タイクーデター Thai Coup d'état

ver.2.5592 81/05/18

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2006年09月19日(火)夜半

タイのテレビ局が一斉に通常放送を中止し、「クーデターが発生。
国軍が全土を掌握。タイ憲法は失効した。」と繰り返し放送を始めた。



目次はこちら → 目次


タクシンとタクシン一族の詳説は膨大になったので、
分離してこちら(未完成) → タクシン Thaksin

1981年04月のクーデター未遂事件、1985年09月のクーデター未遂事件、
1991年クーデター(1992年の5月流血事件)は、
こちら → 1991年タイクーデター Thai Coup d'état in 1991

繰り返された政変、戦争、タイ王朝史は、
こちら(アユタヤ朝中期まで完成) → タイの王朝 Thai Dynasty


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37章 国外逃亡犯タクシン免罪法案と改憲に対し、憲法裁の審議中止命令
05月26日(土)反タクシン組織の民主主義市民連合(PAD)首脳のソンティは、PADが毎週ルンピニー公園で開いている集会で、反タクシン派テレビ番組の公開収録を行い、久しぶりに姿を見せた。
支持者数百人の前で、「国民和解法案は、タクシンの免罪、収監回避を目的としたもの。」と断固反対する姿勢を強調し、「今回が最後だ。負けたら死ぬ。」と、支持者に反対運動への参加を呼びかけた。国民和解法案の下院審議が開始される30日に国民和解法案に反対を表明すべく、アナンタサマーコム宮殿前で反対集会を開き、その後、国会議事堂までデモ行進する予定。
2005年09月15日~2011年05月10日の間、政治関連の罪に問われた政治家、公務員、一般市民に恩赦を適用するとした国民和解法案は、野党マートゥプーム党党首のソンティ元陸軍司令官によって議会に提出されたもの。緊急案件として30日の31日の両日、下院で審議される。
PAD首脳のソンティは、この法案の通過阻止について、「勝利しようと敗北しようと私にとっては最後の戦い。」と、その後は政治活動から身を引く意向。
タクシン派が下院の過半数を抑えていることから、反タクシン派は国会で和解法案の成立を阻む手段がない。阻止するには、憲法裁判所が法案内容を違憲とする判断を下すか、大規模な街頭デモで法案撤回に追い込むかしかない。そうした意味で、30日のPAD集会にどの程度の人数が集まるかに、法案の運命は大きく左右される見通し。
タクシン3派与党プア・タイ党は国民和解法案への対応を明確にしていない。「和解」と銘打ったものの、内容はタクシンへの有罪判決を洗い流し、帰国への道筋を付けるもので、国会で採決を強行すれば、軍、世論の反発を招きかねない。ソンティ元司令官に法案提出を任せたのもこうした懸念からとみられ、世論、軍、反タクシン派の動向を見て対応すると見られる。
タクシン派と反タクシン派の対立は当初、新興財閥と特権階級の権力闘争と見られたが、「紛争が長引く中、民主化勢力と特権階級の対立に深化した。」という見方がある。タクシン派は2006年のクーデターと同派解党を命じた2008年の司法判断で、2度、政権を追われたが、総選挙では2001年、2005年、2007年、2011年と4連勝中。反タクシン派は軍事クーデター、裁判、街頭デモなどで対抗し、不安定な政局が続いている。
タクシンの帰国への道筋を付ける国民和解法案を提出したソンティ・ブンヤラカリン元陸軍司令官は1946年生まれのイスラム教徒。陸軍士官学校を卒業して任官し、2005年、タイ軍の実力トップである陸軍司令官にイスラム教徒として初めて就任。当時、軍の掌握を図るタクシン首相は、軍に強い影響力を持つプミポン国王側近のプレム枢密院議長(元首相、元陸軍司令官)と対立を深めていた。ソンティ司令官は首相が外遊中の2006年09月19日、陸軍部隊をクルングテープに送り込み、首相府やテレビ局などを制圧し、憲法を停止して全権を掌握。同日中にプレム議長同席のもと、プミポン国王夫妻に面会し、軍事政権を樹立した。その後、元上司であるスラユット枢密顧問官(元陸軍司令官)を首相に据えて自らは表舞台から徐々に身を引き、翌年、陸軍を定年退官した。以降、目立った動きを見せていなかったが、2011年の下院総選挙にイスラム系小政党の党首として出馬し、当選。タクシン派が多数を占める下院で、タクシン派と反タクシン派の和解を模索する国民和解検討委員会の委員長に就任し、世間を驚かせた。
ソンティがタクシンに利する法案をまとめ、国会に提出した真意は不明。ソンティが軍を退官した後、短期間軍政トップを務めたチャリット元空軍司令官は2011年05月、枢密顧問官に任命されている。
一方、「和解法案」反対の狼煙を上げた市民団体、民主主義市民連合(PAD)の創設者、ソンティ・リムトーングクーンは支那国民党系の移民2世で、1947年生まれ。大手新聞社マネジャー・メディア・グループ(MGR)を創業し、1990年代に携帯電話、通信衛星へと事業拡大を図ったが、1997年のアジア経済危機で経営が破綻。2001年の下院総選挙では自社メディアを動員し、実業家仲間で年も近いタクシンを支持。タクシン政権発足後はMGRに対する国営クルンタイ銀行(KTB)の債権放棄などで恩恵を受けた。しかし、2005年に突如タクシン政権打倒を掲げ、PADを設立。タクシンを王室廃止を狙う腐敗政治家と糾弾。反タクシン感情を煽り、一大運動を巻き起こした。
PADの活動は成功を収めたが、MGRは経営再建に失敗し、2008年に裁判所が破産を宣告。傘下の新聞、雑誌、衛星テレビ局はその後、スタッフごとPAD系の別会社に移動し、事業を続けている。ただ、新会社でもここのところ、給料遅配が起きているという。
ソンティは「MGRの経営状況を偽りKTBから約11億Bの融資を受けた。」として証券取引法違反に問われ、今年02月、一審のタイ刑事裁判所で懲役20年の実刑判決を受けた。即日控訴し、同日保釈されたが、ほかにもPADによる2008年の空港占拠の損害賠償、名誉棄損などの裁判を抱えている。昨年01月には「ソンティとタクシンがクウェートで密談した。」という消息筋情報がタイ字紙で報じられたが、ソンティは否定。
「金」と「法律」の紛争が目立つソンティだが、PAD支持者には「王室の守護者」として高い人気を誇る。ただ、国民の多くは度重なる街頭デモに嫌気が差しているとみられ、「国民和解法案反対」、「タクシンの帰国反対」でどれだけデモ参加者を集められるかは不透明。
反タクシン組織の民主主義市民連合(PAD)が国民和解法制定に強く反対している問題で、国立タマサート大学法学部のキティサック准教授は、05月30日と31日に下院審議が予定されている国民和解法制定案について、「法制定に必要な要件が欠けている。何を目的とした法なのか明確にされておらず、だれが恩恵を受けるかもはっきりしない。」、「国民和解法制定が問題に繋がり、憲法に抵触する可能性がある。」との見方。
反タクシン派は、国民和解法の狙いが国外逃亡中のタクシンの免罪・収監回避などと批判しているが、キティサック准教授によれば、「国民和解法のもとでだれを恩赦対象とするかが明確にされていないのは、起草者が対象の拡大を目論んでいるためと考えられる。」
刑法112条に規定された不敬罪については「最高刑禁固15年は重過ぎる。」といった意見が一部から出ているが、市民団体の「刑法112条改正キャンペーン委員会」は05月29日にも下院議長に対し、2万7296人の署名を提出して同条改正を要請する予定。同団体はこれまでに約3万8000人分の署名を集めたが、このうち1万人以上の署名が無効だったことから、残りの署名を提出することにした。法律では有権者1万人以上の賛同があれば法改正を要請できる。
同団体によれば、「禁固3~15年という罰則規定、『誰でも警察署に不敬の訴えをすることできる。』との規定などを改める必要がある。」
05月27日(日)東北部、北部などの各県で県長(任期4年)選挙。
東北部スリン県では野党プームチャイ・タイ党推薦のキティパットが27万6652票で当選。タクシン派与党プア・タイ党推薦のトンチャイは21万0514票で2位。有権者数は98万9832人、投票率は56%。
北部チエンライ県ではプア・タイ党推薦のサラクチットが34万1611票を獲得し、17万6197票だった現職のラタナー県長を破り当選。有権者数は85万9752人、投票率は66%。サラクチットはタクシンの側近のヨンユット元天然資源・環境相の妻、ラタナーは05月05日のチエンライ市長選で勝利したワンチャイ市長の妻で、激しい選挙戦が展開された。
東北部ロイエット県ではプア・タイ党推薦のマンコンが19万0993票で当選。有権者数97万8986人、投票率57%。
北部ピチット県では現職のチヤムシリーポン県長が12万9424票で再選。有権者数41万3313人、投票率49%。
中部スパンブリ県では現職のブンチュー県長が24万7833票で再選。有権者数61万1014人、投票率58%。
05月28日(月)反タクシン陣営から「タクシンの免罪が狙い。」といった批判の出ている国民和解法案について、最大野党・民主党のオンアート議員は、「内容が不適切。」、「性急な法制定は憲法違反。」など批判し、ソムサク下院議長に取り下げを要請。
野党マトゥプーム党のソンティ党首(元陸軍司令官)が提出した国民和解法案は緊急案件として30日と31日に下院で審議される予定。また、アピシット民主党党首によれば、「政権党プア・タイ党を率いるインラック首相は、国民和解法案に対する党の姿勢を明確にせず、『議会に委ねる。』としているものの、最多の議員を擁するプア・タイ党が事実上決定権を握っており、理屈に合わない。首相は賛否を明らかにする必要がある。」
クルングテープで05月30日~06月01日にかけ、東アジアに関する世界経済フォーラム(WEF)が開催されるが、キティラット副首相兼財務相は、「反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)が30日に予定している大規模抗議活動がWEF開催に影響することはない。」との見方。
国民和解法制定に反対するPADは、制定案の下院審議が開始される30日に都内ロイヤルプラザで抗議集会を行う。WEF会場のシャングリラホテルとロイヤルプラザは直線距離で5㎞ほど離れている。キティラット副首相は、「(PADには)WEFの重要さを理解してもらいたい。」と述べている
法務省特別捜査局(DSI)のタリット局長は、「高架電車BTSスカイレインの運営権を違法に延長した。」としてクルングテープ都都庁を起訴する方針であることを明らかに。
この問題では、反タクシン派・民主党の影響下にある都庁は「合法」と主張しているが、タリット局長によれば、「内務省から『都庁には運営権延長の権限がない。』」と説明があった。」
タリット局長は06月27日、起訴に向けて、この問題をDSIの特別捜査委員会に取り上げるよう要請。受理された場合、関係者から聞き取りなどを行う予定。
05月29日(火)マトゥプーム党ソンティ党首(元陸軍司令官)の国民和解法案に関する下院審議を翌日に控えた05月29日、 政権党プア・タイ党のケオミーチャイ、ニヨム、ナタウット3議員がそれぞれ和解案を下院に提出。
これら4案はほぼ同じ内容とされるが、ソンティ案には、プア・タイ党の実動部隊、反独裁民主主義同盟(UDD)から反対意見も出ているため、プア・タイ党は所属議員を通じて独自の和解案を提出することで、ソンティ案に距離を置こうとした可能性がある。また、先に「独自案を用意している。」と述べていたプア・タイ党幹部のチャルーム副首相は、和解案を提出しなかった。だが、これまでに提出された4案は、内容の類似性から、下院委員会によって1つの案にまとめられる可能性が高いが、その最終案がチャルーム案に基づいたものとされることも考えられる。
不敬罪を規定した刑法112条の改正を求める市民団体「刑法112条改正キャンペーン委員会」が、 約2万7000人の署名とともに同条改正を要求する書面を副下院議長などに提出。
不敬罪規定の改正は、政権党プア・タイ党の実動部隊、反独裁民主主義同盟(UDD)のメンバーも要求しているが、学識経験者らが率いる同団体は、「(政治色のない)一般市民からの要求。」と説明。
反タクシン派団体の民主主義市民連合(PAD)は、記者会見を開き、タクシンに対する実刑判決の無効化などを含む国民和解法案の国会審議入りに反対し、30日に都内ラーマ5世広場前で集会を行うと発表。
13時頃、アナンタサマーコム宮殿前に集合し、15時に国会議事堂までデモ行進する予定。反タクシン派の他団体も合流する方針を打ち出している。
在タイ日本大使館は、反タクシン派団体の民主主義市民連合(PAD)が、都内で抗議集会を実施することを発表したことを受け、「抗議集会の周辺で交通渋滞や混雑が予想される。」として、在住日本人、旅行者に対し注意喚起。

市民民主化同盟(PAD)による抗議集会の実施(5月29日現在)

1.治安当局等によれば,市民民主化同盟(PAD:通称「黄シャツ・グループ」)は,国民和解法案が国会に提出されたことを受けて同法案に反対するために以下のとおり抗議集会を行う模様です。

●日  時:5月30日(水)午前9時頃~
●場  所:ラマ5世騎馬像前。その後国会議事堂へ向けてデモ行進を予定。
●人  数:5,000人以上が参集する可能性有。

2.つきましては,上記1.のとおり,PADによる抗議集会の影響により,抗議集会が実施される周辺においては交通渋滞や人の混雑が予想されますので,報道等から最新情報の入手に努めるとともに,抗議集会が実施される周辺に近づく場合には,十分に注意を払ってください。

(問い合わせ先)
○在タイ日本国大使館領事部
 電話:(66-2)207-8502、696-3002(邦人援護)
 FAX :(66-2)207-8511
05月30日(水)通常国会で、クーデター以降の政治犯に恩赦を与える国民和解法案が審議されることを受け、各地から反タクシン派団体が国会議事堂前に集まり、抗議デモを開始。
2008年にスワンナプーム空港などを占拠した反タクシン派団体の民主主義市民連合(PAD)の動きに連動し、各地から反タクシン派の団体が国会議事堂前に、「和解法案」反対のデモを開始し、数千人が議事堂前に集結。治安当局はデモ隊の進入を防ぐため、国会議事堂の正門を閉じ、周辺の一部道路を封鎖。
一方でタクシン派団体の反独裁民主主義同盟(UDD)も抗議デモに対抗するため、同様に国会議事堂前に集結。
デモを指揮したPAD創設者で実業家のソンティ・リムトーングクンは街宣車の上で演説し、「タクシンの帰国をあらゆる手段で阻止する。」と宣言。「和解法案」を提出したソンティ元司令官、PADが要求しているクーデターによる現政権転覆に応じないプラユット陸軍司令官らを批判。このため警察は、タクシン派と反タクシン派の衝突を防ぐため、900人の警察官を配置し対応に当たった。
タクシンに対する実刑判決の無効化などを含む国民和解法案の審議入りをめぐり、国会議事堂の内外で大荒れ。「和解法案」は下院の国民和解検討委員会(委員長、ソンティ・ブンヤラカリン元陸軍司令官)がとりまとめ、24日に下院に提出した。ほかにタクシン派与党プア・タイ党の下院議員らが似た内容の3法案を出し、全部で4法案が審議される見通しとなっている。
下院本会議で、国民和解4法案を緊急議題として31日の審議入りを図ったが、ソムサック下院議長が緊急議題の是非を問う採決を強行したところ、最大野党の民主党の議員らが強く反発。議長を「タクシンのために議長をやっているのか。」などと非難。野党民主党の男性議員が議長に詰め寄り、腕を摑んで椅子から引きずり降ろそうとした。警官が間に入り、この議員は引き離されたが、議長席の周囲で与野党の議員が睨み合う事態となったため、ソムサック下院議長は審議を一時中断。休憩を宣言し、議場の外に出た。

← 警官に守られたソムサック下院議長。

これを見た民主党の女性議員が議長の椅子を持ち上げて議場の外に放り出し、議長の椅子を運びだそうとした。この議員にプア・タイ党の女性議員が摑み掛かった。「議員が顔面を平手打ちされた。」との情報もあったが、当事者は全員否定。最終的には、議長代行が採決を行わずに閉幕を宣言。
タイのテレビのニュース番組は30日の騒ぎを「タイの国会でかつてなかったこと。」と報じた。
反タクシン組織の民主主義市民連合(PAD)の呼びかけで、国民和解法制定に反対する大集会がクルングテープ都内ロイヤルプラザで行われた。警察によれば、参加者は約5000人。
この抗議活動は、下院で同日に国民和解法制定案が審議されることから計画されていたものだ。集会でPAD首脳は、「国民和解法は君主の権限に背くもの。」、「司法に影響力を行使しようというタクシンの企み。」などと批判。
PADは31日も午前10時から抗議集会を行う予定。
軍事政権下の2007年に解党された初代のタクシン派政党タイ・ラック・タイ党の元役員111人に対する5年間の参政権停止処分が31日で解除されることを祝い、元役員とその支持者らがクルングテープ都内のホテルで式典。式典にはチャトゥロン元タイ・ラック・タイ党党首代行、ポンテープ元法相、スダーラット元保健相、チッチャイ元副首相、ワンムハマドノー元副首相、ポーキン元下院議長ら元役員57人が出席。
タクシンが創設したタイ・ラック・タイ党は2001年から政権を担当し、2005年の総選挙では下院議席の3分の2を占める圧勝を収めた。しかし、2006年09月、タクシンの権力拡大を危惧する特権階級が軍事クーデターで政権から追放。翌2007年、タイ・ラック・タイ党は特別法廷で解党され、役員全員の参政権が5年間停止。
チャトゥロン元党首代行は式典での演説で、軍事政権による憲法や参政権停止などが現在も有効なことに不満を示し、「真の民主主義に向け、不公正な司法制度を改める必要がある。」と主張。
国外逃亡中のタクシンはビデオ電話で参加し、元役員に犠牲に対する感謝と謝罪を伝えた。そして、「選挙を何度やっても我々が勝つ。」、「過去の苦痛を忘れ、前進しよう。」と呼びかけた。
昨年07月の総選挙では3代目のタクシン派政党であるプア・タイ党が過半数を制し、タクシンの妹のインラックが首相に就いた。人材払底気味のプア・タイ党に比べ、式典に出た57人には派閥領袖クラスの大物政治家が多く、プア・タイ党はこうした大物を閣僚や党幹部として迎えると見られている。
一方、タイ・ラック・タイ党元役員の1人であるタマラック元国防相は、「2006年04月の下院総選挙で選挙委員会の職員を買収し、選挙委データベースの改竄を図った。」として、刑事裁判所から懲役3年4ケ月の実刑判決を受けた。タマラックは即日控訴し、保釈保証金50万Bで保釈。
タイ・ラック・タイ党政権は2006年、反タクシン派市民によるクルングテープでの大規模デモを受け、解散総選挙に踏み切り、前年同様、大勝。しかし、野党民主党が選挙をボイコットした上、裁判所が技術的な問題を理由に選挙を無効とし、混乱が深まった。こうした状況の中、当時のタクシン首相は長期間の外遊に出発し、その間に軍事クーデターが勃発。
プラサン中央銀行総裁によれば、「ユーロ圏の債務危機と国内の政情不安がこの先1~2年にわたり、タイ経済の成長にとってリスクとなる恐れがある。」これまでにタイ経済を直撃した衝撃については、「タイ経済に免疫ができており、政府も財政・金融政策で対応する態勢を整えている。しかし、反タクシン組織の民主主義市民連合(PAD)が大規模な抗議活動を再開しており、政治的緊張が高まることが予想される。反政府活動がどのような展開を見せるかにも よるが、政情不安がタイ経済の成長にブレーキをかけかねない。」
05月31日(木)下院では30日、国民和解法案の扱いを巡って野党議員が激しく抗議して審議が中断したが、31日もタクシン派与党のプア・タイ党はタクシンに対する実刑判決の無効化などを含む「国民和解4法案」を緊急議題とすることの是非を問う採決を強行。ソムサック下院議長が野党議員が強く抗議する中、警官多数が下院議長の周囲を固める異様な状況の中、可決。野党議員らが議長を激しく非難。野党民主党は採決に抗議し、議場内は怒号に包まれた。法案の審議は01日から始まる見通し。
議場内は怒号や書類の束が飛び交い、議長は警察官らに守られて退席するという混乱状態となった。同日の決定に伴い、和解案は06月1日の下院審議で最初に取り上げられることになった。
国民和解法案に反対する反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)は前日に引き続き、クルングテープ都内ロイヤルプラザで大規模な抗議集会。
ここで、PADは、集会参加者に対し、06月01日も抗議集会を行うことを伝え、催涙ガスなどを用いた強制排除に備えてガスマスクを持参するよう呼びかけた。
PADとともに同案に反対している市民団体、グリーン・ポリティクスのコーディネーター、スリヤサイ(元PADスポークスマン)は、「(我々が)法案の通過阻止に拘るのは、(タクシン派が)タクシンの免罪を企んでおり、(国民和解法が)司法に打撃を与えるものであるため。」、「(タクシンなどを有罪とした)裁判所の判決を無効とするのは、クーデターを起こすよりはるかに悪い。」と述べた。
タクシンに対する実刑判決の無効化などを含む国民和解法案に抗議し30日に国会議事堂前で集会を行った反タクシン派団体、民主主義市民連合(PAD)は集会参加者の一部、約200人が31日も議事堂前に居座り、座り込みの長期化が濃厚となった。現場には調理場や簡易トイレが設営され、集会参加者には食事と飲み物が無料で配給されていた。早朝には反タクシン派の新興仏教団体サンティアソークの僧侶が托鉢に訪れた。警察は国会議事堂前に鉄条網を設置し、警官約2000人を動員し、警備にあたっている。
軍事政権下の2007年に解党された初代のタクシン派政党タイ・ラック・タイ党の元役員111人に対する5年間の参政権停止処分が解除され、元役員のうち、ワンムハマドノー元副首相、ワラテープ元副財務相、ウィーラカン元副内相らが、3代目のタクシン派政党であるプア・タイ党に入党。ウィーラカンは2010年にクルングテープ都心部を占拠したタクシン派団体UDD(通称スアデーン=赤服)幹部で、占拠事件後、名前をウィーラからウィーラカンに変えた。
06月01日(金)午前クルングテープ都サームセーン警察は、サームセーン地区内の学校に午後より臨時休校とするよう命令したことを明らかに。
この命令を受けラーシニーボン学園は正午、セントフランシスソフィア学園、セントガブリエル学園は午後02時をもって休校。
今回の臨時休校命令は、民主主義市民連合(PAD)を中心とした反タクシン派団体が、和解法案阻止のため国会議事堂に突入する恐れが出てきたため、その対策として一部道路が封鎖されることとなったことが理由。封鎖される道路は、ラーチャウィティー通、スコータイ通。
一時休戦状態となっていたタクシン派と反タクシン派の抗争がタクシンに対する実刑判決の無効化などを含む国民和解法案の国会提出を機に一気に再燃。
下院で多数を占めるタクシン派は国民和解法案でタクシンの免罪と帰国、憲法改正で反タクシン派の政治・司法への影響力排除を画策し、ビルマの民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーのタイ訪問(05月29日~06月03日)とクルングテープでの世界経済フォーラム(WEF)東アジア会議開催(05月31日~06月01日)に合わせ、ドサクサに紛れて和解法案の国会審議入りを図った。しかし、反タクシン派の野党民主党の反発で議場内が乱闘寸前となる一方、国会議事堂周辺では、民主主義市民連合(PAD)など反タクシンの王党派団体が警官隊と衝突し、国会前の道路を封鎖。
憲法裁判所は、任命制上院議員や民主党下院議員らの訴えを受け、新憲法案を起草する憲法起草議会を設立するための憲法291条改正案の国会審議を憲法裁が違憲かどうかの判断を下すまで中止するよう命じた。291条改正案の国会審議は第3読会の採決直前だった。
06月02日(土)ソムサック下院議長は、05~ 07日に予定していた和解法案と憲法291条改正案の国会審議延期を決定。
国外逃亡中のタクシンは、クルングテープ郊外で行われたタクシン派集会にビデオ電話で参加し、「憲法裁の命令はタクシン派インラック政権の転覆を狙ったものだ。」と主張。「反タクシン派が法治の枠外で蠢動し、両派の和解は困難になった。」という見方。また、初代タクシン派政党タイ・ラック・タイ党のチャトゥロン元党首代行は、「憲法裁の命令は権限の範囲外で手続き上も明白に違憲だ。」として、「憲法裁による憲法違反。」と批判。
インラック政権は01日、02日に首都警察の司令官と副司令官を更迭。反タクシン派デモ隊に道路封鎖を許したことによる懲罰人事と見られている。
下院のチエンマイ県3区補欠選で、タクシン派与党プア・タイ党公認のカセーム候補(48)が7万2385票を獲得し、2位の野党民主党候補に3倍以上の差をつけ圧勝した。有権者数は13万6273人、投票率は74%。
今回の補欠選はタクシンの姪のチンチンチャー・ウォンサワット前下院議員が虚偽の資産報告で失職したため実施された。チエンマイはタクシンの生まれ故郷で、選挙戦ではタクシンの妹のインラック首相も応援に駆けつけた。
タクシン派は選挙に強いことが強みだが、プア・タイ党は04月に行われた中部パトゥムタニー県の下院補欠選と県長選で連敗、05月には北部チエンライ市長選、東北部スリン県長選などで敗れ、退潮ムードが漂っていた。
06月03日(日)チャルン副下院議長は、「下院では予定通りに国民和解法案の第3、最終読会が行われる。」と述べ、憲法裁判所の審議差し止め命令を無視する考え。
憲法裁命令は、法案内容が違憲との訴えに伴うものだが、政権党プア・タイ党の事実上の最高実力者、タクシンなどは、「国民の大多数の支持を得た政権の意向を蔑ろにするものだ。」と強く反発している。チャルン副議長によれば、「法律専門家に検討させたところ、憲法裁の命令で議会を拘束することはできないとの結論に至った。」という。
法案の第3、最終読会は今月08日に予定されているが、上下両院は、審議差し止め命令が議会活動にどのような影響を及ぼすかについても協議する見通し。
国民和解法案の審議差し止め命令を政権党プア・タイ党が「越権行為」と批判し、裁判官の罷免請求の構えを見せているのに対し、憲法裁判所のワサン長官は、「法に基づいたもの。」と反論。
プア・タイ党の法律専門家によれば、「差し止め命令は、法案内容が違憲との訴えに伴うものだが、憲法68条では、このような訴えには検察の見解を添えることが必要とされている。」という。だが、ワサン長官は、「命令は憲法68条に基づいたもので違法な点はない。」としている。
また、ソムサック下院議長が差し止め命令無視の意向を示していることについて、ワサン長官は、「法案を最終的に承認するのは国会議員であり、命令は議員で構成される議会にも及ぶことになる。」との見方。
憲法裁判所の審議差し止め命令により国民和解法案の第3、最終読会通過が危ぶまれていることから、政権党プア・タイ党は、憲法裁の命令を無視して予定通りに読会を行うべく、国民和解法案に賛成する上下両院議員の署名を集める方針。
コーケウ、プア・タイ党議員によれば、「プア・タイ党は06月05日に開く会議で、与党議員、上院議員に署名を呼びかける予定。」という。しかし、憲法裁の命令に背いて法案の下院通過を強行すれば、同案に反対する反タクシン派が反発を強める可能性は極めて高い。
そのため、最大野党の民主党のアピシット党首は、「法案を巡る緊張、対立は政府が引き起こしたもの。(この上)、裁判所の命令を無視すれば、大混乱を引き起こすことは必至。」と 警告。
政権党プア・タイ党が、憲法裁判所の審議差し止め命令にもかかわらず、国民和解法案の第3、最終読会を予定通りに行おうとしているが、憲法裁判所関係筋によれば、「命令を無視しても、これを罰する規定は存在しない。しかし、命令に従わない政党が解党処分となる可能性がある。」
しかしプア・タイ党は、憲法68条では「違憲の訴えは検察の判断を添えて行う必要がある。」と定めているため、「今回の訴えは無効、差し止め命令も無効。」と主張。また、タクシン派寄りとされる、国立タマサート大学の法学者グループ「ニティラート」も、「憲法68条では、『個人・政党による憲法違反を検察、憲法裁に訴えることができる。』とされているものの、国民和解法案に関しては、主体は議会であり、個人でも政党でもない。そのため、違憲の訴えを行うことはできず、差し止め命令も無効。」と主張。
政府が、憲法裁判所の差し止め命令を無視して、政府が反タクシン派が反対する国民和解法案の審議を行うかどうかに関心が集まっていたが、ソムサック下院議長(国会議長)は、「08日の上下両院合同会議は予定通り開催するが、和解案の審議や採決は行わない。」と述べ、同案の第3、最終読会を延期することを明らかに。
読会は当初の予定では08日に行うことになっていた。延期の決定は、憲法裁との対決を避けるべきとの判断によるものという。また、ソムサック議長は、「13日と14日 に下院の特別会議を開く。だが、(最近上程された3案を加えた)国民和解4案は協議事項には入っていない。」とも述べた。
政権側は、差し止め命令は無効と主張して、第3、最終読会を強行する構えを見せていたが、ソムサック議長は、「命令無視は危険過ぎる。」として、最終的に延期を決定。
06月05日(火)タクシン派インラック政権は閣議で、スラナン・ウェーチャチーワ元首相府相を首相秘書官長に任命。スラナンは05月末で5年間の参政権停止処分が解除された初代のタクシン派政党タイ・ラック・タイ党の元役員111人のうちの1人。参政権停止中はテレビのグルメ番組のリポーターなどとして活動。野党民主党党首のアピシット・ウェーチャチーワ前首相は父方の従兄。

* スラナン・ウェーチャチーワ
1961年生。米コロンビア大学で国際関係学の修士号を取得。1995年、タクシン派政党タイ・ラック・タイ党の役員に就任。2001年、タイ・ラック・タイ党から下院選に出馬し、当選。2005年から首相府相を務めたが、2006年09月の軍事クーデターで失職し、翌年、5年間の参政権停止処分。
タクシン支持派の市民団体、反独裁民主主義同盟(UDD、通称スア・デーン=赤服)」は07日、憲法裁判所が憲法改正に向けた国会審議の一時中止を命じたことに抗議し、国会議事堂前で集会を開く予定。反タクシン派団体、民主主義市民連合(PAD)と衝突する可能性もあり、警察は警備を強化。
議会下院で多数を占めるタクシン派はタクシンに対する実刑判決の無効化などを含む「国民和解法案」を05月下旬に下院に提出する一方、反タクシン派の政治・司法への影響力排除を狙い、憲法改正の準備を進めてきた。しかし、反タクシン派の野党民主党が和解法案の審議入りに猛反発し、国会内は乱闘寸前に。国会議事堂周辺では01日、PADなど反タクシン派団体が警官隊と衝突し、国会前の道路を封鎖した。タクシン派は同法案の審議入りのタイミングを探っているが、強硬な反対を受け、具体的な日程が立てにくい状況。
一方、新憲法案を起草する憲法起草議会を設立するための憲法291条改正案の国会審議は第3読会の採決直前の01日、違憲かどうかの判断を下すまで審議を中止するよう憲法裁判所が命じ、こちらも暗礁に乗り上げた。タクシン派は「憲法裁の権限の範囲外として反発し、一部には採決を強行すべき。」という意見も出ている。
タイの司法はタクシン派と反タクシン派の抗争が激化した2006年以降、タクシン派が勝利した2006年総選挙の無効化、タクシン派政党の2度にわたる解党、タクシン派首相の事実上の解任など、一貫してタクシン派に不利な判決を下している。こうしたことから、「タクシン派内部には、反タクシン派が国際的に批判を受ける軍事クーデターの代わりに、裁判所を使った『司法クーデター』でタクシン派潰しを図っている。」という見方がある。
反タクシン組織の民主主義市民連合(PAD)が国民和解法案を「タクシンの免罪が狙い。」と批判して大規模な抗議活動を再開したことから、「クーデターが起きる。」との噂が広がっている。
その背景には、クーデターで痛い目を見たタクシン派がことあるごとに「クーデターが計画されている。」、「クーデターを阻止せよ。」などと支持者に呼びかけており、今回も反独裁民主主義同盟(UDD)幹部らが「政権転覆の可能性」に言及していることがある。
タクシン政権が追放された2006年09月の軍事クーデターは、PADの抗議デモなどでタクシン批判が盛り上がり、混乱が拡大したことが大きな要因とされ、PADの後押しで軍部が政権奪取に踏み切った格好だった。
一方、プラユット陸軍司令官は、PADの動きにイラついているようで、クーデターの可能性を強く否定。しかし、市民の多くは過去の経験から「軍部の行動は先が読めない。」と感じていることもあってか、司令官の否定にもかかわらず、クーデターの噂が広がり続けている。
05月30日と31日に開かれた下院会議が国民和解法案を巡って紛糾したことについて、上院議員20人が、「民主党の議員らの言動は問題。」として、オンブズマン(行政機関のありかたを監査する機関)に対し、詳しい調査を要請。
上院議員が問題視した言動は、ソムサック下院議長に退場を迫った、議長のイスを運び出そうとした、議長に書類を投げつけたなど。
一方、政権党のプア・タイ党は同日、 不適切な言葉で国民和解法案を非難するビラがはられたとして、首都圏警察に捜査するよう求めた。「プア・タイ党は、民主党の関与を疑っている。」という。
06月06日(水)憲法裁判所が国民和解法案の下院審議差し止めを命じたことにタクシン派から批判が出ている問題で、憲法裁は記者会見で、「憲法改正案(国民和解法案)に関する訴えを受理し、国民和解法案の第3、最終読会の延期を命じたのは、裁判所の権限の範囲内。」と説明。同裁判所はまた、訴えが法的要件を満たしていない、命令は越権行為で無効などとする指摘に強く反論。
ワサン憲法裁長官は、「憲法裁の判事は、憲法で許されていないことはできないと十分承知している。」と述べ 、「越権行為はあり得ない。」と強調。
06月07日(木)憲法裁判所が国民和解法案の審議差し止めを命じたことに政府などタクシン陣営が反対している問題で、命令の根拠となった「違憲の訴え」について、検察当局が「要件を満たしていない。」と考えていることがわかった。
これは、差し止め命令を合法とする憲法裁の見解を否定するものだ。検察が政府・議会を支持する姿勢をとったことで、政権党プア・タイ党などタクシン陣営による憲法裁批判がさらにエスカレートする可能性が出てきた。
検察庁の説明によれば、「これまでに上程された国民和解法案は、憲法に則って憲法を改正しようというもので、立憲君主制下の民主的政府を打倒したり、憲法を否定する形で政権を奪取したりしようとしたものではない。従って、法案審議は行政府による正当な権限の行使であり、審議差し止めは不当。」
タクシン支持派の市民団体、反独裁民主主義同盟(UDD、通称スア・デーン=赤服)は、憲法裁判所が憲法改正に向けた国会審議の一時中止を命じたことに抗議し、クルングテープの国会議事堂前で数百人規模の集会。UDD幹部はその後、憲法裁判事7人の罷免を求める文書を上院副議長に手渡し、罷免要求の署名活動を開始した。警官隊や反タクシン派団体との衝突は起きなかった。
憲法裁判所は01日、任命制上院議員や野党下院議員らの訴えを受け、新憲法案を起草する憲法起草議会を設立するための憲法291条改正案の国会審議を憲法裁が違憲かどうかの判断を下すまで中止するよう命じた。291条改正案の国会審議は第3読会の採決直前で、タクシン派与党やUDDは「司法の立法府への介入」、「憲法裁のクーデター」などと批判。
06月08日(金)国民和解法案(憲法改正案)の審議差し止め命令に検察庁が異議を唱えたことに対し、憲法裁判所は、「検察の認識の如何に関わらず、憲法裁判所には 違憲の訴えを審理する権限がある。」との判断を表明。
違憲の訴えについて、検察は「要件を満たしていない。」と指摘している。だが、憲法裁は、「検察はその権限の範囲内でこのような判断を示したもの。しかし、この判断が、訴えを受理、審理するという憲法裁の権限に影響することはない。」としている。これは、「訴えを受け付けて、違憲かどうかを審理して決定を下すまで下院審議を中止するよう命令したことに法的問題はない。」との憲法裁の見解を再確認したもの。
06月10日(日)午後野党民主党は、クルングテープ都内のウォンウィエンヤイで支持者数千人を集めた政治集会。壇上に立ったアピシット党首(前首相)、ステープ前幹事長らは、タクシン派与党プア・タイ党の下院議員などが国会に提出した国民和解法案を、「狙いはタクシンの免罪だけで、和解でも何でもない。」と批判。タクシン派との対立姿勢を鮮明に。
国外逃亡中のタクシンは、在任中の汚職(職権乱用)で禁固2年の有罪が確定していることから、帰国すれば直ちに刑務所送りとなる。ステープ前幹事長によれば、「刑務所送りを回避し政界復帰を可能にすべく、タクシン派は『国民和解』を口実にタクシンなどへの恩赦適用を目論んでいる。」
国民和解法案はタクシン政権を追放した2006年の軍事クーデターを指揮したソンティ元陸軍司令官らが提出したもので、内容は①2005年09月~2011年05月に起きた政治集会や政治的な意見表明による法律違反と、政府によるこれらの取り締まりに際した法律違法について、全ての刑事責任追及を中止し、すでに出た判決を無効とする。②2006~2007年の軍事政権が設置した組織による司法案件の刑罰を無効とする。③役員を務める政党の解党で5年間の参政権停止処分を受けた政治家全員の参政権を回復する。
タクシンは国外滞在中の2008年、首相在任中に当時の妻が国有地を競売で購入したことで懲役2年の実刑判決を受け、その後は投獄を避けるため、タイに帰国せず、主にドバイに滞在。2010年02月には一族の資産約470億Bが不正蓄財として国庫に没収され、これをきっかけに、2010年03~05月のタクシン派市民によるクルングテープ都心部の占拠、死者91人、負傷者1400人以上を出した治安部隊との衝突に発展。タクシンへの実刑判決と資産没収はいずれも軍政が設置した組織による調査の結果で、和解法が施行されれば、②により、無罪放免、資産返還となる見通し。
民主党や反タクシン派団体、民主主義市民連合(PAD)は国民和解法案に強硬に反対し、議場内で乱闘寸前となったり、国会議事堂前で抗議集会が開かれるなど、緊迫した情勢が続いている。
憲法裁判所が国民和解法案の審議差し止めを命令したことに政権党プア・タイ党などタクシン派が強く反発している問題で、「タクシン派が反タクシン派の反対にもかかわらず、議会の支持をとりつけて国内和解法案の第3、最終読会を強行する。」との見方が強まっている。
これは具体的には、「06月12日の上下両院合同会議でソムサック国会議長(下院議長)が命令に従うか否かの決議を提案。賛成多数で命令無視、読会実施が決まる。」というもの。
だが、「混乱を避けるため国会を速やかに閉幕すべき。」と主張している最大野党の民主党が強く抵抗することが予想され、12日の会議も大荒れとなる可能性。なお、下院の与党院内幹事ウドムデート議員によれば、「国民和解法案は協議事項に含まれていないため、政府が12日あるいは13~14日の合同会議で第3、最終読会と採決を強行することはない。」
06月11日(月)「タクシン派が憲法裁判所の命令を無視して国民和解法案の第3、最終読会を強行すれば、政治的混乱のエスカレートは避けられない。」との見方が出ているが、政権党プア・タイ党関係筋によれば、「インラック首相は事態の悪化を避けるため読会を延期すべきと考えている。」と言う。これは、06月11日に同党の戦略委員会(議長・ソムチャイ元首相)が「首相の顧問団は首相に読会延期を進言すべき。」との提言を承認し、同提言が同党議員の会合でも取り上げられたことを受けたもの。会合では、ナタウット副農相やコーケウなど反独裁民主主義同盟(UDD)に所属する議員が読会延期に強く抗議したものの、プア・タイ党の重鎮、チャルーム副首相らは延期に同意。
06月12日(火)上下両院合同会議で、プア・タイ党のソムサック国会議長(下院議長)は、反タクシン派が反対する「国民和解法案に関する今国会における審議を打ち切る。」と宣言。これで、同案の第3、最終読会は次期通常国会に持ち越されることになった。合同会議では、チット上院議員が、「憲法裁判所による和解案の審議差し止め命令に議会が従う必要があるか否かを協議する。」との緊急動議を提出。
議長が動議を採用するかどうかの採決を行おうとしたが、議場にいた上下両院議員644人の約半数が退席。採決は行われ、結果は賛成319、反対1というものだったが、出席議員の半数(322)には達せず、動議は不採用。
これを受け、ソムサック議長は、「国と国民和解にとって最善策」との理由で、「新憲法案を起草する憲法起草議会を設立するための憲法291条改正案の第3、最終読会とタクシンに対する実刑判決の無効化などを含む国民和解法案の審議を次の国会会期まで延期する。」と表明。
両法案には反タクシン派が強く反発しており、インラック首相ら政権幹部は、「審議・採決を強行すれば、政権基盤が揺らぐ恐れがある。」と判断。今国会の会期は19日まで。
憲法291条改正案は第3読会の採決直前の06月01日、違憲かどうかの判断を下すまで審議を中止するよう憲法裁判所が命じ、暗礁に乗り上げた。タクシン派は「憲法裁の権限の範囲外」、「司法クーデター」などと批判し、一部には「採決を強行すべき。」という意見も出た。ただ、憲法裁の命令を無視して法案を可決した場合、法案成立に必要なプミポン国王の承認が得られず、インラック政権が退陣に追い込まれる恐れがあった。
タイの現行憲法は2006年の軍事クーデターでタクシン政権を追放した反タクシン派が制定したもので、任命制の上院議員、裁判官、選挙委員会委員らを通じ、反タクシン派が政治介入しやすい仕組みになっている。タクシン派は改憲で反タクシン派の司法・政治への影響力排除を狙ったが、出鼻を挫かれた形。
国民和解法案法案は05月下旬に下院に提出されたが、反タクシン派野党の民主党や反タクシン派市民団体が猛反発し、国会内は乱闘寸前、国会議事堂周辺では反タクシン派市民が警官隊と衝突する事態に発展。06月上旬には、憲法裁の命令に反発したタクシン派市民が国会前で数千人規模の集会を開き、憲法裁判事の罷免を要求。昨年以降、やや落ち着きを取り戻していた政情が、両派の衝突で一気に不安定化する可能性が出ていた。
インラック首相は、憲法を改正する意向を再確認するとともに、「国民和解法案(憲法改正案)の審議は時機を見計らう必要がある。」として、理解を求めた。ソムサック国会議長(下院議長)が「国民和解法案の第3、最終読会を次期通常国会まで延期する。」と宣言したことから、反独裁民主主義同盟(UDD)所属の政権党プア・タイ党議員らが強い不満を表明。
このため、インラック首相は、「憲法改正を断念したわけではない。」と力説して、これら議員を宥めようとしたもの。
中央選挙管理委員会は、「(最大野党の)民主党のサマート議員、(野党の)プームチャイ・タイ党のオーチット議員とキアット議員の3人に昨年の総選挙で選挙違反があった。」と判断し全員を議員失職処分としたこと、「クルングテープ都、チャイヤプーム県、ロッブリー県の当該選挙区で補欠選挙を実施する。」と発表。
違反の程度から3人は公民権停止とはならず、補欠選挙に出馬することが可能。サマート、オーチットは、有権者に現金を渡し、キアットは有権者に眼鏡を配ったもの。補欠選の期日は未決定。
06月13日(水)最大野党の民主党のステープ議員(元同党幹事長)は、新聞社とのインタビューの中で、「タクシンが交渉人を送ってきた。」と明らかに。ステープ議員は、交渉人の氏名を明らかにしていないが、関係筋によれば、「タクシン創設のタイ・ラック・タイ党(2007年05月に解党処分)の役員だった人物で、タクシンの使いとして先週ステープ議員と面会した。」と言う。
だが、ステープ議員は、「話の内容は国民和解だったが、タクシンはすぐに違うことを言出すので、彼と話し合うのは意味がなく、私を支持している人々を納得させることもできない。」と述べており、交渉には応じなかったとのことだ。「交渉人には、『タクシンは憲法改正と自らの免罪を求めるのを止めるべき。』との伝言を託した。」と言う。
政権党プア・タイ党の広報担当プロムポンが先に、「アピシット前首相(最大野党・民主党党首)が首相を辞めたにもかかわらず、1600万Bもする防弾装備公用車を返却していない。」と批判したのに対し、シリチョーク民主党議員は、「当局の許可を得て借用している。公用車は600万B程度のもの。」と反論。
アピシット党首が首相を務めていた際、タクシン支持団体の反独裁民主主義同盟(UDD)が過激な反政府活動を展開したことから、治安対策統括センターが臨時に設置され、治安対策統括センターは首相用に防弾装備公用車を提供。すでに解散した治安対策統括センターは、防弾装備車を計20台所有。民主党によれば、「アピシット党首は今も赤服軍団(UDD支持者)の攻撃目標とされており、厳重な身辺警護が必要。」
06月14日(木)政権党プア・タイ党関係筋によれば、「ヨンユット副首相兼内相(同党党首)が、内閣改造で内相ポストを失う可能性が高まっている。」
その要因としては、①国家汚職制圧委員会(NACC)が先日、当時副内務事務次官だったヨンユットが2002年03月の仏教寺院所有地の民間企業への売却を承認したのは法律違反と判断し、ヨンユットの起訴を検察に要請する方針を示したこと、②ヨンユットの内相としての働きに党内から不満が出ていることなどが挙げられる。
また、内閣改造については、08月以降と報じられていたものの、国民和解法案の第3、最終読会が次期通常国会(08月開幕)に持ち越しとなったことに反独裁民主主義同盟(UDD)が強く反発。これを宥めるため、UDD所属議員の中から閣僚を選ぶ必要があることから、07月とする見方も有力。
ヨンユットは2008年12月からプア・タイ党党首を務めているが、党首選びが難航したことから起用されたもので、影が薄く「暫定党首」との印象が強い。
06月17日(日)タクシン派の政権党プア・タイ党の実動部隊、反独裁民主主義同盟(UDD)は、「抵抗勢力が現政権の転覆を謀っている。」として、これを撥ねつけるべく、絶対君主制から立憲君主制への移行を実現した立憲革命からちょうど80年となる06月24日、民主記念塔で、これまでで最大規模の集会を開催してタクシン派の勢力を見せつける計画。反タクシンの特権階級に挑戦状を叩きつける形で、反タクシン派の反発を呼ぶ見通し。
UDDの首脳陣は、「旧権力層が独立機関を通じて反撃に出てきた。」と感じている。これは、先に憲法裁判所が国民和解法 案(憲法改正案)の第3、最終読会の差し止めを命令したことなどが原因。
なお、関係筋によれば、タクシン派は反タクシン派との対立を「民主化推進派と守旧派の対立」としているが、これについては、「私利私欲を優先した金権政治、汚職、国家ビジョンの欠如などへの批判をかわすためにもっともらしい言い訳をしているに過ぎない。」との見方もある。
タクシンが15日から日本を訪問。タクシンの法律顧問であるノパドン元外相によると、「5~7日間滞在して、知人の政治家、実業家らと会い、その後、拠点とするドバイに戻る予定。」という。報道により、8日間に日程で日本を訪問中。
タクシンは2008年に汚職で懲役2年の実刑判決を受けており、日本の入管法では原則として入国が認められない。ところが、昨年07月のタイ総選挙でタクシン派が勝利し、タクシンの妹のインラックが首相に就任したことを受け、日本政府がタクシンの入国を認め、タクシンは08月に訪日。
タクシンは新聞社とのインタビューの中で、「国民和解法案に帰国実現の望みをかけている。」と述べた。タクシンは首相在任中の汚職(職権乱用)で禁固2年の有罪が確定。帰国すれば、逮捕、収監となる。議会に上程された国民和解法案(憲法改正案)では、タクシンを含む政治関連犯への恩赦適用、免罪が求められており、これが実現しないかぎり、タクシンは帰国せずに国外逃亡を続けるものと見られている。
だが、和解案は、タクシンの免罪に反タクシン派が強く反発し、第3、最終読会が次期通常国会に持ち越されることになった。
タクシン派は冷却期間を置き、その間に根回しをすることで和解案の議会通過を図ろうとしているようだが、「反タクシン派が態度を軟化させることはない。」との見方が支配的。
06月18日(月)最大野党の民主党の重鎮、ステープ議員が先に「タクシンの使者が会いに来た。」と暴露したことに対して、政権党プア・タイ党の議員で、プア・タイ党の実動部隊である反独裁民主主義同盟(UDD)幹部のチャトポンやナタウットなどから「作り事」といった批判が出ているが、アピシット民主党党首は、「タクシン側からの接触について、以前からステープ議員から報告を受けており、党首脳らにも説明していた。」と反論。
ステープ議員によれば、「使者はプア・タイ党と民主党による政権の樹立などを持ちかけてきた。」と言う。これが「2党間の裏取引」と誤解されることを恐れ、ステープ議員は民主党首脳らに報告。
また、プア・タイ党の広報担当プロムポンが「(接触があったというのなら)使者が誰かを明らかにせよ。」と迫っているが、ステープ議員は、「その必要はない。ボス(タクシン)に尋ねれば良い。国民には、私と、チャトポン、ナタウット両議員のどちらが信用できるかということで判断してもらいたい。」と述べている。
インターネット検索大手の米グーグルによると、2011年、傘下の動画投稿サイト、ユーチューブに投稿された動画374本について、タイ政府から、「不敬罪に抵触する疑いがある。」として、削除を要請された。削除要請があった動画は上半期225本、下半期149本で、グーグルは上半期の要請分の90%以上、下半期の70%について、タイから閲覧できないようにした。
06月20日(水)中央選挙管理委員会は、「『昨年07月の総選挙で民主党候補の名誉を傷つけた。』として、プア・タイ党のカルンを議員失職、参政権禁止とし、クルングテープ都12区で補欠選挙を実施する。」と発表。カルンは選挙運動の中で、対立候補だったタンクンを「同性愛者。」、「有権者を見下している。」、「民主党が演説会に参加するよう有権者にそれぞれ300Bを渡した。」などと中傷したもの。
中央選管によれば、「裁判でカルンが有罪となった場合、補欠選実施の費用をカルンが負担する必要がある。」
タクシン派の政権与党プア・タイ党は22日から07月03日にかけ、都内の4ケカ所で政治集会を開き、タクシンに対する実刑判決の無効化などを含む国国民和解法案と憲法改正に対する支持を訴える。
会場は22日がドンムアン区役所前、28日がウォンウィエンヤイのタークシン王像前、30日がクルングテープ都庁前、07月03日がショッピングセンターのインペリアルワールド・ラープラーオ前。時間はいずれも午後04時から深夜まで。
一方、タクシン派市民団体反独裁民主主義同盟(UDD、通称スア・デーン=赤服)は06月24日、タイの絶対王政を廃止した1932年の立憲革命から80周年を記念し、クルングテープの民主記念塔で集会を行う予定。
06月21日(木)米国による東部ラヨーン県のウタパオ海軍飛行場使用について野党・民主党がタイ政府に詳しい説明を求めている問題で、スラポン外相は、「米航空宇宙局(NASA)が『26日までに返答がなければ、飛行場使用の申請を取り下げる。』と伝えてきた。」と明らかに。NASAは、08月から09月にかけて同飛行場でこの地域の気象研究のためにサンプルを採取する予定というが、それには事前に機材を運び込んでおく必要があり、26日がタイムリミット。
スラポン外相によれば、「気象研究にはシンガポールとカンボジアが協力することで合意しており、タイの都合で研究が実施不可能となれば、これら近隣国や米国との関係に悪影響を及ぼしかねない。」
なお、民主党は、タイ政府による事前の説明がなかったことから、「タイ政府は、タクシンの米国入国を許可する代わりに飛行場を使用させる心積りだった。」とも批判。
クルングテープ都12区で下院議員補欠選挙が実施される可能性があることから、プア・タイ党のコーケウ議員はこのほど、チャトポンの出馬を党に要請する考えを明らかに。
両氏はともに、プア・タイ党の実動部隊、反独裁民主主義同盟(UDD)の幹部。「チャトポンは先に、立候補資格を欠いていた。」として議員失職。中央選管は20日、昨年の総選挙で「対立候補を中傷した。」として、カルン、プア・タイ党議員を失職とし、クルングテープ都12区で補欠選挙を行う方針を発表したが、カルンは最高裁が名誉毀損で有罪とした後に議員失職となるため、補欠選実施は数ケ月後となる見通し。
このため、「現時点での候補決定には、党内から『時期尚早』との声も出ている。」と言う。一方で、「大派閥の領袖であるヤオワパー(タクシンの妹)がチャトポンに出馬を打診した。」との情報もある。
外務省の発表によれば、インラック首相率いる経済使節団が07月17~21日にかけドイツとフランスを訪問。企業経営者など50人ほどからなる使節団は、両国で工場を視察したり、タイからの投資の可能性や欧州債務危機について話し合ったりする予定。なお、インラック首相が首相として欧州を訪問するのは今回が初めて。
タクシン派団体の反独裁民主主義同盟(UDD)が、今月24日に都内で集会を行うことを受け、在タイ日本大使館より注意喚起。

反独裁民主戦線(UDD)によるデモ集会等について (6月21日現在)

1.治安当局等によれば,反独裁民主戦線(UDD:通称「赤シャツ・グループ」)は,立憲革命80周年を記念し,以下のとおりデモ集会等を行う模様です。
●日  時 6月24日(日)10時~24時
●場  所 ラーチャプラソン交差点及び民主記念塔、デモ行進順路は下記参照
●人  数 1万人以上が参集する可能性有
●デモ概要 ・10時~12時,ラーチャプラソン交差点にてデモ集会を行う。
・12時~17時頃,車両に分乗してラーチャプラソン交差点を出発し,民主記念塔を目指しデモ行進を行う。
【順路】
・ラーチャプラソン交差点→ペッブリー通り→(クロンタン経由)→ラムカムヘン通り→(バンカピ経由)→ラップラオ通り→パホォンヨーティン通り→(戦勝記念塔経由)→ラーチャテーウィー通り→(国会議事堂前経由)→ラーチャダムヌーン通り→民主記念塔・17時頃(デモ行進が民主記念塔到着時)~24時,民主記念塔においてデモ集会を行う。

2.つきましては,上記1.のとおり,UDDによるデモ集会及びデモ行進の影響により,同集会及び行進が実施される周辺においては交通渋滞や人の混雑が予想されますので,報道等から最新情報の入手に努めるとともに,同集会が実施される周辺に近づく場合には,十分に注意を払ってください。

