。
赤服軍団6月24日グループ幹部のソムヨット・プルクサーカセームスックは、「憲法改正に反対するため国会議事堂前に集結している民主主義市民連合のデモ隊の数が少ないのは、活動に対する民主党からの支持を得られていないからである。」と指摘。「赤服軍団が同様な抗議集会を開催すれば、5000人を下らないデモ隊が集結するはずだ。」という。また、ソムヨットは、「政府による二重基準により、連合に対してのみ拡声器の使用が認められている。」と指摘。
11月24日(水)アピシット首相は、「来年01~03月に下院を解散する可能性はあるのか。」との報道陣の質問に対し、「可能性はある。来年初めかもしれない。」と返答。これは、政府主導で打ち出された改憲2案に反対している反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)幹部のソンティが、「2案が議会で否決された場合、下院を解散すべき。」と述べたことに対する質問。
ただ、首相は、「ソンティの考え方は理解不能。」と指摘。「改憲案否決を理由として下院を解散するつもりはない。」とのこと。
なお、現在の民主党を中核とする連立政権は、パラン・プラチャーチョン党などの解党処分で崩壊した2008年01月発足のタクシン派政権の後を継いで誕生しており、4年の任期は11年末に満了、総選挙となる。しかし、アピシット首相は、「条件さえ整えば、早期の解散総選挙の可能性もある。」としている。
11月25日(木)上下院合同議会は、タクシン支持団体、反独裁民主同盟(UDD)」幹部ウェーン・トーチラカーンら有権者7万人以上が提出した改憲案も審議されたが、222対235で否決。123人が棄権。
この採決に先立ち、プア・タイ党所属議員で反独裁民主主義同盟幹部のチャトポン・プロームパンは、同案が否決された場合は議場から退席する意向を示していた。
今後、下院議員102人連名で提出された憲法改正案及び政府から提出された2つの憲法改正案の合計3つの改正案の採決が行われる。
上下院合同議会は、民主憲法改正推進団体提出の憲法改正案に続き、プームチャイ・タイ党、チャート・タイ・パタナー党2党の議員102人(報道により123人)の議員の署名を添えて提出された憲法改正案を148対177で否決。212人が棄権。
今後、政府から提出された2つの憲法改正案に対する採決が行われる。
プア・タイ党所属議員で反独裁民主主義同盟幹部のチャトポン・プロームパンは、「政府提出案が否決された場合には首相は責任を取るべきである。」と述べていた。
上下院合同議会は、11月23~24日の上下両院合同会議で審議された政府が提出した憲法改正案2案のうち、下院議員の選出に関して定めた憲法93条及び98条の改正案に対する採決が行われ、上下院議員総数620人の半数を超える330人が賛成票を投じ可決。156人が反対票を投じ、34人が棄権。
今後、残りの国際条約事前承認を義務づけた条項の改正案の採決が行われる。の採決が行われ、閣議承認の2案が第1読会を通過。この2案は、選挙制度に関する93条および98条、議会承認を必要とする国際条約に関する190条の改正案。
国家警察本部のウィチアン本部長は、先に反独裁民主主義同盟の集会期間中を中心にチエンマイやクルングテープ内12箇所でM79を発射した容疑で5人が逮捕された件に絡んで、主犯格のピッサヌローク県出身のワンロップまたはポーム・ピティプロム(27)が関与を認めているチエンマイ県4箇所で発生したM79発射に共犯として関与した2~3人の逮捕状請求を視野に証拠固めを進めていることを明らかに。
またウィチアン本部長は、今回の逮捕に絡んで、ノンタブリー県バーンブワトーン郡内のアパート室内で発生した爆発事件との繋がりが浮かび上がっていることを明らかにしたが、「詳細に関しては現時点では明らかにする事ができない。」とした。
一方、デイリーニュース紙が、主犯格のワンロップがボランティア救助隊員として所属していたウタラディット県県都内ターサオ区の首長の言として報じたところによると、「ワンロップは反独裁民主主義同盟(赤服軍団)の集会期間中に同盟の会員になると共にカッティヤ・サワディポン少将が統率していた自警組織員として活動していた。」という。
ワンロップは初期段階の事情聴取に対して、「クルングテープのボーべー市場内で働いていた2009年04月に軍による赤服軍団に対する仕打ちを目の当たりにし怒りを覚え、軍に対して報復する機会を窺うために赤服軍団のふりをして自警組織に所属したが、自分自身は同盟や赤服軍団とは無関係である。」と供述していた。
21時過ぎ上下院合同議会は、政府が提出した国際条約の事前国会承認を義務づけた憲法190条の改正案を、上下院議員総数620人の半数を超える354票の賛成で可決。19人が反対。17人が棄権。またプア・タイ党所属議員は議場から退場し投票に参加しなかった。
これにより、政府から提出された2つの憲法改正案の両方が可決。
11月26日(金)最大野党プア・タイ党の議員6人が、政府の改憲2案に反対するとの党の方針に反したことから、追放される可能性が出てきた。 先の上下両院合同会議では憲法改正を求める4案が審議され、うち政府の2案だけが第1読会を通過した。これに伴い、第2読会、最終読会に向け2案を精査する委員会が設置。プア・タイ党は2案を支持しないことを決めたが、同党議員のうち6人が同委員会に参加することになった。 プア・タイ党倫理規律委員会のパデムチャイ委員長は、「6人の行為は党の方針をないがしろにした恥ずべきもの。」と非難。「党に留まりたいなら、委員を辞めるべき。」と、党からの追放も辞さずとの姿勢。
11月27日(土)タイの政権与党の民主党の政党助成金2900万Bの使途違反容疑に関する裁判の判決が29日にも下る見通し。有罪の場合、民主党は解党処分を受け、アピシット首相ら違反当時の党役員の参政権が5年間停止されるとみられる。その場合、民主党はすでに政党登録を済ませた予備の政党に党所属の下院議員を移籍させ、新首相を立てて政権維持を図る模様。
民主党はプミポン国王の諮問機関で多方面に影響力を持つ枢密院と実力による政治介入の伝統を持つ軍の後押しを受けており、今回の裁判も当初は無罪が濃厚とみられた。しかし、今年10月以降、裁判を担当する憲法裁の事務方幹部が民主党議員と密談したり、憲法裁判事が職員の不正採用に関わったことを示唆する盗撮ビデオが動画投稿サイトのユーチューブに流出し、ビデオに撮影された判事の1人が26日、裁判から外れることが決まった。憲法裁に関する盗撮ビデオは他にもあるが、政府はこうしたビデオのタイからの閲覧を遮断している。
タイの司法はタクシン派と反タクシン派の抗争が激化した2006年以降、タクシン派の政党を2度解党し、同派の首相2人を失職させるなど、一貫してタクシン派に不利な判決を下してきた。現政権は2008年12月に憲法裁が当時のタクシン派与党を選挙違反で解党、政権が崩壊した後に、民主党がタクシン派の一部などを取り込み発足。
11月28日(日)プア・タイ党所属議員で反独裁民主主義同盟幹部のチャトポン・プロームパンは、民主党解党審理が結審し同日中に解党の是非に関する判断が下される29日に憲法裁判所前に集結する事がないよう同盟及び赤服軍団関係者に要請。「憲法裁判所前の集結が同盟・赤服軍団弾圧の材料として利用される恐れがある。」という。
アピシット首相は定例政見放送の中で、改めて「下院議会の解散は、国内情勢が正常化に向かっていることが条件になる。」との考え。
これは、29日に政党助成金2900万Bの不正流用疑惑に絡む民主党解党審理が結審し、同日中に解党の是非に関する判断が下されると見られていることに絡んで、「もし解党判断が下された後に議会を解散せずに後任首相を選出する行為は不適切である。」、「そのまま後任首相を選出する行為は社会対立を助長することになる。」等の声が上がっている事を受けたもの。
アピシット首相によると、「解党判決が下され自らが首相を失職した場合は、内閣内から暫定首相が指名され、その後下院議会内で後任の首相指名が行われることになる。」という。
放送後のインタビューの中でアピシット首相は、「解党審理に対する憲法裁判所のあらゆる判断を受け入れる用意ができている。」としたが「、解党判決後の後任首相候補が既に指名されているとの憶測や、既に解党後の党員受け皿政党が設立されているとの憶測に対しては、まだそのようなことは考えていない。」と語るに留めている。
また、アピシット首相は放送の中で、「クーデターによる変化を欲している特定の集団が存在している。」と確認。「政治家や下院議員は使えないと考え、クーデターにより『何らかな特別な物』を得る事を期待している集団がクーデターを欲している。」という。
政権党の民主党幹事長のステープ副首相は、訪問先の南部チュムポン県で開かれた会合で同党関係者約600人を前に、反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)とタクシン支持団体、反独裁民主同盟(UDD)がともに衛星テレビなどのメディアを利用して支持者を動員して政治活動を展開していることが過去3~4年の政治的な対立・混乱の原因と指摘。「PAD最高幹部ソンティとタクシンはともに悪人。」と非難。同時に、「PADやUDDの政治活動が大勢の人に迷惑をかけているにもかかわらず、市民の多くがこれに反対しないのは残念。」との見方を示した。
さらに、PADが12月11日に国会議事堂前で、タイ・カンボジア合同国境委員会の合意事項の議会承認に反対する抗議集会を予定していることから、ステープ副首相は、南部の民主党支持者に対し、集会に参加しないよう呼びかけた。これは、これまでのPADの集会に南部や中部から民主党支持者が多数参加していていたため。
民主党もPADも反タクシン陣営で、PADによる空港座り込みなどがタクシン派政権の崩壊と現民主党政権の誕生に繋がったとの見方が支配的だが、路線が異なるため民主党とPADは正式に共闘を組んだことはない。また、PADは、現政権誕生後は目立った政治活動をしていなかったが、「国境問題や改憲問題における政府の姿勢は看過できない。」として、再び抗議活動を活発化させる姿勢を見せている。
11月29日(月)午後憲法裁判所は、与党民主党による政党助成金2900万Bの不正流用問題について、請求を棄却。「選挙委員会による提訴が法的な期間内に行われなかった。」として、手続きの過失が棄却の理由。裁判官6人のうち2人が解党すべきとし、4人が解党すべきではないとの判断を下した。
審理では、解党の是非を判断する上で適用されるべき政党法が1998年に制定されたものなのか、訴因発生後にクーデター政権により制定された2007年に制定されたものなのかで争われたが、憲法裁判所は、そもそも昨年12月17日の時点で民主党を解党するべきであると判断していたにも関わらず、法で規定された15日以内の解党請求を怠っているなど、選挙委員会に法手続上の過ちがあったと指摘し請求を棄却。
1998年政党法には党幹部の向こう5年間にわたる被選挙権剥奪の規定がないが、タイ・ラック・タイ党に対しては、クーデター政権により制定された2007年政党法に基づき解党判決が下され、党幹部に対して向こう5年間にわたる被選挙権剥奪処分が下された。
民主党に解党判決が下されていた場合、、アピシット首相ら違反当時の党役員は公職を失職の上、参政権を5年間停止されるため、政局の混乱が懸念されたが、無罪判決でこうした事態は回避された。ただ、司法判断で2007年と2008年に自派政党が解党されたタクシン支持派が「司法のダブルスタンダード(二重基準)」という批判を強め、抗議活動を激化させるのは必至。
タイでは重要な裁判の判決言い渡しは数時間にわたる場合が多いが、今回は法的手続きで門前払いした形で、1時間もかからず終了。無罪とわかった瞬間、法廷内にはタクシン派支持者によるとみられる怒号が響きわたり、騒然とした雰囲気に包まれた。テレビ各局の記者、キャスターも驚きの表情を隠せない様子だった。
タイの司法はタクシン派と反タクシン派の抗争が激化した2006年以降、タクシン派の政党を2度解党し、タクシン派の首相2人を失職させるなど、一貫してタクシン派に不利な判決を下してきた。アピシット政権は2008年12月に憲法裁が当時のタクシン派与党を選挙違反で解党、政権が崩壊した後に、民主党がタクシン派の一部などを取り込み発足した反タクシン派政権。中核の民主党はプミポン国王の諮問機関で多方面に影響力を持つ枢密院と実力による政治介入の伝統を持つ軍の後押しを受けており、今回の裁判は当初から無罪が濃厚と見られていた。
しかし、今年10月以降、チャット憲法裁長官の側近であるパシット憲法裁長官秘書官が民主党議員と密談したり、憲法裁判事が職員の不正採用に関わったことを示唆する盗撮ビデオが動画投稿サイトのユーチューブに流出、ビデオに撮影された判事の1人が判決直前に裁判から外れるなど、憲法裁への圧力が高まっていた。憲法裁に関する盗撮ビデオはほかにもあるが、政府はこうしたビデオのタイからの閲覧を遮断している。一連のビデオの鍵を握るとみられるパシットは10月半ば、憲法裁から解雇される直前に香港に出国。判決公判の数日前に、「憲法裁が影響力のある人物の指示で動いている。」と示唆する自演のビデオをユーチューブに投稿し、憲法裁に法に基づく公正な判断を下すよう求めた。
政権党・民主党が政党交付金2900万Bを不正流用したとの訴えを憲法裁判所が訴訟手続違反を理由に退けたことに対し、最大野党プア・タイ党の広報担当プロムポンは、「不正の有無を明らかにすべく、プア・タイ党が民主党を相手取り憲法裁に新たな訴訟を起こすことを検討中。」と明らかに。
憲法裁は、訴訟手続上の不備を理由に選挙管理委員会の訴えを無効としたが、プア・タイ党では、「民主党の潔白が証明されたわけではないため、新たに訴訟を起こし、不正の有無を明確にすべき。」と考えている。
なお、民主党は2億5800万Bに及ぶ不正献金を受けた疑いでも訴えられており、有罪となれば、解党と党役員の公民権5年停止という処分を受ける見通しだが、民主党は選管の手続き違反を指摘しており、今回同様、訴えが退けられる可能性が高い。
法務省特別捜査局が、プア・タイ党議員で反独裁民主主義同盟幹部に対して認められていた保釈の取り消しを検事局に請求していたことが明らかになった。検事局が確認。
チャトポンに関しては、赤服軍団メンバーで現在特別捜査局の重要証人として保釈中の元俳優のメーテイー・アモンラウティクンが、「チャトポンから電話で脅迫を受けた。」として、チャトポンに認められている保釈の取り消しを特別捜査局に要求しており、特別捜査局は国会会期終了を受けて保釈取り消しの請求を検事局に対して行ったと見られている。
この件に関してチャトポンは、「生まれてこの方メーティーと直接電話で話したことがない。」と語り脅迫したとの指摘を否定し、特別捜査局に対して証拠の音声を公開するよう要求。
憲法裁判所が政権党の民主党の政党交付金不正流用疑惑の訴えを退け、民主党の解党が回避されたことに対し、タイ工業連盟(FTI)のパユンサク会長は、「民主党が引き続き政権を担うことができて安堵した。」と述べた。その一方で、訴訟却下に反政府勢力が反発して街頭デモを展開する恐れがあるとして、政府に万全の治安対策を求めた。04~05月にかけて大規模な反政府デモが行われ、経済的にも大きな損失をもたらすことになったが、パユンサク会長は、「デモはもうたくさん。」と訴えた。
また、即席めん最大手、タイプレジデントフーズ社のピパット社長も、「ビジネスには政治の安定が最も大切。」と述べ、反政府デモ激化などへの懸念。
11月30日(火)政権党の民主党の政党交付金不正流用疑惑の裁判が提訴手続きの問題を理由に民主党の責任の有無を明らかにせずに幕を閉じたが、検察庁は、「民主党の不正政治献金疑惑の方はまったく異なるケース。」と指摘し、「憲法裁で審議が行われて有罪か無罪かが明らかになる。」との見通し。
この疑惑は、民主党が2005年にセメント大手、TPIポーリン社から法定限度を超える2億5800万Bの献金を受け、これを報告しなかったというもの。「有罪なら、解党と党役員の公民権5年停止という処分は避けられない。」と見られている。
民主党は、この疑惑についても、訴えの却下を勝ち取るべく、「提訴の手続きに問題があった。」と主張しているが、検察庁は「受け入れがたい。」として争う姿勢。
最大野党のプア・タイ党の広報担当プロムポンは、「政権党の民主党の政党交付金不正流用疑惑の訴えが憲法裁に却下されたことで再び司法の二重基準に社会の関心が集まることになった。国民が司法に不信感を抱いている状態を改善することに繋がっていない。国民和解の実現にも役立たない。」と批判。
また、プア・タイ党では、12月01日にも法律専門チームが訴えの却下が合法か否かを検討する予定で、その結論に基づいて、民主党を政党交付金不正流用で提訴するか否かを決定するとのこと。
関係筋によれば、2006年09月の軍事クーデターでタクシン政権が倒されたあと、タクシン創設のタイ・ラック・タイ党、タクシン派のパラン・プラチャーチョン党が解党処分となり、また、タクシンが職権乱用で禁固2年の有罪となったことなどから、タクシン派は「裁判所は現政権寄り。」と批判。これが「司法の二重基準」という批判の背景となっている。
プア・タイ党所属議員のウィチャーン・ミンチャイヤナンは、民主党解党裁判で解党請求棄却の判決を下した憲法裁判所の裁判官6人に対するに対し裁判官の資格を剥奪するため、訴訟する方針。
前日の判決についてプア・タイ党ウィチャーンは、「当初から解党請求手続きに問題があるのであれば、裁判所は3~4ケ月もかけて調査する必要があるのか理解できない、民主党の政党助成金2900万Bの問題もうやむやになってしまった。今後裁判官6人の資格を剥奪するため、訴訟する考えである。」、「憲法裁判所が言う『公正を期した。』との言葉が国民の心にどのように響いたか憲法裁判所判事は自問するべきである。」と語っている。
中央選挙管理委員会による民主党の政党交付金不正流用疑惑の訴えが憲法裁に却下されたことから、「中央選管委員の間からアピチャート委員長の辞任を求める声が出ている。」という。この訴えは、政党法に基づいて政党登記責任者であるアピチャート委員長の名で行われたものだが、憲法裁は「その手続きに不備があった。」と判断した。
また、アピチャート委員長は、「『中央選管の責任』として、委員全員の辞任を口にしている。」とされるが、他の委員らは、「責任はすべて委員長にあり、委員長1人が辞任すべき。」と反論。
12月01日(水)までに反独裁民主主義同盟で現在国外逃亡中とされているアリスマン・ポンルゥアンローンと名乗る人物が、来るべきクーデターに備えるよう呼びかけるメッセージを赤服軍団支持者宛に送信していたことが明らかに。現在、赤服関連のサイトやプラチャータイの掲示板等にメッセージが転載されている。
アリスマンと名乗る人物はメッセージの中で、「憲法裁判所の民主党解党請求棄却決定がクーデター実行に向けた最初の爆発で、11日に予定されている民主主義市民連合(黄服)の集会がクーデター実行のための環境を整える2発目の爆発になる。」と指摘。
その上で、「クーデターの実行及び絶対王制型官僚主義者の息がかかった軍による反クーデター派の弾圧により大地は血に染まり、独裁に反対する反クーデター派は友好国に亡命政府を樹立し、政界各国に国民の闘いを訴えることになる。」、支持者に対して、「クーデターが実行された場合は、国民の殺害を指示した人物の本当の名前を国際社会に伝えるため声高に叫び、真の民主主義を実現させるためあらゆる手段を講じて闘っていくべきである。」と訴えた。
憲法裁判所が、中央選管による提訴に手続上の不備があったとの理由で、民主党の政党交付金不正流用疑惑の裁判を打ち切ったことで、中央選管を批判する意見が出ているが、中央選管の委員らが、「手続きは適正だった。」と正当性を主張していることが明らかに。
政党法では、政党登記責任者(アピチャート中央選管委員長)は政党の不正を認知してから15日以内に解党処分を憲法裁判所に求めることが規定されている。今回、憲法裁は、不正認知を昨年12月17日とし、今年04月26日の提訴を無効とした。
だが、ソットシー中央選管委員は、「昨年12月17日は委員長が調査委の設置を決めた日にすぎず、調査委の報告に基づいて中央選管が提訴を決めた今年04月12日が始点となり、このため、04月26日の提訴になんら問題はない。」と主張。
さらに、今回の提訴が、憲法裁がタイ・ラック・タイ党やパラン・プラチャーチョン党などの解党を決めた際の手続きに則ったものであることを強調。そのため、ソットシー委員は、「我々がとった手続きは法に則ったもの。責任をとって辞任する必要などない。」としている。
午後タクシン派団体、反独裁民主同盟(UDD)議長代行のティダー・ターウォンセート♀と幹部のチャトポン・プロームパンが共同記者会見を開き、10日の憲法記念日にクルングテープの民主記念塔前で集会を開催する方針を明らかに。集会は、10日17:00から開催される予定で、今年04月10日に民主記念塔周辺で発生した衝突により死亡したデモ参加者への追悼関連行事や社会的公正を訴える活動を展開する方針。19時に鳥を放す式典を行う。参加者は1万人以上を見込んでいる。
またUDDは、13日午前10時に在タイ日本大使館前で、04月10日の暴動の際に流れ弾に当たり死亡した村本博之に関連した集会を行う予定。
ティダーは、現在拘置中のウェーン・トーチラカーンの夫人で、先週に同盟議長代行に就任していた。
この発表に先立つ朝、赤服軍団6月24日グループのソムヨット・プルックサーカセームスックは、10日に予定されている集会の際に民主記念塔近くにあるラタナコーシン・ホテル(ローヤル・ホテル)内で「王室と憲法」と題したセミナーを開催することを明らかに。セミナーには、タマサート大学教養学部教授のソムサック・チャムティーラサクンやチュラーロンコン大学芸術学部教授のスターチャイ・イムプラスート等が出席する予定。
反タクシン派団体、民主主義市民連合(PAD)は12月11日にクルングテープのラチャダムヌン通り、国連事務所近くで集会を開く計画。カンボジアとの国境交渉で譲歩しないよう政府に圧力を掛ける
マティチョン紙によると、反独裁民主主義同盟の自警組織に所属していた自称ウタラディット県ファークター郡ソーングホング区49/1番地在住のナローングロート・プラマーラー(27)がウタラディット県内で記者会見を開き、「M79発射で逮捕されたワンロップ・ピティプロム(26)が自警組織員に施される訓練を受けていた証拠として公開された写真に写っている人物は自分である。」と訴えた。問題の写真は、民主党のテープタイ党首付報道官が公開し話題になっていた。
ナローングロートによると、「問題の写真は、02月24日に30人のメンバーと共に自警組織に施される訓練を受けた際に撮影されたもので、カッティヤ・サワディポン少将配下の人物が訓練講師を務めたが、訓練自体は参加者への便宜提供や交通整理手法の講習や身体能力の検査だけで一日で終了していた。」という。また、「訓練日にはプア・タイ党のタヌサック・レックウタイ(副党首)やクリサナー・シーラック♀等が講師団出迎えのため訓練会場に現れた。」という。会見は、クリサナー付秘書同席の上で行われた。

