34章 インラック傀儡政権 カンボジアへの売国と身贔屓バラマキ政治
07月03日(日)15時 | 下院総選挙の出口調査。タクシン派のプア・タイ(タイ貢献)党が299議席、民主(プラチャーティパット)党の132議席に大差をつけた。この出口調査は、アサンプション大学世論調査センター、チャンネル9、タイマスコミ機構による合同調査。
今回の選挙は小選挙区(375議席)、比例代表(125議席)並立制で行われた。出口調査によれば、比例代表区はプア・タイ党65議席、民主党40議席、小選挙区はプア・タイ党234議席、民主党92議席。このほかの政党であるが、プームチャイ・タイ(国家威信)党28議席、チャートパッタナー・プア・ペンディン(国家開発貢献)党14議席、チャートタイ・パッタナー(タイ国民開発)党12議席、パランチョン(人民力)党6議席、パラングチョン(母国)党3議席。また、元風俗王チューウィット党首のラック・プラテート・タイ(タイ愛国家)党が4議席と大健闘。
中央選管からの非公式発表は03日午後09時から10時にかけて行われる見通し。
クルングテープ都内サパンクワイ区の投票所で投票した40代男性は、「朝から興奮していた。国の運命を決める歴史的選挙に参加できることを嬉しい。」と話していた。 |
| プア・タイ党の実質的党首であるタクシンは総選挙投票終了後、滞在先のドバイからタイのテレビ番組に国際電話で出演し、「プア・タイ党が政権党となった場合には、実妹のインラックを首相に推す。」と明言。さらに、「過半数を大きく超えたとしたも単独政権ではなく、連立政権にすべき。」と提言。これまでのところ、バンハーン元首相のチャートタイ・パッタナー党、スワット元副首相のチャートパッタナー・プア・ペンディン党との連立が濃厚と見られている。
タクシンは、タクシンは2007年に汚職で実刑判決を受け、国外逃亡中。参政権も停止中。インタビュアーはタクシンから恩赦や帰国の見通し、連立政権の枠組みなどに関する話を引き出そうとしたが、タクシンは参政権停止中に政党運営に関わったとされることを避けるため、慎重な言い回しに終始。ただ、タクシンはプア・タイ党の政治集会に何度もビデオ電話で登場しており、こうした活動が原因でプア・タイ党が裁判所に解党を命じられる可能性が出ている。
なお、チューウィット、ラック・プラテート・タイ党党首は、「民主党とともに野党として政権を監視する。」と早くも公言。 |
19時30分 | アピシット民主党党首は、総選挙での敗北を宣言。初の女性首相となるプア・タイ党のインラックを祝福した。
その一方で、「プア・タイ党は比例代表区で過半数に達したわけではない。」として、タクシンを含む政治犯の恩赦には断固として反対する姿勢を示した。 |
19時45分 | プア・タイ党のインラック首相候補は、党本部で記者会見を行い、「バンハーン元首相率いるチャートタイ・パッタナー党と連立合意ができた。」と発表。
インラックは「他の政党とも連立に向け接触している。」と報告。党名には言及していないが、スワット元副首相のチャートパッタナー・プア・ペンディン(国家開発貢献)が濃厚。
さらに、実刑判決により海外逃亡を続けている実兄の「タクシンのためだけに恩赦を求めることはない。」と明言。「恩赦については党として介入することなく、カニットを長とする特別委員会に委ねる。」と説明。 |
夜 | タイ下院選は、タクシン派の野党プア・タイ党が過半数を制し、中小政党を取り込み連立政権を樹立する見通し。タイでは2006年の軍事クーデターと2008年の司法判断で、選挙で選ばれたタクシン派政権が2度覆された。タイ国民はこうした経験から、国の実権を握り、民意を軽視する反タクシン派特権階級への反発を強めており、今回の選挙結果は国民が特権階級に「NO」を突きつけた。ただ、特権階級が選挙結果を受け入れるかどうかは不透明で、新政権はプア・タイ党の解党を求める裁判や軍事クーデターに怯えながら、特権階級との妥協点を探すことになりそうだ。
22時のタイ選挙委員会の非公式集計で、下院(定数500)選の獲得議席数はプア・タイ党264、アピシット首相(46)率いる民主党160、アピシット政権の連立与党だったプームチャイ・タイ党34、チャートタイ・パッタナー党19、チャートパッタナー・プア・ペンディン党7、東部を中心とする地域政党のパランチョン党6、元風俗王チューウィット党首のラック・プラテート・タイ党4など。
プア・タイ党は今年03、04月の政党支持率調査で民主党と互角かやや不利と報じられていた。しかし、タクシン(61)が「私のクローン」と呼ぶ末妹のインラック(44)を比例代表名簿1位の首相候補とした戦略が奏功。庶民的ながらカリスマ性があるインラックが行く先々で熱狂を巻き起こした一方、名門出身のエリートであるアピシット首相は庶民の中にいると最後までぎこちなさが抜けず、両党の差は急速に開いていった。
インラックは記者会見を開き、緊張した面持ちで、支持者らに謝意を伝え、「プア・タイ党が勝ったとは言いたくありません。国民の皆さんから、我々が国のために奉仕する機会を頂いたと思っています。」と述べた。また、チャートタイ・パッタナー党に連立政権入りを打診したことを明らかにした。連立政権の枠組みはプア・タイ党とチャートタイ・パッタナー党にチャート・パッタナー・プア・ペンディン党、パランチョン党などを加え、300議席弱になると予想される。
アピシット首相は記者会見で敗北を認め、タイ初の女性首相となる見通しのインラックに祝意を伝えた。また、民主党の獲得議席数の最低ラインを2007年の前回下院選で獲得した165としていたことから、進退について「胸の中で決めてある。」と述べ、党首辞任を匂わせた。
過去4回の下院選を振り返ると、2001年は地方・貧困層へのバラマキ政策、社会保障政策を掲げたタクシンの新党タイ・ラック・タイ党が単独過半数に迫り第1党となり、第1次タクシン政権が発足。2005年は1期目で成果を挙げたタクシン派が議席の75%を占め圧勝し、2期目へ。タクシンは特権階級との権力闘争に破れ、2006年の軍事クーデターで追放されたが、クーデター政権下で行われた2007年末の総選挙でタクシン派のパラン・プラチャーチョン党が480議席中233議席を占め第1党となり、政権に復帰。しかし、特権階級の指示で軍がタクシン派政権と距離を置き、反タクシン派のデモ隊がほぼ無防備の首相府やクルングテープの2空港を占拠。さらに、2008年末に憲法裁判所がパラン・プラチャーチョン党を解党し、政権が崩壊。混乱の中、民主党とタクシン派の一部が軍基地内で密談し、連立政権発足に合意。アピシット政権が誕生。
2010年にはタクシン派のデモ隊がクルングテープ都心部を長期間占拠し、治安部隊との衝突で91人が死亡、1400人以上が負傷する非常事態となったが、アピシット政権はデモを武力鎮圧してこの危機を切り抜け、任期満了まで半年以上残した今年05月に下院を解散、総選挙に踏み切った。民主党は政党支持率調査を見て、「連立与党の議席を足せばプア・タイ党に勝てる。」と踏んだようだが、今回の下院選では2007年の前回よりも議席を減らし、政権を失うことになった。
アピシット政権は発足の経緯からして、特権階級・軍の後押しを受けていることが明らか。2010年の衝突では、軍幹部の訴追につながることを懸念してか、デモ参加者の死亡状況に関する調査を事実上放棄し、「タクシン派、反タクシン派の和解に取り組む意思がない。」と、国民に見做された。また、タクシン派潰しの強引な司法判断や不敬罪による投獄が相次ぎ、不敬罪容疑で遮断されたウェブサイトは6万ページ近くに上る。経済政策は玄人筋の評価が高かったが、物価上昇を抑え込むことが出来ず、庶民の間に不満が広がった。アピシット首相、コーン財務相らアピシット政権幹部の多くは留学経験が豊富な国を代表するエリート。一方のタクシン派は「汚職体質」、「反王室」というレッテルを貼られている。それでもタクシン派が選挙で勝利したのは、「汚職でも民主主義を失うよりはまし。」という民意が働いた。 |
07月04日(月) | 07月03日に投開票が行われた下院総選挙で265議席(04日午前06時時点)を獲得して第1党となったプア・タイ党であるが、すでに連立で合意のできているチャートタイ・パッタナー党に加え、ベテラン政治家スワット元副首相率いるチャートパッタナー・プア・ペンディン党、東部チョンブリ県を基盤とするパランチョン党とも連立する見通し。
これで下院定数500議席のうち、与党議席は298議席前後、民主党を第1党とする野党議席は202議席前後となる模様。
連立を希望していると見られるプームチャイ・タイ党(34議席)が加わると政権基盤はさらに盤石になるが、プームチャイ・タイ党はタクシン派を裏切ってアピシット政権に参加した経緯があることから、インラック首相候補は「方向性が違う。」として連立の考えはないことを公言している。
一方、閣僚ポストの割り振りであるが、チャートタイ・パッタナー党が要求しているのは、財務、商業、運輸の正大臣2ポスト、副大臣3ポストと見られている。 |
アピシット民主党党首は、「総選挙敗北の責任を取るため党首を辞任する。」と発表。アピシットは03日の時点で辞任を仄めかしていた。「90日以内に党総会を開催し、そこで新党首を決定する。」とのこと。後任の党首にはアピラック前クルングテープ都知事、コーン財務相、チュリン保健相らの名前が浮上。
2007年の前回総選挙での獲得議席165議席から今回は159議席に減少。総選挙に先立ち、アピシット首相は「解散時の議席数を下回った場合は責任を取る。」と宣言していた。一方、ライバル政党のプア・タイ党は前回の233議席から265議席へと躍進。 |
選挙管理委員会は、本日(04日)予定していた下院総選挙の開票結果を、「明日に延期する。」と発表。いまだターク県及びメーホンソーン県の2県から投票用紙が届いていないことが理由。
選挙管理委員会からの非公式発表によると、野党プア・タイ党が264議席(小選挙区制で204議席、比例代表制で60議席)と単独過半数を取得。民主党は160議席(小選挙区制で115議席、比例代表制で45議席)となり、プームチャイ・タイ党は34議席(小選挙区制で29議席、比例代表制で5議席)。プームチャイ・タイ党支持者がプア・タイ党に流れたことで、単独過半数を取得できた模様。 |
総選挙で圧勝したプア・タイ党のインラック・チナワット首相候補(44)は、「5党連立政権を樹立する。」と発表。
プア・タイが連立を組むのは、バンハーン元首相(役員だった政党の解党により参政権停止中)が実質的な党首のチャートタイ・パッタナー党、スワット元副首相(役員だった政党の解党により参政権停止中)が実質的な党首のチャートパッタナー・プア・ペンディン党、東部の地方ボスと呼ばれたカムナン・ポことソムチャーイ・クンプルーム(汚職で実刑判決を受け逃亡中)の影響下にあるパランチョン党、サナン副首相の影響下にあるマハーチョン党の4党。中央選管はまだ当選者の正式発表を行っていないが、合計299議席(下院定数は500)。
これに先立ち、プア・タイ党の実質党首であるタクシンは「与党議席数は300議席が妥当。」と発言。
チャートタイ・パッタナー党のバンハーン最高顧問(元首相)は、ネーウィン元副農相が実質支配するプームチャイ・タイ党の参入を提言していたが、これはプア・タイ党に聞き入れられなかった模様。
プアタイと連立を組む4党の主要政治家はほとんどがタクシン政権(2001~2006年)、タクシン派サマック政権(2008年)に参加したことがあり、特権階級の介入を受けていったん別れたものの、もとの鞘に収まった形。
インラックは新政権の優先課題として、(タクシン派と反タクシン派に分かれた)国民の和解、プミポン国王の84歳の誕生日(12月05日)の祝典、物価上昇の抑制、近隣国との関係改善、汚職取り締まりを挙げた。国王誕生日に言及した際には声が上ずった。インラックはタクシンの妹で、プア・タイの比例代表名簿1位。近くタイ初の女性首相に就任する見通し。 |
中央選管のスティポン事務局長によれば、世論調査センターなどが実施した出口調査の結果が、実際の開票結果と大きく異なるものが少なくなかったことから、出口調査に関する規定を見直すことを検討。特にクルングテープの小選挙区選に関しては、すべての出口調査で「プア・タイ党が33議席中20議席以上を獲得する。」との結果が出ていたが、実際には民主党が23議席を占め、プア・タイ党は10議席に過ぎなかった。
スティポン事務局長は、「出口調査を禁止するというのではない。だが、正確な結果が出るよう調査のやり方を標準化する必要があろう。」と説明。 |
プア・タイ党筋によれば、プア・タイ党は新政権のイメージ悪化を避けるべく、タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)幹部らを入閣させない見通し。
UDD(通称、赤服)はプア・タイ党と深い繋がりがあり、複数の幹部らがプア・タイ党から総選挙に立候補。だが、「UDDとその支持者たち(赤服軍団)は、過激な行為を好む。」と考える人も少なくなく、「幹部を入閣させるとプア・タイ党も過激路線を支持していると受け止められかねないことを党幹部は懸念している。」とのこと。「プア・タイ党に失敗は許されない。また問題を抱えたら、党は生き残れず、タクシン一族にも未来はない。」としている。 |
総選挙で圧勝したプア・タイ党は、4党との連立で下院500議席のうち299議席を占めようとしているが、「タクシンの免罪・帰国を可能にする恩赦案の下院通過を確実にすべく、プームチャイ・タイ党からの引き抜きでさらに議席を増やそうと画策している。」とのこと。
プア・タイ党が取り込もうとしているのは、プームチャイ・タイ党内の2つの派閥という。プームチャイ・タイ党の最高実力者ネーウィンは、タクシン派にとっては裏切り者であり、タクシン派・プア・タイ党は以前から「プームチャイ・タイ党とは組まない。」と明言していた。プア・タイ党からの議員引き抜きには、プームチャイ・タイ党に対する報復との意味合いもある。ただ、恩赦をごり押しすれば、反タクシン派の強い反発を招き、新政権の不安定要因となりかねないため、プア・タイ党はタイミングを計って恩赦案を提出する見通し。 |
首相就任が確実視されているプア・タイ党のインラックは、「新政権にとり近隣国との関係改善が最優先課題の一つ。」と述べた。国名には言及しなかったが、「カンボジアとの関係修復の必要性」を示したものと受け止められている。
これまで民主党政権は、国境未画定区域を巡る領有権争いでカンボジアと鋭く対立し、軍事衝突が起きていた。だが、カンボジアのフン・セン首相は親タクシンであり、プア・タイ党率いる新政権の誕生で、関係が一変する可能性が高い。
しかし、反タクシン派は以前から、「タクシンらが自らの利益のためカンボジアに譲歩し、その結果、国益が損なわれた。」と批判しており、新政権がカンボジアに急接近すれば、タイ国内で強い反発が起こる可能性も否定できない。 |
03日のタイ下院選ではスポーツ選手や俳優などのタレント候補が相次いで落選。落選した主なタレント候補は、世界王座を19度防衛したボクシングの英雄カオサイ・ギャラクシー(チャートタイ・パッタナー党)、アトランタ五輪でタイ人として初めてオリンピックの金メダルを獲得した男子ボクシングのソムラック・カムシン(チャートタイ・パッタナー党)、アテネ五輪のテコンドー女子で銅メダルを獲得したヤオワパー・ブンポンチャイ(チャート・パッタナー・プア・ペンディン党)、男優・司会者のテーンクン・チットイッサラ(民主党)など。
元男子プロテニス世界ランク9位のパラドン・シーチャパンは2008年のクルングテープ都議選で投票しなかったため、立候補資格がないことが判明。不戦敗。
カンボジアの世界遺産カオ・プラウィハーン寺院の管理計画をめぐり世界遺産条約からの脱退を表明したスウィット天然資源・環境相も落選。 |
07月05日(火) | 選挙管理委員会は、03日に行われた下院選総選挙の正式な開票結果を発表。
これによると、タクシン派の野党プア・タイ党は265議席(小選挙区制が204議席、比例代表制61議席)と単独過半数を取得し、アピシット首相率いる与党民主党は159議席(同115議席、同44議席)に止まった。この他、2008年末にタクシン派から離脱した派閥で構成されるプームチャイ・タイ党は34議席(同29議席、同5議席)、バンハーン元首相(役員を務めた政党の解党により参政権停止中)が実質的な党首のチャートタイ・パッタナー党は19議席(同15議席、同4議席)、スワット元副首相(同参政権停止中)が実質的な党首のチャートタイ・パッタナー・プア・ペンディン党は7議席(同5議席、同2議席)、東部の有力者カムナン・ポことソムチャーイ・クンプルーム氏(汚職で実刑判決を受け逃亡中)の影響下にある東部の地域政党パランチョン党は7議席(同6議席、同1議席)、元ソープランドチェーン・オーナーのチューウィット氏が設立した新党ラック・プラテート・タイ党は4議席(同0議席、同4議席)、タクシン政権を追放した2006年の軍事クーデターを指揮したソンティ元陸軍司令官が党首のイスラム政党マートゥプーム党は2議席(同1議席、同1議席)、ラック・サンティ党は1議席(同0議席、同1議席)、マハーチョン党は1議席(同0議席、同1議席)、プラチャー・ティパッタイ・マイ党は1議席(同0議席、同1議席)。有権者総数は4692万1682人、総選挙の投票率が比例選で75.03%、小選挙区選で74.85%。都県別では北部ラムプーン県が88.61%と最も投票率が高かった。2位は北部チエンマイ県で83.1%、3位は南部トラン県で82.7%。
プア・タイ党はチャートタイ・パッタナー党、チャートパッタナー・プア・ペンディン党、パランチョン党、マハーチョン党(1議席)の4党と連立政権を組むことで合意し、現在、組閣作業を進めている。首相にはプア・タイ党の比例代表名簿1位でタクシンの妹のインラックが就任する見通し。主要閣僚では経済担当の副首相にオラーン元サイアム・コマーシャル銀行社長、財務相に証券会社パタラ・セキュリティーズのスパウット社長、スチャート元財務相、外相に元トヨタ・タイ法人幹部のミンクワン元商務相らの名前が浮上。 |
クリスティー・ケニー駐タイ米国大使は、03日の下院総選挙で敗北し近く退任するアピシット首相と約20分間会談した。ケニー大使は会談後、タイ初の女性首相となる見通しのインラックに電話して祝意を伝えたことを明らかにし、「新政権と仕事することを楽しみにしている。」と述べた。 |
プア・タイ党は、中小4党ともに下院議席の6割を占める安定政権を誕生させようとしているが、経済界からは、「プア・タイ党政権が短命に終わるのではないか。」と懸念する声が出ている。
これは、「タクシン派政権には不正や汚職に絡む問題がつきまとう。」というイメージがあるため。タクシンは2001年の総選挙直後に資産の不正申告容疑で失脚の瀬戸際までいったことがあるほか、複数閣僚の汚職疑惑が浮上した。さらに、「タイ初の女性首相となる見通しのタクシンの実妹インラックも、タクシン関連の訴訟で偽証の疑いが完全には晴れておらず、これも政権の安定を脅かしかねない。」とのこと。 |
連立政権樹立を発表したプア・タイ党は、政権公約に掲げていた最低賃金の引き上げについて、来年01月にも行われる見通し。
タイ地元紙によると、プア・タイ党チャルポン秘書官は、「まず10月に公務員の最低月収を1万5000Bに引き上げ、最低賃金については民間企業らと合意ができれば、来年01月にも引き上げる。」と語っている。この急激な賃金引上げは経済界からの反発が大きいが、チャルポン秘書官は「法人税の引き下げや輸出の拡大支援などを行い、民間企業が賃金引上げの負担に耐えられるようにしたい。」と明かしている。
党は、現在平均200B前後の最低賃金(地域差あり)を300B以上に引き上げることを公約に掲げている。 |
プア・タイ党関係筋によれば、プア・タイ党は国外逃亡中のタクシンを貿易特使に任命する見通し。
タクシンは首相在任中の職権乱用で禁固2年の刑が確定しているが、この最高裁判決を不当として、帰国して刑に服すのを拒んでいる。
タクシンの法律顧問、ノパドン元外相は、「政治的ポストでないため、新政権はタクシンを貿易特使に任命できる。そうなれば、タクシンはモンテネグロ発給の旅券で海外を自由に移動できる。」としている。 |
プア・タイ党のインラックが外国メディアとのインタビューの中で、実兄タクシンの再審の可能性に言及。
タクシンは、首相在任中に妻(当時)の土地取得に関連して職権を乱用したとして2008年11月に禁固2年の刑が確定。今年02月には、資産約460億Bが不正蓄財として国庫に没収された。
インラックは、「タクシンに限らず、全ての政治関連の裁判を見直すことが国民和解の実現に繋がる。」としている。関係筋によれば、「プア・タイ党はこれまで国民和解のため恩赦適用を請求するとしていたが、裁判の見直しに方針を転換したもの。」という。
しかし、このような動きに対し、反タクシン派は、「タクシンの免罪が狙い。国民和解は口実に過ぎない。」としており、新政権が裁判見直しに向けて具体的な手続きをとることになれば、反タクシン派が強く反発するのは必至の状況。 |
ラック・プラテート・タイ党のチューウィット党首が、アピシット民主党党首(首相)を激励するため、フラワーバスケットを持って民主党本部を訪れた。
チューウィット党首は対応したチュアン元民主党党首(元首相)に対し、「民主党と協力して新政権の仕事ぶりを厳しく監視し、野党としての役割を果たしたい。」と伝えた。
チューウィット党首は、複数のソープランドを所有・経営していた風俗王の異色の政治家で、歯に衣を着せぬ発言と派手な演出で知られる。 |
07月06日(水) | プア・タイ党のインラックは、「国民和解、物価抑制、近隣国との関係修復、薬物対策などが同党率いる連立政権の最優先課題。」と発表。
国民和解は、タンシン支持不支持を巡る対立が長引いていることから、国民の多くがその実現を望んでいる。しかし、親タクシン派と反タクシン派では、互いに相手の和解案を批判しており、プア・タイ党が「和解」をごり押しすれば、逆に政治対立が再燃する可能性が強い。近隣国との関係修復についても、反タクシン派は以前から「私利私欲のためにカンボジアと結託した。」とタクシン派を批判しており、新政権が領有権争いでカンボジアに譲歩する姿勢を示せば、強い反発にあうことは避けられない。
なお、インラックは「首相に就任し次第、これらの課題に直ちに着手する。」としている。
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プア・タイ党のインラックは、新政権がタクシンを貿易特使に任命するとの報道を「考えたこともない。」と否定。
この報道については、「首相在任中の職権乱用で禁固2年の刑が確定している身であり、特使にはふさわしくない。」(ステープ民主党幹事長)といった批判意見が出ていた。
インラックによれば、外国で快適な生活を送っているタクシンは、「国民和解の実現だけを望んでおり、特使になりたいなどとは考えてもいない。」とのこと。 |
タクシン政権(2001~2006年)は宝籤販売の収益を政府のプログラムに投入するなどして法的問題に直面したが、政府宝籤室(GLO)のワンチャイ室長によれば、「大衆迎合的な政策の実施に巨額の資金が必要なこともあり、新政権は再び資金調達に宝籤を利用する可能性が高い。」とのこと。
ただ、現行法では、宝籤販売収益を政策運営のために利用することは違法となるため、法改正が必要となる。また、「オンライン宝籤は、アピシット政権が廃案としたが、GLOと民間企業の契約は現在も有効で、新政権が販売収益を増やすため復活させる可能性も十分ある。」という。 |
07月07日(木) | 中央選挙管理委員会のプラパン委員は、「比例代表で出馬したチャトポン前プア・タイ党議員の当選認定についてはまだ検討中。」と発表。タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)首脳のチャトポン前議員は、プア・タイから総選挙に立候補(比例選名簿6位)したが、昨年の大規模反政府デモに絡む不敬容疑などで拘留されており、投票することができなかった。中央選管のソットシー委員は、「党員資格、被選挙権を失った可能性がある。」との見方を示していた。また、プラパン委員によれば、「チャトポン前議員の事例は選管に処分を決める権限がないため、憲法裁に判断を求める必要がある。」とのこと。プア・タイ党は比例選で名簿61位までが当選枠となっている。 |
タクシン派のプア・タイ党を中心とするタイの次期連立政権に新たにプラチャー・ティパッタイ・マイ党(下院議席数1)が加わり、連立に参加する政党は計6党、下院(定数500)議席数は300。
プアタイのプロームポン報道官は、08月02、03日に下院が召集され議長を選出し、08月08~10日に首相指名が行われるという見通しを示した。新首相はプミポン国王による任命後、組閣を行う。クーデターなどの異変がない限り、次期首相にはプア・タイ党の比例代表名簿1位でタクシンの妹のインラック就任予定。
プア・タイ党は03日に投開票されたタイ下院選で265議席を獲得。159席だった与党民主党を破り、タクシン派が3年ぶりの政権復帰を果たした。