(問い合わせ先) ○在タイ日本国大使館領事部
 電話:(66-2)207-8502、696-3002(邦人援護)
 FAX :(66-2)207-8511
06月24日(日)タクシン支持団体の反独裁民主主義同盟(UDD)は、タイの絶対王政を廃止した1932年の立憲革命から80周年を記念し、クルングテープ都ラチャーダムヌン通の民主記念塔で大規模な集会を行い、民主主義記念塔周辺に集まった大勢の支持者を前に、「最高裁判事の罷免請求に賛同する約10万人の署名が集まった。」と明らかに。演壇に立ったUDD幹部らは集会参加者に対し、タクシン派与党が進める憲法改正への支持を呼びかけた。今回の集会の目的は、タクシン派政権の行く手を阻もうとしている守旧派にタクシン派の勢いを見せつけること。
赤服軍団として知られるUDDは、プア・タイ党の実動部隊。先に政府の支持する国民和解法案(憲法改正案)の第3、最終読会の差し止めを最高裁が命じたことから、同命令に賛成した判事7人の罷免を請求すべく署名集めを行っている。罷免請求には有権者5万人の賛同が必要とされている。
タイの現行憲法は2006年の軍事クーデターでタクシン政権を追放した反タクシン派が制定したもので、任命制の上院議員、裁判官、選挙委員会委員らを通じ、反タクシン派が政治介入しやすい仕組みになっている。タクシン派は改憲による反タクシン派の司法・政治への影響力排除を狙い、新憲法案を起草する憲法起草議会を設立するための憲法291条改正案を国会に提出したが、同改正案は第3読会の採決直前の06月01日、違憲かどうかの判断を下すまで審議を中止するよう憲法裁判所が命じ、改憲の動きは暗礁に乗り上げた。
タクシン派は「(憲法裁の)権限の範囲外」、「司法クーデター」などと憲法裁を批判し、一部には命令を無視し採決を強行すべきという意見も出た。しかし、「法案可決を強行した場合、法案成立に必要なプミポン国王の承認が得られず、インラック政権が退陣に追い込まれる恐れがある。」と判断し、今国会での採決を見送った。
一方、憲法裁は21日、UDD幹部のチャトポン前下院議員の保釈取り消しを刑事裁判所に要請。チャトポンは「憲法裁による保釈取り消し要請は法的な根拠がない。」と反発。チャトポンは2010年04~05月のUDDによるクルングテープ都心部占拠を指揮し、テロ容疑などで逮捕された。昨年07月の下院選で当選したが、投票当日は拘留中で投票できなかったことから、憲法裁が先月、議員資格がないとする判決を下し、チャトポンは下院議員を失職。
憲法裁などタイの司法はタクシン派と反タクシン派の抗争が激化した 2006年以降、タクシン派が勝利した2006年総選挙の無効化、タクシン派政党の2度にわたる解党、タクシン派首相の事実上の解任など、一貫してタクシン派に不利な判決を下している。
06月26日(火)ウタパオ海軍飛行場を気象研究のために使用するとの米航空宇宙局(NASA)の要請を08月開幕の次期通常国会で審議することが閣議で決まり、NASAが要請を取り下げる可能性が出てきたが、これについて、スラポン外相は、「国益を考えない野党に責任がある。」と述べて、最大野党の民主党を非難。
民主党は、政府が事前に詳しい説明していなかったこともあって、いくつかの疑問点を指摘。このため、憲法の規定に従って国会で審議することになった。だが、これでNASAが示していたタイムリミットには間に合わなくなった。政府の対応にも批判が出ているが、スラポン外相は、「(国会審議を経ずに閣議で要請受諾を決めていたら)憲法裁判所に(民主党が)提訴していただろう。」と述べ、「責任は全て民主党にある。」としている。
06月27日(水)米航空宇宙局(NASA)がウタパオ海軍飛行場を拠点にこの地域の気象研究を行うというプログラムの実施が不可能となったことについて、政権党プア・タイ党が「責任は民主党(最大野党)にある。」としているが、アピシット民主党党首は、「我々は熟考と情報の開示を政府に求めたにすぎない。批判の矛先をわれわれに向けるのは馬鹿げている。」と強く反論。
また、民主党の広報担当チャワノンは、スラポン外相が「野党のせいでタイ政府がプログラムに許可を与えることができなかった。」としていることについても、「事実を捩じ曲げ、国民に嘘をついている」と批判。
06月28日(木)ソムサック下院議長は、「憲法改正については国民の間で広く議論する必要がある。」として、08月01日開幕の次期通常国会で最初に取り上げられる予定の国民和解4案(憲法改正案)を全て取り下げることを提案。
和解案のうち、弱小野党のマトゥプーム党のソンティ党首が上程した案は第3、最終読会を残すのみだったが、憲法裁判所の差し止め命令が出たことで、次期通常国会に持ち越されることになった。また、他の3案は与党議員らによって上程。
だが、民主党や反タクシン組織の民主主義市民連合(PAD)が「タクシンの免罪が狙い。」などと和解案に強く反対しており、国会で和解案が取り上げられれば、再び強く反発し、政治が混乱するのは必至。このため、ソムサック議長は、「和解案をいったん取り下げるのが望ましい。」との認識を示したもの。
06月30日(土)タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)幹部のコーケウ、プア・タイ党議員は、クルングテープ都庁舎前のランコンムアンプラザで行われたUDDの集会で、約500人の支持者を前に、「国民和解4案の国会審議を延期するのが望ましい。」との考えを明らかに。これは、4案をいったん取り下げるという先のソムサック下院議長の提案を支持するもの。
UDDはこれまで、憲法裁判所の審議差し止め命令で政府が和解案の第3、最終読会の次期通常国会持ち越しを余儀なくされたことに強く反発。「国会開幕後に直ちに和解案の審議を行うべき。」としていた。
しかし、コーケウは、「政治状況が落ち着いてから和解案を審議するのが良い。」と提言。「和解案の議会通過を急げば、反タクシン派が強硬に抗議するのは必至で、これによって混乱が生ずるのを回避する必要がある。」と訴えた。
ただ、コーケウは、「憲法裁が和解案に関して『不当な判断』を示した場合、これに抗議してUDDは大規模集会を決行する。」としている。先の差し止め命令は、和解案の内容が違憲との訴えがあったことから、これに憲法裁が判断を下すまでの暫定措置となっているが、コーケウによれば、「憲法裁が訴えを認めて違憲との判断を下すことは、不当であり、受け入れられない。」
タクシンに対する実刑判決の無効化などを含む国民和解法案の国会審議が先送りされる公算が強まった。同法案はタクシン派が05月下旬に国会に提出したが、反タクシン派の反発が予想以上に強く、法案可決を強行すれば、タクシン派インラック政権が転覆しかねないという懸念が浮上。06月末になり、タクシン派幹部から「当面は審議を見送るべき。」という意見が相次いだ。
タクシン派政権与党プア・タイ党は和解法案の05月末の国会審議入りを目指したが、反タクシン派が激しく反発し、下院で与野党議員が乱闘寸前となったほか、国会議事堂前の道路を反タクシン派市民団体が封鎖。結局、同法案の審議入りは見送られ、06月19日に下院は閉会。
タクシン派はその後、08月01日に開会する次期国会で和解法案の成立を目指す方針を示したが、06月28日にソムサック下院議長が「法案の取り下げが望ましい。」という考えを表明。29日にはUDD幹部のナタウット副農相が法案審議を「先送りすべき。」と述べた。06月30日にクルングテープ都庁前で開かれたプア・タイ党の政治集会でも、UDD幹部らから、法案審議の先送りを支持する発言が相次いだ。
07月01日(日)憲法裁判所が07月05日と06日に国民和解法案の合憲性を検討する予定であることから、タクシン派の政権党、プア・タイ党とその実動部隊、反独裁民主主義同盟(UDD)が違憲の判断を下させまいと憲法裁判所を牽制する構えを見せている。
UDDが勢力を持つ県の1つ、東北部ウドンタニー県では、UDD支部の幹部が01日、「憲法裁が和解案反対派の肩を持つ判断を示した場合、これまでで最も大規模な抗議集会を決行しよう。」と支持者に呼びかけた。
また、プア・タイ党は同日、反タクシン派とされるアナン元首相を合憲性の検討の場に参考人として招致しないよう憲法裁判所に要求。これは、違憲の判断を下させないための作戦と1つと見られている。
なお、憲法裁が国民和解法案の合憲性を検討することになったのは、国民和解法案を違憲とする訴えがあったことによるもの。この訴えに伴い、国民和解法案の国会審議の差し止めが命じられた。
国民和解法案に反タクシン派が強硬に反対していることから、ソムサック下院議長が先に国民和解法案をいったん取り下げるべきと発言。これに同調する意見がタクシン派内で増えているようだが、タクシン派の政権党プア・タイ党に所属するチャトロン元タイ・ラック・タイ党副党首もこのほど、和解案取り下げに賛成する姿勢を明らかに。
タクシンが創設したタイ・ラック・タイ党は、2007年05月に解党処分を受け、党役員111人が公民権5年停止となった。公民権停止が今年05月末で解けたことから、チャトロンは先にプア・タイ党に入党。
チャトロンによれば、「国民和解4法案は、誰に恩赦を適用するかなどが明確ではない。対立が生ずる恐れがあり、これらの案には最初から反対だった。」という。
07月02日(月)国民和解法案を巡る問題で、憲法裁判所が国民和解法案を違憲と判断した場合、政権党のプア・タイ党が解党処分を受ける可能性があることから、プアダーマ党のワンロップ党首(元パラン・プラチャーチョン党議員)はこのほど、「プア・タイ党議員を受け入れる用意がある」と表明。
プア・ダーマ党は2010年08月23日に選管に登録された政党。また、パラン・プラチャーチョン党はプア・タイ党の前身。ワンロップは、2007年12月の総選挙にパラン・プラチャーチョン党から出馬し当選が、パラン・プラチャーチョン党は翌2008年12月に幹部の選挙違反のため解党処分を受けた。ワンロップは、「わが党の方針に従うなら、プア・タイ党議員を引き受ける。」としている。
なお、プア・タイ党の支持する国民和解法案については、国民和解法案で求められている憲法改正が「憲法68条に抵触する」といった訴えが出ており、憲法裁は合憲性に関する判断を下すため5日と6日に参考人から意見を聞くことになっている。憲法68条では、「立憲君主制のもとでは、個人や政党が憲法によって付与された権利などを、民主主義の原則を覆すために使うことを禁ずる。」とされており、これに違反した政党は解党処分とし、党役員を公民権5年停止に処することができる。
07月03日(火)国民和解法案に賛成した議員と閣僚計416人に対し、憲法裁判所がその理由を説明するよう命じたことがわかった。これは、「『和解案は憲法68条に抵触する。』との反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)幹部のチャムロンの訴えと同様の内容で、計5件を1つの訴えとして処理可能かを判断するのに必要なため。」という。
だが、これに対しては、「司法による立法への干渉。」といった批判。政権党、プア・タイ党のピラパン議員(法律専門家)は、「『憲法裁には訴えを直接受理する権限がない。』との指摘が以前からある。それにもかかわらず、憲法裁は前例のないこととすることで、権限を拡大し、立法府に影響力を及ぼそうとしている。」と批判。
弱小野党のラック・プラテート・タイ党のチューウィット党首は、「(クルングテープ都内)ペッブリ通のカジノのオーナーは、ドバイ在住の男の親族。」と述べて、タクシンの近親者が違法賭博に関与していることを示唆。
警察官の不正を暴露することに心血を注いでいるチューウィットは、これまでに何度か違法賭博場の存在を暴露している。
02日には、「ペッブリ・ソイ5にカジノがある。」として、支持者や報道関係者とともに踏み込もうとしたが、近隣住民などに阻止され、揉み合いになった。
チューウィットは、「インラック首相(タクシン氏の実妹)に違法賭博場について知っている親族がいないか聞いてみたい。」と述べている。2006年のクーデターで国外追放されたタクシンは、現在はドバイを拠点に活動している。
タクシン派の政権与党プア・タイ党とタクシン派市民団体「反独裁民主主義同盟(UDD、通称スア・デェーン=赤服)」は、都内のショッピングセンター、インペリアルワールド・ラープラーオ前で集会を開き、集まった数百人の観衆に、憲法改正の必要性などを訴えた。
タイの現行憲法は2006年の軍事クーデターでタクシン政権を追放した反タクシン派が制定したもので、任命制の上院議員、裁判官、選挙委員会委員らを通じ、反タクシン派が政治介入しやすい仕組みになっている。タクシン派は改憲による反タクシン派の司法・政治への影響力排除を狙い、新憲法案を起草する憲法起草議会を設立するための憲法291条改正案を国会に提出したが、同改正案は第3読会の採決直前の06月01日、違憲かどうかの判断を下すまで審議を中止するよう憲法裁判所が命じ、改憲の動きは暗礁に乗り上げた。
この問題について、憲法裁判決で下院議員を失職したばかりのチャトポン前議員は集会で、「慈悲のない人に慈悲を求めてもしょうがない。」と述べ、タクシン派による憲法裁前での抗議集会は不要という考えを示した。
憲法裁などタイの司法はタクシン派と反タクシン派の抗争が激化した2006年以降、タクシン派が勝利した2006年総選挙の無効化、タクシン派政党の2度にわたる解党、タクシン派首相の事実上の解任など、一貫してタクシン派に不利な判決を下し、タクシン派と特に憲法裁との対立が深まっている。
07月04日(水)ソムサック下院議長が「遠くにいる人と話し合って、批判が高まるのを避けるべく、憲法改正案(国民和解法案)の国会審議を急がないことにした。」と述べていたことが判明し、最大野党の民主党などから議長の辞任を求める声があがっている問題で、政権党プア・タイ党の広報担当プロムポンは、「議長としての発言でなく、個人的な意見。議長が辞任する必要はない。」との認識。
この発言は、近しい支持者約50人との会合の中で出たものという。「遠くにいる人」とは国外逃亡中のタクシンを指すとみられており、ソムサックが先に国民和解法案取り下げを提案したのもタクシンの入れ知恵だったことを示唆している。なお、「タクシンの意向」を持ち出すことについて、関係筋は、「タクシン支持者を説得するには有効。だが、現政権が犯罪人のタクシンの言いなりであることを示すものでもあり、反タクシン派は政府批判を強めることになる。」
チューウィット、ラック・プラテート・タイ党党首が07月02日に「都内の違法賭博場をタクシンの親族が関与している。名前の頭文字はY。」と述べたことに対し、タクシンの法律顧問ノパドンは、「タクシンの妹ヤオワレートのことを指しているなら、チーウィット党首を告訴する。」と述べた。
ノパドンによれば、「チューウィットから『20年以上前から違法賭博場を所有している。』と指摘された男性の兄弟がヤオワレートの別れた夫という。このため、Yがヤオワレート(インラック首相の姉)を指すのは容易に想像できる。」ノパドンは、「ヤオワレートはカジノに一切関与していない。」、「関与を再び仄めかすことがあれば、名誉毀損で訴える。」としている。
07月05日(木)憲法裁判所で政府が推進する憲法改正案に反対する参考人からの意見聴取。憲法改正案については、「違憲」などとする訴えが5件あったことから、憲法裁は06月01日、訴えの受理を決めて、憲法改正案の合憲性に最終判断を下すまでの間、第3、最終読会の差し止めを命じた。意見聴取は最終判断を下すための過程であり、06日には賛成派の参考人から意見を聞くことになっている。
05日の聴取では、国立タマサート大学のスラポン教授などが、「現行憲法は、タイで初めて国民投票で承認された憲法であり、その改正にも国民投票を実施する必要がある。」といった、憲法改正案の内容に否定的な見解を述べた。なお、参考人は反対派7人、賛成派8人の計15人。
ソムサック下院議長が「タクシンの意向に従って憲法改正案の取り下げを提案した。」と発言していたことが報じられたことについて、タクシンの実妹であるインラック首相は、「内閣は外部からの影響を受けていない。憲法改正は議会の仕事。」と強調、「政府を牛耳っているタクシンが憲法改正でも政府に指図している。」などとする批判を全面的に否定。
このほか、インラック首相は、「ソムサックが実際に発言したかは疑問として、ソムサックによる説明が必要。」との見方を示した。また、タクシンの法律顧問ノパドンは、「タクシンは命令などしていない。助言を与えているだけ。ソムサック議長がタクシンに相談したとしても不思議ではない。」と述べて、「タクシンの指示通りに政府が動いている。」との見方を否定。
しかし、関係筋によれば、「タクシンが政権党プア・タイ党の事実上の最高実力者であることは周知の事実。その『助言』は助言以上の意味を持つ。」
07月06日(金)憲法裁判所は、憲法改正案の合憲性に関する参考人からの意見聴取を全て終えたことを受けて、「最終的な判断を13日に示す。」と発表。
合憲の判断が下されれば、憲法改正案は議会で審議続行となるが、違憲とされれば、憲法改正案は無効となり、憲法改正案を支持した政権党プア・タイ党は責任を問われ、解党処分を受け、党役員が公民権5年停止となる可能性もある。
ソムサック下院議長が「憲法改正案と国民和解法案について国外逃亡中のタクシンに相談した。」旨の発言したされる音声クリップが存在することについて、ソムサックは、自身の発言であると認め、「(発言が外部に漏れたことには)驚いたが、心配はしていない。」と述べた。
報道によれば、音声クリップは、「憲法改正を急ぐタクシンに対し、改正支持の声を盛り上げるため、憲法改正案の審議を3~6ケ月遅らせるよう強く提言した。」との内容。ソムサックは、「この発言は国民の利益を最優先に考えた結果であり、問題はない。」としている。
しかし、最大野党の民主党は、発言内容について、「憲法の改正と和解案の議会通過を図るという政府の動きの背後にタクシンがいることを示している。」として、ソムサックの責任を追及する構えを見せている。
07月08日(日)タクシン派内では、「対立・混乱を回避すべく、国民和解法案と憲法改正案をいったん取り下げるべき。」とする意見が目立ち始めている。
政権党プア・タイ党所属のチャワリット元首相(元同党顧問団長)も取り下げに賛成であることが、新希望(クワーム・ワング・マイ)党が発表した声明で明らかに。新希望党はチャワリットが創設し、党首を務めた政党で、現在新希望党に所属する下院議員はいない。
声明の中で、チャワリット(80)は、「世論調査でも両案を断念すれば、現政権は4年の任期を全うできるとする意見が50%に及んでいる。」、「プア・タイ党は和解4案の審議を取り下げ、憲法改正案の議会通過を強行すべきではない。」と述べた。
07月09日(月)カンボジアはタイとの間で領有権争いが起きている国境地域から撤兵するとしているが、タイ軍関係筋によれば、「カンボジア軍が計画しているのは、地域内の兵士移動に過ぎない。その狙いは、国際司法裁判所の命令に従ったように見せかけること。」という。
国際司法裁判所は昨年、世界遺産カオ・プラウィーハン(プレアビヒア)や国境未画定区域4.6㎢を含む17.3㎢の地域から撤兵するようタイ、カンボジア両国に命じた。
同筋は、「カンボジアがエリア内に配備している兵は5000人あまり。そのうちカオプラウィーハンを警備している兵を移動させるだけで、その代わりに投入される警察官も一部は兵士ということが考えられる。」
「最大野党の民主党のステープ議員(民主党元幹事長)の息子タンがサムイ島で国有地を不正に取得した疑いがある。」として、法務省特別捜査局(DSI)が捜査を進めていることについて、森林局のスウィット局長は、「問題の土地が保護林でなく、森林局の管轄外であることから、森林局がタンを訴追することは考えていない。」と述べた。ただ、DSIが「『不正があった。』と判断した場合、森林局が問題の土地の扱いを検討する必要がある。」という。
林野法では、傾斜角35度以上の傾斜地は民間の所有や開発が禁止されているが、タンが取得した土地にはこのような急勾配の傾斜地が含まれる。
タクシンの法律顧問であるノパドン元外相によると、「タクシンが04、05月に米国のビザを取得した。近く渡米する模様。」
タクシンは2008年に汚職で懲役2年の実刑判決を受け、以来、日本、英国、米国などが入国を拒否していた。しかし、昨年07月のタイ下院総選挙でタクシン派が勝利し、タクシンの妹のインラックが首相に就任したことを受け、日本、英国はタクシンの入国を認め、タクシンは昨年から今年にかけ、両国を訪れている。
07月10日(火)憲法裁判所が07月13日に国民和解法案(憲法改正案)の合憲性に関する判断を下すことになっているが、タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)の首脳の1人、ニシットは、「UDDの幹部たちは、憲法裁が肯定的な判断(合憲判断)を示すとは考えていない。」と悲観的な見方を示し、「判断が下されたあとどのような行動をとるかについては、UDD首脳からの合図を待つよう全国の支持者に伝えた。」と述べ、UDDが違憲判断に抗議する大規模な行動に出る可能性を示唆。
政権党プア・タイ党の支持する和解案では、憲法改正を規定した憲法291条の改正が求められているが、これに関しては、憲法68条に抵触するとの訴えが憲法裁に提出されたことから、憲法裁は和解案の審議差し止めを命じ、同案の合憲性を判断することになった。違憲とされた場合、68条に基づいて、プア・タイ党が解党、党役員が公民権5年停止に処される可能性がある。
2010年05月19日に反独裁民主主義同盟(UDD)が大規模反政府デモの終結を宣言した直後にUDD支持者らによってセントラル・ワールドが放火された事件で、法務省特別捜査局(DSI)のタリット局長は、「黒服の男たちの関与を示す証拠は見つからなかった。」と明らかに。「黒服の男たち」とは、戦闘用銃器などで武装した者たちのことで、UDDのデモ隊と行動を共にしているのが何度か目撃されている。当時治安担当の副首相だったステープ民主党議員は、「黒服の男たちが放火に関わった。」と指摘していた。だが、DSIの捜査では、この指摘を裏付ける証拠は出て来なかったという。
この放火事件は、治安部隊による強制排除でUDDがデモ中止を余儀なくされたことから、やけになったUDD支持者らがデモ拠点のラーチャプラソン交差点に位置するセントラル・ワールドに侵入して火を放ち、商品を略奪したというもの。DSIによれば、被害額は80億Bを超える。
2011年05月、ナコーンラーチャシマー県で逮捕され、同年12月に不敬罪で懲役2年6ケ月の実刑判決を受け服役していたタイ系米国人のルーポング・ウィチャイカムマット(ジョー・ゴードン)(55)がプミポン国王(84)による恩赦で10日夜に釈放されたことが明らかに。恩赦適用前に、「釈放されたら速やかにタイを離れるべきと言ってくれた人もいる。しばらくタイに留まりたいとも思っているが、政治状況や身の安全を考えると心が定まらない。」と述べた。米国大使館は、「プライバシーに関することであり、男性が今後どうするつもりかは明らかにできない。」としている。報道により、近く米国に向け出国の予定とも。
ルーポングは米コロラド州在住の自動車セールスマン。米国在住中の2007年から2010年にかけ、タイ国内で発禁となっている米国人ジャーナリストによるプミポン国王の評伝「ザ・キング・ネバー・スマイルズ」の一部をタイ語に訳して自分のブログに掲載し、昨年05月にタイを訪れた際に逮捕された。保釈を認められないまま実刑判決を受けたため、拘留・服役期間は計1年2ケ月に上る。
不敬罪はタイ国王夫妻と王位継承者への批判を禁じたもので、違反した場合、1件につき最長15年の懲役刑が科される。特権階級を中心とする反タクシン派と反王室のイメージが強いタクシン派の政治抗争が激化する中、不敬罪は頻繁に適用されるようになり、タクシン派市民の投獄が相次いでいる。昨年11月には、携帯電話で王室を批判するショートメッセージ4通を送信したとして、アムポン・タンノップパクン(61)が懲役20年の実刑判決を受け、このアムポンは今年05月獄死。
不敬罪で外国人が服役した事例は、国王のポスターに黒ペンキをスプレーしたスイス人オリバー・ルドルフ・ ジュファーが2007年に懲役10年、著書で王室を批判したオーストラリア人ハリー・ニコライデスが2009年に懲役3年の実刑判決を受け、いずれも数ケ月服役した後、恩赦で出獄しタイを出国。
07月11日(水)ルーポング・ウィチャイカムマットの恩赦が行われた翌日、交流サイト、フェイスブックの在タイ米国大使館のページに「自由とは、あらゆる場所で人権が至上であることを意味する。フランクリン・D・ルーズベルト、第32代米国大統領」という投稿があった。これに対し、反タクシン派とみられるタイ人から「裁判所の判決から逃げる自由か?」、「何をやってもいいということか。」といった批判的なコメントが寄せられた。
憲法裁判所が07月13日に政府支持の憲法改正案を違憲と判断し、政権党プア・タイ党が解党、党役員が公民権5年停止に処される可能性があることから、タクシン支持団体の反独裁民主主義同盟(UDD)幹部のコーケウ、プア・タイ党議員は、「(違憲判断が出た場合)憲法裁の判事らを国家反逆罪で訴える。もし警察が彼らを逮捕しないなら、われわれが捕らえる。」などと述べ、違憲判断を受け入れず、あらゆる可能な手段を使って抵抗するという強硬姿勢。
プア・タイ党首脳からは、「どのような判断であれ受け入れる。」という意見も出ていたが、コーケウは、「市民(UDD支持者)は民主主義のために闘う。インラック政権もその支持者も違憲判断を受け入れない。」と述べている。
また、コーケウによれば、「UDDが判事を捕らえようとすれば、特権階級(反タクシン派)が支持者を動員して阻止に出る。 両者が衝突すれば、軍部が政権を奪取する。」これに対し、「UDDは最後まで兵士と戦い、タイは内戦状態に陥る」。
07月12日(木)反独裁民主同盟(UDD)幹部のコーケウ、プア・タイ党議員の「憲法裁判所が政府支持の国民和解法案に違憲判断を下せば、国内が内戦状態に陥る。」などという過激な発言に各方面から非難の声。
ソムチャイ上院議員は、「不適切な発言で、保釈条件に違反する。」として、コーケウの保釈取り消しを検察に要求。また、与党のチャート・タイ・パッタナー党のソムサック議員も、「外国投資と外国人観光客の誘致に努めている政府の横っ面を引っぱたくようなもの。」と批判。
「タイ・カンボジア国境上空で民間機がカンボジア軍から威嚇射撃を受けた。」との情報があったが、関係者の発言が食い違っており、実際に何が起きたかわからず仕舞いとなっている。
カンボジアと国境を接するサケーオ県のサニット知事は、「スワンナプーム空港を飛び立った民間機が悪天候のためコースを外れた。視界不良と情報伝達が不十分だったせいで、カンボジア兵は偵察機と勘違いして威嚇射撃した。だが、民間機はシェムリアップ空港に無事着陸した。」と説明。しかし、シェムリアップに乗り入れている唯一のタイの航空会社、バンコク・エアウェイズでは、「航空機が威嚇射撃を受けた事実はない。」と報告。
一方、チャチャイ副運輸相によれば、「バンコク・エアウェイズ社から『威嚇射撃はなかった。』と報告を受けたものの、シェムリアップに向かったバンコク・エアウェイズ社航空機は、シェムリアップ空港には着陸せず、スワンナプーム空港に引き返した。」
07月13日(金)政権与党プア・タイ党などタクシン派が国会で進める憲法改正の動きに対し、反タクシン派の野党民主党などが「改憲は立憲君主制の転覆を狙った違憲なものだ。」などとして、憲法裁判所に改憲の国会審議中止とプア・タイ党の解党を求めた裁判で、憲法裁判所は、野党民主党が中心となって憲法改正審議の即時中止を求めた裁判で、「改憲自体は合憲で、立憲君主制の転覆が狙いという訴えは証拠が不十分だ。」と訴えを退けた。
タクシン派との対立が目立った憲法裁がこうした判断を下したことで、政局が一気に不安定化する危険は回避された。ただ、憲法裁は「新憲法の制定には国民投票が必要」と釘を差しており、改憲の方法、行程については国会で再度審議される見通し。
だが、現行憲法は国民投票によって承認された憲法であり、その改正においても国民投票が必要などとする条件を付けたことから、政権党プア・タイ党内でも、「08月開幕の次期通常国会に和解案の第3・最終読会を行うのは困難。」といった見方が出ている。関係筋によれば、憲法裁は「和解案を合憲としてタクシン派(現政権)の求める改憲をすべて認める。」あるいは「和解案は違憲。タイ貢献党は解党、党役員は公民権停止。」という勝ち負けのはっきりした判断を下すと予想されていた。だが、示された判断は、和解案を合憲としたものの、同案に反対する反タクシン派の意見を一部入れて、タクシン派が予定していた改憲にハードルを設けるものとなっている。
和解案に関する憲法裁判事8人(本来9人だが1人欠席)の賛否は以下の通り。
①憲法68条に基づいて憲法裁が訴えを受理できる-賛成7反対1。
②憲法を全面的に書き換える場合、起草委員会を設置し、国民投票を行う。議会には部分的な書き換えの権限しかない-賛成8反対0。
③現政権が改憲で立憲君主制の廃止や非合法的手段による権力奪取を狙っているとするには証拠が不十分-賛成8反対0。
また、訴えでは「憲法裁は、プア・タイ党を解党、党役員を公民権停止とする処分を検討すべき。」とされていたが、憲法裁は、「プア・タイ党の支持する改憲は合憲であり、処分を考慮する必要はない。」とした。
タイの裁判所はタクシン派と反タクシン派の抗争が激化した2006年以降、タクシン派が勝利した2006年下院総選挙の無効化、タクシン派政党の2度にわたる解党、タクシン派首相の事実上の解任など、一貫してタクシン派に不利な判決を下してきた。特に憲法裁は強引ともいえる憲法解釈が目立ち、タクシン派市民の間で司法への不信が強まっていた。
タクシンを海外に追放したクーデター政権が制定した憲法を、現与党プア・タイ党が改正しようと国会審議が行われていたが、野党民主党が憲法改正を国家転覆罪と結びつけ、憲法裁判所に訴えていた。今回も憲法裁がタクシン派に不利な判決を下し、タクシン派市民のデモなどで政情が不安定化するという懸念が出ていた。
タクシン派団体の反独裁民主主義同盟(UDD)は判決前、改憲禁止、プア・タイ解党となれば、数十万人規模の反対集会を開くと警告。プア・タイ党の下院議員は「内戦が勃発する。」、「憲法裁判事はタクシン派市民に逮捕されるだろう。」などと、脅迫とも取れる発言をしていた。前日からUDDが集会を行なっている。

← 憲法裁判所前でデモ中の反独裁民主主義同盟(UDD)。支那の人民服、人民帽を被った支那の手先。

タイの現行憲法は2006年の軍事クーデターでタクシン政権を追放した反タクシン派が制定したもので、任命制の上院議員、憲法裁、選挙委員会などを通じ、反タクシン派が政治介入しやすい仕組みになっている。タクシン派は改憲による反タクシン派の司法・政治への影響力排除を狙い、新憲法案を起草する憲法起草議会を設立するための憲法291条改正案を国会に提出したが、憲法改正案は第3読会の採決直前の06月01日、違憲かどうかの判断を下すまで審議を中止するよう憲法裁が命じ、改憲の動きは暗礁に乗り上げていた。
タイでは過去数年、地方住民、中低所得者が多いタクシン派と特権階級を中心とする反タクシン派の抗争が続き、政治・社会が混乱している。反タクシン派はタクシンを反王室、腐敗政治家と糾弾。一方のタクシン派は「特権階級が軍官財界を動かし民主主義や法治を捩じ曲げている。」と主張。
タクシン派は2006年のクーデターと同派解党を命じた2008年の司法判断で、2度、政権を追われたが、総選挙では2001年、2005年、2007年、2011年と4連勝中だ。激しい政争の中、2006年、2008年には反タクシン派、2009年、2010年にはタクシン派による大規模なデモがあり、2010年にはデモ隊と治安部隊の衝突で、市民、兵士ら91人が死亡、1400人以上が負傷。
07月11日にスワンナプーム空港を飛び立ったバンコク・エアウェイズの旅客機が国境地帯上空で悪天候のためにルートを変更したところカンボジア側から威嚇射撃を受けたとされる問題で、「カンボジア軍関係者がその事実を認めた。」と報じられているが、スカムポン国防相は日、「カンボジア当局も否定している。被弾したわけでもなく、威嚇射撃が実際にあったか確かめるのは困難。これ以上私から言うことはない。」と述べた。インラック首相も同日、「両国軍や地元当局に問い合わせたが、威嚇射撃の事実は確認できなかった。バンコク・エアウェイズも否定している。」と述べ、「威嚇射撃はなかった。」との見方を示した。
なお、報道によれば、「国境地帯の警備に当たっているカンボジア軍部隊の責任者は、『夜間で飛行機の種類を判別できなかったが、何度も旋回していたので機関銃で18発射撃した。だが、飛行機の速度が速く、命中しなかった。』と発砲の事実を認めている。」
アラブ首長国連邦(UAE)ドバイからの報道によると、UAEの著名法律事務所幹部の45歳のKMとだけ報道された弁護士がタクシンに対する背任罪で禁固3年の判決。
この弁護士KMは2008年にタクシンが英サッカーのイングランド・プレミアリーグのクラブ、マンチェスター・シティを中東の投資会社に約2億£で売却した案件をタクシンの弁護士として取りまとめた。入金された1億5千万£のうち約6000万£(3億4100万ディルハム)を自身の別荘購入などに充てたと昨年起訴された。
07月14日(土)政権党プア・タイ党の望む現行憲法の全面書き換えが、憲法裁判所の「国民投票が不可欠」との判決により困難になったことから、プア・タイ党は、憲法68条を改正して憲法裁の権限を削減することを検討中だと明らかに。この条件は、政府の支持する国民和解法案(憲法改正案)を違憲とする訴えが憲法裁に上がったことによるものだが、プア・タイ党は、憲法裁がこのような訴えを直接受理できないよう68条に「検察経由でのみ訴えを受理できる。」と明記すべきとしている。
07月15日(日)タマサート大学の法学者グループ、ニティラートが、「憲法裁判所が職権を乱用して立法府に干渉している。」として、憲法裁判所を解散してそれに代わる司法機関の設置を要求。
ニティラートはこれまでの主張からタクシン派寄りと見られているが、ニティラートのウォラチェート、チャンチラ、ピヤブット3人は、タマサート大学で行った記者会見で、「憲法の全面書き換えには国民投票が必要」とした先の憲法裁判断を「クーデターに等しい。」などと厳しく批判し、「憲法裁が違法な手段で現政権を妨害している。」との見方。
同判断は、タクシン派のプア・タイ党の支持する憲法改正案を違憲とする訴えがあったことから憲法裁が下したもの。同案には反タクシン派が「タクシンの免罪・帰国が狙い。」などと強く反対しているが、タクシン派は、違憲の訴えを受理したこと、結果が不確実な国民投票の実施を突きつけられたことから憲法裁への反発を強めている。プア・タイ党は、憲法の部分改正で憲法裁の権限削減を図る考えを明らかにするなど、反撃に出る構えを見せている。
憲法改正案の合憲性に関する憲法裁判断について、反独裁民主主義同盟(UDD)幹部のコーケウ、プア・タイ党議員が過激な発言をして各方面から批判を浴びている問題で、刑事裁判所は、「コーケウの保釈取り消しを16日に検討する。」と発表。
コーケウは、一昨年の大規模な反政府デモに関連してテロなどの罪に問われ、現在は保釈中の身。憲法裁が判断を示す前の11日、「(違憲判断が出たら)われわれは国家反逆罪で憲法裁判事を訴える。警察が逮捕しないなら、我々が判事を捕らえる。これに反タクシン派が抵抗し、タクシン派と反タクシン派が衝突。軍部がクーデターを起こす。 これにタクシン派はあくまでも抵抗し、内戦状態に陥る。」などと発言。
これに対しては、政府内からも不適切との批判が出たが、最大野党の民主党のニピット議員が「保釈条件に違反する。」と訴えたことから、刑事裁判所が保釈取り消しを検討することになった。
中央選挙管理委員会のソットシー委員によれば、憲法裁判所が先に「国民投票が憲法全文改正の条件」との判断を示したが、「選管は必要があれば、国民投票を実施するための準備に今すぐにでも入ることが可能。」という。ただ、ソットシー委員は、「国民投票を憲法草案作成の前か後、あるいは前後の2回実施すべきなのかはっきりしない。憲法裁はこの点を明確にする必要がある。」としている。「国民投票は、準備を含めると約4ケ月掛かり、総費用は24億Bあまりに上る。」という。
07月16日(月)憲法裁判所が先に「憲法の全面的な書き換えには国民投票が不可欠。」といった判断を示したことから、「政府が求めている憲法改正が困難になった。」との見方が出ているが、政権党プア・タイ党の広報担当プロムポンは、「憲法改正を求めて行く。」というプア・タイ党の方針に変わりのないことを再確認。
ただ、08月開幕の次期通常国会で憲法改正案の第3、最終読会を行うかどうかについては、憲法裁が先の判断に関する正式見解を文書で示した後で、その内容を詳しく検討して決定する。
また、プロムポンによれば、「プア・タイ党は今でも、憲法裁が改正案を違憲とした訴えを受理し、立法府による憲法改正の手続きに口を挟んだのは越権行為であると考えており、この点を今後追及して行く。」
タクシン政権による全国的な薬物一斉摘発(2003~2004年)の下で、現場の警察官が処刑などで2500人あまりを殺害した問題が再浮上。
先に放送されたテレビ番組の中でチャルーム副首相が、「クーデター後(タクシン政権崩壊後)の検証で、カニット(元検事総長)率いる調査委員会は、『処刑はなかった。』と結論づけた。」と発言したことに対し、カニットが、「事実と異なる。」として、インラック首相に抗議の書簡を提出。この問題を調査するため2つの委員会が設置されたが、その1つを取り仕切ったのがカニット。
カニットによれば、「チャルーム副首相の発言は、タクシンを擁護し、汚名を払拭することが狙いと見られるが、委員会は、『タクシン政権の薬物対策の結果として人道に反する犯罪が起きた。』と報告しており、副首相は報告書をよく読み返してみる必要がある。」
07月17日(火)警察によれば、07月13日に憲法裁判所前で国王の肖像画に向かって不適切なしぐさをしたとして、不敬罪で訴えられたニュージーランド在住のタイ人女性ティティナント・ケウチャントラノント(63)に精神疾患の疑いがあることから、ガラヤ・ラチャナガリンドラ病院で検査を受けさせることになった。
ティティナントは17日にタイ国際航空のフライトでニュージーランドのオークランドに帰国する予定だったことから、スワンナプーム空港では約200人(報道により数十人)がティティナントを帰国させまいと待ち構えていたが、ティティナントが病院での検査のため姿を見せず、肩すかしを食らった格好。ティティナントの夫(ニュージーランド国籍)は予定通りに帰国。
なお、関係筋によれば、「ティティナントが搭乗予定だったフライトの機長は、『ティティナントが乗るなら安全上の理由で乗務できない。』と述べていた。」
07月18日(水)タイ、カンボジア両国軍が、国境の紛争地帯からの撤兵を開始。これは、世界遺産カオ・プラウィーハン(プレアビヒア)や国境未画定区域(4.6㎢)を含む同地帯(17.3㎢)を非武装とするという昨年07月の国際司法裁判所の命令に従ったもので、紛争地域には近く、インドネシアの停戦監視団が入る予定。
カンボジアのフン・セン政権とタイの前政権は両国国境にある世界遺産の山上遺跡カオ・プラウィーハン周辺の領有権をめぐり、国境で武力衝突を繰り返し、昨年02月と04月には砲撃・銃撃戦で双方の兵士、住民ら30人近くが死亡、100人以上が負傷。周辺地域の住民10万人以上が一時避難。
紛争激化を受け、カンボジアは同年04月、国際司法裁にカオ・プラウィーハン周辺の国境未画定地域の領有権に関する判断を求めた。国際司法裁は同07月、訴えを受理するとともに、暫定措置として、紛争地域に非武装地帯を設定し、両国に即時撤兵するよう命じた。最終判断は来年09月もしくは10月に下される見通し。
07月19日(木)タクシンの法律顧問であるノパドン元タイ外相によると、タクシンはインドネシアを訪れ、16日、ジャカルタでインドネシアのユドヨノ大統領、マレーシアの野党連合・人民同盟(PR)のリーダーであるアンワル元副首相らと、タイのタクシン派と反タクシン派の和解などについて意見を交換。タクシンは24~26日に香港を訪れ、26日の自身の63歳の誕生日を香港で祝う予定。
タクシンは国外滞在中の2008年に汚職で懲役2年の実刑判決を受け、以来、服役を避けるため、タイに帰国していない。
スカムポン国防相が「アピシット民主党党首(前首相)の徴兵忌避を裏付ける確固たる証拠がある。」と述べたことに対し、アピシット党首は、「徴兵を忌避した事実はない。」と、国防相を名誉毀損で告訴する考えを明らかにし、国防相の発言が「裁判中のチャトポン元プア・タイ党議員(反独裁民主主義同盟(UDD))を擁護しようとしたもの。」との見方を示した。
アピシット党首の「徴兵忌避問題」は、タクシン派が過去に何度か攻撃材料として取り上げたことがあるが、アピシット党首はそのつど否定。これまでに関係当局が「徴兵忌避があった。」と認定したことはない。チャトポンは先に、集会などで「徴兵を忌避した。」と発言したことから、アピシット党首が名誉毀損で告訴し、現在裁判が進められている。
国外逃亡中のタクシンはこのほど、シンガポールのテレビ局とのインタビューの中で、「国民和解が実現しなければ帰国できない。急いで帰国するつもりはない。」と述べて、政治対立の解消が帰国の条件との考えを改めて示し、タクシンは、「私の帰国が、我々が被ってきた問題の解決に繋がらなければならない。」と語った。
だが、関係筋によれば、「タクシンが望んでいるのは免罪・帰国であり、反タクシン派がこれを容認することは考えにくい。タクシン派の現政権が免罪・帰国のお膳立てに躍起になっているようでは、政治対立の解消は望めない。」
07月21日(土)研究集会に出席するため、チエンマイ県を訪れたアピシット民主党党首の乗った車に反独裁民主主義同盟(UDD)支持者らが石を投げつけるという事件があった。
チエンマイ県はタクシンの出身地であり、タクシン支持団体UDDの支持者が多いことで知られている。また、UDDは政権党プア・タイ党の実動部隊とされていることから、アピシット党首は政府に対し、UDDが政敵に過激な行動を取らないよう自重を求めるよう要請。
民主党関係筋によれば、アピシット党首の一行は空路でチエンマイ入りし、研究集会の開かれる村に車で移動したが、その間中、赤服軍団(UDD支持者)が妨害行為を繰り返し、また、村から帰る際にも、ピックアップトラック2台で行く手を塞ごうとした。アピシットの車はこれをなんとか切り抜けたが、その際、石を投げつけられた。ホテルに戻った一行は身の危険を感じて裏口から逃げ出したという。
07月23日(月)タイの英字紙バンコク・ポストは、「汚職で実刑判決を受け逃亡中のワタナー・アサワヘーム(馬裕炎)元副内相が支那河南省洛陽市に自費でタイ仏教寺院を建立し、20日、落成式を行った。」と報道。同寺院は、敷地の使用許可をワタナーが許可を取得し、私費2億Bを投じて建設したものと言われる。式典にはタクシンと親しい実業家・政治家のポンサック元工業相、タクシンの元義弟のバナポット・ダーマーポンら数百人が出席。
ワタナーは1935年生。何らかの方法で巨額の財を成した後、政界入りし、1990年代前半に副内相などを務めた。1995年の下院総選挙では副党首を務めるチャート・タイ党が第1党となったにもかかわらず入閣を逃し、「ワタナーの『事業』を問題視する米国から圧力が掛かった。」と報じられた。
ワタナーはその後も地盤のタイ中部サムットプラカン県で強い影響力を振るったが、同県内のクロンダン産業排水処理場の汚職事件で起訴され、2008年の最高裁判決直前に行方を眩ました。最高裁は「ワタナーが副内相当時に処理場建設用地の偽の土地証書を政府の関係部署に発行させた。」として、禁固10年の実刑判決を下した。クロンダン産業排水処理場は日本の政府開発援助(ODA)など約240億Bを投じ建設されたが、環境アセスメントの不備や汚職疑惑で完工直前に計画中止。ワタナーの消息は2008年以来、ぷっつり絶え、今回の報道で初めて居場所が明らかになった。
タイの著名な逃亡者には、2008年に汚職で実刑判決を受けたタクシン、チョンブリー県などタイ東部一円の実力者であるソムチャーイ・クンプルームら。ソムチャーイは1937年生。何らかの方法で巨額の財を成し、東部政財界のボスとして君臨した。しかし、汚職、殺人などで実刑判決を受け、2006年から逃亡中で、「地元に近いカンボジア西部に潜伏している。」という噂がある。不在中も影響力は健在で、チョンブリー県長、パタヤ市長といった重要ポストはソムチャーイの息子らが抑えている。
タイの映画祭「バンコク・インターナショナル・フィルム・フェスティバル(BKKIFF)」をめぐる収賄疑惑で捜査を受けたタイ観光庁(TAT)のチュタマート元総裁と娘は起訴前にタイ国外に出国し、タイ当局によると、行き先は不明。2人に贈賄した米国人夫婦は2010年に米国で実刑判決を受けた。米当局の捜査でチュタマートの娘らの銀行口座に約180万ドルが振り込まれたことが明らかになっているが、その後、タイでのチュタマートと娘に関する捜査はほとんど進展していない。
政権党プア・タイ党幹部のサノ議員は、「タクシンは、憲法書き換えのハードルを乗り越えるのには憲法の部分改正が最善策と考えている。」と明らかに。これは、先に香港を訪れた際にタクシンから直接聞いたものという。
政府の支持する改憲案は、現行憲法の全面的書き換えを意図したものだが、憲法裁は先に「全文改正なら国 民投票が必要。部分改正なら国民投票は不要。」との最終判断を示した。このため、次期通常国会で改憲案の第3、最終読会を行い、議決まで持ち込むのは困難との見方が支配的。
タクシンは最初、憲法裁の判断に強く反発していたが、サノ議員によれば、今は態度を軟化させ、「これまでのことは忘れて、いくら時間が掛かっても憲法を部分ごとに改正してゆくのが良い。」と述べている。
タクシン支持団体の反独裁民主主義同盟(UDD)幹部のチャトポン元プア・タイ党議員の保釈取り消し請求について刑事裁判所は「07月23日に判断を示す。」としていたが、同日、「保釈条件に違反する言動があったか現時点では不明確であり、さらに詳しい検討が必要。」との理由で、判断を08月09日まで延期することを決定。
チャトポンはUDDによる一昨年の大規模反政府デモに関連してテロの罪に問われて逮捕され、現在は保釈中の身。また、先の改憲案に関する憲法裁の判断を批判したことから、憲法裁判所が「不安を煽らない。」といった保釈条件に違反したとして、保釈の取り消しを刑事裁判所に請求することになった。
なお、チャトポンは、「政治的意見の表明は憲法で保障された権利。」と述べ、「保釈条件には抵触しない。」と主張。
07月24日(火)政権党プア・タイ党の閣僚や議員などがアピシット民主党党首の「徴兵忌避疑惑」を蒸し返していることについて、プラユット陸軍司令官は、「陸軍は1999年に調査を行い、徴兵忌避を裏付ける証拠はないと結論づけていた。」と述べた。また、プア・タイ党が「軍関係者が徴兵忌避を手助けした。」と批判していることに対し、プラユット司令官は、「協力者の氏名を明らかにせよ。」と要求。
関係筋によれば、プラユット司令官の発言は、国軍の名誉を守ろうとしたものと見られるが、プア・タイ党は、「アピシット擁護」と受け止めている。そのため、プア・タイ党のコーケウ議員は、「1999年の調査が適正に行われなかった可能性がある。」として、スカムポン国防相に調査報告書の公表を求めている。
プア・タイ党首脳のチャルーム副首相は、独自の改憲案を明らかに。だが、その目的が、「タクシン派のさらなる勢力拡大を妨げている目の上のたんこぶ排除」と見て取れることから、反タクシン派が強く反発することが十分予測される。
チャルーム副首相の唱える憲法改正のポイントは、①上院議員全員を公選制とする、②オンブズマン(行政機関のありかたを監査する人や制度)を廃止する、③憲法裁判所と行政裁判所を合体させて最高裁判所のもとに置く、④選挙管理委員会に付与されている当選無効宣告の権限を削除する、⑤中央選管と国家汚職制圧委員会(NACC)の委員は下院が選出してその任期を4年とするというもの。
なお、チャルームは、この改憲案について、「個人的な意見であり、また、(国外逃亡中の)タクシンを助けようとしたものではない。」とも述べている。
07月25日(水)プリアオパン警察庁長官が香港でタクシンに会ったことで批判を浴びている問題で、チャルーム副首相は、「何が不適切なのか。処分を検討するつもりもない。」などと述べて長官を擁護。タクシンの元妻ポチャマンの兄であるプリアオパン長官は先に香港を訪れ、タクシンの誕生祝いに出席。
これに対し、「タクシンは在任中の汚職(職権乱用)で禁固2年の有罪が確定した犯罪人であり、警察庁長官はなぜ逮捕しなかったのか。」、「法の執行人である警察官が犯罪人に会いに出かけるのはけしからん」といった批判が出ている。
しかし、チャルーム副首相は、「香港はタイの法律が適用できない外国であり、警察庁長官が職務怠慢に問われることはない」としている。
また、ワンチャイ上院議員(タイ弁護士協会幹部)は、「タイ当局の発行した逮捕状で犯罪人を外国で逮捕することはできない。外交チャンネルを通じて当該国に逮捕してもらう必要がある。」と述べて、チャルーム副首相の反論にも道理があるとの見方を示したが、「プリアオパン長官が香港でタクシンと会ったのは法律違反ではないが、公務員としては重大な倫理違反。非常に不適切。」と批判。
スカムポン国防相は、香港でタクシンに会って国軍関連の人事について相談したことを認めた。タクシンは、国防事務次官にタノンサク陸軍司令官補佐、空軍司令官にプラチン空軍司令官補佐を選んだ。
関係筋によれば、「国防相にとって、プア・タイ党の事実上の最高実力者であるタクシンに相談するのは当然なのだろうが、首相経験者とはいえ、現在は犯罪人であり、その意見を国軍関連の人事に反映させたことに対しては、厳しい批判が出る可能性がある。」
タクシンらが関与したとされる官営クルンタイ銀行の不正融資疑惑に関する訴えを最高裁判所が受理したことが25日までにわかった。この疑惑は、2006年09月の軍事クーデターによるタクシン政権崩壊後にタクシン政権の不正を暴くために設置された調査委員会が指摘していたもので、捜査から起訴に至るまで6年掛かったことになる。
起訴状によれば、クルンタイ銀行はタクシン政権下で融資を受ける資格のなかった不動産大手のクリサダマハナコン社に関連会社を通じて総額115億8000万Bを迂回融資したもので、これに当時のタクシン首相やクルンタイ銀行役員など27人が関与した。
最高裁での初公判は10月11日に予定されている。タクシンの法律顧問ノパドンは、「タクシンの関与を示す証拠も存在しないため心配していない。」と述べている。
07月26日(木)国外逃亡中のタクシンは63歳の誕生日を香港で迎えた。妹のインラック首相らを通じ、政権を事実上操っているものの、反タクシン派の抵抗で帰国のめどは立っておらず、4年連続して国外で誕生日を迎えることになった。
香港のタクシンのもとには、家族のほか、タクシン派与党プア・タイ党の政治家らが押し寄せ、猟官運動を繰り広げているという。元義兄の「プリアオパン警察長官も香港を訪れた。」と報じられ、現職の警察トップが汚職で有罪判決を受けたタクシンと会ったとして、反タクシン派が批判。プリアオパン長官に関しては、「09月末に定年退官した後、入閣する。」という噂が広がっている。
63歳の誕生を迎えたタクシンは、首相府の職員や記者らにドーナツが送った。箱には微笑むタクシンの写真と「We are together」という言葉が印刷され、配送はキティラット副首相兼財務相が手配した。ドーナツは全部で6万4000個で、タイ全土で配られるという。
タクシンの現在の懸案は、タクシンの免罪を軸とする国民和解法案と、タクシン派勢力の立法、司法からの排除を狙った憲法改正だが、どちらも先行きは厳しい。和解法案に関しては、法案に反対する反タクシン派市民団体が街頭デモを予告。野党民主党も徹底抗戦の構えだ。改憲に関しては、憲法裁判所が今月、全面改正には国民投票が必要との判断を下し、道のりが困難となった。
タクシンに近いチャルーム副首相は改憲について、国民投票が不要な、国会での条項ごとの改正を進めるべきという考えを示している。具体的な変更点としては、約半数が任命制となっている上院の全議員公選制への移行、オンブズマンの廃止、憲法裁判所、行政裁判所の事実上の廃止、選挙委員会の権限縮小、選挙委員会と国家汚職防止撲滅委員会の委員の下院での選出などを挙げた。いずれも2007年の軍事政権下で制定された現憲法に盛り込まれている特権階級の権力維持の仕組みを壊すもので、反タクシン派の中核である特権階級の反発は必至。
こうした中、タイ検察庁はタクシン政権時代に行われた国営クルンタイ銀行による不正融資疑惑でタクシン、クルンタイ銀のウィロート元社長ら27人を起訴し、25日、最高裁判所が受理した。2006年に開港したスワンナプーム空港の周辺の土地を、当時債務不履行に陥っていた不動産会社がクルンタイ銀行から融資を受け、開港前に買い漁ったというもので、タクシンは汚職、権力乱用の罪に問われている。
タクシン、プア・タイ党本部に集まった支持者に対し、香港からビデオリンクを通じて「そう遠くないうちに帰国する。」と伝えた。
プア・タイ党本部では、タクシンの63歳の誕生日(07月26日)に因んだ「タクシン・チナワット図書室」が開設され、これを祝うために大勢の支持者が訪れた。
また、タクシンは、「民主党の諸君にも図書室に来て書籍を読んでもらいたい。そうすれば、金でなく、知識が力であることがわかる。民主党は私の資産の60%を奪い取ったが、これは、『金が全て』という誤った考えによるものだ。」と述べ、タクシンに「汚職まみれ」などとの批判を浴びせてきた反タクシン派への反撃を繰り広げた。
反タクシン派が国民和解法案(改憲案)に強く反対していることから、国民和解法案を取り下げるべきとの意見がプア・タイ党幹部の間からも出ているが、プア・タイ党関係筋によれば、「党内には予定通りに改憲手続きを進めるべきとの意見もあり、08月開幕の次期通常国会で国民和解法案が取り上げられる可能性がある。」という。
これに関連して、ソムサック下院議長は、「08月01日の国会初日には和解法案を取り上げない。」と述べたが、同筋は、「取り下げを意味するものではない。」としている。最大野党の民主党や民主主義市民連合(PAD)など反タクシン陣営は、「タクシンの免罪・帰国を実現するための憲法改正であり、容認できない。」と、和解案の議会通過を阻止する構えを見せている。
国家汚職制圧委員会(NACC)は、「ステープ民主党議員(元民主党幹事長)が副首相時代に越権行為を犯した。」との判断を示した。「これは憲法に違反する行為であり、公民権停止の処分を受ける可能性がある。」という。
NACCによれば、「民主党政権(2008~2011年)で副首相を務めていた際、民主党議員など19人を文化省で働かせるよう文化相に要求。文化相はこれを拒否したが、要請自体がすでに副首相の権限を越えたものであり、憲法に抵触する。」という。
NACCは近く、上院議長に対し、ステープ議員を公民権停止とするとともに、過去に遡って副首相罷免とすべくステープ議員の訴追を請求する予定という。
07月27日(金)プリアオパン警察庁長官が先にタクシンの誕生祝のために香港を訪れたとされることに厳しい批判が出ている問題で、プリアオパンは、「タクシンには会わなかった。祝いもしなかった。」と述べ、報道内容を否定。
新聞などは、「タクシンが26日に63歳の誕生日を迎えることから、長官が予め休暇をとって、誕生祝のために24日にスワンナプーム空港から香港に向かった。」と報じていた。
だが、プリアオパンは、「香港に行ったのは職務上の用事があったため。」と説明。タクシンに会わなかった理由については、「タクシンとは意見の合わないところもある。彼は、私のことが好きではないだろう。」と述べた。
07月29日(日)憲法改正案の合法性についての憲法裁判所の判断に反独裁民主主義同盟(UDD)などタクシン陣営から批判の声があがっているが、憲法裁は、政治集会などにおけるUDD幹部のプラシット、プア・タイ党議員やコーケウ議員らの発言が名誉毀損、脅迫に当たるとして、近く警察に被害届を提出する予定。
憲法裁では、「憲法の全面書き換えには国民投票が必要。」などとしており、タクシン派の政権党プア・タイ党の望む憲法改正に高いハードルを設けるものとなっている。 また、タクシン陣営は、「この判断に問題がある。」として憲法裁判事を警察に訴えている。しかし、憲法裁は、「訴えは虚偽に基づいたもの。」反論。
クルングテープ都内で開催された野党民主党の政治集会で、アピシット民主党党首(前首相)が民主党と対立するタクシン派のシンボルカラーである赤いシャツ姿になり、話題を呼んだ。アピシット党首は集まった観衆に、「タイ人はみな同じ権利を持っている。分断するのは止めよう。」と呼びかけ、喝采を浴びた。
07月30日(月)刑事裁判所は、2004年07月にキアッティサック・ティットブーンクロング(17)の殺害容疑で逮捕された東北部カラシン県警察本部の警察官6人のうち、アングカン・カムモーンナ、スティナン・ノンティング、パンシン・ウッパナンの3人に死刑、残り3人は、モントリ・ブーンルーに終身刑、スミット・ヌンサティットに禁固7年、サムパオ・インディーに無罪を言い渡した。
タクシン政権が2003~2005年にかけ全国展開した麻薬一掃キャンペーンでは、薬物容疑者など2500人以上が警察官に処刑された。
キアッティサックはオートバイ窃盗容疑で逮捕され、保釈されたが、その数日後に東北部ロイエット県チャンハン郡の小屋の中で首を吊って死んでいるのが見つかった。麻薬一掃キャンペーンでは、現場の警察官による容疑者殺害が横行していたとされるが、キアッティサックの遺族が「警官に殺害された。」と訴えたことから、関与が疑われた警察官らが逮捕されることになった。タクシン政権下でカラシン県では、10代の20人(男17人,女3人)が同じように警察に殺害されている。そのうち、7~8件を調べたが、目撃者の犠牲者の親類は、報復を恐れて証言を拒んだため、不起訴に終わっている。
捜査に乗り出した法務省特別捜査局(DSI)は、6人全員がキアッティサック殺害に関与したと結論づけていたが、刑事裁判所は、保釈を家族に電話で伝えた警察官については、「職務を遂行したにすぎず、殺害に関わっていない。」と判断しサムパオを無罪とした。
国外逃亡中のタクシンの法律顧問、ノパドンは、タクシンが08月に米国内を回って実業家らにタイへの投資を呼びかける予定を明らかに。
タクシンは現在、香港に滞在中だが、いったん生活拠点の中東ドバイに戻り、英国を訪問。その後、米国の東海岸から西海岸まで縦断し、ハワイにも足を伸ばす考え。
また、米国では、「タイの政治家や報道関係者にも会う予定。」という。なお、ノパドンは、タクシンが米国のどの都市を訪れるかについては言及を避けた。
07月31日(火)プア・タイ党のプロムポン議員(広報担当)は、「政府は憲法改正を急がないことで意見が一致した。」と述べた。これは、「政府が現在、改憲の必要性を国民に説明する広報キャンペーンを展開中であることなどが理由。」という。
現行憲法の改正を巡っては、政府が支持する改憲案に反タクシン派が強く反対しており、改憲をごり押しすれば、政治対立がさらにエスカレートする恐れがある。また、憲法の全面的な書き換えには、国民投票が必要なことから、政府は、まず国民に改憲の必要性を理解させる必要があると考えている。
このほか、政治対立の再燃を懸念してタクシン陣営からも改憲案を取り下げるべきとする意見が出ていたが、プロムポン議員は、「改憲案の国会審議を遅らせることはあっても、取り下げることはない。」と明言。
2004年07月のキアッティサック殺害事件で07月30日に有罪判決を言い渡された警察官5人の保釈が、31日に認められた。これに対して、身の危険を感じたキアッティサックのおばのピクン・プロームチャンら3人は、当局に身辺警護の継続を要求。ピクンは、「証人の1人のスラサック・プーンクラングは法廷で証言する前の2009年末に事故で殺された1」と述べている。
この事件を捜査した法務省特別捜査局(DSI)は、犯人の警察官らに不利な証言をしたキアッティサックの親族らの身辺警護を行っていたが、30日に有罪判決が出たことから打ち切られた。だが、犯人らが保釈されたことから、親族らは仕返しを恐れ、DSIに身辺警護の継続を要請する意向。
08月01日(水)タクシン支持団体の反独裁民主主義同盟(UDD)幹部のチャトポン元プア・タイ党議員の保釈取り消し請求に対し、刑事裁判所が08月09日に判断を示すことになっているが、取り消しが決まった場合、UDD支持者が抗議することが予想されることから、刑事裁判所は、法廷内や裁判所の敷地内で騒ぎを起こすことなどを禁止する旨を明らかに。さらに、「これに反した場合は法廷侮辱罪で禁固6ケ月までの刑が科せられる。」と警告し、UDD支持者に自制を求めた。
チャトポンは一昨年の大規模反政府デモに関連してテロなどの容疑に問われ逮捕され、現在は保釈の身。だが、政府の支持する改憲案の合憲性に関する07月13日の憲法裁判所の判断を批判したことから、憲法裁判所が、「保釈条件に違反する。」として、保釈の取り消しを刑事裁判所に請求、UDDはこれに強く反発している。
開幕した通常国会で、重要10案件を今国会で優先的に審議することが決定。国民和解法案4件はそのあとで審議される見通し。
和解案に対しては、最大野党の民主党や民主主義市民連合(PAD)など反タクシン陣営が、「タクシンの免罪が狙い。」などと強く反対しており、民主党は01日の国会でも、「インラック首相が和解案に対する態度を表明するのが先。」などと主張して、和解案の取り下げを要求。政府内でも「政治対立のエスカレートを回避するため取り下げるべき。」との声が一部から出ていたが、政府首脳は現在、取り下げずにころあいを見計らって今国会で審議することで意見が一致している。
08月02日(木)反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)幹部のチャムロン元クルングテープ都知事は、記者会見を行い、「国会で政府の支持する和解案が審議されるようなことがあれば、PADは大規模な抗議活動を展開し、インラック政権に退陣を迫る。」と表明。
PADや最大野党の民主党などの反タクシン陣営は以前から、「国外逃亡中のタクシンの免罪・帰国の実現が狙い。」と和解案に強く反対している。
チャムロンは、「国民和解を実現するには、(和解案で求められている政治関連犯への恩赦適用でなく)悪いことをした者に法律を厳格に適用するしかない。」としている。
タクシンの法律顧問であるノパドン元外相が明らかにしたところによると、タクシンは03日までモスクワに滞在し、03、04日に英国を訪れ、その後、米国を訪問。米国には約2週間滞在し、実業家、政治家からと会う予定。
08月05日(日)民主党の広報担当、チャワノンは、「インラック政権は、誕生から1年が経過したにもかかわらず、主要政策のほとんどを実現できていない。」と指摘、その責任を国会で追及する方針を再確認。「例えば、政府は国民和解を最優先課題の一つに掲げているが、批判があるにもかかわらず、敢えて憲法を改正しようとしており、和解がさらに遠のく結果を招いている。」という。
また、民主党が不信任案を提出して政府批判を強める作戦を検討していることについて、タクシンの法律顧問、ノパドンは、「民主党が取り上げようとしている問題は以前から存在するもので、驚くに値しない。」と述べて、野党攻勢でタクシン派・インラック政権が打撃を受けことはないとの見方。
08月06日(月)最大野党の民主党のアピシット党首は、インラック政権が発足から1年間の実績を発表し、来年度予算案が議会を通過する前に、不信任案を提出する考えのないことを明らかに。
民主の広報担当、チャワノンは先に、「米買い上げ計画に絡む問題、最南部のテロなど5つの論点について政府の責任を追及する。」と述べていたが、アピシット党首は不信任案審議では、個人攻撃をせず、政府の仕事ぶりに照準を合わせて問題点を指摘し、政府の国政運営がいかに間違っているかを明らかにしていく方針。
08月07日(火)最大野党の民主党が内閣不信任案を提出して政府の責任を追及する構えを見せていることについて、インラック首相は、「私に対する質問には自ら答弁する。」と明言。これまで国会審議では、野党議員などからの質問に対し、インラック首相は副首相や関係閣僚に答弁させることがほとんどだった。だが、不信任案の審議でも、答弁しなければ、逃げ腰と見られかねないことから、方針を変更したものとみられる。なお、民主党は不信任案の審議で、「インラック政権が掲げている目玉政策に照準を合わせて政府批判を展開する。」としている。
与党設置の憲法改正戦略委員会の初会合が開かれ、ポキン元国会議長を委員長に選出。副委員長には、タクシン創設のタイ・ラック・タイ党(2007年05月解党)の役員だったポンテープが選ばれた。
憲法改正戦略委員会はまず、政府支持の和解案の合憲性に関する憲法裁判断について、与党議員の意見を参考にしながら詳しく検討することになっている。なお、政府は今国会での和解案の議会通過を目指しているというが、憲法裁が「憲法全文改正には国民投票が必要。」と判断を下している。国民投票で有権者の過半数が改憲を支持するか定かでないことから、性急な和解案の議会通過で墓穴を掘る恐れがある。このため、改憲実現に向けた戦術を練る戦略委員会を設置することになった。
08月09日(木)刑事裁判所は08月09日に下されるとみられていた、チャトポン元プア・タイ党議員など反独裁民主主義同盟(UDD)関係者19人の保釈取り消し請求に対する最終判断を22日まで延期を決定。
一昨年の大規模反政府デモに関連してテロの罪などに問われて逮捕され、現在保釈中のチャトポンらは、先の国民和解法案の憲法裁判断に関して不適切な言動があったとして民主党議員らが保釈取り消しを請求。これに対する最終判断が09日に下されると予想されていた。
しかし、19人のうちの1人が、「民主党議員が不適切な言動の証拠として提出したVCDの内容に改竄がある。」と指摘し、さらに多く参考人から意見を聞くべきと要求したことから、裁判所は最終判断を延期することにしたもの。
08月10日(金)深南部でタイからの分離独立を目指すマレー系イスラム武装勢力によるとみられるテロが活発化していることについて、タイ陸軍のダーポン副司令官は、「国連が介入して住民投票が行われれば深南部を失うことになる。」と述べ、警戒感を示した。「武装勢力の取り締まりに夜間外出禁止令が有効。」との考えも示した。
サンフランシスコを訪れた逃亡者タクシンは、メディアとのインタビューで、「真の民主主義を追い求める私の闘いは平和裏に終わろうとしており、新たな軍事クーデターによって物事が振り出しに戻る可能性はきわめて低い。」、「軍部はこれまでに国内の混乱や汚職蔓延などを理由にクーデターを起こして政権を倒してきた。だが、現在「ほんとうの民主主義」を実現しようと努力しているタクシン派が勢いを増しており、軍部といえども、これを無視してタクシン派、インラック政権を打倒することは難しい状況にある。」と述べた。
なお、関係筋によれば、タクシン派は、タクシン政権を倒した2006年09月の軍事クーデターによって民主主義が破壊されたとして、タクシンの有罪取り消しを含む原状回復を求めている。一方、反タクシン派は、「汚職まみれ」といった批判、国内の混乱、クーデターを招いた責任はタクシン政権にあるとしている。だが、タクシン派はその責任を認めようとしていない。このような状況の中で、タクシン派は、思いを遂げるために支持者を大量動員して、「これこそが真の民主主義」などと主張しているが、これは反タクシン派にとっては受け入れがたい「民主主義」である。
08月12日(日)逃亡者タクシンは、アメリカのビザを得て、サンフランシスコ、ニューヨークシティー、ヒューストンでタクシン派の赤服(反独裁民主主義同盟(UDD))を動員して、集会を開いて移動していた。
ロサンゼルスでも、ハリウッド通のタイランド・プラザ・フードコートで、地元メディアや赤服を集めて「タクシンと気楽なお喋り」という集会を予定していたが、これに反対する約2000人の黄服(民主主義市民連合(PAD))などの反タクシン派が会場に集まり、タクシンは会場に近づけず、イベントは中止。タイランド・プラザでは、駐車スペースにステージを仮設し、18時(現地)から記者会見、夕食をとりながらの支持者との懇談会、20時からスピーチが予定されていた。
17時半頃には約300人の遠く離れたラスベガスやコロラドなどからも集まって来た反タクシン派は、会場前の通りの両側に陣取り、「暴漢罪(thung-sin)、地獄に落ちろ、刑務所に入れ」、「有罪判決の逃亡者」、「指名手配犯」などという悪意のこもったプラカードを掲げ、さらに何人かは侮辱の言葉を浴びせる抗議を行なった。その数は19時には約2000人に膨れあがり、反タクシン派の黄服だけではなく、多くのアメリカ人がタクシンに反対して加わった。
赤服の幹部で2010年のタイ暴動を指揮したダラニー・クリットブーンヤライなどの姿も見られたが、赤服との衝突は報告されていない。
抗議は続いたが、21時頃のサーヤム・タウン・米国・ニュース・ウェブサイトによれば、タイの与党のプア・タイ党の幹部でタクシンと親しい、ソムポング・アモーンウィワットが、地方警察からの要請があり、安全上の理由により集会を行わないと赤服の集会で述べたことを伝えた。
職権乱用による土地取引で2年の刑から逃げるため、2008年の終わりに国外逃亡したタクシンを乗せた車は反タクシン派のピケのために会場には入れず、数時間後にタクシンから支持者のもとに「会場に近づけず、行けなくて申し訳ない。」という断りの電話があった。
タクシンの法律顧問のノッパドン・パッタマは、「タクシンは1週間米国で留まり、タイの国外追放者や何人かのアメリカの政治家との会談を行う。」と述べたが、アメリカの有力な政治家はタクシンとの会談を避けている。
環境保護グループと黄服の幹部のスリヤサイ・カタシラは、「抗議活動は、求められているタクシンへの『社会的制裁』を実行をしただけでなく、タイと逃亡犯引き渡し条約を軽視している米国当局に恥をかかせる役目をした。」と絶賛し、「タクシンに司法手続きが下されるまで、社会的制裁がますます増大するだろう。米国のタイ人が力を示し、世界に真実を知らせるようにしたことを感謝する。」、「実際、刑事罰を犯したタクシンが政治犯であるかのような、事実を歪める捏造がある。」と述べた。
08月14日(火)国外逃亡中のタクシンが米国を訪れていることに対し、最大野党の民主党のテープタイ議員は、「米政府は、『タイから身柄引き渡しの要請がないため、タクシンの入国を許可した。』と説明している。これは、タイの外務省、検察、警察がやるべきことをやっていないことを示している。」と非難。タクシンは、首相在任中の汚職(職権乱用)で禁固2年の有罪が確定した犯罪人。このため、タイ政府は、犯罪人交換条約を結んでいる米国に対し、タクシンの身柄の拘束・引き渡しを要請することができる。
テープタイ議員は、「タクシンの居場所がわからないとは言わせない。」、「これまでのように『所在不明で身柄の拘束・引き渡しを要請できない。』という言い訳は通用しない。」と述べた。
08月16日(木)プラユット陸軍司令官は、一昨年の大規模反政府デモの際のデモ参加者などの死亡について、治安部隊員を犯人扱いするような発表を控えるよう法務省特別捜査局(DSI)に申し入れたことを明らかに。DSIは、これまでに何度か、「治安当局に責任がある。」といった中間報告を行ってきた。
プラユット司令官によれば、「デモ関連死については裁判が進められており、兵士などを非難する発表は控えるべき。」と言う。この申し入れに対し、タリットDSI局長は、前向きに検討すると約束し謝罪。
憲法裁判所の敷地内に掲げられる国王陛下の肖像画に向かって不敬な言動をしたとして身柄を拘束されているニュージーランド在住のタイ人ティティナント・ケウチャントラノント(63)に「精神疾患」の結果。憲法裁判所が政府支持の改憲案の合憲性に関する判断を下した07月13日に言動があった。
「ティティナントは精神障害の既往歴があり、この障害が不適切な言動の原因の可能性がある。」という。この結果は警察に報告される予定だが、今回の検査とは別に、ティティナントの裁判所での不敬な言動が精神疾患によるものかどうかを確かめる検査も行われる。
08月20日(月)関係筋によれば、「法務省特別捜査局(DSI)が一昨年の大規模な反政府デモの際のデモ参加者・治安要員などの死亡を捜査していることに、軍部が不信感を強めており、これまで比較的良好だったインラック政権と軍部の関係が険悪化しつつある。」という。
プラユット陸軍司令官は先に、DSIが捜査の中間報告の中で、「治安要員が関与している(兵士の発砲でデモ参加者などが死亡した)。」との見方を示したことに対し、「デモ関連死の裁判が行われている最中」との理由で、治安当局の責任に言及するのを控えるよう要請し、タリットDSI局長が謝罪したばかり。
同筋によれば、「『捜査は、当時のアピシット首相とステープ副首相(治安担当)の責任を問うこと。』との説明を軍部は受け、これまで捜査に協力してきた。だが、DSIは、治安要員の責任を明らかにすることに力を入れているように見えることから、軍首脳部は、『自分たちも標的なのではないか。』と疑い始めている。」
08月21日(火)訪米を終えたタイのタクシンが17日から20日まで、タイの洪水対策事業について話し合うため、南朝鮮を訪問。今回の訪問は、南朝鮮の李明博政権が進める4大河川事業をモデルにして、タイの洪水対策を進めることを視野に協議を行うのが目的。
タクシンは「水資源管理分野での協力強化を望んでいる。」と述べ、南朝鮮水資源公社がタイの関係当局と計画立案を進めていることを説明。南朝鮮勢では、南朝鮮水資源公社やGS建設などがタイの洪水対策事業への参入を狙っている。
タクシンはまた、「支那企業が技術競争力を付けてきており、南朝鮮企業は技術力だけでなく、価格競争力を備えるべきだ。タイ政府は技術力と価格競争力の双方を評価することになる。」と述べた。タクシンの法律顧問であるノパドン元タイ外相によると、タクシンは訪韓後、北京に向かった。
南朝鮮が侵略中の日本固有の領土、竹島に酋長不法侵入、支那人が日本固有の領土、尖閣諸島の魚釣島に不法上陸。これらは、ロシアが侵略中の日本固有の領土、択捉島に酋長の再侵入を許したためこんな事態になった。こんな時期に南鮮や支那を訪れるタクシンが反日なのは言うまでもない。また、インラックはタクシンの操り人形に過ぎない。
08月25日(土)サティエン国防事務次官が同次官の後任選びでスカムポン国防相の「越権行為」を批判し、この件を話し合うためインラック首相に面会を申し入れたことがわかった。 国防相は17日の軍幹部との会合で、国防省の事務方トップである事務次官に陸軍司令官補佐のサノンサク大将を推す意向を表明。
だが、サティエン次官によれば、「軍幹部の人事は法律に厳格に従って行われる必要があり、年功序列に従ってチャトリー副次官を次官に昇格させるべき。」
08月26日(日)スラポン外相は、インラック政権発足からのこの1年における自身の実績を報道関係者に説明し、「タクシンを帰国させ、刑に服させる権限も、関係当局にタクシンの身柄引渡しを外国に請求させる権限も外務省にはない。」との認識を改めて示した。「外務省にできるのは、関係当局の犯罪人身柄引渡し請求を外交チャンネルを通じて、外国に伝えることだけ。」と付け加えた。さらに、「犯罪人の所在がはっきりしている場合に限られる。」という。
なお、先にタクシンが米国を訪問した際、最大野党・民主党は、「所在不明とは言わせない。」と引渡し請求を政府に迫ったが、政府は結局、何も手を打たなかった。
国防事務次官の後任人事を巡ってスカムポン国防相とサティアン現事務次官が対立している問題で、スカムポン国防相は、「決定を国防評議会に委ねる。」と述べた。
サティアン次官は、「自分の後任は年功序列などからチャトリー副次官を次官に昇格させるべき。」と主張し、国防相がタノンサク陸軍司令官補佐を推していることに強く反発。
これに対し、国防相は、「陸海空3軍の司令官も同意している。」と反論。
08月27日(月)スカムポン国防相は、国防事務次官の後任人事で国防相の人選に異議を唱えていたサティアン次官(大将)、チャートリー副次官ら国防省の高官3人を更迭。国防省内の問題を口外したなどの理由で、国防相室付の補佐役という閑職に左遷。
09月末に定年退官するサティアン次官はチャートリー副次官を後任に据えようとし、10月の定例人事異動で親タクシンとされるタノンサック陸軍司令官補を定年退官するサティアン大将の後任に推すスカムポン国防相らと対立。政治家による「軍への干渉」と反発して、国防相を非難する手紙をインラック首相、反タクシン派の黒幕とされるプレム枢密院議長(元首相、元陸軍司令官)らに送ったり、スラユット枢密顧問官(元首相、元枢密顧問官)に面会して助力を求めるなどし、物議を醸していた。こうした人事をめぐる対立が今回の電撃解任に繋がった。しかし、国軍最高司令官、陸軍司令官、海軍司令官は国防相を支持しているとされることから、国防相は、軍部の反発はないとみて、サティエン大将の排除に踏み切ったもの。
反タクシン派が実権を握る軍はタクシン派のインラク政権とギクシャクした関係で、次官更迭で両陣営の亀裂が深まるという見方もある。ただ、テレビ局チャンネル7のニュース番組は、タノンサク陸軍司令官補の国防次官就任を希望したのは軍の事実上のトップであるプラユット陸軍司令官だとしており、その場合、話は軍の内輪もめで、政権への影響は限定的となる見通し。
プレム議長は例年、08月26日の誕生日に、軍・警察の現役の最高幹部を自宅に迎え、祝賀を受けるが、今年は行わなかった。
タイ軍は憲法上、国王が最高司令官で、政府からは半ば独立した存在。2008年には3軍の司令官と国防次官、国防相らの委員会が軍幹部の人事を決める制度が法制化され、政府からの独立性がより高まった。
一昨年の反独裁民主主義同盟(UDD)による大規模反政府デモで多数の死傷者が出た問題で、当時それぞれ首相、副首相(治安担当)だったアピシット民主党党首、ステープ議員が、法務省特別捜査局(DSI)に出頭して、「当局によるデモ隊排除は正当だった。」と証言。DSIは、デモ隊と治安部隊の衝突などにおける当時の政府首脳の責任を追及すべく、2人を呼び出し証言させたものだが、アピシット党首は、「事実に基づいて証言した。」、「現時点では何も心配していない。」と述べた。
08月28日(火)タクシン政権下(2001~2006年)下、スワンナプーム国際空港に装備された手荷物X線検査装置「CTX」の調達で不正があったされる問題で、国家汚職制圧委員会(NACC)はこのほど、当時のタクシン首相やスリヤ運輸相など関係者28人を汚職で訴追するには嫌疑不十分との判断。この疑惑は、米当局が製造元である米企業などについて捜査したことが発端。
ウィチャイNACC委員は、「米FBIから証拠が提供されたものの、NACCとしては、関係者が不正に関わったとは立証できなかった。タクシンを助けようとしたものではないし、証拠も改竄していない。」と述べている。
2010年の大規模反政府デモで90人以上の死者が出たことの責任の所在を明らかにするための捜査が現在、法務省特別捜査局(DSI)によって進められているが、当時副首相(治安担当)を務めていたステープ民主党議員がタリットDSI局長の関与に言及したことから、DSIでは、「組織のトップであるタリットDSI局長からも聞き取りを行う可能性がある。」という。 ステープ議員によれば、当時治安作戦を一元的に指揮・監督するために設置されたセンターのメンバーだったタリット局長は、「『(デモによって)暴力が発生した場合、非常事態宣言を発令すべき。』と提言した。」とのこと。
また、アピシット民主党党首とステープ議員に対する聞き取りは、それぞれ7時間、12時間に及んだ。ステープ議員は、「聞き取りの中で、兵士が自動小銃でデモ参加者に発砲しているとされる映像を見せられ、これを『デモ隊への銃撃』と認めるよう求められたが、断った。映像では銃撃の標的がわからなかったからだ。」と明らかに。
DSIは、「映像はYouTubeにアップロードされたもの」と説明したというが、ステープ議員は、「これまでに見たことのない映像だった。」としている。
スカムポン国防相は、省で記者会見し、国防省の事務次官や副事務次官など高官3人を閑職に左遷したことについて、「3人の存在が国防相としての職務遂行において障害となっていたため。」、と釈明。3人は、国防事務次官の後任選びで国防相と意見が対立していた。
スカムポン国防相は、サッカーに例えて、「わたしはチームマネジャー、事務次官はコーチ。コーチが不適任としたら、チームはなかなか勝てない。コーチを交代させるのは当然。」と述べている。
また、事務次官から左遷されたサティアン大将があと1ケ月ほどで定年退官することについて、国防相は、「異動は望ましくない。だが、異動せざるを得ない理由があった。そして、私には異動の権限がある。」と説明。
08月29日(水)国防事務次官の後任選びを巡ってスカムポン国防相と対立したことで、先に国防相秘書局局長から閑職に追いやられたピンナート大将が、花などを手に国防相の執務室を訪れ、これまでの言動を謝罪。
その後、ピンナート大将は、報道陣に対し、「国防相が出した異動命令は適切な措置であり、大臣の権限に基づいたもの。私は罪を認め、自分の行いを悔いている。」と述べた。
スカムポン国防相によれば、「異動命令は撤回しないが、大将に個人的な恨みはない。」
08月30日(木)下院で、最大野党の民主党のキアット議員が、「虚偽発言」についてキティラット副首相兼財務相に説明を求めた。だが、財務相が公務で外遊中であることから、タヌサック副財務相が説明しようとしたが、キアット議員は、本人の説明が必要と主張。このため、キティラット財務相が来週、下院で釈明することになった。
財務相は先に、「今年の輸出成長目標15%は達成可能。」との主張を虚偽だったと認めた。このため、財務相は、各方面から「国民を騙していた。」との厳しい批判を浴びることになった。
キティラット副首相兼財務相の「虚偽発言」、スカムポン国防相の「高官3人左遷」を問題視する見方もあるが、インラック首相は「これら不手際を理由に内閣を改造するつもりはない。」としている。
09月03日(月)行政裁判所がサティアン大将国防事務次官の左遷に絡み、スカムポン国防相に陳述を求めていることが、09月03日までにわかった。これは、事務次官を解任されたサティアン大将がサティアン裁判所に不服申し立てをしていたことによるもの。左遷は事務次官の後任選びで両者の意見が対立したことが原因だが、サティアン大将は不当な人事だと訴えている。
09月04日(火)政府は閣議で、内務省と法務省の高官数人を異動することを決めたが、与党政治家絡みの不正疑惑で政府批判が強まっていることに対処しようとしたものと見られる。だが、政治家の関与が疑われる複数の不正疑惑を先頭に立って捜査してきたドゥサディ政府汚職対策委員会(PACC)事務局長が法務副事務次官に異動することになったことから、「捜査を終わらせ、不正を隠蔽することが狙い。」といった批判的見方。
最大野党の民主党は、「ドゥサディの異動は、汚職を暴こうとする者を排除することが目的であり、政府が汚職に手を染めていることの証し。」と非難。なお、PACC事務局長には、法務省特別捜査局(DSI)のプラウェート副局長が任命される見通しだが、2010年の大規模デモで大勢の死傷者が出たことについて、副局長が現政権の意向に沿う形で、「大勢の死傷者が出たのは当時の民主党政権の責任。」との前提でDSIの捜査を陣頭指揮したことに対する褒美と考えられる。
タイの野党プームチャイ・タイ党のチャワラット・チャーンウィーラクーン党首(76)が辞任することが明らかになった。後任の党首にはチャワラットの長男のアヌティン元保健相(45)が有力視。
チャワラットは地場ゼネコン(総合建設会社)大手シノタイ・エンジニアリング・アンド・コンストラクションの創業者で、2008~2011年の反タクシン派アピシット政権で内相を務めた。シノタイはこの間にバンコク首都圏電車網建設工事の一部を受注。
プームチャイ・タイ党は2008年末に憲法裁判所命令で解党されたタクシン派政党パラン・プラチャーチョン党から分離して発足。アピシット政権で反タクシン派の民主党と連立政権を組んだ。現在の下院(定数500)議員数は34人。昨年07月の総選挙でタクシン派インラック政権が発足したことを受け下野。
次期党首に名前が挙がっているアヌティンはタクシン政権(2001~2006年)で保健相を務めた。軍事政権下の2007年に5年間の参政権停止処分を受け、今年05月末に処分が解除されたばかり。タクシンとの関係は現在も悪くないと言われ、「最近、シンガポールでタクシンと会った。」と報じられた。
09月05日(水)政府汚職対策委員会(PACC)で、職員20人以上が喪服姿で出勤し、ドゥサディPACC事務局長の異動に抗議。ドゥサディ事務局長は10月の定例人事異動で法務副事務次官に就任することが先の閣議で決まったが、ドゥサディ事務局長が与党政治家絡みの汚職疑惑に次々にメスを入れようとしたことが原因との見方も出ている。
また、法務省では、タクシン派の現政権が事務局長の後任に「タクシン派寄りとされるプラウェート法務省特別捜査局副局長を起用する。」といった内容のビラが見つかった。これは、PACC事務局長の交代で与党政治家絡みの疑惑の捜査が骨抜きにされるのを懸念したもの。
09月07日(金)カムロンウィット首都警察司令官がタクシンとの親密な関係を野党民主党など反タクシン派に追求されている。
カムロンウィット司令官は、03日午前05時30分頃、世界的に人気があるドリンク剤「レッド・ブル(クラディン・デーン)」の創業者のチャリアウ・ユーウィタヤー(88で死亡)の孫のウォラユット・ユーウィタヤー(27、仇名:ボス)がクルングテープ都スクムビット通ソイ47付近で、灰色のフェラーリを運転中にパトロール中の警官ウィチェアン・グランプラセート(45)を約200m引きずって死亡させ、フェラーリは現場から走り去るという轢き逃げ事件で、翌04日、執務室に記者団を招き入れ、質問に応じた。その際、部屋の中にタクシンとカムロンウィット司令官が2人で写った写真が飾られていたことから、インターネット上に「タクシンは逃亡犯だ。なぜ逮捕しない。」といった反タクシン派市民からの批判のコメントが殺到した。民主党はオンブズマンにカムロンウィット司令官の資格調査を要請する方針。
問題の写真には、「愛する後輩へ。おめでとう。」などと書かれており、タクシンの自筆とみられている。室内にはカムロンウィット司令官が書いた「今日があるのは先輩のおかげ。」という標語もあった。カムロンウィット司令官は今年07月に現職に就任。
反タクシン派の批判を受け、07日朝、首都警察本部に警官数百人が集まり、カムロンウィット司令官への支持を表明。 タクシンは2006年の軍事クーデターで政権を追われ、事実上亡命。2007年末に行われた民政移管のための総選挙でタクシン派が勝利したため、2008年02月に帰国したが、同年08月に出国し、不在中の10月、首相在任中に当時の妻ポチャマンが国有地を競売で購入したことで懲役2年の実刑判決を受けた。その後はタイに帰国せず、主にドバイに滞在。
09月11日(火)クルングテープの飲み屋街を店主らの同意を得ずに取り壊したとして、ソープランドチェーン元オーナーのチューウィット下院議員ら131人が器物損壊、監禁などの罪に問われた裁判で、2審の控訴裁判所は、チューウィットらを無罪とした1審判決を破棄し、チューウィットに懲役5年、その他の被告66人に懲役10ケ月から5年の実刑判決を言い渡した。64人は無罪。チューウィットは最高裁判所に上告する方針。
飲み屋街はスクムビット通ソイ10にあり、2003年01月26日未明、100人以上の男と重機により1晩で取り壊された。地権者のチューウィットはこの土地にホテルの建設を計画していたが、店舗数十店が立ち退きを拒んでいた。事件後、チューウィットは政界に転身し、飲み屋街の跡地には「チューウィット公園」が作られた。
09月12日(水)中央行政裁判所は、「国防事務次官を解任されたのは不当。」とするサティアン大将の訴えを、サティアン大将が「不当さ」を立証するために提出した書類や署名が偽物との理由で却下。
事務次官の後任選びでスカムポン国防相と対立していたるサティアン大将は、先にスカムポン国防相によって、「人事に関する情報を口外した。」として、事務次官から閑職に左遷となった。
一方、るサティアン大将とともに、国防副事務次官から左遷となったチャトリー大将については、中央行政裁判所は、「国防相の直属の部下でなく、(左遷理由の)服務規程違反の内容も不明確。」として、チャトリー大将の異動を差し止めとし、これを国防省に伝えた。
09月13日(木)政府汚職対策室(PACC)のドゥサディ事務局長が10月01日付けで法務副事務次官に就任することが決まったが、与党政治家絡みの不正疑惑を次々に取り上げてきたことから事務局長ポストから外されることになったとの見方が強い。
後任には、現政権寄りのプラウェート特別捜査局(DSI)副局長が有力候補に挙がっているが、プラウェート副局長はこのほど、「論争を引き起こしたくない。」として、「PACC事務局長ポストには固執しない。」と明言。
プラチャー法相によれば、「事務局長の後任は法務省の選考委員会によって選ばれることになるが、同委員会はまだ設置されていない。」
09月14日(金)チャルーム副首相は、「シンガポールで09月下旬にF1レースが開催されることから、タクシンが09月23日にシンガポールを訪れる予定だ。」と明らかに。また、チャルーム副首相は、「タクシンは帰国を希望しているが、いつになるかわからない。」と述べた。
タクシンは、汚職で禁固2年の有罪が確定した犯罪人であることから、最大野党の民主党などは、インラック政権に対し、「タクシンを帰国させ刑に服させよ。」と求めている。だが、タクシン派のインラック政権は、有罪判決を表立って批判するのは避けているものの、「タクシンを捕らえて監獄に入れるつもりなど毛頭ない。」というのが大方の見方。
09月15日(土)タクシン支持派の市民団体、反独裁民主主義同盟(UDD、通称スア・デェーン=赤服)は、タクシン政権を崩壊させた2006年09月19日のクーデターから6周年を迎えるのを記念して、クルングテープの民主記念塔で集会。3000人の支持者が集まり、幹部のウェーン(下院議員)らが設置されたステージ上で演説。警察は1000人体制で警戒したが、周辺の一部道路が封鎖され渋滞が起きたほかは、大きな混乱はなかった。
09月17日(月)刑事裁判所は、「反独裁民主主義同盟(UDD)が大規模反政府デモを展開していた2010年05月14日にタクシー運転手の男性が死亡したのは治安部隊による発砲が原因。」との判断を示した。
これを受け、法務省特別捜査局(DSI)のタリット局長は、「治安部隊にデモ対策を指示した当時のアピシット首相(民主党党首)とステープ副首相(民主党議員)が殺人容疑で訴追される可能性がある。」との見方を示した。
タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)による2010年の大規模反政府デモの検証のため設置された独立機関、真実和解委員会(TRC)は、2年に及ぶ調査の結果をまとめた報告書を明らかに。
TRCは報告書の中で、「デモの際に92人が死亡したのはUDD(赤服軍団)と軍(治安部隊)の双方に責任がある。」とし、「デモの最中に狙撃され死亡したタクシン派の軍人、カティヤ少将と、デモ隊と行動を共にしていた黒服の武装グループとの間に繋がりがあった。」と指摘。
TRC調査小委員会のソムチャイ委員長は、「TRCにより大きな権限が与えられていたら、さらに多く事実が明らかになっただろうが、報告書は最も信頼性、信憑性の高い記録して扱われるべきもの。」と述べている。
刑事裁判所は、「反独裁民主主義同盟(UDD)が大規模反政府デモを展開していた2010年05月14日にタクシー運転手の男性が死亡したのは治安部隊による発砲が原因。」との判断を示した。 これを受け、法務省特別捜査局(DSI)のタリット局長は、「治安部隊にデモ対策を指示した当時のアピシット首相(民主党党首)とステープ副首相(同党議員)が殺人容疑で訴追される可能性がある。」との見方を示した。