← 12月02日11時30分に現場検証中のワンロップ・ピティプロム(26)。

関係筋によれば、憲法裁判所は12月半ばにも民主党の不正献金疑惑に判決を下す見通し。これは、民主党が2005年にセメント大手のTPIポーリン社から法定限度を超える2億5800万Bの政治献金を受け、これを当局に報告しなかったというもの。有罪となれば、解党、アピシット首相を含む当時の党役員の公民権停止という処分は避けられないと見られる。
この裁判は、政党交付金不正流用疑惑同様、中央選管が提訴したもの。ただ、中央選管関係筋は、「判決の日程は決まっていないはず。」としており、チャラン憲法裁判事も、「審理スケジュールを決める話し合いがまだ行われていない。」と述べている。
12月02日(木)反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)が領土問題における政府の姿勢に反発してクルングテープで抗議集会を行うとしていることなどから、アピシット首相が近くPAD首脳と話し合う意向。アピシット首相と会談した「多色派」のコーディネーター、トゥンが明らかに。
領土問題では、PADは、「カンボジアとの交渉でタイが不利になる。」として、タイ・カンボジア合同国境委員会での合意内容の議会承認に反対しており、「議会承認を阻止すべく11日に都内マカワンランサン橋周辺で集会を決行する。」と予告している。PAD最高幹部の1人、チャムロン元クルングテープ都知事は、「要求が受け入れられるまで抗議を続ける。」と明言。
関係筋によれば、『政府としては、抗議集会は避けたいところだが、アピシット首相は、『平和的で法を破らなければ問題ない。』と述べて、力ずくで止めさせることはない。」とのこと。
また、タクシン派とされる「6月24日民主グループ」が「憲法改正などに絡んで政府を批判すべく12月末まで黒服を着用する。」としているが、首相は、国王陛下誕生の祝賀行事などが予定されていることから、「国内の雰囲気や他の人の感情に配慮してもらいたい。」と自制を促している。
なお、「多色派」は、赤色をシンボルカラーとするタクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)が04~05月にかけ大規模な反政府デモを行った際、一般市民の代弁者としてデモを批判する集会などを行ったが、これには、黄色がシンボルカラーのPADの支持者も多数参加していた。
12月03日(金)反タクシン派団体の民主主義市民連合(PAD、黄服)チャムロン幹部は、「予定していた12月11日にラチャダムヌン通りで予定していた憲法改正とカンボジアとの国境交渉に反対する集会を来年01月25日に延期する。」と発表。アピシット首相がPAD最高幹部らと話し合った結果という。01月の集会では、カンボジアの山上遺跡カオ・プラウィハーンが2008年に世界遺産に登録されたことに抗議し、カンボジアとの間で交わされた2000年覚書及び世界遺産協定の破棄を要求する活動を展開する予定で、政府の出方次第では集会の長期化も辞さない構え。
PADは、カオ・プラウィハーンに近い国境未画定区域に関連するカンボジアとの協定がタイに不利なものと指摘し、「憲法190条の改正によって協定の締結が容易になる。」と批判。
チャムロンは延期理由について、「12月は国王誕生日など祝うための期間であるため、国民を不安に陥れたくなかった。」、「南部で洪水が続いている。」と語っている。
憲法裁判所は、民主党の2億5800万Bの迂回献金疑惑が絡む民主党解党請求に対する初公判を09日に開く方針。
先に、憲法裁判所は、民主党が2900万Bの政党助成金を不正に流用した疑惑に絡む解党請求に対して、訴因に踏み込むことなく、選挙委員会側の解党請求手続きに過失があったと判断し請求棄却の判決を下していた。
12月04日(土)タクシン支持派反独裁民主主義同盟(UDD)が国王陛下誕生日の12月05日と06日に政治トークショーを予定していたが、UDD幹部は、警察の要請を受け入れ、祝賀ムードを壊さないよう国王誕生日の05日に予定していた政治トークショーを中止。だが、「06日は都内のホテルで予定どおり政治トークショーを行う。」としている。主催者は「高官から延期を求められた。」、「会場に手榴弾を投げ込むといった脅迫を受けた。」という。
治安当局は、「大勢のUDD支持者が集まり、これがデモや暴力事件に発展するのではないか。」と懸念。中止を要請したもの。首都圏警察は、不測の事態に備えて06日に政治トークショーが行われるホテル周辺を厳重に警備する予定。
反タクシン派の現政権はタクシン派を反王室として追求する姿勢を強めている。先月には交流サイト、フェイスブックに王室を批判するコメントを書いたとされる空軍将校が懲戒免職された上、不敬罪容疑で逮捕された。また、タクシン派団体、反独裁民主主義同盟(UDD)メンバーの男性が集会で王室を批判したとして不敬罪で懲役3年の実刑判決を受けた。このほかにも不敬罪によるタクシン派の逮捕、投獄が相次いでいる。
プア・タイ党のチーラユ副報道担当は、政府結成2年間の間に確認された政府関連プロジェクトに絡む120件以上の汚職疑惑を17日に公開する予定であることを明らかに。チーラユによると、「公開予定の汚職案件は、党政府職務監視グループが2年間に渡り収集してきた証拠に基づくもので、同じ日に予定されている政府の成果発表以上の国民の関心を呼ぶことになるだろう。」という。また、チーラユは、政府に対して、17日に予定されている政府の成果発表の際に、これまで取り組まれてきた救国小切手や国外からの借款がもたらした経済的効果や不正汚職に関与した者に対する処罰の状況を含めて発表するよう要求。
12月05日(日)83歳の誕生日を迎えた国王は、王宮に集まった王室、閣僚、政府高官、軍高官など国の要人を前にした訓話の中で、「国民各自が己の責務を正しく理解し、正しく行動することが国家に安定と平和をもたらす鍵となる。」と指摘。訓話の中で国王は、「失敗や損失を齎す不注意な行いや、畏怖の概念を疎かにさせる思慮を欠いた行いは、己だけでなく国家をも荒廃させる正当性を欠いた行いに繋がる最も危険な行為である。国家に安定と平和を齎すため各自が自己の果たすべき責務を正確に理解し、その責務に沿って慎重を旨に正しく行動するべきである。」と述べた。
朝から祝賀行事を執り行い、午前11時20分ごろ、ご入院中のシリラート病院に戻った。シリラート病院には国王の姿を一目見ようと大勢の市民が詰めかけ、前日から病院前で待っていた人も少なくなかった。
12月06日(月)タクシンの法律顧問であるノパドン・パッタマは、「タクシンが来週訪米し、米国の欧州安全保障協力委員会(CSCE)でタイの人権及び政治状況について証言する。」と述べた。欧州安全保障協力委は米国の上下両院議員9人や国務副長官等国務省、国防省、商務省の代表からなり、人権、市民的自由などに関するヘルシンキ最終議定書の実施状況を監視する組織。英字紙バンコクポストによると、「アメリカの全欧安保協力会議からの11月23日付けの招待状に基づき、タクシンが、90人以上の死亡者を出した反独裁民主主義市民連合のデモ期間中及び強制排除後のタイ国内に於ける民主主義や人権の状況を12月16日にワシントンで報告する予定になっており、また、この報告の際に、強制排除後のタイ国内に於ける政治状況を分析した委員会には平和問題に関する有力シンクタンク、インターナショナル・クライシス・グループ(本部ブリュッセル)のアナリストとタイ政府の代表も招かれている。」という。
インターナショナル・クライシス・グループは今年07月に発表したリポートで、「タイの政治混乱を、権力維持を図る特権階級が枢密院、軍、司法を軸に、貧困層が支持するタクシン派と対立している。」と分析。反タクシン派の現政府に対し、非常事態宣言の解除、03~05月の反政府集会・暴動の死傷者に関する調査、タクシンとの対話などを求めるとともに、君主と軍の役割の再考、富の分配、公正・平等な司法の実現、地方分権の推進などを提言した。こうした経緯から、実際にタクシンとインターナショナル・クライシス・グループが証言した場合、タイ政府にとって不利に働く公算が高い。
ノパドンは、「この招待はアメリカの上下院議員や指導者層に事の真相を知らしめる絶好の機会である。」、「民主党は、タクシンによる真相を明らかにする行為に対して国家を毀損する行為であると非難するべきではない。」と述べた。タクシンは、今月16日にも米国入りする予定。
一方、アピシット首相は、タクシン訪米に関する記者団の質問に対し、「どういうことかはっきりしない。」、「ノパドンさんは色々なことを言うから。」と笑顔で応じたが、内心は穏やかでない。外務省に対して国際犯罪人引渡条約に基づくタクシンの身柄引き渡し要求の可否に関する調査を命じた事は認めたが、「タクシンが事の真相報告のためにアメリカに行くとい言う話に関しては、これまで聞いておらず、人権侵害で同様な非難をアメリカ議会から浴びていた事に対する釈明のためにアメリカに行くのかも分からない。」と語った。
チャワノン外務大臣秘書官は、~依然タクシンに講じられている入国禁止措置が有効で、全欧安保協力会議からの招待であろうともタクシンに対する入国が許される事はない。」との認識を示している。外務省は、「タクシンの入国の可否はアメリカの行政側の判断に委ねられている。」として可否に関する明言を避けている。
タクシンは国外滞在中の2008年に、首相在任中に元妻ポチャマンが国有地を競売で購入したことで懲役2年の実刑判決を受け、以来、タイに帰国していない。タイ政府はタクシンを犯罪者として各国に身柄引き渡しを要求しているが、タクシンが有罪判決後に訪れたフランス、スウェーデン、ロシア、南アフリカ、カンボジアなど十数ケ国はいずれも逮捕、身柄引き渡しに応じていない。この上、超大国の米国までタクシンの入国を認めれば、「国際世論がタクシンの裁判結果を認めていない。」という印象が強まることが避けられない。
タイでは2005年の下院選で議席の75%を占めたタクシン政権(2001~2006年)が翌2006年に軍事クーデターで追放され、以来、タクシン政権の低額医療制度やマイクロファイナンスなどで恩恵を受けた低所得者層、東北・北部などの地方住民がタクシン派、タクシンを反王室、腐敗政治家と批判する特権階級、クルングテープの中間層が反タクシン派という大まかな色分けで、政治闘争が続いている。タクシン派は2007年末に行われた民政移管のための総選挙で勝利し政権に復帰したが、裁判所が同派の首相を解任、与党を解党し、2008年末に反タクシン派に政権を奪われた。
タクシン派は今年03~05月にクルングテープで大規模な反政府デモを行い、治安部隊との衝突などで、取材中だったロイター通信の日本人カメラマン、村本博之を含む91人が死亡、1400人以上が負傷。タクシン派が強制排除されてから7ケ月近くが経過したが、死傷者が発生した状況に関する政府の説明はほぼ皆無で、クルングテープ都には非常事態宣言が布告されたまま。
「国外逃亡中のタクシンが米国の欧州安全保障協力委員会から12月16日のフォーラム『タイ 民主主義、統治、人権』に出席し、発言するよう求められている。」との報道に対し、タイ外務省のタニ副報道官は、「外務省が米当局にタクシンの身柄引渡しを求める可能性が高い。」と発表。
タイと米国は犯罪人引渡し条約を1983年に締結している。タクシンは、首相時代の職権乱用で禁固2年の有罪が確定しているほか、先の大規模反政府デモでも罪に問われている。なお、身柄引渡しの要求は、検察当局の決定に基づいて外務省が米当局に伝えることになるが、検察庁は今のところ態度を明らかにしていない。
反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)を支持母体とするカンムアン・マイ(新政治)党が、「現在の政治状況は多くの人が考えるほど悪くない。」との理由で、改憲の手続きが来年02月~03月には終わることから、アピシット首相は04月にも下院を解散すべきとしている。
カンムアン・マイ党の広報担当サムランによれば、「PADは12月に予定していた抗議集会を、同月の国王陛下誕生日の祝賀行事に配慮して01月に延期しており、タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)も『「目的達成のために暴力を用いない。』と約束している。「このため、現在進められている改憲の手続きが完了したところで下院を解散、総選挙を実施することは可能であり、これによって政治状況は緊張がさらに緩和される。」という。 なお、現民主党連立政権は、2007年12月の総選挙で誕生したタクシン派政権が2008年12月に崩壊、そのあとを継いだ政権で、来年末が任期満了となる。だが、反政府勢力などが以前から早期の解散を求めていることから、アピシット首相は、「条件が整えば、任期満了前の解散も可能。」としている。
12月07日(火)2008年11、12月に反タクシン派団体、民主主義市民連合(PAD)の支持者数千人がスワンナプーム国際空港とドンムアン空港を占拠した事件で、検察は、「捜査が終了していない。」として、PAD幹部ソンティら9人に対し違法集会、騒乱などの罪に問われているが、起訴を来年の02月までの延期を決定。この事件に関する起訴は、昨年05月よりが繰り返されており、今回で8回目。検察はPAD幹部の訴追に関する判断をこれまでに十数回見送っている。
PADはタクシン派政権の追放を目指し、2006、2008年にクルングテープで大規模な反政府デモを開催。2008年には2空港のほか、首相官邸に当たるタイ首相府を長期占拠するなど、過激な反政府活動を繰り広げた。2008年末に憲法裁判所がタクシン派与党を解党、政権は反タクシン派に移り、PAD幹部は現在まで起訴されていない。
アピシット首相は、「死の商人ことボウトのアメリカへの身柄引渡と引き換えにタクシンの捕捉及び身柄引渡をオバマ大統領に要求していた。」との憶測を否定。
Wikileaksで公開されたアメリカの機密公電の中に、「タイがボウト被告の身柄引渡を拒否した場合は、将来アメリカを訪問するタクシンの捕捉に影響を与える事になる。」との記述がある事が明らかになった件で、「アピシット首相とオバマ大統領との電話会談の際に交わされた密約に基き、タクシンを陥れる目的でタクシンに対するアメリカへの招待が為された。」との憶測が広がっていた。アピシット首相によると、「オバマ大統領との電話会談の際にはiPadの話題しか出ておらず、ボウトとタクシンの交換といった話は一切出ていなかった。」という。
国外逃亡中のタクシンが米政府の欧州安全保障協力委員会からの招請でフォーラムに出席し、タイの現民主党政権を批判する可能性。このため、アピシット首相は、「政府は批判への対応をカシット外相に一任することを決めた。」と述べた。
タクシンの法律顧問、ノパドンによれば、タクシンはモンテネグロ発行の旅券で米国入りし、16日に予定されているフォーラムで発言する意向だが、入国ビザを取得したかは不明。
関係筋によれば、「タイ当局がタクシンの身柄引渡しを米国に求める可能性があるが、委員会から招請を受け、これがマスコミで取り上げられたこと自体がすでにタクシンにとってプラスであり、危険を冒してまでフォーラムに出席することはない。」との見方も強い。
深夜チエンライ県メーサイ郡の郡庁舎の敷地内にある郡次官公邸付近で爆発が発生。自警組織の車等に被害をもたらした。幸い人的な被害はなかった。「破壊力が弱い爆発物が犯行に使用された。」と見られている。
警察は、メーサイ郡と国境を接するビルマ領内にカジノホテルの開業を計画している企業の事務所が次官公邸近くにあることから、「新規のカジノホテル進出に対して不満を持っているカジノ業者が脅迫目的で犯行に及んだ。」と見て捜査を開始。「政治や郡庁関連プロジェクト絡みの犯行の可能性は極めて薄い。」という。
12月08日(水)タクシン付法律顧問のノパドン・パッタマは、タクシンが反独裁民主主義同盟のデモ隊に対する強制排除に絡むタイ国内に於ける人権保護状況を16日にアメリカのワシントンで報告する予定になっている事に絡んで、政府及び外務省がタクシンのアメリカ行きを妨害するため、アメリカ当局の最上層部に対してビザを発給しないよう働きかけを行っている事を明らかにし、「政府は91人が死亡し2000人以上が負傷した強制排除に関する真相を隠蔽しようとしている。」と非難。
また、ノパドンは、タクシンを招待した全欧安保協力議会が、同時にタイ政府の代表も招待している事を明らかにし、「恐らく政府はカシット外務大臣を代表としてワシントンに送り込むのではないか。」との認識を示した。
一方、「タクシンのアメリカ行きにより、自身の身を危険に晒す事になるのではないか。」と指摘されている事に関しては、「タクシンは危険な要素が存在している事を承知した上で敢えてアメリカ行きを決断した。すでにタクシンが滞在している国にあるアメリカ大使館で査証の発給申請を行っている。」と明らかにした。
タクシン派の野党プア・タイ党のチャトポン議員は、今年03~05月にクルングテープでタクシン支持派の反政府デモ隊と治安部隊が衝突し、デモ参加者、兵士、ロイター通信の日本人カメラマン、村本博之、イタリア人カメラマンのファビオ・ポレンギら91人が死亡、1400人以上が負傷した事件に関する捜査情報とされる報告書や写真を報道機関に流し、捜査機関がその一部を本物と認めていることが明らかに。チャトポンは、タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)の幹部。
チャトポンによれば、「報告書と写真は、タクシン派の警察関係者から入手したもので、デモの際に死傷者が出たのが治安部隊のせいであることを示す新事実。」という。「報告書は合計10件あり、そのうち4件を報道機関に提供した。」とのこと。
報告書によると、軍がタクシン派を強制排除した05月19日に、デモ参加者の避難所に指定されていたパトゥムワナーラーム寺に銃弾が撃ち込まれ、市民6人が死亡した事件は、高架電車BTSの線路から軍の特殊部隊が銃撃した可能性が高い。04月10日に取材中の村本が高速弾で胸を撃たれ死亡した事件に関しては、「兵士がいる方向で銃火が見えた後、村本が倒れた。」という証言があった。
これに対し、法務省特別捜査局(DSI)のタリット局長は、写真の何枚かはDSIの捜査資料と認めているが、「チャトポン議員の主張がすべて正しいかは現時点では定かでない。」としている。一方、DSIによれば、「報告書を警察に提出することはあっても、みずから捜査資料を公開することはなく、DSIから情報が漏れたとは考えにくい。」という。また、写真の中には、チャトポン議員が「治安部隊がデモ隊に発砲した証拠」と主張しているものがあるが、これについて、非常事態宣言下の管理機構、非常事態対策本部(CRES)のサンサン報道官は、「警戒活動中の治安要員が銃を構えるのは通常の行為。」と反論。
報告書の真偽に関するロイターの問い合わせに対し、アピシット首相は「事件については現在も調査中。」と、DSIのタリット局長は「否定も肯定もしない。」と返答したという。ロイターは「家族は村本さんが誰により、どういった状況で死亡したか知る権利がある。」として、タイ政府に報告書の全面公開を要求している。
タイ政府は事件から7~8ケ月経った現在も死傷者に関する捜査報告を行っていない。デモ参加者がパトゥムワナーラーム寺で射殺された事件については軍の関与を否定していた。
国外逃亡中のタクシンが米政府の欧州安全保障協力委員会のフォーラムに出席すると報じられているが、法務省特別捜査局(DSI)のタリット局長は、「米当局にタクシンの身柄引渡しを求めるのは困難。」との見解。
タクシンは首相時代の職権乱用で禁固2年の有罪が確定しており、外務省は米国との間で締結した犯罪人引渡し条約に基づいて米国にタクシンの身柄確保・引渡しを求める構えを見せている。
だが、タリット局長は、「テロ罪でなく職権乱用では米当局を動かせない。」としている。 先の大規模反政府デモに関連して、タクシンやタクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)幹部らがテロ容疑で送検されたものの、タクシンだけは「タイ国内での違法行為が認められない。」としてまだ起訴されていない。
なお、「身柄引渡しが実現困難なためか、タイ当局がタクシンへの入国ビザ発給を拒否するよう米国に働きかけている。」との指摘もある。
アピシット首相は、「国内の全体的な状況が改善しており、クルングテープ都などに適用されている非常事態宣言を正月までに解除することも可能。」と述べた。
ただ、「宣言解除には、騒乱が起きないとの確信を得ることが必要で、そのため、しばらくは政治団体などの動きを監視しなくてはならない。」という。アピシット首相によれば、「宣言解除に備えて国家治安委員会に対し、通常法のもとでの治安措置の検討を指示済み。」とのこと。
12月09日(木)正午頃憲法裁判所は民主党の2億5800万Bの献金問題について、「公訴手続きに不備があった。」として請求を棄却。裁判官は4人公訴を棄却を支持、3人が不支持。
この疑惑は、民主党が2005年の総選挙運動期間、反タクシン派で知られる実業家プラチャイ・リャオパイラットがオーナーのセメント大手、TPIポリーン社(TPIPL)から法定限度を超える2億5800万Bの裏口政治献金を受け、これを当局に報告しなかったというもの。TPIPLおよび民主党の説明では、「TPIPLは広報業務を依頼するためメーサイア・ビジネス&クリエーション社と契約を結んでおり、2億5800万Bは契約料などとして支払った。」と主張。「民主党への献金はなかった。」と説明。
これに対して、検察では「契約料の名目で、実際には民主党への違法献金があった。」として、民主党の解党、および、アピシット首相を含む当時の党役員の公民権停止処分を憲法裁に求めていた。
今回、民主党が解党処分を受けた場合、当時副党首だったアピシット首相は直ちに失職。さらに、複数の民主党閣僚も失職となるため、政界大編成を余儀なくされるところだった。
憲法裁判所は先月29日にも、与党民主党による政党助成金2900万Bの不正流用問題について、同様の理由で請求を棄却。これにより与党民主党の政権崩壊は脱したが、憲法裁判所が2度とも起訴内容に踏み込まずに民主党を無罪放免としたことで、民主党と対立するタクシン派の野党プア・タイ党からの反発は大きい。は「ダブルスタンダード(二重基準)だ。」として司法批判を強めている。
タイの司法はタクシン派と反タクシン派の抗争が激化した2006年以降、タクシン派の政党を選挙違反で2度解党し、同派のサマック首相(当時)をテレビの料理番組に出演し謝礼を受け取ったとして失職させるなど、一貫してタクシン派に不利な判決を下してきた。アピシット民主党政権はこうした司法の「援護射撃」で2008年末に発足した反タクシン派政権で、憲法裁が民主党に解党処分を下す可能性は低いと見られていた。
刑事裁判所は、03~05月の大規模反政府デモで主導的役割を果たしたことで罪に問われ、現在保釈中のチャトポン、プア・タイ党議員が同日開かれた名誉毀損の裁判に出廷しなかったことから、「公判を意図的に遅らそうとした。」と判断、チャトポンの逮捕を決めた。
だが、チャトポンが慌てて裁判所に出向き釈明したことから、「再び出廷を拒否したら罰金5万B。」との警告を受けただけで済み、かろうじて身柄拘束を免れた。
この裁判は、アピシット首相が「大規模デモに関連した虚偽の発言で名誉を傷つけられた。」としてチャトポンを相手取って起こしたもの。
タクシンの法律顧問、ノパドン元外相は、「タクシンは現在も米国を訪れ、欧州安全保障協力委員会のフォーラムで発言する意向だ。」と明言。
「タイ政府は、タクシンの出席を阻止するため、水面下で米当局に働きかけている。」とされ、また、先にフォーラム出席に備えタクシンの発言への対応をカシット外相に一任。
これについて、ノパドンは、「外相はフォーラムでのタクシンの発言に過剰反応しないほうが良い。真実を委員会に伝えるため、タイ当局はタクシンの入国ビザ取得を助けてやるべき。」と語った。
なお、関係筋によれば、「タクシンが首相時代の職権乱用で禁固2年の有罪が確定していることから、タイ政府部内では、米国がビザを発給しないとの見方が支配的。」とのこと。
非常事態宣言下の治安対策本部である非常事態対策本部(CRES)は、クルングテープ都と近隣県にいまだに適用されている非常事態宣言の解除に同意し、解除に向けた手続きに入ったことを明らかに。アピシット首相も先に宣言解除に言及していた。
宣言の継続・解除は、治安機関からの報告に基づいてCRESが検討を行った後、閣議に進言し、アピシット首相が最終決定を下すという手順が取られるが、「CRESは次回の閣議までに宣言の解除を政府に提言するよう国内治安委員会に指示した。」とのこと。宣言の全面解除に伴い、CRESは解散。通常法である国内治安法に基づいた治安対策を実施する新機関が設置される見通し。
関係筋によれば、「国民和解実現に向けた真相究明のため政府が設置した委員会の主要メンバーらとタイに駐在する大使6人を含む外交官約30人の出席する会合が12月09日に開かれ、ここで、外交官らから先の大規模反政府デモの際に大量の死傷者が出た原因の究明が遅れていることに不満、苛立ちの声が相次いだ。」これら外交官は、「責任をとるべき者が結局処罰されない。」という事態を最も懸念しており、「このままではタイの国際的信用、諸外国との関係に影響しかねないとの見方を示した。」という。
だが、同筋によれば、「参考人の多くが証言を拒んでいることが真相究明を妨げる一因となっているが、委員会には参考人を喚問する権限も与えられていない。」という。また、軍部は、「デモの際の治安部隊の行動を検証できるよう対デモ作戦の詳細を明らかにする。」と委員会に約束していたが、最近になって、「各部隊がその時々の状況に応じて対応を決めていた。対デモ作戦と呼べるものは存在しなかった。」と前言を翻している。
12月10日(金)憲法記念日の10日、タクシン派の市民がクルングテープ都内の民主記念塔に集結し、05月から身柄を拘留されているタクシン派幹部、メンバーの釈放を政府に要求。
非常事態宣言では5人以上の政治集会が禁止されているが、ラチャダムヌンクラン通りの民主記念塔周辺には昼過ぎから赤シャツ姿のタクシン派のUDD支持者が集まりだし、参加者は警察の推定で約1万人以上に達して周辺道路が渋滞。だが、大きな混乱もなく午後09時頃には散会。タクシン派は19日に都心のラーチャプラソン交差点で再度反政府集会を開く予定。
チャトポン・プロームパンは、赤服軍団と治安当局が衝突した04月10日に死亡した日本人カメラマンの死亡に関係する証拠資料を提出するために日本大使館前に集結し、強制排除から7ケ月目となる19日にはラーチャプラソン交差点前に集結する方針を確認。
日本人カメラマンの死亡に関しては、先に法務省特別捜査局が、「強制排除の際に死亡した 89人のうち、ドゥシット動物園前、アヌソン交差点及びパトゥムワナーラーム寺での死亡者と同様に治安当局側が死亡に関与している疑いがある。」として法規程に則り国家警察本部に捜査を移管する手続きを行っていた。
ロイターが入手した法務省特別捜査局のレポートによると、「治安当局と赤服軍団が衝突した現場で取材中だった日本人カメラマン村本博之(43)の死亡に絡んで、軍の方向から銃撃による閃光が走ると同時にカメラマンが倒れたころが目撃されていた。」という。また、同レポートは、「パトゥムワナーラーム寺内で高速弾により死亡した6人のうち3人が、証拠や目撃証言等から当時任務遂行中だった治安当局による銃撃により死亡した可能性が高い。」と指摘。
タクシン派は今年03~05月にクルングテープで大規模な反政府デモを行い、治安部隊との衝突などで、取材中だったロイター通信の日本人カメラマン、村本博之を含む91人が死亡、1400人以上が負傷。タクシン派が強制排除されてから7ケ月近くが経過したが、死傷者が発生した状況に関する政府の説明はほぼ皆無で、クルングテープ都には非常事態宣言が布告されたまま。
12月11日(土)タクシン派は、「村本が射殺された事件に関する証拠を13日に在タイ日本大使館に届ける。」と発表。証拠は現場の写真など。
先の大規模反政府デモで死傷者が出たことについて、治安部隊の責任を示唆した法務省特別捜査局(DSI)の報告書が報道機関に流されたことに対し、アピシット首相は、「現時点で治安部隊が市民殺害に関与したと結論づけることはできない。」と述べ、タクシン派の批判に反論。報告書は、05月19日にラーチャプラソン交差点近くの寺院内で遺体で見つかった3人、04月10日にコークウア交差点で撃たれて死亡した日本人カメラマン村本博之について、「治安部隊による発砲が原因だった可能性がある。」と指摘。
だが、アピシット首相によれば、「DSIが捜査を終えて警察に報告し、裁判所が判断を示すという手続きがまだとられていない。今の段階で捜査途中の報告書の内容を結論と断定し、治安部隊に責任ありとすることはできない。」とのこと。
12月12日(日)タクシン付法律顧問のノパドン・パッタマは、今月16日にアメリカのワシントンで予定されていたタクシンによるタイ国内の人権状況報告の日程が、招聘元の全欧安保協力会議の要請により数週間先に延期になった事を明らかに。招聘元から、「新国会期間開始に向けた準備及び開始後に会議のメンバーに変更がある事が予想される事を理由に延期の申し出があった。」という。また、延期後の具体的な日程に関しては明らかにされていないが、来年01月中になる見通しだという。
タイ政府は、タクシンが訪米してフォーラムで発言することで、「タイに不利なメッセージが国際社会に発信されるのではないか。」と懸念。「水面下で入国ビザの発給拒否を米国に働きかけていた。」とされる。
ノパドンは、「この延期により、新たに明らかになった反独裁民主主義同盟の集会参加者の死因に関する新資料等を報告内容に含める機会を得ることが出来た。入国ビザ取得の準備のための時間的余裕が増える。」と述べた。フォーラムの開催時期に関し、ノパドンは、「今回は延期となったが、来月にも開かれるのではないか。」としている。
株式所有規定違反で11月に失職した下院議員5人の補欠選挙が行われ、連立与党が4勝1敗と勝ち越し。ただ、与野党はそれぞれ前回勝利した選挙区を確保し、議席数に変化はなかった。
与党の中核である民主党はクルングテープ2区で擁立したアピラック前クルングテープ都知事がタクシン派野党プア・タイ党の候補に圧勝。議員失職にともない閣僚を辞任し復活選挙に臨んだプームチャイ・タイ党のブンジョン前副内相、チャート・タイ・パッタナー党のクアクーン前副運輸相も野党の追撃を振り切った。投票率は最も低いクルングテープ2区で33.7%、最も高い東北部ナコンラチャシマー6区で68.3%。
下院(定数480)議席数は今回の補欠選の議席確定前の段階で、与党の民主171、プームチャイ・タイ党31、プア・ペンディン党31、チャートタイ・パタナー党24、野党のプア・タイ党186など。
12月13日(月)午前タクシン支持派「6月24日民主グループ」のリーダー、ソムヨット・プルゥクサーカセームスック率いる赤服軍団が、大規模反政府デモの際に死亡した日本人カメラマン、村本博之の写真などを掲げてクルングテープ都内のルンピニー公園からラマ4世通りをデモ行進。数十人がクルングテープの在タイ日本大使館前に集まり、ロイター通信のカメラマン、村本博之が04月10日、クルングテープのコークウア交差点でタクシン派と治安部隊の衝突を取材中に射殺された事件の証拠資料を大使館の職員に手渡した。証拠資料には、画像等の資料の他に4人の目撃者の証言映像を納めたCDが含まれている。「タイ政府は、日本に誰がカメラマンを撃ったかの証拠を提供する必要がある。」として、デモ関連死の真相究明を政府に求めて気勢を上げた。
タイ政府は村本、イタリア人カメラマンのファビオ・ポレンギ、タクシン派の市民ら衝突で死亡した91人の死亡状況に関する捜査報告を発表しておらず、タクシン派は日本やイタリア、人権団体などを通じ、タイ政府に圧力をかけたい考え。なお、約90人に及ぶデモ関連死について、タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)は「治安当局に全て責任がある。」と批判を強めている。ただ、デモ隊と行動を共にしていた武装グループによる銃撃や爆弾攻撃でも死傷者が出たとされているが、UDDはこれに触れることを避けている。
村本が死亡した事件については、ロイター通信が10日、関係者から入手したタイ法務省特捜局(DSI)の捜査報告書に「『兵士がいる方向で銃火が見えた後、村本さんが倒れた。』という証言があった。」と報じた。報告書は公表されておらず、DSIのタリット局長はロイターの報道について、「否定も肯定もしない」とコメント。タリット局長はまた、「村本さんの事件については日本大使館に何度も説明し、理解を得ている。」と話した。
大規模反政府デモの関連死についての法務省特別捜査局(DSI)の報告書とされるものが報道機関に流された問題で、タリットDSI局長は、「いずれの報告書もDSIのファイルに合致しなかった。」と明らかに。
報告書は、「タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)幹部のチャトポン、プア・タイ党議員が警察関係者から入手したもの。」という。
当初、DSIでは、「DSIが警察に提出したもの。」としていた。しかし、詳しく検証したところ、DSIに保管されている報告書とは内容が合致しなかった。」とのこと。
アピシット首相は、「非常事態宣言の解除後も国内状況が平穏なら、来年初めの解散総選挙も可能。」と述べた。反政府勢力は以前から早期の解散総選挙を求めている。一方、現民主党政権は来年末に任期切れとなることから、「解散があるなら来年初め。」との見方が支配的。
ただ、首相は、非常事態宣言の解除の時期には言及しておらず、「14日の閣議では宣言解除は取り上げない。」とも述べている。
12月14日(火)朝ステープ副首相は、「定例閣議でクルングテープを初めとする首都圏4県内に施行されている非常事態宣言の解除に関する協議が行われる予定がない。」と確認し、「向こう1~2日以内に提出される非常事態対策本部の情勢分析報告に基づき、来週の閣議で首都圏4県を対象とした非常事態宣言の年内の適用解除を視野に入れた協議が行われる見通しである。」と発表。各メディアが一斉に報じた。
先にアピシット首相は、情勢が安定している事を条件に年内に首都圏4県を対象とした非常事態宣言を解除できる見通しである事を明らかにしていた。
プア・タイ党のプロートプラソップ副党首は、「12日にスリン県内で行われた補欠選挙で自党の候補が与党プームチャイ・タイ党の候補に敗北が、東北地方に於けるタクシンの人気低下を意味するものではない。」との認識を示した。しかし、4~5人の党所属議員が他党に移籍する可能性がある事は認めた。
また、「今回のスリン県の敗因に関しては、地盤としているプア・ペーンディン党が候補者を送り込まなかったこと、及び予てから地域内での活動を強化していたプームチャイ・タイ党に対して出遅れた事が大きな要因になった。」との見方を示した。
一方、プア・タイ党のプロームポン報道担当は、「先の補欠選挙での敗北を受け14日に招集される党会議の席上で、選挙戦略の見直しを視野に入れた協議を行う予定である。」と明らかに。「特に、党が提唱する経済政策の見直しを中心に協議が進められる見通しだ。」という。また、補欠選挙の敗北に関しては、「将来の選挙には影響を与えない。」とし、「政府が今回の補欠選挙で支持増を確信しているのであれば、今日にでも解散するべきである。」と指摘。プロームポン報道担当によると、「軍高官人事や2012年予算成立が終わる来年10月以降まで解散が先延ばしにされる可能性がある。」という。
タクシン派の最大野党プア・タイ党関係筋によれば、「国外逃亡中のタクシンが、プア・タイ党議員の会合に電話を入れ、「『先の補欠選では負けたが、総選挙では230議席以上獲得できる。』と述べた。」という。補欠選挙でプア・タイ党は5議席中1議席しか獲得できなかった。
しかし、タクシンは、「補欠選の敗北が総選挙の勝利につながる。」と議員らを激励。 なお、下院解散がなければ、来年末の現政権の任期切れに伴い総選挙となるが、アピシット首相は「早期の解散総選挙もあり得る。」としている。
12月15日(水)クルングテープ都内をはじめ4都県に施行されている非常事態宣言の解除について、来週21日にも閣議提案される見通し。
治安維持部隊最高責任者のプラウィット防衛相は、「非常事態宣言の解除について週内に閣議提案はできないものの、来週21日にも提案可能。」と語っている。アピシット首相は、「閣議で承認されれば、22日にも非常事態宣言の解除が可能。」としている。 現在非常事態宣言は、クルングテープ都をはじめノンタブリー県、パトゥムタニー県、サムットプラカーン県などの近隣3県に施行されている。
Wikileaksが新たに公開したアメリカの機密公電により、今年01月にアメリカ大使がプレーム枢密院評議会議長を初めとする影響力を持つ人物を表敬訪問した際に、プレーム議長がアピシット首相に対して肯定的な評価を下す一方で、外務大臣経験がある枢密院評議会議員のシッティ・サウェートシーラは、同首相の問題解決能力や効率的に政策を遂行するチームの不在に不満を示していた事が明らかに。
またタクシンに関しては、面会したプレーム議長、シッティ議員及びアーナン元首相何れもタクシンによる政府への直接的な攻撃や王室に対する間接的な攻撃に注目しており、特に「アーナン元首相は、『国王の健康不安がタクシンによる間接的攻撃の動機の一部になっている。』との見方を示していた。」という。
一方、次期国王継承者とされる王子に関しては、3者何れも否定的な見解を示し、特にアーナン元首相は、「『王子以外の者を国王に据えるための手続きが他に存在してれば、国家はより良い状態になる。』との認識を仄めかしていた。」という。
その際に、シッティ議員はシリントーン王女が次期国王として望ましい。」との見解を示したが、それに対してアーナン元首相は、「次期国王継承者を変更する事ができるのは国王のみである。」と指摘し、「そのような継承者の変更が起こる可能性は極めて低い。』との認識を示していたという。
Wikileaksが公開した2008年10月01日付けのアメリカの機密公電より、サマック元首相が2006年のクーデターの責任の一端が王妃にあると指摘していた事が明らかに。アメリカ大使と面会した際にサマック元首相は、7ケ月の首相在任中に政治的な圧力を受けていた事を明らかにし、「『2006年のクーデターや民主主義市民連合による混乱の責任がシリキット王妃にある。』と尊大な態度で指摘していた。」という。
サマック元首相によると、「王妃がプレーム枢密院評議会議長や王党派を通して連合を操っていたのだ。」という。しかし、国」王に関しては、自分に反対する者以上の忠誠心を持っており、首相在任中は国王からの支えを受けていたとしたが、王子に関してはコメントをする事は無かったという。
12月16日(木)午前クルングテープにあるミラクル・グランド・ホテルのレストランで反独裁民主主義同盟議長代行のティダー・ターウォンセート♀(ウェーン・トーチラーカーン夫人)及び同前議長のウィーラ・ムシッカポンがアピシット首相と約30分間面談。「現在収監中の同盟幹部等の保釈の方向性に関する話し合いが為された。」という 。初期報道段階では「ティダー等がアピシット首相との面会を要求するためにホテルに現れた。」と報じられていたが、ティダーによると「アピシット首相との面談は偶然実現したものだった。」という。
午前中にアピシット首相と面談した反独裁民主主義同盟議長のティダー・ターウォンセートは、首相が提案した法務省人権保護局側による収監中の同盟幹部やデモ隊関係者の保釈実現に向けた調整を受け入れた事を明らかに。また、面談の際にアピシット首相に対して、「法に則った平和を旨にした活動を今後展開していく旨伝えた。」という。
法務省特別捜査局(DSI)が、先の大規模反政府デモに関連してテロ容疑で逮捕状の出ている反独裁民主主義同盟(UDD)幹部など11人の逮捕状をあらためて裁判所に請求したことが明らかになった。これは、「非常事態宣言下で発行された現行の逮捕状が同宣言解除で無効となるため。宣言は早ければ年内、遅くとも来月初めにも解除される。」との見方が出ている。
このため、DSIは、「逮捕状なしでは捜索、逮捕が困難。」として、通常の手続きで改めて逮捕状を請求したもの。指名手配中の11人には、アリスマン元議員などが含まれている。
12月17日(金)刑事裁判所は、テロ容疑で逮捕請求の出ていたタクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)幹部ら11人のうち5人の逮捕を許可。これらの者は、非常事態宣言に基づいて逮捕状が出ているが、同宣言が数日中に解除され、逮捕状が失効するとみられることから、法務省特別捜査局(DSI)が通常手続きで逮捕状を請求していた。刑事裁判所によれば、アリスマン、ポンプルンロン、スポン、ワイポット、パヤップの5人は、起訴が決まっていることなどから逮捕を許可。DSIは、残り6人の起訴が確定し次第再度逮捕状を請求する方針。
12月19日(日)タクシン派団体の反独裁民主主義同盟(UDD)は、都内商業地区ラーチャプラソン交差点近くで集会。今回集会に参加した人は数千人(報道により1万人)と見られており、この影響により周辺地域一帯の交通が麻痺。5月19日の大規模デモ終結宣言からちょうど7ケ月目であることから行われたもの。
UDDは「今後毎月10日及び19日に同様の集会を開催し、同団体と治安部隊衝突の発生から1年となる来年04月に向け、抗議活動を強化していく。」と発表している。
一方、集会は、治安当局による銃撃により死亡した疑いが濃厚になっているパトゥムワナーラーム寺内での死亡者6人に対する追悼式等を終えた後に20時過ぎまでに平穏裏に散会。
タクシン派団体の反独裁民主主義同盟(UDD)幹部の1人、ティダ♀がアピシット首相と会談したことから、「UDD首脳部は一枚岩ではない。」との見方が出ているが、UDD幹部のチャトポン、プア・タイ党議員とティダは日、都内ラーチャプラソン交差点でのUDD集会の際、報道陣を前に「首脳部に分裂はない。」と明言。
「16日に行われた会談は首相の求めによるもの。」という。チャトポン議員によれば、「アピシット首相はUDDの誰かと話し合ったという事実を作りたかっただけで、政府は会談を理由にUDDを切り崩そうとしている。」とのこと。
12月20日(月)アピシット首相は、「21日に非常事態宣言が解除された場合、宣言に代えて国内治安法を適用する。」との考えを明らかに。
また、タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)が、「拘留中のUDD幹部の釈放を求めて来年、定期的に反政府集会を行う。」と発表しているが、首相は、「国内治安法適用とは無関係。」としている。UDDは03月~05月にかけ大規模な反政府デモを決行したため、幹部らがテロ容疑などで逮捕、拘留されている。なお、首相によれば、「罪の軽い者から拘留が解かれる。このため、幹部らが最初に釈放されることはない。」とのこと。
タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)がUDD幹部の釈放などを求めて来年定期的に反政府集会を行うとしていることについて、プラユット陸軍司令官は、「クルングテープ都と近隣のノンタブリ、パトゥムタニ、サムットプラカン3県で非常事態宣言が近く解除される見通しだが、当局はこれら地域を掌握している。」と述べ、「集会が暴力事件や騒乱につながることはない。」との見方を示した。また、プラユット司令官は、「暴力は、良い結果をもたらさず、国をさらに傷つけるだけ。対外イメージも悪化する。」と強調。
なお、UDDは、04月10日に多数の死傷者を出したデモ隊と治安部隊の衝突が起き、05月19日にデモ隊強制排除でUDDがデモ終結を余儀なくされたことから、「毎月10日と19日に反政府集会を行う。」と発表。
12月21日(火)政府は閣議の席上で、クルングテープ都を初めとする首都圏4県を対象に適用されている非常事態宣言を22日付けで解除する方針を決定。今後は国内治安法を初めとする既存法で対応する方針。
また、政府は、法務省特別捜査局から提出された、収監中の反独裁民主主義同盟・赤服軍団関係者の保釈適格者リストに基づき、104人の保釈を承認した。保釈が認められた104人の中に幹部8人が含まれているかについては不明。
先に特別捜査局のターリット局長は、104人の保釈適格者リストと同時に不適格者リストを閣議に提出していた事を明らかにしていた。
12月22日(水)反独裁民主主義同盟・赤服軍団が集会活動を展開していた今年04月22日にクルングテープで発生した、BTS線サーラーデーン駅方向に向けたM79発射事件に絡んで法務省特別捜査局はテロ容疑で逮捕状が発行されているシーサケート県出身のジェームス・シングシティ(29)をM79発射容疑で逮捕。ジェームスは、元レンジャー部隊員で、集会期間中は自警組織員としてカッティヤ・サワディポン少将に近いグループに所属。
タイ政府は首都圏の4都県(クルングテープ都、ノンタブリー県、パトゥムタニー県、サムットプラカン県)に発令している非常事態宣言を解除。年末、クリスマスシーズンを控え、観光、小売り、対外イメージなどに配慮した。今後暴力的な反政府デモが発生した場合は、非常事態宣言に似た内容の国内治安法で対応する方針。
非常事態宣言は5人以上の集会禁止、容疑なしでの30日間の身柄拘束、報道統制などを合法化するもので、タクシン派の大規模な反政府デモを受け、04~05月にタイの全76都県中24都県で発令。その後順次解除されたが、首都圏では爆破事件の散発やタクシン派、反タクシン派双方のデモなどで継続されていた。タクシン派は過去数ケ月、非常事態宣言を無視する形で、都内で数千~1万人規模の反政府集会を繰り返しているが、軍・警察との衝突は起きていない。
タイでは2005年の下院選で議席の75%を占めたタクシン政権(2001~2006年)が翌2006年に軍事クーデターで追放され、以来、タクシン政権の低額医療制度やマイクロファイナンスなどで恩恵を受けた低所得者層、東北・北部などの地方住民がタクシン派、タクシン氏を反王室、腐敗政治家と批判する特権階級、クルングテープの中間層が反タクシン派という大まかな色分けで、政治闘争が続いている。
タクシン派は今年04~05月にクルングテープ都心部を長期間占拠し、05月19日に軍によって強制排除された。一連の衝突による死者は91人、負傷者は1400人以上に上る。
ステープ副首相は、「現在進められている憲法改正の手続きが来年には完了する。そうなれば、早期の下院解散もあり得る。」と明言。
現政権は来年末に任期満了、総選挙となる。だが、反政府勢力が現政権の退陣を要求していることから、アピシット首相は以前から、「任期満了を待たずに解散総選挙に踏み切る可能性がある。」と述べている。
また、「与党プア・ペンディン党の造反組を内閣改造で再び与党陣営に取り込み、政権の強化を図る目論見。」と一部で報じられているが、ステープ副首相によれば、「今はどの政党も総選挙に目が向いている。この時期の内閣改造は意味がない。」とのこと。
12月24日(金)ステープ副首相は、コプサック首相秘書官(51)が辞表を提出したことを明らかに。「総選挙向けに政権党の民主党のマニュフェスト作成に専念するため、01月01日をもって秘書官を辞することにした。」という。
このため、「民主党が総選挙の準備に本腰を入れだした。解散・総選挙は近い。」との見方も出ている。
アピシット首相は、「まだ辞任を承認していない。」というが、12月中に承認するのは確実とのこと。なお、政界筋は、「この時期の首相秘書官の辞任は大きな意味がある。総選挙実施のシグナルと考えられる。」としている。タイ下院の任期は来年末までだが、「アピシット政権は法定最低賃金の大幅引き上げ、公務員の賃上げなどを矢継ぎ早に打ち出しており、来年前半に解散総選挙に打って出る。」という見方も。