また、「プア・タイ党は、プームチャイ・タイ党の一部派閥を取り込む意向。」と伝えられており、議席数がさらに増える可能性もある。ただ、プア・タイ党内では、主要閣僚ポストを巡り派閥間で激しい権力闘争が繰り広げられているため、これ以上の議席数増には反対する議員も少なくない。 |
プア・タイ党から総選挙に出馬して当選したタクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)幹部らの入閣について、反対意見が党内から出ているとことに対し、プア・タイ党のインラックは、「条件がそろえばUDD幹部の入閣もあり得る。」との認識を示した。
UDDは、プア・タイ党の実動部隊とみなされているが、過激な反政府活動を展開してきたことから、党内には「距離を置くべき。」との意見が多い。
総選挙直前にプア・タイ党に移籍し、比例選で当選したベテラン政治家、サノも慎重派の1人で、「UDD幹部の入閣で政治対立が再燃しかねない。」と懸念を表明。
関係筋によれば、「UDDは、各方面から批判を浴びているものの、タクシン派の勢力維持・拡大、総選挙におけるプア・タイ党の勝利に大きく貢献しており、プア・タイ党はそれなりの対応が必要と考えている。」とのこと。 |
タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)のティダ議長代行は、外国メディアとのインタビューの中で、昨年の大規模反政府デモに関連して多数のデモ参加者などが死傷した問題について、責任者の特定や処分で正義が実現されるようプア・タイ党に要求するとともに、これが叶えられない場合、同党はこれまでのようにUDDの支持を受けられない。」と警告。
この発言は、「『プア・タイ党が、タクシンの免罪・帰国を可能にする代わりに、軍幹部の責任を問わないという密約を交わした。』と一部で報じられたことから、プア・タイ党を牽制することが狙い。」と見られる。
関係筋によれば、「アピシット政権に全責任がある。」とするUDDは、当局者の罪を認めて処分することなどを求めている。しかし、国民の間には「UDDに責任がある。」とする意見も根強く、新政権が「加害者=アピシット政権、被害者=UDD。」というUDDの主張を全面的に受け入れた場合、批判を浴びるのは避けられない。 |
中央選挙管理委員会のプラパン委員によれば、「中央選管では07月12日に総選挙の当選認定を行う予定。」。だが、暫定当選者500人のうち約50人について選挙違反の有無を確認する調査が現在行われており、詳しいチェックが必要なケースもあるため、12日の当選認定は全体の約95%、475人程度に止まると見られている。また、特別国会開催であるが、今のところ、定足数に問題はないと見られるため、憲法規定に従い、総選挙から30日以内、つまり08月03日までに開催できる見通し。 |
経済界が今最も注目しているのは、経済閣僚の人選。担当分野に不慣れな者が閣僚に任命され、その結果、他の大臣との連携・協力も図れず、民間ビジネスがその皺寄せを受ける恐れがあるため。閣僚ポストの割りふりは、政権の安定度に影響する重要なプロセスのため、過去の政権で「適材適所」を実現させたのはアナン政権だけといわれている。
タイ商工会議所のドゥシット会頭は、「好むと好まざるにかかわらず、プア・タイ党が圧倒的な支持を得て政権を構えることになった。だが、愚か者が大臣に起用されるのだけは見たくない。」と話した。 |
07月08日(金) | 03日のタイ下院選でタクシン派政党プア・タイ党に破れ下野が決まった民主党は、プア・タイ党を政党法違反でタイ選挙委員会に告発。有罪の場合、プア・タイ党は解党され、党役員は5年間の参政権停止処分を受ける。反タクシン派の反撃が早くも始まった形だが、こうした事態を想定してか、プア・タイ党の比例代表名簿1位で近く首相に就任する見通しのインラック・チナワットら党幹部の多くは党役員になっておらず、タクシン派はプア・タイ党が解党処分を受けても、党所属の下院議員を別の政党に移籍させ、政権を維持できる見通し。
民主党は「インラックの兄のタクシン元首相、義兄のソムチャーイ前首相、チャトゥロン元副首相といった参政権停止中の人物がプア・タイ党の選挙活動に加わったと主張。タクシンの写真が選挙ポスターに使われたり、ソムチャーイらが街頭演説に参加するなど、違反は明らか。」としている。
「選挙委は違反があったと判断した場合、プア・タイ党の解党を憲法裁判所に要請する。判決までには数ケ月かかる。」と予想される。
タイではタクシン政権(2001~2006年)を追放した2006年の軍事クーデター以降、特権階級を中心とする反タクシン派と、地方住民、中低所得者層が多いタクシン派の抗争が続いている。初代のタクシン派政党タイ・ラック・タイ党はクーデター政権下の2007年に選挙違反で解党。タクシン、チャトゥロン元副首相ら党役員111人が5年間の参政権停止処分た。その後結成された2代目のタクシン派政党パラン・プラチャーチョン党は2007年末に行われた総選挙で第1党となり政権に復帰したが、2008年に反タクシン派市民による首相府と2空港の占拠で追い詰められ、2008年末、「司法クーデター」と呼ばれた憲法裁による解党命令で政権を失った。判決理由は選挙違反で、ソムチャーイ前首相はこのときに参政権停止処分を受けた。判決後、タイ軍基地内での密談でタクシン派の一部が反タクシン派の民主党側に寝返り、アピシット民主党連立政権が発足した。
タクシン派は昨年、数千~数万人のデモ隊でクルングテープ都心部を長期間占拠し、アピシット政権に退陣を迫ったが、政府はデモを武力鎮圧して危機を切り抜けた。デモ隊と治安部隊の衝突による死者は91人、負傷者は1400人以上。同年11、12月、政党交付金の使途違反と裏口献金疑惑で民主党の解党を求めた裁判で、憲法裁は訴追手続きのミスを理由に訴えを2件とも棄却。司法のダブルスタンダード(二重基準)としてタクシン派が反発を強めた。
アピシット政権は任期満了まで半年以上残した今年05月に下院を解散、総選挙に踏み切り、プア・タイ党が500議席中265議席を獲得し圧勝、民主は159議席に終わった。 |
03日のタイ下院選で勝利したタクシン派政党プア・タイ党の比例代表名簿1位でタクシンの妹のインラック・チナワットは、クルングテープ都内の党本部で管木駐タイ支那大使と会談。管木大使は下院選の勝利に祝意を述べ、「支那とタイは兄弟親戚のようなものだ。支那はタイを重視している。」と伝えた。 |
スティポン中央選管事務局長によれば、「プア・タイ党のインラックが選挙運動中に東北部ナコーンラチャーシーマー県で焼きそばを作って有権者に配ったのは選挙違反。」との訴えがあったことから、ナコーンラチャーシーマー県の選管が事実関係を調査中。だが、「今のところ、違法性を裏付ける証拠は見つかっていない。」という。
訴えは、「支持者に囲まれて焼きそばを作っている写真を見て選挙違反を疑った。」というもので、中部ナコンサワン県の選管が受理している。
ただ、スティポン事務局長は、「インラックが到着した時にはすでに露天商が焼きそばを作っていたもので、インラックは露天商に頼んで焼きそばを作らせてもらった。これだけでは、有権者に配ることが目的だったとはいえない。」としている。 |
民主党の法律専門家チームを率いるウィラットが、公民権停止中の者らがプア・タイ党の活動にかかわっているのは政党法違反と中央選管に訴えた。違法性が確認された場合、同党は解党処分となる可能性がある。
ウィラットによれば、タクシンとチャトゥロンは、2007年05月のタイ・ラック・タイ党の解党処分で公民権5年停止となり、政治的な活動を禁止されている。
だが、「今回の総選挙で2人は、プア・タイ党の候補欠選びなどに深く関与しており、政党法97条に抵触しているのは明らか。」という。
ただ、関係筋によれば、「2人の関与を立証するのは容易ではなく、解党処分に持ち込める可能性は低い。」とのこと。 |
07月10日(日) | 03日の下院選でタクシン派の政党プア・タイ党が過半数を制したことを受け、プア・タイ党中心の連立政権に参加する予定のチャートタイ・パッタナー党の事実上の党首であるバンハーン元首相、タクシンの妹のヤオワパー元下院議員、ヤオワパーの夫のソムチャーイ前首相、プア・タイ党の下院議員らが、国外滞在中のタクシンの元を相次いで訪れた。タクシンの妹で次期首相に就任する見通しのインラックは10日、「バンハーンとタクシンの会談は私的なものだ。」として、組閣との関連を否定。「私の知るかぎり、バンハーンは政治活動を禁止されている。」と述べ、「タクシンとの間で閣僚ポストの割りふりなどが話し合われたはずはない。」としている。
民主党が公民権停止中のタクシンなどが党務にかかわったとして政党法違反でプア・タイ党を訴えていることもあり、タクシンの政治関与を否定したものと見られている。
バンハーンも2008年12月にチャート・タイ(タイ国民)党(チャートタイ・パッタナー党の前身)が解党処分を受けたことから公民権5年停止中。
なお、タクシン・バンハーン会談の内容は不明だが、バンハーンが閣僚ポスト(農業相、観光スポーツ相など)を直接要求したとの見方が支配的。「次期タイ政権の所在地はクルングテープではなく(タクシンが滞在している)ドバイ。」という陰口も囁かれている。 |
ステープ民主党幹事長によれば、アピシット民主党党首が総選挙の敗北の責任をとって党首辞任を表明したが、08月の党大会でアピシットが再び党首に選ばれる見通し。
アピシット党首は、選挙運動期間中に「民主党が最多議席を獲得できず、かつ獲得議席が下院解散時を下回ったら、党首を辞任する。」と明言し、この約束を守るべく先に辞意を明らかにした。
また、「民主党内にアピシットの指導力について意見対立が存在する。」と一部で報じられているが、ステープは、「なぜそのような見方が出てくるのか。対立など存在しない。」と全面否定。 |
プア・タイ党のインラックは、「正式に首相に就任したら、主要機関のトップなどと会う用意がある。」と述べ、反タクシンで知られるプレム枢密院議長も表敬訪問する意向を示した。
タクシン派は、「プレム議長がタクシン政権を倒した2006年09月の軍事クーデターの黒幕」と決めつけ、厳しい批判を繰り返してきたことから、インラックがプレムを拒絶するとの見方も出ていた。 |
05日、タイ中部ラヨーン県に住む民主党を支持していた女性が、下院選惨敗でショックを受け服毒自殺。タイ地元紙によると、この女性(80)の葬儀が午後行われ、ラヨーン県の民主党系下院議員らをはじめ800人が参列した。またこの自殺の話を聞いたアピシット首相も、電話で弔辞を述べた。 |
07月11日(月) | 反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)」が、規定違反などを理由に今回の総選挙を無効とするよう中央選挙管理委員会に要求。
PAD首脳のチャムロン元クルングテープ都知事によれば、「不在者投票で技術的問題のため200万人あまりが投票できなかった、5政党が大衆迎合的な政権公約を掲げたのは有権者買収に当たる、小選挙区と比例代表制の投票者数に8万3000人の差があると中央選管が誤った報告をした、公民権停止で政治活動を禁止されている者が選挙運動に関与したなどの理由から、今回の総選挙を合法的で妥当なものとみなすことはできない。」とのこと。 |
関係筋によれば、08月半ばまでに新首相が選出される見通し。
中央選挙管理委員会は「投票日から30日以内に当選認定の是非を決定する。」と発表。また、憲法規定により、特別国会は投票日から30日以内に下院議員の95%、475人以上の出席をもって開催することが義務付けられている。
今のところ、07月下旬に特別国会が開かれて正副下院議長が選ばれ、その翌週に首相指名選挙が行われる見通し。 |
バンハーンは、タクシンとブルネイで会ったことを認め、「一緒に食事をしたが、政治の話はなかった。」と述べた。
タクシンは国外滞在中の2008年に、首相在任中に妻が国有地を競売で購入したことで懲役2年の実刑判決を受けた。その後はタイに帰国せず、主に中東のドバイに滞在している。ブルネイはタイ同様、東南アジア諸国連合(ASEAN)の加盟国だが、タイ政府からのタクシンの身柄引き渡し要求を無視し、タクシンの出入国を認めている模様。 |
クルングテープ都内のシリラート病院で、各県に赴任する検事の就任宣誓式が行われ、入院中のプミポン国王が、孫でノーンブアラムプー県副検事のパチャラキティヤーパー王女ら検事90人に訓示を行った。国王は背広姿で椅子に座り、椅子の前には黄色い服を着た愛犬のトーンデーンが伏せていた。
プミポン国王は体調を崩し、2009年09月19日からシリラート病院に入院している。今年05月には過剰な脳脊髄液を除去する手術を受けた。 |
07月12日(火) | 選挙管理委員会は、先日行われた下院選当選者のうち500人のうち445人(89%)を正式に下院議員として公認したことを明らかに。残り55人は、選挙法違反の疑いがあることから、選挙日(07月03日)から30日以内に事実関係を調査し公認の有無を決定する。
単独過半数を取得し次期首相候補とされるインラックが、市民にタイ料理を配り票集めをしたと民主党に訴えられている件については、選挙管理委員会は現時点では問題なしとの考えを示している。 |
アピシット民主党連立政権最後の閣議。下院の召集、イスラム過激派と治安当局の抗争が続く深南部3県に発令している非常事態宣言の60日間延長などを決めた。下院(定数500)は07月03日の総選挙の議席の95%以上が確定されてから召集される。
アピシット首相は任期満了まで半年を残した今年05月に下院を解散、総選挙に打って出たが、タクシン派の野党プア・タイ党に過半数を奪われた。アピシット政権の在任中の2年半に行われた閣議は133回。 |
中央選挙管理委員会は、今回の総選挙で当選圏内に入った候補者500人のうち358人の当選を認定。プア・タイ党のインラック、民主党党首のアピシット首相など142人は、選管に寄せられた選挙違反に関する訴えの調査が完了していないため、認定が見送られた。中央選管は容疑が晴れた候補者の当選認定を19日に発表する見通し。
憲法規定では、投票日から30日以内(08月02日まで)に中央選管が当選認定を終え、特別国会が開催されることになる。ただ、特別国会の定足数は475人(下院議員全体の95%)で、当選認定がこの人数に達しなければ、開催できない。さらに、特別国会召集の勅命を申請する手続きがあるため、475人以上の当選認定は遅くとも07月31日中に完了する必要がある。 |
プア・タイ党では、マニット法律顧問が、「現行憲法存続か1997年憲法復活かを問うべく国民投票を実施すべき。」と主張しているが、プア・タイ党から総選挙(比例選)に立候補・当選(暫定)したタクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)幹部のウェーンなどが、「この問題に慌てて取り組むのは得策ではない。」と反対。
マニット顧問は、「現行憲法を改正するか1997年憲法を復活させなければ、プア・タイ党が解党処分を受けかねない。」と主張。
ただ、1997年憲法は制定当初、「最も民主的な憲法」と評価が高かったものの、タクシン創設のタイ・ラック・タイ党(すでに解党)による「議会制独裁」を招いたとの批判から、2006年09月の軍事クーデターに伴い廃止されたという経緯があり、その復活には、反タクシン派が猛反発するのは必至。
ウェーンによれば、「早急に着手しなければならない課題がほかにある。憲法の改正や復活は取り組むにしても景気が回復してからにすべき。」とのこと。 |
民主党政権による最後の閣議で、ヤラー、パタニー、ナラティワートの最南部3県に発令されている非常事態宣言の適用を、状況の改善が報告されているヤラー県メーラン郡を除き07月20日から09月19日まで60日間延長を了承。パニタン政府報道官代行によれば、「最南部でのテロ発生は、2008年が850件、2009年が860件、昨年が656件となっているが、以前に比べて減少しており、非常事態宣言適用の効果が窺える。」とのこと。 |
07月13日(水) | 先に中央選管に総選挙無効を求めた反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)が、最高裁に対しても、「選管の落ち度で有権者約200万人が投票できなかったのは憲法違反。」として、総選挙を無効とし、総選挙のやり直しを命ずるよう求めた。
また、PAD傘下の市民団体「タイ市民評議会」も、「公民権停止中で政治活動が禁止されている者が選挙キャンペーンなどに関与したのは政党法違反。」と主張。該当する政党を解党処分とすべく、調査を開始するよう中央選管に要求。タイ市民評議会は、「選管がこの求めを無視して当選認定を続けるようなら、有権者2万人の署名を集め、中央選管委員5人全員の罷免を請求する。」としている。 |
プラユット陸軍司令官は、「軍人としての務めを果たしたまで。何も間違ったことはしていない。」と述べ、「政権が反タクシンから親タクシンに交代したことで更迭されるのを恐れている。」との見方を否定。司令官によれば、「軍は国を守り秩序を維持するために最善を尽くし、国民もこれを評価しており、軍人が政権交代を恐れる理由はない。」とのこと。
ただ、関係筋によれば、「軍部が反政府に向かわないよう、意にそぐわない軍人を主要ポストから外すのは通常のこと。プア・タイ党がプラユット司令官をどのように見ていたかによるが、陸軍司令官のポストから外される可能性は否定できない。」 |
プア・タイ内で、「1997年憲法を復活させる。」との意見が出ていることについて、アピシット首相(民主党党首)は、「狙いはただ一つ。(タクシン派の)政治関連犯の免罪。」と指摘し、「プア・タイ党が自らの利益のためだけに憲法を変えようとしている。」と批判。
「最も民主的な憲法」とされた1997年憲法のもとでタクシン派が勢力を大きく伸ばしたことから、2006年09月にクーデターでタクシン政権を倒した軍部は、1997憲法を廃止して暫定憲法を制定。翌07年には軍事暫定政権下で現行憲法が作成、制定。
アピシット首相は、「タクシン派は、どの憲法であれ、自分たちに都合のよいルールを好む。1997年憲法の復活を言い出したのは、同憲法のほうがタクシン派の政治関連犯の免罪に都合がよいため」と対決姿勢を明確にしている。 |
プア・タイ党から総選挙に立候補したタクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)幹部らの当選認定が見送られたことに対し、ティダUDD議長代行は、「UDD支持者は、どのような状況下でも行動を起こせるよう力を蓄えよ。」と述べ、赤服軍団による抗議活動を示唆。UDD幹部らの当選を速やかに認定するよう選管に迫った。
中央選管は12日、500人中358人の当選認定を発表したが、19日と26日に追加の当選認定を明らかにする見通し。
ティダ議長代行によれば、「UDD幹部の当選が認定されないのは、市民が発言権を持つことを嫌う勢力が妨害しているため。」とのこと。 |
07月14日(木) | 首相就任が確実視されているプア・タイ党比例選名簿1位のインラックは、「インラックが首相に選ばれなかった場合、ヨンユット、プア・タイ党党首が首相に就任する。」と一部で報じられたことについて、「党内では、そのようなことを話し合ったことはない。」と述べ報道を否定。
インラックは、選管に選挙違反の訴えがあったことから、まだ当選認定を受けておらず、調査の結果クロとされ、当選が認められない可能性もわずかながら出ている。このため、ヨンユット党首は、比例選名簿2位であることから、「インラックがダメなら、首相ポストが自分に回ってくる。」と考えているという。だが、関係筋によれば、「プア・タイ党は、党首選びで意見が割れたため、実力のないヨンユットを暫定的に党首に据えたまでで、その状態が今も続いているだけ。比例選名簿2位というのも曲がりなりにも党首であるためで、それ以上の意味はない。」とのこと。 |
関係筋によれば、プア・タイ党は、「全ての都県で1日当たりの最低賃金を一挙に300Bに引き上げる。」との選挙公約を掲げていたが、経済界や学識経験者から強い反対意見が出ていることから、公約の実現を断念せざるを得ない状況。
プロートプラソプ副党首によれば、「有権者に約束したものの、実現は無理。だが、1年以内には全ての都県で最低賃金を300Bに引き上げる」とのことだ。
プア・タイ党では現在、まず最低賃金が最も高いクルングテープとプーケットで300Bに引き上げ、その他の県は1年以内に段階的引き上げで最低賃金を300Bとすることを考えているという。 |
中央選挙管理委員会は、選挙違反2件を理由に、ソムキット、プア・タイ党候補(東北部ノンカイ2区)の当選認定を拒否することを決定。今回の総選挙における当選認定拒否の第1号となった。ただ、違反は重大なものではなく、補欠選挙に立候補できる(イエローカード)。選管の説明によれば、「ソムキットは、街頭演説に有権者を集めるためサムローの運転手に200Bを払い、また、集まった人にそれぞれ100Bを渡した。」とのこと。選管の調査チームは、補欠選出馬も禁ずるべき(レッドカード)としていたが、中央選管は、当選を認めないだけで十分と判断。 |
総選挙で大勝したプア・タイ党が、「政権党の民主党のアピシット党首(首相)と与党第2党のプームチャイ・タイ党のポンティワ幹事長(商業相)に重大な選挙違反があった。」として、これら2党を解党処分とすべく、調査を行うよう中央選管に要求。
プア・タイ党が問題視しているのは、「不在者投票が行われた06月26日に『ブルーフラッグプログラム』のもとで小売店が日用品などを廉価販売したこと。これが有権者の買収に当たる。」という。ブループログラムは、国民の負担を軽減する目的で以前から実施されているもの。アピシット首相は、「閣議決定に基づいて商業省が行っているプログラム。政治家が直接関与している事実はない。」としている。 |
07月15日(金) | 経営破綻したドイツの建設会社がクルングテープの高速道路建設をめぐる契約違反でタイ政府に賠償金約3000万€を求めていた裁判で、12日、ドイツの裁判所命令により、ミュンヘン空港に駐機していたワチラロンコン、王太子の専用機が差し押さえられた。タイ政府はこの問題で、「差し押さえられたボーイング737型機は王太子個人の所有でタイ政府の資産ではない。」と主張し、差し押さえの即時解除を要求。カシット外相が急遽ドイツ入りし、15日にドイツのコルネリア・ピーパー外務省国務大臣と会談したが、ドイツは「司法に介入出来ない。」と説明し、話し合いは平行線を辿った。
タイ国営通信社タイ・ニュース・エージェンシーによると、タイ空軍は差し押さえられた航空機について、「2007年にタイ空軍が王太子にプレゼントした。」と説明。タイには不敬罪があり、タイ国王夫妻と王位継承者に対する批判が禁じられている。違反した場合、1件につき最長15年の懲役刑が科される。 |
07月16日(土) | アピシット民主党党首(首相)は、「党役員選出は複数人が立候補する見通しで厳しい戦いになるだろう。だが、いがみ合っているわけではない。」と述べ、「党役員選びを巡って党内に対立、亀裂が生じている。」との見方を否定。
民主党では、総選挙敗北の責任をとってアピシット党首とステープ幹事長が辞意を表明しており、8月半ばに新しい党首、幹事長が選ばれる。党首はアピシットの再任の可能性が強いとされるが、幹事長については、カラヤ♀などが適任といった意見が出ている。しかし、南部出身議員はステープ再任を支持しており、これが、「対立、亀裂」との報道に繋がった。 |
07月17日(日) | タイ外務省によると、ミュンヘン空港に駐機していたワチラロンコン、タイ王太子の専用機が12日、ドイツ企業に対するタイ政府の債務不払いにより、ドイツの裁判所命令で差し押さえられた問題で、タイのカシット外相は、フランクフルト空港で王太子と会談し状況を説明。
タイ政府は「差し押さえられたボーイング737型機は2007年にタイ空軍が王太子に贈ったもので、政府の所有物ではない。」と主張。ドイツの裁判所に差し押さえの解除を求めている。 |
07月18日(月) | 国際司法裁判所は、タイとカンボジアの国境未画定地域近くの世界遺産カオ・プラウィハーン(プレアビヘア)の問題について、周辺の国境未画定地域の領有権に関する判断を求めたカンボジアの訴えを受理し、タイとカンボジアが武力衝突を繰り返している地域に非武装地帯を設定し、両国が出動させている軍を即時撤収を求める判断。これと共に、両国はこの問題解決に向け対話を再開すること、監視団の査察を受け入れることを求めた。また、カオ・プラウィハーンへのカンボジアのアクセスをタイが妨害することを禁止し、紛争地域に東南アジア諸国連合(ASEAN)の停戦監視団を受け入れるよう両国に指示。