38章  タクシンの画策 民主党幹部を遡及罷免・殺人罪、タクシンの小舅の昇格
09月18日(火)上院で、民主党政権で副首相を務めた「ステープ民主党議員を過去に遡って副首相罷免とする。」との請求が賛成40反対95で却下。可決されると、5年間の政治活動禁止処分を受けるところだった。
副首相時代に副首相当時、文化省の人事に介入した疑惑が浮上し、副首相の権限を逸脱して介入した越権行為があり、憲法に違反した罷免を請求していた。政府汚職対策室(PACC)は、「ステープ議員は、憲法違反はあったものの、このケースは刑事罰の対象ではなく、議員資格を失うことはない。」という。
タイ政府は閣議で、国家安全保障会議のパラドン副事務局長を事務局長に昇進させる人事を決めた。ウィチアン事務局長は運輸次官に異動。人事は10月01日付。
パラドン副事務局長は、タクシンと親しいプリーダ元首相府相の親族。タクシンは警察在職当時、プリーダの警護を担当したことがある。
ウィチアン事務局長は前警察長官。昨年08月に発足したタクシン派のインラック政権が、タクシンの元妻ポチャマンの兄のプリアオパン警察副長官を昇格させるため、異動させたと見られている。
独立機関の真実和解委員会(TRC)が2010年の大規模反政府デモに関する調査報告書の内容を公表したことを受け、インラック首相は、「報告書の中でTRCが提言していることが、国民和解の実現に役立つものなら、政府は提言を具体化する用意がある。」と述べた。
提言のひとつは、「タクシンは政治から足を洗うべき。」というもの。これについて、インラック首相は、「提言が有益で国内状況の改善をもたらすものなら、タクシンは提言を呑むだろう。」と述べている。
なお、報告書は、タクシン派の軍人と武装グループの繋がりなどを指摘しており、タクシン派の政権党プア・タイ党の一部議員から「根も葉もない嘘。」といった批判意見も出ている。
2010年の大規模反政府デモの最中にタクシー運転手が銃撃され死亡したことについて、タリット法務省特別捜査局(DSI)局長が先に当時のアピシット首相とステープ副首相(治安担当)を殺人容疑で訴追する可能性を示したことに対し、アピシット民主党党首は、「やりすぎだ」とタリット局長を批判。
ステープは当時、治安対策センターの最高責任者だったが、アピシット党首は、「タリット局長は、治安対策センターの責任を問おうとしているが、タリット局長自身もセンターのメンバーだったことを忘れたのか。」と指摘。
09月19日(水)2010年の大規模な反政府デモでの市民の死亡について、法務省特別捜査局(DSI)のタリット局長が先に、当時のアピシット首相(民主党党首)とステープ副首相(民主党議員)を殺人容疑で訴追する可能性に言及したが、政界観測筋は、「タクシンの免罪を実現すべく、政治関連犯への恩赦適用を民主党に受け入れさせることが狙い。」と指摘。
タクシン派の政権党プア・タイ党は、「国民和解のため」として、タクシン支持・不支持を巡る抗争などで罪に問われた政治関連犯全員に恩赦を適用するよう求めている。
これに対し、反タクシン派の民主党などは、「国外逃亡中のタクシンの免罪が最大の目的。」などと反発。
関係筋によれば、「DSI局長の発言は政府の意向を受けたものと見られるが、政府は、『アピシット党首らが殺人容疑者となれば、民主党も恩赦適用を受け入れざるを得ない。』」と踏んでいる。
民主党は、「カムロンウィット首都圏警察長官が約500人に及ぶ警察官を民主党本部前に集まるよう仕向けたのは問題。」として、下院警察委員会に対し、長官の責任を調査し明らかにするよう要請。
民主党は先に、カムロンウィット長官が犯罪人であるタクシンと一緒に写った写真を長官室に飾っていることを批判。
これに対し、カムロンウィット長官は18日に自ら民主党本部を訪れて抗議書を手渡すとしていたが、本人は現れず、代わりに数百人に及ぶ警察官が抗議の意を示すかのように本部前に集まった。民主党は、「上官でなく市民を守るのが警察官の本分のはず。」と皮肉った。
ソムサック下院議長が、英国、フランス、ベルギーの欧州3ケ国を歴訪する視察旅行に出発。各メディアのスタッフ、コラムニスト、学者、側近ら39人が同行。
22日と23日にロンドンでサッカー観戦の予定が組まれていることなどから、公費による観光旅行だと非難する声が上がっている。旅行は9日間の日程。費用は1人18万Bで、計700万B。政府が本年度予算から支出。参加者の大学講師は、「水利管理を視察するスタディーツアーだとして招待を受けた。」と説明。
反タクシン派団体、民主主義市民連合(PAD、黄服)の創設者の「ソンティ・リムトーングクンが、タクシンの法律顧問のノパドン元外相を侮辱した。」とされる裁判で、2審の控訴裁判所は、ソンティに禁錮3ケ月の実刑判決を言い渡した。1審の禁錮6ケ月からは減刑。ソンティは上告する方針。
訴えによると、ソンティは2007年01月、トークショーの中で、ノパドンについて、「王室関連団体から奨学金をもらったにも関わらず、タクシンのために働くことを選んだ。」として、「恩知らずだ。」などと非難。
ソンティは、この件のほかにも名誉棄損や証券取引法違反などで起訴されており、裁判が行われている。
09月20日(木)法務省特別捜査局(DSI)のタリット局長は、最大野党の民主党のアピシット党首とステープ議員を殺人容疑で訴追する可能性に触れたことで批判されていることに対し、「民主党を罪に問うことを目的に捜査しているわけではない。」と反論。タリット局長によれば、「DSIは、2010年の大規模反政府デモで大勢の死傷者が出たことについて、法律に基づいて事実関係を明らかにしようとしているだけであり、当時の民主党政権とデモを展開した反独裁民主主義同盟(UDD)の双方に責任があると考えている。」という。
だが、タリット局長は、反タクシン派の民主党の責任に度々言及しており、「タクシン派の現政権に迎合している。」といった批判が出ている。
欧州を研修旅行中のソムサック国会議長(下院議長)は、今回の旅行に「税金を使った単なる観光旅行」といった批判が出ていることに対し、「サッカー試合観戦の費用は(スポンサーの)サイアムスポーツ社持ちで、公費は使っていない。」などと釈明。また、家族や知人の同行についても「各人が費用を負担している。」と弁解。
「研修旅行の費用は、総額700万Bに上るというが、同行の報道関係者も与党政治家などと近しい関係にある者がほとんど。」という。
厳しい批判が出ているため、下院委員会が帰国後に同議長から事情を聞くことにしている。
09月22日(土)タクシン派の政権党プア・タイ党幹部のチラユ議員は、2010年の大規模反政府デモに関する調査報告書を公表した真実和解委員会(TRC)に、報告書の内容を不満とし、新たに委員会を設置して再度調査を行うよう政府に求める方針を明らかに。真実和解委員会(TRC)は、反タクシン派の民主党政権下(2008~2011年)で設置されたもの。
TRCの報告書では、「デモ隊と行動を共にしていた黒服の武装グループが治安要員の殺害などに関与した。」とされている。これに対しては「非はすべて当時の治安当局、民主党政権にある。」とするタクシン派から反発の声が上がっていた。
ソムサック国会議長(下院議長)の欧州研修旅行にサッカー試合観戦などが含まれていたことから厳しい批判が出ている問題で、最大野党の民主党のサティット議員は、責任をとって辞任するようソムサク議長に要求。
公費によるこの旅行には、報道関係者や識者など約40人が同行しているが、サティット議員によれば、報道関係者は現政権の支持者ばかりで、識者も民主党に批判的な者がほとんど。民主党は近く、ソムサック議長の責任を追及するよう国家汚職制圧委員会(NACC)やオンブズマン(行政監察官)に要請する予定。
09月23日(日)午前インラック首相は、ブルネイ訪問と第67回国連総会出席のため、クルングテープ都東郊のスワンナプーム空港を出発。ブルネイに立ち寄った後、米ニューヨークに向かう。米国には29日まで滞在。
ブルネイでは、ハフィザ・スルルル・ボルキア王女の結婚式に参列する。米国では国連総会での演説、在米タイ人企業家との昼食会、ブルームバーグ・ニューヨーク市長との面談、ビルマのテイン・セイン大統領との会談などを予定。
東北部ウボンラチャータニー県からの報道によれば、ムアン郡(県庁所在地)で、心臓麻痺の患者を搬送中の救急車が交通渋滞に巻き込まれたことから、患者を別の救急車に移して病院に運んだが、患者を助けることはできなかった。
渋滞の原因は、同地のホテルで開催された反タクシン派の民主主義市民連合(PAD)の政治セミナーに反対しようとタクシン派の反独裁民主主義同盟(UDD)のメンバー約300人がホテルを取り囲んで抗議を続けたことにある。渋滞が患者死亡の原因となった可能性もあるが、速やかに病院に搬送していたら救命できていたかは定かでない。
なお、UDDメンバーの中には、力ずくでセミナーの会場に乱入しようとしたり、花壇に入らないよう求めたホテルのスタッフを殴りつけたりした者もいたという。
09月24日(月)タクシン派インラック政権の目玉政策のひとつ、米買い上げ計画は、経済専門家や野党から「税金の無駄遣い。」、「汚職の温床。」などと厳しい批判を浴びているが、インラック首相の実兄、タクシンは、訪問先のシンガポールで、「経済効果は計画に掛かった費用の3倍にも及ぶ。」として、計画を今後も継続すべきとの考えを明らかに。
高値で農家から米を買い上げるこの計画は、タクシン派の多い農民の収入を増やしてインラック政権への農民の支持をさらに強固なものにすることが狙いと見られている。ただ、市場価格を上回る価格での買い上げについては、「市場のメカニズムを歪めている。」、「米価の上昇を招き、輸出に影響が出る。」といった批判が出ている。
これに対し、タクシンは、「政府による価格操作が2年、3年と続けば、それが当たり前になる。国際市場でも米価が上昇傾向にある。」と「悪影響はない。」としている。
09月25日(火)クルングテープ都内パホンヨティン通の犯罪制圧課(CSD)本部前で、反独裁民主主義同盟(UDD)メンバーなどタクシン派の市民らと、民主主義市民連合(PAD)関係者など反タクシン派の市民数十人が衝突し、ペットボトルを投げ合ったり、殴り合う乱闘で双方に数人が怪我人が出る事態。
マナットナン元教師が先にUDD幹部のダルニーが不敬発言をしたと非難し、ダルニーが名誉毀損で元教師をCSDに訴えたこと。同日はマナットナンがCSDで事情聴取を受けることになっていたことから、反タクシン派の市民がマナットナンを激励するためCSD本部前に集まっていた。タクシン派の市民らもCSD本部前でダルニーへの支持を表明。互いに挑発を繰り返した後、一部の参加者が殴り合うなどした。警察官らが間に入って衝突を回避しようとしたが、詰り合いがエスカレートして反タクシン派の市民らがタクシン派の車両のフロントガラスを割るなどしたことから殴り合いが起きたもの。
現場近くのディスカウントストア、テスコロータス・ラープラーオ―パホンヨーティン通店は衝突を受け、営業を一時中止。
ヨンユット副首相兼内相(政権党プア・タイ党党首)が、内務副事務次官時代に寺院所有地の売却を承認したのは法律違反と国家汚職制圧委員会(NACC)が判断した問題が複雑化。
内務省公務委員会が「免官」との09月14日の決定を覆して「関連法に基づいて免罪が適用可能。」としたことに対し、NACCは「免罪が適用されるのは処分を全うした者に限られる。」として、「年金を受け取らず、政府機関の役員職に就かないという処分に従っていないヨンユット副首相は免罪の適用対象とはならない。」との認識を明らかに。最大野党の民主党のアピシット党首によれば、「ヨンユット副首相は年金を定期的に受け取り、国営企業の役員も務めており、免罪適用の資格はない。」
プア・タイ党党首のヨンユット副首相兼内相に対しては、国家汚職制圧委員会(NACC)が内務副事務次官時代の違法行為を指摘したにもかかわらず、現職に留まっていることに批判が出ているが、党内でも閣僚辞任を求める声が強まっている。
また、ヨンユット副首相は、「上から『問題が決着するまで表に出るな。』との指示を受けた。」とされる。
このほか、ヨンユット副首相は、インラック首相が訪米で不在であるため、首相代行を任されたものの、09月25日の閣議には出席しなかったことから、「ヨンユットはいずれ辞任せざるを得ない。」との見方が強まっている。
09月26日(水)クルングテープ都内の犯罪制圧課(CSD)本部前でタクシン派の反独裁民主主義同盟(UDD)と反タクシン派の民主主義市民連合(PAD)のメンバーらが衝突し負傷者が出た問題で、首都圏警察のカムロンウィット長官は、「事前連絡がなかったため首都圏警察の対応が遅れた。」とCSDを批判。「首都圏警察が出動要請を受けてCSD本部前に警察官を派遣した時点で、すでに手に負えない状況となっていた。」という。
カムロンウィット長官は、「治安対策を講ずるには準備が必要なため、抗議活動などが予想される場合は、事前に首都圏警察に連絡すべき。」
09月27日(木)内務副事務次官時代の違法行為でプア・タイ党のヨンユット党首が、副首相兼内相の座を追われかねない状況。
ヨンユット党首を「免官」とした内務省公務委員会が一転「免罪適用が可能」との見方を示したとされることついて、同委員会の委員長を務めるチュチャート副内相は、「何も聞いていない。委員会で免罪を話し合ったこともない。」と明言。委員会の正式見解ではないとの認識を示した。これは、チュチャート副内相が国会で野党議員の質問に対し説明したもの。
ヨンユットは、2008年12月からプア・タイ党党首を務めているが、これは党首選びが難航したことから暫定的にヨンユットを党首としたもの。以前は「インラックが首相になったら党首になる。」との報道もあった。だが、現行の憲法規定では、党役員の不正などで党が解散となった場合、党首を含む役員全員が公民権5年停止となる可能性があるためか、インラック首相の党首就任の話は立ち消えとなっている。
インラック内閣のナンバー2であるプア・タイ党党首のヨンユット党首が、「副首相兼内相を辞任する。」と明らかに。ヨンユット党首は2002年に寺院の所有地をゴルフ場開発会社に売却する取引を承認したことについて、国家汚職防止撲滅委員会(NACC)が違法とする判断を下し、内務省公務委員会が先に「免官」との判断を示していたことから、党内でも辞任を求める声が強まっていた。問題の土地はベテラン政治家のサノ元内相の関連会社が取得し、その後、タクシンの関連会社に転売された。
関係筋によれば、辞意表明は、問題の拡大を懸念した、プア・タイ党の実質的最高実力者タクシンとインラック首相の意向を受けたもの。ヨンユットは10月01日付けで辞任となる見通し。
ヨンユットは内務次官を定年退官後、2008年にタクシン派政党プア・タイ党の党首に就任。2011年のインラック政権発足後はタクシンの妹であるインラック首相の補佐役を務めた。閣僚辞職後もプア・タイ党党首、下院議員には留まる。
タクシン派は2007年と2008年にタクシン派政党が裁判所に解党命令を受け、党幹部多数が5年間の参政権停止処分を受けた。このうち2007年に処分を受けた111人は今年05月末に処分が解除され、このうちの一部は政界復帰に意欲を示している。こうしたことから、「ヨンユットの辞任を機に、大幅な内閣改造が行われる。」という憶測も出ている。

*  ヨンユット・ウィチャイディット
1942年、タイ南部スラタニー生まれ。タイ国立チュラーロンコーン大学政治学部卒、タイ国立開発行政研究院(NIDA)行政学修士。1966年、内務省入省。ソンクラー県知事、トラン県知事、内務次官などを歴任。2008年からプア・タイ党党首。
09月28日(金)クルングテープのタイ警察本部で警察長官の交代式典が行われ、定年退官するプリアオパン警察長官の後任にアドゥン・セーンシンケーウが就任。
* アドゥン・セーンシンケーウ
アドゥンは1954年、東北部ナコンパノム県生まれ。警察士官学校卒業後、警察入りし、2010年に警察副長官、2011年から麻薬防止撲滅委員会事務局長を務めた。マレー系イスラム過激派とタイ治安当局の抗争が続く深南部での勤務経験があるほか、街頭デモ対策、麻薬取り締まりなどで実績を積んだ。


プリアオパンはインラック政権の最高実力者であるタクシンの元妻ポジャマンの兄。「近くインラク政権に入閣する。」という噂も。
09月30日(日)プア・タイ党の広報担当プロムポン議員は、クルングテープ都の排水地下トンネルなどが十分機能しておらず、都庁の予算の使い方に問題があるとして、プア・タイ党が10月03日にも都庁に不正がなかったかを調べるよう法務省特別捜査局(DSI)に捜査を要請する方針を明らかに。不正が明らかになった場合、国家汚職制圧委員会(NACC)にも捜査を求める予定。
だが、関係筋によれば、「政府の狙いは、来年初めのクルングテープ都知事選で勝利すべく、都民に『最大野党・民主党所属のスクムパン都知事による都政には問題がある。』との印象を与えることと考えられる。」また、首都圏警察が先に独自にクルングテープ都の運河の泥やゴミを除去する作業を行ったが、政府の意向を受けたものとされ、「都庁の無能さ」をアピールすることが目的。
キティラット副首相兼財務相が先に「インフラ計画のために、今後7年間に2兆Bまでの借り入れを予定している。」と明らかにしたことに対し、民主党のアピシット党首は、「洪水対策への3500億B投入も適切な投資かわからないのに、政府はさらに巨額の資金を借りようとしている。国の財政にとって大きな負担となる。」と非難。また、オンアート民主党議員によれば、「不正まみれの政府プロジェクトは8つにも及ぶ。」指摘されたプロジェクトは、昨年の大洪水の際の救援物資調達、キャッサバ買い上げ、ゴム価格安定化のための補助、洪水被災地の復旧、洪水対策、村落支援など。
10月01日(月)プア・タイ党のプラユット党首の副首相兼財務相辞任が内閣改造に繋がるとの見方も出ているが、関係筋は、「インラック首相が元タイ・ラック・タイ党役員の圧力に屈する形で、近いうちに内閣を改造することはない。」との見方。
タイ・ラック・タイ党はタクシンが創設した政党だが、2006年09月の軍事クーデターでタクシン政権が倒された翌年の2007年05月、軍事暫定政権のもとで、党役員の不正を理由に解党となり、党役員111人も公民権5年停止となった。この処分が今年5月に解けたことから、元党役員らが入閣を目指してインラック首相に対する圧力を徐々に強めている。
だが、同筋によれば、「『先に高熱を出されたばかりの国王に現時点で閣僚変更の承認を求めるのは不適切。元党役員らは昨年の総選挙におけるプア・タイ党の勝利になんら貢献していない。』という2つの理由で、インラック首相は、元党役員の意向に沿う形で近い将来に閣僚を交代させることは考えていない。」
10月02日(火)ヨンユット・タイ党首の副首相兼内相辞任を受けて、インラック首相は、チュチャート副内相を内相代行に任命。内閣改造は先送りする見通し。同時に副首相としてヨンユットが担っていた役割のうち、内務省、公的部門開発委員会事務局、南部国境県管理センターの監督をチャルム副首相に、運輸省の監督をキティラット副首相兼財務相に、社会開発人権保護省の監督をユタサク副首相に割り当てた。
これは、政権党プア・タイ党内で各派閥が副首相、内相ポストを獲得しようとする動きを見せる中、「ヨンユットの代わりに誰かを入閣させることはない。」と「内閣改造は行わない。」という明確な意思表示と捉えられている。
10月03日(水)先に副首相兼内相を辞任したヨンユット、プア・タイ党党首について、最大野党の民主党は、憲法102条に規定された下院議員選挙候補者の欠格条件に該当するとして、議員資格停止の判断を下すよう憲法裁判所に請求することをソムサック下院議長に求めた。これに民主党議員62人が賛同。
ヨンユットは、内務副事務次官時代に法に反して民間企業への寺院所有地の売却を承認したとして、内務省公務委員会が先に「免官」との決定を下している。これが、下院議員選挙候補者の欠格条件に当たる。
ソムサック議長は、「要請の内容を詳しく吟味する必要があるため、憲法裁への請求は1、2週間後になる。」としている。
10月04日(木)01日に閣僚を辞任したヨンユット前副首相兼内相が、「政権与党プア・タイ党党首と下院議員も辞職する。」と発表。これを受けプア・タイ党は、60日以内に新しい党首と執行委員を選出する。
ヨンユットが副内務次官だった2002年に寺院の所有地をゴルフ場開発会社に売却する取引を承認したことについて、国家汚職防止撲滅委員会(NACC)が今年09月、違法とする判断を下したため。問題の土地はベテラン政治家のサノ元内相の関連会社が取得し、その後、タクシンの関連会社に転売された。
ヨンユットは、国家汚職制圧委員会(NACC)によって内務副事務次官時代に不正行為があったとされ、内務省公務委員会が「免官」を決めたことから、副首相兼内相を辞任したが、その時はまだ「党首、議員を続ける。」と述べていた。だが、最大野党の民主党が「免官によってヨンユットが議員資格を失った。」として憲法裁判所に提訴するよう下院議長に要請したことなどから、党首と議員を辞任することになった。
ヨンユットはその理由として「党への批判が強まるのを避けるため、倫理的にけじめをつける必要があった。」と説明。だが、だが、民主党は、「倫理的に問題と感じていたなら、『免官』とされた時点で、政治的役職を全て辞任していたはず。」と、「ヨンユットの説明は 嘘。」と決めつけている。
ヨンユットは内務次官を定年退官後、2008年、タクシンが実質的なオーナーである新党プア・タイ党党首に就任。2011年のインラック政権発足で、閣内ナンバー2である副首相兼内相に就いた。タクシン、タクシンの妹のインラック首相の補佐役、調整役に徹したため、2人の信頼が厚く、温和な性格から敵も少なかった。
ヨンユットの後任の副首相、内相の任命は、閣僚の任命、宣誓式を行うプミポン国王の体調が優れないため、先送りされる可能性がある。なお、プア・タイ党の新党首は、解党処分となった場合、公民権5年停止となる可能性が高いことから、「大物政治家が就任することはない。」と見られるが、プア・タイ党の支配者であるタクシンや所属議員の信頼の厚く、安定感のある調整型の政治家でなくてはならないため、人選が難航することが予想される。
プームチャイ・タイ党の最高実力者、ネーウィンは、54歳の誕生日パーティーを催した東北部ブリラム県の自宅で、政界を引退し、自身のサッカーチーム強化に専念する考えを明らかに。
ネーウィンは、タクシンの側近だったが、2008年12月のタクシン派政権崩壊、民主党政権誕生で、タクシン派と袂を分かち、民主党サイドに寝返った。当時はまだ公民権停止中で、表舞台に出ることはなく、プームチャイ・タイ党の「陰の党首」という存在だった。公民権停止は今年05月末で解けたが、ネーウィンは、「プームチャイ・タイ党の党首にはアヌティンがふさわしい。」と述べ、自ら党首を務めることは考えていないという。
10月05日(金)副首相兼内相を辞任したヨンユットが、プア・タイ党党首も辞任したことから、新党首の人選に関心が集まっている。候補として名前が挙がっていたスカムポン国防相は、「私はまだ経験不足。適任者が他にいる。」と、党首就任を否定。また、プア・タイ党の陰の実力者、タクシンの法律顧問を務めるノパドンによれば、「党の執行委員会は週明けの08日にも新党首の人選について話し合う予定。」
10月08日(月)プア・タイ党の執行委員会は、ウィロート警察中将を党首代行とすることを決めた。
2008年12月から党首を務めていたヨンユットが先に、内務副事務次官時代の不正行為のため、副首相兼内相を辞任し、党首の座からも降りたことに伴うもの。
プア・タイ党の広報担当プロムポンは、「年長者であり、法律に詳しいことから、ウィロートが起用されることになった。」と説明。
新党首は30日の党大会で選出される予定だが、「党首脳部は閣僚から党首を出すことを望んでいる。」とも一部で報じられており、「ウィロートがそのまま党首に選ばれることはない。」とする見方もある。
10月10日(水)最高裁判所はタクシン政権下(2001~2006年)で国営クルンタイ銀行(KTB)が、115億8000万Bを不正融資したという事件で、タクシン・チナワットに逮捕状。タクシンに発行された逮捕状はタイ輸出入銀行によるビルマ向け不正融資疑惑など計4通となった。
クルンタイ銀行はタクシン政権(2001~2006年)当時、経営危機に陥っていた不動産会社クリサダーマハーナコンの関連会社に約90億Bの融資を行い、その多くが焦げ付いた。この事件ではタクシン、当時KTBの社長だったウィロート・ヌワンケーら27人が起訴されている。
タクシンは起訴状朗読の際に出廷しなかっため、逮捕状が出た。国外逃亡中のタクシンを除く容疑者全員が、最高裁に出頭して容疑を否認している。事件の審理は、タクシンの帰国を待って開始されることになっている。
タクシンは2006年の軍事クーデターで失脚。国外滞在中の2008年、首相在任中に元妻ポチャマンが国有地を競売で購入したことで懲役2年の実刑判決を受け、以来、タイに帰国していない。
10月11日(木)スカムポン国防相が「アピシット民主党党首が徴兵を忌避した。」と執拗に主張し、「中尉の階級を剥奪すべき。」としていることについて、プラユット陸軍司令官は、「他にやらなければならない重要な仕事がたくさんある。」と、階級剥奪に否定的な見方を示した。
スカムポン国防相は階級剥奪のための委員会を立ち上げるとしているが、プラユット司令官は、「私には無関係。国防省の問題。」と指摘するとともに、「上司(国防相)と論争することになるので、この件についてはこれ以上話さない。」としている。
アピシット党首の「徴兵忌避」は、手続き上の問題で、「アピシットに責任はない。」でほぼ決着済みとされるものの、スカムポン国防相はことあるたびに「疑惑」を持ち出し、ひとり気を吐いている。
プア・タイ党も乗り気ではないようで、プア・タイ党の重鎮、チャルーム副首相も「軍の手続きについてはよく知らない。コメントしたくない。」としている。
10月13日(土)民主党は、「香港当局がタイからの送金160億Bを不正資金の疑いで押収した。」として、インラック首相に対し、事実関係を明らかにすべく捜査を行うよう要求。
巨額送金の押収を暴露した市民団体、全国反汚職ネットワーク同盟(NACN)によれば、香港当局から09月に情報提供があったことから、政府汚職対策委員会(PACC)のドゥサディ前事務局長に連絡を取ったもの。
ドゥサディ前事務局長の話などから、160億Bが政府の洪水被災地復旧予算の一部であるとの疑いを強めた。PACCは「復旧予算のうち300億~400億Bが不正に使われた。」としており、「予算を着服した者が香港に送金したものと考えられる。」という。
民主党のオンアート議員は、「汚職撲滅を宣言しているインラック首相は、その気持ちに偽りのないことを示すためにも、捜査を行って事実関係を明らかにすべき。」としている。
2010年のタクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)による大規模な反政府デモで武装した全身黒ずくめの男たちが、デモ隊と行動を共にしていたとされる問題で、当時の政権党である民主党は、都内のルンピニ公園で集会を行い、事件を検証。
同党幹部は「インラック政権が事実を隠蔽しようとしている。」、「当時の民主党政権を追い込むべく、タクシンが黒ずくめの男たちに治安要員や、デモ参加者を含む一般市民を殺害させた。」などと批判。
アピシット党首(当時の首相)は、「暴力的な事態を回避しようと、話し合いでデモを終わらせようと試みた。だが、タクシン(タクシン派の大ボス)が下院解散のみならず、自身の罪を帳消しにすることも求めたため、交渉はうまくいかなかった。」などと述べて、民主党政権が最善を尽くしたことを強調。
なお、自動小銃などで武装した男たちは、大規模反政府デモの際、都内の5ケ所に現れたとされるが、民主党の議員らが12日、これらの場所を回って、「武装した者たちが反政府デモに加わっていた。」などと訴えた。
インラック政権誕生の昨年08月から今年01月まで財務相を務めたティラチャイ元証券取引委員長によれば、「米買い上げ計画を含む現政権の大衆迎合策によってタイ経済が破綻する恐れがある。」という。
特に米買い上げ計画には、経済専門家や野党から厳しい批判が浴びせられているが、政府は「健全なプロジェクト」と主張し、継続する方針を示している。
ティラチャイは、「大衆迎合策が経済にダメージを与えるかどうかは資金をどこから拠出するかによる。税金で賄われない場合、財政負担が増大する。米買い上げ計画は、国の財政状態を悪化させ、ギリシャのような経済破綻を招きかねない。」
プア・タイ党の広報担当プロムポンによれば、09月末で警察庁長官を定年退官した「プリアオパンが10月15日にもプア・タイ党に入党する手続きを取る。」という。
プリアオパンは、タクシンの元妻ポチャマンの兄で、党内には党首に推す声もあることから、党首就任に向けたステップとみる向きもある。
プロムポンは、「13日にプリアオパンから入党の意向を聞いた。警察幹部だったことから、党首や閣僚を務めることも可能だろう。」と述べている。
10月14日(日)野党プームチャイ・タイ党は会合で、辞任したチャワラット・チャーンウィーラクーン前党首(76)の後任に息子のアヌティン・チャーンウィーラクーン(46)、幹事長にネーウィン元首相府相の弟のサクサヤーム・チッチョープを選出した。影の党首といわれるネーウィンは会合に姿を見せず、要職に就かなかった。
プームチャイ・タイ党は憲法裁判所命令で2008年末に解党されたタクシン派政党から実業家、地方有力者らの派閥が分離して発足し、アピシット政権(2008~2011年)で反タクシン派の民主党と連立を組んだ。昨年07月の総選挙でタクシン派インラック政権が発足したことを受け、下野。現在の下院(定数500)議席数は34。
チャワラットは地場ゼネコン(総合建設会社)大手シノタイ・エンジニアリング・アンド・コンストラクションの創業者オーナーで、アピシット政権で内相を務めた。アヌティンはシノタイ社長を経て政界入りし、タクシン政権(2001~2006年)で保健相を務めた。軍事政権下の2007年に5年間の参政権停止処分を受け、今年05月末に処分が解除されたばかり。タクシンとの関係は現在も悪くないといわれ、数ケ月前、「シンガポールでタクシンと会った。」と報じられた。
典型的な利権政党であるプームチャイ・タイ党は野党暮らしで求心力が低下しているとみられ、14日の会合でも北部の有力者、ソムサックが欠席。首都圏の電車網建設など大型のインフラ整備事業が進む中、チャーンウィーラクーン家の本業であるゼネコンにも政治の影響が及ぶ恐れがある。こうしたことから、プームチャイ・タイ党はタクシンと対立するネーウィンが後ろに下がり、アヌティンを表に立て、タクシンとの関係改善を模索すると見られている。
10月15日(月)タクシンの元妻ポチャマンの兄で09月末で定年退官したプリアオパン前警察長官(60)と、タクシンの士官候補生学校同期生の将官、佐官ら23人が、タクシン派政権与党プア・タイ党のクルングテープ都内の本部を訪れ、プア・タイ党に入党。「プリアオパンは能力、知名度が高く、タクシン一族の身内でもあり、今後、政府・与党内で重要な地位を占める。」と予想される。
プリアオパンは、プア・タイ党の大ボス、タクシンの元妻ポチャマン氏の兄であることから、30日の党大会で党首に選出されるとの見方もあるが、プリアオパンは入党の記者会見で、自身をプア・タイ党の次期党首やクルングテープ都知事候補に推す声があることについて、「党首選出場を要請されても辞退する。私には党首の条件が揃っていない。同じ理由で、プア・タイ党から都知事選に出馬することもない。」と明言。副首相として入閣するという噂については明言を避けた。また、タクシンとは「親戚から消息を聞くだけで、本人とは長い間話していない。」と述べた。プリアオパンは「専門分野である薬物問題や最南部の治安問題に取り組みたい。」と話している。
だが、プア・タイ党の重鎮チャルーム副首相は、「プリアオパンが党首になるかどうかはインラック首相が決める。」としている。
プア・タイ党はヨンユット前党首(70)が寺院所有地の売買をめぐるスキャンダルで今月04日までに副首相兼内相、下院議員、プア・タイ党党首をすべて辞任し、後任の党首、副首相、内相の人事に注目が集まっている。
民主党が先に市民団体からの情報として、「香港当局がタイからの送金160億Bを不正資金の疑いで押収した。」と指摘し、インラック首相に捜査を要求したことについて、プラチャ法相はこのほど、「香港当局に問い合わせたが、『そのような送金は存在しない。』との返答だった」と述べた。プラチャ法相によれば、パリで開かれている資金洗浄対策に関する国際会議に出席したシハナート資金洗浄対策室(AMLO)事務局長が、香港の当局者に直接事実関係を確認したものという。同事務局長は香港の他の関係当局にも問い合わせたが、「『巨額の送金も、それを押収した事実もない。』との回答だった。」
民主党の幹部らが10月13日の党集会で「タクシンが2010年の大規模反政府デモで、黒ずくめの武装した男たちに治安要員やデモ参加者などを殺害させた。」と批判したことについて、プア・タイ党の広報担当プロムポンは、「タクシンが名誉毀損で民主党幹部を告訴する準備を進めている。」と明らかに。
プア・タイ党などタクシン派は、「反政府デモで大勢の死傷者が出たのは当時の民主党政権に全て責任がある。」との立場をとっており、民主党を含む反タクシン派が反発している。
プロムポンは、「タクシンは武装グループについては何も知らない。民主党はタクシンに罪を着せようとしている。」と批判。
10月17日(水)法務省特別捜査局(DSI)は、2010年の大規模な反政府デモの際、治安要員や一般市民を殺害したとされる全身黒ずくめの男たちを含む犯人の逮捕につながる情報提供者に100万Bの賞金を与えると発表。対象となるのは反政府デモ関連事件7件で、タクシン派の軍人が狙撃され死亡した事件、日本人カメラマンの村本博之が銃撃され死亡した事件などが含まれる。
また、プア・タイ党の広報担当プロムポンは、民主党議員らが「タクシンが黒服の男たちに市民などを殺害させた。」と批判したことに対し、タクシンの要請を受けて、「根も葉もない中傷だ。」として、民主党のアピシット党首、ステープ議員、コーン副党首など5人を名誉毀損でルンピニ署に訴えた。
10月18日(木)プラチャ法務相らが民主党幹部が先に指摘した「香港当局がタイからの送金160億Bを不正資金の疑いで押収した。」との情報を否定し、「政府批判のためのでっち上げ。」との見方に対して、民主党に情報を提供した市民団体「全国反汚職ネットワーク同盟(NACN)」のモンコンキット事務局長は、「情報は、香港側からアピナン元政府汚職対策室(PACC)事務局長に伝えられたもので、信頼に足る内容。」と主張。だが、「極めて機密性の高い情報であり、詳細は公表できない。」としている。
チャルーム副首相は国会審議で、「タクシンには複数の逮捕状が出ているにもかかわらず、政府は何もしていない。」とのサティット民主党議員の批判に対し、「タクシンのケースは、国家汚職制圧委員会(NACC)、検察、裁判所が扱っており、政府には権限がない。」と述べ、「政府主導でタクシンの身柄引渡しを外国に要請することは不可能。」との見方を示した。
過去に同様の質問が、スラポン外相にぶつけられたことがあるが、チャルーム副首相と同様の回答をしている。
タクシンが政権党プア・タイ党の大ボスであることは周知の事実。また、タクシンは、自政権(2001~2006年)が政治的混乱を招いたことへの責任には一切触れず、タクシン政権を倒した2006年09月の軍事クーデターを元凶と非難。クーデター後に設置された暫定政府の措置や司法の判断を不当とし、自らの潔白を主張して、首相就任中の汚職(職権乱用)による禁固2年の有罪判決にも従おうとしていない。現政権も思いは同じであり、有罪判決を真っ向から否定することは避けているものの、タクシンを捕らえて服役させるつもりは毛頭ないのは明らか。
10月19日(金)タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)幹部のコーケウ、プア・タイ党議員は、2010年のUDDによる大規模反政府デモの際、「治安当局が狙撃手にデモ参加者を射殺させた。」と訴え、「これを立証してみせる。」と明言。
当時の民主党政権は、治安対策を統括する緊急事態解決センター(CRES)を設置したが、コーケウ議員は、「デモ終結後に警察幹部から『CRESが国境警備警察に狙撃手らをクルングテープに動員するよう命じた。』と聞いた。」としており、警察幹部に連絡を取って、さらに詳しい情報を提供してもらう考え。
10月21日(日)民主党のオンアート議員が先に、市民団体、全国反汚職ネットワーク同盟(NACN)のモンコンキット事務局長からの情報として「香港当局がタイからの送金160億Bを不正資金の疑いで押収した。」と指摘し、タイ当局がこれに「事実無根」と反論している問題で、プア・タイ党の広報担当プロムポンは、「タイのイメージを大きく傷つけた。」として、23日にも2人を警察に訴える意向を明らかに。
関係筋によれば、「オンアート議員は、政府批判の格好の材料と考えて情報を取り上げたものと見られるが、香港当局は『送金の事実も押収の事実もない。』と説明しているとされ、オンアート議員らは逆に政府から批判される結果となっている。」
10月22日(月)ひき逃げ事件を起こしたレッドブル創業者の孫、ウォラユットが警察の取り調べ要請を拒否していることから、首都圏警察のアヌチャイ副長官は、「今後も取り調べに応じないなら、保釈金の没収と逮捕状を裁判所に請求する。」と明言。警察は19日にトンロー署に出頭するよう要請したが、ウォラユットは応じず、取り調べの延期を求めたもの。アヌチャイ副長官によれば、事件の捜査は80%以上まで進んでいる。
また、ウォラユットが愛車のフェラーリを飲酒運転して警察官をはねて死なせた可能性があることから、医師による血液検査が行われたが、警察はまだ医師から結果を聞いていないとのこと。
タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)による2010年の反政府デモの際、デモ隊と行動を共にし、治安要員や一般市民を殺害したとされる全身黒ずくめの武装した男たちについて、UDD幹部のチャトポン元プア・タイ党議員は、「武装グループは軍が動員した可能性がある。」として、デモ当時の都内バンケン区の第11歩兵連隊本部の車両の出入りを撮影した監視カメラの映像を調べるよう法務省特別捜査局(DSI)に要請。チャトポンによれば、「『黒ずくめの男たちが乗った警察のバンが連隊本部に入るのを目撃した。』との情報が存在する。」という。