* コープサク・サパーワス
1959年生まれ。米カリフォルニア州立ポリテクニック大学工学部卒。下院当選6回。2009年からタイ民主党副党首。1994~1995年副商務相、2009年副首相、2010年01月から首相首席秘書官。2010年のタクシン派の大規模デモではデモ指導者と直接交渉に当たった。
中部ロッブリ県で赤服姿の約300人が軍の施設前に集まって、「大規模反政府デモの際、軍が罪のない市民を殺害した。」、「兵士は人殺し。」などと声高に軍部を非難して気勢をあげた。「『治安部隊からの発砲で死者が出た可能性がある。』とする法務省特別捜査局(DSI)の流出情報を根拠に軍部批判を決めた。」としている。
関係筋によれば、「国外逃亡中のタクシンが妹のインラックを最大野党のプア・タイ党の党首に据えることを検討している。」という。
「タクシン派のプア・タイ党は、タクシンの強い影響下にあり、党の方針もタクシンの意向が色濃く反映されているとの見方が支配的。だが、党首選びに関しては、ミンクワン元商業相を推す声があり、ミンクワンを支持する議員グループがドバイを訪れ、タクシンに直訴した。」とのこと。ミンクワンは先に開かれたプア・タイ党議員の会合で、党を率いる用意のあることを明らかにしている。ただ、関係筋によれば、「タクシンは、インラックを党首に推すべきかをまだ決めかねている。」という。
12月27日(月)ステープ副首相は、政府庁舎で開かれた新年を祝うパーティーの中で報道陣に対し、「下院解散は、改憲案と予算案が議会を通過したあとの来年05月が望ましい。」との考えを明らかに。
アピシット首相も、2011年末の下院議員の任期満了前に下院を解散する可能性を示しているが、ステープ副首相は、「首相は03月に解散する考えのようだが、個人的には早すぎると思っている。」との見方。
タクシン派の野党プア・タイ党の下院議員がタクシン(61)が滞在するアラブ首長国連邦ドバイを次々と訪れている。来年に予想される下院総選挙を前に、「党主」であるタクシン氏に選挙資金を無心したり、首相を目指す派閥領袖への支持を訴えている模様。
選挙戦を戦う顔となるプア・タイ党の「党首」選びは混沌としている。ミンクワン下院議員(元商務相、58)を推すグループはドバイ訪問後の27日、タクシンの支持を取り付けたと主張したが、プロームポン党報道担当は「党首選びを急ぐことはない。下院解散が先だ。」と述べ、ミンクワン支持が固まったわけではないことを匂わせた。
プア・タイ党の党首には現在、元内務次官のヨンユットが就いている。ただ、ヨンユットは政治経験がなく、お飾り的な立場なのは明らかで、実際の党首候補はチャワリット党会長(元首相、元陸軍司令官、78)、チャルーム党下院議員会長(元内相、62)、ミンクワン、タクシンの妹で不動産会社社長のインラク(43)らと見られる。
このうちチャワリットは1997年のアジア通貨危機当時に首相を務め、有効な対策を打てないまま政権を投げ出した。その後は政治的な漂流を続け、能力やビジョンの欠如という評価が定着した。チャルームは論客として知られるが、自身の様々な汚職疑惑や3人の息子の殺人・暴行容疑などで、首相の資質にかけるという見方が専ら。ミンクワンはトヨタのタイ法人に28年勤務し経営幹部を務めた後、タイ国営テレビ会社MCOTの社長に転じ、MCOTの一部民営化・上場を指揮した。経営能力は証明済みだが、海千山千の政治家を束ね、特権階級・軍の後押しを受ける与党民主党と対決するのは荷が重い。
12月28日(火)刑事裁判所は、タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)チャトポン幹部(プア・タイ党議員)の保釈を取り消すとの法務省特別捜査局(DSI)の請求を却下し、同議員に対し、5人以上の政治集会への参加、メディアへの発言を禁止。
大規模反政府デモの責任を問われているチャトポンは、保釈中だったが、DSIは、証拠改竄を理由に保釈取り消しを求めていた。だが、裁判所は、「証拠改竄があったか定かでない。」として請求を退けた。ただ、「捜査の支障となり得る。」として、政治的な言動を禁止することになった。
チャイヤ、プア・タイ党議員は、「タクシンがミンクワン議員(元商業相)がプア・タイ党の党首選に立候補することに同意した。」と明らかに。
タクシンは、妹のインラックを党首に推す意向とされるが、ミンクワン派のチャイヤ議員らが先にドバイを訪れ、タクシンの説得に当たった。これに対し、タクシンは、「ミンクワンが党首選に立候補すべく党内で支持を呼びかけることに反対はしない。」と述べた。だが、現時点では、ミンクワンが十分な支持を集められるか定かではないとのこと。
12月29日(水)10時頃東北部サケオ県の国境地帯で、パニット民主党議員ら7人をカンボジア当局が国境侵犯の罪で逮捕。
逮捕されたのはタイの与党民主党のパニット下院議員、反タクシン派団体、民主主義市民連合(PAD)」メンバーのウィーラら。タイ外務省は「7人が実際にカンボジア領に入った。」という認識を示し、カンボジアに恩赦の形で7人の解放を求める模様。
カンボジアのフン・セン首相は同日、「彼らはカンボジア領内に侵入し国境未画定区域を測量していたので逮捕した。プノンペンで裁判を受けることになる。」と述べた。
一方、パニット議員が逮捕後に携帯電話で伝えてきたところによると、「国境の村から『1ケ月以上前からカンボジア兵が田畑に入り込んで困る。』との苦情を受け、このタイの村に向かったもので、村に到着するとすぐにカンボジア兵に捕らえられた。携帯電話など所持品を取り上げられたが、パニット議員がタイ・カンボジア国境委員会のメンバーであることなどを説明したところ、所持品が返却され、携帯電話でタイ側に連絡した。」とのこと。
12月30日(木)2008年08月22―~25日にクルングテープ都内のタイ国営テレビ局NBTを襲撃・占拠したとして、反タクシン派団体、民主主義市民連合(PAD)の支持者85人が公共物破損、不法侵入、銃器不法所持などの罪に問われた裁判で、1審のタイ刑事裁判所は、79人(報道により84人)に懲役9ケ月~2年半の実刑判決を下した。PADによる一連の襲撃事件で有罪判決が出たのは初めて。
ウィパワディランシット通りに位置するNBTは、デモ隊にガラス製ドアを割られるなどして60万B以上の被害を受けた。
タクシン派は「司法がタクシン派を厳しく取り締まる一方、反タクシン派を野放しにしている。」として、「司法のダブルスタンダード(二重基準)。」を主張しており、今回の判決でタクシン派の不満が和らぐと期待する向きもある。ただ、今回の裁判の被告に実業家のソンティ、チャムロン元都知事らPAD幹部は含まれていない。
民主党議員ら7人が国境侵犯などの容疑でカンボジア当局に逮捕された問題で、カシット外相が、急遽カンボジアの首都プノンペンを訪れ、ホー・ナムホン外相と会談したが、解放の要求は聞き入れられなかった。
プノンペン地方裁判所では同日、これら7人に対し、国境侵犯と軍事地域に悪意を持って入り込んだ容疑で裁判を行うことが告げられた。
また、アピシット首相は、「このようなことが起きた場合、逮捕せず、裁判にもかけないことが、両国間で合意されている。」と述べ、「カンボジアの合意を無視した今回の対応が2国間関係の悪化に繋がる。」と警告。
一方、タイ国軍首脳の間からは、「なぜ国境警備警察官や兵士を同行させなかったのか。」と、7人が護衛をつけずに国境地帯を視察したことに不快感を示す声も出ている。
2011年01月01日(土)民主党議員らタイ人7人が国境地帯でカンボジアに逮捕された問題で、市民団体「タイ愛国者連盟」が、クルングテープ都内ラチャダムヌン通の国連支部に対し、7人の釈放に協力するよう陳情。
今回、議員とともに反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)幹部も捕らえられたが、タイ愛国者連盟はPADと近しい関係にある。
01月04日にタイ東北部サケオ県のカンボジア国境で抗議集会を行う方針だが、事態のエスカレートを懸念するタイ当局は阻止する構え。 同団体が国連に提出した書類によれば、「7人が捕らえられたのはタイ東北部サケオ県コクスン郡内で、その土地の所有者はタイ当局発行の土地権利証と納税証明書を有しており、タイ領内で不当に逮捕されたのは明らか。」という。
一方、タイ外務省は逮捕に反発していたが、後に「7人が逮捕されたのはカンボジア領内。」との認識を示している。
外務省のターニー報道官は、民主党所属下院議員1人や愛国団体関係者等7人のタイ人が国境紛争地近くでカンボジア当局に身柄を確保され首都プノンペンに移送された問題に絡んで、カンボジアの正月期間が終了する04日以降に7人に対する保釈をカンボジア当局宛に申請する予定である事を明らかに。
現在カンボジア当局に身柄を拘束されているのは、外務大臣付補佐官経験もある民主党所属下院議員のパニット・ウィキットセートや民主主義市民連合傘下の愛国団体代表のウィーラ・ソムクワームキット及び同団体関係者の計7人。12月29日朝にサケーオ県コークスーン郡内の国境紛争地の視察に向かう途上でカンボジア軍により違法越境容疑で身柄を確保されていた。「身柄を確保された7人は、国境線近くにある国境警備警察隊の検問所から約50m離れた地点に車を駐車した上で、徒歩で国境紛争地に向け移動していた。」と見られている。
パニットは、電話取材に対して「タイ領内で身柄を確保された。」と語っていたが、その後カンボジアを訪問したカシット外務大臣が、「7人は何れもカンボジア領内に侵入した際に身柄を確保されていた。」と発言。
01月02日(日)ステープ副首相は、「2012年度予算案の審議終了後に議会を解散するのが最適切である。」との認識を示した。ステープ副首相は、「今年は各政党やグループが総選挙を意識して国民に対して良好な姿勢を見せるようになることから、今後政治情勢は改善の方向に向かうとの見通しを示した上で、議会の解散時期に関しては憲法改正及び関連法の制定を終えた後の06月ないしは11月に行われる。」との見通しを示した。更にステープ副首相は、「憲法改正に伴う関連法の改正・制定が必要になることから、改正案の議会通過が予想される02月の議会解散は難しい。」との認識を示し、「2012年度予算審議終了後に議会を解散するのが最も適切である。」との考えを示した。
一方、オンアート首相府大臣は、「景気が回復基調にあること、及び首相が全国各地を良好な雰囲気の中で訪問する事が可能な情勢になる事が前提条件になる。」と断った上で、「憲法改正の終了が予想される第一四半期終了後に議会が解散される。」との見通し。
01月03日(月)新聞報道によれば、アピシット首相は、「下院解散が遅れれば、政権の座にしがみついているとの印象を与えかねない。」として、「解散総選挙は今年上半期でなければならない。」との考えを明らかに。これは、昨年末のインタビューの中で首相が述べたもの。
下院解散がなければ、今年12月23日に下院議員の任期が満了し総選挙が行われることになるが、首相は、社会に安寧をもたらすためなら早期の解散総選挙もいとわないとしている。ただ、選挙戦略のためや脅迫に屈する形で下院を解散することはないとのこと。
また、首相(政権党・民主党党首)は、「総選挙がいつ行われるにしろ民主党が記録的な議席獲得を達成するのは間違いない。」としている。
国境地帯で民主党議員ら7人が逮捕されたことからタイ国内でカンボジア批判の動きが出ている問題で、「パニット議員が意図的に国境を侵犯し、これをアピシット首相が知っていた。」とするビデオクリップがインターネットに流れていることがわかった。
同行者が携帯電話で撮影したとみられるこの動画の中で、「パニット民主党議員は『われわれは今カンボジア領内にいる。このことをソムキアット秘書官を通じてアピシット首相に伝えてほしい。』などと携帯電話で会話しており、その内容から逮捕前の通話と考えられる。」とのこと。このため、「首相が国境侵犯を指示した。」との見方も出ている。
だが、パニタン政府報道官代行は、「首相がそのようなことを命令できようか。その必要もない。」と述べ、首相の関与を全面否定。また、ソムキアット首相秘書官も同日、パニット議員から連絡を受けたことは認めたものの、「電話があったのは逮捕後。」と説明。「国境侵犯が計画的で、これを事前に知っていた。」との見方を否定。
01月04日(火)アピシット首相は、民主党所属議員のパニット・ウィキットセートや民主主義市民連合傘下の愛国団体関係者等計7人のタイ人がカンボジア領内に不法に侵入したとして身柄を拘束されている問題で、「パニット民主党議員ら7人の釈放に向け政府が最善を尽くしている。」と説明。また、「両国の首相が話し合うべき。」とのいった意見も出ているが、アピシット首相は、「問題を複雑化させる恐れがあり、現時点で接触は必要ない。」との認識。このほか、首相は、「国内の対立を緩和し、タイ・カンボジア関係に悪影響が及ぶのを避けるため、パニット議員に対し、タイ・カンボジア問題への理解が不十分な人々と調整を行って国境を訪れるよう指示した。」と述べ、国境視察を事前に知っていたことを明らかに。今後の対応に関しては、あらゆるチャンネルを通して7人の早期帰国実現を目指す考えである事を明らかに。
だが、パニット議員が意図的に国境を侵犯したとされる動画がインターネットに流されたことについては、「断片的な映像だけで判断すべきではない。」として明言を避けた。
アピシット首相によると、「問題のビデオは20分以上あるものの内の一部分だけを編集したもので、またパニットが『現在タイ領内にいる。』と発言している部分がカットされている。」と述べた。
反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)」傘下の市民団体「タイ愛国者連盟」は、民主党議員ら7人の逮捕現場を視察することを条件に、05日に予定していた国境地帯での抗議集会を中止することに同意。同団体は「東北部サケオ県の国境地帯に数百人を動員して、逮捕に抗議する集会を決行する。」としていた。だが、団体幹部がサケオ県知事と話し合い、兵士の護衛のもとに幹部ら10人が逮捕現場を訪れることが許可されたことから、抗議集会の中止を決めたもの。なお、国境侵犯で逮捕された7人の中には、PAD幹部のウィーラが含まれている。
1989年にタイ人出稼ぎ労働者がサウジアラビアの宮殿から多数の宝飾品を盗み、タイでの捜査中にサウジアラビアの外交官、実業家らが殺害された、いわゆる「ブルーダイヤモンド事件」で、タイ法務省特捜局(DSI)は、18金のネックレスなど盗品とみられる5点を発見したことを明らかに。「発見した場所、経緯などは公表できない。」としている。
事件が発覚した当時、タイ警察は盗まれた宝飾品の一部を取り戻し、サウジアラビアに送り返したが、後に半数以上が偽物だったことが発覚。1990年には事件の捜査に関わっていた駐タイ・サウジアラビア領事が殺害され、直前まで領事と一緒だったサウジアラビア人の実業家が失踪。さらにサウジアラビアの外交官2人がタイで殺害され、サウジアラビアは以降、タイに大使を置かず、外交関係を引き下げている。また、捜査を指揮したタイ警察幹部は事件の参考人のタイ人宝石商の妻子を身代金目的で誘拐、殺害した罪で死刑判決を受けた。
事件は迷宮入りしたとみられたが、昨年02月の時効を前に、DSIがソムキット警察第5管区司令官を含む現職警官4人と元警官1人を失踪したサウジ実業家の殺人などで起訴。ソムキット司令官は昨年09月に警察長官補就任が発表されたが、サウジアラビアから外交圧力がかかり、昇進は見送りとなった。
「『ブルーダイヤモンド事件』の真相は警察とその背後の権力に繋がる。」と噂される。今回の不可解な「盗品」発見はこうした噂に真実味を加えそうだ。
夕方アピシット首相(46)は、新年の挨拶のため、都内のプレム枢密院議長(90)宅を訪れ、議長と約50分会談。
プレム議長はプミポン国王(83)の代理人的立場にあり、年末年始や議長の誕生日には、タイ軍幹部がそろって祝賀に訪れる。昨年末は12月30日にプラウィット国防相(元陸軍司令官)と陸海空及び国軍最高司令部の4司令官ら軍幹部が議長宅を訪れた。
アピシット首相も2008年末の政権発足以降、プレム議長の誕生日やタイ正月などに閣僚を引き連れ議長宅を表敬訪問している。アピシット政権は軍基地内に集められた与野党政治家の密室会合で発足し、軍を事実上コントロールするプレム議長をアピシット政権の後見人とする見方もある。
01月05日(水)タクシン派の最大野党プア・タイ党では、新党首の選出で意見が割れているとされるが、関係筋は、「タクシンが推しているとされる妹のインラックが党首ポストについて明言を避けている。」と明らかに。「党内では、インラックを支持する議員が多いものの、インラックはこれに応えるか否かを明確にしていない。」という。
一方、「既に名のりをあげている党幹部のミンクワン元商業相の周辺では支持獲得のための動きが活発化している。」という。同筋によれば、「ヨンユット現党首はカリスマ性や指導力に欠け、次期総選挙を戦えないとの意見が多く、このため、党首交代が必要とされている。」とのこと。
民主党プラナット報道担当は、同党のパニット下院議員を始め反タクシン派団体の民主主義市民連合(PAD)幹部ら合わせて7人が、カンボジアに不法侵入し拘束された事件について、「誤って侵入してしまった。」と発表。プラナット報道担当は、「当初パニット下院議員らが目標としていた地点から逆の方向に向かってしまい、カンボジアに侵入してしまったとし、地理感がなかったことが今回の不法侵入の原因。」と語った。
カシット外相は、カンボジア当局に逮捕された民主党議員ら7人の裁判が06日に行われることについて、「意図せぬ国境侵犯」と主張して保釈を求める方針であることを明らかに。また、「保釈が認められれば、06日のうちに7人が帰国できる。」との見通し。
タイ・カンボジア国境で政権党・民主党のパニット議員ら7人がカンボジア側に国境侵犯の容疑で逮捕された問題で、反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)を支持母体とするカンムアン・マイ党のスリヤサイ幹事長は、「一丸となって7人を助けるという姿勢が見られない。」とタイ当局の対応を批判。逮捕者にはPAD幹部も含まれている。
スリヤサイ事務局長によれば、「アピシット首相、外務省、陸軍がそれぞれ異なった見解を示しており、また、首相は発言内容が矛盾しており、カンボジアを有利にする結果を招いている。」という。
また、逮捕前にパニット議員が「今カンボジア領内にいる。」と携帯電話で誰かに伝えている動画がインターネットに流されているが、スリヤサイ事務局長は、逮捕現場が領有権の確定していない地域との認識からか、「7人は国境を侵犯していないと主張すべきだ。」としている。
反独裁民主主義同盟議長代行のティダー・ターウォンセート♀は、在タイのアメリカ大使と面会した際に不敬罪に該当する発言をしたとされるプレーム枢密院評議会議長やシッティ枢密院評議会議員、アーナン元首相に対する法的処分をアピシット首相に要求する方針である事を明らかに。Wikileaksが公開したアメリカの機密公電から、昨年01月にプレーム議長等がアメリカ大使と面会した際に、国王継承者関連で不敬罪に該当する発言が為されていた疑惑が持ち上がっていた。
ティダーによると、「06日10:00に代表者が首相宛の要求書を提出する予定。」という。
タクシン支持派は09日日曜日にクルングテープで反政府集会を開く予定。午後03時に民主記念塔に集結し、ラチャダムヌン通り、ペッブリ通りを通り、ラーチャプラソン交差点に移動。同交差点で蝋燭に火を点し、午後08時に散会。移動経路は変更される可能性がある。
01月06日(木)国境侵犯の罪でカンボジアに逮捕されたパニット民主党議員ら7人の裁判が、首都プノンペンで行われたが、タイ外務省のタニ報道官は、「カンボジアは07日が休日。このため、週明けの10日に保釈を請求する。5日以内に結果がわかる。」と述べ、「7人のうち何人かがスパイ容疑をかけられている。」との一部報道を全面的に否定。
また、タイは、「2国間関係に影響しない形でこの問題を解決することを望んでいる。」というが、カンボジア外務省の報道官も、「2国間の外交関係とは切り離して考えている。」と述べた。ただ、保釈が認められるか、もしくはフン・セン首相が恩赦適用を請求するかについては、「司法の手に委ねらており、これ以上話すことはない。」として、詳しく言及することは避けた。
01月07日(金)アピシット首相は、「国境侵犯の罪に問われている民主党議員ら7人にカンボジアの裁判所がどのような判決を下そうと、両国間の領土問題に対するタイの姿勢には影響しない。」と明言。判決が国境侵犯で有罪というものであれば、これに基づいてカンボジアが国境未画定区域の領有権を主張する可能性がある。しかし、「判決はカンボジアの司法当局の判断であり、タイ側が領有権問題で譲歩することはない。」とのこと。
01月09日(日)朝アピシット首相はテレビ演説で、国民への新年の贈り物として、低所得層の生活レベル向上を目的とする9つの政策を柱とした国民生活支援・福祉策の概要を発表。
非正規労働者、自営業者の社会保険加入、タクシー運転手に対するタクシー購入資金用の低利融資、バイクタクシーの登録制度、屋台営業場所の確保、電気消費量が少ない世帯の電気代無料化、犯罪発生率の20%削減などで、予算は約20億B。
11日の閣議承認を経た上で専門作業部会を設置し01月中の政策実行開始を視野に入れ詰めの検討を行う方針。
政府が今回打ち出した政策は現政権と敵対するタクシンの支持基盤である低所得者層の切り崩しを狙ったものと見られる。タイでは年内に解散総選挙が行われる見通しで、政府はすでに、公務員の賃上げ、最低賃金の引き上げなどを決めている。
プア・タイ党のプロームポン報道担当は、「アピシット首相が発表した9つの政策を柱とした国民生活支援・福祉策は、次期総選挙の票を意識した全く新味のないものでしかない。」と切り捨てた。
プロームポン報道担当によると、「9つの政策はタクシンが政権時代に取り組んだ国民生活支援策と寸分と違わないものでしかなく、政権誕生時に取り組むべき政策を今頃になって発表した背景に社会保険の適用対象外となっている2400万人の国民や月間に90ユニットを超える電力を使用しない900万以上の世帯、バイクタクシー運転手、露天商からの票を取り込みたいとの政府の思惑がある。」という。
午後タクシン派団体の反独裁民主主義同盟(UDD)は、昨年の大規模反政府デモで大勢の死傷者が出たことへの抗議および幹部釈放要求などを目的に、都内ラチャダムヌン通りの民主記念塔から目抜き通り をデモ行進。都内中心部のラーチャプラソン地区で大規模な反政府集会。約2万人(報道により数万人)がラーチャプラソン交差点を数時間にわたり占拠。周辺の交通が麻痺したが、警官隊との衝突はなかった。タクシン派のクルングテープでの反政府集会は昨年12月19日以来。
20時頃タクシンはラーチャプラソン交差点で開催された反独裁民主主義同盟・赤服軍団の集会会場で電話演説を行い、赤服軍団を激励。「「新しい年を迎えたタイに幸福と繁栄をもたらすため、私にできることは何でもする。民主主義を取り返し、(司法などが特権階級・反タクシン派とタクシン派を差別する)ダブルスタンダードを止めさせるために、できる限りのことをする。」などと約6分間にわたり演説し、集会参加者から歓声を浴びた。タクシンはまた、現在の居場所について、「ヨーロッパ上空を飛行機で移動中だ。」と話した。
一方、一端民主記念塔前に集結した後にバイク等を中心とした車列で移動した組と合流した形で行われたラーチャプラソン交差点での集会は、20:30頃に集会期間中に死亡した赤服軍団関係者慰霊のために蝋燭を灯した後、「今後も毎月継続的に都内で集会を開催し、現政権の打倒を目指す。」、「23日にラーチャプラソン交差点で再度集会を開催する。」と発表。午後08時40分頃に散会平穏裏に終了。
昨年04~05月の大規模反政府デモ以来、UDDが大規模な集会を行ったのは初めて。これは、非常事態宣言が昨年12月に全面解除されたことが最大の要因。反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)も近く大規模な政治集会を行う予定。
01月10日(月)先にタイ・カンボジア国境侵犯の疑いなどでカンボジアに逮捕されたパニット民主党議員ら7人のうち2人がスパイ容疑でも裁かれる可能性。カンボジアの裁判所関係者が明らかに。
7人は12月29日に東北部サケオ県アランヤプラテート郡ノンチャン村付近で捕らえられ、現在、カンボジアの首都プノンペンで国境侵犯と軍事地域侵入の容疑で裁判を受けているが、パニット議員に同行した、「反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)傘下の団体『タイ愛国者連盟』の調整係とその秘書の2人が、国家安全保障に関する情報収集の罪でも裁かれる可能性がある。」という。
タイ外務省は10日、7人の保釈請求の手続きを取ったが、新たな容疑が加われば、身柄拘束が長期化するのは避けられない見通し。
先のクルングテープ中心部のラーチャプラソン交差点での集会に保釈中のタクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)幹部のチャトポン、プア・タイ党議員が参加したことを問題視する意見が出ているが、法務省特別捜査局(DSI)は、「チャトポン議員の言動は捜査や裁判に影響するものではなく、保釈条件違反には当たらない。」とする見解。チャトポン議員は、昨年04~05月の大規模反政府デモに関連しテロ容疑で逮捕され、現在保釈中の身。
UDDが呼びかけた09日の集会は、数万人が集まり、チャトポン議員も参加。これについて、チャトポン議員は、「弁護士から『集会参加は問題はない』との説明を受けた。」と述べていた。
タクシン政権を倒した2006年09月のクーデターで主導的役割を果たしたソンティ陸軍司令官(当時)が、与党マトゥプーム党の年次党大会で党首に選ばれた。また、マン現副財務相が幹事長に選出された。同党の議員数は3人。
ソンティは党首に選出されたことについて、「感謝している。」と述べ、また、「クーデターでタクシン政権を追放したことが問題となるのではないか。」との質問に対しては、「私を批判する者もいれば、支持する者もいる。」と返答。
タクシン派の野党プア・タイ党は、アピシット政権の汚職を糾弾本を発表。題名は「汚職まみれの特権階級」。クルングテープ首都圏の鉄道網建設などの汚職疑惑を追求する内容で、全4巻。第1巻は初版1万冊で、報道関係者や一般市民に配る。
警察によれば、タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)がクルングテープ中心部で大規模な反政府デモを続けていた昨年04月29日にデモ隊200人あまりを率いてチュラロンコーン病院に乱入したとされるUDD自警団員の男(30)を東北部シーサケット県で逮捕。容疑は病院乱入と04月25日のバンハーン元首相宅への爆弾攻撃への関与。
自警団員らは、チュラロンコーン病院がUDDのデモ拠点のひとつ、ルンピニー公園の一角に近かったことから、治安当局が狙撃手などを病院内に配置していると疑い、建物内を捜し回った。
取り調べに対し、「病院に踏み込んだことは認めたものの、デモ隊を扇動した事実はない。」としており、また、「爆弾攻撃にも一切関与していない。」と主張。
01月11日(火)チャワノン外相秘書官は、先に国境侵犯の罪でカンボジア当局に逮捕され起訴されたパニット民主党議員ら7人のうち2人について、「検察がスパイ容疑でも裁くようプノンペン地方裁判所に求める手続きを取った。」と明らかに。同容疑で有罪となれば、5~10年の禁固刑となる。
チャワノン外相秘書官によれば、「タイ政府は7人の釈放を実現するため努力しているが、スパイ容疑が加わることで保釈がさらに難しくなるのは避けられない。」見通し。
クルングテープ最大のショッピングエリア、ラーチャプラソン交差点で、商店の経営者、従業員や周辺住民ら約2000人が集まり、「タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)の集会で商売や生活に影響が出ている。」と訴えた。
UDDは昨年04~05月の大規模反政府デモの際に拠点としたラーチャプラソン交差点で09日に数万人規模の集会を行ったが、「このような活動を定期的に実施する。」としている。
商人や住民は午前11時半ごろからゲイソンプラザ前でUDDを批判するとともに、アピシット首相への陳情書提出などを決めて約1時間後に散会。「09日の集会によって同交差点界隈での売り上げ減少は1億Bに上った。」とのこと。
01月12日(水)反独裁民主主義同盟のウォーラウット報道官代行は、23日に予定されている集会では、13:00にクルングテープのラーチャプラソン交差点に集結した後に 15:00から隊列を組んで民主記念塔に向け移動を開始し、同所に演台を設置した上で同日24:00頃迄を目処に集会を開催する方針を明らかに。
また、ラーチャプラソン交差点のショッピングセンターを中心とした事業者団体が、ラーチャプラソン交差点上で集会が開催される事に対して懸念を表明し、アピシット首相に対して適切な措置を講じるよう要求している事に関しては、同盟は「平穏を旨に活動を展開している。むしろ事業者は同盟に対する措置を要求する前に同盟及び拘禁されている幹部に対する公正な措置を首相に要求するべきである。」と指摘。
01月13日(木)昨年12月29日にタイとカンボジアの国境係争地域を訪れたタイの与党民主党のパニット・ウィキセート下院議員、タイ愛国者連盟(TPN)のウィーラら7人がカンボジア当局に不法入国などで逮捕、起訴された問題で、プノンペン市裁判所は、7人のうち、パニット議員ら2人の保釈を認めた。
保釈が認められた2人は、違法入国容疑及び軍管制域への無許可侵入容疑の2件の裁判終了までプノンペンに留まる必要があるため、帰国時期に関しては不明。2人は刑務所から在プノンペン・タイ大使館に移ったが、出国は禁じられているという。残りの5人に対する保釈の有無に関しては確認出来ていない。
タイ政府は7人がタイ東北部の国境係争地域から徒歩で数十m、カンボジア領内に入ったことを認めている。また、パニット議員が逮捕直前に携帯電話で「今カンボジア領にいる。」などと話す様子を撮影した動画が動画投稿サイト、ユーチューブに投稿されており、7人は有罪になる公算が大きい。タイは外交ルートを通じ、執行猶予付の判決や恩赦を働きかける模様。
一方、TPNは、クルングテープのタイ首相府前で数十人規模の抗議集会を開き、「7人が逮捕されたのはタイ領内だった。」として、タイ政府の「弱腰」を批判し、アピシット首相に退陣を要求。
01月16日(日)タクシン派の最大野党プア・タイ党の広報担当プロムポンは、「プア・タイ党が18日にも不信任決議案の提出時期などについて協議する予定だ。」と明らかに。プア・タイ党は不信任案審議で、昨年04~05月の大規模反政府デモへの政府の対応や汚職問題で政府の責任を追及する方針という。
また、下院議員の定数・選挙区と比例代表の議員比率を是正する憲法改正で、政権党・民主党が選挙区375人比例代表125人とする案を支持しているのに対し、中小与党が400人対100人案を主張している問題について、プロムポンは、「われわれは、(現行憲法の改正ではなく)1997年憲法の復活を求めるという方針に変わりはない。」と述べた。なお、1997年憲法では、選挙区400人、比例代表100人とされていた。
タクシン支持派は23日日曜日に都心のラーチャプラソン交差点で反政府集会を開く予定。09日に行われた前回の集会には約2万人が参加し、周辺の交通が麻痺。
01月17日(月)タクシン派の最大野党プア・タイ党で、幹部のチャルーム議員が、不信任案審議においてミンクワン元商業相が党を代表し、ミンクワンを次期首相候補とする動きに反対し、「審議に参加しない。」との姿勢を示した。
関係筋によれば、「ミンクワンを前面に出して不信任案審議を進めることは、ミンクワンを推す議員グループがタクシンに頼み込んで了承を得たものだが、党内はミンクワン支持でまとまっているわけでなく、反対意見が出ている。」とのこと。
また、チャルーム議員は、「『政府の責任を厳しく追及すべき。』として、ミンクワン支持グループが『党の方針を国民に知らせる友好的な不信任案審議』を提唱していることに不快感をあらわにしている。」という。ただ、チャルーム議員は、「質疑に立つ議員に情報を提供する用意がある。」と、間接的に協力する姿勢は示した。
01月18日(火)国境侵犯などで民主党議員ら7人が逮捕・起訴された問題で、カンボジアの控訴裁判所は、先の2人に続き4人の保釈を許可。反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)傘下の市民団体「タイ愛国者連盟」コーディネーターのウィーラ・ソムクワームキットだけ保釈が認められなかった。
裁判所は午前07時30分頃から保釈請求の検討を開始し、約1時間後に4人保釈の決定を下した。ウィーラは法廷から出てくると、報道陣に対し、「保釈が拒否された。最高裁まで戦う」。と叫んで、そのまま護送車で刑務所に送致された。なお、保釈された6人は、プノンペン地方裁判所での裁判が終わるまで出国禁止。
タイ愛国者連盟がカンボジアに逮捕された者らの釈放に向けタイ政府に圧力をかける動きをみせていたことから、これを潰す狙いがあったとも考えられる。」とのこと。タイ政府は逮捕された7人がタイ東北部の国境係争地域から徒歩で数十m、カンボジア領内に入ったことを認めている。また、パニット議員が逮捕直前に携帯電話で「今カンボジア領にいる。」などと話す様子を撮影した動画が動画投稿サイト、ユーチューブに投稿されており、7人は有罪になる公算が大きい。タイ側は外交ルートを通じ、執行猶予付の判決や恩赦を働きかける模様。
クルングテープ都内パトゥムワン区のレストランで、2008年11、12月に反タクシン派団体、民主主義市民連合(PAD)の支持者数千人がスワンナプーム国際空港とドンムアン空港を占拠した事件で、警察は、PADと分派組織、タイ愛国者連盟(TPN)の幹部であるチャイワット元工業相とソムブーン元上院議員をテロ容疑などで逮捕。警察は先に、出頭命令に応じないとして2人を含む11人の逮捕状を取っていた。
だが、逮捕された幹部らは「『自ら警察に出頭する。保釈は求めない。』と表明した後、警察に向かう途中で食事を取っていたところを逮捕された。」とも報じられており、「不自然な逮捕」との見方が出ている。
「TPNは昨年末にタイとカンボジアの国境係争地域を訪れたタイの与党民主党のパニット下院議員、TPN幹部のウィーラら7人がカンボジア当局に不法入国などで逮捕、起訴された事件で、タイ政府の対応を「弱腰」と批判。クルングテープの首相府前の路上にテントを設営して反政府座り込みデモを開始したほか、18日には首相府から王宮まで数百人でデモ行進し、7人の解放に向けプミポン・タイ国王の介入を求める嘆願書を王室事務局の職員に提出した。警察はその数時間後にチャイワットらを逮捕し、TPNは反発を強めている。
タイの現政権はPADによる2空港占拠中にタクシン派与党が選挙違反で解党されたことを受け発足した反タクシン派政権。タクシン派政権を打倒した経緯から、政府・民主党とPADは同盟関係にあったが、PADは自前の政党を設立し本格的な政界進出を目指しており、年内に行われる見通しの総選挙を前に、領土問題で強硬姿勢をみせ、保守派の支持拡大を狙っている模様。
タクシン派野党のプア・タイ党の下院議員団長を務めるチャルーム・ユーバムルン警察大尉が、「3つの提案が党に受け入れられなければ、政界から去るか、離党して新党を立ち上げるしかない。」と明言。
提案は、「次期総選挙でタクシンを前面に出して支持を呼びかける。」、「不信任決議案審議を初めとする党の政策を全面的に改める。」、「次期総選挙で党がクルングテープで擁立予定の候補者リストを見直す。」の3つ。
3ケ月以内に方針に変更がない場合、プア・タイ党を離党して新政党「タークルアン・マイ(新選択肢)党」を設立する。現在、「チャート・タイ党のチューウィットと共同で新党を設立する。」との憶測が飛び交っている。
これに先立ち、タクシンからの後押しを受けているとされる、チャルームとライバル関係にあるミンクワン・セーンスワンを不信任決議案審議進行のリーダーに据える動きが党内にあるのに対し、これまで不信任決議案審議のリーダーを務めてきたチャルームが「ミンクワン主導の審議への参加を辞退する。」と発言した事を受け、「チャルームが党を離脱し新党を結党するのではないか。」との憶測が広がっていた。
関係筋によれば、「総選挙に向け、プア・タイ党では選挙戦を有利に戦うため、タクシンの妹を党首に担ぎ出す動きやミンクワン元商業相を党首に据えようとする動きが報じられているが、チャルームは、タクシン色を抑えようとする勢力台頭を嫌い、離党の構えを見せて不満を表明したとも考えられる。」とのこと。
風俗王でチャート・タイ党所属元下院議員のチューウィット・カモンウィシットは、自らを党首とするラック・プラテートタイ党を設立した事を明らかに。「既に約5000人の党員を確保しており、また所定の手続きを経て党の設立が承認されている。」という。
一方、「プア・タイ党からの離脱を示唆しているチャルーム・ユーバムルン警察大尉との間で新党設立に向けた話し合いが行われていた。」とされている事に関しては、チャルームや元クルングテープ都知事候補でコラムニストのニティプーム・ナワラットとの間で新党設立に向けた話し合いが行われていた事を認めたが、合流の可能性等の詳細に関しては、「まだ話すべき時ではない。」として言及を避けた。
チューウィットによると、同日夜に出席を予定している「チャルームの長男の結婚披露宴の際に今後の新党設立に向けた動きの方向性が明確になる可能性がある。」という。 前後してチャルームも、チューウィットとの間で新党設立に向けた話し合いが行われていた事を認めたが、今後の動きに関しては明言を避けている。
01月19日(水)「反タクシン組織民主主義市民連合(PAD)傘下の市民団体『タイ愛国者連盟』の幹部2人が出頭の意向を示していたにもかかわらず、警察が2人を無理やり逮捕した。」とされる問題で、ステープ副首相は、「2人は出頭命令に従わず、逮捕状が出ていた。警察は2人を逮捕するしかなかった。」と、逮捕を正当化。
一方、タイ愛国者連盟は、「公衆の面前で幹部らを警察官が数人がかりで無理やり抱えてピックアップトラックの荷台に載せて連行したのは行き過ぎだ。」として、ウィチアン警察庁長官に抗議書を提出。
2人は、PADデモ隊による2008年の空港占拠事件に関連したテロ容疑をかけられている。 一方、国境地帯でタイ愛国者連盟関係者ら7人が逮捕された問題で、タイ愛国者連盟がタイ政府の対応を批判、抗議活動を拡大させる動きを見せていたときだ「けに、幹部2人の逮捕に対しては、この動きを頓挫させる狙いがあった。」との見方も出ている。
なお、2人の逮捕時の様子は、タイ愛国者連盟関係者が撮影したとみられる動画がユーチューブにアップされている。
反タクシン派団体「民主主義市民連合(PAD)」の分派組織「タイ愛国者連盟(TPN)」がカンボジアとの国境問題でタイのアピシット政権を「弱腰」だと糾弾し、クルングテープの首相府前で座り込みデモを開始。参加者は新興仏教団体「サンティアソーク」の支持者を中心に数百人程度だが、首相府前のピッサヌローク通りの一部を占領し、交通に支障が出ている。
PADは2008年に首相府やスワンナプーム空港などを占拠した政治団体。今月25日にはTPNの反政府デモに加わる予定。PADは反タクシン派のアピシット政権と「同じ側」に属しているが、反タクシン派の前線に立った割には、2008年末のアピシット政権発足後の見返りが乏しかったもようで、政府との関係はギクシャクしている。PADは年内に予想される下院総選挙に自前政党で参戦する見通しで、国境問題での強硬姿勢で政府・民主党との違いを際立たせ、保守票の取り込みを図る模様。
チャーイ国会議長(下院議長)は、国会開幕が21日に決まったことを受け、先に第1読会を通過した改憲2案の第2読会、最終読会を01月25日と26日に行う考えを明らかに。この日程は、政府首脳の提言に従ったもの。
また、チャーイ議長によれば、「議会による国際条約の承認に関する憲法190条の改正案は比較的すんなりと意見がまとまることが予想される。」という。しかし、「下院議員の選挙区/比例代表比率と定数に関する憲法93~98条の改正案は、与党内でも375人/125人の500人、400人/100人の500人のどちらにするかで意見が割れており、また、与党第2党のプームチャイ・タイ党が先に400人/125人の525人を提案たこともあり、紛糾する可能性が高い。」とのこと。
法務省特別捜査局のターリット局長は、反独裁民主主義同盟が集会活動を展開していた04月10日に発生したデモ隊と治安当局との衝突の際に盗んだ銃器を使用して軍関係者や住民に向け銃を発砲した容疑で、同盟の自警組織に所属していた男をノンタブリー県内の愛人宅内で逮捕した事を明らかに。記録されていた画像や動画、目撃証言等から男が、衝突の際に目撃された黒覆面集団の一員として軍関係者等に向け銃を発砲していた疑いが浮上していた。詳細に関しては、20日午後に予定されている記者会見の際に明らかにされる予定。
01月20日(木)法務省特別捜査局(DSI)のターリット局長は記者会見で、、反独裁民主主義同盟(赤服軍団、UDD)の集会期間中に死亡した治安当局者を含む89人のうち、8件12人が同盟の攻撃により死亡し、8件13人が治安当局の攻撃により死亡した可能性が高い事を明らかに。デモ関連死は合計91人に上るとされるが、DSIは89人について調査を行っている。
同盟の攻撃による死亡者には、昨年04月10日の衝突の際に狙撃により死亡した現場指揮官の大佐やセントラル・ワールド放火の際の死亡者が含まれ、治安当局の攻撃による死亡者には既に国家警察本部が捜査を引き継いでいる日本人カメラマンやパトゥムワナーラーム寺内の5人の内の3人、ドゥシット動物園前での死亡者、アヌソンサタターン近くで死亡した兵卒が含まれている。また、残りの18件64人には、カッティヤ・サワディポン少将、イタリア人記者等が含まれており、「何れも衝突による混乱した状況の中で発生していたため、証拠収集に困難を極めている。」という。「残りの死亡例64人に関してはどちらに責任があるか定かでない。」としているが、「今後も調査を続け、進展があれば発表する。」という。
警察の仲立ちによる反独裁民主主義同盟(UDD)とラーチャプラソン交差点の商店主らによる2回目の話し合いが行われ、「ラーチャプラソン交差点での日曜日の大規模集会が商売に影響する。」との訴えに対し、影響を最小限に抑える形で集会を行うことを合意。
それによると、UDD支持者は正午に交差点に集まるが、午後03時にはラチャダムヌン通りの民主記念塔に移動し、そこで深夜まで集会を行うとのこと。
01月21日(金)夜/TD>カンボジアの司法当局は、違法越境及び軍管制地区への無許可侵入で身柄を確保されていた民主党所属のパニット議員を含む5人のタイ人に対して、執行猶予付き禁固9ケ月及び罰金10万リエル(約1万B)の支払いを命じる判決を下し、同日付で5人を釈放。釈放された5人は、必要書類が整い次第タイに帰国する予定。この5人は再び国境を侵犯した場合、執行猶予が取り消される。
違法越境及び軍管制地区への無許可侵入に加えてスパイ行為で起訴されている民主主義市民連合傘下の愛国団体幹部のウィーラ・ソムクワームキット及び秘書のラートリー・ピパッタナー♀に対しては02月01日に判決が下される予定。
01月22日(土)陸軍第2管区は、「国境未画定区域内にカンボジアが設置した石板に容認しがたい内容が刻まれている。」として、これを撤去するようカンボジア軍に要請。
タワッチャイ同管区司令官によれば、石板は世界遺産カオ・プラウィハーン近くの国境未画定区域(4.6㎢)内にカンボジア軍が、タイ軍が昨年12月01日に国境地帯の寺院から撤退したあとに設けたもので、タイ兵を名指しして「侵略者」と非難するカンボジア語が刻まれている。タイ軍がその寺を訪れたのは、2008年07月に国境地帯でカンボジアに捕らえられたタイ人3人の釈放についてカンボジア当局と話し合うためだった。
タワッチャイ司令官は、「カンボジアが石板を撤去しないなら、タイ軍も(カンボジア軍を非難する)同様の石板を設置する。」と述べている。
国境侵犯と軍事地域侵入の罪で先に執行猶予付き禁固刑を受けたパニット民主党議員ら5人が、スワンナプーム空港に帰国。
アピシット首相は、関係当局の代表を招集して、有罪判決に対する対応を協議。タイ政府は現在、判決文をタイ語に翻訳するようカンボジア政府に要請しており、「タイ語訳に基づいて判決が領土紛争におけるタイの領有権や主張に影響するかを判断する。」としている。
一方、憲法では、執行猶予付きであっても自由刑(禁固や懲役など)を受けた者が国会議員であることを禁じており、中央選挙管理委員会がパニット議員の議員資格について検討することになった。
「外国の裁判所の判決は、議員資格に影響しない。」との意見もあるが、ソットシー中央選管委員は、「憲法の規定は、『いかなる裁判所の判決も議員資格に影響する。』とも解釈できる。」としている。
01月23日(日)カンボジアとの領土問題で政府の姿勢を「弱腰」と批判している反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)、PAD傘下のタイ愛国者連盟(TPN)、仏教宗派「サンティ・アソーク」が01月25日にも大規模な反政府集会を決行する構えを見せているが、アピシット首相はテレビ番組の中で、「2000年にカンボジアと取り交わした領有権問題に関する覚書の承認を取り消すといった要求には応じられない。」と述べ、圧力には屈しない姿勢を明らかに。
PADは、「覚書がタイの立場を不利にしている。」と主張。だが、これに対し、アピシット首相(民主党党首)は、「覚書破棄は武力衝突を招くだけ。」と警告するとともに、「(PADとタイ愛国者連盟の)狙いは現政権を退陣に追い込むこと。」と批判。さらに、「政府庁舎占拠(2008年にタクシン派のサマック政権に退陣を迫るためPADがとった戦術)を繰り返させはしない。」と明言。
なお、政権党の民主党もこれらグループも反タクシンでは一致しているが、領有権問題ではPADなどが「主権を守るためには譲歩は許されない。」との原則重視の姿勢を貫き、政府を「弱腰」と批判。このなか、先に国境地帯でタイ愛国者連盟関係者を含むタイ人7人がカンボジア兵に逮捕される事件が発生。その対応を巡って政府と反タクシングループの対立が激化しつつある。
タクシン派団体の反独裁民主主義同盟(UDD)がクルングテープ都内民主記念塔近くで2万人規模(報道により数万人規模)の大規模集会。UDDは当初、都内の商業地区で集会を予定していたが、商業地区の関係者らの反発が予想以上に大きかったことから、集会場所を民主記念塔に変更し、深夜まで集会を続けた。警官隊との衝突はなかった。UDDは昨年後半から、クルングテープや地方都市で半日程度の反政府集会を度々開催。クルングテープでは参加者が毎回1~3万人に達している。UDDは、大規模集会への批判を考慮してか、これまで月2回としていた反政府集会を月1回のみとする方針。 一方、民主主義市民連合(PAD)などの反タクシン派が01月25日から政府庁舎近くで抗議集会を予定していることから、警察当局は、タクシン派と反タクシン派の衝突を懸念。このため、厳重な警戒態勢を取る姿勢を示しているが、タクシン派の最大野党プア・タイ党の広報担当プロムポンは、「PADらに集会を行わせて、非常事態宣言をクルングテープに再び適用する魂胆。」との見方。
国境侵犯の罪でカンボジア当局に逮捕され、先日タイに帰国したタイネーら3人が、約20日間に及ぶカンボジアでの勾留生活を報告。
仏教団体「サンティ・アソーク」の信者タイネー、およびパニット民主党議員など7人は12月29日、タイ東部の国境近辺にいたところを「不法入国」との理由でカンボジア警察に逮捕された。 タイネーはプノンペン市内での勾留の様子について、「まるで鳥籠に閉じ込められたような気分だった。なぜ逮捕されたのか疑問のまま、1日のうち20時間は監房の中にいることを強要され、中庭に出られるのは1時間だけ。犬のような気持ちになった。」、「しかし、人生や仏教の教えついて熟考するなど、貴重な時間でもあった。」と振り返る。
国境侵犯とされたことについては、「自分ではタイの領土内にいた積もりなので、カンボジア警察に不法入国の理由を問われても答えられなかった。それが逮捕に繋がった。」としている。
01月24日(月)反タクシン派団体、主主義市民連合(PAD)は25日、クルングテープの首相府とその近くの国連事務所前で反政府集会を開く予定。首相府前ではすでに、PADの分派、タイ愛国者連盟(TPN)がテントを設営して座り込みデモを開始しており、25日のデモは数千人規模になる見通し。
PADはカンボジアとの国境紛争でタイ政府に強硬姿勢をとるよう求めており、タイとカンボジアが2000年に交わした国境問題に関する覚書の破棄、カンボジアの山上遺跡カオ・プラウィハーンが2008年に世界遺産に登録されたことに抗議する世界遺産委員会のボイコット、タイ・カンボジア国境係争地域内のカンボジア人追放などを要求。
タイのタクシン支持派と反タクシン派は25日、クルングテープの別々の場所で反政府集会を開催予定。治安当局は反タクシン派による首相府占拠や両派の衝突を阻止するため、警官3000人を動員。
カンボジアで執行猶予付き禁固刑を受けたパニット民主党議員の議員資格喪失の疑いが浮上している問題で、中央選管のソットシー委員は、「下院議員が憲法裁判所に判断を求めるのが望ましい。」との考えを明らかに。
憲法では、「執行猶予付きでも禁固刑を受けた者は議員資格を失う。」と規定されている。だが、外国での有罪判決がこれに当たるかが定かでない。この問題については、中央選管が24日に検討する予定だったが、委員が多忙などの理由で検討されなかった。
ソットシー委員は、「下院議員の3分の1が賛同すれば、選管の検討を経ずに直接憲法裁に判断を求めることが可能。」としている。
反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)がカンボジアとの領土紛争への対応を巡って政府を批判して覚書破棄などを要求し、これを支持するPAD傘下の市民団体、タイ愛国者連盟と仏教宗派、サンティ・アソークが首相府近くで抗議集会を開催。これに加勢する形でPADが首相府近くのラチャダムヌンノーク通りマカワンランサン橋で集会の準備。
17時頃、警察は、PAD集会予定地にほど近いミサカワン交差点で手製爆弾2個を隠し持っていたタワチャイまたはダム・イアムナック(37)を逮捕。警察は、挙動不審なタワチャイを確認。職務質問・所持品検査で爆発物を見つけた。爆弾は、携帯電話を起爆装置にしたものと爆破時刻を19時45分に設定した時計仕掛けの2個。