カオ・プラウィハーンはクメール王国が9~11世紀に建立したとされ、タイ・カンボジア国境地帯の崖の上に建つ。国際司法裁判所は1962年、カオ・プラウィハーンをカンボジア領とする判決を下したが、周辺の領有権については判断を示さなかった。2008年に国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産に登録されたが、世界遺産の共同登録・管理を主張していたタイはこれを不満とし、同年以降、周辺地域でカンボジアと武力衝突を繰り返した。今年02月と04月には両国軍が大砲、ロケット弾を撃ち合うなど本格的に交戦し、双方の兵士、住民ら30人近くが死亡、100人以上が負傷し、周辺地域の住民10万人以上が一時避難。この問題をめぐり、タイは今年06月、世界遺産条約からの脱退を表明。カンボジアはタイとの国境紛争を受け、今年04月、この判決の解釈を国際司法裁判所に要請し、判決が出るまでの暫定措置として、カオ・プラウィハーン周辺からのタイ軍の撤退と軍事行動の停止を命じるよう求めていた。
タイはカンボジアとの紛争の2国間協議による解決を主張し、ASEANの停戦監視団受け入れを事実上拒否。国際司法裁に対しては、カンボジアの訴えを却下するよう求めていた。国際司法裁判所に出廷したカシット外相は、「両国に撤兵を呼びかける内容で、満足した。」と述べ、アピシット首相は、「一時的な措置であり、タイの主権に影響するものでも、タイにとって不利なものでもない。」と説明したが、実際にはタイの主張はほぼ全て退けられた形。
アピシット首相は19日に国防相、陸軍司令官、外務次官らを集め、対応を協議する予定。ここ数年、アピシット政権など反タクシン勢力に揺さぶりをかけるためか、親タクシンのフン・セン首相のもとでカンボジアは挑発的な姿勢を見せている。ただ、タイでは今月03日の下院総選挙で、領土問題に敏感な特権階級・保守派が支持するアピシット民主党政権が破れ、タクシン派の政権復帰が決まった。タクシンはカンボジアのフン・セン首相と個人的に親しく、カンボジアは態度を軟化させ、「妥協」が成立する可能性が高い。 |
07月19日(火) | 中央選挙管理委員会は、プア・タイ党比例選名簿1位のインラック、アピシット民主党党首(首相)、ステープ民主党幹事長(副首相)など総選挙の候補者12人の当選を認定。これで、12日の358人を加え、下院議員500人中370人の当選が確定。
新政権を発足させるには、特別国会を総選挙投票日から30日以内に開催することが必要で、特別国会の定足数は下院議員の95%、475人となっており、まだ105人不足。 |
これまで連立政権を率いてきた民主党のステープ幹事長代行によれば、民主党は08月06日に開く特別党大会で党首、幹事長を含む新しい党役員を選出。
民主党では、総選挙でプア・タイ党に敗北したことを受け、アピシット首相が07月04日に党首を辞任。これにより党役員全員の任期が終了。
特別党大会は、クルングテープ都ドンムアン区にあるミラクルグランドホテルで開かれる予定。また、幹事長ポストについては、アピラック元クルングテープ都知事、カラヤ♀などの名があがっているが、ステープは「幹事長を含めどのような役員ポストにも就かない。」と明言。 |
2010年05月19日、クルングテープ都心のショッピングセンター、セントラルワールドの一部が放火された事件で、当時現場にいた建物側の責任者が、検察側証人として南クルングテープ刑事裁判所で証言。
セントラルワールドを運営するセントラル・パッタナ社で、ビル管理の副責任者を務めるチュパン(47)は、「反独裁民主主義同盟(UDD)の幹部、ナタウットが、『ラーチャプラソン交差点付近における67日間の戦いを終える。』と宣言した約10分後には、私は部下たちとともに、建物内で起きた小火の消火に当たっていた。小火はゾーンAとゾーンBの間にある正面入り口近く、アディダス・ショップで発生。消火活動の際、商品が略奪されるのを目撃した。」と述べた。その後、地上階の別のエリアでも火災が発生したため、チュパンらは移動。スプリンクラーが作動しているのを確認したところで、今度はエレベーターから煙が出ているのを発見した。そのため、部下と無線で連絡を取りながら状況把握のため、ゾーンDへ向かっている際、建物内から逃げようとしていた男と遭遇。その男は、「センターの職員に追われ、集団で逃げているようだった。商品を略奪していたようだが、私は早く避難するよう呼びかけた。」という。「その時、ラマ1世通りでは、顔を覆った3、4人の男がタイヤ、ダンボール、調理用ガスなどを燃やしており、セントラルワールド内に火種を投げていた。」という。さらに、40ー50人の集団が、建物内のチュパンと部下らに向かって石やレンガなどを投げつけたほか、「レンジャーのズボン姿の男らがリュックサックから手榴弾を取り出し、我々に投げてきた。」(チュパン)という。この手榴弾攻撃により、職員計9人が負傷。
同社勤続16年のチュパンは、07月26日にも証言台に立つ予定。 |
07月20日(水) | 中央選挙管理委員会は、スコータイ3区から総選挙に出馬したチャカワン、プームチャイ・タイ党候補に選挙違反があったとして、その当選を認めず、同選挙区で31日に補欠選挙を実施することを決定。チャカワン候補は、有権者20人にそれぞれ200Bを渡したのが有権者買収に当たるとされた。
チャカワン候補は、「選挙運動を手伝ってもらうために雇った人々に報酬を支払ったまで。」と釈明していたが、認められなかった。 |
最高裁判所は、先の総選挙を無効とするよう求める、反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)幹部のチャムロン元クルングテープ都知事の訴えを、「法的根拠に欠ける。」として却下。
チャムロンは、「選挙管理委員会の落ち度で大勢の有権者が投票の機会を奪われた。」と主張していたが、最高裁は、「このような理由で選挙無効を求めることに法的裏付けはない。」と判断。
なお、PADは、合法的な総選挙ボイコットを有権者に呼びかけていたが、これが結果的に同じ陣営の民主党の得票を減らし、はからずもタクシン派プア・タイ党の勝利に貢献したとの見方も出ている。 |
次期首相とされるプア・タイ党のインラックは、同党の公約としている一日あたりの最低賃金の引き上げについて、改めて「実現するよう努めていく。」との考え。「物価が急騰する中、最低賃金は抑えられ続けてきた。引き上げることで労働者の生活を救済したい。」としている。
プア・タイ党は、現時点で一日あたり159~221B(地域差あり)から、最低300Bに引き上げるとしているが、一部地域では賃金が約2倍となることなどから、経済界からは歓迎されていない。 |
07月21日(木) | 中央選挙管理委員会は、今回の総選挙でさらに32人の当選認定を発表。これで下院定数500人のうち402人の当選が認められた。当選認定はこれまでに12日と19日の2回発表されているが、今回は、プア・タイ党から出馬したタクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)幹部12人のうち6人が当選となった。
中央選管によれば、「党員であることが被選挙権の条件のひとつとなっているが、UDD幹部5人については、大規模反政府デモなどに関連して逮捕された者が含まれており、党員の条件を定めた党規との関連で党員であることが確認できていないといった理由からまだ当選認定に至っていない。」
中央選管は22日に4回目の当選認定を発表する予定。
なお、今回当選が確定したUDD幹部6人は、ウーエン・トチラカーン、コーケウ・ピクントーング、アピワン・ウィリヤチャイ、ウィプタレン・パッタナポームチャイ、ウィチア・カオカム、ピチット・チューンバン。一方、当選確定が先送りされたのは、ナタウット・サイクア、チャトポン・プロムパン、カルン・ホサクン、パヤップ・パンケット、チャルパン・クルディローク、プラシット、ウォラチャイ、サタポンなど。 |
アピシット首相は、カンボジアに対し、国境の紛争地帯から直ちに兵を引き揚げるよう改めて要求。
国境の紛争地帯からの撤兵は、国際司法裁判所が先にタイとカンボジアに命じたものだが、カンボジアは「インドネシアの監視団が国境の紛争地帯に入ることが撤兵の条件。」と主張している。しかし、アピシット首相によれば、「国際司法裁判所に領有権争いを持ち込んだのはカンボジアであり、まずカンボジアが命令に従うのが筋。」とのこと。 |
07月23日(土) | 中央選挙管理委員会のスティポン事務局長は、特別国会の開催期限が迫っているため、総選挙候補者の認定作業を急ぐ意向。
憲法では、「総選挙投票日から30日日内に下院議員500人の95%、475人以上の出席を持って特別国会を開催する。」と規定されている。これまでに中央選管が当選の認定・認定拒否を決めたのは402人。当選認定について検討・決定する中央選管委員の次回会合は26日に予定されているが、25日にも会合を開く予定。 |
07月24日(日) | 首相就任が確実視されているプア・タイ党のインラックは、 「操り人形にすぎない。」といった批判が絶えないことについて、「組閣が完了してから論じてほしい。」と述べ、「リーダーシップのもとで組閣が進められている。」と強調。
インラックは政治経験が皆無に等しいことから、ラック・プラテート・タイ党のチューウィット党首などは、「閣僚の人選は、実兄のタクシンや実姉ヤオワパー(ソムチャイ元首相の妻)が全て決めている。」と批判。
しかし、インラックによれば、「国民の期待に応えるべく、仕事のできる内閣を作ろうと しているところであり、これにタクシンなどは口を挟んでいない。」 |
07月25日(月) | クルングテープ都庁が水増し価格で消防車・消防艇を購入することになったとされる2004年の問題で、国家汚職制圧委員会(NACC)は、最高裁に対し、当時のアピラック、クルングテープ都知事(先の総選挙に民主党から出馬し当選)、ポキン内相、プラチャ副内相、ワタナ商業相、アティラック都庁消防救急課課長の5人を起訴する手続き。
購入契約は、2004年08月に当時のサマック都知事とオーストリア企業との間で交わされたが、後にタイ製の車両・船舶を外国で消防用に改造し、それを輸入するというものであることが判明。後任のアピラック都知事は、内務省にかけ合ったが、「タイ・オーストリア間の契約で変更できない。」と突っぱねられ、「仕方なく信用状を発行した。」と釈明。検察庁は昨年、嫌疑不十分で、アピラック、ポキン、ワタナーなどを不起訴とすることを決定。だが、NACCは今回、「違法性を認識していたはず。」として、起訴に踏み切ることにした。
NACCによれば、「契約では消防車315台と消防艇30隻は総額66億8000万Bだが、タイ国内で改造していれば輸送費もかからず、30~35億Bで調達できていたはず。」という。 |
カンボジアとの領有権争いに絡んで、タクシンの法律顧問ノパドン元外相が、国際司法裁判所への訴えがなっていないなど、民主党政権を批判したことに対し、アピシット首相は、「ノパドン元外相が問題がこじれる結果を招いた張本人だ。」と強く反論。
カンボジアは単独で、国境地帯の寺院遺跡カオ・プラウィハーンを世界遺産に登録するよう申請し、これが認められたことが、問題が複雑化した原因とされているが、ノパドンは2007年、タクシン派・サマック政権の外相として登録申請を支持する共同声明に署名。
アピシット首相によれば、「これによって、カンボジアは、立場が有利になり、面積4・6平方キロメートルの国境未画定区域の領有権をも主張するようになった。」 |
07月26日(火) | ミュンヘン空港に駐機していたワチラロンコン、タイ王太子の専用機(ボーイング737型機)が12日、経営破綻したドイツの建設会社ウォルターバウに対するタイ政府の賠償金不払いにより、ドイツの裁判所命令で差し押さえられた問題で、22日、ドイツ駐タイ大使館のホームページに、差し押さえに至った経緯を説明し、タイ政府に賠償金の支払いを求める報道発表を掲載。タイ政府のパニターン報道官代行は26日、「これまでの両国の良好な関係を考慮して欲しい。」とドイツの対応に不快感を示し、「ウォルターバウの破産管財人が王太子の2機目の専用機の差し押さえを検討している。」という報道について、「(実施されれば)タイの国民感情に影響が出るかもしれない。」として、慎重な対応を求めた。王太子の2機目の専用機は1機目が差し押さえられた後、ミュンヘンに飛来した模様。
独大使館の報道発表によると、ウォルターバウは1980年代に、クルングテープと郊外のドンムアン空港を結ぶ自動車専用道路ドンムアントールウェイの建設に携わったが、タイ政府の度重なる契約違反で損失を被った。ウォルターバウの破産管財人は2005年、タイ政府に賠償金の支払いを求める国際仲裁手続きを開始し、2009年、タイ政府に3600万€の支払いを命じる最終判断が下った。しかしタイ政府はその後も支払いに応じず、ドイツ地裁の命令により、王太子専用機が差し押さえられた。タイ政府は「差し押さえられた機は2007年にタイ空軍が王太子に贈ったもので政府の所有物ではないと。」主張、無条件での返還を求めている。
独大使館の報道発表は「問題の早期解決はドイツとその他の外国人投資家のタイへの信頼を回復させ、独タイ関係の発展に前向きなメッセージを送ることになる。」と結ばれていた。こうした上から目線の率直な物言いが、婉曲を好み自尊心が高いタイ上流階級の神経に触ったのは確実で、両国関係がこじれる可能性もある。 |
タクシンが62歳の誕生日を迎え、生まれ故郷の北部チエンマイや東北部ナコーンラーチャシーマー、中部アユタヤなど国内の10ケ所以上で支持者が祝賀行事。タクシンは国外滞在中の2008年、首相在任中に妻が国有地を競売で購入したことで懲役2年の実刑判決を受け、以来、タイに帰国していない。07月03日の下院総選挙でタクシンのプア・タイ党が過半数を制したことから、タクシンの恩赦に向けた動きが活発化する見通しだが、特権階級を中心とする反タクシン派の反発は必至で、タクシンの帰国への道のりは険しい。 |
プア・タイ党は、総選挙後初めてとなる党役員全員の出席する執行部会議を開き、比例選名簿1位のインラックとヨンユット党首に閣僚、下院議長、下院委員会の委員長などの人選を一任することを決定。下院議長候補については、下院議員500人の95%、475人以上が当選認定となり、特別国会開催が可能となったあとで発表される見通し。 |
民主党のアピラック元クルングテープ都知事は、消防車・消防艇購入問題で起訴されたことについて、記者会見を開いて、幹事長ポストを断念する考えのないことを明らかに。民主党は08月06日に新しい党首、幹事長などを選出する予定で、アピラックは幹事長候補として名があがっている。
この問題は2004年に当時のサマック都知事が退任間際に購入を承認したことに端を発するものだが、アピラックは当初から、「契約破棄を試みたものの、関係当局が応じなかった。」などと釈明しており、検察庁も昨年、嫌疑不十分で同氏の起訴を見送った。今回の起訴は、国家汚職制圧委員会(NACC)によるもの。
アピラックは、「この問題に関しては、民主党の党員も一般市民も(アピラックに責任のないことは)理解しているはず。」としている。 |
中央選挙管理委員会は、投票者数と票数が合致しないとの訴えがあった最南部ヤラー2区について、31日に再集計を行うことを決定。同選挙区では、民主党候補が最多議席を獲得したが、次点のプア・タイ党候補との票差がわずか33票だったため、プア・タイ党候補が、選管の発表に不整合があったとして再集計を求めていたもので、これが認められた。
一方、中部ラチャブリ県では、記入済みの投票用紙100枚あまりが放置されているのが見つかったことから、次点の民主党候補が補欠選挙の実施を要求。選管は「詳しい調査を実施した後で対応を決める。」としている。 |
07月03日のタイ下院総選挙を受け、下院の招集詔書が公布。08月01日、ワチラロンコン王太子の主宰で開会式が行われる。
下院選はタクシン派の野党プア・タイ党が過半数を制し、タクシン派が2年半振りに政権に復帰。首相にはタクシンの妹のインラックが就任する見通し。プア・タイ党は最低賃金の大幅な引き上げなどを掲げており、次期政権と経済界の摩擦は必至。また、特権階級を中心とする反タクシン派はプア・タイ党の解党裁判などで政権転覆を狙うとみられ、荒れ模様の政局が続く見通し。 |
07月27日(水) | 中央選挙管理委員会は、「新たに94人の当選を認定した。」と発表。これで、下院議員は500人中496人が決まり、特別国会(定足数=下院議員定数の95%、475人)を憲法の定める期限内(総選挙投票日から30日以内)に開催することが可能。
また、プア・タイ党から出馬した、タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)幹部のチャトポン候補の当選認定が今回も見送られた。これは、昨年の大規模反政府デモに関連した逮捕や拘留によって被選挙権を喪失していた可能性があり、その最終的な判断がまだ下されていないことによる。残りの3人に関しては、2人が31日の補欠選挙(ノンカイ2区とスコータイ3区)で選ばれ、1人が票の再集計(ヤラー2区)で決定されることになっている。
ソットシー中央選管委員によれば、「選管に寄せられた選挙違反の訴えが非常に多く、また、選管は法律で30日以内に当選認定の作業を完了するよう求められていることから、調査・検討が不十分だった事例も少なくない。」このため、当選認定後に選挙違反とされる事例も考えられるが、選管には当選認定を取り消す権限が与えられている。 |
高架有料道路「ドンムアン・トールウェイ」に絡むドイツ企業とのトラブルを巡って先に「ドイツ当局が独企業に賠償金が支払われていない。」としてワチラロンコン皇太子殿下の専用機を差し押さえた問題で、在タイ、ドイツ大使館がホームページ上で賠償金支払いを求めたことに対し、アピシット首相は、「裁判に決着がついていない段階で、このような要求をするのは不適切。」と、ドイツ政府を批判。
ドイツ政府は、「タイ政府は3600万€(約15億5000万B)を支払うべき。」とのジュネーブの国際仲裁機関の決定に基づいて、タイ政府に賠償を請求している。だが、アピシット首相によれば、タイ政府は、「賠償を命じたニューヨーク地方裁判所の判決に対し控訴の手続きを進めているところで、その結果が出る前にタイ政府に賠償を求めるのは適切とは言えない。」 |
07月28日(木) | 米国からの報道によれば、タクシン政権(2001~2006年)で首相副秘書官、副首相顧問、農相顧問などを務めた人物が、2004~2008年にかけ、タイの現地法人を通じて英国酒造メーカー「ディアジア」から、ジョニーウォーカーなどの国内販売促進のため、総額60万US$あまりの賄賂を受け取ったという。2005年05月、タクシン首相(当時)が、ディアジオにとって有利な課税方針を発表したが、これは同人物による根回しの結果と考えられる。米当局によれば、ディアジオが2003~2009年にかけアジア地域全体にばらまいた賄賂は総額270万US$ほどで、これによって1100万US$あまりの増益となった。 |
プア・タイ党から総選挙に出馬した、タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)幹部のチャトポンの当選がまだ認定されていないことから、UDD幹部のナタウットは、「中央選挙管理委員会の対応に問題がある。」と指摘し、中央選管を訴える構えを示した。チャトポンは、テロ容疑、不敬容疑などで逮捕・拘留されたことで、被選挙権を喪失していた可能性があるとして、中央選管委員5人は3対2で当選認定を見送ることを決めた。だが、ナタウットによれば、「中央選管にはこのような決定を下す権限はなく、憲法裁判所の判断を仰ぐべき。」と訴えている。
なお、ナタウットは、赤服軍団(UDD支持者)に対し、「刑務所前でチャトポンを激励するのはよいが、中央選管には押しかけないでほしい。」と呼びかけた。 |
経営破綻したドイツの建設会社ウォルターバウに対するタイ政府の賠償金不払いにより、ミュンヘン空港に駐機していたワチラロンコン、タイ王太子の専用機(ボーイング737型機)がドイツの裁判所命令で差し押さえられた問題で、22日、駐タイ、ドイツ大使館のホームページに、差し押さえに至った経緯を説明し、タイ政府に賠償金の支払いを求める報道発表が掲載された。タイ外務省はこれに対し、28日、「ドイツ政府がこのような報道発表したことは、不要で不適当で、非常に遺憾である。」、「タイ政府と民間投資家の係争であり、王太子とドイツ政府は無関係。」、「王太子の名誉を守り、迅速に差し押さえ解除を実現する。」といった内容の声明を発表。タイのアピシット首相は27日、「賠償金問題は依然係争中」という認識を示し、ドイツ政府を非難。
ドイツの報道発表によると、ウォルターバウは1980年代に、クルングテープと郊外のドンムアン空港を結ぶ自動車専用道路ドンムアン・トールウェイの建設に携わったが、タイ政府の度重なる契約違反で損失を被った。ウォルターバウの破産管財人は2005年、タイ政府に賠償金の支払いを求める国際仲裁手続きを開始し、2009年、タイ政府に3600万€の支払いを命じる最終判断が下った。しかしタイ政府はその後も支払いに応じず、ドイツ地裁の命令により、王太子専用機が差し押さえられた。報道発表は「問題の早期解決はドイツとその他の外国人投資家のタイへの信頼を回復させ、独タイ関係の発展に前向きなメッセージを送ることになる。」と結ばれていた。 |
ドイツ紙の報道によると、ドイツ政府は07月03日のタイ下院総選挙でタクシン派が過半数を制したことを受け、タクシンに対する入国禁止処分を15日付で解除した。この報道についてタイ外務省は28日、「ドイツから詳細に関する連絡はまだない。」と述べた。タクシンは2008年にドイツに滞在したが、独政府は2009年に滞在許可を破棄。 |
07月30日(土) | タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)幹部チャトポンの当選認定を求めてUDD支持者(赤服軍団)が過激な行動に出る姿勢を見せていることについて、ソットシー中央選管委員は、「我々委員は職務に命をかけており、脅迫には屈しない。だが、我々が傷つけられるようなことがあれば、政治状況の流れが変わり、軍部がクーデターを起こしかねない。」と警告。チャトポンはプア・タイ党から出馬し当選圏内となったが、拘留中で投票できなかったことから、被選挙権欠格事項に該当との指摘がある。 |
米当局が英国の酒造メーカー、ディアジオがタイなどで賄賂をばらまいたと明らかにした問題で、民主党は、「収賄容疑者はタクシンの側近」との報道を否定したタクシンの法律顧問ノパドン元外相に対し、その人物の実名を明らかにするよう要求。容疑者はタクシン政権下で要職に就いていたとされるが、氏名は明らかにされていない。
なお、ノパドンは29日、容疑者とタクシンのつながりを否定し、捜査に協力する姿勢を示している。
一方、民主党のブラナート広報担当によれば、「ノパドンは容疑者が誰かを知っているはずであり、約束通りに氏名を明らかにして捜査に協力すべき。」と訴えた。 |
07月31日(日) | 東北部ノンカイ2区と北部スコータイ3区で総選挙における選挙違反に伴い補欠選挙が実施され、南部ヤラー2区では総選挙の票の再集計が行われたが、いずれの選挙区でも07月03日の総選挙で最多票を獲得していた候補者が選ばれる結果。
ノンカイ2区とスコータイ3区では、それぞれソムキット、プア・タイ党候補、チャクラワン、プームチャイ・タイ党候補が選挙違反のため当選が認められなかったが、「違反は軽微」として補欠選出馬が許可され、再び最多票を獲得。ヤラー2区では、選管の発表で投票者数と票数に食い違いがあったことから、小差で次点となった候補の訴えで再集計が行われたが、アブドゥルカリム民主党候補の獲得票が最多となり、先の結果は覆らなかった。
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総選挙の当選認定を巡ってタクシン派が中央選管に圧力をかける姿勢を見せている問題で、アピシット首相は、ソットシー中央選管委員がタクシン派を牽制しようとクーデターの可能性に言及したことに対し、「軍部を困難な立場に追い込むことになる。」と、苦言を呈した。
ソットシー委員は、「タクシン派が実力行使に出れば、軍部にクーデターの口実を与えることになる。」と述べた。これに対して、アピシット首相は、「軍部は選挙とは無関係。ソットシー委員の発言で、軍部は問い合わせへの対応に忙殺されかねない。」との考えを示した。 |
08月01日(月) | 選挙管理委員会が先日行われた下院総選挙当選者の95%以上を公認したことを受け、ワチラロンコン王太子の主宰で下院の開会式。数日中に、タクシン派の政党プア・タイ党所属のソムサックが下院議長に、プア・タイ党の比例代表1位でタクシンの妹のインラックが首相に就任する見通。
プア・タイ党は下院選で過半数を制し、タクシン派が約2年半振りに政権に復帰。タクシンと敵対する特権階級はプア・タイ党の解党裁判などで政権転覆を狙うとみられ、荒れ模様の政局が続く見通し。ただ、タクシン派が2001年、2005年、軍事クーデター翌年の2007年、2011年と過去4度の下院選を連続して制したことで、特権階級の影響力低下は明らか。将来を睨み、特権階級の一部がタクシンとの関係修復に動く可能性も。 |