39章  ピタック・サイアムの登場と退場 国内治安法発令、警官隊が衝突
10月24日(水)タクシン派インラック政権の転覆を目指す反タクシン派の諸団体が28日午前10時から、都内の競馬場、ロイヤル・ターフ・クラブ・オブ・タイランド・アンダー・ロイヤル・パトロネージで反政府集会。反タクシン団体、ピタック・サイアムのまとめ役のブンルート退役陸軍大将は「インラック政権は犯罪者であるタクシンの操り人形で、汚職や王室に対する批判を野放しにしている。」と主張。クーデターによる政権転覆に期待を示した。ロイヤル・ターフ・クラブはブンルート大将の士官候補生学校の同級生であるスラユット枢密顧問官(元首相、元陸軍司令官)が会長を務めている。
これまで反タクシン運動を主導してきた反タクシン派団体、民主主義市民連合(PAD)」は「当日は地方で対話集会を予定している。」として、今回の集会に参加しない方針。
ブンラート元大将が軍事クーデターによるインラック政権転覆を肯定する発言をしたことに対し、プラユット陸軍司令官は、「民主主義のルールを守り、軍人に圧力を掛けるようなことがあってはならない。」と警告。
ブンラートは先に、「陸軍司令官はクーデターによって国を守ることができる。いつの日かクーデターが起きるだろう。」と述べており、「プラユット司令官は『クーデターを催促された。』と受け止めている。」という。プラユット司令官 は、「現政権は民主的な手続きを経て誕生した政権ではないのか。民主主義を尊重するなら、民主主義のルールに従うべきだ。軍人に(クーデターを起こすよう)圧力を掛けたり、(クーデターを起こさないことで)私を批判したりしないでほしい。それはわれわれにとっては不名誉なことだ。軍を非難することは、私だけでなく20万人に上る兵士全員を非難することになる。」と述べている。
最大野党の民主党のオンアート議員が先に市民団体からの情報として「タイからの送金160億Bを不正資金の疑いで香港当局が押収した。」と指摘し、これに政府側が「でっち上げ」と反論する事態となっているが、チャルーム副首相はこのほど、法務省特別捜査局(DSI)に外国への不正送金の実態を解明するよう要請。タリットDSI局長が明らかに。
長官によれば、「要請は正式なものではなく、間もなく副首相が法相にDSIによる捜査を正式要請する見通し。」という。また、捜査対象は、香港への送金に限定せず、他の国々への送金についても詳しく調べる予定。
10月25日(木)政府庁舎で動きがあったことから「内閣改造は間近」との見方が強まっていたが、インラック首相は、新閣僚就任に関し国王の承認を求めたことを明らかにして、内閣改造のための手続きをとったことを認めた。
政府関係筋によれば、入れ代わるのは23のポストで、14人が新顔。
1.チャルポン・ルアンスワン 副首相兼内相 2.チャチャイ・シティパン 運輸相 3.ユコン・リムレームトン 農相 4.ソンタヤ・クンプルム 文化相 5.ポンテープ・テープカンチャナ 副首相兼教育相 6.ポンサク・ラクタポンパイサン 副首相兼エネルギー相 7.ユタポン・チャラートサティエン 副農相 8.プラディット・シンタワナロン 保健相 9.ワラテープ・ラタナコン 首相府相 10.シリワット・カチョンプラサート 副農相 11.ナタウット・サイクルア 副商業相 12.サームサク・ポンパニット 副教育相 13.プリン・スワンナタット 副運輸相 14.サンタニ・ナークポン 首相府相
関係筋によれば、最大野党・民主党が不信任案を提出し、政府の責任を追及する構えを見せていることから、今回の改造は、批判にさらされる恐れのある閣僚を外すことで、政府のダメージを軽減することが狙いと考えられる。
また、不信任案審議では、米買い上げ計画の責任者、ブンソン商業相に批判が集中すると見られるが、ブンソンは、インラック首相の姉、ヤオワパー(ソムチャイ元首相の妻)と繋がりがあり、留任となった。ブンソンが閣外に去るのは、米買い上げ計画が終わったとき。
このほか、政権党プア・タイ党の実動部隊、反独裁民主主義同盟(UDD)からの入閣はナタウットのみで、チャルポン元プア・タイ党議員は選ばれなかったが、これは、UDDの閣僚枠は1つのみで、また、チャルポンは過激な発言で反政府勢力の政府批判をエスカレートさせる恐れのあることが理由。
10月26日(金)反政府グループが、都内で集会を行うと発表したことを受け、在タイ日本大使館より注意喚起。

反政府グループによる集会実施に関する注意喚起(10月26日現在)

1.治安当局によれば、10月28日(日)、反政府グループ(ピータックサヤームグループ)は、汚職の横行に 対する批判など目的とした反政府集会を以下のとおり行う模様です。
【集会予定】
◎日  時:10月28日(日)午前10時頃~午後8時頃
◎場  所:ナンルン競馬場(チトラダー宮殿南側直近)
◎人  数:数千人程度

2.つきましては、上記予定のとおり同集会を行うナンルン競馬場周辺では交通渋滞が予想されることも含め、事前に報道等から最新情報の入手に努めるとともに、不測の事態に巻き込まれないよう、デモ集会が開催されている付近には近づかない等、安全確保に十分注意を払ってください。

(問い合わせ先)
○在タイ日本国大使館領事部
電話:(66-2)207-8502、696-3002(邦人援護)
FAX :(66-2)207-8511
10月27日(土)プミポン国王は、インラック首相が提出した内閣改造名簿を承認。ポンテープ元法相(55)、ポンサック元運輸相(62)らタクシンの側近が入閣する一方、ユタサック副首相(元国防次官)らが閣外に去り、工業相、保健相などのポストを含む大規模な改造。
財閥出身で元裁判官のポンテープは副首相兼教育相、タクシンのゴルフ仲間で実業家のポンサックはエネルギー相、東部の政財界に君臨するクンプルーム家のソンタヤー元観光スポーツ相(49)は妻のスクモンと交代で文化相、ワラテープ元副財務相(48)は首相府相に、それぞれ就任。4人はいずれも初代のタクシン派政党タイ・ラック・タイ党の元役員で、今年05月末に5年間の参政権停止処分が解除。
タクシンの親戚のスラポン外相(59)は副首相兼任に昇格。プロードプラソプ科学技術相(67)は副首相に転任。ウォラワット首相府相(53)が科学技術相に移った。サンサニー首相府報道官(53)は首相府相として初入閣。農業協同組合相にはユコン元同省次官(62)が就任、副農業協同組合相にはベテラン政治家のサナン元副首相の息子のシリラット(39)と反タクシン派の民主党からタクシン派プア・タイ党に寝返ったユタポン(40)が選ばれた。
チャルポン運輸相(元法務次官、元労働次官、66)は内相に転任。後任の運輸相には元チュラロンコーン大学工学部講師のチャチャート副運輸相(46)が昇格。工業相には政界の実力者、スワット元副首相の派閥に所属するプラスート下院議員(55)が初入閣で抜擢された。保健相には医師で実業家のプラディット(53)が就任。
2010年にクルングテープ都心部を占拠したタクシン派団体UDD(通称:赤服)幹部のナタウット副農業協同組合相は副商務相に転任。
閣外に去ったのは、ユタサク副首相、「ジンバブエの独裁者ムガベ大統領に便宜を図った。」として米政府から米国内の資産凍結、米国民との金融・商業取引禁止などの措置を受けたナリニー首相府相、テーチャパイブーン財閥出身のウィルン副財務相、タクシン財閥の通信衛星会社で経営幹部を務めたアーラック、エネルギー相、スチャート教育相、元タマサート大学副学長のポンサワット工業相、ウィタヤー保健相ら。

* ポンテープ・テープカンチャナ
1956年生。米ジョージ・ワシントン大学法学修士。裁判官を経て、政界入りし、タクシン政権(2001~2006年)で法相、エネルギー相を務めた。タクシン派政党タイ・ラック・タイ党が軍事政権により解党されたことにともない、5年間の参政権停止処分を受けた。2012年、インラク政権で副首相兼教育相に就任。妻はキアットナーキン銀行、不動産会社エラワン・グループなどを展開するワタナウェーキン財閥出身。
10月28日(日)クルングテープ内の競馬場「ロイヤル・ターフ・クラブ・オブ・タイランド・アンダー・ロイヤル・パトロネージ」で、反タクシン派団体、ピタック・サイアムの呼びかけで反タクシン派の諸団体の反政府集会。参加者数は、主催者側は2万人と発表したが、警察は6000人程度。だが、「せいぜい1500~2000人。」とするチャルーム副首相の予想は大幅に上回った。
ピタック・サイアム首脳のブンルート退役陸軍大将は「タクシン派インラック政権がインターネット上での王室批判を野放しにしている。」と非難し、政権打倒を訴えた。また、「1ケ月以内に再び集会を開催する。参加者が多いようなら、ロイヤル・ターフクラブでは狭すぎるので、場所を変更する。」と述べた。会は、反タクシン派として知られるプラソン元国家治安委員会事務局長、スラポン元大使、パトムポン元国軍最高司令部顧問などが次々にスピーチを行い、治安当局は警官約500人を動員して警戒に当たったが、集会参加者は会場の外には出ず、警官隊との衝突など混乱は起きず、午後07時に散会。
2005年以降、タクシン派追放運動の中心だった反タクシン派団体「民主主義市民連合(PAD)」は今回の集会に参加しなかった。
ブンルート退役陸軍大将はスラユット枢密顧問官(元首相、元陸軍司令官)の士官候補生学校の同級生。スラユットはタクシン政権を追放した2006年の軍事クーデター後、軍事政権の首相を務めた。ロイヤル・ターフ・クラブの現会長でもある。

ブンルート退役陸軍大将 →

今回の内閣改造で、政権党プア・タイ党の実動部隊、反独裁民主主義同盟(UDD)から1人しか入閣しなかったことに不満の声があがっているが、プア・タイ党首脳のチャルーム副首相はこのほど、「経緯を説明し、理解を求めたい。」と述べた。ただ、「UDD側が耳を傾けてくれるかわからない」としている。
UDDから第3次インラック改造内閣に入ったのはナタウットのみ。UDD幹部のチャルポン元タイ・ラック・タイ党議員を推す声もあったが、党首脳部の判断で起用が見送られたという。同じくUDD幹部であるウォラチャイ、プア・タイ党議員は、「チャルポンは党に大きな貢献をした。なのに入閣できなかった。政府は(UDDの)支持を失う可能性がある。」と述べている。
10月29日(月)今回の内閣改造に対しては「国民のことを考えていない。」、「論功行賞。」といった批判が出ているが、インラック首相は、「新閣僚の顔を見渡せば、そのほとんどが能力と経験のある人々。党への忠誠度に応じた人事ではない。」と強調。「改造によって内閣の能力がアップしており、仕事が捗る筈。」と言う。
一方、民主党の広報担当チャワノン議員は、「主要な閣僚ポストは、タクシンの側近に割り当てられることになった。」と指摘。また、プア・タイ党の実動部隊、反独裁民主主義同盟(UDD)からナタウット1人しか入閣しなかったことについて、「UDD幹部の議員らが党内で2級政治家とみなされていることを物語っている。」と述べた。
反タクシン団体「ピタック・サイアム」が大規模な反政府集会を今後も行う方針を明らかにしていることに対し、タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)の地方支部などが対抗措置をとる意向を明らかに。
タクシン支持者が多い東北部ウドンタニー県のUDD支部幹部のクワンチャイは10月29日、「国内のどこであろうと、ピタック・サイアムに対抗して政府支持集会を行う用意がある。」と明言。「反政府活動が拡大することはない。」との見方。また、中部アユタヤ県のUDD支部幹部のマユリーも、「ピタック・サイアムがこれからも反政府集会を行うのであれば、我々は民主的に選ばれた現政権を守るために立ち上がる必要がある。」と表明。また、マユリーによれば、「ピタック・サイアムは、反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)とつながりのある団体で、その幹部は以前からインラック政権に批判的で、反政府集会を、国民の間にインラック政権への不満が高まっている結果とするのは間違い。」と述べた。
10月30日(火)タクシン派の与党プア・タイ党は、ヨンユット前党首(元内務次官)の辞任にともない、党首選を実施し、チャルポン内相を334票中332票を集め、新党首に選出。副党首にはキティラット副首相兼財務相、プロードプラソップ副首相、ウィロート元副首相らが、幹事長にはプームタム元副運輸相が就任。
ヨンユット前党首は内務副事務次官時代だった2002年に寺院の所有地をゴルフ場開発会社に売却する取引を承認したことについて、国家汚職防止撲滅委員会(NACC)が今年09月、違法とする判断を下したため、10月上旬に副首相兼内相、プア・タイ党党首、下院議員を全て辞職。
党の顔となる党首を本来は、インラック首相が務めるべきだが、タクシン派は自派政党が2007年と2008年に選挙違反を理由に裁判所命令で解党処分を受け、党役員が5年間の参政権停止処分を受けた。こうした経験から、現政権ではインラック首相らは党首や党役員に就かず、党首には2人続けて調整型の元官僚を起用。

* チャルポン・スワンルアン
チャルポンは1946年生。チュラロンコーン大学行政学修士。タクシン政権(2001~2006年)で法務事務次官、労働事務次官などを歴任し、定年退官後、タクシン派政党に加わった。2011年05月に幹事長に就任。2011年の下院総選挙ではプア・タイ党の比例代表11位。総選挙後発足したタクシン派インラック政権(2011年~)で運輸相を務め、今月27日、地方行政機構を握る重要ポストである内相に転任。
プア・タイ党の党大会で幹事長に選ばれたプームタムは、「党執行委員会は間もなく、新しい憲法の制定に向けて動き出す。これを成功させるべく、国民の支持拡大を図る。」と明言。 タクシン派が求めている現行憲法の変更には、反タクシン派が以前から「利己的な憲法改悪。」、「国外逃亡中のタクシンの罪の帳消しが狙い。」などと強く反発しており、関係筋は、「政府が改憲を進めれば、反タクシン派が強硬に反対し、政治的対立がエスカレートするの必至。」としている。
プア・タイ党の法律顧問チューサクによれば、「改憲手続きを規定した憲法291条の改正案の第3・最終読会を実現させる方向で与党間の調整を開始する。同案を巡っては、『憲法違反』との訴えがあったことから、憲法裁判所が『国会審議の差し止め』を命じ、第3・最終読会が実施できなかった。憲法裁は最終的に、「合憲」との判断を下したものの、『改憲には国民投票が必要』としたことから、プア・タイ党は同投票で十分な支持が得られないことを恐れ、第3・最終読会実施に二の足を踏むことになった。このため、プア・タイ党にとって、憲法291条を改正し、現行憲法の大幅な書き換えを実現するには、国民投票で過半数の支持を得るべく、国民に理解を求めることが不可欠。」
野党院内幹事長を務めるチュリン民主党議員は、「与野党の院内幹事の話し合いで、不信任案審議を11月25日と26日、採決を27日に行うことが合意された。」と明らかに。審議が長引いた場合には、採決を28日に行う。不信任案は11月09日に提出する予定。
タクシンの法律顧問であるノパドン元外相によると、「タクシンは11月にビルマを訪問する。ビルマの政権幹部とタイ国境近くの経済特区開発について意見を交わすほか、タイ北部メーサイと国境を接するビルマ東北部タチレクを訪問する模様だ。」タクシンのタチレク訪問についてノパドンは「寺の参拝が目的で、内閣改造とは関係ない。」と主張。ただ、タクシンの妹のインラック首相は27日に大規模な内閣改造を行ったばかりで、政権の最高実力者であるタクシンがタイの目と鼻の先まで出向き、政治家、官僚らの陳情を受け付けると見られている。
タイから数千人に及ぶタクシン支持者が国境を越える見通し。タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)の北部チエンマイ県支部の関係者は、「タクシン支持者たちは、タクシンに会えるというので興奮している。」、「UDDのメンバー1万人以上がすでに越境許可証を取得している。」と述べた。
タクシンのタチレク訪問の具体的な日時はまだ明らかにされていない。関係筋は、「タクシンは逮捕状の出ている犯罪人。だが、インラック政権はタクシン派であり、タイ当局がビルマに身柄拘束などを要請することはない。」としている。
11月01日(木)先の内閣改造で入閣した閣僚、新たなポストに就いた閣僚が、プミポン国王が入院中のシリラート病院で、国王を迎え執り行われた宣誓式に臨み、国家・国民のために与えられた役職を忠実に遂行することを宣言。プミポン国王は何も話さなかったというが、ポンテープ副首相兼教育相によれば、「王室管理事務所から『陛下は宣誓式でスピーチを行われない。』と事前に連絡があった。」
党大会でプア・タイ党党首に選出されたチャルポン内相はこのほど、同党を含むタクシン派が求めている憲法改正の実現に向けて鋭意努力する意向を明らかに。同党のプームタム新幹事長も同様の考えを表明しているが、改憲には最大野党の民主党などが強く反対しており、改憲を強行すれば、政治対立がエスカレートするのは必至。
上院議員24人が、今回の内閣改造でワラテープが首相府相に任命されたことを問題視し、上院議長を通じて憲法裁判所に判断を求めた。
タクシン政権(2001~2006年) で副財務相を務めたワラテープは、宝籤事件で禁固2年、執行猶予2年の有罪判決を受けている。上院議員らによれば、「憲法174条では、過失や軽犯罪を除く罪で 禁固刑など自由刑を受け、刑期を終えて5年に満たない者は閣僚になれないと規定されており、ワラテープの起用は憲法違反に当たる。」という。これに対し、プア・タイ党の法律専門家チームは、「実際には服役しておらず、閣僚欠格事項には当たらない。」と主張。
11月02日(金)国外逃亡中のタクシンが、近日中にタイの隣国ピルマを訪問すると報じられているが、タクシンの法律顧問、ノパドンは、タクシンが08日から10日にかけ同国を訪れる予定を明らかに。
08日にテイン・セイン同国大統領に面会し、09日にはタイ国境に近いタチレックでタイの与党政治家や両国のビジネスマンと会う予定。
また、大勢のタクシン支持者がタクシンに会うためタチレックを訪れるとみられているが、ノパドンは、「09日はタイ側(チェンライ県)に泊まって、10日朝にビルマに入るのが良い。タイ側のほうがタチレックより宿が多く、料金も安い。」、「政権党プア・タイ党は、(犯罪人の)タクシンがタイに近づくことを快く思っていないのではないか。」との質問に対し、ノパドンは、「タクシンを逮捕するのは、タイ政府でなくインターポール(国際刑事警察機構)の仕事。タクシンの逮捕状は、タクシン政権を倒した軍事クーデターの産物。逮捕状自体が違法だ。」と述べた。
11月03日(土)タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)による2010年の大規模反政府デモのさなかに、銃撃や爆弾攻撃で市民や治安要員など90人以上が死亡したことの責任の所在が明らかになっていない問題で、スラポン外相が先に国際刑事裁判所(ICC)の介入を容認する意向を明らかにしたことに対し、法律専門家などから否定的な意見が相次いでいる。
ICCへの提訴は、2011年01月にUDDの法律顧問によって行われたものだが、複数の法律専門家が、「ICCの介入を許すことは、タイが問題を自力で解決できないことを諸外国に示すことになり、タイの国際的イメージに傷がつくばかりか、タイの主権にも影響が及ぶ。」などと指摘。
国外逃亡中のタクシンが11月08日~10日にかけ、タイの隣国ビルマを訪れると報じられるなか、「何者かがタクシンの暗殺を計画している。」との噂が広まっている。
タクシンは09日に、タイ国境に近いタチレックでタイの与党政治家や両国の主要ビジネスマンと会う予定とされる。
タイの治安当局関係筋は、「タチレックでは最近、少数武装勢力と地元当局の間で薬物取引に絡む抗争が起きており、これに巻き込まれたように装ってタクシンを暗殺することを計画しているのかもしれない。」としている。また、スカムポン国防相は、「ビルマ当局がタクシンを守るため万全の警護態勢で臨んでくれるものと確信している。」と述べたが、暗殺を企てている者が実際にいるとすれば、「タクシンを守りきるのは難しい。」としている。
なお、暗殺の噂については、「タクシンをタイに近づけないことが狙い」とも考えられるが、「支持者の間に危機感を煽ることで、タクシンの存在をアピールし、支持をより強固なものにすることが目的。」との見方もある。
11月04日(日)反タクシン団体「ピタック・サイアム」のブンラート代表は、「次回の反政府集会の参加者が100万人以下ならば、それ以降は集会を行わない。」と明言。
先にクルングテープ都内で行われた初集会には、主催者側発表で約2万人、警察の推定で6000~7000人あまりが参加。
ブンラート代表は、「集会参加者が100万人に達しなかったら、集会を繰り返して政府に圧力をかけるという計画は中止し、ほかの手段でインラック政権を退陣に追い込む。」、「次回の反政府集会について、11月後半を予定しているが、具体的な日時はまだ決まっていない。」という。
11月05日(月)タクシン相の法律顧問であるノパドン元外相によると、「タクシンは今月09、10日に予定していたミャンマー東北部タチレク訪問を中止した。タイ北部メーサイと国境を接するタチレクでタイ国内の支持者多数と会う予定だったが、タチレク周辺でピルマ治安当局がタイの少数民族の男を逮捕、ロケット弾など大量の武器を押収し、「タクシンを狙った暗殺計画」が明らかになり、ビルマ、タイ両国の治安当局がタクシンに訪問中止を勧めた。タクシンはビルマ行き自体は中止せず、08日に首都ネピドーでビルマのテイン・セイン大統領と会談する予定。
「何者かがタチレクでタクシン暗殺を計画している。」との噂が広まっていることが原因だが、プア・タイ党幹部のチャルーム副首相は、「暗殺計画は存在する。」と明言。また、イティデート同党議員(北部チエンライ県選出)は、「党の幹部連は、タクシンのタチレク訪問がキャンセルになると予想している。このため、08日にネピドーでタクシンに会うことを考えている。」と述べている。
2010年の大規模反政府デモで大量の死傷者が出た問題で、スラポン外相が先に、責任の所在を明確にすべく国際刑事裁判所(ICC)の介入を容認すべきとの考えを示したことに対し、上院議員グループが、「外相が単独で決定できる事柄ではない。」として、外相に議会承認を求めるよう要請。スラチャイ上院副議長は、「ICC介入は主権にかかわる事案であり、憲法190条の規定に従って、議会の承認を求めることが必要。」としている。
11月06日(火)タクシンの法律顧問、ノパドンは、「タクシンは09日と10日にビルマのタチレクを訪れる予定だったが、安全上の問題で訪問が取りやめになった。」と明らかに。
一方、関係筋は、「逮捕状の出ている犯罪者であるタクシンがタイに近づくことは、インラック政権にプレッシャーを与えることになる。タクシンは最初からタチレクに行くつもりはなかった。暗殺計画の話は、タチレク訪問中止の口実のために捏造されたもの。」との見方。「タチレク訪問を表明→暗殺の噂→訪問中止」というシナリオができていたことを意味する発言。
また、「反タクシン派が暗殺を計画」と悪者の印象を与え、タクシン支持者の気持ちを高ぶらせ、同派への敵愾心を煽る事が狙い。
軍関係筋によれば、タクシンは予定通りに08日にビルマの首都ネピドーを訪れ、テイン・セイン大統領に会うが、その日のうちにビルマを離れる。
ソムチャイ上院議長は、タクシンのピルマ訪問にもかかわらず、関係当局がタクシンの身柄拘束などの動きを見せていないことについて政府の責任を追及する考えを明らかに。議会での一般質問では当初、政府の米買い上げ計画だけが取り上げられる予定だったが、タクシンのビルマ訪問計画が明らかになり、政府が犯罪者であるタクシンを捕らえるための手を打っていないことから、同議長らはこの問題も取り上げることにした。
また、一般質問は、28日朝に不信任案審議の採決が行われたあとに行われる見通し。ソムチャイ議長は、「28日は今通常国会の最終日。不信任案審議が長引いて時間がなくなる恐れがある。審議の前に行う必要がある。」と述べた。
11月07日(水)国防省は、「スカムポン国防相が省内に設置した特別委員会が、民主党のアピシット党首に徴兵忌避があったことから、陸軍の階級を剥奪し、陸軍から支給された給与の返還を求めるとの結論に至った。」と明らかに。
アピシット党首の「徴兵忌避疑惑」は、タクシン派が民主党批判の材料として、これまでに何度か取り上げたことがあるものの、陸軍は「『アピシット党首に責任はない。』と考えている。」とされる。
だが、スカムポン国防相はこの疑惑にこだわり、「事実を明らかにする必要がある。」として、省内に特別委を設置し調査させることになった。
特別委は、「アピシット党首は、虚偽の書類を使ってチュラチョムクラオ陸軍士官学校の講師職を得ることで、兵役を免れた。」としている。
11月08日(木)タクシンの法律顧問、ノパドンは、「タクシンが、ビルンの首都ネピドーでテイン・セイン大統領と会談したものの、投資は話題に上らなかった。」と述べた。
今回のビルマ訪問については、「巨額の資金を動かすための話し合いが目的。」といった見方が出ていた。
だが、ノパドンによれば、「タクシンは『タイ・ビルマ2国間の投資については政府が話し合うべき。』と考えている。」とのことだ。
また、タクシンは暗殺の噂があったことから、タイ国境に近いタチレクの訪問を取りやめることになったが、スラユット枢密顧問官は、「スラユット顧問官が暗殺計画の黒幕。」というタクシンの長男、パントンテーの発言を「事実無根。」と否定。
反タクシン団体「ピタック・サイアム」のブンラート代表は「第2回目の反政府集会を24日か25日に行う。」と明らかに。
10月28日の初集会は都内のロイヤルターフクラブで行われたが、ブンラート代表は、「より広い会場が必要なので、2回目はロイヤルプラザで行う予定。」としている。
なお、ブンラート代表は、「2回目の集会の参加者が100万人に達しない場合、反政府集会を繰り返して、インラック政権に退陣を迫るという作戦は中止する。」と表明。
野党院内幹事長のチュリン民主党議員は、「プームチャイ・タイ党(野党第2党)は、民主党(最大野党)が予定している不信任案提出を支持しない。」ことを明らかに。
ナリット野党院内幹事(民主党議員)によれば、プームチャイ・タイ党は当初、不信任案提出と首相らの罷免請求を支持する意向を示していたが、07日になって罷免請求不支持を、翌日には「不信任案提出も支持しない。」と伝えてきた。
プームチャイ・タイ党の広報担当代行、スパマートは、「民主党は、不信任案審議で具体的にどのような形で政府の責任を追及するかを明らかにしていないので、我が党としては、不信任案提出を支持するわけにはいかない」と説明。だが、党内の意見は分裂しているようで、ブンチョン、プームチャイ・タイ党副党首は、「不信任案提出への支持撤回という党の決定には賛成できない。」と述べている。一方で、「インラック政権への参加を目論んでいる。」といった見方も出ている。
スカムポン国防相は、野党第1党、民主党のアピシット党首(前首相)の軍籍(少尉)を1988年に遡り剥奪し、給与の返済を命じた。国防省の調査委員会が、アピシット党首が1987年に偽造書類を使って軍講師の仕事を得て兵役を逃れたとする報告をまとめたためで、国防相は「政治的な意図はない。」としている。
11月09日(金)スカムポン国防相が、民主党のアピシット党首(前首相)の軍籍(少尉)を1988年に遡り剥奪し、給与の返済を命じた処分を受け、タクシン派の政権与党プア・タイ党はアピシット党首に下院議員辞職を要求。アピシット党首の議員資格を憲法裁判所や選挙委員会に質す方針。
アピシット党首は今回の処分について、「内閣不信任案審議を前にした政治ゲーム。」、「反論の機会が与えられず、不公正だ。」などとして、行政裁判所に処分の取り消しを求める考えを明らかに。
一方、民主党は、内閣不信任案を国会に提出した。汚職問題で政権を追求する構えで、審議は11月25~27日に行われる見通し。第2野党のプームチャイ・タイ党は不信任案提出に加わらなかった。プームチャイ・タイ党は2008年に当時のタクシン派与党が裁判所命令で解党された際にタクシン派から離脱した地方有力者、実業家らが設立し、2008~2011年のアピシット政権で民主党と連立を組んだ。2011年にタクシン派が政権に復帰したため、下野したが、最近ではタクシン派との関係修復に動いているとされる。特に同党の北部派閥は近くプア・タイ党に合流するとの見方があり、今回の動きはこうした見方を裏付けるものと見られる。
野党陣営が不信任決議案を提出したことから11月下旬に下院で同案の審議が行われる見通しだが、最大野党の民主党のアロンコン副党首は、「米買い上げ計画については、ブンソン商業相でなく、インラック首相に質問をぶつける。」と明らかに。
商業省が昨年から実施している米買い上げ計画は、野党や経済専門家から厳しい批判が浴びせられており、民主党は、不信任案審議で同計画の問題点を指摘して政府の責任を追及することにしている。
だが、アロンコン副党首は、「ブンソン商業相には質問せずにインラック首相に答弁を求める。首相が自ら答弁しなかったり、原稿を棒読みしたりするようであれば、人々は首相のリーダーシップに疑問を抱くことになろう。」
11月10日(土)反タクシン団体「ピタック・サイアム」のブンラート代表は、2回目となる反政府集会を24日に都内ロイヤルプラザで行うと明らかに。集会は午前09時01分にスタートする予定。遅くとも翌25日は散会。
ブンラート代表は、「参加者が100万人を超えたなら、市民が我々を支持していることの証し。インラック政権は退陣しなくてはならない。また、参加者が少なかった場合は、我々が市民の信頼を得ていないことになる。」と述べた。
タクシンの長女のピントーンターと次女のペートーンターンが、クルングテープ都心のショッピングセンター、サイアム・パラゴンに高級ネイルサロン「ザ・シスターズ・ネイル&モア」を出店。開店式典には元妻で2人の母親のポチャマン、サイアム・パラゴンを運営する百貨店大手ザ・モールグループのスパラック副会長らが出席。

← 左から、スパラック、次女ペートーンターン、元妻ポチャマン、長女ピントーンター。

11月11日(日)スカムポン国防相が国防省内に設置した特別委員会は、「アピシット民主党党首が徴兵を忌避した。」として、党首に付与された軍の階級を剥奪を決定したことに対して、民主党のオンアート議員は、「今月下旬に不信任案審議が予定されていることから、アピシット党首の議員資格に疑問の目を向けさせ、民主党の勢いをそごうとする政治的な謀略。」と批判。
また、民主党の広報担当チャワノン議員によれば、階級剥奪などは関連法や国防省規定に違反している可能性があり、民主党は12日にも行政裁判所に提訴する予定。
一方、ルアンカイ元上院議員は、「階級剥奪は懲戒処分であり、下院議員選挙の立候補欠格事項に該当する。このため、選挙管理委員会に対し、アピシット党首の議員資格について判断を下すよう要請する。」
なお、タイでは軍や警察を退官しても現役時の階級を使うことが許されているが、階級剥奪となると、それを肩書として使うことができなくなる。
11月12日(月)民主党幹部のチュリン野党院内幹事長によれば、与野党の院内幹事の話し合いで、不信任案審議を25日と26日、採決を27日に行うことで意見が一致。審議が長引いた場合、採決は今国会の最終日28日に行う。
上院が28日に一般質問を行い、米買い上げ計画などにおける政府の責任を問うとしていることについて、チュリン議員は、「一般質問の日程は変更可能であり、政府は一般質問を口実に不信任案審議を26日で切り上げようとすべきではない。」と釘を刺した。
反タクシン団体、ピタック・サイアムが11月24日に都内ロイヤルプラザで反政府集会を予定していることについて、反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)幹部のチャムロン元クルングテープ都知事は、集会に多くの人が参加できるように、PADが同時期に予定していた行事を取りやめたことを明らかに。
ピタック・サイアムは、反政府集会を繰り返してインラック政権に退陣を迫るとの戦術を明らかにしているが、24日の集会の参加者数が100万人以下なら戦術を変更する予定。
チャムロンは、「ピタック・サイアムを応援しているが、24日に集会にPAD幹部が参加することはない。PADの一般メンバーは、各自の判断で集会に行くかどうかを決めてほしい。」
11月14日(水)国防省が先に「徴兵忌避があった。」として、軍が民主党のアピシット党首に付与した階級を剥奪すると決めたことに民主党が反発。民主党のワチャラ議員は、「犯罪人のタクシン(警察出身)に付与された警察の階級が剥奪されていないのは問題だ。」として、警察を管轄する立場にあるインラック首相とチャルム副首相に職務怠慢がないかを、オンブズマン室に検証するよう請求。
タイでは、軍や警察から付与された階級を退官後も使用することが許されているが、階級剥奪となれば、肩書きを失うことになる。
ワチャラ議員は、「タクシンは最高裁の判決で有罪が確定しており、階級剥奪の条件としては十分なはず。」としている。
11月15日(木)ピタック・サイアム(タイ守護)など反タクシン派の諸団体は24日午前09時から、クルングテープ都内のラーマ5世騎馬像前広場で反政府集会。国会議事堂の包囲などは行わない方針。国会では25 ~27日に内閣不信任案審議が行われる予定。
反タクシン派の主力団体、民主主義市民連合(PAD)の幹部は「準備ができていない。」と、この集会に参加しない。PAD支持者の集会参加は「個人の自由だ。」としている。
ピタック・サイアムなどは「(タクシン派)インラック政権が汚職やインターネット上での王室批判を野放しにしている。」と非難し、10月28日、1回目の反政府集会をクルングテープ都内の競馬場「ロイヤル・ターフ・クラブ・オブ・タイランド・アンダー・ロイヤル・パトロネージ」で開いた。集会には1万人近くが参加したが、参加者には地方から動員されたとみられる人も含まれ、反タクシン派の実業家、特権階級らが活動資金を拠出している疑いが浮上。
11月16日(金)反タクシン団体、ピタック・サイアムが11月24日に都内ロイヤルプラザで反政府集会を開こうとしていることについて、タクシン派から「集会参加者が国会議事堂を占拠する恐れがある。」などと危惧する声が出ている。タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)幹部のウォラチャイ、プア・タイ党議員は、「UDDは(クルングテープ都に隣接する)ノンタブリー県、サムットプラカン県、パトゥムタニー県で24日に集会を行う。国民の願いが無視されるような事態になったら(反タクシン派が政権転覆を試みたなら)、われわれは(反タクシン派に対抗するため)都内ラーチャダムヌン通民主主義記念塔周辺に参集する。」と明らかに。
タクシン政権(2001~2006年)が軍事クーデターで倒されていることから、タクシン派は常にクーデターを警戒しているとされるが、ウォラチャイ議員は、「仮に軍事クーデターが起きても、われわれは逃げずに戦車の立ち向かう。街頭には(抗議のために)数百万人に及ぶ市民(タクシン支持者)が繰り出すだろう。」
ピタック・サイアムのブンラート代表は、クーデターにも言及しているが、「集会参加者が国会議事堂になだれ込むようなことはない。」
11月18日(日)タクシンは、クルングテープ都郊外のサムットプラカン県で開かれたタクシン派団体、反独裁民主主義同盟(通称、スア・デーン=赤服)の集会に国際電話をかけ、集まった支持者数千人を前に、プレム枢密院議長(元首相、元陸軍司令官)、スラユット枢密顧問官(元首相、元陸軍司令官)らを強く批判。
タクシンは反タクシン派が24日にクルングテープのラーマ5世騎馬像前広場で反政府集会を予定していることについて、「国を氷漬けしようとしている。」と述べ、反タクシン派が政治混乱を引き起こして政治、経済を停滞させようとしていると主張。集会主催者のブンルート退役陸軍大将がスラユット枢密顧問官の士官候補生学校の同級生であることを指摘し、スラユット枢密顧問官の関与を示唆した。また、プレム議長の側近であるパジュン退役提督が反タクシン派集会に参加するとして、「プレム議長はなぜ民意、憲法を重視しないのか。」と批判。
11月19日(月)反タクシン団体、ピタック・サイアムが11月24日に都内ロイヤルプラザで反政府集会を予定しているが、警察当局が集会参加者数を8万人程度と見積もっている。これは、国家治安委員会の予想4万~5万人のほぼ2倍となっている。首都圏警察のアドゥン副長官によれば、地方から集会に参加する人々は前日からクルングテープに入り、ロイヤルプラザに泊まり込むものと予想される。
また、「警察は地方の住民を集会に参加させないため、クルングテープ入りを阻止しようとしている。」と一部で報じられているが、アドゥン副長官は、「武器の持ち込みを防ぐための検問などを予定している。だが、地方住民がクルングテープに入るのを妨げることはない。」としている。
このほか、タクシンが「軍が兵士を反政府集会に参加させようとしている。」と批判しているというが、プラユット陸軍司令官は、「兵士に『集会に行け。』などと言ったことは1度もない。」と反論。
チャルーム副首相は、テレビ局「チャンネル7」の女性リポーター、ソムチット・ナワクルアスントーンと口論になったことから、「ソムチットのいる所では記者の質問に答えない。」と明言。
ソムチットは15日、「ピタック・サイアムの反政府集会の際、治安対策を監督するのか。」とチャルーム副首相に質問。これに対し、チャルームは、「あなたは民主党(最大野党)のシンパ。」と批判。ソムチットが「名誉毀損で訴える。」と反論すると、チャルームは「何も悪いことはしていない」と切り返した。
このため、ソムチットが「私が『あなたはタクシンの下僕。』と言ったらどうか。」と質問。これに対し、チャルームは「名誉毀損だ。」と返答。チャルームは、「ソムチットを訴えつもりはない。」というが、「報道陣の中にソムチットを見つけたら、記者の質問には答えない。」と述べている。
女性は、「私に取材させないように圧力をかけようとしたもの。だが、取材を続ける。チャルーム副首相には、自らの公的役割を理解して、質問に答えてもらいたい。」としている。
11月20日(火)反タクシン団体、ピタック・サイアムが11月24日に予定している反政府集会について、政府首脳などが「暴力に発展させようと企んでいる者たちがいる。」との見方を示していることに対し、民主党のアピシット党首は、「そのような情報をつかんでいるなら、速やかに適切な措置を講ずるべき。(これを怠って)集会が暴力に発展したら、それは政府の責任。」と述べた。
チャルーム副首相や国家治安委員会のパラドン委員長は、「数千人に及ぶ偽赤服軍団が反政府集会を暴力にエスカレートさせるために動員される可能性がある。」と述べている。
これは、「反タクシン派が混乱を引き起こし、それに乗ずる形で集会参加者が国会議事堂を占拠する。」あるいは「混乱を口実に軍部がクーデターを起こす。」というタクシン派の懸念に根拠を示すことで、反タクシン派の政権転覆陰謀説に真実味を与えようとしたものと見られる。
だが、関係筋によれば、アピシット党首は、チャルーム副首相らの発言を「反タクシン派を悪者に仕立て上げるための中傷。」と見ており、陰謀説に根拠のないことを示すために「実際に情報を摑んでいるなら、適切な措置を取れ。」と挑んだもの。
11月21日(水)スカムポン国防相が20年以上前の「徴兵忌避」を根拠に、軍が民主党のアピシット党首に付与した階級の剥奪を決めたことにアピシット党首が反発。
「決定は不当。」とするアピシット党首の訴えを受けた行政裁判所は、アピシット党首と国防相から意見を聞くとともに、「現時点では判断材料が不十分。」として、両者に主張の裏付けとなる追加書類の提出を指示。
階級剥奪の命令は、「不信任案審議を前に民主党の勢いを削ぐことが狙い。」との見方が支配的だが、スカムポン国防相は意見陳述後に報道陣に対し、「命令は政治的なものではない。」と主張。また、アピシット党首は、「(近く行われる)不信任案審議ほどエキサイティングなものではない。」と、陳述の具体的内容には言及しなかった。
11月22日(木)タクシン派インラック政権は、都内のラーマ5世騎馬像前広場で24日朝から開かれる予定の反政府集会に対応するためとして、クルングテープ都ドゥシット区、プラナコン区、ポープラープサットパーイ区の3区に、治安維持のための国内安全保障法を発令。期間は30日まで。
国内安全保障法は軍主体の国内安全保障司令部(ISOC)に、関係政府機関の動員、特定の建物、地域への進入禁止、外出禁止、集会禁止、移動禁止などの権限を与えるもので、2010年にクルングテープ都心で起きたタクシン派の暴動でも発令された。今回、同法発令を政府に提案したタイ警察は、「24日の集会に5~6万人が参加し、一部が政府の建物に侵入する恐れがある。」としている。
反政府集会を主導しているのはスラユット枢密顧問官(元首相、元陸軍司令官)の士官候補生学校の同級生であるブンルート退役陸軍大将で、プレム枢密院議長(元首相、元陸軍司令官)の側近のパジュン退役提督も参加している。ブンルート大将は「インラック政権は犯罪者であるタクシンの操り人形で、汚職やインターネット上での王室批判を野放しにしている。」と批判。軍がこうした呼びかけに呼応して、クーデターでインラック政権を追放することに期待を示している。
ブンルート大将らは10月28日、1回目の反政府集会を都内の競馬場「ロイヤル・ターフ・クラブ・オブ・タイランド・アンダー・ロイヤル・パトロネージ」で開き、1万人近くが参加した。ただ、参加者には地方から動員されたとみられる人も含まれ、反タクシン派の実業家、特権階級らが活動資金を拠出している疑いが浮上している。
タクシンは今月18日、クルングテープ郊外のサムットプラカン県で開かれたタクシン派団体、反独裁民主主義同盟(UDD、通称:スア・デーン=赤服)の集会に国際電話を掛け、集まった支持者数千人に対し、「反政府集会の背後にプレム枢密院議長とスラユット枢密顧問官がいるq5と主張。「プレム議長はなぜ民意、憲法を重視しないのか。」などと批判。
インラック首相は、テレビ放送を通じて「反タクシン団体のピタック・サイアムによる反政府集会が政権転覆を目的としている。」として、反政府的な違法行為を阻止すべく、30日までプラナコン、ポムプラプサトゥルパーイ、ドゥシットのクルングテープ都内3区に、国内治安法を発動することを発表。
インラック首相によれば、「関係当局が集会参加者らが、暴力を用いて政府の建物を占拠したり、目的達成のために市民に迷惑を掛けたりするとの情報を摑んでいる。」「通常の警備態勢ではこれらの違法行為への対処が難しいことから、治安当局によるデモ隊の逮捕、デモ行進の阻止、外出禁止などを可能とする国内治安法を発令することを決定した。」という。
関係筋は、「国内治安法に頼るという政府の決定は、逆効果かもしれない。政府への反感を招き、反政府集会に参加する市民を増やしかねない。」と述べている。
憲法裁判所は11月22日、反タクシン団体、ピタック・サイアムが24日に予定している反政府集会は民主的に選ばれた政権の転覆が目的として、同集会の禁止を求めた与党議員ら3人の訴えを「根拠に乏しい。」との理由で退けた。ルアンカイ元上院議員、シントン、プア・タイ党議員など3人がそれぞれ、「集会が憲法に抵触する。」と主張して集会禁止を命ずるよう請求していた。だが、ピタック・サイアムは、ブンラート代表が先に軍事クーデターに言及したものの、「政権転覆を求める。」とは表明しておらず、憲法裁は、「違法な手段による政権交代が集会の目的とは言えない。」
民主党のアピシット党首は、「不信任案審議では、野党議員約30人が質疑に立って、インラック首相とチャルム副首相、スカムポン国防相、チャット副内相(前副運輸相)の責任を追及する。」と明らかに。同審議は25日から3日間行われる予定だが、野党は初日に首相を除く3閣僚、2日目と3日目に首相に質問する方針。
また、24日に反タクシン団体のピタック・サイアムが予定している反政府集会が、大きな混乱に繋がるとの見方も出ているが、アピシット党首は、「不信任案審議が予定通りにできなくても、国会の会期を延長して、審議を後日行うことも可能。」としている。
11月23日(金)治安当局は24日に都内のラーマ5世騎馬像前広場で開催される予定の反政府集会に備え、周辺の道路を23日から通行止めにし、会場近くの首相府、国会議事堂などに警官隊を配備。集会には5万~6万人が参加すると予想されている。
クルングテープ都内で、ピタック・サイアム・グループによる大規模な反政府集会が行われることから、在タイ日本大使館より注意喚起。

「ピタック・サイアム・グループ」による反政府集会の実施に関する注意喚起(11月23日現在)

1.タイ政府によれば,ブンルート退役陸軍大将らが率いる「ピタック・サイアム・グループ」は,以下のとおり反政府集会の実施を予定しているとのことです。

【集会予定】
◎日 時:11月24日(土)午前9時頃~
※11月25日(日)も継続する可能性があります。
◎場 所:ラマ5世騎馬像前
◎人 数:数万人規模の模様

2.このような状況の中,22日午前タイ政府はバンコク都内の3地区(ドウシット区,プラナコーン区,ポム・プラープ・サトルー・パーイ区)に対して,22日から30日までの期間にかけて国内治安維持法を適用することを閣議決定しました。同法の発動に伴い,これらの地区においては状況に応じて、1.一部交通手段の制限、2.移動規制、3.検問所の設置、4.武器類所持禁止、5.公共施設への立入制限、6.安全確保のための電子機器の一時使用禁止等といった様々な規制が課される可能 性があります。

3.つきましては,上記のとおり国内治安維持法が発動された地区においては,状況 に応じて様々な規制が課される可能性があることから,事前に報道等から最新情報 の入手に努めるとともに,不測の事態に巻き込まれないよう,特に反政府集会が実施 されるラマ5世騎馬像周辺には可能な限り近づかない等,安全確保に十分注意を 払ってください。