← 左から、ドン・マーター(42)とタワチャイ・イアムナーク(37)。

タワチャイは、8ケ月前の赤服の暴動の際、ラーチャプラソン、ソイ・ランナム、サムットサコーン県での3つの事件の関与を認めた。また、タワチャイの供述に基づき、クルングテープ都ラーマ2世通りの民家を捜索。ドン・マーター(42)、ノップクン・クルワングモングクン(60)、ウィワットまたはチェーヤ・ワタナサクンイム(60)、マーナット・ランラット(52)の4人を逮捕、擲弾発射器1丁、擲弾34個などを押収。タワチャイは、「自分はバイクタクシーの運転手で、サンティアソークの集会場近くに爆弾を仕掛けるよう雇われた。」と認めている。
タワチャイは、「PADの集会をぶちこわし、首相府に爆弾攻撃を仕掛けるために雇われた。」、「4ケ月前にUDDの抗議集会でポンという名前だけを知っている男が爆弾を渡され、預かるように頼まれた。」と供述。タワチャイの友達のドンら4人は、政治的立場を同じくし、保管には同意したが、警察が武器や爆薬を発見するのを恐れ、処分する予定だったが、処分する前に逮捕された。ドンは、「武器や爆薬を使こうとは思わず、利用するための知識もなかった。」と述べている。
この事件について、アピシット首相は、「関係当局から報告を受けた。だが、背後関係などはまだ不明。」と述べた。
首相府周辺ではカンボジアとの国境紛争に関するタイ政府の対応を不満とする保守派団体、タイ愛国者連盟(TPN)と新興仏教団体、サンティ・アソークが座り込みのデモを行っている。25日には2008年に首相府やスワンナプーム空港などを占拠した反タクシン派団体、民主主義市民連合(PAD)がデモに加わる予定だった。PADは5人の逮捕後も計画を変更せず、25日午後から反政府集会を始める。
今回の事件についてPAD系の有力紙ASTVプーチャッカーンは「逮捕された5人がタクシン支持派団体の反独裁民主主義同盟(UDD)のメンバーだ。」と報じた。UDD幹部のチャトポン下院議員はUDDの関与を否定している。
25日夕方にクルングテープの首相府からやや離れたラチャダムヌンクラン通りの民主記念塔で、「タイ・カンボジア関係を悪化させ、軍部にクーデターの口実を与える。」と、反政府集会を予定していたUDD系団体「6月24日民主主義」は計画通り集会を行う方針。
01月25日(火)反タクシン派団体の民主主義市民連合(PAD)が、クルングテープ都内マカワーン・ランサン近く首相府前のラチャダムヌンノーク通りで座り込みで抗議集会を開始。首相府周辺は約5000人に及ぶデモ隊で埋め尽くされた。抗議集会の長期化に備え、PADは首相府周辺には簡易トイレと簡易シャワー室をそれぞれ60個設置。
PADは、領土問題に関するカンボジアとの覚書の破棄、世界遺産委員会からの脱退、国境未画定区域からのカンボジア人住人の排除の3つを政府に要求。「政府がこれを受け入れるまで抗議活動を続ける。」とのこと。
これに対し、ステープ副首相は、「無理な要求を飲む積もりはない。」と語った。
警察によると、参加者は同日夕方で2000~3000人、26日朝は500人程度。
軍関係筋によれば、カンボジアが国境地帯で挑発的行為を続けていることから、タイ軍が「軍事行動も辞さず。」との姿勢を示すべく国境地帯での軍事演習を進言し、アピシット首相がこれを許可。
2国間では国境未画定区域の領有権を巡って、これまでにも何度か論争が起きており、軍事衝突で死傷者も出ているが、カンボジア軍は先に、タイを「侵略者」と非難する石板を同区域内に設置してタイを刺激。この石板は01月25日、カンボジア軍によって新しいものに取り替えられることになったが、その石板には、「ここはカンボジア領」と記されており、タイはさらに反発を強めている。さらに、カンボジアが国境未画定区域に近い世界遺産カオ・プラウィハーンに続く道路を建設しており、これにもタイが強い不快感。
ラチャダムヌンノーク通りミサカワン交差点で爆弾を所持していたタワチャイ・イアムナークが逮捕され、その自供からさらに4人が捕らえられ、擲弾などが押収された事件で、反タクシン派の民主主義市民連合(PAD)、タクシン派の反独裁民主主義同盟(UDD)の双方から、「デモ隊を動揺させるとともに、PADとUDDの反目を煽り衝突を促すべく、当局が仕組んだもの。」との見方。
PAD幹部のプラパンは、その根拠として、「管轄外の警察官がタワチャイを逮捕しており、地元の警察が何も知らなかったのは不自然。」としている。なお、「逮捕にかかわった警察幹部は、ステープ副首相(治安担当)と近しい関係にある。」とのこと。
01月26日(水)カンボジア軍がタイ軍の要求を受け入れて、国境未画定区域内に設けた、レンガを塗り固めた壁状のメッセージボードを取り壊したことで、国境地帯で高まっていた緊張が緩和。
カンボジア軍は先に「侵略者」などとタイ軍を非難するボードを建ててタイ軍の反発を買ったが、これに替えて「ここはカンボジア」と書かれたボードを設置したことから、タイ軍がさらに反発を強め国境地帯で軍備を増強。カンボジア軍も同様の対応をとり一触即発の状況となっていた。だが、タイ陸軍第2管区のタワッチャイ司令官がカンボジア軍の司令官らと会って、「国境未画定区域には領有権を主張するものを設けないことで両国が合意しているはず。」などと主張し、ボードの撤去を要求。約1時間に及んだ話し合いの末、カンボジア側が要求を受け入れる形でボードを取り壊した。カンボジア軍の司令官らは当初、「外相からボード設置の命令があった」などと説明。
カンボジアとの領有権問題を受け、民主主義市民連合(PAD)など反タクシン勢力が政府庁舎周辺で大規模な反政府集会を開始した問題で、アピシット首相は、「政府もPADも領土を守ることを最終目標としているが、手持ちの情報が異なるようだ。」と述べ、交渉によって意見の相違を解消して集会に終止符を打つことが可能との見方。「PADとの交渉を実現すべく現在、政府関係者がPAD関係者に連絡を取っているところ。」という。
だが、今のところ、PADは、「政府とは交渉しない。」(最高幹部のチャムロン元クルングテープ都知事)との姿勢を崩していない。
アピシット首相は、「現在進められている憲法改正が早ければ02月末か03月初めには完了する。04月に下院を解散する可能性がある。」と述べた。首相は以前から、「憲法改正、政治的安定、経済回復の3つが早期の解散総選挙の条件」と述べている。
下院の任期は年末まであるが、政権に居座り続ければ、反タクシン派が2空港を占拠した2008年、タクシン派がクルングテープ都心部を占拠した2010年と同様に様々な政治勢力の街頭デモが過激化する恐れがあり、早めの解散総選挙でガス抜きを図る。総選挙は解散から45~60日に行われる。
政治的安定に関しては、民主主義市民連合(PAD)が大規模な反政府集会を開始したことから、波乱を懸念する声が出ているが、首相は、「PADが秩序を乱さず、法律を守る限りは問題はない。」としている。政府と与党民主党は低所得者層支援や公務員の賃上げといった選挙対策をすでに講じ、国会で審議中の選挙制度改革に関する改憲が02月上旬に可決承認されれば、総選挙への障害はなくなる。民主党は各種世論調査でタクシン派の野党プア・タイ党に対し優勢で、総選挙後、現在の連立の枠組みで政権を維持する可能性は高い。
「04月解散」については、「反政府活動の拡大に抑えるための牽制。」との見方も。タクシン派の最大野党ブア・タイ党も、「首相の発言には裏付けがない。」として、内閣不信任案を提出する構えを崩していない。
一方、過去数年タイ政局の混乱要因となった街頭デモは農閑期で拡大する傾向。タクシン派団体、反独裁民主主義同盟(UDD)は昨年12月と今年01月に2~3万人規模の反政府集会を開催。さらに、タクシン派政権追放で民主党と共闘したPADが政府の対カンボジア外交を「弱腰」と批判し、25日からタイ首相府前で座り込みデモを始めた。タクシン派、反タクシン派双方のデモは混乱の拡大、反タクシン派の一部特権階級による軍事クーデターを引き起こしかねず、こうした危険を避けるためにも、解毒剤として総選挙が必要。
01月27日(木)タクシン派の野党プア・タイ党のチャトポン下院議員が、信頼できる筋の話として、「軍高官らが25日に集まってクーデターを起こす計画を話し合った。」と主張したことについて、政府、軍部、そして、プア・タイ党幹部からも批判が続出。
治安担当のステープ副首相は、「クーデターによる権力掌握を望むグループがいるかもしれないが、過去2年一緒に働いた軍幹部、特に(プラユット)陸軍司令官は民主主義を愛する人だ。国家はその(民主主義の)方向に進まなければいけない。」と述べ、クーデターを狙う勢力が存在することを事実上認め、こうした動きを牽制。一方、プラウィット国防相(元陸軍司令官)はチャトポン議員の発言を「無責任だ。」と一蹴。
さらに、プア・タイ党の広報担当プロムポンやスポン幹事長も、「政治的な駆け引き。」、「軍部は過去の経験からクーデターが解決策となり得ないことを学んだはず。」などとチャトポンの発言に否定的見解を明らかに。
「カンボジアが世界遺産カオ・プラウィハーン近くの国境未画定区域内に国旗を立てた。」との報道に対し、アピシット首相は、「カンボジアにそのような権利はない。報道が事実であれば、国旗は撤去されなければならない。」と明言。
カンボジアは先にタイ軍を「侵略者」と非難するメッセージボードを同区域内に設置してタイの反発を買い、いったんは撤去したが、その直後、「ここはカンボジア」と記されたメッセージボードを設置。これに憤慨したタイ軍の求めに応じて、ボードは取り壊されることになったが、今度は国旗を立てて領有権を主張するという手段に出た。
なお、アピシット首相は、まだ詳しい報告を受けていないようで、「国旗が具体的にどこに立てられたか知らない。」としている。
政府庁舎周辺で大規模集会を行って領土問題でカンボジアに強硬姿勢をとるよう迫っている反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)に対し、政府が交渉を働きかけているが、PAD最高幹部の1人チャムロン元クルングテープ都知事は、「話し合いの用意はある。だが、政府は主権を守ることについて明確な方針を示しておらず、交渉しても成果は望めない。」と、政府の姿勢を批判する見解を明らかに。また、チャムロンは、政府に譲歩するつもりのないことを再確認。
一方、PAD支持派だったカシット外相は、「無理を言って駄々をこねる子どものようだ。」と一転、PADを非難。カシット外相によれば、「PADは、カンボジアとの覚書の破棄、世界遺産委員会からの脱退、カンボジア人住民の国境未画定区域からの排除を求めているが、政府はいずれの要求も受け入れるつもりはない。」とのこと。
アピシット首相が先に、「憲法が予定どおりに改正されれば、04月の下院解散もあり得る。」と述べたことに対し、最大野党プア・タイ党のスポン幹事長は、「首相は権力の座にしがみついている。04月の解散はない。」と言い切った。スポン幹事長によれば、「政権を担う者が下院解散を言い出すのは、それが政権に有利な状況を作り出すか、あるいは、政権側が優勢な場合に限られる。このため、『04月解散発言』に下心があるのは確実で、鵜呑みにすることはできない。」とのこと。
01月28日(金)未明アピシット首相は世界の政財界のトップが集まる世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)に出席するため、タイを出発した。帰国は31日の予定。
反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)」が領土紛争への政府の対応を批判して政府庁舎周辺で大規模な集会を続けている問題で、PAD最高幹部の1人、チャムロン元クルングテープ都知事は、政府が交渉のために代理人を派遣したのに対し、「話し合ったとしても時間の無駄。」と述べ、交渉に応じない姿勢を再確認。
政府は「話し合えばわかり合えるはず。」としているが、チャムロンは、「今は話し合うときではない。政府はわれわれが要求していることをやればよい。」と突っぱねた。
PADの要求は、2000年にカンボジアとの間で取り交わした国境紛争に関する覚書の破棄など3点。
01月29日(土)領土問題への正否の姿勢を批判して反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)が首相府周辺で大規模な抗議集会を続けているが、カンボジアは国境未画定区域内に立てた国旗の撤去を要求するPADに反発し、国境地帯の軍備を増強。このなか、ステープ副首相(治安担当)は、PADに対し、過激なカンボジア批判を控えるよう求めた。
PADは、領土問題でカンボジアに強硬姿勢をとるべきだとして、タイ政府の「弱腰」を批判しているが、そのきっかけとなったのは、パニット民主党議員や、PAD傘下の市民団体、タイ愛国者連盟(TPN)関係者などタイ人7人が国境地帯でカンボジア当局に逮捕され、国境侵犯などで起訴されたこと。
また、保釈され帰国したパニット議員は、「PADは政府と交渉すべき。」と述べたが、PADの広報担当パンテープは、「パニット議員からPAD幹部に正式な要請はまだない。」と述べ、「政府と交渉したところで、何の役にも立たない。」と言い切った。
01月30日(日)タクシン支持派団体、反独裁民主主義同盟(UDD)は次回の反政府デモを02月13日に行う方針。午後01時にラチャダピセーク通りの刑事裁判所前に集合し、昨年03~05月の反政府デモで逮捕されたUDD幹部の保釈を要求。その後、民主記念塔まで行進。UDDが今月23日にクルングテープで行った反政府デモには約2万人が参加。
タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)の双方が反タクシン組織「市民民主連合(PAD)」が政府批判で共闘するとの見方が一部出ているが、UDD最高幹部の1人ティダ♀は、「UDDがPAD傘下のタイ愛国者連盟(TPN)の反政府集会に参加することはない。」と述べて、この見方を否定。「ティダがTPN首脳と会談した。」との一部報道も否定。ティダによれば、「UDDはTPNやPADと主義主張が異なるため、行動を共にすることはない。」とのこと。
テレビ報道によると、タイ北部ターク県メーソート郡のビルマ国境近くでビルマから飛来した砲弾が爆発し、タイ軍兵士2人が負傷。1人は腕を骨折するなど重傷。ビルマ軍は現場付近で少数民族カレン族の反政府ゲリラと戦闘中で、流れ弾が度々タイ領に落ちていた。
今回の事件についてタイの一部メディアは「カレン族を迂回攻撃しようとしたビルマ軍兵士がタイ領に侵入した。」と報じている。
カレン族は第2次大戦後すぐからビルマ族中心の政府に対し武装闘争を続けてきたが、1990年代にキリスト教徒カレン族主導の体制を不満とする仏教徒カレン族のグループが離反し、ビルマ軍事政権側に立つ武装組織「デモクラティック・カレン・ブッディスト・アーミー(DKBA)」を結成。軍政と結んでキリスト教徒中心の反軍政組織「カレン・ナショナル・ユニオン(KNU)」と対立。しかし昨年11月、DKBAの一部がタイ国境付近でビルマ軍と戦闘を始め、一時は付近の住民やビルマ軍の兵站に駆り出された受刑者ら1万人以上がタイ領に避難。
01月31日(月)タクシン及び反独裁民主主義同盟の法律顧問であるロバート・アムステルダムは滞在先の東京で記者会見を開き、昨年04月から05月にかけて発生した同盟・赤服軍団のデモ隊に対する武力による強制排除を国際刑事裁判所に提訴する方針を明らかに。
タイは2000年に条約に署名しているが、批准が完了してないため、国際刑事裁判所の締約国にはなっていない。そのため国際刑事裁判所は「タイ国内における政治的犯罪を審理する権限がない。」との認識を示しているが、ロバートは、「アピシット首相が締約国であるイギリスの国籍を持っている事から提訴可能である。」との認識を示している。
反タクシン派とタクシン派が反政府活動を拡大させ、政情不安が深刻化する恐れがあることについて、タイホテル協会(THA)のプラキット会長は、「皆が国益を第一に考えてほしい。上向き傾向が見え始めた観光業に回復の時間を与えてほしい。」と訴えた。THAでは、今年の加盟ホテルの客室稼働率が昨年の50~55%に対し、約70%にアップすると見込んでいる。しかし、政治対立が激化し、混乱が拡大すれば、今年も低率に留まる可能性がある。
プラキット会長は、「タイのホテルは、サービスも食事も質が高くて宿泊料も安く、この地域では優位にある。だが、これも、仲間内で争っていては(政治対立が続くようなら)意味をなさない。」としている。
なお、昨年の客室稼働率と平均宿泊料は、クルングテープが53%(この地域で最低)、93米ドル(この地域で下から2番目)であったのに対し、シンガポールが83%、198米ドルとなっている。
テレビ報道によると、タイとカンボジアの国境係争地域周辺でカンボジアが兵力を増強し、緊張が高まっている。両国は2008年以降、係争地域周辺で小規模な武力衝突を繰り返し、双方の兵士数人が死亡した。今回は係争地域にある寺にカンボジアが自国の国旗を掲げたことに対し、タイ外務省が01月31日、「寺はタイ領内にある。」として、カンボジアに寺院から国旗を降ろし撤退し、寺院の取り壊しを要求。カンボジアは拒否する構えで、双方で敵対ムードが高まっている。タイ政府は冷静な対応を呼びかけているが、国内の強硬派に押され、簡単には引き下がれない状況。
国境地帯では、過去に領有権を巡って2国が対立、軍事衝突に発展したこともあるが、今回の対立は、カンボジア軍がタイを刺激するメッセージボードを設置したことが直接のきっかけ。
カンボジアは、タイの要求を受け入れる形でボードを撤去したが、代わりに国旗を掲げ、タイが再び反発を強めている。また、アピシット首相が先に、「タイの領有権」を主張したことから、両軍が国境地帯で再び軍備を増強、緊張が高まる事態となっている。ただ、首相の主張に対しては、プラウィット国防相が、「国旗は大した問題ではない。」と述べ、距離を置く姿勢を示しており、また、軍部首脳からも、「領土紛争に絡む政府批判をかわすための国内向けパフォーマンス。そのおかげで軍人は困難な状況に置かれている。」といった批判的な意見も出ている。
両国のこじれた関係の象徴といえるのが、2008年に国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産に登録されたヒンドゥー寺院遺跡「カオ・プラウィハーン(プレアビヒア)」。カオ・プラウィハーンはカンボジアのクメール王国が09~11世紀に建立したとされ、係争地域の崖の上にある。両国が領有権を争った末、1962年に国際司法裁判所がカンボジア領とする判決を下したが、周辺の国境は未画定のままだ。タイはカンボジアがカオ・プラウィハーンの世界遺産登録を申請した際に共同登録を主張して横槍を入れ、現在も共同管理を目指し画策を続けている。
一方、カンボジアは2009年、タイで汚職で懲役2年の実刑判決を受け国外逃亡中のタクシンをカンボジア政府顧問に任命。タクシンは同年11月にカンボジアを訪れ、これを不満とするタイが駐カンボジア大使を引き揚げ、カンボジアも駐タイ大使を召還し、双方の大使不在が昨年08月まで続いた。昨年12月には係争地域を訪れたタイの与党国会議員と保守派政治団体幹部らタイ人7人がカンボジア当局に不法入国などで逮捕された。このうち5人は01月下旬に執行猶予付きの有罪判決を受け、タイに帰国したが、保守派団体幹部ら2人はスパイ容疑で起訴され、拘留が続いている。
02月01日(火)昨年12月29日にタイとカンボジアの国境係争地域を訪れたタイの与党民主党のパニット下院議員、保守派政治団体、タイ愛国者連盟(TPN)のウィーラら7人がカンボジア当局に不法入国などで逮捕、起訴された事件で、プノンペン地方裁判所は、ウィーラと秘書のラートリー♀に対し、スパイ行為、不法入国などで、それぞれ8年、6年の禁固刑、180万リエル(約1万4000B)、120万リエル(約1万B)の罰金刑の実刑判決。ウィーラは判決後、記者団に対し、「不当な判決だ。控訴する。」と述べた。秘書の女性は涙を流し無言。
2人は30日以内に控訴することが可能だが、現時点で控訴するか否か定かでない。恩赦による釈放を求めるという手もあるが、恩赦請求には裁判の完了、刑の確定を待つ必要がある。
クルングテープの首相府前で座り込みデモを行っているTPN、民主主義市民連合(PAD)はカンボジアへの反発を強め、タイ政府に対し、対カンボジア外交で強硬姿勢を示すよう、さらに圧力を加える見通し。
逮捕された7人のうち、パニット議員ら5人は01月21日に不法入国で執行猶予付きの禁固8ケ月の判決を受け、22日に帰国。
タクシン派の野党プア・タイ党が「軍がクーデターを計画している。」と主張していることについて、反タクシン派として知られるバナウィット元国防副次官(海軍大将)は、英字紙バンコクポスト、タイ字紙クルンテープトゥラキットなどに対し、「私の経験からすると、クーデターは必ず起きる。」、「年とか月とかではなく、週の話だ。」などと述べた。
バナウィットは01月25日にタイ首相府前で反政府デモを開始した反タクシン派団体の民主主義市民連合(PAD)と関係が深い。PADのデモは「クーデターを起こす口実作り。」という説がある。プラユット陸軍司令官、アピシット首相らはクーデターの可能性を否定している。
タクシン派の最大野党プア・タイ党は、提出を予定している不信任決議案の国会審議でミンクワン議員(元商業相)の指揮のもとに政府批判を展開することを決定。
内閣不信任案提出には次期首相候補の指名が義務づけられているが、これもミンクワン議員とすることが決まった。党内では、ミンクワンにこのような重要な役割を担わせることには否定的な意見もあったが、今回の決定に異議は出なかった。
02月02日(水)プノンペン地方裁判所が反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)関係者2人にスパイ罪で禁固8年の刑を言い渡したことを受け、PAD最高幹部の1人、チャムロン元クルングテープ都知事は、タイ政府に対し、政府庁舎を占拠する構えを示し、3日以内に2人の釈放を実現するよう要求。
支持者を大量動員して政府庁舎周辺で反政府集会を続けているPADは、釈放が叶わなかった場合、05日にも全国の支持者に意見を求め、政府庁舎に突入するか否かを決める予定。
PADは2008年に当時のタクシン派政権の退陣などを求めて政府庁舎を193日間にわたり占拠したことがある。チャムロンは、「政府庁舎のことは誰よりもよく知っている。入り込んで占拠するのは簡単。」と述べた。
タクシン派の最大野党プア・タイ党はミンクワン議員(元商業相)を党の代表として不信任案審議に臨むことを全会一致で決めたはずだったが、審議に関するプア・タイ党の記者会見や議員会合にチャルーム議員など幹部数人が出席せず、足並みの乱れが依然存在することが明らかに。
プア・タイ党議員のまとめ役を務めるチャルームは以前からミンクワンの台頭に不快感を示していたが、記者会見や会合を欠席したことについて、「不信任案審議で質疑に立つようミンクワンから求められているが、興味がない。審議に参加する積もりはない。」と言い切った。チャルームは舌鋒の鋭さ、派手なパフォーマンスで知られており、チャルームが質疑に立たなければ、政府批判はインパクトを欠くと見られている。関係筋によれば、「ミンクワンにとって、チャルームを取り込めるかどうかがリーダーシップを握るための最初の試金石。」とのこと。
2008年の空港占拠容疑で出頭命令が出されていた反タクシン派団体の民主主義市民連合(PAD)のカールン元上院議員が、スワンナプーム国際空港で逮捕された。2008年11、12月にPADの支持者数千人がスワンナプーム空港とドンムアン空港を占拠した事件で騒乱罪などの容疑で逮捕状が出ていたが、カールンは出頭に応じていなかった。今回帰国とともに逮捕された。現政権である民主党が親密な関係だったPADと距離を置き始めたことが、背景にあるものと見られている。
02月03日(木)パニタン政府報道官代行は、タイ政府が米国政府に対し、オバマ大統領が10月にバリ島で開かれる東アジアサミットに出席する際、タイに立ち寄るよう求めていることを明らかに。これは、「国内状況の正常化」を国際社会にアピールし、大勢の死傷者を出した昨年04~05月の大規模反政府デモで失墜したタイの対外イメージを回復させることが狙い。パニタン報道官代行は、「米大統領のタイ訪問に向け最善を尽くしている。実現すれば、タイにとって非常にプラスになる。また、その時、タイには、新しい政府が誕生しているだろう。」と述べた。


32章  カンボジアのタクシン支援の国境紛争再々燃 死傷者と難民
02月04日(金)午後国境未画定区域の領有権を巡ってタイとカンボジアが反目を強め、両国が国境の軍備を増強している、タイ東北部シサケート県の世界遺産のヒンドゥー寺院遺跡カオ・プラウィハーン周辺のタイ・カンボジア国境係争地域近くで両国軍の戦闘が勃発。両軍は午後3時過ぎから3時間余り(報道により2時間)にわたり交戦。小型火器でも攻撃しあう事態。カンボジア軍兵士1人と民間人1人の2人が死亡、15人が負傷し、タイ軍兵士も9人が死亡、26人が負傷。タイ軍のレンジャー5人がカンボジアに捕らえられた。
タイ軍は「カンボジア軍の砲撃で国境地帯の村に住むタイの民間人1人が死亡、タイ軍兵士4人が軽傷を負った。」としている。タイ軍は、「カンボジア側が砲撃を始めたため、しかたなしに反撃した。」としているが、カンボジア国防省筋によると、「タイ軍が(係争地域にある)寺近くに車両を進めたことから交戦が始まった。」と言う。死傷者数はさらに増える可能性がある。この地域での交戦は2009年04月以来。
タイとカンボジアはカオ・プラウィハーンがカンボジアの世界遺産に登録された2008年以降、周辺地域で小規模な武力衝突を繰り返し、双方の兵士数人が死亡。今年に入りタイの愛国者グループが不法越境罪などでカンボジアで有罪判決を受けたことや、今回は係争地域にある寺にカンボジアが自国の国旗を掲げたことに対し、タイ外務省が01月31日、「寺はタイ領内にある。」として、カンボジアに寺から国旗を降ろし撤退するよう要求。これを受け、両国軍が周辺地域で昨年末に撤収した兵士を再び前線に展開、緊張が高まっていた。
タイのカシット外相がカンボジアを訪問してホー・ナムホン副首相兼外相と会談。軍事衝突回避で一致した直後に死傷者を出す交戦が発生したことで、両国関係は一段と悪化する恐れがある。
02月05日(土)朝タイ、カンボジア両軍は、カンボジア北部のヒンドゥー寺院カオ・プラウィハーン遺跡近くで再び交戦し、タイ軍によるとタイ軍兵1人が死亡。カンボジア軍は、「カンボジア軍兵2人と民間人1人が死亡した。」としている。タイ・カンボジア国境で夜明け直後からロケット推進擲弾や大砲による攻撃が始まり、双方に死傷者が出る事態となったことから、両軍幹部は事態収拾を図るために協議し、戦闘を停止することでひとまず合意。
タイ側の死者は、交戦勃発の04日が兵士1人、農民男性1人の2人、05日が兵士1人とされる。一方、タイ軍によれば、「カンボジア側は兵士60~64人が死亡、12~13台の戦車・装甲車が破壊された。」とのこと。カンボジア軍によれば、「カンボジア軍兵1人と民間人の計2人が死亡。負傷者は12人。」また、今回の軍事衝突で両国が互いに相手に非があると主張しており、双方が国際法廷に持ち込んで決着をつける姿勢。
戦闘は早朝に短時間行われ、カンボジアは、「タイ軍の攻撃で遺跡も大きな損傷を受けた。」としている。さらに、「タイ軍兵士は23人が死亡、数十人が負傷。」と主張したが、タイはこの情報を否定。「タイ側の死者は04日に村人1人、05日に兵士1人に留まっている。」と主張。
なお、関係筋によれば、4日の交戦でカンボジア側に捕らえられたタイ軍のレーンジャー4人はすでに解放され、タイに戻っているとのことだ。
アピシット首相は05日、「カンボジアの単独申請によってタイ・カンボジア国境の寺院跡カオ・プラウィハーンが世界遺跡に認定されたことが領土紛争エスカレートの原因となっている。」として、認定の一時取り消しを求める考えを明らかに。両国外相は04日、カンボジアで会談し、遺跡周辺での武力衝突を回避することで合意。戦闘はその直後に発生し、互いに「相手が先に発砲した。」と非難しており、両国の関係悪化は避けられない。
政府庁舎周辺で大規模反政府集会を続けている反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)は、「国政でも領土保全でも無能さが明らかになった。」として、現政権に対し、有能な後進に道を譲るべく退陣するよう要求。 これまでPADは、アピシット政権に対し、3つの要求(覚書破棄、世界遺産委員会脱退、国境未画定区域からのカンボジア人排除)を突きつけ、また、カンボジアで有罪判決を受けたタイ人2人の釈放実現を求めていたが、退陣要求は表明していなかった。 だが、チャムロン元クルングテープ都知事やソンティなどのPAD最高幹部らは05日の集会において、「現政権は政府の体をなしていないと批判、国を率いる新しいリーダーが必要。」と訴えた。
02月06日(日)反タクシン派団体の民主主義市民連合(PAD)がクルングテープ都内の首相官邸近くで集会を続けていることを受け、一部で非常事態宣言を再発令すべきとの声が上がっていることについて、PADのチャムローン幹部は、「非常事態宣言が発令されても集会を継続する。11日に大規模な集会を行う。」と発表。アピシット政権の退陣を求める大規模デモをクルングテープで行う方針。「重要施設にデモ行進する。」としているが、具体的な標的や時間は不明。PADは先に政府庁舎を占拠する姿勢をみせていたが、警察は、「国会議事堂も占拠される恐れがある。」としている。
PADは、以前よりカンボジアへの強硬姿勢を取るよう現政権に要求しているが、現政権はその要求を拒み続けている。01月下旬に首相府前で座り込みの反政府デモを開始。当初は国境交渉に関するカンボジアとの覚書の破棄などを政府に要求したが、アピシット首相がこれを拒否し、04~06日にタイ・カンボジア国境で両国軍の武力衝突が起きたことから、アピシット政権に退陣を求めたが、チャムロンは06日、「領有権問題でカンボジアに強い態度を示すといった要求を政府に呑ませるのが先であり、退陣は二の次。」との考えを明らかに。
一方、アピシット首相はテレビ番組で、PADの求めに応じない姿勢を再確認し、「話し合いが問題解決の最善策であるにもかかわらず交渉に応じようとしないとして、PADの真意が他にある。」との見方を示した。
PADの今回のデモは平日が数百人、支持者に結集を呼びかけた05日も1000人程度で、反タクシンを旗印に掲げた2006、2008年に比べ、動員能力が下がっている。これは反タクシン派市民の多くがアピシット民主党政権を支持しているためと見られる。ただ、タイの一部メディアは、PADがデモで混乱を起こし、軍の一部がこれに呼応してクーデターを起こすというシナリオを報じており、政府はPADの動向に神経を尖らせている。
政府は、首相府に風水師を招き、庭の植木の配置変えなどを行った。タイ政府はカンボジアと戦闘が勃発した上、退陣を求めるデモ隊に首相府の3方を包囲されており、苦境脱出の望みを風水に託した模様。
まず、7番ゲート付近に高さ1mのタマリンドの鉢植えが7個、さらにそこから約7m離れたところにはタイで「繁栄」を意味するアラマンダの鉢植えが7個置かれた。7番ゲートは、毎週火曜日に開かれる閣議に出席する議員たちが主に利用している。タマリンドには力強いイメージがあり、「権力」の象徴ともいわれている。数字の「7」は「敗北」などを表すが、同時に「才覚」や「忍耐」を意味する数字とされている。ほかにも、7番ゲートの表札が、従来のアラビア文字から親しみのあるタイ文字に変えられた。
首相府では、アピシット政権になってから度々、風水を取り入れた配置変えなどが行われている。これらは、風水信仰の強いアンチャリー・ワニット首相秘書官により、風水師の指導のもと進められている。
首相府では大規模な反政府デモが鎮圧された直後の昨年06月にも、風水による配置変えが行われた。タイでは一般庶民から上流階級に至るまで、風水や占い、黒魔術などが広く信じられている。財閥グループの中には風水に応じ本社ビルを丸ごとデザインしたり、契約調印の日時分秒を決める所もある。風水に合わせ顔を整形した大物財界人もいる。政治家、将軍なども掛かりつけの風水師、占い師がいることが多い。
13時半頃
18時半頃~21時40分頃
タイ東北部シサケート県の国境地帯で、タイ軍とカンボジア軍が大砲や小型火器で攻撃し合う事態となり、兵士や民間人が負傷。05日に両軍は停戦に合意したはずだったが、06日13時半頃から約15分間と18時半頃から21時40分頃までの2回にわたり交戦状態。
タイ側では最初の攻撃で死傷者はなかったが、シーサケート県では戦闘地域近くの村に砲弾が落ち、民家十数棟が焼失し、住民数千人が避難した。2度目の攻撃で兵士10人、民間人2人が負傷した模様。タイ軍関係筋は、「国境未画定区域内の戦略上重要な道路を奪い返そうとしてカンボジア軍がタイ軍に攻撃を仕掛けてきた。」としている。だが、カンボジア側は、「最初に攻撃してきたのはタイ側。」と非難しており、また、「タイ軍の攻撃によって世界遺産カオ・プラウィハーンの一部が破損した。」と主張。
アピシット首相は武力衝突後、カオ・プラウィハーンを世界遺産から外すよう国際社会に訴えたが、こうした主張はカンボジアの反発を招くことが必至。アピシット首相はまた、東南アジア諸国連合(ASEAN)による仲介の申し出を拒否。
02月07日(月)早朝カンボジアとの国境沿いの東北部シーサケート県カンタララック郡の世界遺産カオ・プラウィハーン近くで、再び銃撃戦が発生した模様。タイ地元紙によると、「銃撃戦となったことで、周辺住民は緊急で非難することになった。郡内の一部では、カンボジアからの砲撃を受け、火災が発生している。」とのこと。先週からタイ軍とカンボジア軍が連日交戦を続けており、双方に多数の死傷者が発生。
04日に世界遺産のヒンドゥー寺院遺跡カオ・プラウィハーン周辺のタイ・カンボジア国境係争地域近くで勃発した両国軍の戦闘により、死者は少なくともカンボジア5人、タイ2人の計7人に増加。負傷者は双方で数十人に上る。また、タイでは戦闘地域周辺の住民約1万5000人が避難。