経営破たんしたドイツの建設会社ウォルターバウに対するタイ政府の賠償金不払いにより、ミュンヘン空港に駐機していたワチラロンコン王太子の専用機(ボーイング737型機)がドイツの裁判所命令で差し押さえられた問題で、王太子の事務局は、「差し押さえ解除に必要な保証金2000万€を王太子が自費で立て替える。」と発表。「王太子自身はこの問題に無関係だが、タイ独関係への影響や自身の名誉などを考慮した。」という。
07月22日に駐タイドイツ大使館のホームページに掲載された報道発表によると、ウォルターバウは1980年代に、クルングテープと郊外のドンムアン空港を結ぶ自動車専用道路ドンムアン・トールウェイの建設に携わったが、タイ政府の度重なる契約違反で損失を被った。ウォルターバウの破産管財人は2005年、タイ政府に賠償金の支払いを求める国際仲裁手続きを開始し、2009年、タイ政府に3600万€の支払いを命じる最終判断が下った。しかしタイ政府はその後も支払いに応じず、07月12日、ドイツ地裁の命令により、王太子専用機が差し押さえられた。報道発表は「問題の早期解決はドイツとその他の外国人投資家のタイへの信頼を回復させ、独タイ関係の発展に前向きなメッセージを送ることになる。」と結ばれていた。
王太子機の差し押さえという事態を受け、タイのカシット外相は07月15日にドイツ入りし、ドイツのコルネリア・ピーパー外務省国務大臣と会談したが、ドイツは「司法に介入出来ない。」と説明し、話し合いは平行線を辿った。タイ政府は賠償金の問題について、「依然係争中。」(アピシット首相)という認識を示し、「タイ政府と民間投資家の係争であり、タイ王太子とドイツ政府は無関係」、「ドイツ政府がこのような報道発表をしたことは、不要で不適当で、非常に遺憾である。」(タイ外務省)と強い調子で非難。また、「差し押さえられた機は2007年にタイ空軍が王太子に贈ったもので政府の所有物ではない。」と主張。「王太子の名誉を守り、迅速に差し押さえ解除を実現する。」(タイ外務省)と無条件での返還を要求。
ドイツの地裁は07月20日、保証金2000万€と引き換えに差し押さえを解除する決定を下したが、タイ政府は支払いを拒否。ジュラシン検事総長によると、「王太子はタイの国民感情に懸念を示し、タイ政府に保証金を支払わないよう求めた。」という。差し押さえに関する独裁判所の最終判断は08月中に下る見通し。
一方、この問題で、タクシンの顧問弁護士でカナダ人のロバート・アムスタダムは07月17日、自身のウェブサイトに声明を出し、差し押さえに関与したという噂を否定。アムスタダムは「事実無根の極めてばかげた噂だ。」と述べ、タイの政治を牛耳る反民主主義的な勢力が噂の出元と断じた。 |
中央選挙管理委員会は、昨年の大規模反政府デモに関連してテロ容疑・不敬容疑などに問われているタクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)幹部チャトポン前プア・タイ党議員の当選を発表。中央選管委員5人のうち4人が当選認定に賛成。
チャトポンは、「今年04月10日の発言が不敬容疑に抵触する。」として拘留されたことで、党員資格を喪失。このため、被選挙権欠格事由に該当するとの訴えが選管に出ていた。 |
08月02日(火) | 2010年05月19日に起きたセントラルワールド放火事件の裁判が行われているが、サイチョン・ペーブア(29)は、「自分はスケープゴート。警察に自白を強要された。」と訴えた。南クルングテープ刑事裁判所下の留置所にいるサイチョンは、「『逮捕状に記された人物であることを認めないと、軍系列の留置所に連れて行く。』と警官に脅された。そんなところへ行ったら拷問されると思い、警官の指図どおり書類に署名してしまった。」と供述。
08月02日に開かれた裁判では、セントラルワールドの職員が「店舗が放火された時、サイチョンが調理用ガスのタンクを運んでいるのを目撃した。」と証言したが、サイチョンは「店舗には入っていない。その時私はプラトゥーナム界隈からデモ隊の臨時避難所、パトゥムワラナム寺へ向かっていた。」と反論。
なお、サイチョンを逮捕した警官のひとりは、「サイチョンの身柄を王宮前広場で拘束したが、逮捕状の写真の男のほうがサイチョンよりも背が高いことは分かっていた。逮捕状に氏名は書かれていなかった。」と法廷で証言。 |
特別国会で下院の正副議長が決まったことから、早ければ05日にも首相が指名される見通し。下院議長に選ばれたソムサク、プア・タイ党議員によれば、「国王が正副下院議長の任命を承認した後、首相指名選挙が行われることになるが、すでに05日に指名選挙を実施できるよう調整が進められている。」という。
首相指名選挙では、タクシンの実妹であるプア・タイ党のインラックが第28代首相に選ばれ、タイ初の女性首相誕生となる見通し。 |
マハワチラロンコン王太子の専用機がドイツ当局に差し押さえられた、ドイツ企業とタイ政府間の賠償問題で、アピシット首相は、王太子に迷惑がかからぬよう、これまで通り交渉や裁判を通じて解決を図る方針。
王太子は先に、ドイツ当局の要求に応えて私財で賠償金を支払い、専用機を取り戻す意向を明らかにした。しかし、アピシット首相によれば、法律専門家チームが03日にもドイツに向かう予定。「王太子を煩わせることになく、08月中に決着をつけることができる。」とのこと。 |
反タクシン派の市民団体「国土を守る市民ボランティア・ネットワーク」のトゥン代表は、反独裁民主主義同盟(UDD)幹部のチャトポン前プア・タイ党議員の総選挙当選が認定されたのは法的に問題として、中央選管を相手取って訴訟を起こす考え。同団体は、まず刑事裁判所に提訴する予定で、行政裁判所に訴えることも検討中。
チャトポン容疑者は保釈が認められ、待ち受けていたUDD支持者約500人の前で演説。昨年の大規模反政府デモに関連してテロ容疑などで逮捕されたあと保釈されたが、不敬発言があっとして保釈が取り消され、総選挙前から再び身柄を拘束されていた。 |
08月03日(水) | プア・タイ党関係筋によれば、プア・タイ党の最高実力者、タクシンが、民間人起用などで「クリーン」内閣を作ろうとしていることに反発が高まっている。
これは、東北部出身議員らが、「東北部での議席獲得がプア・タイ党の総選挙勝利につながった。」と主張し、その見返りとして可能なかぎり多くの閣僚ポストを要求しているため。国外逃亡中のタクシンは、「実妹インラックの率いる内閣を見栄えの良いものにしたい。」との意向を示しており、「担当分野に精通した民間人をできるだけ多く閣僚に抜擢するのが望ましい。」との意向。
だが、多くの議員は、〈閣僚ポスト=褒美〉と考えているため、党内に強い反発が起きている。
なお、関係筋によれば、「タクシンの意向もあり、イメージ的な問題を抱える反独裁民主主義同盟(UDD)幹部は、少なくとも第1次インラック内閣に入ることは考えられない。」 |
民主党関係筋が明らかにしたところによると、08月06日に新しい党首や幹事長を選出する予定だが、幹事長候補のチャルムチャイ議員が、「将来の党首」としてコーン財務相を推す考えを明らかにしたことから、これに反発した議員らが幹事長選をボイコットする構え。一方、党首ポストはアピシットの再選が確実視されている。
幹事長は現職のステープが出馬しない意向を示しており、唯一名のりをあげたチャルムチャイ議員が選ばれる見通しとなっていた。だが、チャルムチャイ議員は、「アピシットの後にコーン財務相が党首に就任できるよう努力する。」などと述べたとされ、コーンの党内のおける影響力拡大を嫌う派閥が、コーン議員の幹事長就任を阻止する動きを見せている。
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08月04日(木) | 総選挙におけるタクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)幹部のチャトポン(前プア・タイ党議員)の当選認定に批判意見が出ていることについて、ソムチャイ下院議長は、「中央選管から要請があれば、憲法裁判所の判断を仰ぐ。この問題を長引かせるつもりはない。」と明言。
下院議員選挙については、党員であることが立候補の条件とされている。だが、同容疑者は、プア・タイ党の党員規定に抵触し、また、拘留中で総選挙の投票ができなかったことから被選挙権喪失の疑いがあり、このため、当選認定を違法とする意見が出ている。中央選管は同容疑者の当選を認定したものの、さらなる調査の可能性を示唆しており、その結果次第では、憲法裁の裁定を求めることも考えられる。 |
08月05日(金) | タイ下院議会(定数500)は、プア・タイ党のインラック・チナワット(44)を賛成296票で首第28代首相に選出。インラックは現在国外逃亡中のタクシンの実妹。タイの首相に女性が就くのは初めて。
インラックは政治経験がほとんどなかったが、公職追放処分と汚職で有罪判決を受け国外滞在中のタクシンが07月03日の下院総選挙を前にプア・タイ党の比例代表1位に抜擢。インラックは選挙戦でタクシン譲りのカリスマ性を見せ旋風を巻き起こし、プア・タイ党は総選挙で過半数を獲得、政権与党の民主党を大差で破り、政権に復帰。
タクシン派は2006年に軍事クーデター、2008年には司法判断により、政権を追われたが、2001年以降、選挙では連戦連勝中だ。ただ、特権階級を中心とする反タクシン派は反王室的な色合いが強いタクシン派に対する警戒を緩めておらず、インラック政権発足後も、軍、司法などを通じ、タクシン派潰しに動くとみられる。
一方、プア・タイ党では、閣僚ポストを巡って水面下で活発な根回し、駆け引きが展開。関係筋は、「タクシンは、早期に閣僚人事を決めるよう望んでいる。内閣発足の期限を08月第2週半ばとしている。」と明らかに。これは、閣僚人事が難航すればするほど、無用なしこりが残り、その後の政権運営、党の結束に影響する恐れがあるため。同筋によれば、閣僚人事は06日もしくは07日にまとめ、週明けの08日か09日にも国王に内閣人事の承認を求める見通し。
インラック内閣の経済政策の鍵を握る財務相にはティーラチャイ・タイ証券取引委員会事務局長(59)、反タクシン派の軍との交渉役となる国防相にはユタサク元国防次官(74)が有力視されている。ティーラチャイ氏は英ロンドン大学経済学部卒。タイ中央銀行副総裁を経て、2003年から証取委事務局長。05日付で証取委に辞表を提出。 |
08月06日(土) | 】民主党党大会で、アピシット首相(47)を党首に再選。ステープ幹事長(副首相)は退任し、後任には中部での党勢拡大を目指し、中部閥のチャルームチャイ・シーオーン下院議員(46)を選出。また、アピラック元クルングテープ都知事など3人が副党首に選出された。今回の人事は、党役員、所属議員など328人の投票で決められたが、賛成票の割合は、アピシットが96%、アピラックも92.5%とほぼ満場一致。一方、チャルームチャイは、幹事長候補が1人だったにもかかわらず、「アピシットの次はコーン財務相を党首に。」との先の発言が党内の反発を買ったためか72.2%。
民主党は2008年末に当時のタクシン派与党が選挙違反で解党された、いわゆる「司法クーデター」の際に、タクシン派政権に参加していた中小政党、派閥を、特権階級・軍の後押しを受けて抱き込み、政権を発足。しかし、07月03日の下院(定数500)総選挙ではタクシン派政党が過半数を制し、民主党は2007年の前回下院(定数480)選の165を下回る159議席と惨敗。アピシットは敗戦の責任を取り、選挙翌日に党首辞任を発表。しかし、党の重鎮らもアピシットを推す考えを明らかにしていたことから、党大会ではアピシット1人が推薦を受け、党幹部330人の96%の支持を受け、再選。民主党はアピシット体制で4年後の政権交代を目指すが、先行きは厳しい。南部の地盤は磐石で、クルングテープでも優勢を保っているが、選挙の鍵を握る東北部、北部ではタクシン派に全く歯が立たない。反タクシン派特権階級の後押しを受けているという党のイメージから、特権階級への反発を強める東北部、北部で支持を広げる可能性は低く、政権奪回にはタクシン派の失政・分裂、もしくは2006年の軍事クーデター、2008年の「司法クーデター」のようなウルトラCが必要。 |
08月07日(日) | タクシン派政党プア・タイ党は、「05日に下院で首相指名を受けたインラック・チナワット(44)が08日にプミポン国王の承認を受け正式に首相に就任する。」と発表。インラックの首相就任については、アピシット首相(47)が06日、「国王による承認が私のときも首相指名と同じ日ではなかった。」と、プア・タイ党に対し、「誤解を招くような噂を流さないよう支持者に言うべきだ。」と話した。 |
プア・タイ党のプロムポン報道担当は、「プア・タイ党が09日にも承認を受けるために閣僚名簿を提出する。」との見通し。「すでにプア・タイ党の要請を受け、内閣官房が閣僚候補のチェックを始めている。」という。プロムポンによれば、「新政権は体裁が整った状態で12日の王妃陛下誕生日を祝わなければならないため、それまでに内閣を発足させる必要がある。」とのこと。
なお、関係筋によれば、「閣僚人事はほぼ纏まっているものの、ぎりぎりの段階で変更される可能性もあることから、未だに水面下で活発な駆け引き・根回しが繰り広げられている。」 |
08月08日(月) | プア・タイ党が「クルングテープを洪水から守るため」との理由でクルングテープ都バンクンティエン区で4万8000haに及ぶ海の埋め立てを行うとの選挙公約を掲げていたが、スクムパン都知事(民主党所属)は、都知事の権限を使ってこれを阻止する考えを明らかに。「埋め立てには1000億B以上が必要とみられるが、これほど巨額の予算を投じずに効果的な洪水対策を実施することは可能。」という。
このほか、スクムパン都知事は、1日当たり最低賃金を300B、大卒者の初任給を1万5000Bに引き上げるとのプア・タイ党の選挙公約にも反対する意向も明らかに。
都庁の年間予算は現在600億Bあまり。都庁は人件費を予算全体の40%までとしているが、すでに39%に達している。最低賃金と初任給が引き上げられれば、都庁が深刻な財政難に陥るのは必至。 |
アピシット民主党党首(前首相)は、プリアオパン警察大将を警察庁長官に据えるため、ウィチアン現長官が更迭されるとの見方があることについて、「警察のトップとしてしっかり職務を遂行してきた。彼を外すというなら、それなりの理由がなければならない。」と述べ、長官の交代に反対する考えを明らかに。プリアオパンは、タクシンの元妻ポチャマンの兄。
なお、インラック首相(プア・タイ党)は、「政府職員の人事についてはまだなにも考えていない。」と述べ、「今のところ警察庁長官交代の計画はない。」としている。 |
18時過ぎ | 総選挙で大勝したプア・タイ党の比例選名簿1位インラック・チナワット下院議員(44)が、05日の議会の議決による指名に伴い、国王により第28代首相に任命。国王が首相就任を承認した旨は、プア・タイ党本部でパイトゥン下院官房事務局長からインラックに伝えられた。女性がタイの首相に就任するのは初めて。インラク氏は政治経験がほとんどなく、兄で国外逃亡中のタクシン・チナワット(62)がリモートコントロールで国政を操る見通し。
インラックは任命を受けた後、クルングテープ都内のプア・タイ党本部で記者会見を開き、「王室に対し繰り返し忠誠を誓い、タクシン派と反タクシン派に分断された国民の和解に努める。」と強調。今年12月のプミポン国王の84歳の誕生日に言及した際には、「80回目の誕生日」と言い間違えたが、落ち着いて言い直した。閣僚名簿は一両日中に国王に提出する予定。
インラックは9人兄弟の末っ子で、チエンマイ大学政治・行政学部卒。米ケンタッキー州立大学で経営学修士号を取得後、兄のタクシンが創業したタイ携帯電話サービス最大手アドバンスド・インフォ・サービス(AIS)、チナワット財閥の不動産会社SCアセットなどの経営幹部を務めた。事実婚で子供が1人いる。過去数年、タクシン派政党の議員候補の応援演説をこなしてきたが、これまで国会議員になったことも、行政に携わった経験もない。しかし、2008年に汚職で有罪判決を受け国外逃亡中のタクシンはインラックを「自分のクローン」と呼び、07月03日の下院総選挙を前に、プア・タイ党の比例代表1位に抜擢。インラックは選挙戦でタクシン譲りのカリスマ性を見せ旋風を巻き起こし、プア・タイ党は総選挙で過半数を獲得、政権与党の民主党を大差で破り、政権に復帰。
タイでは過去数年、特権階級を中心とする反タクシン派と、地方住民、中低所得者層が多いタクシン派の政治抗争が続いている。タクシン派は2001年、2005年、2007年、2011年と総選挙で4連勝中だが、2006年には軍事クーデター、2008年には「司法クーデター」と呼ばれた裁判所によるタクシン派与党解党で政権を失った。また、タクシン派政権当時の2008年には反タクシン派の市民が首相府や2空港を占拠。反タクシン派政権の2010年にはタクシン派が都心部を長期占拠し、治安部隊との衝突で91人が死亡、1400人以上が負傷。 |
08月09日(火)朝 | 08日に就任したインラック新首相は、クルングテープ都内のプア・タイ党本部でユー・オイ駐タイ・カンボジア大使と会談。大使は首相就任を祝うカンボジアのフン・セン首相とホー・ナムホン副首相兼外相からの書簡をインラック首相に手渡し、国境紛争で険悪化した両国の関係改善に意欲を示した。一方のインラック首相は就任後初の外国の要人との公式会談にカンボジア大使を選んだことで、カンボジアに誠意を見せた格好。首相と大使はともに女性で、会談は和やかな雰囲気の中、行われた。
フン・セン首相は2008年末に発足した反タクシン派のタイ・アピシット政権と激しく対立。国境未画定地域をめぐり武力衝突を繰り返し、今年02月、04月には交戦により双方の兵士、住民ら30人近くが死亡。インラック首相の兄のタクシンはフン・セン首相と関係が良好で、両国関係は改善に向かうと期待されている。
インラック首相は09日、カンボジアのほか、インドネシア、アルゼンチン、ブラジル、ペルー、メキシコ、チリ、パナマの大使と会談。 |
| 経営破綻したドイツの建設会社ウォルターバウに対するタイ政府の賠償金不払いにより、ミュンヘン空港に駐機していたワチラロンコン・タイ王太子の専用機(ボーイング737型機)がドイツの裁判所命令で差し押さえられた問題で、アピシット前首相は、「賠償金の全額(利子、裁判費用を含む)に当たる3800万€をタイ国営クルンタイ銀行が「保証金」として支払い、王太子機の差し押さえが解除された。」と述べた。チャワノン前外相秘書官によれば、タイ政府が要求通りに3800万€(約16億B)を支払うことを約束したとのこと。賠償が済めば、専用機差し押さえの法的根拠が消失する。「賠償金に関する裁判は今後も続ける。」としているが、タイでは政権交代があったばかりで、先行きは不透明。
駐タイ、ドイツ大使館のウェブサイトに掲載された報道発表によると、ウォルターバウは1980年代に、クルングテープと郊外のドンムアン空港を結ぶ自動車専用道路ドンムアン・トールウェイの建設・運営に携わったが、タイ政府の度重なる契約違反で損失を被った。ウォルターバウの破産管財人は2005年、タイ政府に賠償金の支払いを求める国際仲裁手続きを開始し、2009年、タイ政府に3600万€の支払いを命じる最終判断が下った。しかしタイ政府は支払いに応じず、07月12日、ドイツの裁判所命令で、王太子機が差し押さえられた。
タイ政府は「差し押さえられた機はタイ空軍が王太子にプレゼントしたもので政府の所有物ではない。」と主張し、独裁判所が設定した差し押さえ解除の保証金2000万€の支払いを拒否。しかし、王太子が保証金を自費で支払う考えを示したため、今回の決着に至った。 |
夜 | タクシン(62)の妹のインラック(44)を首班とする新内閣の閣僚名簿がプミポン国王の承認を受け、インラック内閣が正式に誕生。新内閣は以下の通り。
首相インラック・チナワット。
副首相は5人。副首相プア・タイ党所属のベテラン政治家で法相、内相などを歴任したチャルーム・ユーバムルン(63)、副首相プア・タイ党枠の非議員で元警察長官のコーウィット・ワッタナー(64)、副首相兼内務相タクシン派政権与党プア・タイ党党首で元内務次官のヨンユット・ウィチャイディット(69)、副首相兼商務相はプア・タイ党枠の非議員で元タイ証券取引所(SET)所長のキティラット・ナ・ラノーン、副首相兼観光・スポーツ相は連立与党チャートタイ・パッタナー党党首のチュムポン・シラパアーチャー(71)。
首相府相はスラウィット・コンソムブーン、同クリッサナー・シーハラック、反タクシン派の軍との交渉役となる国防相は元国防次官のユッタサック・サシプラパー(74)、財務相はプア・タイ党枠の非議員で前タイ証券取引委員会事務局長のティラチャイ・プワナートナラーヌバーン(59)、副財務相ブンソン・テーリヤーピロム、同ウィルット・テーチャパイブーン、工業相は元医師で下院議員を5期務めたワンナラット・チャーヌクン(62)、外務相はプア・タイ党の北部閥幹部でタクシンに近いスラポン・トーウィチャックチャイクン(58)、社会開発・人間の安全保障相サンティ・プロムパット、農業・協同組合相ティラ・ウォンサムット、副農業・協同組合相ポンサック・チャルーンプラサート、運輸相は士官候補生学校でタクシンと同期だった元空軍司令官補スカムポン・スワンナタット(60)、副運輸相チャット・クンディロック、同キッティサック・ハッヤソンクロ、天然資源・環境相プリーチャー・レンソムブーンスック、情報通信技術相は元ジェット戦闘機パイロットで空軍大佐のアヌディット・ナーコンタッブ(46)、エネルギー相は実業家のピチャイ・ナリップタパン(49)、副商務相プーム・サーラポン、同シリワット・カチョーンプラサート、副内務相シューシャート・ハーンサワット、同ターニット・ティアントーン、法務相プラチャー・プロムノーク、労働相パダームチャイ・サソムサッブ、文化相スクモン・クンプルーム、科学技術相プロートプラソッブ・スラッサワディ、教育相ウォーラワット・ウアアピンヤクン、副教育相ブンルーン・シータレート、同スラポン・ウンアムポーンウィライ、保健相ウィッタヤー・ブロンシリ、副保健相トーポン・チャイヤサーン。
詳細は☞ http://www.newsclip.be/news/2011814_031754.html
新閣僚は10日17時30分から、国王が入院中のシリラート病院で執り行われる就任宣誓式に臨む。
一方、インラック首相は、「仕事のできる内閣」を目指すと述べていたが、一部の人選には関係者から疑問の声もあがっている。「外相に決まったスラポン、プア・タイ党副党首に関しては、下院外交委員会の委員長を務めたことはあるものの、外交手腕は未知数で、元外交官などを差し置いて選ばれたことに外務省幹部らは当惑している。」という。天然資源環境相を務めることになったプリチャー、プア・タイ党議員についても、環境問題などに関わったことがなく、適材適所とは言い難い。 |
08月10日(水)午後 | プミポン国王(83)は、インラック首相と就任宣誓式に臨んだ新閣僚36人に対し、「正直に職務に務め、国民のお手本となって欲しい。」、「世界には問題が山積しているが、タイを平穏で楽しく暮らせる国にして欲しい。」、「国民が平穏に暮らし続けられるよう職務を忠実に遂行してほしい。」と伝えた。宣誓式は国王が入院しているシリラート病院のチャルムプラキアット館14階のホールで執り行われた。また、国王は新閣僚を前に、「宣誓通りに職務を全うすれば、これが国家の発展、国民の幸福につながる。」と述べた。国王は体調を崩して2009年09月19日からシリラート病院に入院。今年05月には過剰な脳脊髄液を除去する手術を受けた。
就任宣誓式をもってインラック政権が正式に発足した。法律規定により15日以内に議会で所信表明演説を行う。 |
| カンボジアとの領有権争いが拗れたままとなっているが、ユタサク国防相は、「インラック首相とカンボジアのフン・セン首相が会談すれば、問題解決に向けた2国間協議を再開することができる。」との見通しを示した。インラック首相も「近隣国との関係改善が必要。」としており、近い将来に首相会談が実現すると見られている。
フン・セン首相はタクシンと親交があり、インラック首相とも仲が良いとされている。
関係筋によれば、「これまでカンボジアが歩み寄りを見せなかったのは、アピシット政権が反タクシン派だったため。カンボジアにはインラック政権に対して強硬姿勢を取る理由はない。」とのこと。 |
海軍は、13日の防空沿岸警備隊の設立記念日を前に、タイ東部チョンブリー県サタヒープの海軍基地で閲兵式。「13日が土曜日なため、10日に実施した。」と主張。
10日にはクルングテープでタクシン派新政権の閣僚就任宣誓式が行われた。タクシン政権が2006年の軍事クーデターで追放されて以来、反王室的な要素を含むタクシン派と王党派が幹部を占める軍は関係が悪く、今回の閲兵式も軍がタクシン派に警告したと取られかねない。 |
タイ憲法裁判所のチャット長官が10日付で辞任。チャットと憲法裁は理由を明らかにしていないが、タクシン派新政権の発足との関連を指摘する声もある。