(問い合わせ先)
○在タイ日本国大使館領事部
電話:(66-2)207-8502、696-3002(邦人援護)
FAX :(66-2)207-8511
11月24日(土)朝反政府デモ隊と動員された約2万人の警官隊が、会場となった都内ロイヤルプラザ(ラーマ5世騎馬像前広場)の周辺道路を封鎖して、市民が会場に向かうのを阻止。国連クルングテープ事務所前で衝突し、双方に十数人の怪我人。反発した市民らに向かって2度にわたって催涙弾を発射するなど一時、緊張が高まった。デモ参加者130人以上を拘束。
デモ隊は衝突現場近くのラーマ5世騎馬像前広場で開かれている反政府集会に向かっていた。警官隊はラーマ5世騎馬像前広場へのルートを限定しており、封鎖中の道路から広場に向かおうとしたデモ隊と衝突した。首相府から数百m離れた地点でも、警官隊がデモ隊に向けて催涙ガス弾数十発を発射。
反政府集会を主導しているのはスラユット枢密顧問官(元首相、元陸軍司令官)の士官候補生学校の同級生であるブンルート退役陸軍大将で、プレム枢密院議長(元首相、元陸軍司令官)の側近のパジュン退役提督も参加している。ブンルート大将は「インラック政権は犯罪者であるタクシンの操り人形。」で、「汚職やインターネット上での王室批判を野放しにしている。」と批判。軍がこうした呼びかけに呼応して、クーデターでインラック政権を追放することに期待を示している。
これに対し、インラック首相は22日、集会参加者が「選挙で選ばれた民主的な政府を暴力で転覆しようとする恐れがある。」として、治安維持のための国内安全保障法をクルングテープ都ドゥシット区、プラナコン区、ポープラープサットパーイ区の3区に発令。23日からは、ラーマ5世騎馬像前広場周辺に警官多数を配置し、周辺の道路を封鎖。国内安全保障法は軍主体の国内安全保障司令部(ISOC)に、関係政府機関の動員、特定の建物、地域への進入禁止、外出禁止、集会禁止、移動禁止などの権限を与えるもので、2010年にクルングテープ都都心で起きたタクシン派の暴動でも発令された。
ブンルート大将らの動きに対しては、タクシンが今月18日、クルングテープ郊外で開かれたタクシン派団体、反独裁民主主義同盟(UDD、通称:スアデーン=赤服)の集会に国際電話をかけ、「集会の背後にプレム枢密院議長とスラユット枢密顧問官がいる。」と主張、「プレム議長はなぜ民意、憲法を重視しないのか。」などと批判。
14時頃首相府から反政府集会が行われていたラーマ5世騎馬像前広場に向かう途中にある交差点で、デモ隊と警官隊が拡声器でいがみ合った末、衝突の危険が出てきたため、警官隊が催涙ガス弾を発射。デモ隊は目の前で炸裂した催涙ガスから、目や口を押さえながら逃げたものの、数分後には元の場所まで戻り、集会を続けた。
警察はタクシン支持と見られることが多く、デモ隊の演説もタクシンと警察を結びつける内容に終始していた。これに対し、デモ隊の興奮を抑える任務であるはずの警官隊の指揮官が興奮。拡声器の音量を上げて言い返すなど、子供じみた言い合いを繰り広げた。
17時頃ラーマ5世騎馬像前広場で開かれていた反政府集会で、当局の強硬姿勢を懸念した主催者のブンルート退役陸軍大将が「集会参加者の身の安全を守るため。」として、集会の終了を宣言。参加者数も当初予想を大幅に下回り、不成功に終わった。警察によれば、ロイヤルプラザに集まったのは約1万2000人で、警官隊に阻止され集会に参加できなかったのが約5000人。
「当局はクルングテープ近郊の幹線道路に検問所を何重にも設けて地方住民の首都入りを制限、反政府集会を不発に終わらせるのに役立った。」という。集会に参加しようとした市民たちからは、「過剰反応」と治安当局を非難する声が上がっているが、関係筋によれば、「政府首脳などが政権転覆の危険性を指摘して盛んに不安を煽っていたのは、強硬措置を正当化するための布石だった。」と考えられる。
集会場周辺では道路封鎖を突破しようとした集会参加者に警官隊が催涙ガス弾を発射、双方が衝突し、怪我人が出ていた。また、午後に入り、一時強い雨が降った。
保健省によると、反政府デモ隊と警官隊の衝突で82人が負傷。怪我人の内訳はデモ参加者の男性31人、女性21人と、警官29人、兵士1人。25日時点で警察病院で治療中なのは22人という。
一方、警察の命令に従わなかったなどの理由で検挙されたデモ参加者は138人で、夜までに警官隊に大型車で突っ込んで警察官複数人を負傷させた者1人を除く137人が罪に問われずに釈放された。
反政府集会が、不発に終わったことを受けて、アドゥン警察庁長官は、22日に発令された国内治安法と同法のもとで発せられた治安関連命令4件の解除をインラック首相に提言することを明らかに。解除によって、反政府集会の会場となったロイヤルプラザ周辺の道路に設置されたバリケードなどを撤去することが可能になる。
インラック首相は、「治安当局が検討して、閣議に報告する予定だ。状況が正常に戻ったと判断されれば、政府は国内治安法を解除する。」と述べた。
今回の事態収束について、「反タクシン派を抑え込んだタクシン派の勝利」とする意見がある一方、「一見、タクシン派が優勢で、インラック政権も安定しているようだが、市民の間に根強い反タクシン感情が存在することが示された。」とする見方もある。
「インラック政権は犯罪者であるタクシンの操り人形」で「汚職やインターネット上での王室批判を野放しにしている。」と主張するブンルート退役陸軍大将ら王党派・反タクシン派がラーマ5世騎馬像前広場で開催し、約2万人が参加。
2008年の反タクシン派デモでは首相府がデモ隊に長期間占拠されたことから、タクシン派インラック政権は今回、特定の場所への侵入禁止や軍の動員を可能にする国内安全保障法を発令し、デモ会場周辺の道路を封鎖。多数の警官を配備し、首相府、国会議事堂などへのデモ参加者の行進阻止を図った。デモ隊は2ケ所で道路封鎖の突破を図ったが、警官隊から催涙ガス弾を浴び、撤退。ブンルート大将は17時、集会の終了を宣言。
タイのメディアの間では、「今回のデモがインラック政権打倒を狙った反タクシン派の策謀の第1段階で、最終的な目標は、デモ隊と警官隊の衝突をきっかけに軍が介入し、クーデターで政権を転覆することだ。」という見方がある。ただ、反タクシン派の頼みの綱である軍の反応は鈍かった。
反タクシン派は選挙で勝てない上、時が経てば経つほど不利とみられ、中長期的展望は明るくない。こうした情勢から、野党の一部には勝ち馬に乗ろうとタクシン派に寝返る動きがみられる。軍幹部の中にも反タクシン派べったりは避けたいという気分が広がっている可能性がある。。
タイでは2006年以降、地方住民、中低所得者が多いタクシン派と特権階級を中心とする反タクシン派の抗争が続いている。反タクシン派は「タクシンを反王室の腐敗政治家。」と糾弾。一方のタクシン派は「特権階級が軍官財界を動かし民主主義や法治を捩じ曲げている。」と主張している。激しい政争の中、2006年、2008年には反タクシン派、2009年、2010年にはタクシン派による大規模なデモがあり、2010年にはデモ隊と治安部隊の衝突で、市民、兵士ら91人が死亡、1400人以上が負傷した。
タクシン派は2006年に軍事クーデター、2008年に「司法クーデター」と呼ばれる憲法裁判所によるタクシン派政党の解党命令で、政権を失った。しかし、下院総選挙では2001年、2005年、2007年、2011年と4連勝中で、2011年のインラック政権発足後は野党、反タクシン派の分断工作を進めている。
反政府集会が早期の散会に追い込まれたことを受けて、集会を呼びかけた反タクシン団体、ピタック・サイアムのブンラート代表は、「代表を引退し、今後政治集会には参加しない。」と表明。
また、早期散会の決断について、「警察は集会に参加しようとする市民をありとあらゆる手段を使ってけ散らそうとした。集会を継続していたら、市民に死者が出る恐れがあった。」と述べた。
11月25日(日)首相ら4閣僚の責任を追及する不信任案審議が下院で開始。
野党議員らが質疑に立って、スカムポン国防相やチャルム副首相らの「職務怠慢」などを指摘し、その責任を追及。
シリチョーク民主党議員によれば、国防相は就任直後にフリゲート艦2隻の装備改善の内容変更を承認し、結果的に乗組員がより大きな危険に晒されることになったもので、職務怠慢の誹りは免れない。国防相は、これに対して、「海軍の意向に沿ったもの。」と説明。
プア・タイ党の広報担当、プロムポン議員は、「国防相がアピシット民主党党首の階級剥奪を決めたことに対する報復だ。」と指摘。
チャルーム副首相については、民主党のサティット議員がタクシンが禁固2年の有罪が確定した犯罪人である、タクシン(警察出身)に付与された警察の階級を剥奪すべきなのにそうしていない。」などと批判。チャルーム副首相は、「有罪判決は政治的なもので、タクシンが有罪となった過程は、国際的に認められていない。」などと反論し、最高裁の判決を否定する見方を示した。
不信任案審議は26日にも行われ、27日に採決が行われる予定。
11月26日(月)不信任案審議2日目、民主党は、インラック首相を追い詰めることができなかった。
各方面から批判が出ている米買い上げ計画や不透明な洪水対策予算の使途などについて、インラック首相の責任を追及しようとしたが、インラックは側近が用意した原稿を棒読みする答弁に終始。
アピシット民主党党首は、「政府は首相自身の言葉で政治的な見解を表明させないことで、首相を口撃から守ろうとしている。」と不満を表明し、政府の姿勢を批判。
トサポン政府報道官によれば、「インラック首相は11月26日、24日の反政府集会に対応するため22日からクルングテープ都ドゥシット区、プラナコン区、ポープラープサットパーイ区の3区に発令した3区に発令した国内治安法を解除するとの命令書に署名し、即時発効。」
政府が反政府活動がエスカレートし、長引く恐れがあることを懸念し、同法は、同3区に30日まで適用されることになっていた。
24日の集会はドゥシット区のラーマ5世騎馬像前広場で開催され、約2万人が参加。政府は特定の場所への侵入禁止や軍の動員を可能にする国内治安法を発令し、デモ会場周辺の道路を封鎖。多数の警官を配備し、会場近くの首相府、国会議事堂などへのデモ参加者の行進阻止を図った。デモ隊は2ケ所で道路封鎖の突破を図ったが、警官隊から催涙ガス弾を浴び、撤退。ブンルート大将は17時、集会の終了を宣言。
「集会を主催したブンルート退役陸軍大将が集会の終了と反政府運動からの引退を表明し、状況がひとまず落ち着いた。」と判断。
陸軍は、先に西部カンチャナブリ県で放置されていたイスラエル製の自動小銃「タボール」10丁の製造番号を調べた結果、2010年04月のタクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)によるクルングテープ騒乱の際に、軍から盗まれたものであることを明らかに。同騒乱では、UDDが当時の民主党政権の退陣を求めて過激な反政府活動を展開。制圧するため軍も出動したが、その際にピンクラオ橋付近でこれらの自動小銃が盗まれた。
反タクシン団体、ピタック・サイアムが11月24日の反政府集会を早めに打ち切ったことについて、さまざまな憶測が出ている。
反政府集会は25日まで続けられるとの見方が支配的だったが、ブンラート代表は24日17時過ぎ、「市民に死者が出る恐れがある。」として、突如散会を宣言。この決定を予想外と受け止めた人々からは、「タクシンが何らかの形で関与したのではないか。」とする見方が出ている。
ピタック・サイアムの代表を務めてきたブンラートは、「タクシンから金をもらったという事実も、だれかに頼まれて散会を宣言したという事実もない。」、「警察が市民に催涙弾を発射しているのに(警備のため動員された)警官隊が何もしてくれなかったことが悲しかった。」と述べている。
11月27日(火)反タクシン団体、ピタック・サイアムが呼びかけた11月24日の反政府集会について、警察が「国内治安法に違反する可能性がある。」として法的措置をとる準備を進めていることが、27日までにわかった。国内治安法は、集会禁止などの権限を治安当局に付与するもので、22日から26日にかけ集会会場を含む都内3区に発令されていた。
アドゥン警察庁長官によれば、「集会が違法となれば、ピタック・サイアムを率いてきたブンラートも罪に問われることになる。」
タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)による2010年の大規模反政府デモで多数の死傷者が出たことについて、タクシン派が「当時の民主党政権の責任。」とすべく、真相解明を国際刑事裁判所(ICC)に委ねようとしていることに対し、プラユット陸軍司令官はこのほど、「タイは自力で問題を解決できる。」として、ICCの介入に反対する考えを明らかに。スラポン外相は先に「政府はICCに委ねるべき。」と発言し、賛否両論が出ているが、プラユット司令官は、「ICCに任せるというなら、そうすればいい。だが、それによってタイが不利益を被ったら、その責任を取る必要がある。」としている。


40章  不信任否決 恩赦で帰国させろとインラックを操縦するタクシン
11月28日(水)11月25日に開始された不信任案審議は、採決が行われたが、審議で大きな波乱もなく、政権党プア・タイ党が下院議席の過半数を占めることから、大方の予想通りインラック首相を含む4閣僚全員が信任された。
野党第1党の民主党は米買い取り制度による巨額の財政負担と膨大な米の在庫、閣僚の汚職疑惑などを追求したが、決定打に欠けた。与党陣営への寝返りが噂される野党第2党のプームチャイ・タイ党はインラック首相に信任票を投じた。
4人に対する不信任投票は、インラック首相が反対308、賛成159、棄権4、チャルーム副首相が反対287、賛成157、棄権25、スカムポン国防相が反対284、賛成160、棄権25、チャット副内相が反対284、賛成182、棄権5。
だが、関係筋によれば、同日に開かれたプア・タイ党の幹部会議で、国外逃亡中のタクシンはSkypeを通じて、「正副下院議長の働きぶりに不満を示し、プア・タイ党議員の反論も迫力に欠いていた。」などと苦言を呈した。
11月29日(木)タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)による2010年の大規模反政府デモで大量の死傷者が出たことについて、スラポン外相などが、責任の所在を明らかにすべく国際刑事裁判所(ICC)の介入を許すべきと主張し、これに批判が出ている問題で、関係当局が介入の是非を協議したが、意見をまとめることができなかった。
このため、関係当局は、13年前にタイのICC加盟を検討するために設置された特別委員会を復活させ、引き続きICC介入について協議することを決めた。関係筋によれば、スラポン外相を議長として行われた協議には、プラチャ法相のほか、法務省特別捜査局(DSI)、検察庁、警察庁、法令委員会の代表が出席したが、プラユット陸軍司令官が介入に否定的なためか、陸軍の代表は参加しなかった。協議では、ICC介入でタイの対外イメージ低下を懸念する声が少なくなかった。
11月30日(金)タイ政府が政府間取引で支那国企業を通じて500万tの米を輸出することになったと説明していることについて、駐タイ支那大使が「これほど大量の米輸入はあり得ない。」との見解。これに対して、民主党はタイ政府に、米輸出の裏付けとなる関係書類を12月03日までに提示するよう要求。
駐タイ支那大使によれば、「支那政府は、外国から直接米を輸入するという従来のやり方を変更し、民間部門を通じて購入することに方針転換。支那企業がタイ米数十万tを購入する契約を交わしているものの、500万tもの購入は考えられない。」という。
その理由として、駐タイ支那大使は、「米に関しては、支那は自給自足できている。タイ米を好む消費者のために輸入しているに過ぎない。また、米はベトナムやロシアなどからも輸入している。」と説明。
刑事裁判所は、「憲法裁判事を脅したのは保釈条件違反。」などとするニピット民主党議員の訴えを認め、タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)幹部のコーケーウ、プア・タイ党議員の保釈を取り消しを決定。
コーケーウ議員は、UDDによる2010年の大規模反政府デモに関連してテロ容疑などで逮捕されたものの、保釈が認められていた。今回の決定で刑務所に逆戻りすることになり、「コーケーウは下院議員の資格を失った。」との指摘も出ているが、司法がどのように判断するかは現時点では定かではない。
また、コーケウ議員と同様に「保釈条件に違反した。」との訴えが出ていたナタウット副商業相らUDD幹部5人について、刑事裁判所は保釈を取り消さなかった。ただ、政治集会への不参加や、国内に留まることなどを保釈条件に追加することを決めた。
コーケーウ議員はタクシン派の反独裁民主主義同盟(UDD)幹部でタクシン派与党プア・タイ党に所属。2010年のUDDによるクルングテープ都心部占拠に参加し、同年05月から2011年02月まで勾留された。
反独裁民主主義同盟(UDD)幹部のチャトポンは、「現政権の転覆を目論んでいる者たちに警告するため、12月22日に東北部ナコーンラーチャシーマ県パクチョン郡のボナンザ・リゾート・カオヤイで大規模な政治集会を開催する。」と明らかに。
チャトポンは、「反タクシン団体のピタック・サイアムによる11月24日の反政府集会は、守旧派によるインラック政権転覆計画の一環であり、守旧派は今後さらに活動を活発化させる可能性がある。」と述べた。
行政裁判所は、軍によるアピシット民主党党首の階級剥奪を不当とする決定を下した。
これに伴い、スカムポン国防相が階級剥奪を保留とすることを決めた。階級剥奪の決定は、「アピシットが20年以上前に虚偽の書類を提出して陸軍士官学校の教職に就き、兵役を忌避した。」との国防省委員会の判断に基づいたものだが、アピシット党首は「忌避の事実はない。」と反論している。
12月01日(土)キャセイパシフィック航空のスチュワーデスがインターネットの交流サイト(SNS)、フェイスブックに、乗客のタクシンの次女ペートーンターンの「顔にホットコーヒーをかけてやりたい。」などと書き込み、物議を醸している。
このスチュワーデスは反タクシン派とみられ、11月24日の反政府集会が不発に終わったことに強い失望感を示し、「チナワット家の人間が嫌い。」などと書き込んでいた。
一方、ペートーンターンは01日、記者団に対し、「私が誰かを怒らせるようなことをしたのなら、謝罪しなければならない。」と述べた。
12月03日(月)ペートーンターンの「顔にホットコーヒーをかけてやりたい。」などと書き込んだ件で、キャセイパシフィック航空は、「この不幸な出来事を遺憾に思う。」、「この乗客に謝罪しようとしたが、連絡がついていない。」などと表明。11月30日からこのスチュワーデスの乗務を停止し、社内調査を行っていることを明らかに。
香港系航空会社、キャセイ・パシフィック客室乗務員のタイ人女性が、機内で遭遇したタクシンの次女ペートンタンの「顔にコーヒーをかけてやりたかった。」などとインターネットに書き込んだことが、論議を引き起こしている。
これに反発した抗議者約50人がプラカードを手にキャセイ・パシフィック航空のクルングテープ事務所前に集まって、乗務員の処分などを要求。
女性は、11月25日のクルングテープ発香港行のフライトに乗務していて乗客の中にペートンタンを見つけ、書き込みには、「上司に『敵の娘の乗ったフライトには乗務できない。』と伝えた。」、「上司に『顔にコーヒーをかけてもいいか。』と聞いたが、『香港の法律に違反する。』と言われた。」といったやりとりが綴られていた。また、女性はフライトの乗客名簿をインターネット上で公開したという。
キャセイ・パシフィックによれば、すでにこの女性を解雇した。関係筋は、「乗客名簿は安全上の問題などで非公開が原則。勝手に公表するのは重大な規則違反であり、懲戒解雇に値する。」
刑事裁判所は、「アピシット民主党議員の名誉を傷つけた。」として、アリスマン元議員に禁固1年の有罪判決を言い渡した。
アリスマンは、2010年のタクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)による大規模反政府デモで、過激な発言を繰り返しており、表舞台に出ていたUDDの武闘派の代表格として知られていた。
今回の訴訟は、2009年10月11~17日にかけ、アリスマンがUDDの集会でアピシット首相(当時)を中傷する演説をしたとされる件に関するもので、アピシット首相は翌11月12日にアリスマンを名誉毀損で訴えていた。
アリスマンは控訴の意向を示したことから、20万Bの保釈金で釈放された。
12月04日(火)法務省特別捜査局(DSI)は、「2つの特別班を編成して、米買い上げ計画についてブンソン商業相、軍の人事について、スカムポン国防相とインラック首相に誤った判断がなかったかを捜査することを決めた。」と明らかに。
同計画などに関しては、先の不信任案審議で民主党が「問題がある。」と指摘しており、DSIが捜査に乗り出すことになった。03日にはワロン民主党議員が「米計画に絡む不正を裏付ける証拠」をDSIに提出していた。
プア・タイ党内では、「中断している憲法改正を推進すべき。」との意見が出ているが、重鎮の1人であるチャルーム副首相は、「『性急な改憲は強い反発を招きかねない。』として、改憲の手続きを慎重に進めるよう求めている。」という。
プア・タイ党では、ポキン首相顧問を長とする憲法改正検討委員会を設置し、改憲推進の可能性を探ってきたが、04日、ポキン顧問は、「憲法改正を進めるべき。」との委員会の提言をインラック首相に報告。だが、タクシン派による改憲に反タクシン派が強く反対していることから、インラック首相は、「正式な報告ではない。」と説明。また、「実際のところ、憲法改正は議会の仕事であり、政府には関係がない」と述べており、距離を置こうとしていることが窺える。
なお、反タクシン派は、タクシン派による改憲を「タクシンの免罪など自らの利益のために憲法を改悪しようとするもの。」と非難。
2008年には改憲反対がきっかけで反タクシン派が当時のタクシン派政権を批判する運動を拡大させ、ソムチャイ政権は発足からわずか1年で政権党のパラン・プラチャーチョン党解党処分によって崩壊することになった。
また、タクシン派の現インラック政権も憲法改正に意欲を見せているものの、政府支持の改憲案は、反タクシン派の提訴を受けて憲法裁が「改憲には国民投票が必要。」と判断。これがタクシン派にとって足枷となって、憲法改正案の第3(最終)読会が延期されたままとなっている。
12月06日(木)2010年04、05月にクルングテープ都心部を占拠したタクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)と治安部隊が衝突し、双方合わせ89人が死亡した事件が、政争の具となっている。
法務省特別捜査局(DSI)のタリット局長は、「DSI、警察、検察の代表者が話し合い、当時のアピシット首相とステープ副首相(治安担当)の責任を追及することで意見が一致した。」と発表。タクシー運転手のタイ人男性が兵士に射殺された件について、当時首相だった民主党のアピシット党首と当時治安担当副首相だったステープ下院議員を、「故意に他者に殺人をさせた罪」で捜査することを決めた。
治安対策を命じた当時の民主党政権トップを罪に問うというものだが、民主党の広報担当チャワノンは、「当局が権限を乱用して政敵を追い落とそうとしたもの。」と強く反発。 運転手の男性は、2010年05月14日にラチャプラロプ・エアポートリンク駅付近で治安部隊が警戒エリア内に入ってきた不審なバンに発砲した際、近くを歩いていて被弾し死亡。 刑事裁判所は、「高速の銃弾で死亡した。」と、治安部隊による発砲が死因であることを示唆。この判断やDSIの独自捜査の結果に基づいて、関係当局は、「治安対策を命じた当時の首相、副首相に責任がある。」と結論づけたもの。
さらに、タリット局長は、「治安対策で市民が死亡したにもかかわらず、デモ隊排除の命令が撤回されておらず、(当時の首相、副首相には)デモ隊殺害の意図があったと考えられる。」としている。
関係筋によれば、「タクシン派のインラック政権は、大規模反政府デモで大量の死傷者が出たのは全て当時の民主党政権の責任と主張。これを受け、DSIは、民主党の責任を追及することに力を入れており、政府寄りの姿勢が目立っている。」
12月07日(金)法務省特別捜査局(DSI)が2010年の大規模反政府デモの最中にタクシー運転手の男性が銃撃され死亡したことについて、治安対策を指示した当時のアピシット首相(民主党党首)とステープ副首相(民主党議員)を殺人の罪に問おうとしている。
これに対して、アピシット党首は、治安対策の正当性を裁判で証明する意向を示すとともに、「私もステープも死刑判決が出たとしても、それを受け入れる。また、妥協せず、タクシンに恩赦を適用させない。」と明言。
タクシン派のインラック政権は、国外逃亡中の犯罪人であるタクシンの免罪・帰国・政界復帰を目指して、大規模反政府デモなどに関連して罪に問われている者への恩赦適用を実現しようしているが、民主党は国民の利益にならないとして反対している。
このため、関係筋は、「殺人容疑は、アピシット党首らを犯罪人に仕立てて、民主党に恩赦適用をのませることが狙い。」と指摘。
プア・タイ党関係筋は、「政府が支持する改憲案をそのまま成立させた場合、民主党との対立をエスカレートさせるだけでなく、憲法違反によるプア・タイ党の解党処分を招く恐れがある。」と懸念を示し、同案を取り下げて、野党などの意見も盛り込んだ改憲案を改めて議会に提出することを検討していることを明らかに。
政府支持の改憲案は現在、第3(最終)読会を残すだけだが、憲法裁判所は先に、「憲法改正には国民投票が必要。」との判断を示している。政府としては、否決の恐れがあるため国、民投票は避けたいところ。さらに、「憲法裁に訴えられ、結果が出るまでに1年程度待たなくてはならないほか、憲法違反でプア・タイ党が解党処分となる恐れもある。」という。
このため、プア・タイ党の政策戦略委員会は、現行の改憲案に反対する識者や民主党の意見も入れて新しい改憲案を作成し、議会に提出するほうが賢明と考えているようだ。
12月09日(日)タクシン派市民団体、反独裁民主主義同盟(UDD)はタイの憲法記念日にあたる10日、憲法改正を求め、都内をデモ行進する。ラーマ5世騎馬像前広場を朝、出発し、国会議事堂、首相府、民主記念塔、最高裁判所、ルムピニー公園を回る模様。警察は「約3000人が参加する。」と予想。
タイの現行憲法は2006年の軍事クーデターでタクシン政権を追放した反タクシン派が制定したもので、任命制上院議員、憲法裁判所、選挙委員会などを通じ、反タクシン派が政治介入しやすい仕組みになっている。2011年の総選挙で発足したタクシン派インラック政権は反タクシン派の司法・政治への影響力排除を狙い、新憲法案を起草する憲法起草議会を設立するための憲法291条改正案を国会に提出したが、第3読会の採決直前の06月01日、違憲かどうかの判断を下すまで審議を中止するよう憲法裁が命令。憲法裁は07月、改憲自体は合憲だが、新憲法の制定には国民投票が必要とする判断を下し、以来、改憲の動きは停止している。
海外逃亡中のタクシンが、マカオのホテルでプミポン国王の85歳の誕生日を祝うためとして開催されたタイ式ボクシングの試合の開会を宣言する様子が、タイ国営テレビ局チャンネル11で生中継された。タクシンがチャンネル11に登場したのは2006年の軍事クーデターで追放されて以来初めて。
宣言の前には、国王への忠誠心を強調し、「王制を軽んじている。」といった批判に反論し、「反タクシン派はいまだに私を不敬の輩と批判している。」などと自身の潔白を主張したシーンもテレビ中継された。タクシンはスピーチで、クーデターとその後の汚職の有罪判決を批判。タクシンが王室を批判したとされる録音テープについては、反タクシン派の偽造だと主張し、国王への忠誠を強調した。クーデターを行った反タクシン派はタクシンを反王室の腐敗政治家と糾弾している。
今回の生中継に対しては、タクシンが在任中の汚職(職権乱用)で禁固2年の有罪が確定した犯罪人であることから、早くも広報局を批判する声が上っている。
なお、タクシン派は、クーデターは民主主義を踏みにじるもので容認できないとして、「クーデター後に暫定政権や裁判所が下した(同派にとって都合の悪い)判断・決定は全て不当。」と主張。タクシン派の現インラック政権は、同様の主張を声高に唱えることは避けているものの、タクシンに言い渡された最高裁の有罪判決については、事実上無視の姿勢を取っている。
12月10日(月)国外逃亡中のタクシンが政府広報局(PRD)の運営するテレビ局「チャンネル11」が、12月09日に放送した生中継番組に登場し、政治的発言をしたことに批判が出ている。
政府は、「事前に知らされていなかった。」と釈明するとともに、「問題なし。」と批判に反論。
タクシンは汚職で禁固2年が確定した犯罪人。民主党を含む反タクシン陣営は、「国営放送がタクシンに自己弁護の機会を与えたのは倫理的、法的に問題。」などと厳しく批判。ウィラット民主党議員は、「インラック首相、そしてPRDを監督する立場にあるサンサニー首相府相は、責任を免れない。」としている。
これに対して、プア・タイ党の広報担当プロムポン議員やティラポンPRD局長は、「政府もプア・タイ党も番組にかかわっていない」「番組を制作したのは民間会社。PRDは放送枠を提供しただけ。」などと関与を否定。
しかし、反タクシン派は、「プア・タイ党首脳らを含むタクシン派幹部がタクシンの行動予定を把握しているのは周知の事実。番組に出演することを知らなかったはずはない。」と強く反発し、民主党と反タクシングループ「グリーンポリティクス」はそれぞれオンブズマン、国家汚職制圧委員会(NACC)に提訴する構え。
憲法記念日である10日、タクシン派のプア・タイ党など与党4党は憲法改正を推進するとした共同声明を発表。4党は、現行憲法は2006年の軍事クーデターでタクシン政権を追放した反タクシン派が制定したもので、非民主的な内容を含むと指摘。立憲君主制を堅持しつつ、国民の権利拡大、政治システムの効率化を盛り込んだ新憲法を国民が参加する形で制定する方針を打ち出した。
タクシン派市民団体、反独裁民主主義同盟(UDD)は同日、憲法改正を求め、都内を自動車やバイクでデモ行進した。数千人が参加。
タイの現行憲法は議員の約半数が任命制の上院、独立性の高い最高裁判所、憲法裁判所、選挙委員会などを通じ、反タクシン派が政治介入しやすい仕組みになっている。2011年の総選挙で発足したタクシン派インラック政権は反タクシン派の司法・政治への影響力排除を狙い、新憲法案を起草する憲法起草議会を設立するための憲法291条改正案を国会に提出したが、第3読会の採決直前の06月01日、違憲かどうかの判断を下すまで審議を中止するよう憲法裁が命令。憲法裁は07月、改憲自体は合憲だが、新憲法の制定には国民投票が必要とする判断を下した。ただ、憲法裁は新憲法制定の具体的な手順は明確にしていない。
憲法裁は2006年以降、ほぼ一貫してタクシン派に不利な判決を下している。2008年には当時のタクシン派政権のサマック首相を料理番組に出て出演料をもらったことを理由に失職させた上、選挙違反でタクシン派与党を解党し、タクシン派政権を崩壊させた。こうした経緯から、インラック政権、プア・タイ党は、下手に新憲法制定に動くと、後から憲法裁により違憲とされ、プア・タイ党が解党される恐れがあると警戒。07月以降、改憲の動きを止め、様子を窺っている。
プア・タイ党のチャルポン党首は憲法記念日の12月10日、「プア・タイ党、チャート・タイ・バッタナー党、チャート・パタナー・プア・ペンディン党、パランチョンの与党4党が憲法について協議し、政府主導の憲法改正を支持してゆくことで意見が一致した。」と発表。チャルポン党首によれば、「4党は、改正によって公正で民主的な憲法が誕生すると確信している。」という。
また、パランチョン党のサンサックは、「現行憲法は、(タクシン政権を倒した)2006年09月の軍事クーデターの産物。」と言い切り、「党幹部の違反だけで解党処分を可能とする規定などを改める必要がある。」と述べた。
最近、政府寄りの姿勢を見せている野党プームチャイ・タイ党のスパチャイ副幹事長は、反タクシン陣営が政府主導の憲法改正に一貫して反対しており、改憲を強行すれば政治対立の再燃が避けられないことから、「改憲に賛成する者も反対する者も新たな政治対立が起きないよう努めてほしい。」と、やや慎重な姿勢。
反タクシン団体、ピタック・サイアムが11月24日の反政府集会でタクシンによる「不敬発言」の録音を流したことについて、タクシンが09日のテレビ生中継の中で「捏造」と反論したことに対し、ピタック・サイアム元代表ブンラートは10日、「録音を一部編集した。」と認めた。ただ、「『音声はタクシン自身のもの』」で、不敬発言があったのは事実。」と主張。
編集は、録音の一部を削除したというもので、ブンラートは、「録音を全て聞いたなら、国民はタクシンに死んでもらいと思うだろう。」と述べた。
12月11日(火)インラック首相は閣議で、「政府支持の改憲案の第3・最終読会を行う前に、国民投票を行うことが合意された。」と明らかに。
憲法改正案については、憲法裁判所が「現行憲法は発布前に国民投票が行われており、改正にも国民投票が必要。」との判断を示した。政府が国民投票に消極的だったことから、議会の承認を得るための最後の読会が棚上げ状態となっている。
また、インラック首相は、「改憲について実兄のタクシンに相談し、アドバイスを得た。」と明らかにしたが、具体的内容には言及しなかった。
タクシンは11日、香港で開かれたアジア・ソサエティーの会合で、国民投票に前向きな発言をしており、閣議で国民投票実施が合意されたのもタクシンの意向に従ったもの。
国外逃亡中の犯罪人であるタクシンが国営テレビの生中継番組に出演したことに批判が出ている問題で、国家放送通信委員会(NBTC)のスピンヤ委員は、「監督者による調査が必要。」との見解を明らかに。
国営テレビ局「チャンネル11」を運営する政府広報局(PRD)のティラポン局長は、「生中継番組は民間会社が制作したもの。PRDは放送枠を提供したに過ぎない。」などと責任を回避する姿勢を見せている。
これについて、スピンヤ委員は、「チャンネル11のテレビ放送は公共サービスである。NBTCは、放送枠のリースが公共サービスの原則に則っているかを検討する必要がある。」としている。
また、2008年制定の放送法37条では、立憲君主制や国家の安全保障、公序良俗に反する放送を禁じており、「タクシンの生出演が同法に違反していないかも検証する必要がある。」とのこと。
法務省特別捜査局(DSI)が、「2010年の大規模反政府デモの最中に、タクシー運転手が治安部隊の発砲で死亡した。」として、当時のアピシット首相(民主党党首)と治安担当のステープ副首相(同党議員)を殺人の罪に問おうとしていることに民主党が反発を強めている。
タリットDSI局長は12月11日、「2人の逮捕を求める訴えが出ているが、DSIは逮捕状を請求しないことを決めた。」と明らかに。DSIは、容疑を伝えるため、13日に出頭するよう2人に求めているが、タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)は、出頭した2人を逮捕するよう要求。
ただ、タリット局長は、「許可なく出国しない、証拠を改竄しない、他人を傷つけない、捜査に干渉しないという条件を守る必要がある。」としており、「これに反した場合は逮捕に踏み切る可能性がある。」という。
なお、関係筋によれば、反タクシン派は「DSIがタクシン派の手先となって、アピシット党首らに濡れ衣を着せようとしている。」などと批判していることから、「DSIは、タクシン派の逮捕要求を退けることで中立性を演出しようとした。」との見方も出ている。
インラック政権は政府支持の憲法改正を実現すべく、憲法裁判所の判断に従って国民投票を実施する方針を決めた。ただ、国民投票の結果が憲法改正に反映されるかどうかについては、専門家の間でも意見が分かれている。
憲法起草に携わった経験のあるスコータイ・タマチラート大学の法学者コムサンによれば、「現行憲法の是非のついては暫定憲法の規定に基づいて国民投票が行われ、賛成多数で憲法が制定されることになっている。だが、現行憲法には、国民投票の結果に法的拘束力を与える規定が存在せず、国民投票の結果に縛られることはないため、国民投票に法的拘束力を与える法律を制定する必要がある。」と言う。
中央選管のソットシー委員も、「2009年制定の国民投票法には、投票結果に法的拘束力を与える余地がある。国民投票実施前に投票結果の法的拘束力に絡む不明な点をクリアしておく必要がある。」としている。なお、ソットシー委員によれば、2007年の国民投票を参考に計算すると、国民投票には17億~18億B掛かる見通し。
12月12日(水)プア・タイ党のパルスック議員(与党改憲検討委員会のメンバー)は、「憲法165条に規定された国民投票の目的に改憲は含まれていない。」と、改憲の是非を問う国民投票は憲法に違反するとの見方を明らかにした。
インラック政権は、政府支持の改憲案を具体化すべく国民投票を実施する方針を明らかにしているが、与党内の足並みの乱れが浮き彫りになった。
憲法改正については、憲法裁判所が先に「現行憲法が国民投票で過半数の支持を得て制定された経緯から、全面的な書き換えには国民投票の実施が必要。」との判断を示している。
パルスックは、「(政府支持の改憲案に基づいた)憲法改正に向けて国民投票を実施するには、まず憲法165条を改正する必要がある。」としている。
なお、憲法に基づいて2009年に制定された国民投票法では、国民投票は有権者の半数以上が投票することが条件で、票数が過半数に達したか否かで賛否を決めるとされている。
12月13日(木)前首相のアピシット民主党党首とステープ民主党議員(治安担当)は民主党本部前で支持者数百人の声援を受けた後、DSIに出頭。容疑を否認。数時間にわたる取り調べ後、帰宅。その後、アピシット党首がDSIで指紋を取られる様子を撮影した写真がインターネットに流出し、民主党がDSIに抗議。
法務省特別捜査局(DSI)は、2010年の大規模反政府デモのさなかにタクシー運転手が治安部隊に銃撃され死亡した件について、当時それぞれ首相、副首相だった2人に殺人容疑が掛けられていることを伝えるとともに取り調べを行った。
だが、2人は容疑を否認し、「許可なく出国しない。」などDSIが設定した不逮捕条件の同意書にも署名を拒否。取り調べ後、アピシット党首は、「DSIの捜査官は、『首相としての責任を問うものではない。』としていたが、容疑の説明では、『首相として殺人を許可するという罪を犯した。』と言われた。」と、矛盾点を指摘。さらに、「DSIは、裁判所が大規模反政府デモを違法と判断したことを考慮していない。」と批判。DSIは、今後45日以内なら反論を受け付けるとしており、そのあとで2人を送検することにしている。DSIはタクシン派が政権をとって以降、タクシン派寄りの姿勢が目立っており、今回の殺人容疑についても、民主党など反タクシン派は、「アピシット党首らを無理やり犯罪人に仕立て上げるというタクシン派の意向に沿ったもの。」と反発。
政府支持の改憲案の成立に向けて先にインラック首相は、改憲の是非を問う国民投票の実施に前向きな姿勢を明らかにしたが、ワラテープ首相府相は、プア・タイ党を含む与党4党も国民投票の実施に賛成であることを明らかに。4党は14日にも国民投票支持を正式決定し、1~2週間のうちに閣議に報告する予定。
12月14日(金)法務省特捜局(DSI)は06日、2010年04、05月に都心部を占拠したタクシン派市民団体、反独裁民主主義同盟(UDD)と治安部隊が衝突し、双方合わせ89人が死亡した事件に関して、警察、検察と協議し、このうちタクシー運転手のタイ人男性が兵士に射殺された件について、当時首相だった民主党のアピシット党首と当時治安担当副首相だったステープ下院議員を、「故意に他者に殺人をさせた罪」で捜査を決定。
民主党は「法務省特捜局(DSI)の捜査をタクシン派インラック政権による政治的な動きだ。」と批判している。一方、DSIのターリット局長は記者会見を開き、民主党の主張に反論。訴追手続きを進める考えを表明。
国営テレビ局が12月09日に放送した、マカオからのタイ式ボクシング試合の生中継番組に国外逃亡中のタクシンが出演したことで、反タクシン陣営が政府を批判し、責任を追及している。
番組中で「勝者に授与する。」と発表された「国王杯」が王室の許可を得たなかったことから、試合の主催者が国王陛下の赦しを請う書面を提出していたことが、14日までにわかった。
クリット侍従長が「国王杯」が誤りであることを指摘し、主催者側に書面で赦しを請うよう伝えたもの。主催者は、「『国王杯』という原稿中の誤った記述を訂正する前に発表してしまったミス。」と釈明。関係筋によれば、主催者側は11月に王室管理事務所に対し、国王陛下の85歳の誕生日を祝うイベントとしてタイ式ボクシング試合を開催することを申請したが、開催場所が明記されていなかったことから、王室管理事務所が説明を要求。
結局、誕生日祝賀行事としての開催は許可されたものの、会場がカジノを有するホテルの中であったことから、「不適切」と判断され許可が下りなかった。
このようなやりとりに時間が掛かったため、準備していた原稿を修正しないままに試合を開催してしまったものという。
12月15日(土)法務省特別捜査局(DSI)が、「アピシット民主党党首が個人の銀行口座から党の口座に送金するというやり方で2万B以上の政治献金を行ったのは違法。」としていたが、中央選管のソットシー委員は、合法との判断を示した。
DSIは、政党法57条で「『政治献金には、クロスチェックの小切手(すぐに換金できず、いったん口座に預金する必要のある小切手)を用いる。』と規定されているため、アピシット党首の行為は政党法に違反する。」としていた。
だが、ソットシー委員によれば、「政治献金の証拠を残すことが法律の趣旨であり、口座間の送金も記録が残るため合法。」
12月16日(日)政府が憲法改正を実現すべく国民投票実施の方針を固めたとの報道を受け、民主党のアピシット党首は、インターネットへの書き込みを通じて、「インラック首相は憲法改正によって、実兄のタクシンの罪を帳消しにすることを目論んでいる。」などと批判して、有権者に国民投票で改憲に反対票を投じるよう呼びかけた。
アピシット党首によれば、「軍部が2006年09月にクーデターでタクシン政権を倒した後に設置された暫定政権下で制定された現行憲法では、『軍部の行為を合法とする。』と規定されているほか、タクシンへの汚職捜査も含まれる。この規定を改めることで捜査を無効とし、有罪判決も覆すことが、インラック首相らタクシン派の狙い。」
12月17日(月)民主党のアピシット党首がインターネットの書き込みで、政府の目指す憲法改正を「タクシンの罪を帳消しにすることが狙い。」などと批判し、来年初めにも実施される見通しの国民投票を「脱線(中止)させよう。」と有権者に呼びかけている。
これに対して、政府は、国民投票の妨害に当たるとして、民主党を解党に追い込む構えを見せた。
中央選管のソットシー委員によれば、アピシット党首の呼びかけは、「脅迫や虚言で国民投票を妨害することは許されない。」とした国民投票法43条に抵触する恐れがある。
だが、アピシット党首は、「『脱線』の意味するところは『政府の望む憲法改正を国民投票で否決すること』であり、『国民投票を実施できないようにすること』ではない。」と説明。
南クルングテープ刑事刑裁判所は、2010年の大規模反政府デモの最中に撃たれて死亡したタクシー運転手の男性について、「兵士の発砲で死亡した。」との判断を示した。これで、同デモの際に、治安部隊の発砲で死亡したと裁判所が認定したタクシー運転手は3人となった。
今回の判断は、法務省特別捜査局(DSI)の要請に伴うもので、DSIは同男性の死亡についても、当時のアピシット首相や治安担当のステープ副首相の責任を追及するものと予想される。
民主党のラメート副報道官が男2人に暴行を受け、重傷を負った。ラメートは自宅があるクルングテープ郊外のマンション前で、自家用車から降りたところを襲撃された。頭を鈍器で殴られるなどして意識を失い、病院に搬送された。18日には意識を取り戻し、人工呼吸器が取り外された。
12月18日(火)与党の憲法改正検討委員会の委員のひとり、ピーラパン、プア・タイ党議員は、「国民投票で政府支持の改憲案が承認されるのは困難。」との見方を示した。現行法では、国民投票は全有権者の半数以上が投票しなければならないほか、投票者の半数以上の賛成をもって承認とされることになっている。ピーラパン議員によれば、有権者数は4600万人程度。その半数にあたる2300万人あまりが投票する必要があるが、現政権を構成する4党の支持者数はこれに及ばない。昨年の総選挙では、3000万人が投票したものの、「これだけ多くの有権者が国民投票に足を運んでくれるという保証はない。」とピーラパン議員は述べた。
法務省特別捜査局(DSI)は、2010年03月~05月にクルングテープで起きた騒乱に関する殺人や殺人未遂など数百に及ぶ容疑で、当時のアピシット首相(民主党党首)と治安担当のステープ副首相(民主党議員)の責任を追及しようとしていることがわかった。
これに対して、ステープ議員は、「政府が提案している政治関連犯への恩赦適用を、私とアピシットに受け入れさせることが狙い。」と批判。この恩赦適用は、現政権が「国民和解を実現するための措置の一環。」と説明しているが、民主党など反タクシン陣営は、「国外逃亡中の犯罪人、タクシンの罪を帳消しにすることが目的。」と反対の姿勢を貫いている。
騒乱では、タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)が、当時の民主党政権の退陣を求めて過激な反政府活動を展開し、治安部隊と衝突。未だに犯人が特定されてない爆弾攻撃・銃撃によって90人あまりが死亡、1500人以上が重軽傷。
12月19日(水)与党4党は憲法改正の是非を問う国民投票の実施に前向きな姿勢を示しているが、一枚岩ではない。
政権党プア・タイ党の重鎮、チャルーム副首相は、「夢物語を語るのを止めて、現実的になる必要がある」と述べて、国民投票の実施に否定的な考えを明らかに。チャルーム副首相によれば、来年の国民投票実施時の有権者数は4900万人程度。国民投票を有効とするには、その半数にあたる2500万人近くが投票する必要があるが、これほど多くの有権者が投票するとは考えにくい。また、仮に投票者数が定足数に達したとしても、改憲を推進するには、投票者の過半数の賛成が必要で、達成できるという保証はない。「さらに、国民投票が不成立に終われば、投票にかかった費用約20億Bを浪費した。」として政府が批判を受けかねない。
12月20日(木)2010年の大規模反政府デモの最中に14歳の少年が死亡したことについて、刑事裁判所は、「兵士の銃撃が原因。」との判断を示した。
少年は、タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)」による反政府活動に対し戒厳令が敷かれていた05月15日、UDDがデモ拠点としていたラーチャプラソン地区近くで背中を撃たれて死亡。「当時、当局が立ち入り禁止とした道路に警告を無視したバンが進入。これに治安部隊が発砲したが、その流れ弾で少年が死亡したもの。」という。
刑事裁判所は、「傷から見つかった弾丸の破片を調べた結果、M16自動小銃の弾丸と判明した。現場に動員されていた部隊はM16を使用しており、少年は兵士の銃撃で死亡したと考えられる。」これで、裁判所が「治安部隊の発砲で死亡した。」と認定した市民は計4人。
民主党幹部のラメートが17日に都内バンナー区の自宅コンドミニアム前で暴漢に襲われて重傷を負った事件で、民主党の広報担当チャワノンは、「犯人はノンタブリー県内の警察署に勤務していた元警官2人。」との見方を明らかに。民主党は事件について独自に調査し、犯人を捜し当てたもの。
2人は警察を免職になったあと、バンナー区内の違法賭博場に雇われていた。
また、首都圏警察が捜査を進めていることについて、チャワノンは、「ラメートはカムロンウィット首都圏警察長官と良好な関係にはなかったので、首都圏警察が犯人を捜し出してくれるか(本気で捜査してくれるか)わからない。ラメートの家族は、警察内の他の機関による捜査を希望している。」と述べている。
与党間で憲法の全面改正の是非を問う国民投票の実施が合意されたことに対し、政府部内からも「国民投票の成立条件、最低投票率50%の達成は困難。」との意見が出ているが、インラック首相も懸念を抱いている。
ただ、インラック首相は、「いずれにせよ(全面的な)憲法改正に結論が出ることになる。」と述べ、「投票者数が有権者全体の半数に達せず、国民投票が不成立となったしても、投票結果から民意を知ることができるため、国民投票を実施することには意味がある。」としている。
この他、インラック首相は、「閣議は、憲法を改正するベストな方法を見いだすために作業部会を設置したに過ぎず、作業部会が(改憲に向けた)公聴会や国民投票の利点を検討することになる。」と述べ、「政府が国民投票実施を最終決定したわけではない。」と説明。
なお、国民投票に否定的なチャルーム副首相によれば、「国民投票は選挙と異なり、投票しなくても罰せられることはなく、また、国民にとって憲法改正は身近な問題でなく関心が低い。」
12月21日(金)プア・タイ党の国民投票広報キャンペーン委員会は、全面的な憲法改正の是非を問う国民投票の実施で意見が一致。
党内では、チャルーム副首相などが、最低投票率50%が国民投票の成立要件とされていることから、「実施しても無効とされる可能性が高い。」などとして、国民投票に反対する考えを表明していた。
だが、委員会はこのような否定的意見を排除し、国民投票が不要な部分ごとの憲法改正でなく、あくまでも全面改正を求めて行くことを決定。また、「投票率が50%に達せず、国民投票は無効となる。」との指摘については、ノパドン委員長は、「精力的にキャンペーンを展開することで、有権者の過半数が投票に足を運んでくれるものと確信している。」と述べた。
12月22日(土)民主党のアピシット党首は、「政府が目指す憲法改正がタクシンの罪の帳消しを目的としたものでないなら、民主党は憲法改正に反対しない。」と、憲法309条に手をつけないよう政府に要求。
309条では、「2006年に制定された暫定憲法のもとで承認された全て措置は合法、合憲である。これらの措置に基づいて、この憲法(2007年憲法)の制定前後に取られた行為も合法、合憲。」と規定されている。
この措置・行為には、タクシンへの汚職捜査も含まれる。この捜査に基づいて法的手続きがとられてタクシンが罪に問われ、首相在任中の汚職(職権乱用)で禁固2年の有罪が確定することになった。
このため、民主党など反タクシン陣営は、「309条を削除したり、内容を変更したりすることは、汚職捜査とその捜査結果に伴う司法の決定を無効とし、タクシンの罪を帳消しにするもの」と、政府の動きを批判し、憲法改正に反対している。
プア・タイ党は、「309条の変更や削除が狙い。」との反タクシン陣営の指摘に対し、「根拠のない言いがかり。」と反論。
12月23日(日)全面的な憲法改正の是非を問う国民投票について、政府部内からも「最低投票率50%という条件を満たすのは難しい。」との否定的意見が出ている一方で、タクシンが国民投票の成立と改憲案の承認に自信たっぷりなことから、民主党幹部のオンアート議員は、「タクシンは何かを企んでいる。」との見方を示した。
国民投票は、投票者数が全有権者数の50%に達しなければ不成立となるほか、改憲案承認を勝ち取るには投票者数の半数以上の賛成が必要とされている。有権者の総数は4600万人で、国民投票を成立させるには2300万人以上が投票しなければならない。だが、オンアート議員によれば、昨年の総選挙での獲得票数は、プア・タイ党が約1400万票、他の与党3党が約300万票の計1700万票あまりで、最低投票率50%という条件をクリア出来そうにない。
オンアート議員は、「タクシンとその取り巻きは、目的達成のためには手段を選ばない。タクシンが国民投票実施を支持するのはかまわないが、もし何か違法なことを企んでいるなら問題だ。」
12月24日(月)汚職防止委員会(NACC)は、10月の内閣改造で入閣した23人の資産を公開。汚職防止のため、新たに閣僚ポストに就いた者は、就任・離任後の一定期間内に資産内容をNACCに報告することが法律で義務づけられている。
入閣、転任した閣僚で純資産が最も多かったのはポンテープ副首相兼教育相(56)で、自身の資産が約3億3115万B、妻が約25億9000万Bで債務は0Bと、家族の合計資産額は総額29億2135万B(約81億円)。ポンテープは元裁判官で、妻はキアットナキン銀行、不動産会社エラワン・グループなどを展開するワタナウェーキン財閥出身。
2位は退役警察中将のチャット副内相(69)で 11億4094万B、3位は元官僚のプロードプラソプ副首相(67)で9億6355万B、4位は医師で実業家のプラディット保健相(53)で9億6352万B、5位はタクシンのゴルフ仲間で実業家のポンサク・エネルギー相(62)で8億4265万B。
2010年にクルングテープ都心部を占拠したタクシン派団体UDD(通称スア・デェーン=赤服)幹部のナタウット副商務相(37)は土地6ケ所、自動車4台など資産総額2462万B、負債 668万B。
最下位は、チョラナン副保健相の約340万B。
「軍がアピシット民主党党首に付与した階級剥奪を目的に、スカムポン国防相が懲役忌避を理由に過去に遡ってアピシット党首の軍籍を抹消した。」と報じられたことに対し、国防相は、「自身の一存で階級を剥奪することはできない。」と認めた。
一方、「国防相の権限の範囲内。」と、兵籍抹消の正当性を主張。
アピシット党首は25年前、陸軍士官学校の教職に就き、陸軍から階級を与えられたが、国防相は、就職時に提出した書類が偽造されたもので、不正行為による懲役忌避だと訴え続けている。
12月25日(火)刑事裁判所は、「ネット上で王室に関する不適切な書き込みをしたことが国家安全保障に悪影響を与えた。」として、元証券ブローカーのカタ(36)に対し、禁固4年の有罪判決を言い渡した。
カタは、2009年04月、10月にそれぞれシリントン王女、プミポン国王に関する不適切な書き込みをしたとして同年11月04日に逮捕された。10月の書き込みは証券会社KT・ZEMICOセキュリティーズに勤務していた2009年、プミポン国王の健康状態に関して虚偽の情報をウェブサイトに書き込み、これが原因でタイ証券取引所(SET)の株価が1日半で10%以上下げた。
関係当局は、書き込みに証券会社KT・ZEMICOのパソコンが使われたことを突き止め、この会社に勤めていた被告を犯人と特定した。カタは、書き込みをしたとされる日に「トレーニングコースに参加しており、社内のパソコンは使えなかった。」と容疑を一部否認していたが、証言を裏付ける記録は残っていなかった。
財閥チャルーン・ポーカパン(CP)グループは、支那の保険大手、平安(ピンアン)保険の株式取得にタクシンが関与しているとの報道をきっぱり否定する声明文を発表。
CPグループは、「資金源については既に明白。実際に買収を行ったオール・ゲイン・グループなど4社についても、全てCPの完全子会社である。」と強調。さらに、「支那が1979年に打ち出した経済開放政策において、CPが外国企業の進出第1号となった。以降、支那政府との良好な関係が続いており、農業政策などの支援も行っている。」と加えた。
支那大手メディア、「財新伝媒」が今週発行したセンチュリー・ウィークリー・マガジンには、「第1回目の取得に充てた約600億Bのうち、3分の1をタクシンのチナワット家が支援。残りについては支那人実業家が出資した。」と資金源について掲載されている。
インラック首相は、「国民投票が(最低投票率50%という条件をクリアできず)不成立に終わったとしても、(国民投票を必要としない)部分ごとの改正が可能。」と、あくまでも憲法の改正を求めて行く考えを明らかに。
政府が支持する全面的な憲法改正については、憲法裁判所が先に、「現行憲法が国民投票で過半数の支持を得て制定されたことから、国民投票が必要。」との判断を示している。だが、「投票者数が有権者全体の50%に達せず、国民投票が無効となる可能性が高い。」との否定的な意見が政府首脳の間からも出ている。
インラック首相もその可能性を否定していないが、「部分ごとの改正という手段が残されていることから、国民投票を諦める必要はない。」と考えているようだ。
なお、国民投票に反対しているチャルーム副首相などは、「投票には巨額の費用がかかるため、不成立に終わった場合、政府は税金を無駄遣いしたと非難される恐れがある。」とも指摘している。
12月27日(木)スカムポン国防相(退役空軍大将)、プラユット陸軍司令官、アドゥン警察長官らタイ軍、警察の幹部は、プミポン国王(85)側近のプレム枢密院議長(元首相・元陸軍司令官、92)の都内の自宅を訪れ、新年の祝賀の挨拶を行った。
プレム議長は集まった高官らに対し、「タイ人同士で分裂していると思われがちだが、深く見れば、意見や信じるものが違うだけだ。我々が全体のことを考えれば、国家は平穏になるだろう。しかし、一部の人は意見が異なる相手を間違っている、悪いと決めつける。」と述べ、「スカムポン国防相に念を押しておきたいが、これは個人的な意見で、政治的な話ではない。国家にとって重要な諸君(軍、警察)に、私の考えを知ってもらいたいだけだ。」と話した。
プレム議長はタクシン派が反タクシン派の黒幕と見做す人物。政財官界や特に軍に極めて強い影響力を持ち、年末年始やタイ正月、自身の誕生日前後には毎年、現役の軍、警察の最高幹部が祝賀に訪れる。これは、軍、警察がプレム議長を通じて国王への忠誠を示す慣行と見られている。
タイでは2006年以降、地方住民、中低所得者が多いタクシン派と特権階級を中心とする反タクシン派の抗争が続き、政治・社会が混乱している。反タクシン派はタクシン氏を反王室、腐敗政治家と糾弾し、2006年のクーデターでタクシン政権を追放。タクシン派は特権階級が軍官財界を動かし民主主義や法治をねじまげているとして、2009年、2010年と反タクシン派政権打倒のデモを行った。2010年のデモでは治安部隊との衝突で、市民、兵士ら91人が死亡、1400人以上が負傷した。タクシン派は2011年の下院総選挙で勝利し、現在はタクシン氏の妹のインラック首相が政府を率いている。
検察は、2008年に起きた反タクシン派団体、民主主義市民連合(PAD)」によるクルングテープの首相府占拠と国会議事堂包囲で、実業家のソンティ・リムトングクン(64)、チャムロン・シームアン元クルングテープ都知事・元副首相(退役陸軍少将、77)らPADの幹部6人を器物損壊、不法侵入などで起訴。6人はいずれも起訴事実を否認し、保釈金を払い保釈された。
PADは2008年に、首相府、国会議事堂、国営テレビ局、2空港などを数千人で襲撃、占拠し、器物を破壊するなどしたが、ソンティら幹部はこれまで1件も起訴されず、逮捕、勾留を免れていた。また、検察はこれまで、ソンティらを起訴するかどうかの判断を十数回延期していた。
PADの一連のデモでは、国営テレビ局が襲撃、占拠された事件について、刑事裁判所が2010年12月、デモ参加者79人に懲役1~2年半の実刑判決を下した。PADによる襲撃・占拠事件で有罪判決が出たのはこれが初めて。一方、タクシン派団体、反独裁民主主義同盟(UDD)による2010年のクルングテープ都心部占拠では、多くのデモ参加者がすでに実刑判決を受け、幹部も長期間勾留された。タクシン派は「司法のダブルスタンダード(二重基準)」だとして、裁判所への批判を強めている。
2013年01月02日(水)法務省特別捜査局(DSI)は、再選を目指して02月の都知事選に出馬予定のスクムパン都知事(野党・民主党所属)らが、高架電車、BTSスカイトレインの運営権付与に関して不正を働いた疑いがあるとして、捜査することを明らかに。
DSIによれば、クルングテープ都庁がスカイトレインを運営するバンコク・トランジットシステム社(BTSC)に、この先30年間運営を委託するのは法律に違反する。
一方、スクムパン都知事は、DSIの決定に反発し、「虚偽の容疑で捜査するのは違法。」としてDSIを訴える構えを見せている。
関係筋によれば、DSIは、タクシン派インラック政権の誕生に伴い、同派寄りの姿勢を強めており、今回の捜査も「都知事選でスクムパンを不利な立場に追い込むことが狙い。」との見方もある。
インラック首相は、2013年の政府計画について、「(各方面から批判の出ている)米買い上げ計画を継続する。」と明言するとともに、改憲の是非を問う国民投票に関しては、「憲法改正は急を要すものではない。新憲法が国民の対立を深めるようでは意味がない。」と、2013年中に国民投票を実施しない可能性を示唆した。国民投票は、与党4党が実施で基本合意しており、04月13日のソンクラン祭前に行われるとの見方も出ている。
01月03日(木)ソムチャイ元首相は、「次女のチャヤパーが05月18日にカンボジアのシエン・ナム議員の息子(32)とクルングテープで結婚式を挙げる。」と明らかに。披露宴は05月25日にカンボジアで行われる予定。
ソムチャイ元首相の妻は、タクシンの妹でインラック首相の姉であるヤオワパー元下院議員。一方、シエン・ナム議員は、カンボジアのフン・セン首相の側近。
関係筋によれば、「両者の結婚によってタクシンとフン・セン首相の関係がよりいっそう緊密なものになる。」
フン・セン首相は、反タクシン派の民主党政権(2008~2011年)に敵対的な姿勢を取っていた。
01月04日(金)タイ・カンボジア間の領土紛争の解決に向けて、「10月に予定されている国際司法裁判所(ICJ)による判決を受けるべき。」とするスラポン外相の姿勢に批判が高まっている。
外務省は、スラポン外相が先に「タイは勝ち目のない状況に置かれている。」などとする見通しを示したことに批判が出ていることに対し、「タイは国際社会の一員として、ICJの判決を受け入れる必要がある。」と反論。スラポン外相によれば、「両国がICJで意見を戦わせた結果、タイの主張が認められても、振り出しに戻るだけ。一方、タイの主張が認められなければ、領土の一部を失うことになるが、ICJで問題の解決を図る必要がある。」だが、発言が「不利益を被ることがあっても致し方ない」と最初から認めているに等しいことから、批判を招くことになった。
ICJは1962年、両国国境地帯にある世界遺産の寺院、カオ・プラウィハーン(プレアビヒア)と周辺地域の領有権について、「カオ・プラウィハーンはカンボジア領。だが、周辺地域の一部は両国によって領有権が争われている。」との見解を示した。
関係筋によれば、タクシン政権(2001~2006年)は、カンボジアと良好な関係を築いたが、「タクシン派政治家による国益度外視の譲歩があった。」との批判が出ていた。
今回の外相発言に対しても、一部で「タクシン派政治家によるカンボジアとの裏取引」を疑う声があがっているもの。
テレビ局「チャンネル3」が、政治家の不正などを題材にしたドラマシリーズ「ヌアメーク2」の最終話の放送を突然中止したことで視聴者から不満の声が上がっている。
これに対して、タイ護憲協会は、「消費者保護委員会と国家放送通信委員会(NBTC)に最終話の放送をチャンネル3に命じさせるよう07日にも中央行政裁判所に請求する。」と明らかにした。さらに同協会は、「放送中止は憲法で保障された消費者の権利を侵害するもの。」として、チャンネル3に付与された放送免許の取り消しを裁判所に要請する予定。
チャンネル3は、放送中止について「ドラマの内容が放送通信事業法37条に抵触するため。」と説明している。
だが、「不正を働いている登場人物がタクシン一族を連想させる。」との指摘もあり、「タクシンあるいはタクシン派の政治家が圧力をかけて放送を中止させた。」との見方が出ている。
01月05日(土)テレビ局「チャンネル3」のドラマシリーズ「ヌアメーク2」の最終話が突然放送中止となったことに政治的圧力を疑う声が出ている問題で、民主党は、国家放送通信委員会(NBTC)を含む独立機関とオンブズマン室に調査を要請。同ドラマは、政治家の不正などを題材にしたもの。
スピンヤNBTC委員によれば、「チャンネル3側が、テレビ放送の許認可に影響力を持つ立場にある政治家がドラマの内容に不快感を抱いていることを知って、放送を自粛したとも考えられる。」という。
また、NBTCのピーラポン委員は、「チャンネル3の役員が『ヌアメーク2の内容は放送通信業務法37条に抵触する。』と述べていた。」と指摘。放送通信業務法37条は、現行の立憲君主制の廃止を求めたり、国家安全保障や道徳観を脅かしたりする内容の放送を禁じている。
また、「ヌアメーク2は、タクシン一族を連想させる」との声もあり、「タクシン派が圧力をかけた」との見方も出ているが、タクシン派のプア・タイ党は、「タクシンや政府が放送を中止させた事実はない。」としている。
01月06日(日)東北部ナコンラチャーシーマ県でのプア・タイ党のセミナーで、党首脳部は、「機が熟していない。」として憲法改正を棚上げすることで意見が一致。
プア・タイ党関係筋は、「今のままでは政府の望む憲法改正の試みは失敗に終わりかねない。このため、一時保留することを決めた。改憲の利点を国民に説明し、理解を得たところで改憲に向けた動きを再開する。」と述べた。
01月07日(月)チャンネル3がドラマ「ヌアメーク2」の最終話放送を突然中止した問題で、国家放送通信委員会(NBTC)は、事実関係を小委員会に詳しく調査させることを決定。また、昨年12月に国営テレビ局「チャンネル11」の生中継番組に国外逃亡中のタクシンが出演したことに一部で強い批判が出ていたが、NBTCは、「放送法には抵触しない。」との判断を示した。
タイ・カンボジア国境に位置する世界遺産カオ・プラウィハーン(プレアビヒア)と周辺地域の領有権を巡る両国間の論争を、国際司法裁判所(ICJ)で決着をつけるべきか否かで意見が割れている。
インラック首相は、「国境紛争を国内で政治化することは避けたい。政府はあらゆる方面から情報を収集、あらゆる手段を行使して国の主権を守る。」と述べた。
ICJは1962年に「カオ・プラウィハーン(プレアビヒア)はカンボジア領。」との判断を示しているが、その周辺地域4.6㎢についてはいまだに決着がついておらず、両国間でたびたび紛争が起きている。
民主主義市民連合(PAD)など反タクシン陣営は、以前から「そもそもICJの介入を許すことは筋違い」などと反対を表明。政府首脳が最近、「タイが敗訴することも予想される。」などと述べていることから、「インラック政権が自らの利益のために国益を害してまでカンボジアに譲歩しようとしている。」との疑いを強めている。
01月08日(火)04日夜に放送される予定だったタイの人気テレビ局チャンネル3のドラマ「ヌアメーク(雲の上)2」の最終話が直前になり、「不適切な内容を含む」として放送中止となり、物議を醸している問題で同局は、「ドラマの内容が暴力的であるため、放送しないことを決めた。」と正式なコメントを出した。
放送中止については、「タクシン一族の不正を連想させるため、タクシン派の現政権が圧力をかけた。」といった批判が出ている。
同局の広報担当者は、「われわれはすべての番組の内容を事前にチェックしている。その結果、放送するに相応しくないと判断した。政治的な圧力によるものではない。いかなる政治家からも放送中止の命令は受けていない。」と説明。
「ヌアメーク2」は、すでに死亡した首相を死人使いが操り、副首相が通信衛星絡みの汚職に手を染めるといった内容。最終話は、黒魔術を使い腐敗政治家を助けていた男が地獄に落ちるというあらすじだったと報じられている。現政権の最高実力者であるタクシンは自らが創業した通信衛星会社をめぐる不正疑惑で訴追されている。また、「魔術に凝っていた。」と一部で報じられた。
タイ政府は、「放送中止はチャンネル3が独自に判断したことで、政府は関与していない。」と主張。また、「ドバイにいるタクシンがタイのテレビドラマを見ているはずはない。」と指摘。
この問題に関連し、07日、チャンネル3のホームページがハッキングされ、「私のヌアメークはどこ?」という文章が表示された。
反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)は、タイ・カンボジア間の領土紛争の決着に国際司法裁判所(ICJ)が関与することでタイが不利益を被るのを避けるべく、7項目の要求書をインラック首相に提出。
ICJは1962年に国境地帯のヒンドゥー寺院跡、カオ・プラウィハーン(プレアビヒア)(2008年に世界遺産登録)をカンボジア領とする判決を下している。また、カンボジアは先にカオ・プラウィハーン周辺の国境未画定区域4.6㎢の領有権についても判断を示すよう要求しており、ICJは04月15、19両日に両国から意見を聞くことにしている。
これについて、PADは要求書の中で、「タイ政府は『ICJには1962年の判断について再び判断を示す権限はない。』と表明すべき。タイは今後のICJの裁定に従う必要がなく、不利益を被ることはない。」としている。PAD幹部のパンテープは、「この表明によって、タイは国境未画定区域から撤兵する必要もなく、タイ領に居を構えるカンボジア人たちを退去させることが可能になる。」と述べた。
01月10日(木)カンボジア外務省は、不法入国とスパイ行為で有罪となり、現在服役中のタイ人男性を減刑、女性を早期に釈放するための手続きが取られていることを明らかに。
カンボジア側の姿勢軟化を受け、インラック首相は同日、タイ政府は釈放に向け今後もあらゆる機会を通じてカンボジアに働きかけを続ける意向を明らかに。 服役中の2人は、反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)とつながりのある団体のメンバーで、2010年末に民主党議員(当時)ら5人にとともに、国境地帯で不法入国の疑いで逮捕された。
5人は釈放されたが、2人は容疑にスパイ行為が加わり、それぞれ8年、6年の禁固刑を受けることになった。
カンボジアのフン・セン首相は、タクシンと親交があることから、2人は、反タクシン派の譲歩を引き出すためのカードとして人質に取られた。
01月11日(金)安倍晋三首相は16~19日にベトナム、タイ、インドネシアを訪問する。首相就任後初の外遊。初外遊先として01月訪米を目指していたが、オバマ米大統領側の日程の都合で02月にずれ込むことになった。