カンボジアの攻撃から逃れてきた避難民。→

紛争の解決に向け、カンボジアは国連に平和維持軍の派遣を要請。東南アジア諸国連合(ASEAN)の仲介にも歓迎の意向を示している。一方のタイは「2国間で解決すべき。」と主張し、国連、ASEANの介入を拒否。
ASEANはインドネシアのマルティ・ナタレガワ外相が07日にカンボジア入りし、同国のホー・ナムホン外相と会談。マルティ外相は08日にタイを訪れカシット外相と会談し、停戦を働きかける。
カオ・プラウィハーンはカンボジアのクメール王国が9~11世紀に建立したとされ、タイとカンボジアの国境係争地域の崖の上にある。両国が領有権を争った末、1962年に国際司法裁判所がカンボジア領とする判決を下した。2008年にはカンボジアの世界遺産に登録されたが、以来、これを不服とするタイと周辺地域で小規模な武力衝突が散発し、これまでにも双方に死傷者が出ていた。
昨年12月には係争地域を訪れたタイの与党国会議員と同国の保守派政治団体幹部らタイ人7人がカンボジア当局に不法入国などで逮捕された。このうち5人は01月下旬に執行猶予付きの有罪判決を受け、タイに帰国したが、政治団体幹部ら2人は今月01日、スパイ行為、不法入国などで懲役6~8年の実刑判決を受けた。タイ国内ではアピシット政権の対カンボジア外交を「弱腰」と非難する保守派団体が先月から首相府前で座り込みのデモを開始した。団体はアピシット政権の退陣を求め、今月11日に大規模な反政府集会を開く予定。
タイは、19世紀から20世紀前半にかけてフランスや英国に国土を奪われ、カオ・プラウィハーンに関する国際司法裁の判決も承服していない。しかし、カンボジアとの国境問題が国際社会で論じられた場合、この判決で不利な立場に追い込まれるという懸念を持ち、保守派の後押しを受ける現政権が国境紛争で国連やASEANの介入を拒否する原因。
タイ・カンボジア国境の軍事衝突で双方に死傷者が出た問題で、カンボジアが「タイ軍の侵略行為」を止めさせるべく国連安全保障理事会に書簡を提出したのに対し、タイ政府も「挑発したのはカンボジア。」などと非難する書簡を同理事会に送ったことが明らかに。
また、砲撃でタイ側に被害が出ているため、国境の村では数千人がシェルターに避難したり、国境から離れた場所に退避したりしているが、一部の住民は、「生まれ育った場所から離れたくない。」と、村に留まり続ける意向を示している。
国境の軍事衝突でカンボジアがタイ軍の攻撃によって世界遺産カオ・プラウィハーンが一部破壊されたと訴えていた問題で、タイ陸軍のサンサン報道官は、「カンボジア軍がカオ・プラウィハーンに重火器を持ち込み、タイ側に攻撃を行った。」と述べ、タイ軍の反撃でカオ・プラウィハーンの一部が破損したことを事実上認めた。
カオ・プラウィハーンは丘陵にあることから、カンボジア軍は迫撃砲などを設置して丘陵から見渡せるタイ領内に攻撃を行った。サンサン報道官はこれまで、「カオ・プラウィハーンア破損。」とのカンボジアの主張に対し、「単なるプロパガンダに過ぎない。」と反論していた。
タイ・カンボジア国境を管轄する陸軍第2管区のタワッチャイ司令官は、「先の交渉で停戦が合意されたにもかかわらず、カンボジアが再び攻撃を始めた。」と指摘して、現時点でカンボジア軍の司令官と話し合う考えのないことを明らかに。今回の軍事衝突については、両軍が「相手が先に攻撃」と批判しあっている。
だが、タワッチャイ司令官によれば、「攻撃を仕掛けてきたのはカンボジアであり、このような状況では話し合っても意味がない。」という。ただ、「カンボジアで司令官の指示が現場の兵士に伝わっていなかったことが停戦合意違反の原因とも考えられる。」とのこと。
「連日カンボジア軍との交戦が続いていた国境沿いでの死傷者が、38人に達した。」とタイ地元紙が報じている。シーサケート県カンタララック郡にあるカンタララック病院の理事長は、「これまでに民間人1人と軍人1人が死亡、36人が負傷し搬送されてきた。」と語っている。
数日間交戦を続け被害が拡大を続けていることから、現在東南アジア諸国連合(ASEAN)による仲介が進められているものの、収集がつかない模様。
02月08日(火)閣議で、反タクシン派団体、民主主義市民連合(PAD)やタクシン派団体、反独裁民主主義同盟(UDD)の反政府デモに対応するため、プラナコン、ワタナー、パトゥムワン、ドゥシット、ラチャテウィーなどクルングテープ都の7つの区に国内治安法を発令することを決定。期間は02月09~23日。
国内治安法は軍主体の国内安全保障司令部(ISOC)に関係政府機関の動員、特定の建物、地域への進入禁止、外出禁止、集会禁止、移動禁止などの権限を与えるもので、治安維持に軍の動員が可能になる。
PADはタクシン派政権追放を目指した2006年と2008年のデモで現与党の民主党と同盟関係にあったが、2008年末のアピシット民主党政権発足後、徐々に関係が悪化した。今年01月にはカンボジアとの国境紛争に対するアピシット政権の対応を「弱腰」と非難し、首相府前で座り込みの反政府デモを開始。タイとカンボジアの武力衝突が起きた02月04日、ついに政権打倒を掲げた。PADは11日に「重要な施設」前でデモを行い、場合によっては突入する構えを見せている。
UDDは過去数ケ月、クルングテープで毎月、数万人規模の反政府デモを行っている。次回は今月13日で、クルングテープ都内ラチャダピセーク通りの刑事裁判所前から民主記念塔まで行進する予定。
UDDは昨年04~05月にクルングテープ都心部を長期間占拠し、05月19日に軍によって強制排除された。一連の衝突による死者は91人、負傷者は1400人以上に上る。政府はデモ鎮圧のため、昨年04月、クルングテープに非常事態宣言を発令し、昨年12月に解除したばかり。解除から2ケ月も経たずに非常事態宣言に類似した特別法の使用を余儀なくされ、政情不安が収まっていないことを露呈。
反タクシン派団体、民主主義市民連合(PAD)は、「交通の妨げとなるため、今月11日に予定していたデモ行進を取り止め、代わりにPAD代表が東北部シサケート県の国境地帯を訪れ、軍事衝突で避難生活を余儀なくされている住民に支援物資を届けることにした。」と発表。政府が同日の閣議で、デモや集会の権利を制限し、軍の動員を可能とする国内治安法の発令を決めたため。
PADはタイ政府の対カンボジア外交を「弱腰」と批判し、01月からクルングテープの首相府前で座り込みデモを開始。今月11日には都内の「重要施設」にデモ行進するとしていた。
クルンテープトゥラキット紙は、首相府筋の情報として、反タクシン派団体、民主主義市民連合(PAD)の創設者で新聞大手ASTVマネジャー・グループの実質的なオーナーである「ソンティ・リムトーングクンが01月下旬に香港経由でクウェートを訪れ、タクシンと密談した。」と報じた。事実とすれば、宿敵同士がアピシット政権打倒で手を握ったことになる。
ソンティは、記者会見を開き、01月22~24日に香港に行ったことを認めたが、クウェート訪問は否定。「政権与党の民主党が流した偽情報だ。」と主張。
PADはソンティが帰国した翌日の01月25日に首相府前で座り込みの反政府デモを開始。カンボジアとの国境紛争でのアピシット政権の対応を「弱腰」と非難し、政権打倒を掲げている。
ソンティは28日にPADのデモ会場で演説したが、このとき、アピシット首相の支持層を「サクディナ(タイの封建制度)の連中」と呼んで批判。昨年の反政府デモでタクシン派団体、反独裁民主主義同盟(UDD)は反タクシン派の特権階級を「アマタヤ(封建官僚)」と呼んでいる。
ただ、UDD幹部のチャトゥポン下院議員は06日、「ダーポン陸軍参謀長、スラキアット元外相、サプラン退役陸軍大将、実業家のピヤ・マラクン氏ら王族、旧貴族につながる有力者とソンティがアピシット政権を追放するクーデターの作戦会議を開き、PADのデモで軍が出動するというシナリオを検討したものの、誰を首相に据えるかで話がまとまらなかった。」と主張。スラキアット元外相らはいずれも事実無根として否定。
タイ・カンボジア国境で両国軍が交戦し死傷者が出ている問題で、タイ外務省高官は、「2国間交渉で解決できる。」との考えを示し、カンボジアが求めている国連安全保障理事会などの介入を拒否する姿勢を再確認。また、アピシット首相は夜、潘基文国連事務総長に電話で軍事衝突の経緯などを説明し、国連安保理や国際機関の介入は不要との考えを伝えた模様。
2国間の領土紛争について、カンボジアは以前から2国間交渉を拒否し、その解決を国連などに求めているが、これは、カンボジアのフン・セン首相が親タクシンで、タクシン派政権の誕生を願っているとされることから、問題を大きくして国際社会の注目を集め、反タクシンのアピシット政権が政府の体をなしていないと国際社会に印象づけて揺さぶりをかけることが狙いと見られる。
世界遺産のヒンドゥー寺院遺跡カオ・プラウィハーン周辺のタイ・カンボジア国境係争地域では、04日の武力衝突以来初めて1日中戦闘が起きなかった。
カンボジア軍はこの日、カンボジア軍が捕虜としたタイ兵5名のうち、まだタイに返還していなかった捕虜のタイ兵(タイ軍第2管区所属)のスンクラーン・トンチョムプー(22)をタイ側に引き渡した。
タイでは06日の戦闘で負傷した兵士1人が死亡し、タイ側の死者は3人。07日にカンボジアを訪れたインドネシアのマルティ・ナタレガワ外相は08日、クルングテープでタイのカシット外相と会談し、平和的な解決を呼びかけた。
02月09日(水)タイ・カンボジア国境係争地域で発生した両国軍の武力衝突について、外務省は、カシット外相が週末に渡米し、14日にニューヨークの国連本部で開かれる安全保障理事会の会合で状況説明を行うことを明らかに。現地でカンボジアのホー・ナムホン副首相兼外相との会談も予定。 今回の紛争で、カンボジアは当初から安保理や東南アジア諸国連合(ASEAN)に調停・介入を要請してきた。タイはあくまで2国間協議による解決を主張したが、安保理出席でカンボジアの土俵に引きずり出された形。タイ外務省は「会合に出席したからといって、安保理が調停・介入するわけではない。」と主張。
訪米を控えたカシット外相は、タイ上院外交委員会主催のセミナーで演説し、カンボジアと安保常任理事国のロシアを批判を「やんちゃ坊主」と評し、「(カンボジアの)フン・セン首相はカオ・プラウィハーンと周辺の土地が欲しいのだ。」、「養育係のロシア、インド、フランスなどが助けてくれると信じて戦闘を仕かけた。」などと述べた。また、「カンボジアの兵器は米国、支那、ロシア、ブルガリア製。」と指摘し、「タイはロシア製の兵器を購入しないので、ロシアとの関係は良くない。」、「ロシアは非常に身勝手だ。」などとロシアを批判。支那についても、「カンボジアは支那製の兵器をただで入手している。」と牽制。
一方、国連教育科学文化機関(ユネスコ)はタイ軍の銃弾、砲弾で被害を受けたとされるカオ・プラウィハーンに近く調査団を送り、被害状況を調査する方針を明らかにした。タイ政府はユネスコに対し、「調査団の派遣は問題を複雑化させる。」として反対の意向を示し、「強行する場合は事前にタイ政府の許可を得る必要がある。」と警告。
カオ・プラウィハーンは国境係争地域のがけの上にあり、両国が領有権を争った末、1962年に国際司法裁判所がカンボジア領とする判決を下した。2008年にはカンボジアの世界遺産に登録されたが、以来、これを不服とするタイとカンボジアが小規模な武力衝突を繰り返し、双方の兵士数人が死亡。
今回は04~07日にかけ、両国軍が銃撃、砲撃を交わし、少なくともタイ側で3人、カンボジア側で5人が死亡、双方に数十人の負傷者。民家が砲撃を受け、周辺の住民1万人以上が避難するなど、2008年以降で最も大規模な武力衝突となった。フン・セン首相は「タイはクラスター爆弾を使った。これは武力衝突とは言えない。戦争だ。」と強い調子でタイを非難。
タイ・カンボジア間の領土紛争が軍事衝突に発展した問題で、タニ外務報道官は、「国連安全保障理事会が解決の道を探るべく、ASEAN議長国インドネシア、タイ、カンボジアの外相に説明を求め、3国がこれに同意した。」と述べた。3外相は14日、安全保障理事会に赴いて説明する予定で、タニ報道官は、「この機会にタイ・カンボジア両国の外相が直接会って解決策を話し合うことができるだろう。」としている。
一方、このように外交的手段で問題解決に向けた努力が続けられている中、タイ・カンボジア国境では両国軍が軍備を増強、緊張がさらに高まっている。
タイ外務省は、国連教育科学文化機関(ユネスコ)がタイ・カンボジア国境に位置する世界遺産カオ・プラウィハーンに視察団を派遣する方針を示したことに対し、「国境地帯は状況が不安定であり、現時点で遺跡を訪れることは問題を複雑化させる恐れがある。」として、視察に反対する姿勢を明らかに。
ユネスコは08日、戦闘で遺跡が一部損傷したことから、「可能なかぎり早期に視察団をカオ・プラウィハーンに派遣する。」と発表。だが、タイ外務省は、「タイ政府の許可を得てから視察すべき。」としている。また、タイ軍による遺跡への銃撃について、タイは、「カンボジア軍が重火器を遺跡に持ち込んでタイ側に攻撃を行った」と釈明しているが、カンボジア外務省は9日、「遺跡は神聖な場所で、観光スポットでもある。軽武装の警察官が数人警備に当たっていただけ。」と強く反論。
反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)が「02月11日に東北部シサケート県の国境地帯に代表を派遣し、軍事衝突で避難生活を余儀なくされている住民や兵士に支援物資を手渡す。」としていることに地元住民が反発。
国境地帯の一部住民は09日、抗議集会を行い、「PADがカンボジアに強硬姿勢を示せと政府に迫っていることが衝突の一因。」としてPAD関係者が訪れることに反対。だが、PADは「予定どおり訪問する。」という。地元関係筋は、「支援物資を届けるだけならよいが、PADが舞台を設けて主張を声高に繰り返すようなことになれば、住民も黙ってはいないだろう。」と述べている。
02月10日(木)国境未画定区域などの領有権を巡ってタイ・カンボジア両国軍が国境地帯で衝突し緊張状態が続いている問題で、アピシット首相は、国境地帯に位置する世界遺産カオ・プラウィハーンの存在がカンボジアに強硬姿勢をとらせているとして、国連教育科学文化機関(ユネスコ)に対して世界遺産の認定を取り消しを申請する考えを明らかに。アピシット首相はまた、「カンボジアにカオ・プラウィハーンの管理を任せた計画も破棄する必要がある。」と訴えた。
これは、カンボジアのフン・セン首相が、「カンボジアはカオ・プラウィハーン管理計画に従わねばならない。」、「戦争状態にあるタイと交渉はできない。」との姿勢を示したことによるもの。
アピシット首相は、「世界遺産認定を取り消し、計画を破棄することで、圧力なしで両国が交渉を始めることができる。」としている。
なお、カオ・プラウィハーンを含む地域は、もともと両国が領有権を争っていたが、カンボジアはカオ・プラウィハーンを世界遺産に認定するようユネスコの世界遺産委員会に単独で申請し、2008年にこれが認められた。だが、領有権問題が決着していないとするタイは世界遺産認定を全面的には受け入れておらず、同地域を巡る2国間関係は拗れた。このため、一方が強気姿勢を示すと他方が強く反発し、対立が一気に激化して交戦状態に発展するという状況が続いている。
民主主義市民連合(PAD)など反タクシン組織が政府庁舎周辺で領有権問題を巡って反タクシンのアピシット政権を批判する大規模集会を続ける中、タクシン派の反独裁民主主義同盟(UDD)が、拘留中のUDD幹部らの早期釈放などを求める大規模な反政府活動を13日と19日に決行する方針を明らかに。
13日の抗議はラチャダピセーク通りの刑事裁判所前に支持者を大量動員して釈放を求める書簡を読み上げるというもの。だが、UDD幹部のチャトゥポン、プア・タイ党議員によれば、「法律違反となるため支持者がプラカードや垂れ幕を手に裁判所に圧力をかけるようなことはしない。」という。また、ラチャダムヌンクラン通りの民主記念塔前でも集会が予定されているが、今回は集まった支持者に対し、国外逃亡中のタクシンが電話で語りかける予定。
国境の軍事衝突で、カンボジアが国際的に批判が高まっている「クラスター弾をタイ軍が使用した。」と非難しているが、タイ・カンボジア国境を防備するタイ陸軍スラナリ部隊は、「タイ軍はそのような爆弾を保有していない。軍事作戦で使用することはあり得ない。」と反論。
地雷撤去を任務とするカンボジア地雷作戦センターは、「国境地帯の世界遺産カオ・プラウィハーン近くでクラスター弾の小型爆弾を発見した。」としている。
クラスター弾は、複数の小型爆弾を詰めたもので、空中でこれら爆弾がばら蒔かれ、広範にわたって攻撃できるが、不発率が高いなどの問題があり、多くの国が使用を停止している。 一方、タイでは、「地元民がカンボジア側から発射されたロケット弾の破片に触ったため水ぶくれができた。」との報告があり、カンボジア軍による化学兵器使用を疑う見方も出ているう。
02月11日(金)関係筋によれば、東南アジア諸国連合(ASEAN)議長国インドネシアのマルティ外相が、タイとカンボジアの領土紛争を協議するため、インドネシアの首都ジャカルタで15日に緊急外相会議を開く旨をASEAN加盟国に伝えた。会議の名目は「地域的・国際的問題の協議」だが、ASEAN事務局関係者は、「タイ・カンボジア間の問題を話し合うのが目的。」としている。
なお、領土紛争については、国連安全保障理事会やASEANが問題解決に向けた動きを見せているが、タイ政府は、「あくまでも2国間の問題であり、最終的には2国間交渉で決着をつけるべき。」との姿勢を変えていない。
治安当局が国内治安法に基づいて都内の一部道路をデモ行進禁止としている中、PADは、政府庁舎周辺で座り込みを続ける支持者のうち約2000人を動員してほど近いロイヤルプラザまでデモ行進。支持者らは午前10時ごろから移動を開始し、ロイヤルプラザでラマ五世像に花を手向けて主権の護持などを誓ったあと、元の場所に戻った。国内治安法違反だが、警察はデモ隊を阻止するなどの措置はとらず、大きな混乱はなかった。
国際条約の議会承認と下院議員定数などに関する憲法規定の改正を求める2案が、上下両院会議の最終(第3)読会を通過。憲法改正は、下院の中選挙区を小選挙区に変更し、定数を中選挙区400、比例代表80の計480から小選挙区375、比例代表125の計500に増員。国際協定調印に国会の承認を義務付けた条項の緩和の2点。上下両院議員624人の投票で、それぞれ347票、397票の賛成を得て可決。
これでアピシット首相が解散総選挙の条件に挙げた3点のうち、「経済回復」と「憲法改正」の2点は達成されたが、3点目の「政局安定」はタクシン支持派、反タクシン派の双方がタイ国内で反政府街頭デモを繰り広げている上、カンボジア国境でカンボジア軍と武力衝突が起きるなど、安定には程遠く、解散時期は不透明となっている。下院の任期は年末まで。
憲法改正は、政治対立の解消と国民和解の実現に向けた政府の努力の一環として進められてきたもの。また、アピシット首相が改憲を下院解散の条件の一つとしていたことから、04月解散、06月総選挙の可能性が強まったとする見方も出ている。一方、野党側は改憲手続きに問題があると訴えており、憲法裁判所がどのような判断を示すかに注目が集まっている。
02月12日(土)タイは軍事衝突に発展したカンボジアとの領有権争いを2国間交渉で解決する姿勢を崩していないが、カンボジアからの報道によれば、カンボジアがタイ・カンボジア合同国境委員会の開催に否定的な態度をみせており、既存のメカニズムによる2国間対話が難しい状況。
合同委員会は2009年以降開かれていないが、02月初めに両国外相が話し合い、02月末に開催することで合意した。だが、合同委員会のカンボジア側議長は、「02月末に委員会を開くことはない。」と述べたとされる。なお、チャワノン外相秘書官によれば、「この件についてカンボジアから正式な通知はまだない。」とのこと。
02月13日(日)タクシン派の反独裁民主主義同盟(UDD)は、クルングテープ都ラチャダピセーク通りの刑事裁判所前に支持者を数千人規模を動員。「反タクシン派の民主主義市民連合(PAD)幹部の保釈が許されたにもかかわらず、UDD幹部がいまだに拘留中なのは不当だ。」と訴えて、これら幹部の保釈を要求。
赤服姿のUDD支持者は13時半頃からラチャダピセーク通りの刑事裁判所前で気勢をあげ、その後、ラチャダムヌンクラン通りの民主記念塔までパヤタイ通り、ペチャブリー通りをデモ行進。夜まで反政府集会を行った。
PADが民主記念塔にほど近い首相府周辺で大規模集会を続けているため、UDD支持者が首相府に近づけないよう警官隊が道路をブロック。
国外逃亡中のタクシンは21時頃、デモ会場に国際電話をかけ、タイ政府の経済政策、外交を批判。また、「自分は健康だ。」として、「癌に罹っている。」という噂を否定。
UDDは次回の反政府デモを今月19日、都内ラチャダムヌン通りの最高裁判所前で行う予定。
22時10分頃東北部シサケート県の国境地帯で、3回にわたり大きな爆発音がしたことから、一部の住民が戦闘が始まったと思い慌てて避難。タイ軍によれば、「爆発音はカンボジア側から聞こえてきたものだが、タイ側への攻撃はなかった。」とのこと。
県の国境地帯では04日からの軍事衝突で住民約1万人が国境から20㎞ほど離れたカンタララック郡役所に避難していたが、07日には戦闘の危険がなくなったとして帰宅が許されていた。
02月14日(月)タイ・カンボジア間の領有権争いが軍事衝突に発展した問題で、国連安全保障理事会は2国の外相から説明を聞くとともに、最大限の自制をもって恒久的停戦を実現するよう2国に要請。安保理はまた、「この問題に直接介入しない方針を明らかにした。」という。
報道によれば、「両国の外相は、軍事衝突が起きたことについて、互いに相手側が先に攻撃したと非難し、主張は平行線を辿ったまま。」だった。
2008年に首相官邸及びドンムアン・スワンナプーム国際空港を占拠し、当時のタクシン派政権を崩壊に追い込んだ反タクシン派団体の民主主義市民連合(PAD)への調査チームを率いていたソムヨットが、調査チームの代表を辞任することがわかった。 ソムヨットは、「チャムローンをはじめとしたPAD幹部をテロリストとして起訴すべきとの結論を出して以降、様々な所から批判や圧力を受け、家族や親戚にも被害が及んだ。」と辞任の理由を語っている。
02月15日(火)
未明~早朝
タイとカンボジアの国境係争地域周辺で両国軍が銃やロケット砲で交戦し、少なくともタイ兵5人が負傷。このうち1人は足を骨折するなど重傷。タイ軍によれば、午前05時30分頃、カンボジア側から手榴弾1個が投げ込まれてタイ兵1人が重傷、4人が軽傷を負ったことから、約5分間にわたり両軍が小銃などで交戦。
両国軍は今月04~07日に係争地域周辺で武力衝突し、少なくともタイ側で3人、カンボジア側で5人が死亡、双方に数十人の負傷者が出た。タイでは民家十数棟が砲撃を受け炎上し、周辺地域の住民約2万人が避難。
14日には国連安全保障理事会が両国の外相を招いて双方の主張を聞き、議長声明で両国に停戦と「最大限の自制」を呼びかけていた。この問題は今月22日に開かれる東南アジア諸国連合(ASEAN)外相会議でも話し合われる。
国連安全保障理事会が、「タイとカンボジアは、敵対せず交渉で領有権争いを解決すべき。」との声明を出したことに対し、タイ政府は、「タイの要求が認められた。」と評価しているが、反タクシン派の民主主義市民連合(PAD)は、カンボジアが国境の世界遺産カオ・プラウィハーンと周辺地域および国境未画定区域を自国で管理するとの計画を打ち出していることから、「声明は、カンボジアに計画の遂行を可能にさせ、カンボジアが交渉に満足するまで長期間にわたり紛争地を支配する恐れがある。」との懸念を表明。
PADの広報担当パンテープによれば、国境未画定区域(4.6㎢)について、「国連安保理でカンボジア外相が、『自国領』と明言したのに対し、タイ外相は『タイ領』と主張していない。これは大きな問題。」と述べた。
02月16日(水)タイ陸軍のサンサーン報道官は、「東北部シサケート県の国境地帯でカンボジア軍が15日夜から16日未明にかけ数度にわたり攻撃を仕掛けてきた。」と明らかに。
15日早朝にもカンボジアの攻撃がきっかけで約5分にわたる銃撃戦が起きた。
サンサーン報道官によれば、「国境未画定区域内に位置する戦略的な重要なプーマクア丘陵でカンボジア軍は午後08時頃から再び手榴弾を投げ込むなどしてタイへの攻撃。
「午後09時頃と10時頃にも手榴弾などによる攻撃があったが、タイ軍はいずれの攻撃でもカンボジア兵を撃退した。」とのこと。
さらに16日午前2時ごろからは機関銃、大砲、ロケット推進てき弾などによる攻撃が始まり、タイ軍がこれに応戦。
「午前03時50分から04時にかけても攻撃があった。カンボジア軍の散発的な攻撃は午前05時25分まで続いた。」という。
ただ、「15日夜からの攻撃で、タイ側に死傷者は出ていない。」とのこと。
カンボジアが国境の現状を知ってもらうため、東南アジア諸国連合(ASEAN)に対して監視団派遣を要請する姿勢をみせていることについて、チャワノン外相秘書官は、「第三者を巻き込んで問題を大きくするというカンボジアの策略だ。」と批判。
カンボジア外相は近くジャカルタで開かれるASEAN外相会議で監視団派遣を要請すると述べている。
これに対して、チャワノン秘書官は、「カンボジアの提案が会議で取り上げられるのを阻止する。」と明言。「カンボジアは国連安全保障理事会に監視団派遣を要請したが、これが受け入れなかったことから、今度はASEANを同じ提案をしようとしている。」と強く批難。
政権党の民主党と中小与党の下院議員120人が、国境の寺院遺跡「カオ・プラウィハーンの世界遺産認定を保留とするよう求めるユネスコあての書簡をチャイ下院議長に提出。
これは、同遺跡と周辺地域および国境未画定区域の領有権を巡ってタイとカンボジアが現在も争っており、その結果、軍事衝突によって死傷者が出る事態となっていることを因るもの。
これら議員は、「ユネスコがカンボジアの単独申請に伴い同遺跡を世界遺産と認定したことで領有権争いがさらにこじれる結果を招いている。」としている。このほか、「カンボジア軍はカオ・プラウィハーンをタイへの攻撃拠点としており、これは、世界遺産の認定条件に明らかに違反している。」とのこと。議員らは、「カオ・プラウィハーンの軍事利用を示す証拠写真も存在する。」と主張。
02月17日(木)タイのトライロン副首相はプノンペンを訪問し、カンボジアのフン・セン首相と約40分会談。フン・セン首相は「両国の国境係争地域で続く武力衝突について、停戦交渉を東南アジア諸国連合(ASEAN)立会いの下、行うべきだ。」という考えを改めて表明。タイはこれまで、あくまで2国間の問題だとして、ASEANや国連の介入を拒否している。
武力衝突は今月04日、世界遺産のヒンドゥー寺院遺跡カオ・プラウィハーン周辺で発生し、これまでに少なくともタイ側で3人、カンボジア側で5人が死亡、双方に数十人の負傷者が出た。タイでは東北部シーサケート県の民家十数棟が砲撃を受け炎上し、周辺地域の住民約2万人が一時避難した。
武力衝突は08日以降、いったん収まり、14日には国連安全保障理事会がタイとカンボジアの外相を招いて双方の主張を聞き、議長声明で停戦と「最大限の自制」を呼びかけた。しかしその数時間後の15日早朝、両国軍は再度交戦し、タイ兵1人が重傷を負った。タイのテレビ報道によると、16日夜にも銃撃戦があった。
カオ・プラウィハーンはカンボジアのクメール王国が9~11世紀に建立したとされ、係争地域の崖の上にある。両国が領有権を争った末、1962年に国際司法裁判所がカンボジア領とする判決を下したが、周辺の国境は未画定のまま。昨年12月には係争地域を訪れたタイの与党国会議員と同国の保守派政治団体幹部らタイ人7人がカンボジア当局に不法入国などで逮捕された。このうち5人は01月下旬に執行猶予付きの有罪判決を受け、タイに帰国したが、政治団体幹部ら2人は02月01日、スパイ行為、不法入国などで懲役6~8年の実刑判決を受けた。
タイ国内ではアピシット政権の対カンボジア外交を「弱腰」と非難する保守派団体、民主主義市民連合(PAD)」が01月から首相府前で座り込みのデモを開始した。PADはアピシット政権の退陣を求めており、軍の一部と結んでクーデターを画策しているという噂もある。
タイのステープ副首相は、「アピシット首相は06月までに下院を解散する。」、「今後半年以内に総選挙がある。」と述べた。現下院の任期は年末までだが、アピシット首相は条件がそろえば04月に解散する意向を示していた。総選挙は解散から45~60日に行われる。
タイ国会は下院の中選挙区を小選挙区に変更し、定数を中選挙区400、比例代表80の計480から小選挙区375、比例代表125の計500に増員する選挙制度改革を02月11日に承認。残る課題は現在審議中の補正予算案と、その後に予想される内閣不信任案審議ぐらい。 各種世論調査ではアピシット首相、ステープ副首相率いる民主党がタクシン派の野党プア・タイ党に対し優勢に立っている。プア・タイ党に第1党を譲ったとしても、現在の連立の枠組みで政権を維持する可能性は高い。ただ、外交面ではカンボジアとの武力衝突、国内の治安面ではタクシン派、反タクシン派双方の街頭デモを抱え、下院解散後の政治的空白がどう響くかは未知数。
在タイ日本大使館によると、タクシン支持派団体、反独裁民主主義同盟(UDD)」は19日に昨年03~05月の反政府デモで逮捕されたUDD幹部の保釈を要求し、クルングテープで反政府デモを行う予定。
ショッピング街のラーチャプラソン交差点で午後01時から約02時間、反政府集会を行い、午後03時からラチャダムヌン通りの最高裁判所を経て民主記念塔までデモ行進。その後民主記念塔で深夜まで集会を行う予定。参加人数は数万人に達する可能性がある。
UDDは昨年04~05月にラーチャプラソン交差点一帯を占拠し、05月19日に軍によって強制排除された。一連の衝突による死者は91人、負傷者は2000人に上る。鎮圧後しばらく活動を停止したが、昨年末以降、クルングテープ都で毎月、数万人規模の反政府デモを行っている。

タクシン派団体の反独裁民主主義同盟(UDD)によるデモ集会が行われることを受け、在タイ日本大使館が注意喚起注意喚起。

反独裁民主戦線(UDD)によるデモ集会等実施に関する注意喚起(2月17日現在)

1.治安当局によれば、19日(土)、反独裁民主戦線(UDD)は、政治犯の早期保釈を要求するためバンコク都内でデモ行進及びデモ集会を下記のとおり行う模様です。
【UDDデモ行進・集会予定】
◎ 日  時 2月19日(土)13時頃~24時頃
◎ 場  所 ラチャプラソン交差点及び民主記念塔
◎ 人  数 数万人が参集する可能性有り
◎ デモ概要 ・13時、UDDメンバーがラチャプラソン交差点に集合し、
約2時間、同場所でデモ集会を開催の予定。 ・15時、ラチャプラソン交差点から民主記念塔に向けデモ行進(最高裁判所経由)を行う。民主記念塔へ到着後 、24時頃までの予定で再度デモ集会を開催の予定。

2.つきましては、上記予定のとおりUDDがデモ集会等を行うラチャプラソン交差点周辺、民主記念塔周辺では交通渋滞が予想されることも含め、事前に報道等から最新情報の入手に努めるとともに、不測の事態に巻き込まれないように安全確保に十分注意を払ってください。

(問い合わせ先)
○在タイ日本国大使館領事部
電話:(66-2)207-8502、696-3002(邦人援護)
FAX :(66-2)207-8511
タクシン派の反独裁民主主義同盟(UDD)幹部によれば、UDD支持者らは02月19日午前10時から午後09時まで、クルングテープのラーチャプラソン交差点近くの仏教寺院で、昨年04~05月の大規模反政府デモで死亡した人々を追悼する儀式を執り行う予定。これと並行して午後05時からはラーチャプラソン交差点に100万羽の赤い折り鶴を「放す。」とのこと。なお、同寺院では、UDDがデモ終結を宣言した昨年05月19日に負傷者の救護に当たっていた医療チームのメンバーなどが銃撃され死亡する事件が起きたが、いまだに犯人特定には至っていない。
アピシット首相は、カンボジアのフン・セン首相が停戦協定の締結を提案したのに対し、「今はまだそのことについて話す時期ではない。」と述べて、否定的姿勢を示した。提案は、22日のASEAN外相会議で加盟国あるいは議長国の立ち会いのもとにタイとカンボジアが恒久的な停戦を実現するための協定を締結するというもの。 だが、アピシット首相は、「(国境の軍事衝突は)われわれが先に攻撃したものではない。タイ軍は領土を守るため反撃したに過ぎない。攻撃を仕掛けたカンボジアの主導で、両国がみずからの責任を認めたかのごとく停戦協定を締結するのは理屈に合わない。」としている。
反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)傘下のタイ愛国者連盟(TPN)によれば、昨年末に国境地帯でカンボジアに逮捕されたタイ人7人のうち、先に国境侵犯とスパイ罪でそれぞれ禁固8年と6年の有罪判決を受けたTPNコーディネーターと女性秘書が、カンボジア国王の恩赦に頼るべく控訴しないことを決定。恩赦は刑の確定が条件で、控訴して裁判が続くかぎり、恩赦を請求することはできない。
他の5人はすでに国境侵犯と軍事地域侵入の罪で執行猶予付き有罪判決を受け、タイに帰国している。
TPN関係者2人だけがスパイ容疑でも起訴されることになったが、「カンボジアのフン・セン首相がタクシン派で、反タクシン派を嫌っているため。」との見方が有力。
ステープ副首相(民主党幹事長)は、下院解散について、「06月までにあると保証する。」と明言。「まず物価上昇問題に目途をつけ、有権者の心を摑む必要がある。」との考えを明らかに。
これを受け、「民主党内ではいつ解散するかで意見がまとまった。」との見方も出ている。 発足2年あまりの現政権は、2007年12月の総選挙で誕生したタクシン派政権を引き継いだ政権であり、4年の任期は今年末に満了、総選挙となる。だが、タクシン派など反政府勢力が現政権の退陣を要求していることから、アピシット首相は以前から「条件がそろえば早期の下院解散もあり得る。」と述べていた。
関係筋によれば、「民主党内では、『下院を解散しなければ、権力に執着しているとの印象を与え、総選挙で不利になる。』との意見も出ている。」という。
02月19日(土)タクシン支持派団体、反独裁民主主義同盟(UDD)は、クルングテープで1万人規模(報道により2万人)の反政府デモ。デモ隊の進路で道路交通が麻痺したが、警官隊との衝突はなかった。
トレードマークである赤い服を着たデモ参加者はショッピング街のラーチャプラソン交差点から、サナームルアン(王宮前広場)近くのラチャダムヌン通りの最高裁判所を経て民主記念塔までデモ行進し、昨年03~05月の反政府デモで逮捕されたUDD幹部の保釈を要求。
UDDは次回の集会を、1年前に大規模集会を開始した03月12日に行う予定。参加者は今回を上回る可能性が高い。
UDDは昨年04~05月にラーチャプラソン交差点一帯を占拠し、05月19日に軍によって強制排除された。一連の衝突による死者は91人、負傷者は2000人に上る。鎮圧後しばらく活動を停止したが、昨年末以降、クルングテープで毎月、1万人規模の反政府デモを行っている。
タイのテレビ報道によると、タイとカンボジアの軍高官が会談し、暫定的な停戦に合意した模様。会談は国境のカンボジア側で行われ、タイからダーポン陸軍参謀長、タワチャイ陸軍第2管区司令官、カンボジア側はフン・セン首相の息子のフン・マネット中将らが参加。一方、タイのアピシット首相は、「タイとカンボジアの国境紛争で、支那とベトナムがカンボジアに援軍を送った。」という噂を否定。
タイとカンボジアは今月04日から17日にかけ、世界遺産のヒンドゥー寺院遺跡カオ・プラウィハーン周辺の国境地帯で銃撃、砲撃を交わし、少なくともタイ側で3人、カンボジア側で5人が死亡、双方に数十人の負傷者。タイでは東北部シーサケート県の民家十数棟が砲撃を受け炎上し、周辺地域の住民約2万人が一時避難。
両国の武力衝突については22日にジャカルタで開かれる東南アジア諸国連合(ASEAN)外相会議で話し合われる予定。
02月20日(日)11時頃昨年04月、タクシン派団体の反独裁民主主義同盟(UDD)の集会解散時に何者かによって放火され、修復工事が進められているセントラル・ワールド・プラザ(CWP)に隣接するZENで、火災が発生。建物の一部が焼けるなどした。火災が発生したのは、11階部分で、修復工事が行われていた区画。天井の一部と天井裏のエアコンチューブなどが焼損。消防車が出動し、火は15分ほどで鎮火、死傷者は出なかった。当時隣接するCWPは営業時間内だったが、火災が小規模だったため影響は出なかった。
出火原因について警察は、「電気系統のショートである可能性が高い。」と見てさらに詳しい捜査を進めている。
セントラルワールドの再建工事現場では昨年10月に足場が崩れる事故があり、作業員2人が死亡、6人が怪我。
「タイ・カンボジア両国軍の間で停戦協定が締結された。」と報じられたが、アピシット首相はテレビ番組の中で、「領有権争いの再発を長期的に防止する手段は注意深い交渉しかない。」と述べ、カンボジアとの停戦協定締結に改めて否定的な考えを示した。
関係筋によれば、カンボジアは22日のASEAN外相会議で両国が協定に締結することを提案しているが、タイ政府は、「カンボジアが、第三者を巻き込んで問題を大きくすることでアピシット政権に揺さぶりをかけようとしており、停戦協定はこの策略の一環。」と見なし、カンボジア主導で「問題解決」が図られることに強く抵抗している。
また、19日に両国軍の代表が会って停戦協定に調印したとされることについて、カシット外相は20日、「単なる意見交換であり、正式な交渉ではない。」などと指摘し、「政府の承認なしにすぐに合意内容(停戦協定締結)が発効となることはない。」との認識。
02月21日(月)昨年末に国境地帯でカンボジアに逮捕され、先に禁固ケか月の執行猶予付き有罪判決を受けて帰国したパニット民主党議員は、議員の議員資格を調査している中央選管小委員会に対し、「カンボジアの裁判所に控訴中であり、有罪が確定したわけではない。」と述べ、現時点で「『自由刑(懲役・禁固刑など)を受けた国会議員は議員資格を失う。』との憲法規定は適用できない。」との見方を示した。同規定については、「外国での有罪は対象外」との意見もあるが、これについては、選管が提訴すれば、憲法裁判所によって判断が示されることになる。
なお、国境地帯で逮捕されたのはパニット議員ら7人。うち同議員を含む5人は国境侵犯と軍事エリア侵入で執行猶予付きの遊座院判決を受けてすでに帰国。残り2人はスパイ容疑でも起訴され、それぞれ8年と6年の禁固刑を受けており、控訴せずに恩赦を請求する意向と伝えられる。
閣議で、タクシン派団体の反独裁民主主義同盟(UDD)や反タクシン派団体の民主主義市民連合(PAD)の集会激化により、クルングテープ都内7区に施行されていた治安維持法の期限を、30日間延長とすることを決定。今回延長により来月03月25日まで、7区(ワントーンラーン区、パトゥムワン区、ラーチャテーウィ区、ドゥシット区、ワッタナー区、ポーンプラーブ区、プラナコーン区)に施行。
02月22日(火)刑事裁判所は、昨年03~05月にクルングテープで大規模な反政府デモを行ったタクシン支持派団体、反独裁民主主義同盟(UDD)の幹部ら8人の保釈を認めた。保釈されるのはナタウット、ウェーンら幹部7人とデモの最中に狙撃され死亡したタクシン派幹部、カティヤ陸軍少将の側近。幹部7人はデモが武力鎮圧された昨年05月19日に警察に出頭、逮捕され、テロ容疑などで拘留されていた。保釈保証金は各60万B。