憲法裁はタクシン派と反タクシン派の抗争が激化した2006年以降、タクシン派の政党を選挙違反で2度解党し、同派の首相2人を失職させた。一方、反タクシン派の民主党が裏口献金や政党交付金の使途違反で訴えられた裁判では、昨年11月と12月に、「公訴手続きにミスがあった。」として2件とも棄却し、「司法のダブルスタンダード(二重基準)。」として批判を浴びた。民主党の解党裁判を前にした昨年10月には、チャット長官の秘書のパシットと民主党国会議員が密談するビデオや、憲法裁判事とみられる男性2人とパシットが憲法裁職員の不正採用を隠す方法を話し合う内容のビデオが動画投稿サイトのユーチューブに投稿され、パシットは同月、解雇された。不正採用疑惑などに関する調査は行われず、当時の反タクシン派アピシット政権はこうしたビデオのタイからの閲覧を遮断。憲法裁の中立性への疑念が強まる中、タクシン派は今年07月の下院総選挙で過半数を制し、2008年末の同派政権与党の解党以来ほぼ2年半ぶりに政権に復帰。チャットが辞表を出した10日に新政権が発足。 |
08月11日(木) | 経済界からは、経済に精通した人々がインラック政権の経済閣僚に起用されたことを歓迎する声が出ているが、「これら経済通が協調して経済政策を実行に移せるか疑問。」といった意見も一部で出ている。タイ商工会議所のドゥシット会頭は、「経済閣僚はそれぞれ経験と実績があり、有能であることはわかる。しかし、さまざまな経済政策をバランスを取りながら実施できるかどうかは別の話で、3~6ケ月後に政策が軌道に乗っているかを見極める必要がある。」と指摘。また、タイ工業連盟のタニット副会長によれば、キティラット商業相は、証券取引のエキスパートだが、インフレ問題などにうまく対処できるかどうかは不明。 |
東京電力は、「東北関東日本大震災の影響で電力不足に陥ったことで、タイ発電公社(EGAT)より無償貸与された2台のガスタービンが運転を開始した。」と発表。「1997年より電気事業分野における交流覚書を締結しているEGATと当社との協力関係を踏まえ、同社より無償で貸与されたものとし、川崎火力発電所構内および、大井火力発電所構内に設置した。」 |
インラック政権下でカンボジアとの関係が一挙に改善する可能性が高いとされることについて、副外相を務めたことのあるスクムパン都知事(民主党所属)は、「国民が注目している。タイの国益を最優先に関係改善を進める必要がある。」と述べ、「国益と引き換えに両国の政権が利益を得ることがあってはならない。」との考えを示した。
関係筋によれば、反タクシン派は、「カンボジアのフン・セン首相がタクシンを支持する理由は、タクシン派の政治家らが国益より私利私欲を優先させる都合のよい相手であるため。」と見ており、スクムパン都知事の発言もこのような認識に基づいたものとみられる。
また、総選挙で民主党が敗れた原因について、スクムパン都知事は、「党幹部の考え方、発言のしかたがエリート的で、庶民と意思の疎通がうまくできていない。一般市民が何を考えているかよく理解できていない。」と指摘。 |
スラポン新外相は、駐タイ日本大使と会談し、この中で国外逃亡中のタクシンの日本入国を許可するよう求めた。タクシンは22~28日にかけ日本を訪れ、宮城県内の被災地を訪れるとともに、講義を行う意向と伝えられている。
日本の入国管理法では、懲役・禁固1年以上の有罪が確定した外国人の入国は原則禁止となっているが、例外規定もあり、スラポン外相はこの例外規定の適用を求めたものという。タクシンは在任中の職権乱用で禁固2年の有罪が確定。 |
08月14日(日) | 外務省情報局のターニー局長は、タクシンが22~28日に日本を訪問することを明らかに。東日本大震災の被災地を訪れるほか、講演を行う予定。国外逃亡中のタクシンは複数の外国政府から発給された旅券を所持しているが、ターニーは、「いつ、そして、どのような旅券を使って日本を入国する予定かはわからない。」としている。
一方、スラポン外相は、「タクシンが日本に入国できることになって嬉しい。入国許可は、日本当局が慎重に検討した結果だ。」と述べた。
タクシンは国外滞在中の2008年、首相在任中に当時の妻が競売で国有地を取得したことで汚職の実刑判決を受け、以来、タイに帰国していない。反タクシン派アピシット政権(2008~2011年)下でパスポートも取り上げられ、現在はモンテネグロなどのパスポートを使用。日本の入管法では原則として入国が認められないが、07月のタイ総選挙でタクシン派政党が勝利し、タクシンの妹のインラックが首相に就任したことから、日タイ関係を考慮した日本政府が入国を特別に許可する模様。
タイの首相は就任後、東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国を訪問し、その後、日本や支那を訪れるのが慣例。タイの「影の首相」であるタクシンの早期訪日はインラック政権と日本の関係構築にプラスに働く見通しだが、タイ国内の反タクシン派からは「タイと同じ立憲君主制の日本が(反タイ王室のイメージがある)タクシンの入国を認めるのは心外。」といった反発。 |
タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)が、インラック首相に対し、昨年の大規模反政府デモに関連して死亡した92人の遺族に対し、それぞれ1000万Bの賠償金を支払うよう求めている。UDD幹部のチャトポン、プア・タイ党議員によれば、「賠償をしっかり行うことが国民和解の実現にプラスであり、インラック首相も賠償に前向きな姿勢を見せている。」という。また、UDDの要求では、賠償は総額9億2000万バーツにのぼることになるが、チャトポンは、「前政権が兵士や警察官に付与した賠償金などは合計60億Bであり、これに比べれば多いとは言えない。」としている。 |
08月15日(月) | 枝野官房長官は、タイ政府の要請を受け、ドバイに滞在中のタイのタクシンに対し、在ドバイ総領事から査証(ビザ)を発給したことを認めた。タクシンは汚職で懲役2年の実刑判決を受け国外逃亡中で、日本の入管法では原則として入国が認められないが、「政府の公式な要請に基づいて対応するのは二国間関係として当然。」として、特別に入国を許可。
タイでは07月の下院総選挙でタクシン派政党が過半数を制し、タクシンの妹のインラックが首相に就任。
タクシンへの査証発給について、退陣したばかりのタイのアピシット前首相は、「査証を発給するしないは日本次第だが、タクシンは逃亡者であり、タイの当局者が(査証発給に)関与したとしたら問題だ。」と述べ、インラック政権を牽制。
タクシンの法律顧問、ノパドン元外相によれば、タクシンは日本政府が入国を許可したことを受け、08月22日から日本を訪問する予定。23日には東京の日本外国人特派員協会(FCCJ)で「タイにおける民主主義」について会見したあと、日本・中国・ASEAN経済文化研究会でビジネスマンらを前に講演。24日に多摩大学で地震と津波について講演した後、25~26日、東日本大震災の被災地を訪れることになっている。ノパドンによれば、タクシンはモンテネグロ発給の旅券で日本に入国する見通し。 |
タイ東部サケーウ県の有力一族、ティエントーン家が07月03日の下院総選挙後、県知事、県選管幹部らとともに日本を訪れたとする怪文書が出回り、選挙委員会が捜査に乗り出す見通し。ティエントーン家は下院選にタクシン派のプア・タイ党から出馬し、ベテラン政治家のサノ元内相ら一族の5人が当選。この怪文書によると、スラウォン・ティエントーン議員らティエントーン家の5人は07月30日発の便で日本に向かったが、同じ便にサケーウ県のサーニット知事夫妻、副知事、同県選管委員長、県内の複数の郡長らサケーウ県の関係者16人が搭乗していた。サーニット知事は、日本に行ったことを認めたが、個人的な視察のためと主張。ティエントーン家が選挙支援の見返りに県知事らを「慰安旅行」に連れて行ったという見方を否定。 |
タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)幹部のチャトポン、プア・タイ党議員らが昨年の大規模反政府デモの際に死亡した人々の遺族に対し犠牲者1人につき1000万Bの賠償金を支払うよう求めていることについて、ユタサク国防相は、「国民和解につなげたいのなら、政府は赤服(UDD関係者)だけでなく、黄服(反タクシン団体、民主主義市民連合(PAD)関係者)や兵士・警察官の遺族にも同様に賠償する必要がある。」と明言。
昨年04月~05月にかけての大規模デモでは民間人81人、治安要員11人の計92人が死亡。現政権はタクシン派であることから、「UDD関係者だけに手厚い賠償が行われる。」との見方も出ている。だが、ユタサク国防相は、「政府は、特定グループを優遇するのでなく、国家全体のためになることをすべき。」としている。
なお、大規模デモは「タクシンが黒幕」との見方もあり、最大野党の民主党からは、「UDDは政府でなく(税金で賠償するのでなく)、タクシンに賠償を求めるべき。」といった皮肉も出ている。 |
08月16日(火) | タイ東北部ウドンタニー県の裁判所は、昨年05月に同県庁を焼き打ちにするなどして逮捕されたタクシン支持派の市民22人の保釈を認めた。今年07月の下院総選挙でウドンタニー県から出馬し当選したタクシン派政党プア・タイ党の下院議員9人が保証人となり、1人100万Bの保釈保証金を積んだ。
タクシン派の弁護士によると、今回の保釈を受け、昨年から拘留されているタクシン派の容疑者は約110人。タイ字紙ポストトゥデイなどが報じた。 |
スラポン外相がタクシンの入国を許可するよう日本側に求めたことについて、最大野党・民主党のアピシット党首(前首相)は、「有罪が確定していながら国外逃亡を続け刑に服しようとしないタクシンのために政府が特別の配慮を払うことは間違っている。」として、外相を告発する考えを明らかに。
タクシンは在任中に妻ポチャマン(当時)の国有地購入において職権を乱用としたとして2008年に禁固2年の有罪が確定。
アピシット党首は、「インラック政権は、判決に基づき法に従ってタクシンを帰国、服役させることを求められている。」と訴えた。民主党では現在、法律専門家が外相などへの法的措置を検討している。 |
タイが世界遺産条約から脱退するとのタイ世界遺産委員会の決定について、閣議でスラポン外相に見直しが指示。タイ世界遺産委員会は先に、タイ・カンボジア国境の世界遺産カオ・プラウィハーン(プレアビヒア)などに関するカンボジアの提案へのユネスコ世界遺産委員会の対応を不満として、世界遺産条約から脱退すると表明。アピシット前政権は次の政権に判断を委ねていた。
スラポン外相は関係当局と協議し、その結果を次回の閣議に報告する予定で、これに基づき新政府が脱退するか否かを決めることになる。脱退表明の背景にあったのは、カンボジア政府と反タクシン派アピシット政権の対立であり、親カンボジアのタクシン派インラック政権が脱退を是認する可能性は低い。
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08月17日(水) | タクシンが19~21日にカンボジアを訪れ、同国のフン・セン首相らと会談。タクシンの妹のインラック首相が17日、認めた。タクシンはタイとカンボジアの国境紛争やタイ湾の天然ガス田開発についてフン・セン首相と話し合うと見られる。タイ・カンボジア関係はタイの反タクシン派前政権下で悪化したが、フン・セン首相と旧知の仲であるタクシン氏が事実上復権したことで、急速に回復する見通し。 |
「タクシンは国外逃亡中の犯罪人であるにもかかわらず、インラック政権にタクシンの名誉を回復するような動きが見られる。」として、最大野党・民主党のアピシット党首(前首相)は、「政府は国益を最優先する必要がある。」と警告。タクシン寄りの姿勢を改めるよう求めた。
また、タクシンがカンボジアを訪れ、タイ湾でのタイとカンボジアの石油・ガス共同開発について話し合うと報じられているが、これについても、アピシット党首は、「利害が衝突する(国益が損なわれる)ようなことがあってはならない。」と釘を刺した。
アピシット党首によれば、「石油・ガス開発に関しては、関係する政治家や企業の利益が優先されるとの見方が出ており、タイの保有する資産が私利私欲のために切り売りされる恐れがある。」とのこと。
なお、インラック首相は、タクシンのカンボジア訪問について、「個人的な旅行」と述べ、タクシンがタイ政府を代表してカンボジアと交渉するとの見方を否定。 |
タイ中央銀行は、クルングテープ都内ラチャダピセーク通り沿いの更地5.3haを競売にかけ、地場ディベロッパーのスパーライが18.2億Bで落札。スパーライはマンション、ショッピングモールなどを建設する計画。
落札された土地は1997年のアジア通貨危機後に差し押さえられたもので、2003年に1回目の競売が行われ、タクシン首相(当時)の妻のポチャマンはタクシン政権下の2003年に中銀の金融機関開発基金の競売で約5.3haの土地を7億2200万Bで取得。だが、これにタクシン首相(当時)の職権乱用があったとして、競売は無効とされ、タクシンは2008年に禁固2年の実刑判決を受けた。土地は2010年に裁判所命令でポチャマンからタイ中銀に返却された。タクシンは判決前に出国し、以来、タイに帰国していない。 |
08月18日(木) | 民主党は、日本政府からタクシンの訪日許可を得るため支援したのは憲法違反に当たるとして、スラポン外務相の辞任を求め、党内議員など下院議員125人の署名集めを開始。民主党は22日にも罷免請求を下院議員125人以上の署名とともに、タイ国家汚職防止委員会に訴え調査されることになる。
民主党ニピットは、「汚職防止法違反で実刑判決が確定している犯罪者のタクシンを、外相が日本政府に働きかけることは外相の権限を行使した公務であり、『閣僚は議会で政策綱領を発表したあとに公務を始める。』との憲法176条に違反する。」と語っている。
民主党は、タクシンの日本訪問に関連して、外相がタクシンの身柄拘束・本国送還・収監に向けた手続きを怠ったとして、外相を警察に訴える手続きを取った。
ニピットは、「タクシンは禁固2年の有罪が確定した犯罪人であり、タクシンが日本を訪問することがわかっているなら、外相はタクシンの身柄を拘束して帰国させ刑に服させるべく関係当局と調整しなければならない。」と訴えている。 |
在タイ日本大使館では、タクシンの東日本大震災被災地訪問に反対するグループが同大使館前で抗議行動を予定しているとして、在タイ日本人の来館予定者に注意を喚起。
日本大使館によれば、タクシンの訪日に反対するタイ人グループが19日(金)(時間未定)に日本大使館前に集合し、タクシンに査証(ビザ)を発給した日本政府に対する抗議行動を行うべくフェースブック上で賛同者を募っている。現時点で、抗議行動の内容・規模(人数)などは判明していないが、抗議行動賛同者の数が多くなれば、交通混乱などが予想されるとして、19日に来館を予定している者は、周辺状況に十分注意を払うよう警告。 |
タクシンに日本政府が査証(ビザ)を発給したことに対し、タイ国内の反タクシン派が反発を強めている。18日には反タクシン派の市民団体メンバー数十人が在タイ日本大使館前に集まり、査証発給に抗議する書簡を大使館職員に手渡した。このグループは同日午後、タイ情報通信技術省を訪れ、タイ王室を批判するウェブサイトの取り締まり強化を求めた。
一方、07月の下院総選挙で政権をタクシン派に明け渡した野党民主党は、犯罪者であるタクシンへの査証発給を日本政府に働きかけたとして、スラポン外相を警察に告発。スラポン外相は就任翌日の11日、小島誠二駐タイ大使と会談し、タクシンへのビザ発給を要請。
こうした動きについて、タイ政界筋は「各国が入国を許可したという既成事実を積み上げ、帰国へ繋げる狙いがある。」と分析。一方、アピシット前首相は「タクシンは逃亡者であり、タイ当局がビサ発給に関与したのであれば問題だ。」と批判。
タクシンは汚職で懲役2年の実刑判決を受け国外逃亡中で、日本の入管法では原則として入国が認められないが、日本政府は「タイ政府から要請があった。」(枝野官房長官)として、特別に入国を許可した。タクシンは22~28日に日本を訪問し、東日本大震災の被災地を訪れるほか、講演を行う予定。 インラック政権は、国民和解を最優先課題のひとつにあげているが、外相などは早くもタクシン寄りの動きを見せており、今後の閣僚の言動しだいでは反タクシン派が政府批判を強め、抗議行動を展開することも予測されている。 |
タクシンの法律顧問のノパドン元外相は、タクシンが19~21日にカンボジアを訪れるという報道を否定。タクシンと電話で話し、カンボジアを訪れる予定がないことを確認したという。 |
キティラット副首相兼商業相は、1日当たり最低賃金を一律300Bとする政策は、強制力を持たない指導などに止める考えを明らかに。この賃上げは、政権党プア・タイ党が政権公約として掲げていたもの。
だが、経済界を中心に、企業経営が成り立たなくなるといった強い批判意見が出ており、政府も見直しの姿勢を見せざるを得なくなった。 |
08月19日(金)15時頃 | タクシン派団体の反独裁民主主義同盟(UDD)の一部がラーチャプラソン交差点で集会を開始。今回の集会は前政権によるデモ隊の強制排除事件から15ケ月を記念したものだとし、午後12時までに解散する予定。これに対し首都圏警察は約300人を動員し、警備。 |
| インラック首相は、政府庁舎内のプレスセンターを訪れた際、「マスコミの質問に毎日答える必要はないと思う。大きな問題や事件が起きないかぎり、質問に答えるのは週2回で良いだろう。」と述べた。「担当閣僚が毎日具体的な説明をしており、首相が頻繁に質問に答える必要はない。」とのこと。
なお、インラックは、外相がタクシン寄りの言動を見せていることなどから、タクシンについて質問攻めにあっており、関係筋は、「報道陣を遠ざけたいのが本音。」 |
タクシンの日本入国が例外的に認められたことで、民主党が「スラポン外相に憲法違反があった。」と主張している問題で、プア・タイ党のプロムポン報道担当は、「入国許可は日本当局の判断によるもの。スラポン外相はまったく無関係。」と述べ、民主党幹部らに法的措置を取る考えを明らかに。
「国外逃亡中の犯罪人であるタクシンの日本入国については、スラポン外相が先に在タイ日本大使を通じて日本に要請したことから、許可された。」と報じられている。これに基づいて、民主党は外相の責任を追及しようとしているが、プロムポンは、「民主党の主張は虚偽であり、根拠がない。」としている。 |
08月21日(日) | インラック首相は、「プレム枢密院議長の誕生日に議長に直接会って祝意を伝えたい。」と述べた。26日に92歳になる同議長(元首相、元陸軍司令官)は、反タクシンで知られており、タクシン派からは、2006年の軍事クーデターの黒幕と非難されている。しかし、軍部などには依然として強い影響力があり、インラック首相も「議長と敵対していると見られるのは得策でない。」と考えているようだ。なお、議長に近い筋によれば、「インラックが訪ねてくれば会う可能性はある。」という。 |
08月22日(月) | 08月23日と24日の両日、政府が議会で政策綱領を発表し、今後これに関する質疑応答が予定されているが、与党院内総務は、政策綱領発表について協議し、野党議員がタクシンに関する問題を取り上げるのを禁止するよう国会議長に要請することで意見が一致。与党の筆頭院内総務代行のウィタヤ保健相によれば、「タクシンの件は政策綱領とは関係がなく、野党議員は質疑の中でタクシンに言及すべきではない。」という。
関係筋によれば、スラポン外相が就任早々に日本にタクシンの入国許可を要請したとされることから、反タクシン派の最大野党・民主党などが批判を始めている。
政府首脳らは、この問題によって「タクシンの方を向いた政権」とのイメージが強まるのを避けたいと考えているようで、このため、「タクシン関連発言の禁止」を要請したもの。 |
スラポン外相が、タクシンの日本入国を日本に要請した事実はなく、この件で批判を受けて名誉を傷つけられたとして、都内パヤタイ署で最大野党・民主党のアピシット党首ら4人を告訴する手続きを取った。報道では、外相は駐タイ日本大使を通じて入国許可を要請したとされる。また、日本政府も「タイ政府の要請で元首相の入国を特例として許可した。」と発表。
これについて、アピシット党首は、「外相が入国許可要請に関与していないというのなら、日本政府の発表は虚偽ということになる。なぜ外相は日本に抗議しないのか。」と反論。 |
午後 | タクシンが自家用機で羽田空港に来日。タクシンは記者団に対し「日本に来ることができてとても嬉しい。滞在中はいくつか講演を行い、震災の被災地を視察する。」と述べた。東日本大震災の復興支援が主な目的で、宮城県の被災地を訪問する予定。汚職事件で実刑判決を受けたタクシンは日本の入管難民法では懲役または禁固1年以上の判決を受けた外国人の入国は入国禁止対象者に該当するが、タクシン自ら「わたしのクローン」と呼ぶインラック新政権の要請を受け、日本政府は、特別に入国を許可した。来日は2008年08月以来、約3年ぶり。
タイ情勢に詳しい東南アジア研究所(ISEAS、シンガポール)のパビン・チャチャバルポンプンは、来日についてタクシンが、自分こそ「事実上の首相」だと世界に示す狙いがあると見る。ただ、タクシンの「行動は速すぎる」ため、タイ国内の「エリート層と軍部の反撃に遭うだろう。」と、分析。チュラロンコーン大学のティティナン・ポングスディラック(政治学)は、「タクシンが表舞台に舞い戻ろうと急ぐのは挑発的であり、もし妹にチャンスを与えたいと思っているなら賢明なやり方ではない。」と指摘。パヤップ大学のポール・チャンバースは、「タクシンの訪日をインラックが進んで支援したと見える点が、野党の政府批判の格好の材料になっている。」と言う。
タクシンは2006年の軍事クーデターで失脚後、汚職防止法違反罪で禁錮2年の判決が確定。しかし服役を拒み、アラブ首長国連邦のドバイを拠点に事実上の逃亡生活。タクシンは28日まで滞在。東京で講演や与野党議員、経済界関係者らと会う。 |
08月23日(火) | 今月08日に就任したインラック首相の施政方針演説が国会で行われた。国会議事堂の周りにはタクシン派団体、反独裁民主主義同盟(UDD)の支持者約100人が集まり、タクシンの妹であるインラックに声援を送った。支持者はタクシン派のトレードマークである赤服で、中の1人はインラックの仇名「プー(蟹)」にちなんで蟹のコスチュームで登場。
国会前にはタクシン派のほか、動物愛護団体のメンバー約10人が姿を見せ、犬肉の食用を法律で禁止するよう訴えた。 |
インラック首相が議会で施政方針演説を行ったのを受け、最大野党の民主党のアピシット党首(前首相)は、「政治不信を払拭するためにも政府は国民に約束した政策を誠実に実行する必要がある。」と指摘。「政治家は『約束を守らない。』と国民から批判されている。国民が政府を信用しなくなれば、民主主義も揺らぐことになる。」と述べた。 |
インラック政権は、施政方針演説の中で現行憲法の改正などを最優先課題としていることを明らかに。
改憲は1997年憲法を手本に進められる予定で、まず291条を改正するという。同条の改正で暫定憲法下での軍事暫定政権の施政などを正当化している309条を削除することが可能になる。だが、この改正により、タクシンが汚職の罪に問われたことが無効とされ、免罪となる可能性があることから、早くも「タクシンを助けることが狙い。」といった批判が出ている。
なお、2006年09月にクーデターでタクシン政権を倒した軍部は、1997年憲法(1997年に制定)を廃止し、暫定憲法を制定。間もなく軍事暫定政権のもとで現行の2007年憲法が制定された。1997年憲法は、当初は「非常に民主的」と高い評価を受けていたが、2大政党制を念頭に置いた制度改正などがタイ・ラック・タイ党による「議会制独裁」を招いたなどと批判を浴びるようになった。このため、軍部はクーデター後に直ちに1997年憲法を廃止。一方、1997年憲法の復活を望んでいるタクシン派は、「2007年憲法にはタクシン派つぶしの仕掛けが組み込まれている。」などと批判しており、インラック政権は1997年憲法を手本に2007年憲法を改正することにしたもの。 |
中央選挙管理委員会は、野党プームチャイ・タイ党副党首のブンチョン議員の公民権5年停止を最高裁判所に求めることを決めた。これは、昨年12月12日にナコンラチャーシーマ県で実施された下院補欠選挙に立候補していた同議員が、投票日前に宴会を開いて有権者をもてなし、公職選挙法に抵触したというもの。プームチャイ・タイ党は、前政権で民主党に次ぐ議員数を有していた中堅政党。 |
08月24日(水) | 株譲渡に絡む脱税の罪で禁固3年の有罪判決を受けていたタクシンの元夫人であるポチャマン・ナ・ポンペットに対し、タイ高等裁判所は「納税の義務はなく脱税もなかった。」として無罪。