安倍首相のタイ訪問は17、18日で、インラック首相との首脳会談の日程などを現在調整中。日本の首相がタイを公式訪問するのは、2003年の小泉首相以来で、10年ぶり。
安倍政権は麻生太郎副総理兼財務相が02~04日にビルマを、岸田文雄外相が09~14日にフィリピン、シンガポール、ブルネイ、オーストラリアを訪問するなど、東南アジア重視の姿勢を打ち出している。ただ、支那の影響力が強いカンボジアなどは訪問先から外した。
東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国のうち、南シナ海の領有権問題で支那の侵略と戦っているフィリピン、ベトナムなどは、南シナ海の領有権問題の国際法に基づく平和的な解決を義務付けた「南シナ海行動規範」を支那に飲ませることで、紛争の激化を避けたい考え。

フィリピンのデルロサリオ外相は09日、南シナ海や東シナ海で海洋権益を拡大している支那を念頭に「日本が防衛政策を見直し(自衛隊が)強くなることが、アジア地域の安定につながる。」と述べ、日本の軍備強化への期待感を表明。デルロサリオ外相は防衛政策の見直しについて「民主的な手続きによって、最終的には日本国民自身が判断すべきことだ。」と述べ、憲法改正を指した発言と見られる。マニラ首都圏のホテルで共同通信などに語った。
一方、支那は領有権問題は2国間で解決すべきとして、「行動規範」策定に難色を示している。昨年07月のASEAN外相会議では、議長国のカンボジアがこの問題で支那を支持し、共同声明が出せない異常事態となった。インラック首相の兄でタイ政権の最高実力者であるタクシンは昨年10月の米フォーブス誌のインタビューで、「(南シナ海の領有権問題は)2国間で取り扱うべき問題だと(カンボジアの)フン・セン首相に伝えた。」、「私は支那政府と非常に近い関係。」などと語った。
01月12日(土)クルングテープでの2006年の街頭デモや2008年のタイ首相府と2空港占拠といった過激なデモで知られる反タクシン派団体、民主主義市民連合(PAD)系列の新聞ASTVプーチャッカーン「ASTVマネジャー」紙と陸軍の間で緊張が高まっている。同紙がオンライン版で、カンボジアとの領土紛争への国際司法裁判所(ICJ)の介入を巡って、プラユット陸軍司令官を「司令官は生理中の女性のように不機嫌。その理由は、司令官として職責を全うできていないことを受け入れられないからだ。」などと批判したことを発端に、これに抗議する軍服姿の兵士数十人が11日と12日、クルングテープ都内のASTVプーチャッカーン事務所前に集まり、謝罪を要求。
約30人の兵士が前日に続いて、ASTVプーチャッカーン本社前に再結集したが、プラユット司令官が抗議をやめるよう命令。サンサン陸軍報道官によれば、プラユット司令官は、「感情的な行動は問題の解決にならない。」、「国民が軍部を誤解する恐れがある。」などとして、兵士らの抗議を中止するよう命じた。兵士に謝意を示す一方、抗議集会を中止するよう指示。
一方、タイ・ジャーナリスト協会は12日、軍に対し、報道の自由を尊重し、報道機関に対する脅迫を止めるよう要求。プラユット司令官は「自身や軍の仕事ぶりへの報道機関の評価に耳を傾けるべきだ。」と主張。
ASTVプーチャッカーンは、「タイとカンボジアの国境紛争と、タイ深南部のマレー系イスラム過激派によるテロについて、プラユット司令官が領土、国益を守っていない。」と批判。国境紛争はカンボジアの世界遺産である山上遺跡カオ・プラウィハーン(プレアビヒア)周辺の土地を巡るもので、ICJで04月に審問が行われ、年内に判決が出る見込み。今月に入り、タイのスラポン外相が裁判の先行きに悲観的な見通しを示し、国内の保守派が判決を受け入れないよう政府に求めるなど、波紋が広がっている。
PADとASTVプーチャッカーンはともに実業家のソンティ・リムトーングクンが創設。PADは2006年以降、軍によるタクシン派の追放を訴え、軍は2006年の軍事クーデターでタクシン政権を崩壊させた上、2008年には軍基地内に有力政治家を集め、反タクシン派政権発足のお膳立てをした。こうした経緯から、軍主流派とPADはこれまで、同盟関係にあると見られてきた。しかし、反タクシン派の勢力減退にともない、軍がタクシン派との協調路線に転じ、両者の間に溝が生じた模様。
01月13日(日)タクシン派市民団体、反独裁民主主義同盟(UDD)は15日朝から、クルングテープ都内ウィパワディランシット通のラクシー臨時刑務所前で集会を開き、2010年の暴動で服役中のUDDメンバーらの恩赦を要求する。
民主党幹部のオンアート議員は、「軍服姿の兵士らによる抗議は、脅迫と見られかねない。」として、抗議ではなく、被害届や刑事告訴などの法的措置を取るよう兵士らに求めた。オンアート議員によれば、「報道の自由が憲法で保障されているが、メディアも法を順守しなければならない。」
01月14日(月)プラユット陸軍司令官は、カンボジアとの領土紛争を巡り、不機嫌な様子で反タクシン派のタイ字紙ASTVマネジャーに反論したことを認め謝罪。
反タクシン派のASTVマネジャー紙がプラユット司令官を批判するとともに、反論したプラユット司令官を「生理中の女性のように不機嫌。」と揶揄したことを発端に、陸軍とASTVの緊張が高まり、陸軍兵士のグループが2日続けて、ASTVマネジャー紙本社前に集まって抗議活動を行った。
ただ、兵士らの行動についてプラユット司令官は、「わたしが命令したものではない。彼らは陸軍の威信を守り、私の評判を落とすまいと自らの判断で抗議をした。」と釈明。また、「ASTVマネジャー紙の記者が陸軍本部で取材するのを禁じた事実はない。」と反論。
01月16日(水)ドラマシリーズ「ヌアメーク2」の放送が突然中止され、「政治的圧力」との批判が出ている問題で、番組の制作チームは、事実関係を調査している下院委員会で、「事前のチェックでドラマの内容が暴力的であることがわかったため、放送の中止を決めた。」とのテレビ局の説明に反論。
テレビ局は「政治的圧力はなかった。」としているが、「タクシン一族の不正を連想させるため、放送中止になった。」との見方が支配的。制作チームによれば、「未だにテレビ局から放送中止の原因に関する詳しい説明を受けていない。」
プア・タイ党からクルングテープ都知事選に出馬することになったポンサパットが、「米国留学中にラジオを盗んだ。」との噂が浮上。ポンサパットは潔白を証明する書類を選管に提出、「警察当局が2000年に調査を行い、『窃盗の事実はない。』との結論が出ている。」と主張。
また、ポンサパットは立候補のため、警察庁副長官と麻薬制圧委員会事務局長を辞任する手続きをとったが、プラチャー法相は、「麻薬制圧委員会は辞任をまだ承認していない。」と述べた。現在、辞任が合法か否かを検討中。一方、プラチャー法相は「立候補届を済ませば、それが正当な理由とみなされ、辞任が認められるだろう。」と述べている。
01月17日(木)安倍晋三首相はタイを訪問し、インラック首相と政府庁舎で会談したあと、共同記者会見に臨み、「日本が今後も、タイとの経済連携を拡大してゆく方針を再確認すし、インラック首相は、安倍首相がタイの治水事業、高速鉄道計画、ビルマのダウェイ経済特区開発といったインフラ事業への日本企業の参入に関心を示した。」として、「ダウェイについては、タイ、ビルマ、日本の3ケ国で近いうちにハイレベルの協議を行うべきだ。」と述べた。また、安倍政権下での日本経済の回復に期待を示した。インラック首相によると、日本の大企業、中小企業によるグリーンテクノロジー、エネルギー、航空、自動車の分野への投資拡大の可能性についても話し合った。

タイの治水事業は多くの日系工場が水没した2011年のタイ中部大洪水を受けたもので、南朝鮮などが受注を目指している。昨年11月にはインラックの兄で、国際逃亡犯で政権の最高実力者であるタクシンが南朝鮮の治水事業「四大河川再生事業」を視察。
高速鉄道はクルングテープとタイ東北部ノンカイ、北部チエンマイ、南部プダンベサールなどを結ぶ路線が検討されている。支那、ラオと接続する構想があり、受注競争は支那が先行。ただ、世界的に支那の鉄道技術の安全性を懸念する声がある。インラック首相は昨年、支那の北京-天津間を結ぶ高速鉄道である京津都市間鉄道と九州新幹線の博多-熊本間に試乗。タイ政府は新幹線にも関心を示しているが、「タイにとっては過剰性能で価格が高すぎる。」という見方がある。
ダウェイはマレー半島の付け根の西側にあり、深海港の開発とタイとの陸路接続で、アンダマン海、インド洋とタイ湾、南支那海を結ぶ物流拠点になると期待されている。タイにとってはマラッカ海峡を経ずに欧州、インドに輸出できるため、メリットが大きいと見られている。ダウェイの開発は2010年に、タイのゼネコン(総合建設会社)最大手イタリアンタイ・ディベロップメント(ITD)がビルマ政府から請け負った。しかし、深海港、道路、発電所、工業団地など事業が多岐にわたり、投資額が3000億Bを超える見込みで、同社1社の手には負えない状況。タイ、ビルマ両国政府と日本など第3国の支援が不可欠だが、ビルマ政府は同国最大の都市ヤンゴン近くのティラワ経済特区を日本と協力して開発することで合意しており、ダウェイの開発は二の次となっている。


安倍首相は16日、東南アジア3ケ国歴訪の最初の訪問先であるベトナムを訪れ、首脳らと会談。17日正午前にクルングテープに入り、在タイ日系企業関係者らと懇談後、日本型ものづくりを目指す泰日工業大学を視察。夕方、クルングテープ都内のシリラート病院に入院中のプミポン国王を表敬訪問。その後、タイ首相府を訪れ、インラック首相らと会談し、首相主催の晩餐会に出席。
スラポン外相は下院審議で、タイ-カンボジアの領土問題に関連して、民主党のシリチョーク議員から「敗北主義者」との批判を受けたが、「タイ政府は断固戦い抜く覚悟だ。」と反論。
スラポン外相は、領土紛争の決着に国際司法裁判所(ICJ)の介入を認めるべきとの立場を取っているものの、「ICJでタイが敗訴する可能性や勝訴したとしても得るものはほとんどない。」との見方を示していることから批判を受けている。また、シリチョーク議員は、「大ボス(タクシン)の命令に従うばかりの外相に、国民は失望している。スラポンはこれら特定個人の利益を国益に優先させている。」と批判。
反タクシン陣営は、「タクシン派が、自らの利益のために、国益を損なってまで親タクシンのカンボジアに譲歩しようとしている。」と批判、カンボジアとの裏取引を疑っている。
01月21日(月)カンボジアからの報道によると、フン・セン首相は、「反タクシン派がカンボジアとの関係を持ちだしてタクシンなどを批判している。」と指摘、タイ国内の政治論争に巻き込まないようアピシット民主党党首に対し要求。
タイでは、タクシン派のインラック政権が、カンボジアの要求に沿う形で、国際司法裁判所(ICJ)でカンボジアとの領土紛争に決着をつける姿勢を示している。反タクシン派は、「タクシン派が国益を害してまでカンボジアに譲歩しようとしている。」などと批判している。
「根拠のない批判だ」と、フン・セン首相は反論し、反タクシン派に証拠を示すよう求めている。
なお、以前から親タクシンを表明しているフン・セン首相は、アピシット民主党政権(2008~2011年)では、露骨な敵対姿勢を示し、一部では「タイの国内政治への干渉。」との批判も出ていた。
18日のタイ陸軍記念日の祝賀パーティーがクルングテープ都内のタイ陸軍クラブで開催され、インラック首相(45)、プミポン国王側近のプレム枢密院議長(元首相・元陸軍司令官、92)、スカムポン国防相(61)、プラユット陸軍司令官(58)らが顔を揃えた。プレム議長はインラック首相の兄のタクシン(63)の政敵と目される有力者だが、この日は笑顔でインラック首相と会話を交わし、和やかな雰囲気だった。
01月23日(水)刑事裁判所は、「タクシン派の雑誌、ボイス・オブ・タクシンに2回にわたり王族に関する不適切な記事を掲載した。」として、元編集者ソムヨット・プルクサーカセームスク(51)に禁固10年の有罪判決。問題の2つの記事は、タクシン政権(2001~2006年)で首相府相を務め、後に不敬罪に問われて国外に逃亡したチャクラポップ・ペンケー元首相府相が「チット・ポラチャン」というペンネームで執筆したもので、2010年の02月と03月号に掲載された。ソムヨットはこの記事を掲載したことで不敬罪に問われ、2011年04月、不敬罪の改正を求める署名活動を開始した5日後に逮捕された。
刑事裁判所は、「記事は国王に言及したものと容易に判断されるもので、内容は不正確かつ中傷的。ソムヨットには編集者として事前に内容をチェックする責任があった。」としている。また、ソムヨットはまた、反タクシン派の軍人に対する名誉棄損で執行猶予付きの禁固1年の有罪判決を受けていたが、刑事裁判所は執行猶予を取り消したことから、被告の刑期は合計11年となった。
ソムヨットは控訴する一方、保釈を求める方針だが、逮捕されて以来、これまで11回の保釈申請はいずれも却下されている。タイでは殺人事件の被告、容疑者でも保釈されるケースがあるが、不敬罪の場合、保釈は認めらないことがほとんど。
人権保護団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW、本部ニューヨーク)は今回の判決について、「ソムヨットが不敬罪改正を支持したことが重い判決に繋がった。」という見方を示し、「タクシン派対反タクシン派というタイの政治的対立が続いている。」と指摘。裁判所の懲罰的な判決や不敬罪自体を強く批判。
不敬罪はタイ国王夫妻と王位継承者への批判を禁じたもので、違反した場合、1件につき最長15年の懲役が科される。HRWによると、1990年から2005年にかけ、不敬罪の裁判は年4、5件程度だったが、特権階級を中心とする反タクシン派と反王室のイメージがあるタクシン派の政治抗争が激化した2006年以降は累計で400件以上に上る。2011年08月のタクシン派インラック政権発足後は減少したが、今月17日にも、タクシン派活動家のタイ人男性が不敬罪で刑事裁から懲役2年の実刑判決を受けた。不敬罪についてはタイ国内の一部学識者やタクシン派市民団体に加え、米国務省、国連なども批判的な見解を示している。ただ、タイ軍幹部や反タクシン派野党、王党派団体は刑法の改正廃止に強く反対。タクシン派与党は改正に及び腰で、国会で議論が深まる気配はない。
テレビ局「チャンネル3」がドラマシリーズ「ヌアメーク2」の最終章の放送を突然中止した問題で、チャンネル3のソムラック社長代行は日、この問題を調査している下院委員会に対し、「名誉毀損で訴えられる恐れがあったため、最終章3話の放送を中止した。」と説明。チャンネル3は先に、放送中止の理由を「内容が暴力的なため」とする正式コメントを発表していた。
また、「タクシン一族の不正を連想させるため、政治的圧力で放送が中止になった。」といった批判が当初から出ているが、ソムラック社長代行は、「外部からの圧力はない。」と明言した。
チャンネル3では、「最終章3話の内容をチェックし、不適切と判断。内容を編集しようとしたが、ドラマとして成り立たなくなるため放送中止を決めた。」とのこと。
01月24日(木)隣国カンボジアのフン・セン首相が「アピシット民主党党首はいつもカンボジア絡みでタクシンを批判している。」と苦言を呈し、これにアピシット党首が反論するという批判の応酬に発展していることについて、インラック首相は、「タクシンについて意見を戦わすことには反対しないが、これがタイ-カンボジア2国間関係に悪影響を与えることがあってはならない。」と述べて、アピシット党首に批判を控えるよう求めた。
アピシット党首によれば、「タイのカンボジアが領有権を争っている問題水域での石油・ガス開発に関する裏取引が存在し、タクシンがこれで利益を得ている。」という。
これに対し、フン・セン首相は、「事実無根」と否定し、証拠を示すよう求めている。これについては、タイのスラポン外相も、「アピシット党首は証拠を提示すべき。」としている。
法務省特別捜査局(DSI)が2010年の大規模反政府デモでの市民死亡について、殺人容疑で当時のアピシット首相(民主党党首)、治安担当のステープ副首相(同党議員)の捜査を開始したことについて、アピシット、ステープ両氏が、「虚偽の容疑を掛けられた。」として、DSIのタリットDSI局長と捜査官2人を告訴する手続きをとった。民主党によれば、「捜査は事実に基づいた正当なものではなく、刑法157条と200条に違反する。」
DSIは、「市民らは、治安対策で出動していた治安部隊の発砲で死亡した。このため、治安対策を許可した首相、副首相に責任がある。」としているが、民主党は、「デモ隊が過激な行為を繰り返すという状況下での適切な治安対策であったことを考慮していない。」などと反発している。
01月26日(土)未明クルングテープ都プラナコン区プラアーティット通の新聞大手ASTVプーチャッカーンの本社に銃弾が撃ち込まれ、2階の窓ガラスと路上駐車されていた取材用車両4台の窓ガラスが割れた。怪我人はなかった。現場は旅行者街カオサン通に近く、外国人が多い地区。
同日朝、車を使おうとした同社関係者が4台にそれぞれ1か所の弾痕があるのを見つけた。警備員によれば、午前03時25分頃に銃声を聞いた。路上駐車していたのは、同社の駐車場が満杯だったため。
反タクシン派の同紙は先に、カンボジアとの領土紛争を巡ってプラユット陸軍司令官と論争を繰り広げたことから、「犯人は軍関係者」との見方も出ている。一方、陸軍は関与を全面的に否定している。
ASTVは2006年のクルングテープでの街頭デモや2008年のタイ首相府と2空港占拠といった過激なデモで知られる反タクシン派団体、民主主義市民連合(PAD)の創設者で実業家のソンティー・リムトングクンが実質的なオーナー。最近、タイとカンボジアの国境紛争やタイ深南部のマレー系イスラム過激派によるテロについて、プラユット陸軍司令官を批判する記事を掲載し、今月11、12日、軍服姿の兵士数十人がASTV本社前で抗議集会を開く騒ぎがあった。
01月29日(火)反タクシン派の新聞社、ASTVプーチャッカーンの取材用車両4台が01月26日未明に何者かに発砲された事件で、チャルム副首相は、事件への関与を全面的に否定。
ASTVプーチャッカーン紙とプラユット陸軍司令官との間でも批判の応酬があったことから、「軍関係者による嫌がらせ」との指摘も出ていたが、ASTVプーチャッカーン社のチタナートCEOは、軍人の関与を否定し、「警察に影響力を持つ者の仕業。」との見方を示していた。
このため、警察出身のチャルーム副首相に疑いの目が向けられていたが、「私が得るものはなにもない。ソンティー(グループの創設者)にも個人的な恨みはない。」と述べた。
赤服を纏い、赤旗などを手にしたグループ「政治犯釈放のための1月29日」数百人が、クルングテープ都内のロイヤルプラザ(ラーマ5世騎馬像前広場)と首相府前で集会を行い、法学者らで構成される「ニティラート」の提言に沿って、政治犯を釈放するための恩赦法を制定するよう政府に要求。「政府が要求を拒否した場合は抗議行動を長期化させる。」と警告している。
会場に姿を見せたチャルーム副首相は、「法律の制定には時間が必要。」などと説明し、散会を促したが、同グループは拒否し、政府庁舎へのデモ行進をちらつかせた。同グループは「インラック首相がニティラートの提言について国の法律最高諮問機関、法令委員会に判断を仰いだあと、議会承認を得るべく閣議で審議することに同意した。」とのタワット首相副秘書官の説明に納得し、20時にようやく散会。
同グループは、国立チュラロンコン大学のスダー講師を指導者とする、タクシンの支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)傘下のグループ。「恩赦法制定による政治犯釈放」を要求するが、チャルーム副首相も「政令による恩赦適用は、憲法裁への異議申し立てで頓挫してしまう恐れがある。」として同意する姿勢を示している。
一方、UDD幹部のナタウット副商業相によると、「恩赦法制定には政令に比べて時間がかかるため、国民和解の急務を理由に、政令による恩赦適用を求めていく。」
民主党のアピシット党首は、「タクシンなど汚職や刑事事件で罰せられた者が恩赦対象とならないかぎり、民主党は恩赦法制定に協力する用意がある。」と牽制。
だが、タクシン派は、「タクシンに下された有罪判決を政治的なもの。」と批判しており、タクシン派が恩赦によるタクシンの免罪を要求してくるのは確実。
01月30日(水)タイのテレビ報道によると、殺人と汚職で懲役30年が確定し、2006年から逃亡していたタイ東部の実力者ソムチャーイ・クンプルーム(75、通称:カムナン・ポ(チョンブリーのゴッドファーザー))が、クルングテープ都ラットクラバンで逮捕され、即日収監。約7年に及ぶ逃亡劇に幕が下ろされた。カムナン・ポはソンタヤー文化相、東部チョンブリー県のウィタヤー県長、東部パタヤ市のイティポン市長の父親で、今回の逮捕は政局に影響を与える可能性がある。
カムナン・ポはクルングテープ都内の私立病院で偽名で診察を受け、黒い高級乗用車でチョンブリ方面に向かう途中、高速道路上で逮捕された。乗用車には他に、女性と運転手の男性が乗っていた。
カムナン・ポは姿を消した2006年以降、「カンボジアに潜伏している可能性が高い。」と報じられていたが、目撃情報が最近あったことから、警察が特別チームを編成し、都内の潜伏場所を突き止めて行動を監視していた。警察によれば、「ソムチャイは高級車に乗って都内の病院を訪れた後、自動車専用道からチョンブリ方面に向おうとしたが、料金所で待機していた警察官らに行く手を阻まれた。抵抗はせず、観念した様子のソムチャイを、警察官が犯罪制圧課本部まで連行した。」という。最近はチョンブリー県内で暮らしていた模様。チョンブリー県警が逮捕に消極的だったことから、警察本部の犯罪制圧課が動き、約2ケ月前からカムナン・ポの尾行を開始。護衛が離れた隙に逮捕に踏み切った。
カムナン・ポは小学校中退後、バスの車掌、船員などを経て、東部で建設・不動産、運送、酒類販売などの事業を展開し、一時は東部最強の実力者と呼ばれた。「2003年にチョンブリー県で行われた結婚披露宴の最中に地元政治家が射殺された事件で、殺し屋を雇ってこの政治家を殺害した。」として、2004年06月の1審で25年の禁固刑を言い渡されたが、控訴。2005年10月の2審でも有罪判決が下ったため、再び控訴したが、半年後に失踪。一方、最高裁は2006年05月、被告不在のままソムチャイを公有地をめぐる汚職の罪で禁固5年4ケ月とする有罪判決。殺害事件については、最高裁が12年3月に被告不在のまま有罪判決を下し、禁固刑は計30年4ケ月となった。
クンプルーム家率いる東部の地方政党パランチョン党はインラック政権の連立パートナーで、現政権下でカムナン・ポが逮捕されたことで、タクシン派の政権与党プア・タイ党への不信が生じる可能性がある。
プア・タイ党の実動部隊であるタクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)の幹部が先に、「政令による政治犯への恩赦適用を求めていく。」と発言したことに対して、プア・タイ党の重鎮、チャルーム副首相は、「政令での恩赦に反対する。」との考えを改めて示した。
UDD中心メンバーの1人、ナタウット副商業相は、「政治犯釈放による国民和解を早期に実現する必要があり、時間のかかる恩赦法制定よりも政令で恩赦を適用するほうがよい。」と主張。一方、「政令を出すには憲法184条に規定された条件を満たす必要がある。」とチャルム副首相は指摘。「政令に異議を唱える者が『違憲』と憲法裁判所に訴えれば、恩赦適用が遅れたり、無効とされたりする恐れがある。」という。
01月31日(木)東部チョンブリー県で大きな影響力を持つカムナン・ポことソムチャイが30日に逮捕されたことを受け、アドゥン警察庁長官は、 約7年に及ぶ逃亡生活を支援していた協力者を割り出し、取り調べを行う考えを明らかに。
ソムチャイは、チョンブリー県内に潜伏し、病気治療のためクルングテープの病院を訪れることもあったが、警察では、親族や近しい関係にある役人などがソムチャイにさまざまな支援を提供していたとみている。
これについて、警察庁犯 罪制圧課(CSD)のスピサン課長は、「匿っていた者でも『感謝の気持ちの表れ』と考えられるケースや正当な医療行為として治療を行った医療関係者らは罰せられないだろう。だが、その範囲を越えた支援については罪に問う必要がある。」
ニューヨーク・タイムズ紙が「国政の重要な部分のほとんどは、国外逃亡中のタクシンによって決定されている。」と報じたことについて、インラック首相は、 「私が首相であり、私が率いる内閣が政策を決めている」。と述べ、同報道を全面的に否定。また、トサポン政府報道官も、「閣議では、情報が漏 れる恐れがあるため、携帯電話などの使用が禁じられている。」と指摘し、「タクシンが閣議で意見を述べたり、決定を下したりするのは不可能。」としている。
だが、 政府首脳の中には、「タクシンからアドバイスを受けている。」と明らかにしている者もいる。関係筋によれば、「タクシンが政権党プア・タイ党に絶大な影響力を持つことは周知の事実。このため、インラック政権の決定にタクシンの意向が色濃く反映されているのは疑いようがない。」
02月01日(金)2010年末にカンボジア領内に不法侵入したとして逮捕され、スパイ罪などで有罪判決を受けて服役していたタイ人女性、ラトリーがシアヌーク前国王の死去に伴う恩赦によって釈放。ラトリーとともに有罪判決を受け服役中のタイ人男性、ウィラーも恩赦によって刑期が6ケ月短縮。
反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)傘下の団体に所属する2人は、2010年12月、民主党議員(当時)ら5人とともにカンボジアに逮捕されたが、5人は翌2011年に釈放され、タイに帰国。しかし、2人はスパイ罪にも問われ、ウィラーに8年、ラトリーに6年の禁固刑が言い渡された。
これについては、「カンボジアのフン・セン首相が親タクシンであることから、反タクシン派の2人が濡れ衣を着せられて投獄された。」との見方もあった。
また、ウィラーも減刑されたものの、まだ刑期が5年半残っており、帰国したラトリーは、「友人がまだ囚われの身なので、(自分の釈放を)喜ぶことはできない。」と述べている。
「チョンブリのゴッドフォーザー」として知られたカムナン・ポこと、ソムチャイ(75)が01月30日に、約7年に及ぶ逃亡の末、クルングテープで逮捕されたことについて、警察庁犯罪制圧課(CSD)は、「ソムチャイを匿っていた容疑者らに関する捜査と取り調べを15日以内に完了する予定だ。」と明らかに。
2006年04月に失踪したまま行方不明となっていたソムチャイは、2006年05月に汚職で有罪が、2012年03月に殺人教唆でも有罪が確定。
失踪直後は、「カンボジアに逃亡した。」との見方もあったが、「その後は主に故郷チョンブリ県に潜伏し、病気治療でクルングテープの病院を訪れるなどしていた。」と言われる。CSDでは、「犯人隠匿に関与した者が複数人に上る。」と見ている。
02月02日(土)スラポン外相は、ラトリーとともに逮捕され、現在も服役中の民主主義市民連合(PAD)傘下の団体所属の男性、ウィラーについては「早期の釈放は容易ではない。」との見方を示した。ラトリーとウィラーは2011年に、それぞれ禁固6年、8年の有罪判決を言い渡された。
カンボジアはシアヌーク前国王の葬儀の恩赦でラトリーを釈放し、ウィラーの刑期を6ケ月短縮。だが、スラポン外相によれば、「カンボジアの法律では、恩赦による釈放は、服役期間が刑期の3分の1に達していることが条件で、早期釈放は困難。」、「タイで服役しているカンボジア人は、全員が薬物密売や不法入国などで有罪となった者であり、ウィラーと交換できる犯罪人、すなわち国家安全保障にかかわる罪で服役中のカンボジア人受刑者は存在しない。」と説明。
関係筋によれば、「2人に重い刑が科せられたのは、カンボジアのフン・セン首相が親タクシンで、2人が反タクシン派であること。2人の投獄は後々、タクシン派のために利用することが狙い。その筋書きに沿って、インラック政権は、反タクシン派の2人の釈放に努力する姿勢を見せて『タクシン派の寛容さ』を国民にアピールしようとしている。」というのが反タクシン派の見方。
02月04日(月)「カムナン・ポ」ことソムチャイ(75)は、クルングテープの矯正局付属病院から郷里の東部チョンブリー県の刑務所に移送され、チョンブリ病院の特別個室に入院。「ソムチャイは『チョンブリーのゴッドファーザー』と呼ばれた実力者で、ソンタヤ文化相の実父であることから『特別扱い』となった。」との見方があり、一部から批判の声も上がっている。
チョンブリー県の刑務所刑務所への移送は、ソンタヤ文化相の要請によるものというが、同受刑者は刑務所に到着して10分もたたないうちに病院に搬送された。
アムナート刑務所長によると、「ソムチャイは呼吸困難を訴え、血圧も高かったため、医師の判断で入院することになった。」
02月05日(火)東部チョンブリー県の有力者、「カムナン・ポ」ことソムチャイが約7年に及ぶ逃亡の末に逮捕されたことについて、警察庁犯罪制圧課(CSD)のスピサン課長は、「来週にも逃亡幇助の疑いで6人から事情を聴取する。」と明らかに。
これには、ソムチャイが治療を受けていたサミティウェートシーナカリン病院の院長、チョンブリー県の役人などが含まれる。また、「親族も潜伏を手助けしていた。」と見られるが、ソムチャイの長男、ソンタヤ文化相は、「父は何でも自分ひとりでやる人。」と述べ、逃亡への協力を否定、「無関係であるがゆえに自身の閣僚ポストにも影響しない。」 との見方。
02月07日(木)民主党政権下(2008~2011年)で規定改変によって警察署・警察寮の建設工事が民間企業1社に発注されたことなどに関連し不正疑惑が浮上している問題で、ステープ民主党議員は、「法務省特別捜査局(DSI)が同議員やアピシット民主党党首に濡れ衣を着せようとしている。」として、タリットDSI局長を名誉毀損で告訴する手続き。
DSIによれば、「警察署などの建設は、国内に9つある地域警察本部がそれぞれ業者を選定するとされていたが、この規定が変更され、全国各所に警察署・警察寮を建設する計画が1社のみに発注されることになった。これを不満とする複数の業者が当時のアピシット首相、ステープ副首相(警察を管轄)に抗議書を提出したが、無視された。」という。しかし、ステープ議員は、「そのような話は一切聞いていない。」としており、アピシット党首も「抗議書とされるものは見たこともない。」と反論。
02月10日(日)タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)と反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)の幹部が先に、政治関連犯への恩赦適用に向けて関連2法案を下院に提出することで基本合意。
一部では「国民和解実現を目指す動きに民主党が参加できず、取り残される。」といった見方も出ているが、アピシット民主党党首は、「我々は恩赦自体に反対したことはなく、政治的に孤立することはない。」との考えを明らかに。恩赦の適用対象については、「タクシン派はタクシンを恩赦で免罪することを狙っている。」といった指摘もあり、民主党も慎重な姿勢を取っている。アピシット党首によれば、「政治集会に参加したが、過激な行動をせず、非常事態法のもとで逮捕された者に恩赦を適用するのは問題ない。」という。従って、「2法案のうち『政治集会に参加しなかった者への恩赦適用を検討する委員会の設置を求める法案』には賛成できない。」としている。
02月11日(月)タクシン派の反独裁民主主義同盟(UDD)と反タクシン派の民主主義市民連合(PAD)の幹部の間で先に政治関連犯への恩赦適用に向けて2つの法案を下院に提出することが合意されたが、インラック政権に批判的な上院議員40人のグループが、「政治家などへの恩赦は認められない。」として、同法案の内容を精査する必要があると表明。
合意された恩赦適用の対象は、「デモに参加して非常事態法のもとで罪に問われた一般市民」と見られている。
だが、ソムチャイ上院議員によれば、「逮捕されたデモ参加者1000人以上がすでに法務省の基金を利用して保釈されており、現在も重い罪に問われて拘留されているのは30人程度にすぎない。拘留者を釈放するには、警察と検察に送検・起訴を見送るよう指示するだけで、恩赦を適用する必要はない。」
02月12日(火)支那の旧正月「春節」の02月10日に都内バンラック署の警察官2人が、仕立て屋の店主に現金を要求したことが、そこに居合わせた記者の告発で明らかになった。これに対して、チャルーム副首相は、「警察官が受け取ろうとしたのはお年玉。旧正月の慣習であり、賄賂ではない。」と警察官を擁護。
チャルーム副首相自身も警察官時代にお年玉を受け取っていたことを認めている。ただ、チャルーム副首相は、「警察官がお年玉を要求した相手がインド系タイ人だったことは不適切だった」と認めている。
今回のケースは、警察官がその職権を乱用して金銭を要求したものであり、非難は免れない。
関係筋は、「警察官が交通違反で切符を切らずに小遣い銭を要求するのも警察内部では黙認されているようだ。たかりを放置しておいては、警察の腐敗体質を改めることはできない。」と批判的な見方。
02月13日(水)タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)のクワンチャイ東北部ウドンタニー県支部長は、「ティーダUDD議長が東北部支部を軽視している。」と批判。ティーダ議長が決めたUDDの集会などに東北部の支部長20人は参加しない意向を表明。
クワンチャイ支部長によれば、「先に東北部ナコーンラチャーシーマ県パクチョン郡で大規模な集会が開催されたが、ティーダ議長は東北部の支部長たちが壇上に上がって自己紹介するのを許可しなかった。」また、クワンチャイ支部長は、「ティーダはメンバーから支持されて議長に選ばれたのではない。彼女の狙いは、有名になること、ドバイのボス(タクシン)から重要な役職を与えてもらうことだ。」と批判。
東北部はタクシン派の政治基盤の1つであり、農民に支持者が多いことで知られている。このため、東北部支部が本部の方針に従わないとなると、UDDの活動にも少なからず影響が出ると予想される。
02月14日(木)オンブズマン室は、タクシンへの旅券再発給決定の見直しを求める文書を、インラック首相に提出したことを明らかに。
タクシンは、在任中の汚職(職権乱用)で禁固2年の有罪が確定しているが、帰国して刑に服すのを拒み、国外逃亡を続けている。
オンブズマン室によれば、再発給の再検討を外務省に要請したが、外務省が応じないことから、首相に要請することにした。
旅券再発給の決定は、「外国におけるタクシンの存在はタイにとってマイナスにならない。」というスラポン外相の判断に基づいたものだが、オンブズマン室は、「この件については外相に決定権はない。」と指摘。
02月15日(金)国外逃亡中のタクシンが、「プライベートジェットで北部チエンライ県に入った。」との噂が一部で出ている。
実妹のインラック首相は、「事実無根」と、チャルーム副首相も、「先日、ドバイにいるタクシンと電話で話したばかり。」と、極秘に入国したとの見方を否定。
タクシンは、首相在任中の汚職(職権乱用)で2008年に最高裁から有罪判決を受けて禁固2年の刑が確定。だが、判決を「不当」として帰国して刑に服すことを拒んでいる。タイに入国すれば、タクシンは直ちに逮捕・収監されることになる。
02月17日(日)スラポン外相の判断で2011年にタクシンに旅券が再発給されたことに対し、オンブズマン室が先にインラック首相に見直しを要求したが、最大野党の民主党も、再発給は問題だとして、首相に直ちに対処するよう求めた。
オンブズマン室によると、「無効とされたタイ旅券を再発給するとの判断は、外相の権限を越えたもので認められない。」という。
国外逃亡中のタクシンは、禁固2年の有罪が確定した犯罪人であることから、民主党の広報担当チャワノン議員は、「政府の仕事は、タクシンを逮捕すること。タクシンの旅行の便宜を図ることではない。」と指摘。
02月21日(木)民主党のワチャラ議員が、「チャルーム副首相の娘と称する女性が国会議事堂にやってきた。」と述べたことに対し、チャルーム副首相はすぐに「私の娘であることは7億%あり得ない。」と述べて、隠し子の存在を全面的に否定。チャルーム副首相には子供が3人いるが、全員男で、娘はいないとのこと。殺人鬼の兇惡3兄弟が居る。チャルームの息子でなければ、あるいは無法国家、タイでなければ、全員死刑になっている。
ワチャラ議員によれば、国会にチャルーム副首相を訪ねてきた少女は15歳で、生後3ケ月の赤ん坊を抱いていた。
国会の職員に面会を断られた少女がバス停にいるところを民主党関係者が見つけ、話しかけたところ、電話番号が書かれたメモと写真を副首相に渡すよう頼まれた。なお、報道関係者がその番号に掛けたものの、電源が切られていて繋がらなかった。写真も、少女を撮影したものではなく、化粧品のコマーシャルに出ているタイとパキスタンのハーフの女性モデルであることが判明した。
02月28日(木)民主党のワチャラ議員は、「ソムサック下院議長(国会議長)が支那国籍の男性を名誉顧問に起用したのは問題。」と指摘し、ソムサック議長に釈明を要求。
ワチャラ議員によれば、「顧問には国から給与が支払われているほか、実在しない『支那課』というゴム印を顧問が使用しているのは法律に違反する。」
だが、ソムサック議長は、「名誉顧問が外国人でも違反ではない。給与は支払われていない。」と説明。ゴム印に関しては、「事実関係を把握していない。」としている。
2期目を目指しているスクムパンクルングテープ都知事(60)は、クルングテープ都内の民主党本部で開かれた集会で、クルングテープへの愛着や、2010年のクルングテープ都心部の暴動の思い出などを涙声で語った。スクムパンは政権与党プア・タイ党が擁立したポンサパット前麻薬取締委員会事務局長兼警察副長官(57)に支持率で水を開けられており、4年間の実績への自負と低い評価のギャップに思わず泣いてしまった。
都知事選は03月03日投票で、各種世論調査では、ポンサパットが40%台後半の支持を集め、スクムパンに10%以上の差をつけている。
クルングテープ都知事は任期4年、月給は11万3560B。知事が公選制なのはクルングテープだけで、残る76県の知事は内務省から派遣される官僚。
03月03日(日)クルングテープ都知事選挙は03月03日に投開票が行われ、最大野党の民主党所属のスクムパン前都知事(60)が125.6万票を獲得し当選。政権党プア・タイ党のポンサパット候補への得票数も107.8万票を突破したが、スクムパン候補には及ばず、2004年、2009年に続いて民主党の勝利となった。投票率は64%。
タクシン派は都知事選に勝利することで、クルングテープ都民の支持を取り戻したとアピールし、国外逃亡中のタクシン(63)への恩赦、帰国の道筋をつけたいところだったが、クルングテープの中間層に根強い反タクシン感情を克服できなかった。一方、民主党は地盤のクルングテープを守りきり、アピシット党首(前党首)ら現執行部はひとまず安泰となった形。
02月中旬に実施された世論調査では、タイ国立ラチャパット大学スワンドゥシット校と私立アサンプション大学(ABAC)の調査で、ポンサパットが40%台後半の支持を集め、スクムパンに10%以上の差をつけていた。ただ、タイ国立開発行政研究院(NIDA)の調査ではポンサパット27%、スクムパン26%、決めていない37%と、接戦という結果が出ていた。投票日の出口調査も当初はポンサパット優勢と報じていた。政界観測筋は、「タクシン派のプア・タイ党が国政を握っていることから、『都政は民主党に任せたい。』という意識が働いたのだろう。」と指摘。
なお、両候補のほか、20数人に及ぶ無所属候補が出馬したが、得票数は最高でも17万票あまりにすぎず、都民の支持をほとんど得ることができなかった。
03月04日(月)03月03日のクルングテープ都知事選は、反タクシン派の最大野党所属のスクムパン前都知事が125万6349票(47.75%)の最多票を獲得して都知事の椅子を維持することができた。タクシン派のプア・タイ党公認のポンサパットも107万7899票で、2004年、2008年、2009年に続き、民主党の4連勝。前回2009年の都知事選の得票数と比べると、民主党がわずか2%増に留ったのに対し、タクシン派のプア・タイ党は10%も伸ばしており、民主党は今回の勝利を手放しでは喜べない状況。
アピシット民主党党首は、「選挙結果は、民主党には(クルングテープで支持を維持拡大するために)やらなければならないことが多々あることを示している。」と述べた。
03月03日投開票の都知事選で、各種世論調査で劣勢とされた野党民主党公認のスクムパン前都知事(60)が再選を果たしたことについて、世論調査を実施した私立アサンプション大学(ABAC)は、「サンプル数が少なすぎた。」、「最後になって投票先を変えた人がいた。」などと弁明。実際の得票数はスクムパン125.6万票、タクシン派の与党プア・タイ党が擁立したポンサパット前麻薬取締委員会事務局長兼警察副長官(57)107.8万票だった。投票率は64%。
ABACによる最新の支持率調査は02月28日~03月02日に実施され、クルングテープの有権者5713人が回答。結果はスクムパン支持34.1%、ポンサパット支持45.9%だった。
一方、投票日の出口調査で得票率をスクムパン41%、ポンサパット44%とした私立バンコク大学は、「投票日に雨が降り、調査が徹底できなかった。」としている。
世論調査を実施した主な機関がすべてポンサパットの勝利を予測していたことについて、タイのメディア関係者は「世論調査を行ったスタッフの一部は赤い服(タクシン派のシンボルカラー)を着ていた。あれでは正確な調査はできない。」と述べた。
03月05日(火)2010年05月に放火で炎上したクルングテープ都心のショッピングセンター、セントラルワールドが損害保険会社テウェート・インシュアランスに保険金の支払いを求めた裁判で、1審のタイ民事裁判所は今月01日と05日、2件、計56.9億Bに2011年から年7.5%の金利を足した額の支払いをテウェートに命じる判決を下した。テウェートは控訴する方針。
セントラルワールドは2010年04月から05月にかけ、タクシン支持派のデモ隊に占拠され、治安当局がデモを武力鎮圧した際に放火され、一部が焼け落ちた。セントラルワールドの運営会社は火災として保険金を請求しているが、テウェートは火事の原因がはっきりしないとして拒否している。
03月07日(木)政権党プア・タイ党の実動部隊、反独裁民主主義同盟(UDD)の幹部、ウォラチャイ議員は2006~2011年に反政府デモなどで罪に問われた人々に恩赦を適用するとの法案をソムサック下院議長(国会議長)に提出。
タクシン派は以前から政治関連犯を恩赦で無罪放免することで、政治対立の解消と国民和解を実現する必要性を唱えている。これまでに7つの恩赦案が下院に提出されているが、UDDとつながりのある国会議員42人が今回の案を支持している。
最大野党の民主党など反タクシン派から「国外逃亡中のタクシンの免罪と帰国、政界復帰が狙い。」といった批判が出ているが、ウォラチャイ議員は、「我々の案は、タクシンの免罪を求めるものではなく、政治対立の中でいわれなき罪に問われた人々を救済しようとしたもの。民主党はこれに反対すべきではない。」と反論。
一方、反タクシン組織,民主主義市民連合(PAD)の広報担当、ポンテープは、「恩赦の対象を主にUDD関係者に限定したものであり、法案は憲法に違反する。」と反対する姿勢を見せている。
東北部スリン県の国境地帯で03月05日にタイ軍の警備隊員3人が、カンボジア軍が埋設したとみられる地雷を踏んで負傷。1人は片足切断の重傷。タイ陸軍第2管区のチェラサク司令官は、カンボジアに抗議書を提出したことを明らかに。
タイ・カンボジア両国は対人地雷禁止条約(オタワ条約)を批准しているが、警備隊員が負傷した地雷がカンボジアで使用されてきたタイプで、カンボジア軍が最近になって埋設したものであり、タイ軍は条約違反と指摘。これに対しカンボジア政府は「根拠のない言いがかりだ。」とタイ軍に反論。
03月10日(日)タクシン支持グループ「レッド・サンデー」のリーダー、ソムバットによると、「03月03日のクルングテープ都知事選で、反タクシン派の民主党のスクムパン候補が最多票を獲得したのは、タクシンやタクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)が都政を牛耳るのを嫌った都民が、スクムパン候補支持に回ったことが大きな要因であり、民主党支持者が増加したわけではない。クルングテープはもともと反タクシン派が多くほか、2010年のUDDによる大規模反政府デモで、少なからぬ都民は迷惑を被った。民主党は、反タクシン票、反UDD票を集めることに成功した。」と分析。
また、関係筋は「タクシン派の一部からは、タクシン派の政権党プア・タイ党が不敬罪で有罪となった者も政治関連犯恩赦の適用対象に含めようとしていることや、プア・タイ党の求める憲法改正に不満の声も出ている。これもポンサパット、プア・タイ党候補が当選を逃した要因の1つ。」と述べた。
最大野党の民主党のスクムパン候補が最多票を獲得した先のクルングテープ都知事選で、政権党プア・タイ党のプロムポン広報担当は、「選挙運動中のスクムパン候補と民主党幹部9人の発言が公職選挙法に抵触する。」と述べた。

← タクシン支持派が開催したマラソン大会。反タクシン派との確執激化が危惧されている

プロムポン広報担当は、発言内容を文書化したものを証拠として中央選挙管理委員会に提出する考えを明らかにしている。「民主党幹部らは、スクムパン候補の演説会で、プア・タイ党から出馬したポンサパット候補を批判するスピーチを行ったが、プロムポン議員によれば、その内容は事実無根であり、中傷に他ならないという。また、幹部9人のうちアピシット党首、チュアン元党首、ステープ議員、コーン副党首ら7人の公職選挙法違反は明白。」とのこと。
これに対し、民主党の選挙対策本部長、オンアート議員は、「我々は法に反しないよう注意を払ってきた。選挙期間中に示した情報は事実のみ。」と反論。