← 左から、ウィプタレング・ワッタプームタイ、ナタウット・サイクア、ウェーング・トチラカーン。

UDDは昨年04~05月、数千―数万人で都心の広い範囲を占拠し、軍により強制排除された。一連の衝突による死者は91人、負傷者は約2000人に上る。UDDは鎮圧後数ケ月は活動を停止していたが、昨年後半から、幹部、デモ参加者の保釈を要求し、各地で反政府集会を再開。「クルングテープでは1万~2万人規模の反政府デモを月1、2回のペースで実施し、次回は1年前に反政府デモを開始した03月12日に大規模な集会を開く。」と警告していた。UDDによると、「現在もデモ参加者約100人が拘留されている。」という。これは「予定通り実施して物価高など政府の責任を追及する。」とのこと。
タイとカンボジアの武力衝突に関する東南アジア諸国連合(ASEAN)の緊急非公式外相会議をASEAN議長国であるインドネシアの首都ジャカルタで開催。タイ・カンボジア間の領有権争いの悪化を避けるため、議長国インドネシアのマルティ外相は同国が監視団を国境地帯に派遣することを提案。会議後発表された議長声明によると、「タイ、カンボジア両国は国境の戦闘地域にインドネシアの停戦監視団を受け入れる。両国はできるだけ早く2国間交渉を再開し、インドネシアは両国の交渉に適切に関与することで、事態の友好的解決を支援。」
ASEANは内政不干渉を原則とし、加盟国間の紛争で監視団を派遣するのは初めて。スリンASEAN事務局長(元タイ外相)は簡易ブログ「ツイッター」で、「歴史的な日だ。よい前例となる。」と会議の結果を賞賛。
一方、タイのアピシット首相は「タイが主張する2国間交渉が認められた」、「停戦監視団の受け入れはタイが拒否してきた第3国の介入を意味しない。」という認識を示した。監視団は非武装で、2国が挑発的・敵対的行動をとらないよう支援するとともに状況を監視する。 ただし、ASEANはタイの顔を立てるために「関与」という言葉を使用しただけで、実際には2国間交渉にインドネシアが立ち会う形になる。
タイとカンボジアは今月04日から17日にかけ、世界遺産のヒンドゥー寺院遺跡カオ・プラウィハーン周辺の国境地帯で銃撃、砲撃を交わし、双方で数十人が死傷。タイでは東北部シーサケート県の民家十数棟が砲撃を受け炎上し、周辺地域の住民約2万人が一時避難。
閣議で、「引き続き反政府活動対策が必要。」との理由で、クルングテープ都内7区で国内治安法適用を03月25日まで延長を決定。
国内治安法は、反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)やタクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)が反政府活動を活発化させる動きを見せていたことから、02月09日~23日にかけ適用されることになった。だが、状況に改善がみられないことから、適用が延長された。
また、アピシット首相は、この決定について、「反政府活動に無関係の大多数の市民に影響が及ばぬようにする必要があったため。」と説明。「政府に批判的な者らの逮捕・起訴が狙い。」との一部報道を否定。
タイとカンボジアは領有権争いの悪化を避けるべくインドネシアの監視団派遣を受けることになったが、アピシット首相は、「領土を守る必要がある。」と、国境に配備しているタイ軍を一兵卒たりとも撤退させる考えのないことを明らかに。「カンボジアが攻撃を続けるようなら、タイ軍は容赦なく反撃する。」と明言。同時に、「監視団の存在が軍事衝突の回避に役立つ。」との見方も示した。
また、国境地帯の寺院遺跡カオ・プラウィハーンがカンボジアの単独申請でユネスコ世界遺産委員会によって世界遺産に認定されたことが領有権争いを拗れさせる一因となっているが、アピシット首相は、ユネスコとの代表団が25日にタイ訪問を予定していることについて、「問題のほんとうの原因を説明するための準備を進めている。」、「問題解決に向けた提言を求めたい。」などと述べた。
このほか、「国境地帯の住民らが『カンボジア軍の攻撃で被害を受けた。』と国際司法裁判所に提訴する意向。」と報じられているが、アピシット首相は、「これについて報告を受けていない。」とのこと。
02月23日(水)タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)の幹部7人と支持者1人が保釈となったが、ティダ・トチラカーンUDD議長は、「いまだに国内の複数の刑務所にUDD関係者が拘留されている。」と保釈などを求めて大規模な反政府活動を継続する考えを再確認。
また、UDDは03月26日にカオヤイリゾートでコンサートを開催する計画。UDD幹部でプア・タイ党員のチャトポン議員は、「指名手配中のUDD幹部らを出頭させた後、保釈を求めることで、合法的に彼らをコンサートに参加させたい。」としている。この中には、元有名歌手のアリスマンも入っていると見られている。
02月24日(木)アピシット首相は国会審議で、「英国籍をまだ放棄していない。」とタイと英国の二重国籍であることを初めて認めた。タクシン派のプア・タイ党議員の質問に答えたもので、「必要なら英国籍を放棄するが、その場合、そちらの複数の国のパスポートを持っている人にも同じようにしてもらう。よろしいか。」と述べ、モンテネグロやニカラグアのパスポートを所持するとされるタクシンを牽制。
タクシンは2008年に汚職で実刑判決を受け、国外逃亡中。タイのパスポートは破棄されたが、巨額の投資などで複数の国のパスポートを取得したとみられる。
タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)は、昨年04~05月の大規模反政府デモに対する「武力弾圧」について、アピシット首相に責任があるとして国際刑事裁判所(ICC)に提訴したが、タイがICC締約国でないことから受理されなかった。だがUDDは、「英国は締約国であり、「首相が英国籍ならICCが首相を裁くことができるはず。」と主張。
アピシット首相は1964年、両親の滞在先である英国のニューカッスルで生まれ、自動的に英国籍を取得。英国の名門パブリックスールであるイートン校から英オックスフォード大学に進み、経済学修士号を取得。1992年にタイ下院に初当選し、1997~2001年首相府相、2005年からタイ民主党党首、2008年から首相と、超エリートコースを歩んだ。両親と姉は医師で、父は閣僚経験がある。妹は2006年の東南アジア文学賞を受賞した作家。アピシットはタイ語で「特権」を意味する。
英国籍を放棄することも可能。放棄の手続きをとっていないことについて、アピシット首相は、「二重国籍は合法と考えられているため。」と説明。また、「英国とタイの国籍法が食い違う場合、タイの法律に従う。」としている。
02月25日(金)アピシット首相がタイと英国の二重国籍を認めたことで、一部から「選挙に出馬できない可能性がある。」との指摘が出ているが、中央選管のソットシー委員は、「憲法には二重国籍者の立候補を禁止する規定はない。二重国籍が被選挙権に影響することはない。」との認識。
アピシット首相は英国生まれのため英国籍を有しているが、先の国会審議で、野党議員の質問に対し、「英国籍を放棄していない。」と初めて認めた。これに対し、タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)幹部のナタウットなどは、「次の選挙に出馬する際、障害となりかねない。関係機関が首相の立候補資格を審査する可能性がある。」と述べた。
02月26日(土)タイのテレビ報道によると、昨年04月10日、トムソン・ロイター通信のカメラマン、村本博之がクルングテープでタクシン支持派のデモ隊と治安部隊の衝突を取材中に射殺されたコークウア交差点の事件で、法務省特別捜査局(DSI)のタリット局長は、「傷あとから、AK47自動小銃の銃弾を受けたとみられる。」と発表。M16自動小銃とタボールライフルしか装備していなかったとされる治安部隊は加害者ではないとの見方を示した。DSIは当初、「治安部隊の発砲で死亡した可能性がある。」としていた。
タリット局長は、見方を改めたことについて、「証拠などを科学的に分析した結果。」と説明。だが、「陸軍参謀長がDSI局長に会って不満を伝えていた。」とも報じられており、「陸軍の意向を受けて見方が変更された。」との指摘もある。
村本が殺害された状況に関しては、治安部隊が発砲したという複数の目撃証言があり、DSIもこれまで、軍による発砲の可能性を示唆していた。タクシン派の多くはDSIを反タクシン派が操る組織と見て信頼していない。
タイでは過去数年、タクシン派と反タクシン派の抗争が続き、政局が混乱している。特権階級を中心とする反タクシン派はタクシンを反王室、腐敗政治家と糾弾し、2006年のクーデターでタクシン政権を追放。その後も軍、司法をコントロールし、実権を離さずにいる。一方、低所得者が多いタクシン派は「特権階級が軍官財界を動かし民主主義や法治を捩じ曲げている。」として、昨年03~05月にクルングテープ都心部を長期間占拠し、反タクシン派政権に退陣を要求。治安部隊との衝突で91人が死亡、1400人以上が負傷し、最終的に鎮圧された。
02月27日(日)関係筋によれば、「タクシン派の最大野党プア・タイ党から、タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)幹部らが総選挙に出馬する見通しだ。」という。これには、昨年04~05月の大規模反政府デモに関連してテロ容疑などで逮捕・拘留され、現在保釈中の幹部も含まれる。
同筋は、「プア・タイ党は、UDD幹部を比例代表に10人、選挙区に10人立候補させる予定。タクシンはこれまでのUDDの働きを評価しており、党首脳部からも異論は出ないだろう。」としている。
最大野党プア・タイ党は、政権党の民主党と与党第2党のプームチャイ・タイ党に所属する閣僚10人の不信任決議案を03月01日に下院議長に提出する方針を明らかに。これらは、民主党所属のアピシット首相、ステープ副首相、コーン財務相、チュティ情報通信技術相、オンアート首相府相、カシット外相、プームチャイ・タイ党所属のチャワラット内相、ソポン運輸相、ポンティワ商業相、スパチャイ副農相。「うちカシット外相を除く9人については、同案提出に先立ち28日にも罷免を上院議長に求める。」とのこと。
関係筋によれば、「民主党とプームチャイ・タイ党の閣僚だけが標的にされたのは、プア・タイ党が、総選挙後に他の与党と連立政権を組む可能性があると考えているため。」とのこと。
02月28日(月) 最大野党のプア・タイ党が「不信任案審議で閣僚10人の責任を厳しく追及する。」としているが、政権党の民主党関係筋は、「最大の批判材料は、昨年05月のデモ隊強制排除だろう。だが、これは国会審議で何度となく取り上げられており、新事実が出てくる可能性はない。」と述べ、「政権が大きなダメージを受けることはない。」との見方。
タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)が昨年03月にクルングテープで本格的な反政府活動を開始。04月からはラーチャプラソン交差点を拠点に大規模な反政府デモを展開。治安当局は当初、比較的柔軟な対応をみせていたが、銃撃・爆弾攻撃などで状況が悪化したことから、05月19日にデモ隊強制排除に踏み切り、UDDはデモ終結を宣言。
ただ、民主党関係筋によれば、「パーム油価格高騰など強制排除以外の問題でプア・タイ党が新事実を暴露し、民主党が不意打ちを食らうという場合が考えられなくない。」とのこと。
昨年04月10日のデモ隊・治安部隊衝突で被弾し死亡したトムソン・ロイター所属の日本人カメラマン村本博之の死因について法務省特別捜査局(DSI)のタリット局長は記者会見で、「先日の発表は科学的根拠に基づいた考察の結果。タイ陸軍の関与を意図的に否定しようとしたものではない。」などと釈明。
DSIは昨年末、「現場の警察官の証言から、治安部隊の発砲で死亡したと見られる。」としていたが、先日、「さらなる分析の結果」として、「凶器はAK47自動小銃」との見解を発表。「これを装備していなかった治安部隊は加害者ではない。」との見方を示した。タリット局長によれば、この見解は、警察の科学捜査部門の元責任者で現在DSI顧問のアムポンの意見に基づいたもの。アムポンは、「傷痕から銃弾は直径7㎜以上であることが判明した。AK47は7.62㎜で該当するが、治安部隊が使用していたM16自動小銃は5.56㎜で該当しない。」と報告。だが、事件から10ケ月以上が経過してからの見方の変更であり、タリット局長の説明にもかかわらず、「不自然さ」を完全に払拭するには至っていない。
なお、プラユット陸軍司令官によれば、「陸軍はAK47を保有しているものの、昨年のデモ対策で治安部隊はAK47ライフルを装備していなかった。」とのこと。
03月01日(火)タクシン派の野党プア・タイ党は、アピシット政権に対する内閣不信任案をチャイ下院議長に提出。アピシット首相、ステープ副首相、コーン財務相ら9閣僚について、91人が死亡した昨年のタクシン派反政府デモの弾圧、汚職疑惑などを追求する。審議は03月09日から3~5日間行われる見通し。可決される可能性は低いが、アピシット首相は審議後、時機を見て下院解散総選挙に踏み切ると見られている。
タクシン派は2001年以降、下院選で4回(うち1回は司法判断で無効)連続して第1党となった。しかし、裁判所が2度にわたってタクシン派政党を解党、党役員を公職追放処分にしたため、人材が払底し、プア・タイ党は指導力不足に悩んでいる。今回の不信任審議では、元トヨタ・タイ法人幹部のミンクワン元商務相が政府攻撃の指揮を執り、出来次第ではプア・タイ党の党首に就く可能性がある。
03月02日(水)最大野党プア・タイ党が閣僚10人の不信任決議案を提出したことから、与野党の院内幹事が協議し、不信任案審議を9日から3日間とすることで意見が一致。審議は12日午前11時までに終了し、13日に決議する。また、ウィタヤー与党院内幹事によれば、予定どおりに終了しない場合、野党側の質疑が40時間、政府側の答弁が20時間の計60時間まで審議を延長する。この審議日程は3日にもチャイ下院議長に報告される。また、野党院内幹事のアヌディット、プア・タイ党議員によれば、不信任案審議では、プア・タイ党議員7人が昨年の大規模反政府デモ、18~22人が汚職問題、10~15人が閣僚の職務怠慢などについて質疑する予定。
昨年04月10日のデモ隊・治安部隊衝突での日本人カメラマン死亡時の状況分析に関する見解を法務省特別捜査局(DSI)が変更したことを疑問視する意見が絶えないことから、タリットDSI局長が、改めて「変更は科学的考察に基づいたもの。」と釈明。 その内容は、変更の経緯をこれまでよりさらに詳しく説明したものとなっており、また、警察の科学捜査部門責任者だったアムポンDSI顧問の指摘が見方変更につながったとの説明も繰り返された。関係筋によれば、当初から現在の見解が示されていれば、不満や批判は少なかったと予想される。
だが、「数ケ月も経ってから、同じ判断材料に基づいて改めて分析を行ったら異なる結論が導き出されたというのでは、不自然さが残るのは当然。」とのこと。
刑事裁判所は、保証金1人当たり60万Bで新たに反独裁民主主義同盟(UDD)関係者6人の保釈を許可。保釈条件は、裁判所の許可なく出国しない、民衆を扇動しないなど。
これら6人は、昨年04~05月のUDDによる大規模反政府デモに関連してテロ容疑などで逮捕・拘留されていた。
03月03日(木)プア・タイ党が10閣僚の不信任決議案を提出したことを受け、与野党の院内幹事が03月09~12日に下院で不信任決議案を審議することで合意したが、関係筋は、「チャイ下院議長(与党第2党プームチャイ・タイ党)は、『不信任決議案に不備があり修正の必要がある。』として、審議を15~18日に行う意向を示している。」と明らかに。これは、プームチャイ・タイ党が、「プア・タイ党がなにを攻撃材料に閣僚の責任を追及しようとしているかがはっきりせず、手の内を見極めるのに時間が必要としているため。」という。
一方、民主党は、タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)が12日に大規模な抗議集会を予定していることから、これと同時に不信任案審議を行うことで、「UDDとプア・タイ党は同じ穴の貉。」と強く印象づけたい考え。このため、与党内では審議日程についてまだ意見がまとまっていない。
関係筋によれば、カンボジア政府が12ケ国の大使館付武官らに国境未画定区域などを視察させたことから、タイ・カンボジア国境を管轄するタイ陸軍スラナリ部隊が、「国境未画定区域に関する2国間合意に反する。」として、カンボジアに抗議。
国境では両国軍が対峙しており、タイ軍は「武官らの視察を目視で確認した。」という。
同筋は、「カンボジアの行為は、合意を無視したもの。国境の緊張を徒に高めるだけ。」と批判。
03月06日(日)政府関係筋は、「アピシット首相が、連立与党に対し、今月後半か来月初めに下院を解散する意向を伝えた。」と明らかに。
その背景には、諸物価高騰、米の生産者価格下落による農家の収入減少、燃油の値上がりなどで国民の不満が募り、政府が何らかの行動に出るよう迫られていることがある。このため、首相は、不信任案審議が終わり、憲法改正に伴う選管による選挙区再設定が完了するのを待って解散に踏み切る心積り。中小与党からは「10月解散」を望む声も上がっているが、アピシット首相は「遅すぎる」としている。
関係筋によれば、中小与党は十分な準備時間が欲しいため早期の解散・総選挙は避けたいところだが、政権党の民主党は、解散・総選挙を引き延ばせば引き延ばすほど民主党のイメージ低下・支持減少に繋がるため、時宜を逃さずに解散すべきと考えているようだ。
03月07日(月)05時頃首相府前の路上に設営された反政府デモ隊のテントをタイ警察が一部撤去。テントで封鎖されていた首相府の出入口を開けるためで、撤去後、デモ隊の再侵入を防ぐため、周辺に鉄条網を張るなどした。撤去作業中にデモ隊と小競り合いが起きたが、大きな混乱はなかった。
反政府デモを指揮する政治団体、民主主義市民連合(PAD)のチャムロン元クルングテープ都知事はデモ参加者に対し、デモの続行を表明、奪われた陣地の奪回を約束。
PADは2008年に首相府やスワンナプーム空港などを占拠した反タクシン派団体。2008年末に反タクシン派政権が発足し、活動を停止したが、現政府の対カンボジア外交を「弱腰」と批判し、今年01月下旬に首相府前で座り込みデモを開始。デモ参加者は数百人から2000人程度で、政権打倒を掲げている。タイの一部メディアは、「PADを操る特権階級の一部が、PADのデモで混乱を起こし、軍の一部がこれに呼応してクーデターを起こすというシナリオを描いている。」と報じている。
政府関係者がたばこ会社の不正を見逃して見返りを得たと野党プア・タイ党が主張している問題で、プア・タイ党の副報道担当のユタポンが、「不正に関与したのは、ごま塩頭、ごま塩ひげでイニシャルがKの首相の片腕。」と述べたことに対し、キアット通商代表は、「Kとは私のことだろう。だが、政府には不正を否定するに十分な証拠がある。疑惑が虚偽だと証明されたら、責任をとってもらう。」と反論。ユタポンはさらに、「側近に介入を指図したのは首相であり、首相は罷免に値する。」とも述べている。だが、通商代表は、「首相は不正のないことを証明できる。」としている。
英国生まれのアピシット首相が英国籍を放棄していないことについて、タクシン派の野党プア・タイ党のプロムポン報道担当は、在タイ英国大使館に対し、英国民としての権利を行使したことがあるかチェックして回答するよう求めた。
プア・タイ党は不信任案審議で英国籍保有をとりあげて首相を「真のタイ人ではない」などと批判する戦略とみられるが、今回の問い合わせは、そのための材料集めという。
プロムポンによれば、1週間以内に大使館から回答がなければ、プロムポンが自ら首相の生まれ故郷英国ニューカッスルを訪れ、情報を収集する予定とのこと。
国境侵犯の罪でカンボジア国内で拘留されているタイ愛国者連盟のウィーラ(54)が、02月中旬から著しく体調を崩していることから、親族は一刻も早い恩赦・釈放を求めている。
ウィーラが他の6人と共にカンボジアに逮捕されたのは12月29日。02月01日には禁固8年の実刑判決を受けた。この2ケ月間、何度もプノンペン市内の刑務所を訪れているというウィーラの母親は、「03月04日にも面会したばかりだが、具合が悪そうだった。先月は高熱で意識不明に陥ったほど。どうか、タイ大使館所属のタイ人医師による診察を受けさせてほしい。」とし、ノロドム・シハモニ国王には恩赦を嘆願していることを明らかに。
外務省によると、「プノンペン市内のタイ大使館では1日に2度、ウィーラに食事の差し入れをしているが、面会はできず、ウィーラが体調不良であることも知らされていない。」という。
03月08日(火)タイ当局は、国内安保法に基づき、アピシット首相の私邸があるクルングテープ都内スクムビット通りソイ31、ソイ33、ソイ39の一部の道路交通を原則禁止。最近アピシット首相を執拗に追いかけ嫌がらせをする市民がいたことから、首相私邸近くの通りが通行規制される事態となった。首相私邸周辺でのデモなどを取り締まるための予防措置で、実際にはこれまで通り通行が可能というが、タイ式のやり方を理解しない一部の外国メディアが「首相宅周辺の道路交通を封鎖」と報じ、当局を慌てさせている。
プラウット警察報道官は、「首相宅周辺の道路は、異変がない限り、これまで通り通行できる。心配しないで頂きたい。」と述べた。
国内安保法は軍主体の国内安全保障司令部(ISOC)に、関係政府機関の動員、特定の建物、地域への進入禁止、外出禁止、集会禁止、移動禁止などの権限を与えるもので、治安維持に軍の動員が可能になる。02月09日、パトゥムワン、ドゥシット、ラチャテウィーなど都内7区に発令。
内閣不信任案審議の日程が03月15~17日に決定。18日に採決。タクシン派の野党プア・タイ党はアピシット首相、ステープ副首相、コーン財務相ら9閣僚について、91人が死亡した昨年のタクシン派反政府デモの弾圧、汚職疑惑などを追求。可決される可能性は低く、アピシット首相は審議後の早い段階で下院解散総選挙に踏み切ると見られている。
アピシット首相(民主党党首)が早期の解散総選挙を示唆するなか、中央選挙管理委員会のソットシー委員は、「首相は11日にも中央選管と総選挙をいつ実施すべきかを話し合う予定。」と述べた。さらに、話し合いの場で、憲法改正に伴う選挙関連法制定に関連して性急な解散総選挙がトラブルにつながる恐れのあることを首相に伝える意向も明らかに。
民主党は、今年末の下院議員任期の満了まで政権の座に留まると支持を失いかねないことから、速やかに下院を解散し総選挙に打って出る考えのようだ。だが、ソットシー委員によれば、憲法改正に伴い改正が必要とされている選挙関連法のうち、上院・下院議員選挙に関するものは選管が決定・発表すれば発効するが、政党と選管に関する2つの法改正は議会承認が必要のことからある程度時間が必要。そのため、この2法を改正せずに総選挙に臨んだ場合、選管の選挙実施の権限を巡って法律論争が起きかねないとのこと。
民主党が結党65年を記念した政治資金パーティーを、都内のクイーン・シリキット・ナショナル・コンベンションセンターで開催。アピシット首相ら民主党幹部のほか、チャワラット内相、スワット元副首相といった連立与党の各党幹部、実業家ら約3000人が詰めかけ、300台の円卓が埋まった。収入は目標の6億Bを上回り、7億5000万B以上に達したとされる。
アピシット首相は月内に予定されている内閣不信任案審議後の早い時期に下院解散総選挙に踏み切ると見られている。今回のパーティーは選挙資金の調達が狙いだが、一晩で巨額の資金が集まった背景には、次期総選挙で民主党が有利という見方が財界に広がったためと見られる。
また、最大野党プア・タイ党は、「『国営企業や政府機関から10~20卓分のパーティー券を買わされた。』との苦情が来ている。」として、中央選挙管理委員会に調査を要請。中央選管によれば、強制的な政治献金で有罪となれば、禁固刑・罰金刑が科せられる。
03月09日(水)首相府前で座り込みの反政府デモを行っている保守派団体、民主主義市民連合(PAD)は10日にタイとカンボジアの国境紛争でインドネシアが調停に乗り出したことを不快とし、都内のインドネシア大使館前で抗議集会を行う予定。インドネシア大使館はペッブリー通り、ITモールのパンティッププラザの隣。
タニ外務報道官は、「タイとカンボジアが総合国境委員会をインドネシア西ジャワ州のボゴールで24日と25日の両日開催することで合意した。」と明らかに。総合国境委員会は、共同議長を務める両国の国防相が国境関連の事柄を話し合う場。タイは、「総合国境委員会のような2国間協議のメカニズムを通じて国境問題を話し合う。」としていたが、これまでカンボジアが拒否していた。ボゴールの総合国境委員会では、インドネシアによるタイ・カンボジア国境への監視団派遣などについて意見が交換される見通し。
与野党の院内幹事が、閣僚10人の不信任案審議の日程について協議し、審議を15日~18日の4日間、決議を19日に行うことで意見が一致。これはチャイ下院議長の了承を得て正式決定となる。
チャイ議長は当初、審議を15日~17日としていたが、野党プア・タイ党が「時間が不十分。」と抗議していた。
初日の審議は午前9時に開始し、最終日は午後11時までに審議を終えなければならない。審議時間は、初日17時間、2日目17時間、3日目18時間、最終日14時間。また、与党議員と野党議員の双方にそれぞれ計6時間までの抗議が許可される。
タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)幹部のチャトポン、プア・タイ党議員は、「UDDが12日に予定している反政府集会にタクシンがビデオ出演する。」と述べた。国外逃亡中のタクシンはこれまでにも何度となくUDDの集会に電話出演、ビデオ出演している。
チャトポンによれば、「12日の集会は都内ラチャダムヌンクラン通りの民主記念塔前で午後3時に開始される予定だが、その日のうちに散会する。」という。12日はUDDによる大規模デモ開始から1周年で、また、昨年5月から拘留され、先月保釈されたUDD幹部7人が集会への参加を予定しており、集会参加者は1万人以上に上る見通し。また、19日にはラーチャプラソン交差点で集会を予定しているが、参加者は交差点には長く留まらず民主記念塔前に移動することになっている。
03月10日(木)反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)が2008年に当時のタクシン派政権の退陣を求めて政府庁舎を占拠し、国会議事堂周辺で座り込みを行った問題で、首都圏警察はPADの幹部や関係者を書類送検。
警察によれば、容疑は、デモ隊を扇動して国会議事堂と政府庁舎の使用を妨害したこと、当時の与党関係者ネーウィン(現与党第2党プームチャイ・タイ党の最高実力者)とタクシンを誹謗中傷したこと。このうち、国会議事堂前座り込みについては、06月28日に起訴するか否かの決定が下される見通し。
タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)の幹部で昨年04、05月の大規模反政府デモに関連して指名手配されていたアディソンが日、法務省特別捜査局(DSI)に出頭。取り調べを受けたあと、60万Bの保証金で保釈。
タリットDSI局長によれば、アディソンは、指名手配中の他のUDD幹部らに出頭を呼びかける意向。関係筋によれば、「出頭は抵抗を止めることではなく、保釈されればUDDの活動に参加できる、法廷の場で容疑を否定し当局を糾弾できる。」とのこと。
03月11日(金)ステープ副首相(治安担当)が政府庁舎周辺道路から座り込みを続けている反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)支持者らを排除する意向を示したことに対し、PAD最高幹部の1人、チャムロン元クルングテープ都知事は、再び政府庁舎を占拠する考えを示し、当局を牽制。
PADは、カンボジアとの領有権争いにおけるアピシット政権の姿勢を批判し、カンボジアに強硬姿勢を示すよう求めて抗議活動を続けている。これに対し、PADと同じ反タクシン陣営であるものの、政権党の民主党は苛立ちを強めており、座り込みを止めさせようと躍起になっている。
アピシット首相は、05月第1週に下院を解散する方針を明らかに。総選挙は解散から45~60日に行われ、06月中に総選挙が実施される。
現下院の任期は年末までだが、首相は条件が揃えば04月にも解散する意向を示していた。解散の時期については、04月や12月との意見もあったが、アピチャート中央選管委員長も「5月がベスト。」との考えを示した。アピシット首相率いる与党民主党は各種世論調査でタクシン派の野党プア・タイ党とほぼ互角の形勢。連立与党の各党を加えれば優勢で、総選挙後、現在の連立の枠組みで政権を維持する可能性が高い。
03月12日(土)
午後~深夜
タクシン支持派団体、反独裁民主主義同盟(UDD)は大規模反政府デモの開始から1周年を記念しクルングテープの民主記念塔で集会。集会には昨年05月から拘留され先月保釈されたUDD幹部7人が参加したほか、国外逃亡中のタクシンが久しぶりにビデオ電話で登場し、集まった2万人以上の支持者に対し、年内に予想される次期総選挙でタクシン派の野党プア・タイ党に投票するよう呼びかけた。
UDDは昨年04~05月、数千~数万人でクルングテープ都心の広い範囲を占拠し、軍により強制排除された。一連の衝突による死者は91人、負傷者は約2000人に上る。