ポチャマンは1997年、タクシンが創業したタイ通信大手シンの株式7.4億B相当を「結婚祝い」としてバナポットに無償譲渡。国税局は当時、「贈り物なので納税の必要はない。」という判断を下したが、2006年のクーデターでタクシン政権を追放した軍部が再調査を実施し、2007年に検察が脱税として起訴。2008年の1審判決では、「意図的で悪質な脱税」として、ポチャマンとバナポットに懲役3年、ポチャマンの個人秘書のカーンチャナパー・ホーンフーンに懲役2年の実刑判決が下り、3人が控訴していた。控訴裁はポチャマンとカーンチャナパーについては証拠不十分で無罪とし、バナポットに関しては犯罪歴がなく多額の寄付をしているなどの理由で執行猶予付に減刑。
ポチャマンは政争の様々な局面で冷静かつ大胆な強心臓ぶりを見せ、一部にはタクシンを上回るやり手という評価もある。2審判決には3人の子供とともに出廷し、判決後も、いつものように冷静さを崩さなかった。タクシンとポチャマンは2008年に離婚したが、政敵の注意をポチャマンから逸らし、一族の資産を守るための措置という見方が強い。 |
クルングテープ都庁がオーストリア企業から割高な消防車・消防艇を購入せざるを得なくなった問題で、最高裁判所は、「アピラック元都知事(民主党副党首)らにも責任がある。」とする国家汚職制圧委員会(NACC)の訴えを受理。
購入契約は2004年、サマック都知事(当時)が任期満了直前に承認。しかし、その後、タイ製の車両・船舶を外国で改造し輸入することが判明。後任のアピラック都知事(当時)は、「内務省などに掛け合ったが、突っぱねられ、結局購入に必要な信用状を発行することになった。」と説明。
検察は昨年、アピラックなどを不起訴処分としたが、NACCがこれを不服として起訴に踏み切った。なお、通常は、NACCが送検し、検察が起訴という手続きがとられるが、NACCも起訴権を有しており、単独で起訴することも可能。 |
施政方針演説2日目、野党陣営からは「美辞麗句ばかり」など厳しい批判が続出。最大野党の民主党のサティット議員は、「施政方針には、貧しい人々のことが触れられていない。プア・タイ党は選挙公約を守っていない。」などと指摘。これに対して、プア・タイ党幹部は、「これから具体的な準備に入る。」などと反論。
また、政府がタクシンへの言及を禁止するよう求めていたことから、ソムサック下院議長が民主党議員らの発言を制限しようとし、これが野党の強い反発を招くという一幕もあった。
なお、インラック首相が議場にいたのは午前09時半までの15分あまり。野党の質疑・批判には、プア・タイ党幹部のチャルーム副首相が首相の代わりに対応。 |
昨年05月にタイ東北部ウボンラチャタニー県でタクシン支持派が暴動を起こし、県庁が放火で全焼した事件の判決公判が、ウボンラチャタニー県裁判所であり、被告21人のうち12人に懲役8ケ月から34年の実刑判決。9人は証拠不十分で無罪。
タクシン派は昨年04、05月、反タクシン派アピシット政権の退陣を求めクルングテープ都心部を占拠し、治安部隊との衝突で、デモ参加者、兵士、ロイター通信カメラマンの村本博之ら91人が死亡、1400人以上が負傷し、都内のショッピングセンター、銀行などビル数棟が放火され炎上。これに呼応し、タクシン派が優勢な東北部、北部の都市で暴動が起きた。 |
08月25日(木) | ユタサック国防相(元国防省次官)とプラユット陸軍司令官ら軍・警察の幹部は、タイ国王の諮問機関である枢密院の議長、プレーム・ティンスラーノン(元首相、元陸軍司令官)のクルングテープ都内の私邸を訪ね、翌26日に91歳となるプレーム議長に祝辞を述べた。プレーム議長は例年、私邸をメディアにも公開して祝賀を受けるが、今年は軍・警察の幹部だけを招き入れた。公開された写真によると、議長はユタサック国防相の祝辞を受けた際に拳を軽く握り、強い視線を国防相に向けていた。ユタサック国防相はプレーム邸訪問後、議長から「国王夫妻と王室の守護に全力を尽くせとだけ言われた。」と述べた。
プレーム議長はプミポン国王の代理人的な立場で、政財官界に極めて強い影響力を持つ。誕生日前日には毎年、現役の軍・警察の最高幹部が祝賀に訪れることから、「軍の最終的な人事権はプレーム議長が握っている。」という見方がある。反タクシン派の前政権では年末年始やタイ正月に、当時のアピシット首相が閣僚を連れプレーム邸を訪れ、祝賀の挨拶を行っていた。タイでは今年07月の下院総選挙でタクシン派が過半数を制し政権に復帰した。タクシン派の多くはプレーム議長を反タクシン派の黒幕と見做し、一方の議長は反王室的な要素を含むタクシン派に対し警戒感を隠さず、両者は鋭く対立している。 |
08月23日の施政方針演説で、野党ラック・プラテート・タイ党のチューウィット党首が違法カジノの存在、および娯楽施設のトイレで半ば公然と違法薬物が売買されていることを暴露したのを受け、警察当局は、事実関係解明のため、職務怠慢があったとされるクルングテープ都内の警察署長など警察幹部6人を30日間、閑職に異動する措置。
チューウィット党首は下院会議場で、大勢の客でごった返すカジノの様子や、娯楽施設のトイレで違法薬物売買を隠し撮りした映像を示し、違法行為が罷り通っていることを指摘。違法カジノは公然の秘密とも言えるものだが、チューウィット党首は、「警察幹部所有のカジノもある。」と指摘。また、政府汚職対策委員会(PACC)のアムポン事務局長もこれを「事実」としている。 |
23日から25日にかけて発表されたプア・タイ党政権の施政方針に対して、野党は「選挙公約違反」などと厳しい批判を浴びせたが、インラック首相は、「国民に選ばれた政府が国民に不誠実であるはずがない。われわれは約束を実行する。」と明言し、3日間に及んだ施政方針演説を締めくくった。施政方針演説および質疑応答は、当初23日と24日の2日間の予定だったが、時間が足りず1日延長された。 |
最大野党の民主党は、「スラポン外相に憲法違反があった。」として、その罷免を求める文書を同党議員130人の署名を添えて上院議長に提出。憲法規定により、罷免請求には下院議員125人以上の署名が必要とされている。
民主党は、「憲法167条には、『閣僚は、宣誓式、施政方針演説終了後に公務を始める。』と規定されている。しかし、スラポン外相はそれ以前に、外相の権限を行使し、犯罪人であるタクシンの日本入国を許可するよう日本側に要請した。」と訴えている。
上院は30日以内に、署名を確認し、問題がなければ国家汚職制圧委員会(NACC)に捜査を要請。この捜査でクロと判断された場合には、罷免に向けた法的手続きが取られることになる。 |
08月28日(日) | タイ政府広報局によると、22日から日本に滞在していたタクシン(62)が訪問を終え、出国。マカオ経由で自宅があるドバイに向かう予定。タクシンの訪日はタイのタクシン派新政権の日本重視の姿勢をアピールする狙いがあったとみられるが、タイ国内では様々な波紋を呼んだ。
タクシンは2006年の軍事クーデターで失脚、国外滞在中の2008年に汚職で懲役2年の実刑判決を受け、以来、タイに帰国していない。日本の入管法では原則として入国が認められないが、タイのタクシン派新政権から要請を受けた日本政府がタクシンの入国を特別に許可した。
タクシンは日本滞在中、東日本大震災の被災地を視察し、義援金を贈ったほか、村井嘉浩宮城県知事らと会談。また、東京で自見庄三郎金融・郵政担当相や与野党の国会議員らと会談。
反タクシン派の前政権はタクシンを犯罪者として各国政府に身柄引き渡しを要求したが、タイと同じ東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国のブルネイ、カンボジアなどがタクシンの入国を認めるなど、なかなか協力を得られなかった。こうした中、タクシン派は今年07月の下院総選挙で過半数を制し政権に復帰、タクシンの妹のインラック(44)が首相、遠縁のスラポンが外相に就任し、タクシンは実質的な政権の最高実力者に返り咲いた。
タイの首相は就任後、ASEAN諸国を訪問し、その後、日本や支那を訪れるのが慣例。タクシンはクーデター後のタクシンに対する日本の対応に強い不満を抱いていたとされるが、新政権発足直後に「影の首相」であるタクシンが日本を訪れたことで、インラック政権と日本の関係構築に前向きなシグナルを送った格好。
一方、タイ国内の反タクシン派はタクシンの訪日に強く反発。18日には反タクシンの王党派市民団体メンバー数十人がクルングテープの在タイ日本大使館前に集まり、タクシンに対する査証(ビザ)発給に抗議。ビザ発給をめぐっては、枝野官房長官が「タイ政府の要請を受けた。」と述べた一方、インラック首相は日本政府への働きかけを否定。スラポン外相は「日本に要請した。」と述べた後、前言を翻し、反タクシン派が多いタイのメディア関係者の間では、嘘を言っているのは日本かタイかと話題になった。前政権与党のタイ民主党は「ビザを出す出さないは日本の権利。」と対日関係に配慮しつつ、犯罪者であるタクシンに対するビザ発給を日本政府に働きかけたとして、スラポン外相の弾劾手続きを開始。 |
施政方針演説の国会討論の中で野党ラック・プラテート・タイ党のチューウィット党首が違法カジノの存在などを暴露した問題で、警察庁が設置した調査委員会は、「都内スティサン区にカジノがあったのは事実と考えられるものの、今はもう存在しない。」と説明。チューウィット党首はカジノ内部の隠し撮りとされる動画を見せて、警察の怠慢を批判したが、警察当局は当初、「賭博場はない。」と主張。しかし、「その直後にギャンブル用のテーブルやマシンが運び去られた。」との見方が支配的。なお、違法カジノは国内各地にあるとされ、クルングテープだけでも相当数に上ると見られている。 |
政権党のプア・タイ党の広報担当プロムポンは、「タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)幹部らの政治任用職への起用が30日に閣議で検討される。」と発表。UDD関係者はすでに10人が政治任用職に就任しており、さらなる起用で政府への批判がいっそう強まることは必至。
最大野党・民主党のワロン議員は、「プア・タイ党は、総選挙での働きに対し、褒美としてUDD関係者を政治任用職に就けようとしている。このような起用は適切とは言い難い。」と批判。このほか、私立シーパトゥム大学政治観測センターのソムチャイ所長も、「UDD関係者を多く起用することは、プア・タイ党にとってマイナス。能力や実績に基づかないものであり、党は信頼を失いかねない。インラック首相には見直しを求めたい。」と述べた。 |
08月29日(月) | 最大野党の民主党のアピシット党首(前首相)は、政治関連犯の免罪が憲法改正の目的との疑いがあることから、政府に対し、施政方針演説で示した約束通りに改憲を進めるようあらためて要求。
先に憲法291条の改正を提案した政権党のプア・タイ党は、改憲プロセスを改善することだけが目的と説明。しかし、この改正により、2006年09月の軍事クーデター後に樹立した軍事暫定政権下の捜査なども無効となるため、複数の有識者からは、タクシン元首相らの免罪が目的との見方が出ている。このため、アピシット党首は、「民主党は、憲法改正と改憲プロセスを詳しくチェックしてゆく。」としている。なお、改憲については、世論調査などでも、「国民生活にかかわるものではない。政府は先にやるべきことがほかにあるはず。」といった否定的な意見が多数を占める。 |
チューウィット、ラック・プラテート・タイ党党首が違法カジノの存在などを暴露したことを受け、政権党プア・タイ党幹部のチャルーム副首相は、「クルングテープ都内の違法カジノ42ケ所を摘発・閉鎖する。」と明言。
チャルーム副首相は、「警察には任せておけない。」との姿勢を示し、プリアオパン警察大将を警察長官に据えるべく、ウィチアン現長官に引責辞任を迫ったものとの見方が出ている。プリアオパンはタクシンの元夫人であるポチャマンの弟。
だが、関係筋によれば、違法カジノ撲滅を宣言したあと、チャルーム副首相はインラック首相と会って警察長官などの入れ替えを進言したものの、「政府はすでにいくつもの問題に直面している。しばらくは波風を立てないでほしい。」と断られた。 |
08月30日(火) | タイのインラック首相は、野田新首相に祝電を送り、「出来るだけ早い機会に会談したい。」という意向を伝えた。また、日タイ関係は非常に緊密、友好的、かつ強固だとして、東南アジア諸国連合(ASEAN)の統合、メコン川流域の開発などで日本に協力を求めた。
タイでは07月の下院総選挙でタクシン派が過半数を制して政権を奪還し、タクシンの妹のインラックが首相に就任。タイの首相は就任後、ASEAN諸国を訪問し、その後、日本を訪れることが多いが、支那の影響も強まっていることから、インラック首相のASEAN以外の初の訪問先が注目される。タクシンは2006年の軍事クーデターで失脚、国外滞在中の2008年に汚職で懲役2年の実刑判決を受け、以来、タイに帰国していない。日本の入管法では原則として入国が認められないが、タクシンとタイ新政権の要請を受けた日本が特別に入国を許可し、08月22~28日に日本を訪問した。タクシンの訪日はインラック政権の日本重視の姿勢をアピールする狙い。タイ国内では波紋を呼び、反タクシン派市民が在タイ日本大使館前で小規模な抗議集会を開いたほか、「犯罪者であるタクシンに対するビザ発給を日本政府に働きかけた。」として、野党が外相の弾劾手続きを開始した。 |
閣議で、新たにタクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)幹部7人を大臣顧問などに起用することを決定。関係筋によれば、「『UDDは過激。』とのイメージがあることから、インラック政権はUDD関係者を閣僚に起用しなかったが、これにUDDから不満が続出したことで、幹部を政治任用職に採用することにした。」という。ティティマ政府報道官は、「UDDを政治システムに参加させることで、UDDは街頭デモをする必要がなくなる。草の根レベルの意見を汲み上げることも可能になる。」と説明。 |
警察を管轄する立場にあるチャルーム副首相は、「ウィチアン警察長官は就任してほぼ1年になるが、国内のいたるところに違法カジノが存在する。適材適所を実現すべく7日以内に警察を手直ししなければならない。」と述べ、他の省庁に異動になる公算が強まっている。タクシン派の新政権は都内に数十ケ所存在するとされる違法賭博場について、警察幹部の関与の調査に乗り出しており、ウィチアン長官は監督責任を問われる見通し。
警察トップの入れ替えにインラック首相は慎重な姿勢を見せていると報じられていたが、チャルーム副首相は、「カジノ問題がウィチアン長官のせいとは言わない。だが、誰かが責任をとらなければならない。」と、長官交代は不可避としている。
一方、「長官更迭は、タクシンの元夫人であるポチャマンの弟、プリアオパン副警察長官を長官に昇進させることが狙い。」との見方も強く、最大野党の主党のアピシット党首は、「警察人事を政治的に利用することがあってはならない。政権交代に連動して、長官を交代させることがあってはならない。」と述べた。 |
都内のテレビ局「チャンネル7」の前に集まった赤服姿の約20人が、インラック首相とのインタビューで同局の女性リポーターに不適切な発言があったとして、局側に抗議書に提出。
同リポーターは先に、タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)のメンバー、赤服軍団に嫌がらせを受けたと警察に被害届を提出しており、これが抗議理由になった。赤服軍団は「クビにするよう求めたものではない。」としており、局側も「今のところリポーターを解雇する理由は見当たらない。」との見解を示した。
なお、UDD本部は、同グループの抗議について、「一部のメンバーの勝手な行動。UDDは関知していない。」としている。 |
08月31日(水) | 政権与党プア・タイ党が07月の下院選で選挙公約に掲げた最低賃金の1日300Bへの引き上げ(現行水準からの上げ幅36~89%)について、パドームチャイ労相はクルングテープ都、サムットプラカン県、サムットサコン県、パトゥムタニー県、ナコンパトム県、ノンタブリー県(現行の最低賃金215B)と南部プーケット(同221B)の7都県で来年01月から実施する方針。
最低賃金は物価などを考慮して都県別に設定されており、政権党のプア・タイ党は先の総選挙で「全国同時に一律300Bに引き上げる。」と公約していたが、経済界からは「企業の負担が大きすぎる。」と反発。労働省の賃上げ案は、09月半ばに賃金3者委員会で検討される予定。同案はまだ最終的なものでなく、10月に具体的内容が決められ、賃上げ実施は来年01月01日となる見通し。労働側はあくまで77都県全てでの実施を求め、政府を公約違反で追求する構え。政府は最低賃金引き上げについて様々な観測気球を打ち上げており、実際にどういった形で実施を図るのかは依然不透明。 |
タイの警察長官は過去数年、タクシン派と反タクシン派の政争で度々、更迭・左遷されてきた。ウィチアン長官もこうした政争に巻き込まれた形。ウィチアン長官は者会見で、政治圧力に強い不満を示したが、次官級ポストを提示された場合、異動に応じる考えを示唆。
関係筋によると、ウィチアン警察庁長官が辞任に同意した。観光スポーツ事務次官に就任する見通し。政権党のプア・タイ党は、違法カジノ問題の発覚に伴い、長官に辞任を迫っていたもので、これに屈した形。
同筋は、「タクシン派のプア・タイ党は以前から、タクシンの元妻ポチャマンの兄、プリアオパン副長官を長官に据えることを計画していた。総選挙の直後にウィチアン長官に事務次官ポストを提示して辞任を促したが、長官は首を縦に振らなかった。だが、違法カジノ問題で警察の責任が問われ、長官は圧力を突っぱねきれなくなったようだ。」と指摘。 |
タイとラオスを繋ぐタイ・ラオス友好橋からラオスに入ろうとした赤服軍団が、ラオスの入国管理当局に入国を拒否された。一行はタクシン支持団体、反独裁民主戦線(UDD)」の東北部ウドンタニー支部の責任者率いる約500人で、バス10台に分乗して観光目的でラオスに入ろうとしたものだが、全員が赤服姿だったことから、ラオスがトラブルを恐れて入国を許可しなかった。このため、急遽さまざまな色のTシャツを調達して着替えさせて、ようやく入国できた。 |
09月01日(木) | 警察を監督する立場にあるチャルーム副首相は、ウィチアエン警察庁長官が辞任の意向を固めたことを明らかに。
これで、タクシンの元夫人であるポチャマンの実兄プリアオパン副長官が数日中に長官に就任することが確実。タクシンは2008年11月にポチャマンと離婚したが、これは資産を守るための便宜上の離婚であり、ポチャマンやその親族は今もタクシンと太い繋がりがある。
インラック首相(タクシンの実妹)は、「タクシンの繋がりでなく、仕事ができるかどうかに注目してもらいたい。」と述べているが、批判が出るのは必至の状況。
ウィチアン長官は国家治安委員会(NSC)事務局長に就任する予定で、チャルーム副首相はその理由について、「ウィチアンの得意分野は企画であり、犯罪制圧はプリアオパンの方が適役。」としている。 |
前政権下でステープ副首相(当時)がカンボジアとタイ湾の大陸棚の石油・ガス開発について密談したとされる問題で、ティティマ政府報道官は、インラック首相が外務相に対し、事実関係を調査するよう指示したことを明らかに。
この「密談」は、カンボジア国家エネルギー機構が先に暴露したもの。それによると、同機構を監督する立場にある「ソク・アン副首相とステープが香港で会って密談をした。」という。しかし、ステープ民主党議員は、「カンボジアの求めに 応じてソク・アン副首相に会った。だが、密談した事実はない。」としている。しかし、会談の内容は明らかにしていない。
インラック首相によれば、「不適切な密談があったとしたら、タイ・カンボジア関係に悪影響を及ぼしかねない。このため、何が話し合われたかをはっきりさせる必要がある。」 |
09月02日(金) | タウィン国家治安委員会(NSC)事務局長は、ウィチアン警察長官の辞任に伴い、首相府の閑職への異動が内定したことに強い不満を示した。
チャルーム副首相はかねてより「前政権の治安対策(タクシン派対策)に深く関与したタウィン事務局長とはいっしょに仕事ができない。」と述べていたが、今回の人事は、タクシンの元夫人であるポチャマンの兄、プリアオパン警察副長官を長官に昇格させるため、ウィアン長官に辞任を強要。さらに、その後、もっともらしい名目を付けて、同長官をNSC事務局長ポストに据えることで、厄介者のタウィン事務局長を排除することにしたとの見方が支配的。
一方、チャルーム副首相が「前政権で要職に起用された者を排除することは考えていない。人事は適材適所で行う。」と述べていたことを取り上げ、最大野党の民主党のアピシット党首は、「仕事ぶりに問題があるというなら、詳しく説明せよ。」と述べ、タウィン事務局長の異動を強く批判。
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09月04日(日) | 最大野党の民主党のアピシット党首(前首相)は、インラック政権が「アピシット政権が予算を使い切ったため、洪水被災者の救済に必要な資金が不足している。」と批判していることに対し、あらためて「国家予算は十分に残っているはず。」と反論。また、民主党幹部のコーン前財務相は、キティラット副首相が「前政権が残した国庫金の不足を補うため借り入れが必要。」と述べたことに対し、「国庫金は民主党政権が誕生した2008年12月の582億Bから総選挙前には3010億Bにまで増加した。国庫金に不足が生ずるのは、現政権が来年度予算を1100億Bほど増額する方針だからだ。」と述べ、民主党への責任転嫁との見方を示した。 |
09月05日(月) | タイ上院は、放送・電気通信事業の許認可権を持ち、放送・電気通信分野の研究開発、産業界育成支援などを行うタイ国家放送通信委員会(NBTC)の委員11人を選出。任期は6年。
NBTCの前身は1997年憲法で設立が定められたが、利権争いと政局の混乱で委員の選出が遅れ、過去10年以上、ほとんど機能しなかった。NBTCの委員が選出されたことで、第3世代携帯電話(3G)の事業権入札など懸案が前進すると期待される。一方、選出された委員のうち5人は軍・警察の高官で、タイの放送・通信事業への軍の利権、影響力は維持される見通し。 |
上院で放送・通信行政を監督する機関「国家放送通信委員会(NBTC)」の委員11人が選出されたが、軍人が5人含まれることから、上院議員の選考基準を疑問視する声が上がっている。NBTCは、放送行政と通信行政を別個に監督していた国家放送委員会(NBC)と国家通信委員会(NTC)が法改正により統合された機関。放送・通信事業にかかわる重要な決定を下す役目を担っており、委員職は非常に大きな利権のかかわるポストとなっている。
市民メディア開発研究所のウアチット会長によれば、「委員は放送・通信分野で経験・知識を持つ者とされているが、多くの委員はこの条件を満たしていない。」という。
また、ある上院議員は、「北部・東北部で影響力を持つ、タイ・ラック・タイ党(2007年に解党処分)の元役員ら(公民権停止中)が、自分たちとかかわりのある3人を委員にしようと根回しを行っていた。上院議員らは、資格に問題のあるこれら3人に票を入れている。多くの上院議員の多くは国益を二の次に考えているようだ」と話している。 |
タクシンの恩赦請求は法的に不可能との意見が出ていることに対し、政権党のプア・タイ党幹部のチャルーム副首相は、「刑事訴訟法をよく読んだほうがよい。刑に服していない者でも恩赦を請求できる。」と反論。
法律専門家によれば、恩赦を請求できるのは、刑に服している者に限られ、国外逃亡中に有罪が確定したタクシンは刑に服すのを拒否しており、恩赦請求の権利はない。だが、チャルーム副首相はこれを、「個人的な見解に過ぎない。」としている。 |
09月06日(火) | タイ政府は閣議で、国家安全保障会議(NSC)事務局長のタウィンを首相府相顧問に異動する人事を決めた。これは、ウィチアン警察庁長官をNSC事務局長に任命するための措置で、この人事は閣議では取り上げられず、現在、同ポストは空席となっている。 |
政府は閣議で、タクシン政権下(2001~2006年)で政府宝籤庁(GLO)長官を務めたスラシットをGLO審議官に、また、タクシンの長男パーントーンテーと長女ピントーンターへの課税に公然と反対したベンチャ財務副事務次官を物品税局局長に任命。
スラシットは約2500人が殺害された同政権の薬物一掃キャンペーンで警察官僚として中心的な役割を果たしたほか、同政権下の新宝籤導入に絡んで起訴されたことがある。2009年には警察を辞めて海外でビジネスをしていたが、先の総選挙でプア・タイ党が勝利したことから帰国していた。
一方、ベンチャは、タクシン政権下、国税局で昇進を重ね、国税局局長か財務事務次官への昇格が確実視されていたが、2006年09月の軍事クーデターで状況が一変。その後、タクシン政権の不正などを暴くため設置された資産調査委員会が、タクシンの長男パーントーンテーと長女ピントーンターの株式売却に課税すべきとの判断を示した時は、「納税の必要はない。」と主張。 |