41章  タクシンの指令 タクシンのために恩赦法を作れ
03月11日(月)プア・タイ党関係筋によれば、恩赦法制定のため設置した作業部会に対し、国外逃亡中のタクシンがインターネット電話サービス「スカイプ」を通じて、プア・タイ党がタクシン支持団体反独裁民主主義同盟(UDD)から今後も支持を得られるよう、恩赦法の制定に向けて努力し続けるよう指示。
恩赦法制定を巡ってはUDDから強い不満の声も上がっており、タクシンは、「このままではUDDがプア・タイ党から離れてしまう。」と懸念し、今回の指示となったようだ。政治関連犯を無罪放免にするという恩赦法の制定は、プア・タイ党が「政治対立の解消と国民和解の実現につながる。」として、以前から提案しているもの。
だが、反タクシン勢力は、「タクシンや2010年の大規模反政府デモで罪に問われたUDD関係者といった身内の免罪が狙い。」などと批判し、恩赦法制定に否定的な姿勢を取っている。
このため、プア・タイ党は、軍部や「守旧派」に譲歩することを余儀なくされたが、これがUDDの反発を買う結果を招いた。
なお、赤服軍団として知られるUDDは、全国各地で政治活動を展開し、タクシン派の勢力の維持・拡大に大きく貢献してきたが、タクシン派プア・タイ党は、政権党であるが故の制約もあって、UDDの要求にすべて応えるには至っておらず、両者間に亀裂が生じつつあるとされる。
チャルーン下院副議長の呼びかけで、恩赦法案に関する第1回目の協議が開催されたが、反対派が「協議の意図が不明確」などと否定的な姿勢を示していたことから、副議長が参加を呼びかけた11の組織・団体のうち協議に出席したのは5つに過ぎなかった。
協議は約2時間に及んだ。チャルーン副議長は、「次回の協議には出席してもらうべく反対派を説得したい。」と述べた。
今回の協議に出席したのは、政権党プア・タイ党、反独裁民主主義同盟(UDD)、軍部、ラーチャプラソン交差点の商店主、与党のプームチャイ・タイ党のマッチマー派閥の代表。欠席したのは、最大野党の民主党、民主主義市民連合(PAD)、ピタック・サイアム、マルチカラーグループ、真実和解委員会(すでに解散)、反政府デモなどで影響を受けた政府職員の代表となっている。
なお、民主党は、「恩赦自体には反対しない。」としているが、恩赦が政治的に利用されるのを懸念しており、タクシン派提案の恩赦法案には当初から懐疑的な姿勢を取っている。
プア・タイ党の広報担当プロムポン議員はこのほど、先のクルングテープ都知事選で「ポンサパット、プア・タイ党候補を中傷した。」として、最大野党の民主党の幹部ら4人を選挙管理委員会に訴えたことを明らかに。
都知事選では、スクムパン民主党候補が最多票を獲得したが、プロムポン議員によれば、「これら幹部の応援演説は、事実に基づかない言いがかりであり、公職選挙法で禁止されている中傷に該当する。スクムパン候補も幹部らの演説を賞賛しており、中傷罪の可能性がある。」という。
03月12日(火)国外逃亡中のタクシンが、プア・タイ党の作業部会に対し、「恩赦法制定に努力せよ。」と指示したとの報道に、プラユット陸軍司令官とアピシット民主党党首が、不快感を露わにした。
禁固2年の有罪が確定した犯罪人であるタクシンが、プア・タイ党の大ボスであることは周知の事実であり、「インラック政権はタクシンの意に沿って重要事項を決定している。」との見方が支配的で、「政府はタクシンの方ばかり向いている。」との指摘が出ている。
プラユット司令官は、「我々は国民の意見に耳を傾けなければならない。外国にいる者は放っておけ。」と批判的。
アピシット党首も、「政府が本当に国民和解を望むなら、自分たちの利益のこと(タクシンの免罪、帰国、政界復帰によるタクシン派のさらなる勢力拡大など)を考えるべきではない。タクシンが陰で糸を引いているようでは、いつになっても争いはなくならない。」と警告。
03月03日のクルングテープ都知事選で、最多票を獲得したスクムパン前都知事(民主党)に選挙違反の疑いが浮上し、当選認定が保留となっている。
クルングテープ選管は、「選挙期間中にシリチョーク民主党議員など2人が、プア・タイ党を中傷した。」とのルアンカイ元上院議員らの訴えをもとにまとめた、調査報告書を14日にも、中央選管に提出することを明らかに。同時に、「スクムパン候補が当選無効となる恐れがある。」との見方を示した。
「2010年の大規模反政府デモでプア・タイ党の実動部隊、反独裁民主主義同盟(UDD)のメンバーらが、ショッピングセンターなどに放火したことについて、写真やコメントをネット上に掲載したプア・タイ党の責任を追及したもので、公職選挙法で禁止されている中傷に当たる可能性がある。」という。
クルングテープ選管は、「スクムパン候補は中傷に直接関与していない。」として、「レッドカード(当選無効、再出馬禁止)には該当しないが、イエローカード(当選無効、再出馬可能)の対象となるかは微妙。」としている。
中央選管は04月02日までにスクムパン候補の当選を認定するか否かを決定。当選を無効とし再選挙を実施することになった場合、費用はシリチョーク議員ら2人が負担することになる。なお、先の都知事選には1億7600万Bが費やされた。
03月13日(水)先のクルングテープ都知事選で民主党のシリチョーク議員らに選挙違反があったとされ、スクムパン候補が当選無効となる可能性が浮上している。
シリチョーク議員はこのほど、「公職選挙法には違反していない。ポンサパット、プア・タイ党候補を個人的に攻撃しておらず、有権者に特定候補への投票を呼びかけてもいない。」と述べて、容疑を全面的に否認。シリチョーク議員は、2010年の商業施設放火の写真やコメントをネット上に掲載したことで、「プア・タイ党を中傷し、ポンサパット候補に投票しないよう呼びかけた。」などの容疑を掛けられている。シリチョーク議員は、写真を掲載したことは認めているものの、選挙違反には当たらないとしている。
03月14日(木)2008年にクルングテープのスワンナプーム空港とドンムアン空港が反タクシン派団体、民主主義市民連合(PAD )に占拠された事件で、検察は、実業家のソンティ・リムトングクン、チャムロン・シームアン元クルングテープ都知事・元副首相(退役陸軍少将)らPADの幹部、メンバー31人をテロ罪などで起訴。
PADは2008年に首相府、国会議事堂、国営テレビ局、2空港などを数千人で襲撃、占拠し、器物を破壊するなどしたが、ソンティら幹部は昨年12月、首相府占拠と国会議事堂包囲で器物損壊、不法侵入などで起訴されるまで、起訴を免れ、ほぼ全員が現在に至るまで逮捕、拘留を免れている。
先のクルングテープ都知事選で最多票を獲得したスクムパン前都知事について、「選挙違反があった。」とする訴えが複数寄せられているが、クルングテープ選挙管理委員会は、計5件の調査報告書を中央選挙委員会に提出。違反があったと判断されれば、再選挙が行われることになる。
今回の選挙は、タクシン派のプア・タイ党と、反タクシン派の民主党の一騎打ちとなり、当初の予想に反してスクムパン前都知事が再選した。
03月17日(日)インラック首相が虚偽の資産申告で退陣に追い込まれる懸念が浮上し、プア・タイ党は代わりに姉のヤオワパーを首相に据えるべく準備を進めているとの報道が飛び交っている。
一方、プア・タイ党の広報担当プロムポン議員は、「そのような事実はない。」と報道を全面否定し、「作り話で我が党と首相の評判を落とそうとしたもの。」と、民主党を批判。
報道によると、先の総選挙にチエンマイ3区から出馬し当選した、ヤオワパーの側近カセームの議員辞任は、タクシンの妹ヤオワパーを下院議員に当選させ、首相に選出するという党のシナリオに沿ったものという。
プロムポン議員は、「カセームの議員辞職は健康上の理由によるもの。」と説明すると同時に、「カセームは国政より地元のための政治活動に関心があり、チエンマイ県行政機構の副議長のポストを目指している。」と述べた。
ただ、プア・タイ党は補欠選挙にだれを出馬させるかを間もなく決める予定だが、ヤオワパーが立候補する可能性を否定しない。なお、タクシン創設のタイ・ラック・タイ党が2007年05月に解党処分で、役員だったヤオワパーも公民権が5年間停止となったが、現在は選挙に立候補することが可能となっている。
資産隠しの疑いで国家汚職制圧委員会(NACC)の捜査を受けているインラックが、首相失職となった場合、姉のヤオワパーを首相に据えるための準備が進んでいるとの見方が与党プア・タイ党内に広まっている。
ヤオワパーの側近であるチエンマイ県選出のカセームが03月13日、突然下院議員を辞任。補欠選挙で、「首相就任に備えてヤオワパーを出馬、当選させるというシナリオが出来上がっている。」との見方が支配的。
一方、ソムチャイ元首相の妻で、大派閥の領袖という大物政治家であるヤオワパーの起用について、「政治経験がなく、国民に人気のあるインラック首相の後任にはふさわしくない。」といった否定的な意見が少なくない。
NACCは「インラック首相が、資産を隠すため、夫(事実婚)が株式を保有する会社に3000万Bを融資した疑いがある。」と捜査中。有罪となれば、首相失職となる可能性がある。
タイ公共放送サービス(Thai PBS)が運営するテレビ局が、03月15日の政治番組を放送中止としたことについて、国家放送通信委員会(NBTC)のスピンヤ委員は、「いかなる理由によるものかを調査する必要がある。」との考えを明らかに。番組の内容は、立憲君主制に関する討論だが、テレビ局は、「社会に不和を生じさせる恐れがあったため、放送を自粛することにした。」と説明。
同様の「テレビ局による自主規制」では、ドラマシリーズ「ヌアメーク2」の放送中止が物議を醸したことがあるが、NBTCは18日、同番組について検討する予定であったことから、今回の政治討論番組のケースも一緒に検討する方針。
03月18日(月)政府が打ち出した官民連携(PPP)案に対し、上院議員や最大野党の民主党が「特定企業の優遇、予算の浪費、国家財政の悪化などにつながる恐れがある。」として反対する構え。
上院汚職防止・政府検証委員会のピブン委員長は、「今回の案は、政府が公共施設の建設や運営を議会の承認なしに民間部門に任せることを可能にするというもの。政府は2兆Bの借り入れで実施を予定しているインフラ整備計画でのPPPを想定しているのだろうが、これは憲法違反。同案を無効とすべく憲法裁判所に提訴する準備を進めている。」
提訴には全国会議員650人の10%、65人の支持が必要だが、これまでに上院議員20人あまりが賛同の意を明らかにしており、民主党もPPP案に反対する方針を表明。ピブン委員長によれば、民主党も過去にPPP案を打ち出したことがあるが、これは民間部門の出資率を49%以下に制限するというものだった。だが、今回の案は、民間部門による公共施設プロジェクトの100%保有を可能にするもので極めて問題。また、政府はPPPで2兆Bのインフラ整備計画を推進する意向とみられるが、PPPが違憲とされれば、同計画も頓挫する。
政権党プア・タイ党のカセームが議員辞職したことについて、中央選管のプラパン委員は、「補欠選挙は45日以内に実施しなければならないが、4月21日の日曜日が選挙日に最も適している。」との考えを明らかにした。正式な選挙日程は選管が近く発表する見通し。
また、カセームに対しては、「インラックが資産の不正申告で首相失職となった場合、インラックの姉ヤオワパーを首相に据えるために議員を辞職したものであり不当。カセームに補欠選の費用を払わせるべき。」との意見も出ているが、プラパン委員は、「議員を辞めることも権利として認められている。従って、費用の負担を求めることはできない。」と説明。
なお、プア・タイ党は、「インラック首相は何も悪いことはしていない。首相失職となることもなければ、ヤオワパーが首相就任に向けて下院議員になる必要もない。」と強調。「首相交代の準備が着々と進められている。」との見方を全面的に否定。
03月19日(火)プラユット陸軍司令官は、テレビ局「タイ公共放送サービス(Thai PBS)」が君主制に関する政治討論場組を放送したことに対し、不快感を示した。「番組の放送自体は憲法で保障された権利の範囲内。」と認めながらも、「いまだに政情が不安定な状況の中で、このような内容の番組を放送するのはいかがなものか。」と苦言を呈した。
同討論番組は、5回にわたって放送されることになっていたが、最終回の放送が突然中止となったため、国家放送通信委員会(NBTC)が「過剰な自主規制ではないか。」と問題視。これを受け、「社会的不和を煽りかねない。」と釈明していたPBSも、決定を見直し、最終回を18日に放送することになった。
不敬罪の是非を初めて公共の電波を通じて国民に問いかけるものだったが、プラユット司令官は、「君主を守る手段は刑法112条(不敬罪規定)しかなく、今は不敬罪関連法の改正などを論議する時ではない」としている。
プア・タイ党関係筋によると、プア・タイ党の幹部会議で、国外逃亡中のタクシンがインターネット電話サービス「スカイプ」を通じて、上院議員60人による憲法の部分改正案提出を支持する考えを明らかに。
プア・タイ党は以前から「国民和解実現のため」として憲法改正を提唱しているが、反タクシン派は、「タクシンの免罪が狙い」などと批判し、政府主導の改憲に否定的な立場をとり続けている。これまでに議会には8つの改憲案が提出されているが、ディレクなど上院議員60人が先に憲法の部分改正を求める3案を提出する意向を明らかにした。
タクシンは、「憲法の全面的な書き換えは憲法問題に発展する恐れがあり、部分改正のほうが現実的。」と、上院議員による3案提出を支持する考えを明らかにしたとのこと。
プア・タイ党の執行部は、チエンマイ3区の下院議員補欠選挙にインラック首相の姉ヤオワパーを擁立することを決めた。同党のカセームが突然議員を辞職したことから実施されることになったもので、04月21日に実施される見通し。
カセームの辞任については、国家汚職制圧委員会(NACC)が現在、インラック首相の資産不正申告容疑を捜査中であることから、「首相失職を想定して、ヤオワパーを首相の後釜に据えるための準備。」との見方が出ている。憲法の規定により首相は下院議員から選ばれる。
タイ政府は閣議で、線路の複線化、クルングテープと地方を結ぶ高速鉄道の建設、港湾整備といった交通インフラ整備のための資金2兆Bの調達法案を承認。タイ政府の年間予算に匹敵する額で、融資や国債により国内外で調達し、返済は50年にわたる見通し。野党民主党は「公的債務が膨張し、汚職の温床にもなる。」として、国会で反対する構え。
タイ政府は今回の計画で、ビルマなど近隣国との交通網整備、交通システムの近代化、物流コストの削減を図る。また、大規模な公共投資により、2013~2020年の国内総生産(GDP)を年1%押し上げ、50万人の雇用を生み出すとしている。民主党の批判に対しては、「世界的に金利が低く、資金調達しやすい状況の上、B高で物資の輸入コストも下がる。」として、計画の妥当性を主張。
03月20日(水)テレビ局、タイ公共放送サービス(Thai PBS)が先に放送した、君主制に関する討論番組に批判が出ている問題で、アドゥン警察庁長官は、「番組の情報を提供するよう関係当局に要請した。」と述べ、自ら番組の内容が法に抵触していないかを調査する考えを明らかに。
同番組については、「内容が不適切。」との声が上がっており、市民約100人が都内ウィパワディ・ランシット通にある同テレビ局前に集まって抗議し、責任者の辞任などを要求。
警察は情報を収集して、社会の対立をあおる意図がなかったかなどを詳しく調べることにしている。
03月21日(木)テレビ局「タイ公共放送サービス(Thai PBS)が先に君主の役割に関する討論番組を放送したことに一部で批判の声が上がっている問題で、警察がテレビ局の刑事責任を問うべく捜査に乗り出したことを受けて、同局が潔白を証明するため法律専門家からなる特別班の編成を決めたことが、21日までに明らかに。
タイ公共放送サービスの最高責任者ソムチャイは、「繰り返し番組をチェックしたが、君主を傷つけたり、安全保障を脅かしたりするような発言はなかった。出演者は言葉を選んで発言しており、偏った内容とはなっていない。」と述べている。
また、チャルーム副首相は、「番組の出演者の発言に違法な点があれば、罰せられることになろう。政府は憲法77条で王室を守ることを義務づけられている。」と述べて、警察による捜査は正当との考えを明らかに。
なお、警察は、「番組中の発言が違法となれば、(マスコミやネット上で)発言を引用した者も罪に問われる可能性がある。」と注意を促している。
プア・タイ党関係筋によれば、党執行部は、~先のクルングテープ都知事選で広報担当プロムポン議員の補佐役チラユの発言に問題があった。」として、チラユを補佐役から外すことを決定。
チラユは、各種世論調査で「プア・タイ党のポンサパット候補の勝利が確実。」との結果が出ていたこともあってか、「たとえ我が党が電柱を候補として擁立していたとしても当選するだろう。」と発言。これは、「物であろうと人であろうとプア・タイ党の推すものは全て都民の支持を受ける。」という自信の表れだったのだろうが、蓋を開けてみると、劣勢とされていたスクムパン民主党候補がポンサパット候補に20万票あまりの差をつけて当選を確実にした。党執行部は、「チラユの自信満々の発言で都民の間に反発、懸念が生じたことが敗因の1つ。と考えている。」
03月22日(金)インラック首相のパプア・ニューギニア訪問(24~25日)について、「タクシンが同国の石油・ガスに関心を示していることが背景にある。」とする見方が出ているが、ポンサク・エネルギー相は、「訪問はエネルギービジネスとは無関係。」と否定。
「タクシンは2006年09月の軍事クーデター後に同国を訪れたものの、その後は一度も訪問しておらず、首相一行の中にもエネルギービジネスに関わる者はいない。」と付け加えた。 タクシンは2009年10月16日にツイッター上で「今パプアニューギニアにいる。ここは、金、石油、ガスが豊富に埋蔵されている国。」とコメント。
民主党のシリチョーク議員は21日、自身のフェイスブック・ページで「タクシンは2006年にパプア・ニューギニアを訪れ、ビジネスについて話し合った。タクシンは同国の石油・ガスビジネスに関心があり、首相の同国訪問の理由の1つ。」との見解を示した。
「インラック首相の失職に備えて、姉のヤオワパーを首相に据えようとする動きがある。」との報道について、インラック首相は、訪問先のニュージーランドでタイ人記者の質問に対し、「憤慨しているが、気落ちしてはいない。」と、今後も首相の職務を遂行するのみとの考えを明らかに。
プア・タイ党は、「首相交代の準備」を全面的に否定しているが、インラック首相は、「私を交代させる計画があるというが、馬鹿にされた気分だ。まだ首相としてやらなければならないことが山積している。私に首相を続けさせてほしい。」と述べている。
ビルマからの報道によると、国外逃亡中のタクシンは21日、ビルマのダウェイ深海港を視察し、開発委員会のメンバーからプロジェクトの進捗状況などについて説明を受けた。
「タクシンはプライベートジェット機でヤンゴン入りしたあと、ダウェイの空港で委員会のメンバーらの出迎えを受けた。」という。地元紙は、「タクシンが22日、プロジェクトの関係当局者と会った」と報じている。
「プロジェクトに参画しているタイの大手ゼネコン、イタリアン・タイ・ディベロップメントの首脳は、否定も肯定もしていない。」という。
03月25日(月)国内外から総額2兆Bを借り入れて国内のインフラを抜本的に整備するという政府の計画について、民主党のアピシット党首は、「杜撰な計画」と指摘するとともに、28日と29日に予定されている下院審議で同党議員40人が質疑に立って政府の責任を追及する方針であることを明らかに。また、「審議では、政府が民主党政権(2008~2011年)の景気刺激策を取り上げて民主党批判を展開すると予想されるが、同党は、刺激策の正当性をアピールする準備もできている。」
国外逃亡中のタクシンがインターネット電話サービス「スカイプ」を通じて政権党プア・タイ党に憲法改正や、大型インフラ整備計画のための2兆B借り入れを指示していたとされることについて、パイブン上院議員はこのほど、「民主主義体制の転覆や国政の操作を禁じた憲法規定に違反する。」として、タクシンを憲法裁判所に訴える考えを明らかに。これには、他の上院議員も支持を表明する見通し。
タクシンは、首相在任中における妻(当時)の土地取得に絡む汚職(職権乱用)で禁固2年の有罪が確定しているが、判決を不当として帰国して刑に服すのを拒み続けている。また、タクシンがプア・タイ党の大ボスであることは周知の事実だが、プア・タイ党は「タクシンからアドバイスを受けている。」とは認めているものの、「内閣は自ら判断し、決定を下している。」として、「タクシンが国政を遠隔操作している。」との見方を否定している。
03月28日(木)刑事裁判所は、タイ王室に批判的なオーストラリアのテレビ局制作のドキュメンタリー番組を収めたVCDを販売目的で所持していたとして、エカチャイ(37)に禁錮3年4ケ月、罰金6万6000Bの有罪判決。
問題の番組はオーストラリア放送協会(ABC)が制作し、2010年04月に放送。当時、タイ政府は「番組の内容が不適切。」としてオーストラリア政府に抗議し、ABCは「タイ支局のスタッフが不敬罪で投獄される恐れがある。」と見て、放送前後に同支局を一時閉鎖。エカチャイは2011年03月10日、客を装った警察官にVCDを売ったところを逮捕されたもので、警察は被告が所持していた合計70枚のVCDを押収。
エカチャイの弁護士は、「不敬罪を規定した刑法112条は、違反者に過剰な刑罰を科し、また、憲法で保障された表現の自由を侵すものである。」として、憲法裁に上告する意向を明らかにしている。
不敬罪はタイ国王夫妻と王位継承者への批判を禁じたもので、違反した場合、1件につき最長15年の懲役が科される。人権保護団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW、本部ニューヨーク)によると、1990年から2005年にかけ、不敬罪の裁判は年4、5件程度だったが、反王室のイメージがあるタクシン派と特権階級を中心とする反タクシン派の政治抗争が激化した2006年以降は累計で400件以上に上る。今年01月にも、タクシン派雑誌の元編集者のソムヨット・プルクサーカセームスク(51)が「掲載した記事が王室を中傷した。」として不敬罪で懲役10年の実刑判決を受けた。
不敬罪については、タイ国内の一部学識者やタクシン派市民団体に加え、米国、欧州連合(EU)、国連などが人権弾圧だとして批判的な見解を示している。ただ、タイ軍幹部や反タクシン派野党、王党派団体は「改正を論じること自体が不敬。」といった論調で、同法の改正・廃止に強く反対。タクシン派与党は反発を恐れて改正に及び腰で、国会で議論が深まる気配はない。
こうした中、今年03月に放送されたタイ公共放送局のテレビ番組で、社会評論家のスラックは、「不敬罪を改正すべき。」と公然と主張し、大きな反響を呼んだ。この番組は局幹部の判断でいったんお蔵入りとなった後、一転して放送されたという曰く付きで、放送後、軍の事実上のトップであるプラユット陸軍司令官は「不敬罪が嫌なら別に国に行けばいいだろう。」とスラックらの発言に不快感を示した。
国内外から2兆Bを借り入れてインフラを整備するという政府の大型計画に関する2日間の下院審議が開始。
野党側は、「借り入れは不要。」などと批判し、政府の責任を追及する構えを見せた。最大野党の民主党のアピシット党首によれば、「インフラ整備に必要な資金は巨額の借り入れをせずとも予算のやりくりで捻出できるはず。」、また、「計画では輸送インフラの改善を具体的にどのように進めるかが示されておらず、透明性にも問題がある。」、さらに、「政府は初めてのマイカー購入支援や米買い上げ計画といった大衆迎合策に予算を大量投入しているが、このようなばらまきをやめれば、いくつかのインフラ・プロジェクトの予算を確保できる。」また、「借り入れは利息を含めると返済額が5兆Bあまりにのぼる可能性があり、我々が生きている間に返済できず、次の世代に負担を強いることになる。」としている。
このような批判に対し、インラック首相は、「過去10年間インフラ整備が放置されてきたことでタイの競争力は低下することになった。」と指摘し、「予算のやりくりでは、(時間がかかるため)政権交代でインフラ整備が遅れる恐れがある。」などとして、巨額の借り入れで大型計画をスタートさせることの必要性を強調。
04月01日(月)議会では、政府の支持する改憲3案を審議するため、3日間の上下両院合同会議が開始。 だが、改憲案支持を表明しているニコム上院議長(国会副議長)に同会議の議長を任せることに民主党が「議長は中立の立場であるべき。」と猛反発して審議を拒否、抗議は4時間に及んだ。
ソムチャイ下院議長(国会議長)が合同会議の議長を務めることになったが、しばらくしてニコム議長が議長席に戻ったことから、再び民主党が猛抗議し、審議は中断されることになった。
民主党は、「ニコム議長が合同会議の議長を務めることは憲法違反。」と批判しているが、ニコム議長は「合法。」と主張。
民主党は「ニコム議長が交代を拒むなら2日目の審議も拒否する。」としている。
エイプリルフールの04月01日、「国外逃亡中のタクシンが交通事故で死亡した。」との噂がネット上に流されたことから、タクシンは「そのような事故は起きていない。」と4ケ月ぶりにツイッターに書き込み死亡説を否定。タクシンは「私を嫌うものが流した悪意ある虚偽情報。」としている。
ほか、「最南部で暗躍する武装勢力の首脳が車を買うために、現金5000万Bを持参してモーターショーに現れたところを逮捕された。」との噂もあったが、エイプリルフールの偽情報だった。
04月02日(火)政府支持の改憲3案を審議するため04月01日に開始された上下両院合同会議が議長選びを巡って紛糾し、審議ができない状態が続く中、政府主導の改憲に反対するソムチャイ上院議員が、これら3案で求められている憲法改正の差し止めを憲法裁判所に請求。
ソムチャイ議員によれば、「合同会議で審議される予定の憲法68条の改正は、昨年07月13日に憲法裁が示した、憲法の全面書き換えを可能にするための291条改正案に関連する判断に抵触する。」このため、ソムチャイ議員は、68条および237条の改正に関する審議の中止を請求。さらに、改憲を支持する議員の所属する、プア・タイ党を含む5党の解党を憲法裁に要求。
ソムチャイ議員の請求は現在、要件を満たしているのかチェックが行われており、憲法裁が受理するか否かは03日中に明らかになる見通し。
04月03日(水)国家汚職制圧委員会(NACC)関係筋によれば、NACCの資産問題担当部門はインラック首相の資産隠し疑惑に関する調査を終えており、04月04日にも報告書がNACC上層部に提出される見通し。 上層部が疑いが濃厚と判断すれば、さらに詳しい調査や首相からの聞き取りのために小委員会が設置される。首相の釈明などが疑いを晴らすに不十分となれば、首相は資産隠し容疑で起訴されることになる。
この疑惑は、インラック首相が夫(事実婚)の関連会社に3000万Bを融資したことが資産申告に記載されていなかったことによるもので、「資産隠しのため不正申告を行った。」との疑いが浮上している。
憲法裁判所は、改憲3案の審議中止を求めるソムチャイ上院議員の請求を受理したものの、「緊急性がない。」として、審議差し止めを命令するには至らなかった。
憲法改正案は与党下院議員と与党系上院議員が03月20日に国会に提出し、04月01日に審議が始まった。骨子は、政党役員が選挙違反で有罪となった場合に所属政党を解党し、党役員全員の参政権を5年間停止する連座制の改正・緩和、外国政府、国際機関との協定に国会の事前承認を義務付けた条項の改正・緩和、上院を定数200の公選制に変更(現行は定数150で、77議席が全77都県から各1議席の公選制、残る73議席が任命制)、立憲君主制に反する企てに関する告発の受理、捜査を検察庁に一本化など。
改憲3案の第1読会を阻止することは失敗に終わったが、改憲を支持しているプア・タイ党の一部議員からは、「訴えを受理したこと自体が問題。」などと憲法裁を批判する声も出ている。
タイの現行憲法は2006年の軍事クーデターでタクシン政権(2001―2006年)を追放した反タクシン派が制定したもので、議員の約半数が任命制の上院、独立性の高い最高裁判所、憲法裁判所、選挙委員会などを通じ、反タクシン派が政治介入しやすい仕組みになっている。2011年の総選挙で発足したタクシン派インラック政権は昨年、反タクシン派の司法・政治への影響力排除を狙い、新憲法の起草に向け動いたが、憲法裁が新憲法の制定には国民投票が必要とする判断を下し、改憲の動きは一旦頓挫。タクシン派は今回、国会で条項ごとに憲法改正を図る作戦だが、反タクシン派の野党民主党や任命制上院議員らが強く反発している上、タクシン派に厳しい判決を出し続けている憲法裁が登場し、先行きは不透明。
04月04日(木)民主党は、先の「改憲3案の第1読会など、憲法改正に向けた議会審議に憲法違反の疑いがある。」として、憲法裁判所に判断を仰ぐ方針を明らかに。同案は04月03日に第1読会を通過しているが、民主党は、「定足数を満たしておらず、採決が無効だった可能性がある。」という。この他、「改憲案は上下両院の合同会議で審議されているが、民主党はこの点についても合憲か否かを憲法裁に確かめる必要がある。」
なお、民主党を含む反タクシン陣営は、政府主導の改憲に否定的な立場をとっており、反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)は、2兆Bを借り入れて、インフラを整備を行う政府の大型計画に反対する方針。
インラック首相の資産隠し疑惑を捜査していた国家汚職制圧委員会(NACC)は、「不正がなかった。」との見解を発表。
2006年10月~2007年03月にかけ、夫(事実婚)の関係会社に合計3000万Bを融資したが、資産申告の内容と合致しなかったことから資産隠しの疑いが浮上していた。
NACCは捜査の結果、「資産隠しはなかった。」と判断。NACCはタクシン派の現政権に批判的な委員が多いとされ、「調査の結果次第では首相の進退問題につながる可能性がある。」と見られていた。インラック首相はNACCの決定について、「すっきりした。今後も職務に邁進する。」と述べた。
04月10日(水)タクシン派市民団体、反独裁民主主義同盟(UDD)は、2010年のUDDデモ隊と治安当局の衝突による死者の追悼集会をクルングテープ都内の民主記念塔で開き、数千人が集まった。警官隊との衝突はなかった。
2010年の大規模反政府デモから今年4月でちょうど3年となることから、クルングテープで犠牲者を追悼する行事などが行われているが、プラユット陸軍司令官は、デモ中の兵士死傷例の調査が遅れていることに不満を表明し、法務省特別捜査局(DSI)に対し、調査に本腰を入れるよう求めた。
タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)によるこの過激な反政府デモで、デモ参加者、一般市民、治安要員など計92人が死亡している。だが、UDDが「自分たちは犠牲者。治安部隊は悪者。」と主張していることもあり、死傷した兵士に対する市民の関心は薄いといえる。
このため、プラユット司令官は、「反政府デモでUDDに死者が出たが、それは軍も同じこと。兵士とその家族も公正に扱われるべき。」と述べている。
04月11日(木)憲法裁判所は、「民主党議員に憲法違反があったため民主党を解党処分とすべき。」とのルアンカイ元上院議員の請求を、判事5人全員の賛成をもって却下することを決定。
ルアンカイは、「改憲案の精査委員会の委員を務める民主党議員11人が憲法を守るという国民の権利を制限しようといる。これは憲法違反であり、民主党は解党処分を受けるべき。」と訴えた。だが、憲法裁は、「憲法違反を裏付ける証拠はない。」と判断。また、ルアンカイは議員11人を委員会から外すことも求めていたが、憲法裁は「審理に値しない。」としてこの請求も却下。
スカムポン国防相、プラユット陸軍司令官、アドゥン警察長官らタイ軍、警察の幹部がタイ正月の祝賀の挨拶のため、バンコク都内のプレム枢密院議長宅を訪れた。プレム議長は軍、警察の国家に対する献身に謝意を示し、国民に軍、警察への支援を求めた。
プレム議長はプミポン国王(85)の側近。年末年始や議長の誕生日には、軍、警察の幹部が祝賀のため議長宅を訪れる。一方、タクシン支持派の一部はプレム議長がタクシン政権を追放した2006年の軍事クーデターの黒幕として、プレムを批判している。
04月13日(土)国外逃亡中のタクシンが、 タイ正月「ソンクラン」のメッセージとして、フェイスブックに目上の人々に対する謝罪の言葉を書き込んだ。タクシンは、「目上の人々」が誰を指すかには言及していないが、「タイ北部で育った仏教徒である私としては、謝罪、容赦という伝統がソンクランの一部と確信している。」と説明。
関係筋によれば、「タクシンも実妹のインラック首相も、反タクシン派として知られているプレム枢密院議長に歩み寄る姿勢を見せていることから、謝罪の言葉はプレム議長に向けられたものと考えられる。」
04月15日(月)「2.2兆Bの大型インフラ整備計画と改憲3案が第1読会を通過したことから、プア・タイ党のウォラチャイ議員が提出した恩赦法案の第1読会も近く行われる。」と報じられている。ウォラチャイ議員はこのほど、「タクシンも実妹のインラック首相も恩赦を支持している。」とと発言。「今国会(04月20日閉幕)会期中の第1読会通過を実現したい。」との考えを明らかに。
恩赦法案に対しては、民主党など反タクシン派が否定的な姿勢を明らかにしていることから、第1読会を行うとなればかなりの抵抗が予想される。ウォラチャイ議員は、「17日にプア・タイ党議員に対し恩赦の必要性を説明する。多くの議員の賛同を得られるだろう。18日に第1読会を開始し、19日も審議を行えば、読会通過は可能。」としている。
このプランが失敗に終わったら、ウォラチャイ議員は、「ソムサック上院議長と与党院内総務(与党議員のまとめ役)に対し、来年度予算案審議のため、05月に開かれる臨時国会で恩赦法案の第1読会を行うよう求める。」とのこと。
また、これまでにウォラチャイ議員とニヨム、プア・タイ党議員がそれぞれ恩赦法案を下院に提出しているが、その骨子は、「国民和解の実現のため政治関連犯を釈放する。」というもの。これに対し、民主党は、 「タクシンの免罪などが狙い。」と指摘し、「国民和解は口実に過ぎない。」と反対の姿勢を明らかにしている。
タイ・カンボジア間の領土紛争に関する国際司法裁判所(ICJ)の審理が04月15日開始。
ここでカンボジアのホー・ナムホン外相が「国境地帯に位置する世界遺産カオプラウィハーン(プレアビヒア)周辺でタイがカンボジアに繰り返し攻撃を行った。」などと指摘。「問題がこじれた原因はタイにある。」などとする批判を展開。このほか、ホー・ナムホン外相は、「民主党政権下(2008~2011年) における攻撃で住民が死傷したほか、カオプラウィハーン(プレアビヒア)にも被害が及んだ。」と非難。
関係筋によれば、インラック政権などタクシン派とカンボジア政権は親密な関係にあることから、反タクシン派はタクシン派が国益を度外視してカンボジアに譲歩することを懸念、カンボジアの要求通りにICJで領土紛争に決着をつけることに否定的。
また、ICJの審理では批判の応酬も予想されるが、これについては、「出来レースを見破られないための演出。」との見方も出ている。なお、タイの弁論は17日に行われる。
04月16日(火)15日に開始された、タイ・カンボジア間の領土紛争に関する国際司法裁判所(ICJ)の審理でカンボジアのホー・ナムホン外相がタイを批判したことに対し、外務省法務・情報局のクライラウィー局長は、「カンボジアの言い分は、タイを悪者にしようとした根拠のないもの。」などと反論。
カンボジアは、カンボジアの単独申請で5年前に世界遺産に登録されたタイ・カンボジア国境の寺院遺跡カオプラウィハーン(プレアビヒア)の周辺にタイが51年前に有刺鉄条網を張り巡らしたことを批判し、「タイは鉄条網設置にカンボジアが反対しなかったと主張している。」と非難。
だが、クライラウィー局長によれば、「鉄条網が設けられた後にカンボジアのシーハヌク国王(当時)がカオプラウィハーン(プレアビヒア)を訪れ、その際の式典に英国、フランス、米国の駐カンボジア大使が列席していた事実があり、これが、タイが一方的に鉄条網を設置したのではないことを物語っている。」
「プア・タイ党が今国会の会期中における恩赦法案の第1読会通過を図っている。」と報じられていることについて、民主党幹部のステープ議員はこのほど、「タクシンのために恩赦適用を求める動きは新たな社会的混乱を招きかねない。」と警告。
この恩赦は、「国民和解が目的。」と説明されているが、民主党など反タクシン陣営は、「タクシンの免罪、政界復帰が最大の狙い」と批判。 また、政府主導の憲法改正についても、反タクシン派は、「立憲君主制を廃止する企み」と警戒を強めている。
ステープ議員によれば、「タイではタクシン支持・不支持を巡る対立が激化し、社会が混乱に陥ったことがあるが、政府が恩赦と改憲をごり押しすれば、混乱が再び深刻化する恐れがある。」
04月17日(水)タイ・カンボジア間の領土紛争に関する国際司法裁判所(ICJ)の審理で、タイの法律専門家チームの代表、ウィラチャイ駐オランダ・タイ大使は、「寺院遺跡カオプラウィーハン(プレアビヒア)に関するICJの1962年の判断について解釈を求めた際にカンボジアが用いた地図は偽物。」と指摘し、カンボジアを批判。この地図では、カオプラウィーハン(プレアビヒア)はカンボジア領内とされているが、カンボジアが今回の審理を請求した際に添付した地図とは別物。」という。
タイの主張によると、カンボジアは1962年に、現在領有権が問題となっている国境未画定区域(4.6㎢)には言及しておらず、地図も添付していなかった。当時、カンボジアが領有権を主張したのは0.35㎢の区画のみ。また、カンボジアは2011年になって4.6㎢をカンボジア領と認めるよう地図を添付してICJに要求したもので、現在行われている審理では、異なる地図を持ち出してきた。
プア・タイ党は政治戦略委員会と党調整委員会の合同会議で、ウォラチャイ議員が下院に提出した恩赦法案を国会審議の最優先議題とすることで意見が一致。
プア・タイ党関係者からは、恩赦法案の第1読会通過を今国会(04月20日閉幕)の会期中に実現するという意見も出ていたが、第1読会を08月に行うことで合意。
ウォラチャイ案では、軍部がクーデターでタクシン政権を倒した2006年09月19日から2011年05月10日の期間中にタクシン支持・不支持を巡る政治対立などに関連して罪に問われた人々のほぼ全員を恩赦で釈放することが求められている。
なお、ウォラチャイ議員が提出した恩赦法案などについて、タクシン派は「国民和解のために不可欠。」としているが、反タクシン派は「タクシン派の利益を優先させたもの。」として反対の姿勢。
04月18日(木)タイ・カンボジア間の領土紛争に関する国際司法裁判所(ICJ)の審理における両国の主張について、インラック首相はこのほど、「タイの法律専門家チームが健闘していることから、カンボジアの言い分を論破できる。」との見通しを明らかに。また、首相は、「ICJ介入によって国境紛争に終止符が打たれることに期待を示すとともに、法廷闘争が2国間の友好関係に影響することがあってはならない。」と強調。
民主党のアピシット党首も、タイの法律専門家チームの努力を評価。タイ政府に引き続き同チームをバックアップするよう要請。
このほか、タナサック国軍最高司令官は、「タイの主張は理路整然としている。」と評価し、同チームに必要な情報を提供すべく担当者をオランダに派遣する考えを明らかに。
国会審議で、プア・タイ党のウォラチャイ議員が提出していた恩赦法案を次回の下院審議で最優先に取り上げることが、賛成283、反対56で決定。これで、恩赦法案は、来年度予算案の審議が終了し次第、審議される見通し。
また、恩赦について、ウォラチャイ議員は、「国内に平和が戻る。」としているものの、民主党は、否定的な姿勢を取っており、「対立が激化する。」と警告。
サティット同党議員によれば、恩赦法案は、悪事を働いた者の罪を帳消しにしようというのもので、反発が起きるのは必至。国内が再び混乱に陥る恐れがあるという。
反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)のデモ隊が2008年に当時のタクシン派政権の退陣などを求めてドンムアン、スワンナプーム両空港で座り込みを行い、これら空港が閉鎖に追い込まれた事件で、検察当局は、新たにPAD幹部ら10人をテロ罪などで起訴。これで、同事件の容疑者形114人のうち93人が起訴されたことになる。
今回起訴された10人はそれぞれ保証金60万Bを支払って保釈された。初公判は29日に予定されており、それまでに残りの21人も起訴される見通し。
04月20日(土)タイ・カンボジア間の領土紛争に関する国際司法裁判所(ICJ)の審理に対し、「八百長」との批判が一部で出ている。
これに対して、スラポン外相はテレビ番組の中で、「(審理に臨んでいる)タイの法律専門家チームは前政権(反タクシン派の民主党政権)が選んだメンバーと同じであり、審理におけるチームの主張の内容をみれば、(最善を尽くしていることが)わかるはず。」と反論。
また、同チームについては、「タイが敗訴した場合に備えて、批判を避けるためにあえて前政権のチームと同じメンバーにした。」との指摘もあるが、「国益と政治的駆け引きを混同するようなことはない。」と否定。
04月21日(日)民主党の広報担当チャワノン議員は、カンボジアとの領土紛争に関する国際司法裁判所(ICJ)の審理で、タイの法律専門家チームの努力を称賛。
同時に、カンボジアが両国の国境地帯にある世界遺産カオプラウィーハン(プレアビヒア)を管理する計画を世界遺産委員会(WHC)に受け入れさせようとしていると指摘、この動きを阻止しなければ、カオプラウィーハンに隣接する国境未画定区域(4.6㎢)がカンボジア領とされてしまう恐れがある。」と警告。
カンボジアは、首都プノンペンで06月16~27日に開催されるWHCの第37回会議で同計画を最優先に取り上げるよう根回ししているとされる。
チャワノン議員は、「計画をWHCに承認させることでICJに『カンボジアがカオプラウィーハン周辺エリアを実質的に掌握している。』と思い込ませることがカンボジアの狙い。」と指摘。
タクシン派与党プア・タイ党所属で北部チエンマイ県3区選出のカセーム下院議員が03月に議員辞職したことを受け実施された下院議員補欠選挙で、インラック首相の実妹、ヤオワパー・ウォンサワット元下院議員が6万7101票を獲得して当選。最大のライバル、キンカン民主党候補の得票は2万1372票。投票率は74.5%。チエンマイはタクシン派の牙城であることから、ヤオワパー(ソムチャイ・ウォンサワット元首相の妻)は勝利が確実視されていた。

*  ヤオワパー・ウォンサワット
ヤオワパーは1955年、チエンマイ生。チエンマイ大学卒業後、米ニューポート大学に留学し、帰国後、裁判官をしていたソムチャーイと結婚し、1男2女を設けた。建設会社経営などを経て、2001年の下院選に出馬し当選。タクシン政権(2001~2006年)でヤオワパーは、北部出身議員からなる大派閥の領袖で、タクシン創設のタイ・ラック・タイ党の副党首。タイ・ラック・タイ党が2007年05月に解党処分を受け、5年間の参政権停止処分を受け、昨年05月に解除された。カセームは派閥の領袖であるヤオパワーの国政復帰のため議員辞職。
国際司法裁判所(ICJ)の審理にタイの代表として臨んだウィラチャイ駐オランダ・タイ大使率いる法律専門家チームが帰国しスワンナプーム空港で待ち受けていた大勢の人々の歓迎を受けた。
ウィラチャイは報道陣に対し、「我々は最善を尽くした。カンボジアに情報が漏れなかったため、予定通りに主張を展開することができた。我々の次の任務は、カオプラウィーハン周辺の地図を用意すること。」と説明。
04月22日(月)タイ・カンボジア間の領土紛争に関する国際司法裁判所(ICJ)の審理で口頭弁論に臨んだタイの法律専門家チームによれば、カンボジアは国境未画定区域をカンボジア領とする2年前のICJへの訴えにおいて、偽の地図を証拠として提出したほか、翌年03月にも勝手に修正した地図をICJに提出。この事実から、ICJはタイに有利な裁定を下すことが期待されるという。 タイ外務省は今から1年半前、カンボジアが偽の地図を提出したことに気づき、これを攻撃材料に口頭弁論で反論を展開する準備を進めていたという。
インラック首相は、同チームを政府庁舎に招き、花束を贈って口頭弁論におけるチームの努力を労った。
タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)幹部のコーケウ、プア・タイ党議員が、保釈の延長が認められず、刑務所に逆戻り。
国会審議に出席するため保釈されていたコーケウ議員は、通常国会が20日に閉幕したことから、保釈の延長を申請していた。
だが、刑事裁判所は、コーケウ議員に保釈中の保釈条件違反があったことについて、内相、下院副議長、UDD議長から釈明があったものの、「議員本人に反省の姿勢がみられず、保釈は許可できない。」と判断し、申請を却下。
コーケウは、2010年のUDDによる大規模反政府デモに関連したテロ容疑などで逮捕、拘留されたが、翌2011年07月の総選挙にプア・タイ党から出馬して当選。その後、保釈が認められたが、これまでにも保釈条件違反で保釈が取り消されたことがある。
04月26日(金)憲法裁判所が憲法裁判所前で抗議活動をしたタクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)幹部4人を名誉棄損などで警察に訴えたことから、これら幹部が反発し、憲法裁判所の判事9人を拘束する構えを見せた。
UDDは、タクシン派インラック政権の支持する「改憲案の合憲性について憲法裁が検討する。」と決めたことに抗議し、同裁判所前で集会を決行して判事9人の辞任などを求めている。
訴えられた幹部の1人、ポンピシットは、「市民不服従」として裁判所の訴えの無視を明らかにし、また、UDDメンバー(赤服軍団)に対し、判事の身柄を拘束するよう呼びかけている。
04月27日(土)タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)のメンバー数百人が憲法裁判所前で同裁判所の判事の罷免などを求めて抗議集会を行ったことについて、プア・タイ党のアヌソン副党首は、「タクシンが関わっていたら、100~200人の抗議では済まない。数千人が裁判所に押しかけるだろう。」と述べて、抗議の背後にタクシンがいるとの見方を全面的に否定。
抗議は、タクシン派の現インラック政権が支持する改憲案への憲法裁の対応に反発したものだが、民主党は、「タクシンは以前から憲法裁を煙たがっている。」として、抗議へのタクシンの関与を疑っている。
だが、アヌソン副党首によれば、「憲法裁はタクシン派に不利な判決を何度となく下しており、多くの市民がその中立性を疑問視している。今回の抗議もそのような流れの中で起きたもの。」
一方、反タクシン派によれば、「タクシン派は独立機関のチェックによって好き勝手ができないため、独立機関の権限を弱めようとしているものの、憲法裁に関してはそれができずいら立ちを募らせている」とのことだ。
04月28日(日)改憲案の扱いを巡ってタクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)のメンバーらが憲法裁判所前で抗議集会を行ったことについて、民主党のオンアート議員は、「平和的な抗議は国民の権利の範囲内。」と擁護したインラック首相を、「UDDのメンバーらは憲法裁判事を拘束する構えを見せた。これは憲法違反に当たる。」と厳しく批判。
憲法裁は先に、現在議会で審議中の改憲案を違憲とする訴えがあったことから、賛成3、反対2でその合憲性を検討することを決めた。改憲 案はタクシン派の支持するものであることから、決定に反発したUDDのメンバーらが憲法裁前で抗議集会を決行。また、集会での発言を問題視した憲法裁が名誉棄損でUDD幹部4人を警察に訴え、これに腹を立てた幹部らは「(合憲性の検討に賛成した)判事3人を見かけたら捕らえろ。」と呼びかけた。
オンアート議員は、「判事の拘束が国民の権利であるはずがない。首相はUDD幹部らの言動を詳しくチェックすべき。」と要求。
04月29日(月)モンゴル訪問中のインラック首相は、首都ウランバートルで開催された「民主主義閣僚級会合」で演説し、「タイの現行憲法には民主主義を制限する仕組みが存在する。」として、「民主化を促進するためにはタクシン派が主張するように憲法を改正する必要がある。」との考えを強調。
現行憲法は、2006年09月の軍事クーデターでタクシン政権が倒されたあと、軍部が設置した反タクシン色の強い暫定政権下で翌2007年に制定。新憲法の内容は、旧憲法下で勢力を拡大したタクシン派の独断専行への批判が拡大し、国内を二分する政治的混乱を招いたとの反省に立ったものだったが、タクシン派はこれに反発し、これまでに何度となく改憲を画策。その都度、反タクシン派の強い抵抗に遭うという状況が続いている。タクシン派は、「国・国民のために改憲が必要。」と主張しているが、反タクシン派は、「タクシン派のさらなる勢力拡大だけが狙い。」と批判。
04月30日(火)モンゴルの首都ウランバートルで開催された国際会議での演説の中で、インラック首相がこれまでなく感情をあらわにして2006年09月の軍事クーデターを非難し、「2007年に軍事暫定政権下で制定された現行憲法に欠陥が存在する。」などと述べた。
モンゴルから戻ったインラック首相は、一部で批判が出ている問題で、「過去のクーデターを教訓として、民主主義に反する事件が再び起きてほしくなかっただけ。」と釈明、実兄であるタクシンの擁護が演説の目的との見方を否定。
インラック首相の演説によれば、「民主的に選ばれた首相をその座から追放するというクーデターによってタイの民主化は脱線させられることになった。」
だが、反タクシン陣営から「(クーデターで倒された)タクシン政権(2001~2006年)が(当時の)憲法の精神に反して、国政を思うままにせんがために権限を悪用して、政府の仕事ぶりをチェックする役目を担っていた独立機関を懐柔したのを忘れたのか。」といった厳しい批判が出ている。また、民主党のアピシット党首も、「タクシンの妹という立場と首相の立場を区別する必要がある。」として、「演説の内容は公私混同。」と批判。
プア・タイ党関係筋によれば、プア・タイ党の幹部会議で、国外逃亡中のタクシンがインターネット電話サービス「スカイプ」を通じて、「帰国を望んでいる。」と述べた。また、「帰国実現を目的にチャルーム副首相が打ち出した国民和解法案を全面的に支持する。」と明言。同案について、チャルーム副首相は、「タクシンを帰国させることが狙い。」と認めている。
また、タクシンは、「民主党(反タクシン派の最大野党)には『心配するな。』と伝えてほしい。タイに戻っても何もほしくない。役職もいらない。国政はこれまで通りインラック首相に任せる。」と述べた。
05月01日(水)憲法裁判所は、改憲案の賛成に署名をした国会議員の説明を求める期限を15日間延長したことを明らかに。
現在、議会で審議中の改憲案については、違憲との訴えがあったことから、憲法裁は、同案を支持する上下両院議員312人にその理由を説明する文書を04月26日までに提出するよう要請していた。これに対し、プア・タイ党は先に、改憲案が議会で審議中であることから、「要請は司法府による立法府への干渉」として要請を無視することを決定。
なお、憲法裁の説明によれば、「提出期限の延長は、上院議員から文書の作成・提出にはさらに時間が必要との要求があったことによるもので、プア・タイ党の決定に配慮した結果ではない。」
05月02日(木)インラック首相が先にモンゴルの首都ウランバートルで開催された国際会議で2006年の軍事クーデターを非難し、クーデターで首相の座を追われた実兄タクシンを擁護するような演説を行ったことに一部で批判が出ている問題で、上院議員58人が、「演説の内容が不適切だった。」として、首相に謝罪するよう要求。
この演説は、「現在の政治対立、国民不和は、全て軍事クーデターが原因。タクシン派には全く責任がない。」というこれまでのタクシン同派の主張に沿ったもの。 だが、反タクシン派は、「タクシン政権(2001~2006年)の汚職体質、権限乱用、独断専行への国民の厳しい批判が混乱につながり、これがクーデターを招いた。」として、タクシン派が「我々は被害者。」と訴えていることに反発。
また、民主党の広報担当チャワノン議員は、首相が演説の中で「クーデター後に設置された独立機関が国民の意に反して権限を乱用している。」と批判したのに対し、「タクシン政権こそ独立機関に干渉し、これによって不正が蔓延していた。」などと反論。
05月03日(金)インラック首相がモンゴル訪問中に国際会議で行った演説に対して反タクシン派などから批判。一方、インラック首相の弁護士は、ドゥシット署を訪れ、「インラック首相を侮辱するコメントをネット上に流した。」として、タイ字紙「タイラット」の風刺漫画家、ソムチャイを訴える手続きを取った。
ソムチャイは、自身のフェイスブックのページにインラック首相とモンゴルの大統領が一緒に写った写真を掲載し、「売春婦は毒婦ではないことを理解してほしい。売春婦は体を売るだけだが、毒婦は国を売る。」とコメントを付け加えた。
インラック首相の弁護士は、「インラック首相の名誉を傷つけるコメント。コンピューター犯罪法にも抵触する。」としている。
タイ当局と最南部の武装勢力「パタニ・マレー民族解放戦線(BRN)」との和平交渉は、BRNが過激派容疑者の全員釈放などを要求していることから、「難航する」との見方が強まっている。
一方、軍関係筋は、BRNから得た情報として「タクシンが04日にマレーシア入りし、BRN連絡事務所のハッサン事務局長と話し合いをする予定。」を明らかに。ハッサン事務局長はこれまでに2回行われた和平交渉にBRNの代表として出席。
同筋は、「タクシンはBRNに柔軟な対応を求める見通し。タクシンは香港からマレーシアに入り、トレンガヌ州で話し合いをする予定だが、具体的な時間、場所はまだ決まっていない。」としている。同筋によると、「タクシンが今年初めにドバイでハッサンに会ったことが、和平交渉の実現につながった可能性がある。」という。
なお、タクシンが最近になって南部問題の解決に積極的な姿勢を見せていることに対して、「国のために努力しているとアピールすることが狙い。免罪、帰国を実現するための環境作り。」との見方も。
05月04日(土)「タクシンがタイ最南部の武装勢力と話し合う予定。」という情報筋の話が報じられたことに対し、国家治安委員会(NSC)のパラドン事務局長は、「関係政府機関からは何も報告を受けていない」と述べ、根も葉もない単なる噂との見方。スカムポン国防相も「何も聞いていない。」としている。
一方、民主党のタウォン副党首は、「タクシンが南部問題の解決に介入することになれば、事態は悪化する。インラック首相は兄(タクシン)に『南部問題にはかかわるな。』と警告すべき。」と、犯罪人であるタクシンが政府の仕事に介入することに懸念を示した。
現行憲法の起草に携わったセリは、「プア・タイ党の解党を求める訴えを憲法裁が受理する可能性が高い。」との見方を示した。
国外逃亡中の犯罪者であるタクシンが先に、プア・タイ党の幹部会議で、インターネット電話サービス、スカイプを通じて、チャルーム副首相の和解案(憲法改正案)を支持するようプア・タイ党に求めたことが憲法に抵触すると見られる。
解党の訴えは、パイブン上院議員が05月02日に憲法裁に対し行ったもので、パイブン議員は、「タクシンの関与のもとにプア・タイ党が憲法を改正しようとするのは憲法違反。」としている。
セリによると、「タクシンの要請は、非民主的な手段による立憲君主制の転覆や政権奪取を禁じた憲法68条に抵触するものであり、憲法裁が訴えを受理することが予想される。」ただ、「タクシンの要請があろうとなかろうと、決定を下すのはプア・タイ党。要請があったことで直ちに憲法違反とするのには無理がある。」との異論も出ている。
05月05日(日)民主党の広報担当、チャワノン議員は、「国際社会は、前民主党政権(2008~2011年)を国民に選ばれた政権ではないと見ている。」とのスラポン副首相兼外相の発言を「恥ずべき嘘」と批判し、名誉棄損で外相を告訴する構えを明らかに。
2006年09月の軍事クーデターで政権の座から追放されたタクシン派は、翌2007年12月の総選挙で勝利し政権に復帰した。ただ、連立政権の中核をなすタクシン派のパラン・プラチャーチョン党などが翌2007年12月に党役員の選挙違反で憲法裁判所から解党処分を受けたことから、反タクシン派の民主党からなる連立政権が誕生することになった。
スラポン外相の発言は、タクシン派が以前から「憲法裁は反タクシン派寄り」などと批判していることが背景にあると見られるが、チャワノン議員は、「嘘で政敵を追い落とそうとする汚い手口。」と批判。
05月06日(月)憲法裁判事の辞任を求めて憲法裁前で抗議を続けている、タクシン派市民団体、反独裁民主主義同盟(UDD)の一派が憲法裁判所判事全員の辞任を要求。08日朝からクルングテープ都内チェーンワタナー通の憲法裁判所前で集会を計画。「参加者の人数が10万人に達しなければ集会を中止する。」としているが、実際の規模はこれを大きく下回る見通し。ただ、憲法裁周辺では道路が渋滞する虞れ。
インラック政権の推す改憲案が違憲との訴えを憲法裁判所が受理したことで、タクシン派が「憲法裁によるタクシン派への妨害行為」と批判。
抗議集会では「判事を捕らえろ。」などと過激な発言も飛び出しており、民主党は抗議を辞めさせるよう関係当局に求めているが、政府は現在のところ、抗議を黙認している。 一方、ソムチャイ上院議員は、「昨年の反タクシン派団体による反政府集会に対する措置と政府は、同等の措置を執るべき。タクシン派の抗議だけ放置しておくのは、筋が通らない。」との考えを表明。
モンゴルの国際会議でインラック首相が行った演説に反タクシン派などから批判。反タクシン派の民主党の広報担当、チャワノン議員は、「首相の演説は誤解を招き、タイへの投資に悪影響を与えるもの。民主党は事実を伝えるための書簡を諸外国に送付する。」ことを明らかに。
首相の演説は、「2006年09月の軍事クーデターによってタクシン政権が倒され、タイの民主化が捩じ曲げられたのであり、タクシン派は被害者。軍事暫定政権下で制定された現行憲法には非民主的な仕組みが存在する。」といったこれまでのタクシン派の主張を繰り返すもの。
だが、チャワノン議員によれば、「タクシン政権時代から現在に至る政治対立、国民不和は、同政権の汚職体質、タクシン首相(当時)による自らの利益のための法律改悪などが原因であり、この事実を諸外国に正しく理解してもらうことが必要。」
05月07日(火)タクシン派団体の反独裁民主戦線(UDD)による大規模集会が開催されることを受け、在タイ日本大使館より注意喚起。

反独裁民主戦線(UDD) による集会の実施について(2013年5月7日現在)

1.治安当局等によれば,反独裁民主戦線(UDD:通称「赤シャツ・グループ」) が以下のとおり集会を行う模様です。

●日  時:5月8日(水)18:00~24:00
●場  所:憲法裁判所前、ジェーンワッタナー通り周辺
●人  数:20,000人~30,000人
●目  的:裁判官9人の辞任を要求する集会。演説の後デモ行進を予定。

2.つきましては,上記1.のとおり,UDDによる集会の影響により,同集会が実施される憲法裁判所周辺及びデモ行進が予定されている首相府,国会議事堂,法務省特別捜査局(DSI),国家汚職防止委員会,財務省周辺においては交通規制等の実施により,渋滞や人の混雑が予想されますので,報道等から最新情報の入手に努めるとともに,同集会が実施される周辺に近づく場合には,十分に注意を払ってください。

(問い合わせ先)