03月13日(日)最大野党プア・タイ党による10閣僚の不信任決議案提出に伴い15日から不信任案審議が開始。プア・タイ党幹部らは、「隠し球がある。」として、政府に大きなダメージを与えることに自信を見せている。アヌディット議員は、「隠し球は当日まで明らかにできないが、これで政府に不意打ちを食らわせることができる。」と述べた。
一方、民主党を中核とする連立政権は、「新しい批判材料はないはず。」と、野党の姿勢は虚勢との見方。
なお、不信任案審議は基本的に17日までだが、必要があれば18日も行うことになっている。
03月14日(月)05時頃反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)がカンボジアとの領有権争いにおける現政権の対応を批判して大規模な座り込みを続けている政府庁舎周辺で、首都圏警察が警察官など1200人を動員して仮設トイレの撤去を試みたが、デモ隊の抵抗にあって目的を果たせなかった。デモ隊ともみ合って警察官2人が軽症を負ったが、大きな混乱はなかった。トイレ撤去はデモ隊を退去させることが狙いとされる。
タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)による昨年03月から05月の大規模反政府デモに関連して指名手配中だったUDD幹部4人が、法務省特別捜査局(DSI)に出頭。4人は取り調べで容疑を全面的に否認したあと、1人60万Bの保証金で保釈された。
また、表舞台に出ていたUDD幹部のうちでは武闘派とされたアリスマン元下院議員など複数がまだ出頭していない。アリスマンは、アピシット首相が下院を解散してから出頭する意向。
03月15日(火)タクシン支持派のウェブサイトwww.norporchuusa.comにプミポン国王を批判する書き込みを行ったとして、管理人のタタウット・タウィーワロドムクン(38)が不敬罪などに問われた裁判で、刑事裁判所は、タタウットに懲役13年の実刑判決。このウェブサイトは政府によりタイからの閲覧が禁止されている。
タイでは2005年から、特権階級を中心とする反タクシン派と、地方住民、中低所得者層が多いタクシン派の政治抗争が続き、タクシン派の市民が不敬罪で投獄される事例が相次いでいる。
タイの内閣不信任案審議開始。不信任案審議初日、プア・タイ党は諸物価高騰、パーム油や砂糖の不足、生産者米価の下落、軽油の価格補助などを取り上げて政府の責任を追及。最初に質疑に立ったプア・タイ党幹部のミンクワン元商業相に対し、アピシット首相が、商業相時代のミンクワンの働きぶりを批判して反論する場面もあった。
18日までの4日間審議し、19日に採決。野党側が大掛かりなスキャンダルでも暴きださない限り、不信任案の否決は確実。ただ、アピシット首相は05月に下院を解散、06、07月に総選挙を行う方針で、審議の内容は選挙結果に直結。
03月16日(水)不信任案審議2日目、最大野党プア・タイ党は、タイコム株の価格操作や、宝くじ販売、ディーゼル機関車購入、3G入札などに不正があったとして、コーン財務相やソポン運輸相の責任を追及。
これに対し、コーン財務相は、「タイコム株の値上がりでいかなる利益も得ていない。この株の取引に関与していない。」と反論。ソポン運輸相も、「ディーゼル機関車を購入するという方針を決めることに関与しただけ。」と、深くかかわっていないと釈明。調査を命ずる考えを明らかに。
また、プア・タイ党を支持しているチャトロン元タイ・ラック・タイ党役員は、「プア・タイ党は時間を無駄に費やしている。」と述べ、政府にダメージを与える有効打を繰り出せていないと苦言を呈した。
03月17日(木)法務省特別捜査局(DSI)は、反独裁民主主義同盟(UDD)幹部など7人が保釈条件に違反したとして検察当局に対し保釈取り消しを請求するよう要請。これら7人は、民衆を扇動しないなどの保釈条件を無視して政治的な活動に従事したとのこと。 なお、DSIは先に保釈取り消しを直接刑事裁判所に求めたが、刑事裁判所は「検察庁が担当機関」として請求を却下。
不信任案審議3日目、野党プア・タイ党は、「昨年04~05月の大規模反政府デモを誘発したのは現政権。セントラルワールドの火災やデモに関連して91人が死亡したのも現政権の責任。」などと政府を非難。
タ独裁民主主義同盟(UDD)による大規模デモでは、治安部隊との衝突、銃撃や爆弾攻撃で大勢の死傷者が出たほか、暴徒化した一部デモ隊による商業施設の放火・略奪が起きた。
質疑に立ったUDD幹部のチャトポン議員など4人は、アピシット首相とステープ副首相(治安担当)の責任を集中的に追及。これに対し、政府は、「適切な対応だった。」、「武装グループがデモ隊と行動を共にしていた。」などと反論。デモ関連の質疑応答は5時間以上に渡った。
このほかプア・タイ党は、「スパチャイ副農相が国有林を不法に取得した。」などと2時間にわたって批判を展開。
03月18日(金)不信任案審議の最終日、野党プア・タイ党は、米国系たばこ会社の不正とこれに絡んだ汚職という疑惑を取り上げて政府を糾弾。舌鋒の鋭さで定評のあるチャルーム議員が、「輸入たばこの価格を低く申告して税金を誤魔化したにもかかわらず、アピシット首相などが捜査当局に圧力をかけて罪に問わなかった。」などと声高に政府を批判。
これに対し、アピシット首相は、「当局は当たり前の対応をしたまで。」と政府の圧力があったとの見方を否定。また、「検察は不起訴処分とし、法務省特別捜査局に差し戻したが、新証拠があれば、捜査を再開し、再度送検できる。」と述べて、「この事例が完全に終わったわけではない。」と付け加えた。
また、プア・タイ党が昨年の大規模反政府デモへの対応で政府の責任を追及したのに対し、ステープ副首相(治安担当)が2時間にわたり反論を繰り広げた。
03月19日(土)野党プア・タイ党が閣僚10人の不信任決議案を提出したことから15日~18にかけ国会で審議が行われたが、19日の決議では、当初の予想通り10閣僚とも、信任票243~251、不信任票182~188で、全員が信任された。票数はほぼ現在の与野党の下院議席数通り。
ポンティワ商業相に関しては、食用油として広く流通しているパーム油の不足・値上がり問題で責任を追及されて分が悪かったと見られていたが、信任票は251票と10閣僚中最多で、予想外との見方もある。
信任案審議は15~18日に行われ、タクシン派の野党プア・タイ党が、91人の死者を出した昨年045月のタクシン派デモ鎮圧の真相究明、汚職疑惑の追求などで政府・与党を攻撃。しかし、新たな材料はなく、連立与党の結束を崩すには至らなかった。アピシット首相は5月第1週に下院を解散する方針で、与野党は今後、選挙戦に向けた準備に入る見通し。全員が信任されたことを受け、アピシット首相は、05月初めに下院を解散する意向を表明していることもあって、「内閣改造は問題外。」と明言。
タクシン支持派団体、反独裁民主主義同盟(UDD)は、クルングテープで2万人規模の反政府デモ。警官隊との衝突はなかった。
デモ参加者は正午ごろ、都心のラーチャプラソン交差点に集結し、民主記念塔まで行進した。国外逃亡中のタクシンは夜、民主記念塔の集会場に国際電話を掛け、現政権の経済政策などを批判。次期総選挙でタクン派の野党プア・タイ党に投票するよう呼びかけた。自身の居場所については、「ヨーロッパの寒い国にいる。」と述べた。
03月20日(日)国外逃亡中のタクシンは、ツイッターでいくつかの条件をあげ、「これを満たす者が最大野党プア・タイ党党首にふさわしい。」いとの考えを示した。条件は、党内融和の実現、立憲君主制と民主主義の擁護、正義感、経済に精通していること、是々非々の姿勢など。これに当てはまるのは、タクシンの妹インラックと党幹部のミンクワンの2人との見方が有力。
タクシンの強い影響下にあるプア・タイ党は、ヨンユットが暫定党首を務めてきたが、総選挙を前にして、選挙戦を有利に進めることのできる求心力・指導力のある新党首が必要とされている。
インラックは実業家として知られ、ミンクワンも元タイトヨタ副社長でビジネスに精通しており、ともに党内に支持基盤を持っている。
03月21日(月)セリ元上院議員は、「タクシンの友人、プラチャイ元タイ・ラック・タイ党副党首がプラチャー・サンティ党を率いて総選挙に臨む予定。」と明らかに。
タクシン政権下(2001~2006年)で内相、法相を務めたプラチャイは、一部で「首相候補」に名があがっている人物。また、「プラチャー・サンティ党は、セリ元議員を党首、実業家のパンラート元タイ・ラック・タイ党役員を副党首として旗揚げする予定だが、近く実施される見通しの総選挙の前にプラチャイが党首に就任する。」という。
また、プラチャイを首相に推す声があることについて、ステープ副首相(民主党幹事長)は、「首相を擁立できる可能性があるのは民主党と最大野党プア・タイ党だけ。プラチャイが首相にふさわしいかは、選挙結果が出てから(プラチャー・サンティ党が相当数の議席を獲得してから)論ずれば良い。」と述べた。
法務省特別捜査局(DSI)が先に保釈条件に違反したとしてタクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)幹部など7人の保釈取り消しを裁判所に請求するよう検察当局に要請したことについて、検察庁特別訴訟局のタナピット局長は、「根拠が希薄。」と述べて、取り消しを求めない考えを明らかに。DSIは、「12日のUDD集会で参加者を前に演説したことが、民衆を扇動しないとの保釈条件に抵触する。」としていた。
03月22日(火)ステープ副首相は、下院議会解散の時期を05月上旬頃とし、07月上旬にも総選挙が行われるとの見方。今月11日にもアピシット首相自身が、05月中に解散する方針であることを明かしていた。
閣議で、クルングテープ都の7つの区で国内治安法の適用期間を26日から04月24日まで30日間延長が決定。
国内治安法下では警察の強権発動が可能となり、治安対策レベルでは、軍主導で治安維持と行う非常事態宣言に次ぐものとなっている。法は、非常事態宣言解除後に反政府活動の活発化・暴力事件の発生に備えて都内府の一部に適用されることになったが、政府は、反政府活動終息の兆しが見えないとして適用延長を決定。
都内で最大野党プア・タイ党の年次総会が開催されたが、新党首を選出しないまま閉幕。
関係筋によれば、党幹部ミンクワン元商業相を推す議員60~80人が党大会でミンクワンを新党首に選ぶべく準備を進めていたが、「時期尚早。」との最高実力者タクシンのメッセージが伝えられ、新党首選出は見送られることになった。これは、「ミンクワンの党首・首相就任を全面的には支持していない。」というタクシンの意思表示と受け止められている。国外逃亡中のタクシンは、「党首の資格を備えているのは実妹インラックとミンクワン。」と示唆しているとされるが、これは建て前にすぎず、「インラックを党首・首相に据えたいというが本心。」とする見方が支配的。なお、ソムチャイ元首相(タクシンの妹婿)は、「プア・タイ党が党首を首相に推すとは限らない。」と述べ、「ミンクワンが党首に決まってもインラックなどが首相に就任する可能性がある。」としている。
政府関係筋は、「アピシット首相は05月03日の閣議終了後に下院解散を宣言する意向。」と述べた。また、総選挙を実施するには、先の憲法改正に伴う選挙関連法改正が必要であるため、今月23日より議会で審議が開始される見通し。
なお、アピシット首相は、「05月第1週に解散する。」と述べているが、同時に、「法改正の作業が早期に完了すれば、予定より早く解散することもあり得る。」としている。
AFP通信などによると、オーストラリアの国営テレビ局ABC(オーストラリア放送協会)が昨年04月に放送したタイ王室に関するドキュメンタリー番組のCDをタイ国内で販売したエカチャイ・ホングカングワン(35)が今月10日、不敬罪などの容疑で逮捕された。タイでは国王夫妻と王位継承者に対する批判が不敬罪により禁じられ、違反した場合、1件につき最長15年の懲役刑が科される。
ABCの番組は主にタイの王位継承問題に関するもので、放送後、タイ政府がオーストラリア政府に抗議した。ABCは番組の放送でタイ支局のスタッフが不敬罪で投獄される恐れがあるとみて、放送前後に支局を一時閉鎖。
一方、マティチョン紙によると、19日に都心で行われたタクシン派団体、反独裁民主主義同盟(UDD)の反政府集会で、王室を批判する内容のCDを販売したタイ人男性(46)が不敬罪などの容疑で逮捕された。CDの内容は不明。
2人の逮捕について、タイ国内の報道機関の多くは報道していない。
タイでは2005年から、特権階級を中心とする反タクシン派と、地方住民、中低所得者層が多いタクシン派の政治抗争が続き、タクシン派の市民が不敬罪で投獄されるケースが相次いでいる。今月15日にはウェブサイトにプミポン国王を批判する書き込みを行ったとされるタタウット・タウィーワロドムクン(38)が不敬罪で懲役13年の実刑判決を受けた。
03月23日(水)タクシン派野党プア・タイ党チャルームは、秘書を通じて議員辞職届をチャイ下院議長に提出。
タイ地元紙によると、チャルームは時期総選挙の準備のため、議員辞職することになったと明かしている。だがプア・タイ党内で、次期党首候補にミンクワン副首相兼商業相が推されていることから、これを不満に思い辞職したものと見られている。チャルームは、現在もプア・タイ党に在籍しているものの、離党し新党設立の可能性が指摘されている。
反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)最高幹部の1人ソンティが、PADを支持母体とする新政治党(NPP)に対し、総選挙をボイコットするよう求めている。
ソンティは、都内マカワンランサン橋で座り込みを続けるPAD支持者を前に、「NPPが候補を擁立するならPADは関係を絶つ。」と宣言。「PADと選挙のどちらをとるのか。」とNPPに迫った。ソンティによれば、近く実施される見通しの総選挙は、有権者を買収した政治家を政権の座につかせ、汚職が繰り返されるだけで、国民の意見を政治に反映させることはできない。政治の浄化のため、アピシット首相を含め政治家は3年間政治から遠ざかるべき。」とのこと。また、ソンティは、「憲法7条に基づいて国王陛下が民間人を首相に任命されるのがよい」としているが、ステープ副首相(政権党・民主党幹事長)は、「異例であり、国民を困惑させる。」としている。
03月25日(金)民事裁判所は、2008年11月に反タクシン派団体の民主主義市民連合(PAD)が空港を占拠し、エアポーツ・オブ・タイランド(AOT)の業務を妨害したとして、PAD幹部13人に5億2200万Bと年7.5%の利息の損害賠償の支払いを命じる判決。民事裁判所は、「幹部13人が率いた集団が、AOT傘下のドンムアン空港及びスワンナプーム国際空港の使用ができなくなったことは事実である。これによる被害は多大なものだった。」としている。
PADは当時のタクシン派ソムチャイ政権の退陣を求めて2008年11月26日~12月03日にかけドンムアン、スワンナプーム両空港を占拠。これが同政権の崩壊と民主党政権の誕生を早めたとされるが、両空港の閉鎖で外国人を含む大勢の旅客に迷惑がかかり、貨物空輸もストップし、大きな経済的損失に繋がった。
関係筋によれば、PADは賠償命令を不服として控訴する構え。
03月27日(日)反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)関係筋は、「以前ほど市民の支持を得られなくなっていることから、PAD最高幹部のソンティとチャムロンが04月06日にもPADの解散を宣言する見通し。」と明らかに。
PADはタクシン政権下の2006年に大規模な反政府活動を展開し、これが軍事クーデターによるタクシン政権の転覆につながり、また、2008年にも空港占拠などの過激な反政府活動に出たことからタクシン派ソムチャイ政権の崩壊、現民主党政権の誕生が早まった。だが、カンボジアとの領有権争いにおける現政権の姿勢を批判して約2ケ月前から政府庁舎周辺で続けている座り込みには、思ったほど市民が集まらず、PAD幹部は動員力の低下に頭を悩ませている。
なお、PADの広報担当パンテープは、「解散などという話は聞いていない。PADは政府がわれわれの要求をのむまで活動を続ける」としている。
アピシット首相が05月上旬に下院を解散、06、07月に総選挙を行う方針を示したことについて、反タクシン派団体、民主主義市民連合(PAD)は支持者に対し、総選挙をボイコットするよう呼びかけた。「アピシット政権は即刻退陣し、プミポン国王が選任する新内閣に政権を譲るべき。」と主張。
PADの主張は民主主義の浸透を危惧する一部特権階級の意向を反映したものと見られる。この勢力は総選挙で民主政体が順調に機能することを防ぐため、軍事クーデターを検討しているとされ、アピシット政権が動向に神経を尖らせている。
PADはこの勢力の手先として2006年、2008年に反政府デモを展開し、当時は国民から一定の支持を得た。しかし昨年行われた世論調査では、PAD傘下の政党の支持率は3%程度と低迷。こうした状況での総選挙への参加は支持基盤の弱さを露呈する政治的自殺行為といえ、PADの総選挙ボイコットは民主主義の否定という大方針と選挙で勝てないという現実の双方から必然的な選択だったといえる。
03月28日(月)最大野党プア・タイ党は幹部会議で、党が誰を次期首相に推すかを決めると見られていたが、プア・タイ党スポークスマンのプロムポンは、「首相候補を下院解散の2日後に発表する。」と明らかに。
首相候補には、ミンクワン元商業相、タクシンの実妹インラックなどの名があがっているが、プロムポンによれば、「党が首相にふさわしいと考えているのは5人で、この中から首相候補を決める。」とのことだ。なお、「通常なら党首が首相候補となるところだが、プア・タイ党では党首選びが難航しており、党首人事と切り離した形で首相候補が決まる可能性がある。」という。
03月30日(水)タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)による大規模な反政府集会は、04月については10日の1回のみという。 この集会で、UDDは昨年04月10日のラチャダムヌンクラン通りコークウア交差点でのデモ隊・治安部隊衝突における政府の責任を追及する方針。
関係筋は、「04月はソンクラン連休で大勢の人が帰省したり行楽に出かけたりすることから、支持者の大量動員が難しく、集会を行っても国民の関心が集まらないため、ソンクラン前に1回だけ大規模集会を行うことにした。」と指摘。
なお、05月は、19日に大規模集会を開き、昨年05月19日のデモ隊強制排除における当局の非道さなどを非難する予定。
反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)首脳のソンティ、チャムロン、ピポップ3人が3月30日、都内マカワンランサン橋で座り込みを続ける支持者を前に、「首脳部は結束している。」と強調。「内部対立が生じている。」との報道を全面的に否定。「報道はPAD弱体化を図ろうとした者がデマを流したことによるもの。」という。
「ソンティとチャムロンが04月06日に国王に陳情したあと、座り込みの終了とPAD解散を宣言する。」とも報じられていたが、ソンティによれば、「陳情・解散の予定などない。」とのこと。
04月01日(金)「プア・タイ党がプラチャラート党のサノ党首を自党の党首に据える方向で動いている。」とネーション系のタイ語メディアが報道。「プア・ペーンディン党のプラチャー・プロムノーク等も近々合流する予定。」とか。04月01日はサノの誕生日で、朝にはプア・タイ党の主要幹部や議員が祝福のためにサノ宅を訪れる場面も見られた。先にサノは同メディアの電話取材に対してプア・タイ党に合流する可能性があることを認めていた。
サノは「次期総選挙はプア・タイ党(最大野党)が楽勝する。プラチャラート党はプア・タイ党とともに連立政権を構える用意がある。」と述べた。楽勝予想は、プア・タイ党の人気を独自に分析した結果とのこと。また、「プラチャラート党がプア・タイ党に吸収合併される道を選ぶ。」との見方について質問されたサノは、「私は党首であり、この件に関してこの時期に人前で述べるのは適切ではない。」と明言を避けた。
かつてキングメーカーとして知られていたサノはタイ・ラック・タイ党の主要創設メンバーで、第1次タクシン政権誕生時には最大派閥を党内で率いていたが、その後タクシン直径系の派閥による巻き返しにより党内の影響力を失い幹事長ポストから下ろされていた。
また、サノはチャワリット元首相辞任後の多数派工作の際にステープ現副首相一派により巻き返されたことに対して私怨をいだいていることを認める発言を現政権誕生時にしていた。
一方、前日にはクーデター派に信奉者が多い有名占い師が、「間もなくタイに女性首相が誕生し情勢が好転する。」と占った。
反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)を支持母体とするカンムアン・マイ党(NPP)のソムサク党首は、「総選挙に候補を擁立する。」と明言。これは、「政治の浄化・正常化のためプロの政治家はしばらく政治から身を引く必要があり、NPPも総選挙をボイコットすべき。」とのPAD最高幹部の意向に反するものであり、PADの出方が注目される。
ソムサク党首によれば、「NPPはPAD支持者の多い選挙区に候補を立てる方針で、24日に開く党会議で候補擁立を検討・決定する。」という。
関係筋によれば、「街頭活動に力を入れてきたPADは、議会活動に参加することも必要と判断してNPPを設立した。だが、NPPが議会で大きな発言力を持つほど議席を獲得できるとは考えにくいこともあってか、PAD首脳部はあらためて『既存の政治システムは信用できない。』との姿勢を鮮明にし、NPPに選挙不参加を求めている。」とのこと。
04月02日(土)タクシン政権(2001~2006年)で内相、法相を務めたプラチャイが、クルングテープ都内の支那系タイ人の協会「泰国潮州会館」で演説し、「総選挙で誰も選ぶつもりがないなら、私に投票してほしい。」と呼びかけた。
これは、反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)が支持者に対し、投票で「誰も選ばない。」に印をつけるよう呼びかけていることに言及したもの。タイの選挙では、有権者が「その選挙を認めない」との意思表示ができるよう投票用紙に「誰も選ばない。」という選択肢が設けられている。
プラチャイは、どの政党から出馬するか明らかにしていないが、近く発足する新党、ラック・サンティ党から立候補する見通し。なお、プラチャイについては、「曲がったことが嫌いでルールに厳格」と評価する見方がある一方、「融通の利かない堅物」との意見も少なくない。
04月04日(月)タイ・カンボジア国境で起きている問題を解決するための話し合いが04月07~08日にかけてインドネシアで予定されているが、プラウィット国防相は、話し合いに加わらない意向を再確認。
カンボジアの要望に応える形でインドネシアが予定しているのは、双方の国境警護部隊の責任者が話し合う合同国境委員会(JBC)、そして、2国の国防相が共同議長を務める総合国境委員会(GBC)。JBCについては、タイ、カンボジア両国の外相が出席することで合意している。だが、GBCについては、カンボジアの国防相がインドネシアを仲介者とすべきとしていることから、「2国間」を主張しているプラウィット国防相は、「なにがあってもインドネシアには行かない。」と明言。プラウィット国防相は、「まずJBCを開き、そのあとでGBCを開くべき。」と、「同時開催の必要はない。」としている。
反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)の関連団体「タイ愛国者連盟(TPN)」のコーディネーターと女性秘書がカンボジアで国境侵犯やスパイ行為などで有罪となった問題で、2人の家族が、釈放を実現すべくタクシンの助力を求める書簡を最大野党プア・タイ党に提出。
それぞれ8年、6年の禁固刑を受けた2人は「控訴を断念し、カンボジア国王の恩赦による釈放に期待をかけている。」とされるが、カンボジア政府は法律を盾に「早期釈放は困難。」としている。関係筋によれば、「2人は反タクシン派であるものの、家族は、『これ以上過酷な刑務所生活を続けさせることはできない。』として、カンボジアのフン・セン首相と親交のあるタクシンに助けを求めたもの。」
04月05日(火) 「国軍が政権奪取に動き出す」とのうわさが絶えないことから、4月5日、ソンキティ国軍最高司令官、プラユット陸軍司令官、カムトン海軍司令官、イティポン空軍司令官が空軍本部で異例の記者会見を行い、「クーデターは起きない。」と明言。
国軍最高司令官は、「クーデターは絶対ない。これは陸海空3軍の共通認識である。」と強調。同時に、「上官が兵を率いてクーデターを起こそうとしたなら、その上官は反逆者である。」と述べ、「国軍内にクーデターの動きがあったとしても、これを支持しない。」との姿勢を明らかに。
関係筋によれば、6ケ月ほど前から軍事クーデターの噂があるが、先に「クルングテープで要人らが暫定政権樹立を謀議したものの、政権樹立の具体的過程は話し合われなかった。」と一部で報じられたことから、「軍事クーデターによる暫定政権樹立。」との見方が強まることになった。このため、国軍トップは「クーデター否定」を表明する必要に迫られることになった。
国外逃亡中のタクシンが、最大野党プア・タイ党幹部の会合に電話を入れ、「下院がまだ解散となっていないこの時期に誰かを首相候補として過剰に推すことは党内の状況を悪化させかねない。」と伝えた。党内では、「『ミンクワン不支持』を強く示唆したものと受け止められている。」という。
プア・タイ党では、新党首選びが難航していることから、「総選挙を前に首相候補(党が首相に推す人物)を先に決めるべき。」との意見も出ている。有力な党首・首相候補としては、タクシンの実妹インラックとミンクワン元商業相の名があがっているが、プア・タイ党の最高実力者であるタクシンは、ミンクワン派議員が少数派であることから明言は避けているものの、インラックを推しているのは明らかとのこと。
04月06日(水)カンボジアからの報道によれば、カンボジアのホー・ナムホン外相は、国境侵犯とスパイ行為などで禁固8年と6年の刑を受け服役中のタイ人2人について、「刑期の3分の2以上を務めて初めて恩赦適用が可能になる。」と述べて、「タイ大使館から提出された恩赦請求は現時点では受理できない。」との見方を示した。
昨年12月29日、民主党議員を含む7人が国境地帯でカンボジア兵に逮捕されたが、他の5人はスパイ容疑がかけられなかったことから執行猶予付きの有罪となり、すでに帰国。反タクシン組織の関係者である2人だけがスパイ容疑が追加され、重い刑を受けることになった。カンボジアのフン・セン首相がタクシンと親交があることから、2人が政治の駆け引きの道具にされたとの見方が支配的。
アピシット首相は、民主党の議員や役員に対し、「総選挙は激戦。」との見通しを示した。さらに、「選挙に勝利するには一層の努力が必要。」と強調。
前回2007年の総選挙における獲得議席は、タクシン派のパラン・プラチャーチョン党が最多の480議席中233議席、民主党は165議席で第2位だった。その後、パラン・プラチャーチョン党は2008年12月に解党処分を受け、タクシン派政権が崩壊。パラン・プラチャーチョン党議員の大多数が移籍したプア・タイ党が現在タクシン派本流の政党となっている。
アピシット首相によれば、「民主党が再び政権の座に就けば、これまでの政策が継続される。一方、プア・タイ党が勝利すれば、国外逃亡中の犯罪人タクシンを無罪放免とし帰国させるなどの可能性があり、政治対立が再燃するのは避けられない。」とのこと。
04月07日(木)プア・ペンディン党とルアムチャート・パッタナー党は、共同で「新政党チャート・パッタナー・プア・ペンディン党を設立する。」と発表。チャート・パッタナー・プア・ペンディン党のスローガンは国家のための団結となっており、ルアムチャート・パッタナー党党首で現エネルギー相のワンナラット・チャーンヌクンが、初代党首に決定。
04月08日(金)タクシン支持派団体、反独裁民主主義同盟(UDD)は10日、治安部隊との衝突で多数の死傷者を出した事件から1周年を記念し、民主記念塔で大規模な反政府集会を開く予定。数万人が参加すると予想され、周辺の道路交通が麻痺する見通し。
クルングテープで昨年04月10日に起きた衝突では、UDDのデモ参加者と兵士が激しい乱闘になり、双方が発砲。ロイター通信のカメラマン、村本博之ら20人以上が死亡、数百人が負傷。
国境で起きている問題の解決を目的としたタイ・カンボジア2国間の協議が07月07と08日、インドネシアで行われたが、みるべき成果はなかった。
両国間では国境未画定区域の領有権を巡って軍事衝突が発生し、犠牲者も出ている。
この問題については、国連機関などを通じての解決を主張するカンボジアに対し、タイは2国間で話し合うべきとの姿勢を崩していない。このため、妥協策としてASEAN議長国インドネシアで話し合うことになったが、歩み寄りはみられなかった。インドネシアのマルティ外相は、「複雑な問題で一朝一夕には解決できない。この問題に関し両国の外相と非公式に協議する予定。」と述べた。
04月10日(日)タクシン支持派団体、反独裁民主主義同盟(UDD)は、都内ラチャダムヌンクラン通りコークウア交差点で治安部隊との衝突し多数の死傷者を出した事件から1周年を記念し、事件現場に近い民主記念塔で3万人規模の反政府集会。「事件の真相解明や公正な選挙を求める。」とした8項目の「4・10宣言」を発表。警官隊との衝突はなかった。