09月07日(水)朝 | タウィンは、記者会見を開き、「警察長官人事に関連した不公正な玉突き人事だ。」として、公務員委員会の資格任用制保護部会に訴える考えを示した。同部会は、専門能力の優劣に基づいて公務員の採用・異動が適正に行われているかをチェックする部門。
08月に発足したタクシン派のインラック政権はウィチアン警察長官を異動し、後任にタクシンの元妻ポチャマンの義兄のプリアオパン警察副長官を充てる考えを示していた。ウィチアン長官が異動先に次官級のポストを要求したことから、安全保障会議事務局長のポストを空けたと見られている。
タウィンは、「インラック首相も認めているように、私には能力不足も落ち度もない。」と主張。今週中にも資格任用制保護部会に提訴する考えという。 |
| タイ外務省によると、インラック首相は10日にブルネイを訪問し、恒例となっている首相就任後の東南アジア諸国連合(ASEAN)歴訪を開始する。12日にインドネシア、15日には午前中にカンボジア、午後にラオスを訪れる予定。
タイの首相は民族、文化、言語が近いラオスを就任後初の訪問先にすることが多いが、インラック政権は原則アルファベット順とし、日程の調整がつかない場合は変更する方針。
「インラックの兄で現政権の実権を握るタクシンは国外滞在中の2008年にタイ国内で汚職で懲役2年の有罪判決を受け、以来、タイに帰国していない。タイの反タクシン派前政権は各国にタクシンの入国拒否や逮捕・送還を要請したが、ブルネイやカンボジアはタクシンの入国を認めていた。インラック首相はこうした経緯からブルネイを初の訪問先に選んだのではないか。」という見方もある。インドネシアは現在のASEAN議長国で、タイとカンボジアの国境紛争で調停役を務めた。 |
国家放送通信委員会(NBTC)の委員11人が上院で選出され、長年に渡り設置が待ち望まれていた放送・通信行政監督機関がようやく活動を開始する見通しとなっていたが、チャルーム副首相は、「委員選出に問題がある。」として、国王の承認を延期し、法務省特別捜査局(DSI)が捜査を行うべきとの考えを明らかに。一方、タリットDSI局長も、「委員選出では透明性の欠如など7つの規定違反が疑われる。」と指摘。。捜査には6ケ月かかる見通しで、第3世代携帯電話(3G)の事業権入札などがさらに遅れる恐れが出てきた。
NBTCは放送・電気通信事業の許認可権を持ち、放送・電気通信分野の研究開発、産業界育成支援などを行う。上院が05日に委員11人を選出したが、軍・警察出身者が6人を占め、軍による放送支配が続くとして、一部から批判が出ていた。NBTCの委員に軍出身者が多いことについて、プラユット陸軍司令官は、「国家のためで、軍のためではない。」と反論。
なお、承認請求の延期については、「首相の権限の範囲内」との指摘もあるが、「上院での委員選出を受け、首相は速やかに承認を求めなければならず、これを遅らせた場合、委員らは首相を訴えることができる。」とする意見も出ている。 |
タクシンへの恩赦適用を検討する委員会が設置されたことが、07日までに明らかになった。委員会設置はプラチャ法相の指示によるもので、ラムカムヘン大学のウティサク准教授が委員長、チュムポン元最高裁判事、トントン教育評議会事務局長などが委員を務める。
恩赦については、「禁固2年の有罪が確定した元首相は、刑に服すのを拒んでおり、恩赦を求める権利がない。」といった指摘があり、これも委員会で検討されることになる。一方、反タクシン派が恩赦に強く反発することは避けられないことから、与党のチャートタイ・パッタナー党幹部のサナン議員は、「国民の対立を煽りかねない。」との懸念を表明。 |
09月08日(木) | チャルーム副首相は、「『不正義』を放置しておくことはできない。」として、「タクシンの免罪、潔白の身での帰国を実現するため努力する必要がある。」と改めて強調。
タクシン派は、「2006年09月の軍事クーデターによるタクシン政権打倒に伴い、反タクシン派がタクシン派に無実の罪を負わせた。その汚名を雪ぐ必要がある。」と主張しており、チャルーム副首相の発言もこれに沿ったもの。タクシンは職権乱用で禁固2年の有罪が確定しているが、これについても、タクシン派は、「無実の罪」と言い張っている。
なお、チャルーム副首相は、タクシンの名誉回復について、「タクシンや実妹のインラック首相の要請によるものではない。」とも述べている。
一方、関係筋によれば、チャルーム副首相がタクシンの恩赦請求に関連して頻繁に発言していることに対し、プア・タイ党の経済戦略検討チームからは、「徒に批判を招くもので迷惑。」といった声も出ている。 |
国家治安委員会(NSC)事務局長を解任されたタウィンが「不当な人事」と反発している問題で、チャルーム副首相は、「民主党政権でもタクシン派の政府高官が異動になった。」と述べ、政権交代に伴う政治的な人事は当然との考えを明らかに。チャルーム副首相によれば、民主党政権も「何も悪いことをしていない者を排除しており、民主党はこれを忘れるべきではない。」。とはいうものの、タクシン派のプア・タイ党は政権の座に就くとすぐに次々に親タクシンの役人を要職に起用しており、これに対しては「あまりに露骨」との声も出ている。 |
「国家放送通信委員会(NBTC)の委員選出に規定違反があった。」として法務省特別捜査局(DSI)が捜査に乗り出すことを決めたことを受け、政府が国王の承認を延期するとしている問題で、最大野党・民主党幹部のサティット議員は、「委員リストの提出を遅らせれば、インラック首相が訴えられる可能性がある。」と警告。
議員によれば、「首相が承認を得るのを遅らせることができるのは、委員選出の全体的なプロセスに問題があった場合に限られるが、今回はこの事例には当たらないため、DSIの捜査を理由に委員リスト提出を延期することはできない。」という。 |
09月10日(土) | インラック首相は、恒例となっている首相就任後の東南アジア諸国連合(ASEAN)歴訪の第1弾として、ブルネイを訪問、ボルキア国王と会談、国王主催の晩餐会に出席し、深夜にタイに帰国。
インラック首相は帰国後、「兄のタクシンが同時期にブルネイを訪れた。」という一部報道を否定。
一方、タクシンの法律顧問であるノパドン元外相は、タクシンがカンボジアから招待を受け、09月第3週にカンボジアを訪れる可能性があることを明らかに。インラック首相は15日にカンボジアを訪問する予定。
タクシン派団体、反独裁民主義同盟(UDD)のタイ下院議員らも23、24日にカンボジアを訪問し、プノンペンでカンボジア政府関係者とサッカーの親善試合を行う予定。タイとカンボジアは反タクシン派のタイ前政権下で武力衝突を繰り返し、関係が険悪化したが、カンボジアのフン・セン首相と個人的に親しいタクシンがタイ政権の最高実力者に返り咲いたことで、雪解けが進むと見られている。
タクシンは国外滞在中の2008年にタイ国内で汚職で懲役2年の有罪判決を受け、以来、タイに帰国していない。タイの前政権は各国にタクシンの入国拒否や逮捕・送還を要請したが、ブルネイやカンボジアはタクシンの入国を認めていた。 |
1日当たり最低賃金を全国当時に一律300Bに引き上げるという政権党プア・タイ党の選挙公約に批判が出ていることに対し、キティラット副首相兼商業相は、「政府としては公約を実現したい。だが、民間企業すべてに賃上げを強制することはできない。」と発言。
最低賃金は物価などを考慮して都県別に設定されている。これを一挙に300Bに引き上げることに対しては、特に中小企業から「やっていけない。」といった声があがっている。
キティラット副首相は、「準備のできている大企業には賃上げを奨励する。だが、できない企業には無理強いしない。」と述べた。
なお、最低賃金の引き上げについては、現在も政府部内で検討が続けられており、最終的な案はまだまとまっていない。 |
09月11日(日) | タクシンの恩赦請求に最大野党の民主党が法律違反との見方を示していることに対し、政権党のプア・タイ党幹部のチャルーム副首相は、「違法と思うなら、不信任決議案を提出すれば良い。」と述べ、恩赦請求は合法との考えを改めて主張。
恩赦請求では、タクシンが刑に服していないことが争点となっているが、これについては、法律専門家の間でも意見が割れている。
チャルーム副首相によれば、「総選挙でプア・タイ党に投票した1500万人がタクシンの免罪を望んでいる。」。 |
09月12日(月) | タクシン派の政権与党プア・タイ党によると、タクシンは16~24日にカンボジアを訪問。滞在中に旧知の仲であるフン・セン首相とゴルフを楽しんだり、講演を行ったりする模様。
15日にはタクシンの妹のインラック首相が、23、24日にはプア・タイ党の下院議員、タクシン派団体の反独裁民主義同盟(UDD)のメンバーらがカンボジアを訪れる予定で、タイの反タクシン派前政権下で冷え込んだ両国関係は急速に改善する見通し。
一方、インラク首相は、首相就任後の東南アジア諸国連合(ASEAN)歴訪の2ケ国目として、インドネシアを訪問し、ユドヨノ大統領と会談。 |
与党首脳と野党間でタクシンの恩赦請求を巡る論争が起きていることに対し、インラック首相(タクシンの実妹)は、「恩赦に政府は関与しない。」と述べ、恩赦問題に距離を置く姿勢を明らかに。
政権党プア・タイ党幹部のチャルーム副首相が恩赦請求を擁護する発言を繰り返していることに一部から批判が出ていることから、政府批判がエスカレートするのを避けようとした模様。また、「タクシン一族はタクシンの恩赦請求に賛成か。」との質問に対し、インラック首相は、「一族は支持するか否かをはっきりさせるだろう。だが、私は首相。特定個人でなく国民全体のことを考えるのが首相。」と返答し、恩赦請求を明確に支持する考えのないことを示した。 |
放送・通信行政を一元的に監督する機関、国家放送通信委員会(NBTC)の委員11人の中から軍出身のタレート空軍大将が委員長に選出された。
委員は5人までが軍出身者だが、副委員長2人も陸軍大佐が選ばれ、軍が放送通信業界の利権を保持し、放送内容を管理する体制が明確になった形。
関係筋によれば、「委員長は委員の互選で決められたが、委員長候補に名が上がっていたのはタレート1人だけだった。」という。また、委員選出について、「軍が複数のテレビ局を所有していることから、放送行政への発言権を確保するため軍出身者がNBTCに送り込まれた。」との批判も出ている。タレートもこれを承知しており、委員長就任が決まった後、「軍が幅をきかせているとのイメージを払拭したい。」と述べた。
NBTCは放送・電気通信事業の許認可権を持ち、放送・電気通信分野の研究開発、産業界育成支援などを行う。上院が05日に委員11人を選出したが、軍・警察出身者が6人を占めたことから、「軍による放送支配が続く。」として、一部から批判が出ていた。タイの上院は軍事政権下の2007年に導入された現行憲法で約半数が任命制となり、保守派、反タクシン派の牙城となっている。タクシン派の現政権は、「NBTCの委員選出過程に不正があった疑いがある。」として、タイ法務省特捜局(DSI)に捜査を行わせる方針。タクシン派と反タクシン派の抗争が放送通信利権に飛び火した格好で、第3世代携帯電話(3G)の事業権入札などがさらに遅れる可能性が浮上。 |
関係筋によれば、国立公園野生動植物保護局では、局長に就任したばかりのダムロンがすでに20人を超える国立海洋公園長を入れ替えており、職員から批判・困惑の声が上がっている。ダムロン局長はさらに公園長10人程度の入れ替えを考えている。新局長は、タクシンのかつての側近で、タイ・ラック・タイ党副党首を務めたヨンユットに近いとされるが、今回の大量入れ替えは、前民主党政権下で任命された公園長を排除することが目的と見られている。 |
09月13日(火) | タイを訪れた英国のブラウン外務閣外相は、タクシン問題について、「タイの国内問題であり、外国政府の関心事ではない」と述べるとともに、「タイが自力で解決しなければならない問題。」との見解。また、英国政府は2008年の有罪確定に伴い、タクシンの英国入国を禁止したが、ブラウン外務閣外相は、「元首相が入国を申請したら許可するのか」との質問に対し、「入国管理法に基づき、包括的に検討して入国を許可するかを決める。」と説明。タクシンの入国許可については、「個別のケースには返答できない。」と明言を避けた。 |
09月14日(水) | インラック首相が09月15日にカンボジアを訪問することで、反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)傘下の市民団体「タイ愛国者ネットワーク」のコーディネーターの男性と女性秘書を釈放するとの見方が強まっている。2人は昨年12月に民主党議員らと国境地帯を視察した際、国境侵犯の疑いでカンボジアに逮捕された。議員らは間もなく保釈・帰国となったが、2人だけはスパイ罪で有罪となり、それぞれ8年、6年の禁固刑となった。「カンボジアはインラック首相の訪問に合わせ、親善の証しとして2人を釈放する可能性がある。」という。関係筋によれば、「カンボジア政権はもともと親タクシンであり、タクシン派・インラック政権の人気を高めるべく、同政権に釈放実現という形で手柄を立てさせることは十分に考えられる。」なお、「タクシンが16日から24日にかけカンボジアを訪問する。」と報じられているが、インラック首相は、今回の同国訪問とは「無関係」としている。 |
前民主党政権で副首相を務めたステープ議員は、「民主党政権下でカンボジアを訪れ、フン・セン首相とタイ湾の石油・ガス開発について密談しようとした。」との一部報道を全面的に否定。
報道によると、「書類を持参して自宅を訪れたステープ副首相(当時)が話し合いをしようとしたところ、フン・セン首相は、『(カンボジアの)副首相に任せてある。』とこれを拒否。その後、アピシット首相(当時)のカンボジア批判が強まった。」とのこと。
一方、ステープ議員は、フン・セン首相と会ったことは認めているものの、密談しようとした事実はなく、反タクシン派の民主党を嵌めようとした謀略としている。 |
09月15日(木) | カンボジアを訪問したインラック首相に対し、フン・セン首相は、スパイ罪で服役中のタイ人2人の早期釈放に向け方策を探ると約束。
反タクシン組織、民主市民連合(PAD)傘下の市民団体「タイ愛国者ネットワーク」のコーディネーターの男性と女性秘書の2人はスパイ容疑でも起訴され、それぞれ禁固8年と6年の有罪が確定している。フン・セン首相は、刑期短縮を可能にすべく関係当局に検討させる意向を示した。ただ、その数時間前にカンボジア外務省は、「刑期の3分の2まで刑に服して初めて仮釈放が可能。」との見解を示しており、これを覆すようなフン・セン首相の発言は驚きをもって受け止められた。
また、今回の首脳会談では、タイとカンボジアがともに領有権を主張している、タイ湾の大陸棚でのガス・石油共同開発も取り上げられ、その実現に向けて2国間交渉を再開することを合意。 |
政府が先の閣議で新たに「司法問題対策委員会」を設置することを決めたのに対し、最大野党・民主党のアピシット党首は、「既存の機関と役割が重複する。設置は不要。」と批判。
政府は、「法の適用における二重基準の問題を解決するため、新委員会が必要。」と説明。だが、アピシット党首によれば、「憲法の規定に従ってすでに司法改革委員会が設置されており、この委員会を通じて問題の解決が可能なはず。」と言う。なお、関係筋によれば、「新委員会の設置は、政府の意向に沿った恩赦を実現するための布石。」とのこと。 |
タクシン政権を追放した2006年09月19日のクーデターから5周年を記念し、タクシン派団体、反独裁民主主義同盟(UDD)が18日にクルングテープで反クーデター集会。午後15時にラーチャダムヌンクラーン通りの民主記念塔に集合し、翌19日午前01時に散会予定。 |
インラック首相は、カンボジアを公式訪問。恒例となっている首相就任後東南アジア諸国連合(ASEAN)歴訪の3ケ国目。フン・セン首相と会談したほか、シハモニ国王を表敬訪問。両首相は会談で、両国が領有権を主張するタイ湾の海域の共同開発の交渉再開、インフラ整備、新たな国境検問所の設置、国境地帯の緊張緩和などで合意。
スパイ罪で服役しているタイ人2人についても協議し、フン・セン首相は、早期の釈放を検討すると伝えた。2人は、反タクシン派の幹部と秘書で、それぞれ禁固8年、禁固6年の判決を受けている。 |
09月16日(金) | インラック首相は、ラオスを公式訪問。トンシン首相と会談し、エネルギー開発での協力促進などで一致。 |
タイ法務省特別犯罪捜査局(DSI)のタリット局長は16日、タクシン派団体、反独裁民主主義同盟(UDD)と政府治安部隊が昨年04~05月に衝突した際に民間人が死亡した件で、「13人の死因についての再調査を首都警察に要請する。」と発表。チャルーム副首相が「捜査が進んでいない。」として、これまで捜査を担当していたDSIに指示。13人は、04月10日の衝突を取材中に銃撃され死亡したロイター通信の日本人カメラマン村本博之ら。
DSIは当初、「治安部隊が関与した可能性がある。」としていたが、今年02月に一転して、関与の可能性を否定。 |
海外逃亡中のタクシンは、カンボジアのプノンペンに到着。妹のインラック首相が前日の15日にカンボジアを日帰り訪問したが、野党の批判をかわすため、同時期の滞在を避けた模様。 |
09月17日(土) | タクシンはカンボジア首相府を訪れ、カンボジアのフン・セン首相と抱き合って再開を喜び、兄弟と呼び合うなど親密な関係を示した。両氏は同日会談し、経済問題で協議した。「政治的な問題は話し合わなかった。」としている。タクシンは、24日まで滞在する模様で、経済フォーラムでの講演、フン・セン首相とのゴルフなどが予定されている。
タクシンは国外滞在中の2008年にタイ国内で汚職で懲役2年の有罪判決を受け、以来、タイに帰国していないが、カンボジアには数回訪問している。 |
09月18日(日) | タクシン政権を追放した2006年09月19日のクーデターから5周年を記念し、タクシン派団体、反独裁民主主義同盟(UDD)は、クルングテープのラーチャダムヌンクラーン通りの民主記念塔で集会。
警察は、民主記念塔周辺の道路を通行止めにして、1300人体制で警戒したが、混乱はなかった。集会には、ティダ会長のほか、タイ・カンボジア・サッカー親善試合準備のためカンボジアを訪問していた幹部のナタウット、コーケウ、ウェーンらも駆けつけた。 |
最大野党の民主党が「タクシンのカンボジア訪問はガス・石油開発などに絡んで個人的な利益を得ようとしたもの」との見方を示していることに対し、タクシンの法律顧問、ノパドン元外相は、「単なる憶測」と批判するとともに、「証拠を提示した者に最高100万バーツを提供する。」と明言。
今回のカンボジア訪問は、経済に関する講演とカンボジア国首脳とのゴルフが目的とされているが、民主党によれば、両国が領有権を主張しているタイ湾内の大陸棚に眠るガス・石油の開発に関する話し合いが真の目的。また、タクシンが国外逃亡中の犯罪人であることから、民主党は、「タクシンのカンボジア訪問が事前にわかっていながら身柄引渡しなどをカンボジアに求めなかった。」とスラポン外相を非難。 |
連立内閣の小政党、チャート・パッタナー・プア・ペンディン党が党大会で、チャート・パッタナー党(CPN)への党名変更を決めた。党名が長すぎたことが理由。選挙管理委員会に党名変更を申請。
チャート・パッタナー・プア・ペンディン党は、ルアム・チャート・パッタナー党にプア・ペンディン党の主流派が合流して発足。07月03日の下院(定数500)総選挙では7議席に止まった。民主党連立内閣に参加していたが、今回はタクシン派のプア・タイ党連立内閣に鞍替えした。内閣でのポスト配分は1人で、ワナラット党首が工業相。 |
09月19日(月) | 最大野党の民主党幹部のカシット前外相は、「カンボジアのフン・セン首相は、タクシン元首相、タクシン派の政権党プア・タイ党、タクシン支持団体の反独裁民主主義同盟(UDD)の肩を持っている。」と指摘するとともに、「タイの内政への干渉。」と批判。
フン・セン首相はタクシン支持を公言していたこともあり、親タクシンとされている。
カンボジア訪問中のタクシンは、議員や実業家を前に経済に関する講演を行っており、フン・セン首相との親密な関係を物語っている。
カシットによれば、「タイはカンボジアの内政に口出ししたことはないが、フン・セン首相はタクシンやタクシン派を擁護する一方、反タクシン派を敵対視することでタイの内政に干渉を続けている。」 |
最南部ナラティワート県スンガイコロク郡で起きた連続爆発事件について、アドゥン副警察長官は、「『インラック政権に揺さぶりをかけることが狙い。』との見方を裏付ける証拠は、今のところ見つかっていない。」と述べた。
犯人に関しては、警察や軍が「薬物取り締まりに対する密売組織の報復」、「イスラム過激派の犯行」といった見方を示しているが、「誕生間もないインラック政権を動揺させることが狙い」との意見も出ている。
なお、警察では容疑者2人の逮捕状をとる準備を進めているが、アドゥン副長官によれば、事件には少なくとも5人が関わっているとのこと。 |
09月20日(火) | ステープ前副首相(治安担当)は、「パンロップは南部問題に強硬な姿勢をとっており、治安機関のトップには不適格。適任者はほかにいくらでもいる。」と述べ、インラック首相がパンロップを国内治安作戦司令部(ISOC)司令官に指名したことを批判。
パンロップはISOC副司令官として南部問題に取り組んだ経験があるが、在任中の2004年04月にパタニ県でモスクに立てこもったイスラム教徒の若者など32人が治安部隊の攻撃で死亡する事件が起きた。ステープ民主党議員は、この事件について、「多くの人の心に深い傷を残した。」と述べている。 |
閣議で、プラナイ内務副事務次官を事務次官に昇格させる人事案が承認された。
プラナイはパラコン枢密顧問官の弟。このため、「タクシン派・インラック政権と枢密院との関係改善が狙い。」との見方が出ている。
プレム枢密院議長が反タクシン派として知られていることもあって、タクシン派と枢密院の関係は良好といえない状態が続いているため、関係筋によれば、「インラック政権は、国民和解の実現を最優先課題の一つに掲げており、これを口実に枢密院との関係を良好にして政権の安定度を高めようとしている。」とのこと。 |
インラック首相は、首相府内でユンユット副首相兼内務相らと昼食をとり、記者団に公開。「20万Bの昼食をケータリングで注文している。」との噂がインターネットで流れているため、鶏肉の唐揚げ、グリーンカレーなど普通のタイ料理を並べて、贅沢をしていないことを強調。
インラック首相は、「そんなに食べたら太ってしまう。」などと述べた。首相府によると、20万Bは、政府が主催する宴会の食費に当たる。
コーウィット副首相、クリサナ首相府相、アヌタマ政府副報道官、記者の代表も一緒に食事を楽しんだ。 |
タクシン派系の衛星テレビ「アジアアップデートTV」によると、タクシンが、カンボジアを出国し、講演のためマレーシアに向かった。タクシン派団体「反独裁民主主義同盟(UDD)とカンボジア政府の代表が24日にサッカーの親善試合をプノンペンで行うが、タクシンはカンボジアを再訪しない予定。
タクシンは16日、カンボジアに入国し、フン・セン首相と会談したほか、経済フォーラムで講演した。また、タイから訪れた支持者と面会した模様。 |
09月21日(水) | 不敬罪に問われているニュースサイト「プラチャタイ」の管理者が、法廷で「サイト管理には最善を尽くしていた。」と証言。
プラチャタイは、2006年09月19日の軍事クーデター後、掲示板のコメント数が急増。トラブルを避けるため、書き込みを会員制にして管理徹底に努めた。2007年から2008年にかけては、1日あたりのログイン数が2万回から3万回を記録、一時は300種類にのぼるトピックそれぞれに2800件から2900件のコメントがついた。これらの監視には、医師や実業家、弁護士などがボランティアで協力した。しかし、2008年08月14日から11月03日にかけて、「王室に関する不適切な書き込み10件を放置した。」として、不敬罪、およびコンピュータ犯罪法違反の罪に問われることになった。
管理者は法廷で、「サイト運営については、書き込み監視や情報提供を含め、情報技術省に全面協力をしてきた。」と主張。 |
国連総会出席のためニューヨークを訪れているスラポン外相は、「だれもが身分を証明するものを持つ権利がある。」と述べ、「国外逃亡中のタクシンにも一般旅券を再発給する必要がある。」との考えを示した。さらに、外交旅券の再発給を検討していることも明らかに。
タクシン一般旅券は、タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)による2009年04月のクルングテープ騒乱で、「デモ隊を煽る発言があった。」として、同月12日に無効とされた。
外交旅券については、軍部が2006年09月のクーデターでタクシン政権を追放したあと無効としたが、その後に誕生したタクシン派のパラン・ブラチャーチョン党政権下で無効が取り消された。しかし、その後の民主党政権下で再び無効とされた。