← 左から、死亡したカメラマンのファビオ・ポレンギと村本博之の写真を掲げるUDD支持者。

集会では昨年10月に憲法裁判所長官秘書を解任されたパシットが演壇に登り、憲法裁が過去5年、タクシン派に不利、現与党の民主党に有利な判決を出し続けたことを、サッカーの試合に例え、審判があらゆる手段を使って一方のチームを勝たせようとしていると述べた。UDD幹部のチャトポン下院議員は「プミポン国王の側近であるプレム枢密院議長が司法に介入している。」と批判。国外逃亡中のタクシンはビデオ電話で登場し、「06、07月に予想される下院総選挙でタイに民主主義が戻ることを期待する。」と述べた。
昨年04月10日に民主記念塔周辺など起きた衝突では、UDDのデモ参加者と兵士が激しい乱闘になり、双方が発砲。ロイター通信のカメラマン、村本博之や、イタリア人カメラマンのファビオ・ポレンギを含む民間人21人と兵士5人の計26人が死亡、数百人が負傷。

← 死亡した村本博之に扮したUDD支持者。「HIROUKI」と誤字。

憲法裁はタクシン派と反タクシン派の抗争が激化した2006年以降、タクシン派の政党を2度解党し、タクシン派の首相2人を失職させた一方、反タクシン派の民主党の解党裁判は「手続きミス」で門前払いした。民主党の解党裁判を前にした昨年10月には、パシット氏と民主党国会議員の密談や、憲法裁判事とみられる男性2人とパシットが憲法裁職員の不正採用を隠す方法を話し合う内容のビデオが動画投稿サイトのユーチューブに投稿され、パシットは同月解雇。
UDDは、デモ参加者が死亡、負傷した状況がまだ完全には明らかになっていないことから、政府に真相を解明し責任を認めるよう強く迫っている。また、治安部隊側への爆弾攻撃や発砲は、デモ隊と行動を共にしていた武装グループの犯行との見方があるが、UDDはこれには触れず、「民主的なデモを治安部隊が制圧しようとしたことが最大の原因であり、責任は全て当局にある。」との姿勢。
タイ・カンボジア間の領有権争いを解決に導くべくASEAN議長国のインドネシアが国境地帯に監視団を派遣するとしていることについて、アピシット首相は、「外務省も軍も派遣に反対しており、意見の不一致はない。」と明言。これは、「タイの外務省と軍部が違うことを言っており、対応が非常に困難。」とのカンボジアのホー・ナムホン外相のコメントに反論したもの。
領有権争いに関しては、カンボジアが「国際機関などを交えて解決すべき。」としているが、タイは、これを「問題を大きくしてアピシット政権に揺さぶりをかけることが狙い。」とみて、2国間協議で解決するとの姿勢を崩していない。アピシット首相は、「インドネシアの監視団が国境未画定区域に入れば、状況がさらに悪化する恐れがある。」としている。
関係筋によれば、「最大野党のプア・タイ党幹部の1人、ミンクワン元商業相が、党首・首相候補欠選びでプア・タイ党の最高実力者、タクシンの支持を得られないことから、党を割って出ることを考えている。」、「プア・タイ党所属議員約190人のうち60~80人がミンクワン派との報道もあり、ミンクワンの離脱が党の分裂につながる可能性もある。」と言う。
同筋は、「タクシンは、実妹インラックを党首・首相候補に選びたいと考えているようだが、党内で意見がまとまっていないこともあって、誰を推すかを明言していない。だが、最近の言動から、ミンクワンがタクシンの眼中にないことがはっきりしており、ミンクワンは嫌気がさしたようだ。」と指摘。
04月11日(月)最大野党プア・タイ党関係筋が明らかにしたところによると、「プア・タイ党首脳らが先にドバイを訪れ、タクシンと次期総選挙について話し合った結果、タクシンの実妹インラックを比例代表候補者リストのトップとすることが合意された。」という。このため、プア・タイ党が選挙に勝利して政権を構えることになれば、タイ初の女性首相が誕生するという可能性が出てきた。
ただ、同筋は、「2~10位の候補者も首相の可能性がゼロではない。」としている。なお、政界観測筋からは、「タクシンは、まだインラックを首相候補に推すか決めかねている。これは、愛する妹が難しい政治状況に追い込まれるのを心配しているためだ。タクシンがインラックを首相候補に推すと表明するのは、事前の世論調査などでプア・タイ党の圧勝が確実との結果が出てからだろう。」といった見方も出ている。
04月12日(火)憲法裁長官、選挙委員長らからなる委員会が選出した任命制上院議員73人の名簿が発表された。約30人を退役軍人、元官僚が占め、学界、財界、法曹界、非政府機関からも代表が選ばれた。
任命制上院議員の名簿について、タクシン派の野党プア・タイ党は「反タクシン派に偏った選考だ。」と反発。連立与党チャートタイ・パタッナー党のチュムポン党首も「非常に強い影響力を持つ人物が選考をコントロールした。」と述べ、特権階級による政治支配を批判。
タイの上院は1997年憲法で公選制になったが、2006年の軍事クーデターでタクシン政権を追放した勢力が翌年導入した現行憲法で、定数150、任命制74、76都県から公選制で各1人というシステムに変更された。今年03月に新たな県が発足したことから、今回から任命制73、公選制77。任命制上院議員はタクシン派と対立する特権階級が選挙の洗礼を浴びずに国会をコントロールするための道具とみられ、不透明な選考過程・基準を批判する声もある。新議員のうち、元上院議員23人や2006年09月のクーデターに関与した複数の元軍高官などが反タクシン派とされる。
一方、今回の人選をプア・タイ党が批判していることについては、「タクシン政権も息のかかった者を独立機関に送り込み、タクシン派を上院議員に選ばせていた。」との反論も出ている。
プラユット陸軍司令官が、反タクシン組織、反独裁民主主義同盟(UDD)幹部のチャトポン、プア・タイ党議員などUDD関係者3人が04月10日の集会で王室に不適切な発言をしたとして、サムラン警察署に対し3人を不敬容疑で告発する手続き。音声を録音したCDや発言内容を文字化した書面が証拠として提出された。
同署の担当者は12日、「発言には不適切な部分があり、不敬罪が適用される可能性がある。」と述べた。
04月13日(水)タクシン支持派団体、反独裁民主主義同盟(UDD)幹部のチャトポン、プア・タイ党議員が、プレム枢密院議長、ソンティ枢密顧問官、元外交官のアナン氏の首相経験者3人を不敬容疑で告発する構えを見せている。「これら3人は先に元駐タイ・米大使と話し合ったが、ここで不敬罪に当たる発言があった。」という。発言内容はウィキリークスや英紙「ガーディアン」が明らかにしたもので、チャトポン議員はすでにこれをアピシット首相に報告済みという。
チャトポン議員も04月10日のUDD集会で王室に不適切な発言があったとして不敬容疑で告発されている。
04月17日(日)総選挙を間近に控え、政敵を追い落とそうとした発言も目立ってきているが、なかには王室に言及したものもあることから、アピシット首相は、「中央選挙管理委員会が政治論争で王室に言及するのを禁止する必要がある。」との認識を示した。」すでに禁止規定の設置を要請するよう首相官房に指示した。」とのこと。アピシット首相は、「(法律では)君主は政治を超えた存在。政治論争に君主を巻き込むことは許されず、これを破った者は罰せられなければならない。」と述べた。
なお、ここ数年、タクシン支持・不支持を巡る政治対立の激化に伴い、不敬容疑で政敵を告発するという政略も増えており、学識経験者などから「不敬罪(最高刑・禁固15年)条文の解釈を見直すべき。」といった意見が出ている。
04月18日(月)最大野党プア・タイ党関係筋によれば、顧問団長を務めていたチャワリット元首相が、離党届をファックスでプア・タイ党に提出。理由は記されていなかったが、「プア・タイ党が反独裁民主主義同盟(UDD)との結びつきを強めていることに憂慮していたことが原因。」と伝えられている。「チャワリットは『プア・タイ党が君主に敬意を払っていない。』と感じ、不満に思っていた。」との指摘もある。
プア・タイ党の最高実力者、タクシンは、プア・タイ党やUDDのメンバーに対し、王室に言及しなうよう指示するとともに、「プア・タイ党の候補者がUDDの集会に参加することがあってはならない。」と伝えたとのこと。
04月19日(火)タクシン派の最大野党プア・タイ党で顧問団長のチャワリットが離党したことを受け、プア・タイ党幹部のアピワン下院副議長は、「党が方針を転換し、反独裁民主主義同盟(UDD)と距離を置く必要がある。」との認識を示した。大規模集会などで現政権に圧力をかけ続けているタクシン支持団体UDDは、首脳の1人がプア・タイ党の主要議員で、少なからぬプア・タイ党議員が集会に参加しており、プア・タイ党の実動部隊とみなされている。
だが、UDDによる反タクシン派の現政権批判では、王室への言及も目立ってきており、プア・タイ党内では、UDDとの結びつきを強めることに反対する意見も出ている。
チャワリットの離党もこれが原因とされる。アピワン議員は、「プア・タイ党とUDDは民主主義と正義を求めている点では同じ。だが、別々に行動すべき。」としている。
04月20日(水)閣議で、02月09日からクルングテープ都内の一部に施行されている国内安保法の施行期間を05月24日まで30日間延長することを決定。施行中の地域は、ワントーンラーン区、パトゥムワン区、ラーチャテーウィ区、ドゥシット区、ワッタナー区、ポーンプラーブ区、プラナコーン区の7区。
当初04月24日まで施行される予定だったが、タクシン派団体の反独裁民主主義同盟(UDD)の大規模集会が05月19日に行われる見通しから、施行期間の引き伸ばしを決定。国内安保法は軍主体の国内安全保障司令部(ISOC)に、関係政府機関の動員、特定の建物、地域への進入禁止、外出禁止、集会禁止、移動禁止などの権限を与えるもので、治安維持に軍の動員が可能になる。
タクシン派の最大野党プア・タイ党で、東北出身者など議員約40人が、プア・タイ党の最高実力者のタクシンに対し、選挙キャンペーンに関与しないよう求めている。これは、タクシンが反独裁民主主義同盟(UDD)と親密な関係を保っていることが選挙戦に不利に働くとの判断によるもの。
プア・タイ党が総選挙に勝利するにはタクシン支持団体UDDの応援が不可欠だが、UDD幹部が政治集会で王室を批判したとして不敬罪で告発され、また、政権党の民主党など与党が「UDDは反王室。」との選挙キャンペーンを展開するとされることから、プア・タイ党内では「UDDと距離を置くべき。」との声が強まっている。関係筋によれば、プア・タイ党は「タクシン」を前面に出して選挙戦を戦う方針だが、東北出身議員らの要求はこの方針の転換を求めるものとなっている。
なお、タクシンは、選挙運動中に候補者がUDDの集会に参加することなどを禁止し、表向きはUDDを遠ざける姿勢を見せているものの、UDD幹部が比例代表でプア・タイ党から総選挙に出馬するなど、タクシンとUDDの密接なつながりは隠しようがない。
04月21日(木)タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)首脳の1人、チャトポン、プア・タイ党議員は、「不敬発言で告発されたことの責任をとって議員辞職する。」との一部報道を、「何も悪いことはしていない。」と述べて全面的に否定。チャトポン議員は、04月10日のUDD集会で王室に批判的な発言をしたとして陸軍司令官に告発された。だが、チャトポンは、「プア・タイ党とUDDの仲を引き裂こうとした罠。こんな策略には引っかからない。」としている。
また、同じくUDD首脳のナタウットによれば、「軍事クーデターの噂が絶えないが、これは、タクシン派が次期総選挙で勝利する可能性が強いことから、これを牽制することが目的と考えられる。」とのこと。
タイの政界でタクシン派と特権階級の対立が深まり、特権階級によるクーデターの噂が再浮上。反タクシン派で穏健派のアピシット民主党政権は05月の下院解散、06、07月の総選挙を目指しているが、民主主義の定着を嫌う特権階級がクーデターに踏み切る可能性も捨てきれず、先行き不透明な状況。
タクシン派団体、反独裁民主主義同盟(UDD)は今月10日、治安部隊との衝突で多数の死傷者を出した事件から1周年を記念し、民主記念塔で3万人規模の反政府集会を開いた。タイ軍はこの集会でUDD幹部が王室を批判したとして、タイ法務省特捜局(DSI)に告発。さらに、タイ軍の第1近衛歩兵師団が19日、クルングテープの東約100㎞に位置するプラチンブリ県の第2近衛歩兵師団が21日に閲兵式を行い陸軍キャンプに兵が集結した。両師団の司令官が王室への忠誠を誓った。第2近衛歩兵師団のピシット司令官はクーデターを示唆するように、「命令があれば12時間以内に出動できる。」と述べた。
しかし、陸軍の説明によれば、「キャンプでは兵士約1600人が動員され、戦車、迫撃砲、機関銃のパレードが行われただけ。」とのこと。
21日には衛星テレビが午後04時過ぎから約3時間にわたり中断したことから、「軍がクーデターに踏み切る。」という噂が駆け巡った。新聞社やテレビ局などに「クーデターが起きたのか。」との問い合わせが殺到。 放送中断は、通信衛星に技術的問題が発生したことが原因だった。通信衛星会社タイコム関係筋の説明では、「通信衛星の静電気放出がうまくいかずCバンドとKUバンドの送信ができなくなり、ケーブルテレビや地上放送の中継が中断したもの。」という。
アピシット首相は21日、クーデターの可能性を否定したが、緊張した面持ちで、いつになく早口だった。閲兵式について記者に尋ねられたステープ副首相は「この問題には答えられない。これ以上聞くならあなたの責任だ。王室についての質問はもうたくさんだ。」と、脅しめいた言葉を口にした。
一方、タイ選挙委員会は次期総選挙の選挙戦で候補者が王室について言及することを禁じる方針。王室の護持を掲げる連立与党のプームチャイ・タイ党はこれに反発しているが、民主党は選挙委の方針を支持している。
プア・タイ党関係筋によれば、東北出身議員の多くが、反独裁民主主義同盟(UDD)と親密な関係を保っているタクシンが選挙運動に深く関与することに反対しているものの、先に離党したチャワリット元首相とベテラン政治家のサノが設立する新党に移籍することには消極的という。これは、「タクシン」、「プア・タイ党」という大看板なしには総選挙で当選できないと考えているため。
また、プア・タイ党を離脱すれば、「タクシンの顔に泥を塗った。」と受け止められかねず、これも離党を思いとどまらせる要因になっている。
04月22日(金)午前スリン県の国境地帯で約5時間にわたって両国軍が交戦し、少なくともタイ兵4人、カンボジア兵3人が死亡、13人あまりが負傷。両国軍の武力衝突は今年02月以来。
タイ外務省によると、午前06時頃、タイ東北部スリン県の国境で、両国が合意した非武装地域に侵入したカンボジア兵にタイ兵が威嚇射撃し、カンボジア側が応戦して戦闘状態に陥った。プラユット陸軍司令官は、「タイ領内でカンボジア兵が塹壕を掘っているのを確認し、退去するよう求めたが、これを無視して砲撃してきた。」と、「カンボジアに責任がある。」としている。戦闘は午前11時頃まで続き、タイ側では砲弾数発が近くの村に着弾、スリン県パノムドンラック郡、隣接するブリーラム県カーブチューン郡の周辺の住民約9000人(報道により7000人)が避難。タイ軍は先に発砲したことを否定している。
タイとカンボジアは今年02月04日から17日にかけ、今回交戦した場所から約200㎞離れたヒンドゥー寺院遺跡カオ・プラウィハーン周辺の国境で交戦し、双方で民間人を含め数十人が死傷。両国が加盟する東南アジア諸国連合(ASEAN)は02月22日にジャカルタで緊急非公式外相会議を開き、タイとカンボジアは国境の戦闘地域にインドネシアの停戦監視団を受け入れる、両国はできるだけ早く2国間交渉を再開し、インドネシアは両国の交渉に「適切に関与」することで、事態の友好的解決を支援することで合意したが、タイ政府と距離を置くタイ軍が停戦監視団の受け入れとインドネシアの調停を拒否し事態は膠着。
関係筋は、「国境未画定区域の領有権を巡る問題を話し合いで解決しようという努力が続けられ、この3ケ月は軍事衝突はなかった。その中かで両軍が再び攻撃し合う事態となり、問題解決の難しさが浮き彫りになった。戦闘勃発の経緯にはまだ不明な部分もあるが、現在の状況は、2国間協議を主張するタイには不利で、国際機関など第三者の介入を求めるカンボジアに有利となっている。」と指摘。02月と今回の武力衝突はいずれもタイ国内で軍事クーデターの噂が浮上した際に起きている。こうしたことから、タイ軍が「国境問題で強い政府が必要。」といったクーデターの口実作りを狙い、戦闘を仕かけたという見方もある。
昼頃タイ中部チョンブリー県バーンラムン郡で、タクシン派団体の反独裁民主主義同盟(UDD)アリスマン幹部の側近2人が銃撃され重傷。
タイ地元紙によると、「銃撃された2人は、UDDパタヤ支部で23日に開催する集会の準備をしていたところ、バイクで近づいてきた20~30歳の男性2人組に銃撃された。」という。2人組は銃撃後に逃走、被害者2人は直後に病院に搬送された。
04月23日(土)スリン県の国境地帯で22日に勃発した国境紛争は23日に至っても収まるところを知らず、タイ・カンボジア両軍に死傷が増加しておる。両軍で少なくとも10人が死亡。
また、カンボジアは、世界的に使用禁止の動きにある「クランスター弾や化学兵器をタイ軍が使用した。」と主張しているが、タイ外務省は23日、「航空機によるクラスター弾や化学兵器の使用はない。」と主張。同時に2国間交渉による問題解決が必要との立場を明確にした。
タクシン派の野党プア・タイ党は、クルングテープ郊外のタマサート大学ランシット分校で数千人規模の党幹部会議を開き、国外逃亡中のタクシンがビデオ電話で次期総選挙に向けた政策を発表。7つの国民和解プラン、3つの大型プロジェクト、24に及ぶ社会・経済開発スキームを展開していくことを明らかにした。タクシンの演説は2時間以上にわたり、反タクシン派の与党、民主党は「参政権停止中のタクシンがプア・タイ党の事実上の党首であることが明白となった。プア・タイ党は解党処分を受けるだろう。」と述べた。約5千人が出席。また、会場には入れなかった数千人がモニターなど通じてタクシンの言葉に耳を傾けた。
このプランは「タクシンが考え、プア・タイ党が実践する。」キャンペーンと名づけられたが、「骨子はプア・タイ党首脳からの提案に基づいたもの。」という。タクシンが発表した主な政策は、クルングテープ首都圏の鉄道網整備、クルングテープと地方を結ぶ高速鉄道網整備、クルングテープを洪水から守る治水事業、大規模な灌漑、麻薬撲滅、最低賃金の1日300Bへの引き上げ、大卒者の最低月収1万5000B保証など。軍の政治介入、王室の政治利用を批判し、立法、行政、司法への権力者の介入を阻止する方針も示した。タクシンは演説の最後に「タイに帰国したい。」と声を震わせ、会場では涙ぐむ支持者の女性も見られた。
党大会には新たにプア・タイ党に加わったプラチャー元警察長官も姿を見せた。プラチャーはプア・タイ党の比例代表名簿のトップ3に名前が載る見通し。名簿1位はタクシンの妹で実業家のインラクが有力視されているが、今回の党大会では発表はなかった。 タイの地上波テレビは全局が政府、軍の管理下にあり、タクシンの肉声が放送されることは稀だが、今回は演説は一部のチャンネルのニュース番組で短時間放送された。
04月24日(日)22日に始まったタイ・カンボジア国境での両国の交戦は23、24日も続き、少なくとも双方の兵士10人が死亡、数十人が負傷。
関係筋は、「両軍ともさらに迫撃砲などを国境に配備する動きを見せており、本格的な戦闘状態にエスカレートしかねない。」としている。関係当局によれば、22から24日の軍事衝突で、タイ兵4人が死亡、27人が負傷。カンボジア兵6人以上が死亡。
タイ側では戦闘地域近くの住民約2万7000人が避難。スリン県の22ケ所、ブリラム県の6ケ所に避難センターが開設された。カンボジア領でも住民多数が避難している。ただ、戦闘地域から西南に約200㎞のタイ東北部サケーウ県アランヤプラテートの国境は24日も閉鎖されず、多数のカンボジア人がタイの市場を訪れた。
今回の戦闘でカンボジアはタイ軍が国境から20㎞の地点まで砲弾を撃ち込み、クラスター弾や毒ガスも使用したと主張。タイ側は否定。
カンムアン・マイ党(NPP)では党首らがカンムアン・マイ党の支持母体である反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)の意向に反して次期総選挙に候補を擁立する姿勢を示していたが、党員投票でほとんどの党員が「候補擁立」に反対したことから、カンムアン・マイ党の総選挙不参加がほぼ確実となった。党員投票に集まったのは1000人以上。その大多数が「次期総選挙は、有権者を買収した者が政権の座に就き、汚職の悪循環を断ち切れない。政治家はしばらく政治から遠ざかるべき。」などとするPAD首脳部の意見に従い、「カンムアン・マイは候補を擁立すべきでない。」との判断を示した。この結果は近く党で正式に承認され、総選挙不参加が決まる見通し。
なお、カンムアン・マイ党党首のソムサクは総選挙に参加すべきとしていたが、「カンムアン・マイ党は準備不足。また、巨額の資金を投入しなければ得票を伸ばせないのが現実であり、カンムアン・マイ党が候補を立てても当選を勝ち取るのは難しい。」と考えていた党幹部も少なくなかった。
国立タマサート大学芸術学部のソムサック・チヤムティーラサクン准教授(歴史学)が、タマサート大学で記者会見し、学識経験者、外交官、外国のメディア関係者など約500人を前に、昨年12月の講義内容が不敬容疑に当たるとして逮捕されかねない状況にあるものの、逃げも隠れせずに逮捕されたら法廷の場で戦う意向であることを明らかに。「この記者会見は、学術界などがソムサックを支持していることを示すために開かれたもの。」という。
ソムサックによれば、「半月ほど前から『当局が逮捕のために行動を監視している。』といった匿名の脅迫電話を度々受けた。」とのこと。
タイの憲法記念日に当たる昨年12月10日、タマサート大学では「王室、憲法、民主主義」をテーマとする公開討論会が開かれた。討論会ではソムサックらパネリストが、「憲法が新しくなる度に王室の権限が増した。」、「王室の予算について、何にいくら使われたのか明らかにすべき。」、「王室の位置付けについて、日本の憲法を参考にすべきだ。」など、タイ王室に関し踏み込んだ発言を行った。一方、プラユット陸軍司令官は先に「王制を壊そうとしている学者がいる。」と述べたが、これはソムサックに言及したものとされる。だが、ソムサックは、「王室の役割を改めるべきと提言したもので、王制を否定したことはない。」と明言している。
タイではタクシン政権を追放した2006年の軍事クーデター後、特権階級を中心とする反タクシン派と、地方住民、中低所得者層が多いタクシン派の政治抗争が続き、タクシン派の市民が不敬罪で投獄される事件が相次いでいる。不敬罪は国王夫妻と王位継承者への批判を禁じたもので、違反した場合、1件につき最長15年の懲役刑が科される。
04月25日(月)22日に始まったタイ・カンボジア国境での両国軍の戦闘は25日も続き、4日間で、少なくともタイ兵5人、カンボジア兵7人が死亡、双方で数十人が負傷。両国が加盟する東南アジア諸国連合(ASEAN)の議長国インドネシアは25日に同国のマルティ・ナタレガワ外相をタイとカンボジアに派遣し調停を図る方針だったが、直前になり延期。延期の理由について欧米の一部メディアは「タイが戦闘地域への停戦監視団の受け入れを拒否しているため。」という見方を示した。
一方、タイ当局によると、タイとカンボジアの陸の国境検問所4ケ所のうち、戦闘地域に近いタイ東北部スリン県のチョーンチョーム検問所は22日から断続的に閉鎖され、25日は終日閉鎖。タイ東北部サケーウ県アランヤプラテートなど他の3ケ所は25日も通常通り出入国が可能。
タイ・カンボジア国境で両国軍による砲撃が続いていることに対し、タイのカシット外相は、「カンボジアは領有権争いを交渉で解決することを拒み、タイへの敵対的行為を続けている。」として、カンボジアとの関係を全面的に見直す意向を明らかに。
今月22日に勃発した軍事衝突は25日なってもやまず、タイ兵の死者数も5人に増えた。戦闘が行われている東北部スリン県の国境地帯を視察したカシット外相は、「カンボジアはタイを意図的かつ継続的に攻撃している。タイは停戦実現のため、あらゆるチャンネルを使って交渉を試みているが、カンボジアは応じようとしない。」と強く批判。
IT業界筋によれば、総選挙を前に政権党の民主党も最大野党のプア・タイ党も得票を伸ばそうと大衆迎合的なプランを明らかにしていることから、来年の国内ITマーケットの総売り上げが今年の推定を20%程度上回る840億Bほどに拡大すると見込まれている。
民主党は、全国でブロードバンドを整備するとしており、プア・タイ党も「学童1人にタブレットコンピューター1台。」とのプランを打ち出している。
なお、今年の国内ITマーケットの総売り上げは、700億バーツ程度に拡大し、前年を15%ほど上回ると予想されている。
憲法改正に伴い必要とされている選挙関連法の改正を求める3案が、上院を通過した。これらの法改正は下院の了承をもって発効することになる。
アピシット首相は、05月初めの下院解散を公言していたことから、上下両院に速やかに選挙関連法を改正するよう求めていた。総選挙は06月末か07月初めに公示される見通し。
欧州連合(欧州連合)の15ケ国の外交官がタイの政権与党の民主党のコープサック副党首(前副首相)らを招き、タイの政治情勢とクーデターの噂に関する説明を受けた。
タイの民主党連立政権は05月に下院を解散、06、07月に総選挙を行う方針だが、タクシン派野党の政権復帰や民主主義の定着を懸念する反タクシン派の特権階級が軍の一部を動かしクーデターに踏み切るという噂が流れている。22日に勃発したカンボジアとの武力衝突はクーデターの伏線という見方もある。
04月26日(火)午後タイとカンボジアは22日から戦闘が続いているタイ東北部スリン県の国境以外に、タイ東北部シーサケート県の国境でも戦闘を始めた。戦闘が始まったのはこれまでの戦闘地域から約150㎞東で、両国が今年02月に交戦したヒンドゥー寺院遺跡カオ・プラウィハーンの近く。両国は今年02月と今回、国境未画定地域をめぐり武力衝突し、民間人を含め数十人の死傷者が出ている。
カンボジアとの交戦は26日になっても収まる気配がなく、連立与党プームチャイ・タイ党党首のチャワラット内相は、下院解散が遅れる可能性を認めた。
国内治安作戦司令部、国家放送通信委員会、警察庁犯罪制圧課の合同チームは、クルングテープ首都圏の13のコミュニティ・ラジオ局を無許可放送や不敬罪などの容疑で家宅捜索し、数人を逮捕、放送機器、コンピューターなど放送機材を押収。このうち1ケ所ではタクシン派団体、反独裁民主主義同盟(UDD)の支持者数百人が警官らの立ち入りを阻止。
手入れを受けた13局は不敬罪に抵触した可能性がある演説を放送していた。問題の演説は今月10日にクルングテープで開かれたUDDの反政府集会でUDD幹部のチャトポン下院議員が行ったもので、チャトポン自身も逮捕される可能性がある。
コミュニティー放送局は、地域密着型の情報提供局として法律で認められているが、タクシン派の影響下にあるものが少なくない。
カンボジア国防省が「ティー・バン国防相が近くプノンペンで停戦に向けタイの国防相と話し合うことに合意した。」と発表したことを受け、アピシット首相は話し合いに応ずる意向を確認し、「事態収拾につながる良い兆し。」との見方。
タイ側は、「カンボジアが戦略の一環としてタイに攻撃を仕掛けている。」との立場をとっているが、アピシット首相は、カンボジアが今回柔軟姿勢を示したことについて、「カンボジアは、国境紛争を国際問題化しようと躍起になっているが、うまくいっていないため苛立っている。」と指摘。26日の閣議では、商取引・文化交流を含めたすべて対カンボジア関係を見直すとのカシット外相の提言が承認されたものの、外交関係の格下げは話し合われなかった。
なお、22日から26日の戦闘による両軍兵士の死者数は13人。
04月27日(水)タイとカンボジアは27日も国境で交戦。当初予定されていたタイのプラウィット国防相のカンボジア訪問は直前に中止され、カンボジアに強い影響力を持つ支那に向かった。
戦闘が始まった22日以降の死者は少なくともタイで6人、カンボジアで8人に上る。タイでは26日夜、民家に砲弾が落ち、住民1人が死亡、数人が負傷。今回の武力衝突でタイ側の住民が死亡したのは初めて。
武力衝突後も、タイ国際航空、エアアジア、バンコクエアウェイズの3社のタイとカンボジアの間の空路は通常通り運航。また、タイ当局によると、タイとカンボジアの陸の国境検問所のうち、タイ東北部サケーウ県アランヤプラテートなど3ケ所は27日も通常通り出入国が可能。
タイとカンボジアの武力衝突について、日本の外務省は26日、「両国が東南アジア諸国連合(ASEAN)及び議長国インドネシアのこれまでの仲介努力にも留意し、対話を通じ、事態を早急に平和的に解決することを強く希望する。」とした報道官談話を出した。
シンガポール外務省の報道官は25日、「インドネシアのマルティ外相が近くカンボジアとタイを訪問すると聞いている。シンガポールはインドネシアがタイ、カンボジア双方に建設的な対話を行うよう促すことを強く支持する。」と述べた。
今回の武力衝突の原因に関して、欧米の一部メディアは「タイの国内情勢が関係している。」という見方。タイの民主党連立政権は05月に下院を解散、06、07月に総選挙を行う方針だが、「反タイ王室色の強いタクシン派野党の政権復帰や民主主義の定着を懸念する反タクシン派の特権階級がタイ軍の一部を動かしクーデターに踏み切る。」という噂が流れている。カンボジアとの武力衝突はこうした状況の中起きており、「タイ軍が戦闘による選挙の先送りやタイ王室を中心とする愛国心の発揚を狙った可能性がある。」という。実際、タイ国内ではカンボジアとの戦闘の前後から、不敬罪によるタクシン派弾圧が強まっている。
タイとカンボジアは今年02月にも交戦し、双方で民間人を含め数十人が死傷。ASEANは02月22日にジャカルタで緊急非公式外相会議を開き、タイとカンボジアは国境の戦闘地域にインドネシアの停戦監視団を受け入れる、両国はできるだけ早く2国間交渉を再開し、インドネシアは両国の交渉に適切に関与することで、事態の友好的解決を支援することで合意したが、タイ政府と距離を置くタイ軍が停戦監視団の受け入れを拒否し、事態は膠着。タイ政府はまた、カンボジアとの2国間交渉による解決を強く主張し、インドネシア、国連など第3者の介入を求めるカンボジアと対立。カンボジアとの国境問題に関するタイ政府の姿勢に対しては、タイの英字紙ネーションも批判を浴びせた。ネーションはタイがインドネシアの停戦監視団の受け入れや第3者の調停に消極的なことについても、「タイに隠し事がないなら、停戦監視団を恐れる必要はないではないか?」と指摘。「問題はタイにある。」という見方。
米人権団体フリーダムハウスが37ケ国のインターネットの自由度を評価した2011年版の報告書で、タイは過去12ケ月に状況が悪化した5ケ国の1つに挙げられ、イラン、支那、ベトナム、ビルマなどとともに「インターネットが自由でない」国とされた。「自由」とされたのは米国、南アフリカなど。南朝鮮、インド、マレーシアは「一部自由」。
フリーダムハウスはタイの状況について、「特に王室に関してインターネットの検閲が強化され、サイトの閉鎖、コメント投稿者の不敬罪による投獄などが相次いでいる。」と指摘。「2007年以降、裁判所命令で7万5000のウェブサイトへの接続が遮断され、このうち5万7000サイトが不敬罪によるものだった。」という。
22日から国境地帯でタイ・カンボジア両国軍が砲撃しあう状態が続くなか、カンボジアのフン・セン首相が、停戦に向けた話し合いに応ずる姿勢を示しタイを好戦的と批判したのに対し、アピシット首相は、「カンボジアは停戦交渉を持ち出しながら砲撃を止めようとしない。話し合いを望むなら砲撃を停止する必要がある。」と即座に反論。
フン・セン首相は首都プノンペンでの演説の中で、アピシット政権について、「タイには過去にこれほど好戦的な政権はなかった。」と指摘する一方、「05月初めにインドネシアで予定されている会議でアピシット首相と話し合う用意がある。」など、今回の軍事衝突に初めて言及。だが、タイ側は、「戦闘を仕掛け続けながら、停戦交渉を提案するのは、『交渉に応じないタイが悪い。』とアピールするための戦略」と見ており、「今のところ話し合いによる事態収拾の可能性はない。」とのこと。
タイ軍によれば、「27日も夜になって東北部スリン県の国境地帯にカンボジア側から約15分間にわたり砲撃があったが、タイ軍は反撃しなかった。」という。
国営企業労組からなる国営企業労働関係連盟は、反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)を支持する姿勢をとってきたが、同連盟のサウィット事務局長は、「PAD首脳らが非民主的な政治改革を求めている。」と、連盟がPAD支持の撤回を決めたことを明らかに。
PADは、「政治の浄化のため次期総選挙をボイコットする。」としているが、これについては、「選挙によらない政権樹立=クーデターを求めるもの。」との見方も出ている。
サウィット事務局長は、「総選挙が間近に迫っているのに、PAD首脳らは『国を改革するために国を閉じるべき。』と述べている。連盟は民主主義を尊重しており、われわれの政治理念とは相いれない。」としている。
なお、同連盟は、PADが当時のタクシン政権批判を活発化させた2006年からPADを支持しており、複数の連盟幹部がPAD内で一定の役割を果たしていた。
04月28日(木)タクシン派の最大野党プア・タイ党では、「幹部議員のミンクワン元商業相が首相候補欠選出を巡ってタクシンに不満を抱いている。」とされるが、プロートプラソプ副党首は、ミンクワンと連絡が取れないことに苛立ちを露わにし、離党するか否かをはっきりさせるようミンクワンに迫った。
「プア・タイ党では新党首選びで意見がまとまらないことから、総選挙を前にまず首相候補を決めることが合意されている。」という。だが、ミンクワンが名乗りを挙げているにもかかわらず、タクシンは、実妹のインラックを推しているとされることから、なかなかミンクワンにお墨付きを与えようとしない。このため、数十人に及ぶ議員を率いてミンクワンが離党するとの見方が以前から出ている。
午後タイ政府は、カンボジア軍と停戦に合意したとの報告をタイ軍から受けたと発表。「戦闘地域を管轄するタイ陸軍第2管区のタワチャイ司令官が朝、カンボジア軍の司令官と口頭で停戦に合意した。」と言う。ただ、タイ政府は「今後の情勢を注視する必要がある。」(パニターン報道官代行)として、停戦の実現に慎重な姿勢を見せた。タイとカンボジアは22日から国境地帯で交戦し、少なくともタイで7人、カンボジアで8人が死亡し、双方で数十人が負傷。/TD>
タイ・カンボジア国境に配備された両国軍部隊の責任者の間で停戦が合意されたとの報告について、アピシット首相は、「実際に戦闘停止となるか静観する必要がある。」と述べ、「(国防相などによる)高次の交渉に入るのは国境の状況が正常化してから、」との見方を示した。
東北部のスリン、ブリラム両県の国境地帯では現在、カンボジアからの砲撃を恐れて住民約4万8000人が防空壕に避難している。
アピシット首相は、「戦闘停止が続くことを期待している。そうなれば、住民は帰宅できる。だが、安全が確保されなければならないため、1日、2日は事態を静観しなければならない。」と述べている。
また、カンボジアのフン・セン首相が、「インドネシア・ジャカルタでのASEAN首脳会議開催時にタイの首相と話し合う用意がある。」と述べたことについて、アピシット首相は、「話し合いを拒否するつもりはない。」としているものの、「今のところフン・セン首相との会談は予定されていない。」と明言。
ステープ副首相(治安担当)は、「タイ政府がカンボジアとの軍事衝突を政治的に利用している。」との一部報道を全面的に否定。
今回の軍事衝突については、外国メディアがさまざまな分析を行っているが、なかには、「タイ国内の政治状況が原因。政治的な目的のため戦闘が続いている。」といった見方も出ている。
だが、ステープ副首相は、「衝突はカンボジア軍が攻撃を仕掛けてきたことが原因。」と説明。「タイ外務省ではこの事実を国際社会に向け説明しているが、事実を伝えることが目的であり、衝突を政治的に利用しようとしたものではない。」と明言。
04月29日(金)タイとカンボジアは停戦合意を発表した数時間後の28日夜から29日朝にかけ国境地帯で交戦し、タイ側で兵士1人が死亡。両国は「互いに相手が停戦を破った。」と非難。ただ、「停戦の実現に向けた努力は続ける。」としている。
タイとカンボジアは今月22日から国境地帯で交戦し、これまでに少なくともタイで兵士6人と一般人1人の計7人、カンボジアで8人が死亡し、双方で数十人が負傷。28日には両国の現地司令官が「停戦に合意した。」と発表したが、タイ政府は「今後の情勢を注視する必要がある。」(パニターン政府報道官代行)として、停戦実現を懐疑的に見ていた。
両国間の空路は29日も通常通り運航。陸の国境はタイ東北部スリン県チョーンチョームなど2ケ所が閉鎖され、タイ東北部サケーウ県アランヤプラテートは通常通り出入国が可能。
タイ・カンボジア国境で両国の部隊責任者が停戦に合意してから10時間もたたないうちに戦闘が再発したことに対し、タイでは、陸軍、政府、外務省が共同記者会見を行い、不快感と失望感を表明。
パニタン政府報道官代行は、「カンボジアは不誠実。」と批判し、「停戦合意が守られて初めて話し合いが可能になる。アピシット首相は話し合いに応じる用意がある。だが、状況が改善しなければ、話し合いは有効な手段となり得ない。」と述べた。
現場の部隊責任者の間では28日正午に停戦が合意されたが、午後09時半ごろから小銃や手榴弾による攻撃があり、戦闘が約1時間に及んだ。29日も午前02~06時頃にかけ戦闘があり、タイ兵1人が死亡。22日からの軍事衝突でタイ側の死者数は民間人1人を含む8人。
国境で戦闘が続いていることから下院解散が延期されるとの見方も出ているが、チャーイ下院議長は、「予定通りに05月06日に下院が解散されると考えている。」と述べ、軍事衝突が政治スケジュールに影響することはないとの見方。
解散の期日について、アピシット首相は「05月第1週」とだけ述べている。05月06日は、チャーイ議長が「解散に最適」と首相に提言した日。これは、「05月04日に憲法裁判所が選挙関連法改正を承認。改正案が議会から首相に送られ、06日に国王の承認をもって改正が発効」との見通しに基づいたもの。
反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)」を支持母体とするカンムアン・マイ党(NPP)は党会議で、「次期総選挙をボイコットする。」との党員の多数意見を党として受け入れるか否かを決定するはずだったが、出席者からソムサック党首など党首脳を非難するヤジと怒号が飛び交う混乱状態となり、会議はなにも決めないまま2時間あまりで閉会。党員のほとんどは、「有権者を買収した者が政権をとり、汚職の悪循環を断ち切れない。政治家は政治からしばらく身を引くべき。NPPは次期総選挙に候補を擁立すべきでない。」とのPAD首脳の主張に同調した。
一方、ソムサック党首は、これに反対する立場を明らかにしており、今回の会議で、「総選挙参加」を強行採決するとの見方も出ていた。
04月30日(土)タイ、カンボジア両軍は22日以来9日間連続で国境付近で衝突を続行。双方の死者は民間人を含む計16人。両国は28日にいったん停戦で合意したが、その日のうちに交戦を再開。
サケオ県アランヤプラテートの国境通行所で、不敬容疑で指名手配されていたタクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)幹部で雑誌「ボイス・オブ・タクシン」の元編集長のソムヨット(50)が逮捕された。ソムヨットは、昨年04~05月の大規模反政府デモに関与したとして逮捕され06月13日に釈放されたものの、雑誌の内容に関連して不敬容疑を掛けられ、法務省特捜局(DSI)が指名手配中だった。
ソムヨットは通行所で旅券を提示してカンボジアに入国しようとしたところを逮捕されたもので、「不敬容疑をかけられていることは知らなかった。知っていたら警察に出頭していた。」と述べている。
タイではタクシン政権を追放した2006年の軍事クーデター後、特権階級を中心とする反タクシン派と、地方住民、中低所得者層が多いタクシン派の政治抗争が続き、軍、司法の実権を握る反タクシン派により、タクシン派の市民が不敬罪で投獄されるケースが相次いでいる。反タクシン派は06、07月に予想される下院総選挙を前に、タクシン派のコミュニティ・ラジオ局の閉鎖、雑誌の発行禁止などを強行。インターネットの検閲も強化し、米人権団体フリーダムハウスによると、2007年以降、裁判所命令で7万5000のウェブサイトへの接続が遮断され、このうち5万7000サイトが不敬罪によるものだった。ネット上の百科事典「ウィキペディア」のプミポン国王に関する英語のページもタイからは閲覧できない。
反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)を支援してきた、実業家などからなる「平和を愛するタイ人グループ」が、PADに対し、グループのメンバーへの批判と座り込みをやめるよう求めた。
PADは、カンボジアとの領有権争いへのアピシット政権の対応を批判すべく政府庁舎周辺で座り込みを続けているが、同グループのカンチャニー代表は、「政府をこきおろすキャンペーンはもう十分。」と述べるとともに、「PAD幹部らは傘下のメディアを通じてまで意にそぐわない人々を口撃している。PADは事実を捩じ曲げ、政治対立をさらに悪化させている。」と批判。
このグループは、2008年にPADが展開した、当時のタクシン派政権に対する抗議活動に資金援助した団体のひとつ。
05月01日(日)アピシット首相は、鉄道建設プロジェクト計画を視察するため訪れた地下鉄バンスー駅で「金曜日に下院を解散する。」と明言。アピシット首相は国王から下院解散のご承認を得て今月6日に解散を宣言する意向とのことだ。また、アピシット首相は先に中央選挙管理委員会と総選挙について話し合ったが、ここで6月26日に実施することで意見が一致。
16時頃東北部スリン県パノムドンラック郡のタムントム寺近くに配備されていたカンボジア軍部隊の責任者からタイ軍の部隊に対し、兵士の遺体を回収するとの理由で停戦の申し入れ。両部隊の責任者が話し合った結果、戦闘を停止しカンボジア軍部隊が撤退を合意。
カンボジアの説明によれば、「寺の向かいの森には04月22日からのタイ軍との交戦で死亡したカンボジア兵数人の遺体が放置されたままであるため、腐敗が進んで悪臭を放っている。」という。また、「カンボジア兵は、死者が次第に増加し、武器も不足していることから、士気が低下している。」とのこと。
05月02日(月)アピシット首相は、「タイ・カンボジア国境の情勢は過去数日間激しい戦闘がなく、沈静化に向かいつつある。」との認識を示した。
ただ、「カンボジア軍はゲリラ戦術で攻撃を仕掛けてくる可能性があり、タイ軍は警戒を怠ってはならない。」としている。「東北部のスリン、ブリラム両県の国境地帯では、戦闘が下火になってきたことから、シェルターに避難していた住民が帰宅し始めている。」という。タイ軍によれば、砲撃は過去4日間起きていない。「小銃などによる戦闘が散発的に報告されているものの、国境付近の村にまで危険が及ぶことはない。」とのこと。
タイとカンボジアは国境地帯で交戦し、タイ側で兵士1人が死亡、4人が負傷。04月22日の戦闘勃発から05月02日までのタイ側の被害は死者が兵士8人、住民1人の計9人、負傷者120人以上で、民家30棟以上が被害を受け、02日時点で住民4万6000人が避難生活を送っている。カンボジア側も少なくとも兵士9人が死亡。
選挙委員会は、06、07月に実施される見通しの下院総選挙を前に、56の政党の代表者と会合を開き、選挙活動で王室に言及しないことなどを盛り込んだ5項目の協定への調印を求めた。下院議席数最多のタクシン派野党プア・タイ党、政権与党の民主党など42の政党はこれに調印したが、国王の教えを選挙戦で使う予定だった連立パートナー、チャート・タイ・パタナー党は調印を見送った。選挙委によると、アピシット首相が今月06日に下院を解散した場合、総選挙は06月26日もしくは07月03日に行われる見通し。
タイには国王夫妻と王位継承者への批判を禁じた不敬罪があり、違反した場合、1件につき最長15年の懲役刑が科される。この不敬罪と在位60年を超えたプミポン国王のカリスマ性により、タイ王室への批判は長年の間、表面化しなかった。しかし、タクシン政権を追放した2006年の軍事クーデター後、特権階級を中心とする反タクシン派と、地方住民、中低所得者層が多いタクシン派の政治抗争が続き、軍、司法の実権を握る反タクシン派により、王室を批判したとされるタクシン派の市民が不敬罪で投獄される事例が相次いでいる。
05月03日(火)アピシット内閣は数日後に迫った下院解散を前に最後の定例閣議を開き、午前08時半から翌04日の午前02時15分までの18時間で350以上の案件を処理。戦車の購入、大学職員の賃上げなど予算関連が多く、野党は選挙対策の駆け込み認可だと批判。
国際的な人権NGO「ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)」によれば、昨年の大規模反政府デモについて、政府側とデモ隊=反独裁民主主義同盟(UDD)側の双方にそれぞれが認めている以上の力の行使があったと考えられる。」という。
HRWが作成したデモに関する139ページの報告書の発表のため、クルングテープを訪れたHRWアジア責任者のアダムスは、「治安部隊がデモ参加者に発砲し、デモ隊側の武装グループが兵士に発砲したのは明白。だが、誰もそれを認めようとしない。」と述べ、「狙撃手配備などを否定する治安当局の主張、平和的なデモとのUDDの主張のどちらもそのまま受け入れることはできない。」としている。
東北部シサケート県の国境地帯に位置する国境未画定区域(4.6㎢)を巡る領有権争いで、ASEAN議長国インドネシアが監視団を派遣するとしていることについて、タイ陸軍のプラユット司令官は、「監視団の受け入れは、国境未画定区域からカンボジア軍が撤退することが条件。」とのタイ側の姿勢を再確認した。
インドネシアは「30人の監視団を国境地帯などに送り込み、中立の立場から現状を確認する。」としているが、プラユット司令官によれば、「世界遺産カオ・プラウィハーンに近接する区域にカンボジア兵が留まったままでは、戦闘がまたいつ起きるか予想できない。」という。 また、この問題が飛び火した格好で東北部スリン県の国境地帯で04月22日に軍事衝突が勃発したが、タイ陸軍によれば、戦闘は下火になっているものの、02日夜にも小銃や手榴弾などによる小規模な交戦があり、タイ兵1人が死亡、3人が負傷。同日までの11日間の合計でタイ兵8人が死亡、120人が負傷したことになる。
05月04日(水)国境未画定区域の領有権争いでタイ・カンボジア関係が険悪化している問題で、アピシット首相は、「私がカンボジアのフン・セン首相と昨年、4回にわたり話し合ったが、今年02月には衝突があったことを忘れないでほしい。衝突はいずれも偶発的なものでなく、領有権争いを国際問題化させるというカンボジアの意図が見て取れる。」などと述べて、インドネシアでのASEAN首脳会議開催時にフン・セン首相と会談するつもりのないことを明らかに。
また、04月22日に勃発した軍事衝突で、小銃や手榴弾を使った小規模の戦闘が続いていることについて、カンボジア側は、「現場の兵士の勝手な行動。」などと説明しているが、アピシット首相は、「疑わしい。」と述べて、「戦闘を終息させないことがカンボジアの戦略。」との見方を示している。
東北部スリン県の国境地帯で04月22日に軍事衝突が勃発したことに伴い閉鎖されていた同県のチョンチョム国境通行所と隣県シサケートのチョンサカム国境通行所が、タイ・カンボジア両国軍の現場の部隊責任者の話し合いで再開。話し合いでは、今後の衝突防止に向けた意見交換も行われた。
チョンチョム通行所では門が開かれ、両国の部隊の責任者が握手。ほどなくしてチョンサカム国境通行所も再開。
国内メディアは「05月06日解散が有力。」と報じていたが、政権党の民主党関係筋は、「首相は06日に国王の承認を得る手続きをとり、10日に下院を解散する心づもり。」との見方を示した。これは、選挙関連法の改正について憲法裁判所が09日に問題なしとの判断を示すと見られているため。
ステープ副首相は、「準備がスムーズに進んでいるかぎり、選挙が1~2日遅れても問題ない。」としている。
一方、チャイ下院議長によれば、「上院議長がまだ正式に決まっていないため、上院による選挙関連法改正の承認が遅れ、総選挙実施において問題が生ずる可能性がなきにしもあらず。」とのこと。
05月05日(木)「タイとカンボジアの領有権争いに終止符を打つべくASEAN議長国インドネシアが両国の国境地帯などに監視団を派遣する。」としていることについて、アピシット首相は、「監視団受け入れは、国境未画定区域(4.6㎢)からカンボジアの兵士と住民が退去することが条件。」と明言。
また、アピシット首相は07日から08日にかけて開催される第18回ASEAN首脳会議に出席するため06日にインドネシア・ジャカルタに向かう予定だが、タイ・カンボジア国境問題が取り上げられるかについて、アピシット首相は、「インドネシアとタイ、インドネシアとカンボジアの話し合いの結果次第。」と述べた。
ニコム上院副議長は、国王が】任命制上院議員のティラデート退役陸軍大将(72)が04月22日、タイ上院(定数150)の議長に選出され、05月05日、上院議長に任命する人事が国王が認証したことを明らかに。これは、上院議長の議員任期満了に伴うもの。認証が文書で上院に伝えられれば、新議長就任が正式決定となる。
上院議長については、チャイ下院議長が先に「人事が遅れれば選挙に影響しかねない。」と懸念を表明していた。
ティラデートは陸軍士官学校卒で、チュワン民主党政権の1998~2000年に国防次官を務めた。タイは現在、反タクシン派のアピシット民主党政権下にある。タイの上院は1997年憲法で、それまでの任命制から公選制になったが、2006年の軍事クーデターでタクシン政権(2001~2006年)を追放した勢力が翌年導入した現行憲法で、憲法裁長官、選挙委員長らからなる委員会が選出する任命制74議席、76都県での直接選挙で選ばれる公選制76議席というシステムに変更。今年03月に新たな県が発足したことから、現在は任命制73議席、公選制77議席。
任命制上院議員はタクシン派と対立する特権階級が選挙の洗礼を浴びずに国会を制御するための道具とみられ、不透明な選考過程・基準を批判する声もある。今年の任命制議員選出については、タクシン派の野党プア・タイ党が「反タクシン派に偏った選考だ。」と反発したほか、連立与党チャートタイ・パタナー党のチュムポン党首も「非常に強い影響力を持つ人物が選考を制御した。」と述べ、特権階級による政治支配を批判。
憲法では、下院議長(下院議員)が国会議長を兼任し、上院議長(上院議員)が国会副議長を兼任する。しかし、下院解散では、下院議長不在となるため、上院議長が下院議員・議長が選出されるまで国会議長を兼任する。
05月06日(金)午後アピシット首相は、下院解散に必要な国王の承認を得るための詔書案を提出。
そのあと、ASEAN首脳会議に出席するためインドネシア・ジャカルタに向かった。
中央選挙仮委員会によれば、「総選挙の投票日はまだ決まっていないが、06月26日か07月03日なら準備を進めるのに問題はない。」とのこと。
05月07日(土)カンボジアとの領有権争いにおけるアピシット政権の対応を批判して抗議活動を続けている反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)の首脳の1人、チャムロン元クルングテープ都知事は、「国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会が終わるまで座り込みを続けるが、委員会がどのような結論を出そうとも、来月の委員会閉幕をもってデモ隊は散会する。」と明言。
06月19~29日にかけパリのユネスコ本部で開催される同委員会では、カンボジアが、タイ・カンボジア国境に位置する世界遺産カオ・プラウィハーンと近接する国境未画定区域(4.6㎢)を管理するとの提案が審議される予定。タイ政府は同案に反発しており、委員会では、スウィット天然資源環境相などからなるタイ側代表が反論を展開することになっている。
関係筋によれば、座り込み中止の明確な理由が示されていないが、PADは最近動員力に翳りが見られることから、これが大きな要因。



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「タイランド通信」、「バンコク週報」、「newsclip.be」、「タイの地元新聞を読む」
「キャプローグ」、「NNA(エヌ・エヌ・エー)」、「週刊タイ経済」
「สำนักข่าว กรมประชาสัมพันธ์(NNT)」、「ไทยรัฐ(Thairath)」、「เดลินิวส์(Daily News)」、「โพสต์ ทูเดย์(Post Today)」
「The Nation」、「Bangkok Post」
「AFP」、「BBC」、「CNN」
「産経新聞」、「朝日新聞」、「讀賣新聞」、「毎日新聞」
「時事通信」、「共同通信」、各種地方紙、「Rapporteurs Sans Frontières(国境なき記者団)」
「タクシンの政治」、「Kaan Muang Thai -タイの政治- 」
「ウィキペディア(Wikipedia)」、「アジア・リンケージ」
「華信」、「LOOKTHAI とらぶっThai」
「日付のある紙片」
ほか多数


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