スラポン外相によれば、「旅券の無効化は、正当な理由のない政治的なもので、諸外国もそう考えている。また、旅券は一種のIDカードであり、タイでは受刑者でも身分証明カードの所持を許されていることを考えると、タクシンに旅券を再発行することに問題はないはず。」という。
タクシンは有効なタイ旅券を所持していないため、外国訪問にはモンテネグロ政府発行の旅券を使っているが、ニカラグアやウガンダの旅券も所持している。
なお、スラポンの外相起用については、「タクシンへの旅券再発給が任務の一つ。」との指摘が出ていたが、スラポンは外相就任の折、この見方を全面的に否定していた。 |
タクシン派団体、反独裁民主主義同盟(UDD)と同派の政党のプア・タイ党の代表チームが24日、カンボジア政府代表チームと行うサッカー親善試合を観戦するため、数千人のUDDメンバーと陸路でカンボジア・プノンペンに向かう。UDD幹部のチャトポン下院議員が明らかに。
試合は、プノンペンのオリンピック競技場で行われる。タイはタクシンの義弟ソムチャイ元首相が、カンボジアはフン・セン首相がキャプテン。タクシンは参加しない。UDDはラオスやビルマでも親善試合を行う。 |
09月22日(木) | クルングテープ都庁の設置した防犯カメラにダミーが存在することが判明し、政権党のタクシン派プア・タイ党が「汚職の疑いがある。」として徹底的な調査を求めている問題で、最大野党の民主党のアピシット党首(前首相)は、「諸外国でもダミーは併用されており、タクシン政権(2001~2006年)も最南部にダミーを約7000台設置した。都庁のダミー購入も公正なものだった。」と反論。
クルングテープは歴代の知事の多くが民主党幹部で、スクムパン現都知事も民主党所属。都議会議員も民主党が多数派となっている。
アピシット党首によれば、「プア・タイ党は、なにかにつけて反タクシン派の民主党に疑いの目を向けさせようとしており、今回の調査要求も民主党批判が狙い。」
なお、ダミー防犯カメラは、見分けのつきやすいものを安易に設置することは逆効果だが、本物と同一形状のものを紛れ込ませるのは経済的かつ抑止効果があり犯罪防止に有効とされている。
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プア・タイ党のコーケウ議員は、今年の国王の誕生日を祝って政府が大規模な受刑者恩赦を予定していることを明らかに。国王は12月05日に84歳になるが、これは干支が7巡(12×7)したものでとりわけめでたく、これまでにも増して多くの受刑者を釈放するのが望ましいとのこと。
コーケウ議員によれば、「国内の刑務所は収容能力が14万人であるのに対し、実際に収容されているのは23万人以上にのぼり、刑務所の過密問題を緩和するためにも大量恩赦が必要。」
タクシンが受けた有罪判決を取り消そうとタクシン派が躍起になっていることから、「大量恩赦はタクシンの免罪が最大の目的。」との見方が支配的。 |
政府が先に決めた、500万Bまでの住宅購入を対象とした「初めてのマイホーム購入支援」で、インラック首相は、「SCアセット社(タクシン一族の不動産開発会社)が扱っているのは500万B以上のものがほとんど。購入支援で恩恵を受けることはない。」と述べ、「支援措置が同社の住宅販売促進を目的としたもの。」との最大野党の民主党の批判に反論。
SCアセット社の高層コンドミニアムプロジェクトはユニット価格が500万B以下であるものの、その完成は支援措置の終了に間に合わない見通しという。
しかし、アピシット民主党党首によれば、「SCアセットの販売する住宅はほとんどが200万~500万B。このため、支援対象の上限が500万Bに設定された。同党の調査では、SCアセットの扱う住宅のうち500万B以下は1700戸あまり。これが全て売れれば、同社の年間収入の約8割に当たる51億Bあまりの売り上げになる。」という。インラック首相の前職は、SCアセット社代表取締役。 |
インラック首相は政治経験が皆無にひとしく、「実兄タクシンの操り人形」とみる向きが少なくないが、政権党プア・タイ党関係筋によれば、「タクシンは21日に党首脳と電話会議をしたが、これはインラック首相に託したメッセージが閣僚に伝わっていなかったため。」とのことだ。これが事実とすれば、インラック首相は単なる伝令役に過ぎず、実質的に政府を動かしているのはタクシンということになる。
同筋は、「インラック首相は若く経験不足であり、とりわけベテランの閣僚にはなかなか指図できなかったようだ。最愛の妹の窮状を見かねたタクシンが電話会議を開き、プア・タイ党の閣僚らに直接指示した。タクシンは、自分の意思が閣僚に十分伝わらず、これが政府の仕事ぶりに影響するのを懸念している。」と述べている。 |
09月23日(金) | タイのユタサク国防相はカンボジアを訪問し、ティア・バン副首相兼国防相と会談を行い、国際司法裁判所(ICJ)の判決に従い、紛争地域のヒンドゥー寺院遺跡カオ・プラウィハーン(プレアビヒア)周辺から兵力を撤収することで合意した。新華社電が伝えた。
カオ・プラウィハーン(プレアビヒア)は2008年に国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産に登録されて以来、周辺地域でタイとカンボジアの武力衝突が頻発している。
ティア・バン国防相は「両国の国境委員会で兵力撤収の日程、方法などを決定する。撤収の原則については両国国防相による合意が成立した。」と述べた。両国はまた、両国の紛争地域に東南アジア諸国連合(ASEAN)の議長国インドネシアが監視要員を派遣することにも同意。 |
タイ政府はこのほど、タイ湾でタイとカンボジア両国が領有を主張している「重複主張海域(OCA)」での海底ガス田の共同開発に向け、カンボジアとの非公式交渉を再開。
タイのピチャイ、エネルギー相は今月20日にブルネイで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)エネルギー相会議で、カンボジアのイット・プラン鉱工業エネルギー副大臣と非公式に会談した。両国の交渉再開は2001年以来10年ぶりとなる。OCAはタイ湾にある2万6993㎢の海域で、豊富な天然ガスが存在するとされる。
ピチャイ・エネルギー相は「(交渉再開で)採掘がすぐ可能になるわけではない。準備作業、交渉、探査には10年の期間が必要になるだろう。」と述べた。 |
カンボジア訪問中のユタサク国防相は、同国国防相と会談し、国際司法裁判所の判断を尊重し、インドネシアの国境監視団を受け入れるため、タイ・カンボジア両国が国境地帯から撤兵することで合意。撤兵の時期は、11月に開かれるタイ・カンボジア国境委員会で協議、決定される見通し。
反タクシン派の前民主党政権下では、国境未画定区域の領有権を巡る問題でカンボジアが話し合いを拒否し、両国は対立状態にあった。しかし、カンボジアのフン・セン首相が親タクシンであることから、「今後、2国間関係は改善に向かう。」との見方が支配的。 |
09月24日(土)午後 | カンボジアの首都、プノンペンのナショナルオリンピックスタジアムで、タイとカンボジアの政府関係者らによるサッカーの親善試合が行われ、カンボジアのフン・セン首相率いる赤チームがタイのソムチャーイ元首相率いる青チームに10対7で勝利。両チームはタイ、カンボジアの混成で、プノンペン市長、タクシン派団体、反独裁民主主義同盟(UDD)などが参加。フン・センは、「タイ・カンボジア関係の悪夢の時代は去った。今日の試合は両国にとり歴史的なイベントである。」と演説。観客約5万人のうち数千人は、タイから駆けつけたタクシン支持者。
関係筋によれば、「これまで2国間関係が険悪な状態にあったのは、親タクシンのフン・セン首相が反タクシン派の前民主党政権を敵対視していたことが最大の要因。今回の親善試合は、2国間関係の改善を明確に示し、タクシン派・インラック政権の評価を上げるとともに前民主党政権の評価を下げることが狙い。」
一方、アピシット前首相率いる民主党は、洪水被災者への義援金を募るサッカーのチャリティー試合をクルングテープで行った。1試合目は記者チームを相手にアピシット前首相、アピラック前クルングテープ都知事、コーン前財務相が得点し、3対2で勝利。2試合目は芸能人チームに0対2で敗れた。 |
| カンボジアからの報道によれば、昨年の大規模反政府デモでテロ容疑に問われ指名手配中のアリスマン元議員が、プノンペンのホテルで開かれたパーティーに姿を見せ、「我々赤服(タクシン支持者) を『不敬』と中傷するのは止めるべきだ。」と訴えた。
タクシン支持団体「反独裁民主戦線(UDD)」幹部の中でも強硬派とされているアリスマンは、他の幹部らが出頭したにもかかわらず、姿を眩ましたままで、以前から「カンボジアに潜伏している。」との見方が出ていた。 |
09月25日(日) | 汚職撲滅を呼びかける集会に、インラック首相がアピシット前首相らと参加。都心のルンピニ公園からシーロム通りにかけて大規模な行進を行った。
行進前のスピーチでインラック首相は、「タイにおいて汚職は由々しき問題だ。この行進を通して、汚職撲滅について国民の意識を高めたい。」とし、アピシット前首相らに集会参加への謝意を述べた。さらに、国力強化のために、「自らも権力を乱用せず、法律と社会規範を敬い、社会的モラルの向上を図りたい。」と明言。
反汚職同盟が主催したこの集会には、タイ証券取引所やタイ工業連盟を含む民間組織約30団体も参加。タイ商工会議所のポンサク会長は、「汚職撲滅は容易ではないが、我々が協力し合うことで減少するはず。」と述べた。反汚職同盟の会長代理も務めるポンサクは、「公的調達における不正を失くすため、財務省や国家汚職制圧委員会と協力し、規制強化を推し進めたい。」と述べた。 |
09月26日(月) | チナワット・コンピューター&コミュニケーションズ社株の譲渡に絡む脱税事件で、タクシンの元妻ポチャマンらを無罪とした2審判決に対し、検察当局は、上告しない方針を明らかに。
同事件で1審は2008年07月31日、7億3800万B相当の株譲渡で5億4600万Bの脱税があったとしてポチャマンらを有罪とした。しかし、2審は今年08月24日、ポチャマンと女性秘書のカーンチャナパー・ホーンフーンの2人に一転無罪を言い渡した。今回の検察の判断は、この判決を受け入れたもの。
これに対し、最大野党の民主党のタウォン議員は、「検察は独立機関であるが、勝手に判断を下すことは許されない。ポチャマンらを起訴した検察がその姿勢を変えることは国民に不信感を与える。」などと批判。さらに「民主党が検察の判断を調査するよう国家汚職制圧委員会(NACC)に要請する可能性がある。」との考え。
国税局によれば、「株譲渡に関連する税申告があったのが14年前。脱税の時効は10年であるため、有罪が確定したとしても、もはや追徴課税は不可能。」 |
09月27日(火) | インラック首相は、閣議後に「海軍の潜水艦購入案が承認された。」と発言。承認されたのが海軍の潜水艦購入案でなく、陸軍のヘリ購入案であったことに気づき、数時間後に政府報道官に訂正させた。
関係筋によれば、首相が間違った発言をしたことから、ティティマ副報道官が他の報道官を集めて対応を協議。「海運局のボート購入案と混同した。」との説明でその場を切り抜けようとしたが、同案も、27日の閣議では取り上げられていなかったことから、訂正報道を余儀なくされた。 |
国立タマサート大学の法学者7人からなる「ニティラート」が「2006年09月の軍事クーデターに伴うあらゆる法律関係の変更をすべて無効とし、不敬罪を規定した刑法112条を改正すべき。」としていることに対し、プラユット陸軍司令官は、「君主はだれも傷つけたことがなく、国に対し大きな貢献をしている。」として、不敬罪規定の改正に反対する考えを明らかに。
同規定については、不敬容疑が政敵を攻撃する手段に使われることが多くなっていることから見直しを求める声も出ているが、プラユット司令官は、「改正要求には理由があるはずで、それを見極める必要がある。」と指摘。
また、プラソン元国家治安委員長は、「ニティラートは、クーデターを悪として、クーデターがもたらしたものをすべて否定しようとしているが、クーデターが起きた原因には目をつむっている。結果的にタクシンの過去の行いを正当化するに等しい。」との見方。また、「このような要求には市民が反発して抗議活動に出る可能性があり、これが新たなクーデターを招く恐れがある。」 |
09月28日(水) | 国家汚職制圧委員会(NACC)は、下院議員とインラック内閣の閣僚から提出された資産報告の内容を公開。タクシン(62)の妹で首相就任前はタクシン財閥の企業経営者だったインラック首相(44)の負債を差し引いた資産額は、2位で資産5億4113万B。内訳は自宅、マンションなど不動産、株式、現金のほか、ポルシェ・ケイマン、メルセデス・ベンツS280、メルセデス・ベンツSLK200、ランドローバー、BMW730など自動車8台、指輪、ネックレスなど宝飾品4180万B相当、時計180万B相当、鞄210万B相当などで、気さくな庶民派というイメージとは裏腹の豪勢な生活ぶりが伝わってくる。
資産が最も多かった閣僚は元官僚のプロードプラソプ科学技術相(65)で9億6349万B。3位は約4億4100万Bのチュムポン副首相。4位は約3億8000万Bのユタサク国防相。5位は約2億7900万Bのプラチャ法相。閣僚中の最下位は、キティサク副運輸相(71)で394万B。
一方、最大野党の民主党のアピシット党首(前首相)は首相就任時の5000万Bから5400万Bに増加。ステープ同党議員(前副首相)は3900万Bから9500万Bへと2倍以上の増加となっている。 |
09月29日(木) | 国会でクルングテープ都内の違法カジノの存在などを暴露した野党ラック・プラテート・タイ党のチューウィット党首によれば、「都内に新たに大型の違法カジノが建設されたにもかかわらず見て見ぬ振りをしている。」という。違法カジノは、ホアイクワン区メンチャイ交差点から約500m離れた場所に建てられている。建設工事は完了し、間もなくオープンする見通し。「警察はその存在を把握しているにも関わらず、何も手だてを講じていない。」という。チューウィット党首は、「警察官100人に家宅捜索させているが、誰も逮捕していない。」と批判。「本気でカジノを摘発するつもりなら、警察官1人を私に同行させてくれればいい。私が(責任者を逮捕するための証拠として)カジノの内部を撮影してやる。」と述べた。 |
最高裁判所は、「野党ラック・プラテート・タイ党のチューウィット党首が資金洗浄を行った。」として2審判決を覆して有罪とし、チューウィット党首と関連会社の資産355万B相当を没収することを決めた。資産の内訳は、14万4000Bの現金と株式。
株式は、チューウィット党首が過去に所有・経営していた特殊浴場からの売り上げを隠すために購入されたものという。チューウィット党首は、「判決を受け入れる。だが、(同じことをしている)他の特殊浴場が(罪に問われずに)営業を続けているのはなぜか。警察は速やかに摘発すべき。」と述べている。 |
10月02日(日) 10時20分頃 | インラック首相の短文投稿サイト「ツイッター」のアカウント(@PouYingluck)が何者かに乗っ取られ、インラック首相の洪水対策や教育政策などを批判する内容が8回、約25分間にわたって書き込まれた。首相府の担当者「今、インラック首相のツイッターに表示されている書き込みは、本人によるものではない。」と説明。コンピュータ犯罪室にハッカーの割り出しを指示したアヌディット情報通信技術相は、「書き込みはiPhoneで行われており、発信元もわかった。現在は犯人逮捕のために、警察と共同捜査を進めているところ。」と報告。「首相周辺からパスワードなどが流出した可能性もある。」と見て、捜査を進める方針。今回の犯行は軍事政権が2007年に導入したコンピューター関連犯罪法に抵触し、懲役5年以下、罰金10万B以下の処罰の対象。
ツイッターには「政治もビジネス、我々はタイ国民のためではなく身内や仲間のために動いている。」、「我々は票取りのため、我々の利益のためだけに貧困層を欺いている。」、「タイは今こそ転機。より良い国を目指す時。特定の企業や組織のイメージアップばかりしている場合ではない。」、「今が目覚めの時。愚行は根絶されなければならない。」、「(政府が)大規模公共事業を推進するのは、国のことを理解していないからだ。」、「自分のツイッターすら守れない者が、どうやって国を守るのか。」などの内容が、数分置きに書き込まれた。
08月に就任したインラック首相は、5年前にクーデターで追放されたタクシンの妹。実業家からの転身で政治経験はない。 |
10月03日(月) | 昨年の大規模反政府デモの際に死亡したデモ参加者や治安要員など約90人についてはいまだに死に至った状況がはっきりしていない事例が多いが、チャルーム副首相は、「13人に関しては、当局による新たな調査で驚天動地の結果が出るだろう。」と豪語。再調査は副首相が法務省特別捜査局(DSI)に指示したことに伴い09月に開始された。
チャルームは、「私が(死に至った状況の調査を)命じなければ、いつまでたっても事実関係が明らかにならず、混乱が続く。」としている。
だが、関係筋によれば、「再調査は、治安当局に責任のあったことを示し、当時政権の座にあった民主党を批判することが目的と考えられる。これにより民主党や反タクシン派が反発し、新たな混乱に繋がる恐れがある。」 |
国民議会系研究教育機関、プラポッククラオ研究所により、「女性首相が国内対立を解決できるか」をテーマにしたセミナーが開かれ、有識者らがインラック首相が持つべき展望について意見を交わした。セミナー主催者のエカチャイ代表は、「インラック首相がタイ初の女性首相として成功するには、兄であるタクシンの干渉、強い影響力を乗り越えなければならない。」と提言。さらに、インラック首相の政治的手腕が示されるのは6ケ月から1年後とし、「決断力、誠実さ、集中力が成功の鍵」との見方。 |
タマサート大学の法学者グループ「ニティラート」が2006年09月のクーデターとそれ以後の法令改定を見直すよう提案していることに「タクシンを利するもの」との批判が出ているが、著名社会評論家であるプラウェートは、「ニティラートの提案を直ちに否定するのでなく、客観視する必要がある。」と提言。「タイ社会は不平等という大きな問題を抱えているが、これを解決するには、相手を拒絶することなく話し合いで議論を詰めることが重要。ティラートの提案についても同じことが言える。」とのこと。 |
10月04日(火) | 首相府に猿が現れ、官僚らを驚かせた。近くにあるドゥシット動物園の職員が麻酔銃などで猿の捕獲を図ったが、猿は電線を伝って逃げ、首相府の敷地外に姿を消した。 |
閣議で、ウィチエン前警察庁長官を国家治安委員会(NSC)事務局長に起用が承認された。政権党のプア・タイ党幹部のチャルーム副首相によれば、国王が同人事を認証した後、プリアオパン警察庁副長官(現長官代行)が長官に任命される予定。プア・タイ党は、「プリアオパン警察大将の長官就任は、違法カジノ問題でウィチエンが長官を引責辞任したことに伴うもの。」と説明。
だが、関係筋によれば、「違法カジノの存在は長年にわたる公然の秘密。長官が辞任する必要があったのか疑問。にもかかわらず、プア・タイ党はウィチエンに執拗に辞任を迫った。プア・タイ党は以前から、タクシンの元妻ポチャマンの弟であるプリアオパンを長官に起用しようと画策しており、『カジノ問題を絶好の機会ととらえ、長官交代をごり押しした。』と考えるほうが自然。」 |
タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)による昨年の大規模反政府デモに関連して逮捕状の出ていたUDD幹部のダルニー♀がクルングテープ都ルンピニー署に出頭。
昨年04月に国内治安法に違反したとされるダルニーは姿を眩ましたままだったが、先にカンボジアのプノンペンで両国の議員などによるサッカー親善試合が行われた際、同地で催されたUDDの祝賀パーティーにアリサマンとともに姿を見せていた。テロ容疑などに問われているアリサマンは「すぐに帰国するつもりはない。」と明言。 |
10月05日(水) | インラック首相のツイッター(@PouYingluck)が02日一時乗っ取られ、洪水対策や教育政策などを批判するタイ語の文章が投稿された事件で、警察はチュラロンコーン大学建築学部4年のエカウィット・トングディーウォラクン(22)の身柄を拘束。エカウィットは04日夜、母親に付き添われて警察に出頭。コンピューター犯罪法違反で有罪なら、2年までの禁固刑、4万Bまでの罰金刑が科せられる。
アヌディット情報通信技術(ICT)相はエカウィットと共に記者会見。報道陣が質問することは許されなかった。エアカウィットは不正アクセスを認め、「自分一人でやった。」と話しており、組織的背景はない模様。
不正書き込みには首相のパスワードが必要だが、これを不正取得した人物は特定できていない。関係筋によれば、「パスワードは09月30日に不正取得されてハッカーのネットワークに流され、これを使ってエカウィットがアカウントに侵入して不正書き込みをした。」 |
10月07日(金)夜 | 東北部シーサケート県のカンボジア国境近くで木材を違法伐採していたカンボジア人とパトロール中のタイの警官隊が銃撃戦になり、カンボジア人1人が死亡、4人が負傷。警察は現場周辺で違法伐採された木材数十本を押収した。タイ字紙デーリーニュースなどが報じた。 |
10月09日(日) | インラック首相は近くマレーシア、シンガポールを訪問する予定だったが、洪水被害の拡大で国内が深刻な状況にあることから、外遊を延期。インラック首相は、ASEAN加盟国間の関係強化を目的に11日にマレーシア、12日にシンガポールを訪問することになっていた。 |
東北部でタクシン支持と民主主義を掲げる「赤服の村」が増殖中。タクシン派団体、反独裁民主主義同盟(UDD、通称「赤服」)のクルングテープでの大規模デモが武力鎮圧されてから約7ケ月後の2010年12月15日、東北部ウドンタニー県で最初の「赤服の村」が誕生。これまでに4000以上の村が「赤服の村」を宣言。10月09日にはウドンタニー県で初の「赤服の郡」の設立式典が行われ、UDD幹部のチャトポン下院議員らがクルングテープから駆けつけた。
「赤」は1960~1980年代に北部、東北部の農村に浸透したタイ共産党を彷彿させ、「赤服の村」の存在は反タクシン派特権階級の神経を逆撫でしている。UDD幹部の一部は「赤服は王室を愛する。」という標語を掲げ、特権階級との摩擦回避を図ろうとしたが、「特権階級に買収された。」といった批判が出て、支持は広がらなかった。
タイではタクシン政権(2001~2006年)を追放した2006年の軍事クーデター後、特権階級を中心とする反タクシン派と、経済発展が比較的遅れている北部、東北部などの地方住民、中低所得者層が多いタクシン派の政治抗争が続いている。タクシン派はクーデター政権下の2007年末に行われた総選挙で政権に復帰したが、2008年に反タクシン派デモ隊による首相府と2空港の占拠で追い詰められ、2008年末、「司法クーデター」と呼ばれた憲法裁判所によるタクシン派与党の解党で政権を失った。その後政権を握った反タクシン派アピシット政権は今年05月に下院を解散、07月の総選挙でタクシン派が過半数を制し、タクシンの妹のインラックが首相に就いた。 |
10月12日(水) | 昨年04月10日に クルングテープの大規模反政府デモを取材でロイター東京オフィス所属のカメラマン、村本博之が被弾して死亡した事件で、首都圏警察は、これまでに明らかになった、村本が死に至った状況を在タイ日本大使館側に説明。
首都圏警察幹部は、「調査は50%以上にまで進んでいる。」と説明。だが、同幹部は先月、「数週間のうちに調査が完了する。」と明言していた。大規模デモに関連する死者数は90人を超えるが、村本の事件を含め死亡例13件については、法務省特別捜査局(DSI)が捜査を行っている。 |
10月13日(木)まで | インラック政権は、前政権が06月に表明した世界遺産条約からの脱退を撤回する方針を固めた。18日の閣議で正式決定する見通し。
アピシット前首相率いる前政権は「タイ国境近くにあるカンボジアの世界遺産、カオ・プラウィハーン(プレアビヒア)寺院の管理計画がタイの領土侵害に繋がる。」と主張。06月にパリで開催された国連教育科学文化機関(ユネスコ)の第35回世界遺産委員会会合でこの計画を承認される見通しとなったことから、世界遺産条約からの脱退を表明。ただ、正式な脱退手続きをとる前に、アピシット政権は07月の総選挙で敗れ退陣。新政権はカンボジアのフン・セン首相と親しいタクシンの影響下にあり、タイとカンボジアは急速に関係改善を進めている。
カオ・プラウィハーン(プレアビヒア)はクメール王国が09~11世紀に建立したとされ、タイとカンボジアが領有権を争った末、1962年に国際司法裁判所がカンボジア領とする判決を下し、2008年に世界遺産に登録された。周辺地域でカンボジアと武力衝突が起こり、今年02月と04月には両国軍が大砲、ロケット弾を撃ち合うなど本格的に交戦した。この戦闘で双方の兵士、住民ら30人近くが死亡、100人以上が負傷し、周辺地域の住民10万人以上が一時避難。 |