○在タイ日本国大使館領事部
電話:(66-2)207-8502、696-3002(邦人援護)
FAX :(66-2)207-8511
インラック首相は、「ネット上の根拠のない批判には情報通信技術省が法的措置を執らなければならない。」と述べた。インラック首相のモンゴルでの演説に批判が集まっており、自身に対する中傷に断固たる対応をとる考えを明らかに。
インラック首相によると、「国民には意見を表明する権利があるものの、法律に違反する中傷は取り締まる必要がある。」という。インラック首相は、「タイで起きた政治的事件を教訓にしてもらいたいため、私は演説で真実を述べた。」と強調し、演説への批判は的外れとの考えを繰り返した。ただ、「タクシン政権の腐敗体質が厳しい政府批判・国民対立の引き金となり、軍事クーデターによる同政権崩壊につながったという重大な事実に首相は言及していない。」との批判に対して、首相は今のところ具体的な反論をしていない。
プア・タイ党関係筋によると、タクシン派の幹部らは、憲法裁判判事の辞任を求め、憲法裁判所前で抗議集会を続けているタクシン派の団体「民主化運動のためのラジオ放送者」と距離を置く姿勢を示しており、抗議は間もなく終息する見通し。プア・タイ党の政治戦略委員会(委員長・ソムチャイ元首相)が、抗議集会について協議したが、憲法裁判事を脅迫するような言動などを批判する意見が出たという。
また、地方でタクシン支持者動員に影響力を持つ、タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)幹部らも、集会に否定的な見方を示している。
「民主化運動のためのラジオ放送者」は先に、「08日の抗議集会に10万人が集まらなければ、集会を直ちに中止する。」と表明。関係筋によると、他のタクシン派組織の賛同が得られず、体面を保ったまま抗議集会を終わらせようと10万人動員という非現実的な目標を掲げたものと見られる。
政府庁舎前で抗議集会を行っていた市民団体「公正な社会を実現するための市民運動(Pムーブ)」のメンバー数百人は、3日以内にメンバーが抱える問題の解決策を打ち出すよう政府に要求。期限内に回答がなければ、抗議活動をエスカレートさせる構えを見せている。
スラム住民、農民、土地に絡む問題を抱える東北部の住民などで構成される同団体によると、問題解決への協力を昨年10月にインラック首相に求めた。
「11月に団体と話し合う。」との返答があったものの、実現しなかったため、抗議を始めた。
05月08日(水)正午頃タイ首相府のホームページがハッキングの被害に遭い、インラック首相が笑う写真の横に「私はふしだらな間抜け。」、「私は自分がタイ史上最低の首相だと知っている。」、「アンリミテッド・ハック・チーム」という文章が書き込まれるなど、改竄された。首相府のサイトは改竄が確認された08日昼から夜にかけ、閲覧できない状態が続いた。
モンゴルでの演説に対する批判に痺れを切らしたインラック首相は先に、「ネット上に首相や政府を中傷するコメントを書き込んだ者を情報通信技術省に取り締まらせる。」と明言したことへの反発と見られる。
だが、アヌディット情報通信技術相は、「情報通信省による取り締まりとは無関係」との見方を示している。
交流サイト、フェイスブックのアンリミテッド・ハック・チームのページには、タイ首相府のホームページが改竄されたことを伝える反政府系新聞ASTVプーチャッカーンの記事のリンクが掲載。
憲法裁判所前で抗議集会を続けていたタクシン派団体は、目標の「10万人動員」が実現できず、抗議活動の中止を宣言。団体のメンバーなど約500人は、憲法裁前から国会議事堂前に移動した後、参加者は約2800人(警察発表)に増加したが、「10万人」には遠く及ばず。再び憲法裁前に戻ったメンバーは17時頃、17日間に及んだ抗議集会の中止を発表。
抗議集会は、タクシン派の推す改憲案への憲法裁の対応に反発したもので、判事の辞任などを求めていた。
タクシン派のプア・タイ党関係筋によると、「10万人不達成は単なる口実で、プア・タイ党とタクシン、最大のタクシン派団体反独裁民主主義同盟(UDD)の賛同が得られなかったことが中止の主因。」
当初はプア・タイ党の一部議員も集会に参加していたが、「判事を捕らえろ。」といった過激な呼びかけが続いたことから、距離を置き始めた。抗議のエスカレートに伴い、プア・タイ党幹部やタクシンも、批判の矛先が政府に向くのを危惧した模様。
土地に絡む問題などを抱える地方住民らで構成される団体「公正な社会を実現するための市民運動(Pムーブ)」が、問題解決を政府に求めて政府庁舎前で抗議集会を続けている問題で、ワラテープ首相府相は、「複数の委員会を立ち上げて問題の解決策を探る。」と発表。このうち、土地問題を扱う委員会は、インラック首相の指示でチャルーム副首相が委員長を務める予定。委員会は05月20日に関係当局と協議する予定で、Pムーブは、「政府の対応を歓迎する。」と前向きな姿勢。
05月09日(木)首相府相のウェブサイトが改竄された事件で、関係筋は、「容疑者は当局によって特定されており、『10日に出頭する。』と伝えてきた。」と明らかに。
クルングテープの大学を卒業し、ナコンシータマラート県在住のナロングリット・スクサーン(29)。以前からハッカーの間で「ターレック」といった名で知られていた。
また、過去にテレビ局「チャンネル3」のウェブサイトを改竄したとされるハッカーグループ「アンリミテッド・ハック・チーム」と敵対しており、同グループから当局に情報が提供され、容疑者が特定できた。
05月10日(金)首相府のウェブサイトが何者かによって改竄された事件で、コンピューター・プログラマーのナロングリット・スクサーンは警察庁犯罪制圧課に出頭し、容疑を全面的に否認。
警察はハッカーグループ「アンリミテッド・ハック・チーム」などから提供された情報に基づいてナロングリットの犯行との疑いを強め捜査していた。
ナロングリットは取り調べに対し、「ホームページを改竄した事実はない。アンリミテッド・ハック・チームに嵌められた。」と主張。
05月11日(土)未明タイラット本社(都内ウィパワディ・ランシット通)の警備員詰め所に、鉄球2個と花火が投げ込まれ、警備員2人が軽傷。投げ込まれた鉄球は、ペタンクで使う直径7~8㎝の物。
警察によれば、「犯人の動機は今のところ不明だが、先に同紙の風刺漫画家がフェイスブックにインラック首相を中傷するようなコメントを書き込んだことにタクシン派が強く反発。」
05月14日(火)首相府相のウェブサイトが改竄され、首相を中傷するコメントが書き込まれた事件で、警察庁技術犯罪制圧課のピシット課長は、「ハッカー2グループとハッカー1人が逮捕される可能性が高い。」との見方を示した。先に警察に出頭したハッカーのナロングリットは、関与を全面的に否定し、「敵対するハッカーグループに嵌められた。」と主張。
だが、ピシット課長は、ナロングリットと「アンリミテッド・ハック・チーム」、「ステップ・ハック」のメンバー少なくとも6人が、改竄に関与したのは確実と自信を示した。
05月16日(木)タクシン派団体、反独裁民主主義同盟(UDD)は19日、UDDによる反政府デモの武力鎮圧から3年を記念し、都心ラーチャプラソン交差点で集会を開く。各地方の支持者が集結し、ナタウット副商務相、ジャトゥポン前下院議員らUDD幹部も参加。20時半からは、国外逃亡中のタクシンが無料インターネット電話、スカイプを使い演説する予定。集会の開始は10時、終了は翌20日01時半の見込み。警察は警官約750人を動員し、警戒に当たる。周辺の交通は混雑が予想される。
UDDは2010年03月、当時の反タクシン派政権の打倒を目指す大規模なデモをクルングテープで開始。04~05月にラーチャプラソン交差点一帯を占拠し、05月19日、軍により強制排除された。一連の衝突による死者は91人、負傷者は2000人に上る。
05月17日(金)首相府のウェブサイトが何者かによって改竄された事件で、警察庁技術犯罪制圧課のシリポン副課長は、「シリポン副課長が情報提供の見返りに罪に問わないと約束した。」とのナロングリットのコメントに対し、事実無根と強く反論。
ナロングリットは、警察が先に「事件に関与した。」との見方を示したことから、警察に出頭したが、容疑を全面的に否認。また、16日に自身のフェイスブックページに「シリポン副課長は、(真犯人逮捕につながる)情報を提供すれば容疑を取り下げると約束したが、この約束はまだ守られていない。」と書き込んだ。
米国などでは司法取引が認められているが、シリポン副課長は、「われわれはプロの捜査員。事件解決のためにそのような取引をすることはない。」
05月19日(日)タクシン派団体、反独裁民主主義同盟(UDD)はUDDによる反政府デモの武力鎮圧から3年を記念し、都心のラーチャプラソン交差点で追悼集会を開き、UDDのシンボルカラーである赤服を着た約2万6000人が参加した。警備にあたった警官隊700人との衝突はなかったが、ラーチャプラソン交差点のショッピングセンター、セントラルワールドとゲイソンプラザは午後から臨時休業。早朝、東北地方から深夜のバスで集会に参加した女性カイキー・ワングラスリー(68)は集会直前にパトゥム・ワナラム寺で体調不良を訴え死亡。
集会にはナタウット副商務相、チャトポン前下院議員らUDD幹部が参加。国外逃亡中のタクシンは、インターネット電話サービス、スカイプを通じてイベント参加者に対し、国民和解の実現のためとしてタクシン派議員などが打ち出している恩赦案への支持を呼びかけた。また、「一般のUDD支持者を恩赦することが重要であり、UDD幹部やタクシン自身が対象とならなくとも構わない。」などと強調。
05月20日(月)タクシンが「恩赦の対象に自分が含まれなくても構わない。」と発言したことに政界観測筋などから驚きの声。
タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)による2010年の大規模反政府デモの終結からちょうど3年となる05月19日、国外逃亡中のタクシンはUDD主催の追悼イベントに参集したタクシン支持者に対し、「デモに参加した一般市民の救済が最も大切。」と強調し、ウォラチャイ、プア・タイ党議員の打ち出した恩赦案を支持するよう呼びかけた。UDD幹部や治安当局を恩赦対象に含めないというもの。
だが、タクシンは先に、タクシンを含む関係者全員に恩赦を適用するとしたチャルーム副首相案を全面的に支持すると明言していた。
関係筋は、「当時の治安当局をも恩赦対象に含めることには、UDDから強い反発が出ている。UDDの支持を失えば、政権の不安定化につながりかねない。このため、タクシンは前言を翻したのだろう。」
05月22日(水)首都圏警察は3年前に、都内商業施設セントラルワールドとゼンデパートを放火した容疑者らの写真を公開。映像は防犯カメラなどに残されていたもの。
タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)は、2010年03~05月にかけてクルングテープで大規模な反政府デモを展開したが、治安当局がUDDの強制排除に踏み切った。UDDは05 月19日にデモ終結を宣言した直後、デモ拠点としていたラーチャプラソン交差点近辺の商業施設を放火・略奪する事件が起きた。
民主党は「赤服(UDDのデモ参加者)の仕業」と指摘する一方、国外逃亡中のタクシンは、「放火事件の犯人逮捕に協力した者に1000万Bの賞金を提供する。」と発表。
インラック首相が05月23日から25日まで日本を訪問。23日は安倍首相と会談し、浩宮に会う。24日には日本経済新聞主催のシンポジウム「アジアの未来」に出席する予定。タイ経済会の代表が首相の訪問に同行。
05月23日(木)安倍首相が訪日中のタイのインラック首相と約40分間会談。その後約50分間、昼食会を主催。両首脳は会談で、経済や安全保障の分野で協力を強化していくことで一致。
安倍首相は「地球観測衛星、高速鉄道などのタイのインフラ整備に日本が積極的に貢献したい。」と、タイが進めようとしている高速鉄道事業などインフラ整備への投資に意欲を見せた。インラック首相は「歓迎する。」と応じるとともに、ピルマのダウェイ深海港建設計画およびタイの大型治水計画(総予算3500億B)への投資を日本側に呼びかけた。
高速鉄道は、クルングテープと北部チエンマイ、東北部ノンカイ、東部ラヨン、タイ国境に近いマレーシアのパダンベサールを結ぶ路線の建設が計画されており、支那、フランス、南鮮、スペインなどが事業参加の意向を示している。
安倍首相は今年01月にタイを訪問してインラック首相と会談している。
プア・タイ党の法律専門家チームのトップ、ピラパン議員は、チャルーム副首相の恩赦案をチャルン下院副議長に提出。同案は、タクシン支持・不支持を巡る政治対立の解消、国民和解の実現のため2006年以降に罪に問われたタクシンを含む政治関連犯全員に恩赦を適用するというもの。
だが、同案に対しては、最大のタクシン支持団体で、プア・タイ党の実動部隊、反独裁民主主義同盟(UDD)が、「(UDDによる)2010年の大規模反政府デモを制圧した側の者にまで恩赦を適用することは認められない。」と強く反発。このため、当初同案に賛同していたタクシンは先に、「一般のデモ参加者に限って恩赦を適用するというウォラチャイ、プア・タイ党議員の案を支持する。」と表明。>
民主党の広報担当、チャワノン議員は、2010年に都内の商業施設が放火された事件を捜査する警察の対応に強い疑問を表明。
タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)が大規模反政府デモの終結を宣言した直後に発生した放火事件で、警察は最近になって容疑者の顔写真を公表。 民主党の広報担当、チャワノン議員は、「犯人特定につながる写真があったのに警察はこの3年間何をしていたのか。何かを隠蔽しようとしているのか。」と、警察の対応に強い疑問を表明。
チャワノン議員によると、民主党は先に「放火犯は赤服(UDD関係者)。」と指摘し、国外逃亡中のタクシンが「犯人逮捕への協力者に1000万Bの賞金を提供する。」と明言した直後に顔写真が公開された。関係筋によれば、「放火容疑者がタクシン支持者であることから、警察は逮捕を躊躇していた。だが、タクシンの許可が出たため、写真公開に踏み切ったと考えられる。」
05月25日(土)プア・タイ党は、「プア・タイ党はウォラチャイ議員の恩赦案を支持することを決めている。」と表明。また、「政府はチャルーム副首相案を支持しようとしている。」との見方を示している民主党を、「国民の誤解を招こうと企んでいる。」と批判。
チャルーム案は、タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)による2010年の大規模な反政府デモの制圧を命じた当時の責任者と、タクシンを含む政治関連犯全員に恩赦を適用するというもの。だが、デモ制圧で大勢の死傷者を出したUDDは同案に強く反対している。また、プア・タイ党の議員100人以上が、チャルーム案を支持する署名を行っているが、プア・タイ党は、「党としてチャルーム案を推すことを正式に決めたわけではない。」と釘を刺した。
05月24日(金)プア・タイ党の重鎮、チャルーム副首相は日、東北部ウドンタニー県で開催されたタクシン支持者の集会で、「年内にタクシンの帰国を実現させる。これが達成できなかったら、責任は全て私がとる。私の首を切り落としてもいい。」と明言。
また、タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)から批判の出ている、政治関連犯全員に恩赦を適用するというチャルーム副首相の案について、チャルーム副首相は、「タクシンの帰国実現に役立つと期待している。」と、同案への支持を呼びかけた。
関係筋によれば、「チャルーム副首相は、タクシンの免罪・帰国のためにはUDDによる2010年の大規模反政府デモの制圧を命じた当局者も罪に問わない必要があると考えているが、UDDは今のところ、「当局者は許せない。」とチャルーム案に反対している。」
05月26日(日)
20時50分頃
クルングテープ都内のラムカムヘン通ソイ43の路上で爆発が起き、少なくとも6人が重軽傷を負い、店舗2軒が破損。タイ警察はゴミ箱の中で手製爆弾が爆発したとみて捜査を進めている。現場はラムカムヘン大学近く。
05月27日(月)チャルン下院副議長は、プア・タイ党の重鎮、「チャルーム副首相が先に提出した恩赦案が08月に下院で審議されることになった。」と発表。
同案はタクシンや、2010年にタクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)による大規模反政府デモの制圧を指示した当局者も恩赦対象とするというもの。UDDが反発していることから、プア・タイ党も同案を正式に支持することは控えているが、「タクシンやプア・タイ党が本当に支持したいのはチャルーム案」との見方も出ている。
また、同案については、民主党が、「タクシンに460億Bの没収資産を返却するという財務関連法案であり、首相の承認が必要。」としているが、チャルン副議長は、「歳出や予算管理とは無関係で財務関連法案ではない。従って首相の承認は不要。」と明言。
民主党は「財務関連法案か否かは国会議長に決定の権限があり、国の法律最高諮問機関、法令委員会の判断を仰ぐことはできない。」とのこと。
05月28日(火)プア・タイ党のウォラチャイ議員とチャルーム副首相の恩赦案を、政府が一本化を画策しているとの見方が出ているが、インラック首相は、全面的否定。インラック首相は、「恩赦案については議会で決定が下される。政府とは無関係。」と説明。
関係筋によると、「『プア・タイ党もタクシンも、一般のデモ参加者のみに恩赦を適用する。』いうウォラチャイ案を支持している。一方、タクシンと治安当局者も『恩赦対象とする。』というチャルーム案にタクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)が反対を表明。UDDの反発を和らげる目的で、2案をまとめることが検討されている。」
05月29日(水)南クルングテープ刑事裁判所は、タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)による2010年の大規模な反政府デモの取材中に都内ラーチャダムリ通で被弾して死亡したイタリア人ジャーナリスト、ファビオ・ポレンギについて、陸軍の部隊から発射された直径5.56㎜(0.223in)の銃弾が原因との判断を示した。
>南クルングテープ刑事裁判所によると、「ポレンギが銃撃された際、近くにいたのはデモ隊を排除するためにサラデン交差点からラーチャプラソン交差点に向かっていた陸軍の部隊だけとしか考えられない。」
ポレンギの家族は裁判所の判断を傍聴した後、記者会見を行って「(ポレンギが)死に至った状況が明らかになって良かった。」、「いつまでかかるかわからないが、発砲を命じた者が特定されるのを待ちたい。」などと述べた。
一方、プラユット陸軍司令官は、「陸軍が加害者。」との判断について、「まだ最終的なものではなく、陸軍には証拠(反証)があり、裁判所に提出する用意がある。」と述べた。


42章  タウィンの左遷無効 仮面の反タクシンデモ、V・フォー・タイランド
05月31日(金)中央行政裁判所は、首相府顧問に2011年09月に異動されたタウィン・プリアンシー(59)を元の役職である国家治安委員会(NSC)事務局長に戻すよう関係当局に命じる判決。タウィンは「首相の異動命令が公正さを欠き、かつ公務員法に抵触するとの理由で異動を無効。」と訴えていた。
政府は当時、「タウィンは治安の専門家であることから、政府の政策実施の向上のためにタウィンを首相府顧問に異動した。」と説明していた。
中央行政裁は、「国家安全保障の要の機関であるNSCの事務局長の権限はより大きく、首相府顧問がタウィンにとって力量を発揮できるポストとは考えられない。」という。
関係筋によれば、異動の本当の理由は、タクシンの元妻、ポチャマンの兄のプリアオパンを副警察長官から警察長官に昇進させた人事の玉突き。プリアオパンを長官に任命するには、ウィチエン長官(当時)に見合う異動先を用意して長官を退いてもらうことが必要。その異動先がNSC事務局長だったことから、タウィンがはじき出された。
06月02日(日)クルングテープ中心部に、タクシン政権(2001~2006年)とタクシンの実妹インラック率いる現政権を批判するポスターやプラカードを手にした仮面集団が現れた。お揃いの仮面は、2005年の米映画「V・フォー・ヴェンデッタ」で主人公が付けていたガイ・フォークスのもの。抵抗と匿名の国際的シンボルとされ、インターネットのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)のフェイスブック、V・フォー・タイランドを通じ呼びかけられた。参加者は国際的ハッカー集団、アノニマスなどが使用するガイ・フォークスの仮面を被り、行進後、タイ国王賛歌を合唱して散会。V・フォー・タイランドのサイトでは03日までに約2万7000人が「いいね!」をクリック。
約700人(報道により役300人)の集団は13時頃から大型商業施設セントラルワールド前に陣取ってタクシン批判を展開。サイアム・パラゴンまで行進し、インラック政権打倒、インラック首相の兄のタクシンの影響力排除などを訴えた。15時頃にパトゥムワン交差点のバンコク芸術文化センター前で散会。
その直後には、対抗するようにタクシン派のシンボルカラー、赤色の仮面をつけた約20人がBTSのサイアム駅に現れた。
クルンテープ・トゥラキット紙によると、
クルングテープ都内で起きた爆弾事件は2006年末から今年05月26日までに37件に上った。
2006年には大晦日の夕方から元旦の未明にかけ、都内の9ケ所で爆弾が爆発し、3人が死亡、36人が負傷。同年09月にはタクシン政権が軍事クーデターで崩壊しており、政争絡みの犯行と見られている。
タクシン派市民によるクルングテープ都心の占拠事件が起きた2010年には都内各地で擲弾の発射事件が相次いだ。同年04月にはBTSサラデーン駅に擲弾5発が撃ち込まれ、3人が死亡。
2012年02月には都内スクムビット通ソイ71周辺の3ケ所で爆弾が爆発し、爆弾を所持していたイラン人の男が両足切断の重傷を負い、タイ人男女4人が怪我。この事件ではほかにもイラン人が逮捕され、イスラエル人外交官らを狙ったテロが計画されていたと見られている。
今年05月26日には都内ラムカムヘン通ソイ43の路上で爆弾が爆発し、7人が重軽傷を負い、店舗2軒が破損。
中央行政裁判所が先に国家治安委員会(NSC)の事務局長人事に関する首相命令を無効とし、タウィン首相府顧問をNSC事務局長に復職させるよう命じたことで、政府は控訴する構えを示している。
これに対して、公務員や政治家の汚職問題を扱う独立機関である国家汚職制圧委員会(NACC)のクラナロン委員は「インラック首相が最高行政裁判所に上告した場合、タウィンはNACCに訴えることができる。」との見解を明らかに。
「首相命令は刑法157条に抵触する。」と主張するタウィンが、「首相が中央行政裁の判断を受け入れずに上告した場合はNACCに提訴する。」と述べたことに応えた形となった。
クラナロン委員によれば、最高行政裁が最終的な判断を示す前でもNACCがタウィンの訴えを受理し、調査を開始することは可能。
06月03日(月)中央行政裁判所が先に、タウィンを国家治安委員会(NSC)事務局長から首相府顧問に異動するとした首相命令を無効とし、タウィンを事務局長に復職させるよう命じたことについて、チャルーム副首相は、「政権交代に伴う人事異動はよくあること。前民主党政権も例外ではなかった。」と、「首相に非はない。」との見解。
首相が上告し、最高行政裁でも首相命令を無効となることも考えられるが、政府は判断に従うだけという。
また、チャルーム副首相は、「NSCの事務局長が何人入れ替わろうと問題ではない。私が事務局長に仕事を与えなければ、事務局長は存在する意味がない。」と言い切って、復職したタウィンを飼い殺しにする可能性を示唆。
タウィンを首相府顧問に異動したのは、適材適所の配置換えではなく、タクシンの元妻、ポチャマンの兄、プリアオパンを警察庁長官に起用するためだったと見られている。
06月04日(火)中央行政裁が先に、国家治安委員会(NSC)事務局長を異動するとした首相命令を無効とし、現在首相府顧問のタウィンをNSC事務局長に復職させるよう 命じたことについて、インラック首相は、「行政裁の判断を検討する委員会からの報告を待って決める。」と述べて、上告するかどうかを明らかにしなかった。また、首相命令が裁判所によって否定されたことから、「タウィンが不正行為を理由にインラック首相の罷免を求める。」との見方も出ているが、インラック首相は、「首相には人事権がある。歴代の首相の中に人事権を行使しなかった者はいない。」と述べて、「自身に非はない。」との見方を示した。
タイで不敬罪で投獄されていたシンガポール人ワンチャイ・タン(62、報道により63)が、プミポン国王の恩赦で釈放されることになった。ワンチャイは近くシンガポールに強制送還される。ワンチャイは1977年からタイで暮らし、タイ人の妻がいる。2009年04月、タクシン派によるクルングテープでの反政府集会で国王を批判するビラを撒いたとして逮捕され、禁錮13年9ケ月の判決を受け服役。
不敬罪はタイ国王夫妻と王位継承者への批判を禁じたもので、違反した場合、1件につき最長15年の懲役が科される。人権保護団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW、本部ニューヨーク)によると、1990年から2005年にかけ、不敬罪の裁判は年4、5件程度だったが、反王室のイメージがあるタクシン派と特権階級を中心とする反タクシン派の抗争が激化した2006年以降は累計で400件以上に上る。
タイでは殺人容疑でも保釈されるケースがあるが、不敬罪の容疑者は保釈がほとんど許されない。また、外国人の不敬罪受刑者は数年服役して恩赦で出獄するのが一般的だが、タイ人受刑者が恩赦で出獄したというニュースはほとんどない。
06月05日(水)プロートプラソプ副首相は、先の集会での不適切発言を撤回し謝罪。
政府の大型治水計画(総予算3500億B)には民主党や市民団体などから批判の声が上がっている。
プロートプラソップ副首相は02日にチエンマイで開催されたタクシン支持者の集会で、計画に反対する活動家について、「私に『クズ』と言われて彼らは怒っているが、この言葉は穏やか過ぎた。心の中では『アイヒア』と叱りつけたかった。」と伝えられた。
「アイヒア」は相手を強く侮蔑する言葉であり、面と向かってこの言葉を使えば、喧嘩になる可能性が高い。 プロートプラソップ副首相は、「(集会での発言は)普段の私の言葉遣い。だが、気分を害した人がいたら謝罪したい。」と釈明。
06月06日(木)チャルーム副首相が先に「通信大手の経営者と名前の頭文字がSのメディア関係者が反政府運動を先導している。」と述べ、波紋。
国内2位の携帯電話キャリア、DTACの創業者、ブンチャイは、「私は政治に関わったことはない。わざわざチャルームに釈明するつもりもない。」と述べ、チャルーム副首相の発言が的外れとの見方を示した。チャルームは、「携帯大手の経営者」について「奥さんが美人」と述べており、最近女優と結婚したブンチャイは、「私のことを指しているのだろう。」
また、「Tニュースセンター」のソンティヤン所長は、「チャルームの言う『頭文字Sのメディア関係者』とは私のことだろう。」と述べ、「先の仮面集団による政府批判はたぶんSが仕掛け人。」とのチャルームのコメントに対し、「事実無根だ。」と強く反論。
06月07日(金)反タクシン派の新グループ、V・フォー・タイランドは09日、クルングテープ反政府集会を行う予定。
インターネットの交流サイト、フェイスブックのV・フォー・タイランドによると、集合場所はクルングテープ都心のセントラルワールド前、集合時間は16時半。
「V For Thailand」はフェイスブックを通じ反政府デモへの参加を呼びかけ、今月02日、呼びかけに応じ集まった約300人がセントラルワールドからサイアムパラゴンまで行進し、インラック政権打倒、インラック首相の兄であるタクシンの影響力排除などを訴えた。参加者は国際的ハッカー集団、アノニマスなどが使用するガイ・フォークスの仮面を被り、行進後、タイ国王賛歌を合唱して散会。V・フォー・タイランドのサイトには07日までに約5万7000人が「いいね!」をクリック。
06月08日(土)プア・タイ党幹部のアヌソン議員は、「インラック政権を応援している市民らが全国で政府への支持を表明するためのフォーラム開催などを計画している。」と明らかに。
クルングテープ中心部に最近、タクシン流政治を批判する仮面集団が現れるなど拡大する反政府キャンペーンに対抗する動き。
アヌソンによれば、「プア・タイ党や、タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)と無関係の市民も仮面集団の動きを警戒。インラック政権が国民に支持されていることを示すべく、市民がフォーラムなどを開催することにした。」
06月09日(日)仮面を被った反タクシン集団、V・フォー・タイランドは、クルングテープ中心部の大型商業施設セントラルワールドからサイアムセンターにかけ行進し、政府批判を展開。02日の集会に続き、約1000人(報道により数百人)の仮面集団が、プラカードなどを手に「汚職に塗れている。」、「タクシンに操られている。」などとインラック政権を批判。デモ参加者の多くは国際的ハッカー集団、アノニマスなどが使用するガイ・フォークスの仮面を着用。同じグループによる反政府デモはクルングテープでは2週連続。
インラック政権打倒、インラック首相の兄であるタクシンの影響力排除などを訴えた行進後、タイ国王賛歌を合唱して散会。
インターネットの交流サイト、フェイスブックを通じ呼びかけられた反政府デモが、クルングテープだけではなく、反政府活動は地方に拡大し、南部トラン、ソンクラー、スラタニー、プーケット、サムイ、北部チエンマイ、ナコンサワン、西部ラチャブリー、東北部コンケン、ナコンラチャシーマーなどで行われた。参加者はそれぞれ数十人程度。
反政府デモを呼びかけたフェイスブックのV・フォー・タイランドには10日までに約6万7000人が「いいね!」をクリック。
06月13日(木)反タクシン派のグループ、V・フォー・タイランドがインターネットの交流サイト、フェイスブックを通じ、16日にタイ各地で反政府デモを実施するよう呼びかけている。
デモはクルングテープのほか、南部プーケット島、サムイ島、東部チョンブリー県、東部コンケン県などで行われる見通し。クルングテープでは都心のショッピングセンター(SC)、セントラルワールド前に13時に集合する模様。
V・フォー・タイランドは今月02日と09日にクルングテープで数百人規模の反政府デモを行った。参加者は国際的ハッカー集団、アノニマスなどが使用する、ガイ・フォークスの仮面を被り、インラック政権打倒、インラック首相の兄のタクシンの影響力排除などを訴えた。
V・フォー・タイランドのサイトには12日までに約7万5000人が「いいね!」をクリック。
反タクシン派の実業家エカユット・アンチャンブット(54)が07日から行方不明になり、12日、パッタルン市の山中で遺体で見つかった見つかり、運転手のサンティパップ・ペングドゥアング(25)とその父親の陸軍曹長らタイ人の男4人と女1人が金目当てで殺害されたとされる事件で、エカユットの顧問弁護士、スワットは、「警察らが単なる強盗殺人事件として捜査の幕引きを図ろうとしている。」と批判。
自宅から警備システムのサーバーが紛失しており、誰が何を目的で持ち去ったかなど、「まだ疑問点が残っている。」という。
警察によれば、事件に関与したとみられる4人目の容疑者を13日に逮捕したほか、エカットの銀行口座から引き出された500万Bのうち、約420万Bをこれまでに容疑者の親族などから回収した。
スワットは、「エカユット氏が金のために殺害されたとは思えない。」と事件の全容解明を求めている。
06月14日(金)北部チエンマイ県ムアン郡で、反タクシン集団ガイ・フォークスの仮面をつけた約50人がプラカードなどを手にタクシン批判を行うなか、タクシン派のメンバー約100人が現場に現れ揉み合いとなった。仮面集団は近くの商業施設に逃げ込んだが、タクシン支持者約100人が追いかけて、乱闘になった。
チエンマイはタクシンの出身地で、タクシン派の支持基盤の1つ。仮面集団は「警察が現場にいたにもかかわらず、見て見ぬふりをした。」という。
06月16日(日)クルングテープ12区(ドンムアン区)の下院補欠選挙で、野党民主党公認のテーンクン(34)が、与党プア・タイ党公認の人気俳優、ユラナン前下院議員(50)を抑えて当選。
タイ地元紙によると、テーンクン3万2710票(報道により3万2270票)、ユラナン3万0624票と僅差。投票率は61%
ドンムアンは民主党が優勢なクルングテープで数少ないタクシン派の地盤。10年以上に渡り、タクシン派候補者が当選しており、タクシン派の地盤として知られている。プア・タイ党は議席を守るため、元人気俳優で歌手で下院比例区選出のユラナンを議員辞職させて補欠選に出馬させ、インラック首相が応援演説に出向くなど、選挙戦に力を注いだが、手痛い敗北を喫した。
テーンクンも元俳優で歌手。テーンクンは2011年の下院総選挙でカルンに敗れたが、ドンムアン区の広い範囲が水没した同年末のタイ中部大洪水で精力的に救援活動を展開し、選挙民の信頼を得たと見られる。
この結果を受け、「インラック政権の人気低下を裏付けるものであり、政権の立て直しのため、早期に下院を解散する可能性が高まった。」とする見方も出ている。
今回の補欠選は、2011年07月の総選挙で当選したカルン(プア・タイ党所属)が、選挙運動中にテーンクン候補を中傷したとして先に公民権5年停止の有罪判決を受け、議員失職となったことから実施。
17日、インラック首相は、「選挙運動期間が短かったことで有権者にアピールできなかったことが原因。」と敗北宣言。
インターネットの交流サイト、フェイスブックを通じ呼びかけられた反政府デモがクルングテープ、南部トラン、スラタニー、ソンクラー、東部チョンブリ、東北部ナコンラチャシーマーなどでも数十人から数百人に及ぶ仮面集団が、タクシン流政治への批判を展開。同じグループによる反政府デモはクルングテープでは3週連続。
クルングテープでは、反タクシン派仮面集団、V・フォー・タイランド約1000人は、都心のラーチャプラソン交差点の大型商業施設セントラルワールド前で集会。その後、「タクシンの召し使い。」と連呼しながら警察庁前を通り、パトゥムワン交差点のタイ文化・芸術センター前までデモ行進。デモ参加者の多くは国際的ハッカー集団、アノニマスなどが使用するガイ・フォークスの仮面を着用。
ラーチャプラソン交差点には赤服のタクシン派市民数十人も集まったが、反タクシン派との衝突はなかった反政府デモを呼びかけたフェイスブックのV・フォー・タイランドには17日までに約8万5000人が「いいね!」をクリック。
06月18日(火)16日に投開票が行われたクルングテープ12区の下院議員補欠選挙で、最多票を獲得した民主党候補、テーンクンの当選認証が遅れる見通し。
中央選挙管理委員会のソットシー委員によると、「テーンクン候補の当選に異議を唱える訴えが3件寄せられていることが原因。選管は訴えが法で定められた条件に合致するかを確認し、有効であれば、テーンクン候補に違反がなかったかを調査する必要がある。」
06月22日(土)クルングテープ中心部の大型商業施設セントラル・ワールドを所有・運営するセントラル・パタナ(CPN)は、「敷地内で政治的な活動を行うことを禁ずる。」との声明。ガイ・フォークスの仮面集団が、3週連続で同施設前の広場で反政府集会を行っており、政治的な目的に利用するのは好ましくないとしている。
06月23日(日)雨の中、反タクシン派による反政府デモがクルングテープで行われ、約3000人(報道により数百人)がショッピングセンターのセントラル・ワールドからバンコク芸術文化センターまで行進。警官隊との衝突はなかった。セントラル・ワールドは、「敷地内での政治活動を禁ずる。」と広場の周辺に金属製のバリアーを設置していたが、仮面集団によって取り除かれた。
また、国内37ケ所でも仮面集団による反タクシン集会が行われた。
デモは反タクシン派の新グループ、V・フォー・タイランドがインターネットの交流サイト、フェイスブックを通じ呼びかけた。デモ参加者の多くは国際的ハッカー集団、アノニマスなどが使用するガイ・フォークスの仮面を被り、インラック政権打倒、インラック首相の兄であるタクシンの影響力排除などを訴えた。このグループによる反政府デモは4週連続。
フェイスブックを通じて、タクシンを批判するガイ・フォークス仮面の被った集団の活動が、国内の地方都市だけでなく海外に広がっている。フェイスブックのサイトには、少人数だがオーストラリアや香港でも白仮面の集団が、タクシン流政治を批判している写真が掲載された。
V・フォー・タイランドのフェイスブックのページには23日までに約10万3000人が「いいね!」をクリック。
「シンガポール滞在中のタクシンと政権党プア・タイ党の幹部らが、内閣改造について密談する。」との見方が出ている。
プア・タイ党の広報担当プロムポン議員は、「タクシンが現在シンガポールに滞在しており、間もなく香港に向かうのは事実。だが、タクシンは内閣改造については何も言及していない」と、改造に関する密談の可能性を否定した。「タクシンがシンガポールなどを訪れているのはビジネスパートナーに会うためで、政治とは無関係。」という。また、プロムポン議員は、「内閣改造の首相に専権事項だが、首相は改造を行うとは発言していない。」と、「近々に改造」との見方も否定。
06月24日(月)政府が米買い上げ価格の上限引き下げを決めたことに稲作農家が反発している問題で、タクシンの顧問弁護士、ノパドン元外相は、先に香港で会った際にタクシンが「国際市場で米価が値上がりしたら、買い上げ価格も引き上げることを約束する。」と述べていたと明らかに。価格引き下げに反対する稲作農家が25日、大規模な抗議集会を予定していることから、農民を宥めて集会を中止させることが狙いと見られる。
実妹のインラック首相率いる政権が、困難な状況に追い込まれるのを回避したい考えだが、タクシンは国外逃亡中の犯罪人であり、「農民への約束」が新たな批判を呼ぶ可能性がある。
内閣改造の噂も浮上しているが、ノパドンは、「ここしばらくないだろう。時が来たらインラック首相が決める。」と述べた。
インラック首相を中傷したとして訴えられた、タイ字紙最大手タイラットなどで活躍する著名風刺漫画家、チャイ・ラチャワット(本名、ソムチャイ・カタンユタナン)さん(72)が、首都圏警察に出頭し取り調べを受けた。
チャイは、首相がモンゴルで国外逃亡中の実兄、タクシンを擁護するような演説をしたことから、04月30日にフェイスブックに、「売春婦は悪い女性ではないことを理解してほしい。彼らは自分の体を売るだけだから。悪い女性というのは国を売る女性だ。」と首相を非難する書き込みをした。これに対して、インラック首相は05月03日、弁護士を通じソムチャイを中傷やコンピューター犯罪法違反などで訴えた。
チャイは書き込みをしたことは認めたものの、「誰かを侮辱したり名誉を棄損する意図はなかった。」と裁判で争う姿勢。
セントラルデパートなどを傘下に持つセントラル・パタナ(CPN)は、所有するデパート近くで政治的な集会が相次ぎ行われていることを受け、それに対する対応を発表。これによると、セントラル・パタナは「政治的な立ち位置について中立を保つこと、また政治的な集会に反対することはしないが、所有する敷地内での集会を禁止する。」としている。同社は、タクシン派および反タクシン派が集会を行なっているラーチャプラソン地区にあるセントラル・ワールドプラザ(CWP)を所有。
06月27日(木)中央行政裁判所は、政府に対し、総工費3500億Bの治水計画のもとで落札業者と契約を締結する前に公聴会を行うよう命じた。これを受け、最大野党の民主党のアピシット党首は、「計画については法令違反があるほか、落札業者の資格を再チェックするという国家汚職制圧委員会(NACC)の勧告に従っていない。」として、閣僚全員の罷免を請求する考えを明らかに。
NACCによれば、「一部の落札業者はプロジェクトを途中で放り出す恐れがあり、プロジェクトを完遂できるかどうかを改めて確かめる必要がある。」
また、行政裁によれば、「落札業者との契約では、公聴会を業者が行うとされているが、公聴会は政府が行うべきで、怠った場合、公聴会を規定した憲法67条に抵触する。」
06月30日(日)反タクシン派の市民による反政府デモがクルングテープ、アユタヤなどで行われた。このグループによる反政府デモは5週連続。警官隊やタクシン派市民との衝突はなかった。
クルングテープではショッピングセンターのセントラルワールドからバンコク芸術文化センターまで数百人(報道により百人)が行進。参加者の多くは国際的ハッカー集団、アノニマスなどが使用するガイ・フォークスの仮面を被り、インラック政権打倒、インラック首相の兄であるタクシンの影響力排除などを訴え、「地方で赤服から脅迫を受けている。」として、警察に警備を強化するよう要求。
国内42都県、米国、香港、オーストラリアで抗議集会。タクシン派の赤服軍団が対抗して政府支持のキャンペーンを行っているが、北部ラムパング県と東北部ウボンラチャータニー県で衝突。軽傷を負う者が出た。アユタヤでは反タクシン派の市民数十人がデモ行進したが、集会を予定していた場所をタクシン派の赤服軍団数百人に先に占拠され、集会場所の移動を余儀なくされた。
一連のデモは反タクシン派の新グループ、V・フォー・タイランドがインターネットの交流サイト、フェイスブックを通じ呼びかけた。V・フォー・タイランドのフェイスブックのサイトには30日までに約11万4000人が「いいね!」をクリック。
タイのインラック・チナワット首相が政権浮揚を狙い中規模の内閣改造。内閣改造名簿はプミポン国王の承認を受け、新閣僚がシリラート病院においてプミポン国王の前で、第5次インラック改造内閣が正式に発足国王の前で宣誓式。
今回の改造でチャルーム副首相(深南部の治安担当)が労相に横滑り。また、プロートプラソップ副首相やタヌサック副財務相は交代が噂されていたが、ともに留任。
なお、インラック首相は地方を視察中に「国王が新閣僚に会われる。」との知らせを受け、急遽バンコクに戻り、政府庁舎に新閣僚を集めて写真撮影してから、入院中のシリラート病院に向かった。だが、チャルームは写真撮影を欠席。副首相ポストを外されたことへの不満表明と見られている。
政権のアキレス腱となった事実上の米買い取り制度を立て直すため、米買い上げ計画で批判を浴びていたブンソン商業相を更迭。チナワット一族の財閥企業元経営幹部のニワットタムロン・ブンソンパイサーン首相府相を副首相兼商務相に起用。また、軍との関係強化に向け、自身が国防相を兼任し、ASEAN初の女性国防相が誕生。
タクシンは国軍を掌握しきれずに軍事クーデターで首相の座を追われることになったが、インラック首相は国軍幹部の間で「兄よりよくやっている。」と比較的評判が良い。

* ニワットタムロン・ブンソンパイサーン
1948年生。タイ国立シーナカリンウィロート大学卒。米IBMタイ法人でセールスマンから叩き上げて経営幹部まで昇進。その後、チナワット財閥の企業で経営幹部を歴任。同財閥の持ち株会社シンの副会長、テレビ会社ITVの会長などを務めた。2012年にインラック内閣に入閣。


2011年に発足したインラック政権は米買い取り制度や2012年に終了した1台目の自家用車購入に対する減税措置などのバラマキ政策で景気刺激と世論の繋ぎ止めを図り、今年以降は治水、高速鉄道などの大規模インフラ整備事業で景気を下支えするはずだった。しかし、インフラ整備事業の遅れが確実となる一方、B高などで輸出が苦戦。米買い取り制度の莫大な損失も発覚し、クルングテープの中間層を中心に政府への批判が強まっている。今回の内閣改造はこうした中、行われた。タイの新聞各紙はインラック首相の兄で政権の最高実力者であるタクシン、インラック首相、姉のヤオワパー下院議員、タクシンの元妻のポチャマンの4人が中心となり、人選を行ったと見ている。
07月01日(月)今回の内閣改造によるインラック首相の国防相兼任に一部で批判が出ていることに対し、「政府と国軍の関係の開眼・強化が目的。」と述べた。
最大野党の民主党のアピシット党首は、「軍による判断や適材適所を無視してタクシン派の息のかかった者を軍首脳に据えることが狙いではないか。」と警戒感を露わにしている。
だが、インラック首相によれば、「これまでは国軍の意向などが首相に伝わるには複数のチャンネルを経由する必要があり、誤解が生じたり、意思の疎通がうまくいかなかったりする恐れがあった。このような問題を解決すべく、首相が国防相を兼ねることにしたもの。」
なお、タクシン派は過去に軍事クーデターで政権の座を追われたことがあり、国軍との関係改善は最重要課題の1つ。
だが、反タクシン派からは、「関係改善に止まらず、国軍を政治的に利用するのではないか。」という懸念の声が出ている。
労働組合の組織であるタイ労働連帯委員会(TLSC)のチャリー委員長はこのほど、内閣改造で副首相から労動相に起用されたチャルームについて、「やる気がなさそうであり、労働政策がよくなることは期待できない。」と述べた。
チャルームは副首相ポストから外されたことが気に入らなかったようで、新閣僚の集合写真の撮影を欠席し、07月02日の初閣議も「定期健康診断のため出席しない。」としている。
インラック首相は、「副首相は政策の実施を監督する立場。だが、今度は労相として政策を実施する側に回ることになったのであり、これまで以上に身を入れて仕事ができる。」と、「労相への異動を不満とするのは筋違いであり、チャルームの機嫌を取る必要もない。」との認識。
07月02日(火)民主党は、「大型治水計画に絡んでインラック首相はじめ閣僚全員に違法行為があった。」として、ニコム上院議長に対して全閣僚の罷免を請求する手続きを取った。「計画の承認などにおいて少なくとも5回にわたり法律に違反した。」という。
ニコム上院議長によれば、請求はその内容を上院がチェックし、要件を満たしていることが確認されれば、15日以内に国家汚職制圧委員会(NACC)に捜査が要請される。NACCがクロと判断すれば、裁判所に対し罷免を求める手続きが取られる。
07月03日(水)反タクシン派グループ、V・フォー・タイランドはインターネットの交流サイト、フェイスブックを通じ、「われわれの活動を脱線させようとしている者たちがいる。」との理由で、クルングテープでの活動を一時休止することを発表。地方の支持者には07日に各地でデモを行うよう呼びかけている。
反政府活動中断に対しては、反対の声も上がっており、「ここで止めたら、ただのお遊びに終わってしまい、支持してくれている人々の信頼も失う。」といったコメントも書き込まれている。
V・フォー・タイランドは06月30日まで5週連続で毎週日曜日にクルングテープのショッピングセンター、セントラルワールドからバンコク芸術文化センターまでデモ行進を行っていた。07月07日のデモを見送り、集会場所を変更する理由は不明。セントラルワールドは営業妨害だとして反政府デモに不満を示していた。
07月04日(木)先の内閣改造で副首相(最南部の治安担当)から労相に異動となったチャルームは、初登庁した労働省で「インラック首相は取り巻きに注意する必要がある。彼らを放置しておけば、首相はいずれトラブルに巻き込まれる。」との見方を示した。
「異動は降格。」と不満をあらわにしていたチャルーム労相は、「深南部3県のテロに終止符を打つことができなかったのは事実。だが、南部指令センターの所長に任命されたものの、所長には何も権限がなかった。」と、任務を遂行できなかったのは自身の責任ではないと訴えた。
なお、チャルームは、新内閣発足後の初閣議を「定期健康診断」を理由に欠席したが、「次回の閣議もその前日に目の手術をするため欠席する。」
エジプトで事実上の軍事クーデターが起きたことを受け、最大野党の民主党のアピシット党首は、「この政変を教訓とすべき。」と述べ、インラック政権に権力を乱用しないよう警告。
アピシット党首によれば、「政府が司法の判断に従い、権力を濫用せず、不正を正当化することがなければ、軍部は政治に不介入だが、道を踏み外せば、その限りではない。」、「国政が適正に機能するには、独立機関とマスコミに制限が加えられず、野党が政府の仕事ぶりをチェックできることが必要。」、「政府にはできることとできないことがあることを認め、国民から与えられた権限を司法の判断に対抗するために乱用しないのが真に民主的な政府。」と指摘。
憲法改正に絡んで裁判所に反発する姿勢などを示しているインラック政権に釘を刺した。
反政府活動を行うV・フォー・タイランドは、SNSフェイスブックのページで、次回のクルングテープでの反政府デモを07月14日15時にルムピニー公園で行うと発表。
前日に「政府批判を一時中断する。」と発表したばかり。集会はルムピニー公園のラーマ6世銅像前で行われ、「インラック首相の実兄、タクシンに牛耳られている現政権の誕生2周年に因んだもの。」という。
07月05日(金)チャルーム労働相が先に、インラック首相の取り巻きを「アイスクリーム・ギャング」と呼び、「彼ら政治家が首相をトラブルに巻き込む。」と指摘したことで閣内に不和。ウォラチャイ、プア・タイ党議員も、「他の政治家が首相に近づくのを妨げている政治家が4~5人いる。彼らは首相を背後から操ろうとしている。」と述べて、アイスクリーム・ギャングが実在するとの認識。
なお、「アイスクリーム・ギャング」とは、「経験もなく、子供じみており、おべっかを使う連中」のことを指している。
07月07日(日)反タクシン派の市民による反政府デモがクルングテープで行われ、200~300人がショッピングセンターのセントラルワールドからクルングテープ芸術文化センターまで行進。参加者の多くは国際的ハッカー集団、アノニマスなどが使用するガイ・フォークスの仮面を被り、インラック政権打倒などを訴えた。
仮面デモを06月30日まで5週連続で開催してきた反タクシン派グループ、V・フォー・タイランドは「07日のデモを見送り、14日に都内のルムピニー公園で次回のデモを行う。」と発表。こうしたことから、07日のデモは反タクシン派の市民が自発的に集まったと見られている。
国外逃亡中のタクシンとユタサック副国防相(元国防次官)の密談と思われる音声クリップがユーチューブに投稿され、波紋を呼んでいる。タクシンの帰国がさらに困難になった上、06月末に就任したばかりのユタサック副国防相が強い辞任圧力に曝され、インラック政権は大きく揺らいでいる。
音声クリップは2人が06月にシンガポールで会った際に隠しマイクで録音されたとみられ、今月06日に投稿された。ユタサック副国防相はタクシンと会ったことを否定し、音声は捏造だと主張。タイ政府はこの音声ファイルへのタイ国内からのアクセスを遮断したが、反タクシン派のメディアがファイルを入手し、自社サイトで公開を続けている。
音声ファイルの会話では、タクシンへの恩赦を国会を経ずに実現するため、タイ軍の協力を得て、緊急勅令の形で恩赦を成立させる方法が話し合われた。ユタサック副国防相とみられる人物は、軍幹部がこの方法に概ね同意しつつあるという感触を伝えた。
タクシンと見られる人物は、「帰国後はタイ王室財産管理局の顧問につき、国王の諮問機関である枢密院の顧問官にはならない。」と述べた。王室財産管理局顧問というポストは政争の終了を印象づける狙いがあるようだ。
ユタサック副国防相と見られる人物はタクシンが帰国後、政治に関与することに強い懸念を示したが、タクシンと見られる人物は「気持よく死にたいだけだ。政治には拘っていない。」などと話した。ユタサック副国防相と見られる人物はまた、「上司のタクシンを帰国させたいと、占い師に聞いてきた。」、「成功するが、大変だぞ、我慢出来るか、と言われた。」などと話した。
軍については、ユタサック副国防相と見られる人物が「チャリット枢密顧問官(元空軍司令官)の手先だったプラチン空軍司令官が、こちら側についた。」、「タナサック国軍最高司令官とも良好な関係を築き、ビルマ南東部ダウェイの開発でタナサック司令官とビルマ軍最高司令官の個人的な関係が利用できる。」と話した。
次の海軍司令官人事については、タクシンと見られる人物がアモンテープ海軍大将を推した。アモンテープ海軍大将の妻はクルングテープの大規模マッサージパーラー「ポセイドン」のオーナー一族で、タクシンの元義父が付き合いがある。
タクシンと見られる人物はまた、インラク首相について、「私と性格が同じ。女性だからソフトだけど、思ったことを口にする。」などと話した。
インラック政権は06月末に内閣改造を行い、首相が国防相を兼任し、インラック政権でいったん国防相を務めたユタサックが副国防相として再度入閣。首相はこの異例の人事を、「マレー系イスラム武装勢力によるタイ深南部のテロ問題に対処するため。」と説明したが、今回の音声クリップが本物だとすると、タクシンへの恩赦、軍人事への介入が狙いだったことになる。また、軍幹部は反タクシン派から政権側に寝返ったことを暴露されたかたちで、政権との関係は険悪化しそうだ。軍幹部は「近くこの問題について協議する。」としている。
ユタサク副国防相は1937年生。陸軍士官学校卒。国防次官を定年退官した後、2001年のタクシン政権で副国防相、2011年のインラック政権で国防相、副首相を務めた。
最大野党の民主党は、「音声が本物なら政治対立の激化と国民の不和をさらに深刻化させることになる」として、政府に対し真相を解明するよう要求。アピシット民主党党首は、話し合いの内容から「権限を乱用するという意図が窺える。これでは平和と国民和解はいつまでたっても実現できないのではないかと懸念される。」と述べた。
また、反タクシン派の政治団体、グリーン・ポリティクスのスリヤサイは、「現在の政治状況から判断すれば、音声クリップは本物と思われる。」、「タクシンはチャルーム副首相(当時)の助けを借りて免罪・帰国を実現しようとしたが、うまくいかなかった。このため、チャルームを労相に異動し、代わりにユタサックを副国防相に起用して企みを進めようとしている。」との見方を示した。
政権党のプア・タイ党関係筋によれば、「密談が暴露されたことで、ユタサック副国防相は、『軍部首脳から信頼されなくなる。』として、インラック首相に辞任の意向を伝えたが、『事実でないことを気にかける必要はない。』と慰留された。」という。
07月08日(月)ユタサックが副国防相に起用される1週間ほど前に、国外逃亡中のタクシンとタクシンの免罪・帰国や国軍幹部の異動などを密かに話し合い、これを録音したとされる音声クリップがユーチューブに投稿された問題で、インラック首相は、「(この件について)ユタサック副国防相と電話で話した。」と認め、「辞任の話は出なかった。」と述べ、「副国防相が辞任を考えている。」との一部報道を否定。また、「政府と国軍は互いに相手の立場を尊重している」と述べて、音声クリップ問題が政府と国軍の関係に悪影響を与えることはない。」との認識を示した。
なお、ユタサック副国防相は、「私の声ではない。」と主張。また、プア・タイ党は捏造との見方を示しているが、国防省関係筋によれば、「タクシンとユタサックが香港の空港内のレストランで会ったのは内閣改造の8日前の06月22日。レストランにいた誰かが会話を録音した可能性がある。」
07月09日(火)ユタサックが副国防相就任前にタクシンの免罪・帰国や国軍首脳の人事などについて、タクシンと密談したとされる問題で、インラック首相は、「軍部が(タクシンらが軍部を利用しようとしていることに反発して)クーデターを起こすとは考えられない。」と明言。
軍関係筋は、密談を録音した音声ファイルについて本物との見方。
一方、インラック首相は、「本人たちの声なのかわからない。誰もまだ本物だと確認できていない。」とコメント。ただ、インラック首相は、偽物とは断言しておらず、本物とみる向きも多い。
また、チャルーム労相が「音声ファイルのせいで政治状況が荒れる。」と指摘したことについて、インラック首相は、「『政治的近況が高まったりするのはよくあること。』と、危機迫る問題ではない。」との認識。
プラチン空軍司令官は、国軍最高司令官と陸海空3軍の司令官が、タクシンとユタサク副国防相の密談を録音したとされる音声ファイルについて協議し、国軍の姿勢を記者会見で発表することを明らかに。
密談は、恩赦によるタクシンの免罪・帰国や、国軍をいかに手懐けるかを話し合ったものとされる。
また、プラチン司令官は、「国軍はいまだにユタサック副国防相を信頼しているのか。」との質問が出たが、直接的なコメントを避け、「記者会見で国軍首脳は、『国益を守ることが任務。』と説明するだろう。」と述べた。
07月10日(水)ユタサックが先の内閣改造で副国防相に起用される1週間ほど前に、タクシンの免罪・帰国、国軍首脳の人事などについて香港の空港でタクシンと密談したとされる問題で、タクシンの長男、パントンテーは、フェイスブック上で、密談を録音したものとされる音声ファイルについて、「タクシン本人の声。」と認めた。「ただ、本人に確認したところ、音声ファイルは実際の会話より短く、何らかの意図をもって編集された可能性がある。」と指摘。
07月11日(木)朝06月末の内閣改造で国防相を兼任したインラック首相が初めて国防省に登庁。ユタサック副国防相(元国防次官)、タノンサック国防次官、陸海空軍および国軍最高司令部の司令官らと会談。
国防省前には反タクシン派の市民数十人が集まり、インラック首相の登庁を妨害しようとし、1人が警察に身柄を拘束された。
首相は国防省・軍幹部と昼食をともにした後、記者会見し、自身の兄で、汚職で実刑判決を受け国外逃亡中のタクシンとユタサック副国防相の会話を隠しマイクで録音したとみられる音声ファイルがインターネット上に流出した件について、「ユタサック副国防相が辞任する必要はない。」との考え。
軍の実権を握るプラユット陸軍司令官は、問題の音声ファイルにプラユット司令官ら軍幹部がタクシンへの恩赦を条件付きで認めたと受け取れる会話が含まれていることについて、「タクシンの帰国を実現するための取引などしていない。」と関与を全面的に否定。反タクシン派が求める軍事クーデターも否定。密談の内容から、軍首脳との裏取引を疑う声が出ているが、プラユット司令官は、「(取引のことなどは)私の職務とは無関係であり、考えたこともない。」と述べた。また、司令官はユタサック副国防相について、「悪い感情は抱いていない。(密談を録音したものとされる)音声ファイルが本物かどうか知るよしもない。こんなことに関わり合うのは非建設的であり時間の無駄。」と述べた。
07月12日(金)反タクシン派グループ、V・フォー・タイランドはクルングテープ都内のルムピニー公園、ノンタブリー、中部アユタヤ、南部スラタニーなどで反政府デモを行う予定で、インターネットの交流サイト、フェイスブックを通じ、参加を呼びかけている。
ルムピニー公園でのデモは14時に公園内のラーマ6世像前に集合で、参加者は1000人程度になると予想される。
V・フォー・タイランドは05月から毎週日曜日にクルングテープのショッピングセンター、セントラルワールドからクルングテープ芸術文化センターまでデモ行進を行っていた。参加者の多くは国際的ハッカー集団、アノニマスなどが使用するガイ・フォークスの仮面を被り、インラック政権打倒、インラック首相の兄のタクシンの影響力排除などを訴えている。
V・フォー・タイランドのフェイスブックのサイトは12日までに約11万9000人が「いいね!」をクリック。
07月14日(日)反タクシン派グループ、V・フォー・タイランドは、クルングテープのルムピニー公園で反政府集会を行った。参加者は警察予想の1000人を下回る200~300人に止まった。
V・フォー・タイランドはインターネットの交流サイト、フェイスブックを中心に支持者を増やし、05月から毎週日曜日にクルングテープのショッピングセンター、セントラルワールドからクルングテープ芸術文化センターまでデモ行進を行っていた。ルムピニー公園での集会は今回が初めて。
参加者の多くは国際的ハッカー集団、アノニマスなどが使用するガイ・フォークスの仮面を被り、インラック政権打倒、インラック首相の兄のタクシンの影響力排除などを訴えている。V・フォー・タイランドのフェイスブックのサイトには14日までに約12万人が「いいね!」をクリック。
07月15日(月)タクシンの顧問のノパドン元タイ外相は、タクシンがカンボジアのフン・セン首相の父親の葬儀に参列するためプノンペンを訪れたことを明らかに。タクシンはすでにカンボジアを出国し、支那に向かったと言う。フン・セン首相の父は12日、89歳で死去した。
タクシンは2006年の軍事クーデターで追放され、国外滞在中の2008年に汚職で懲役2年の実刑判決を受けた。以来、投獄を避けるため、タイに帰国せず、主にドバイに滞在している。フン・セン首相とは首相在任中から親交がある。
オンブズマンは、「カムロンウィット首都圏警察長官がタクシンに会いに行ったのは不適切。」とする調査報告をアドゥン警察庁長官に提出し、30日以内に処分を決めるよう求めている。これに対して、カムロンウィット首都圏警察長官は、「警察当局による調査を甘んじて受ける用意がある。」と述べ、「何も悪いことはしていない。」と強調し、謝罪する考えのないことを明らかに。
カムロンウィットは昨年06月、香港滞在中のタクシンに会いに行ったもので、タクシンがカムロンウィットの首都圏警察長官への就任、警察中将への昇進を祝福している写真が存在する。
オンブズマンは、「法の番人であるべき警察の幹部が、首相在任中の汚職(職権乱用)で禁固2年の有罪が確定しながらも国外逃亡を続けている犯罪人であるタクシンと懇意にし、警察の威信を傷つけた。」としている。
だが、カムロンウィットは、インラック政権が「タクシンはクーデターで首相の座を追われたうえ、反タクシン派によって濡れ衣を着せられた犠牲者。」との立場を取っており、「タクシン(元警察官僚)のような警察官になることを目指している。」と公言。
ユタサック副国防相がタクシンとの密談の中で、「(タクシンの)恩赦を実現すべく国防評議会に協力を求める。」と発言したとされることについて、プラユット陸軍司令官は、「国防評議会にそのような法案の審議を許す規則は存在しない。」と述べ、国軍の協力に否定的な考えを明らかに。
また、軍関係筋によれば、「ユタサック副国防相は法律に詳しく、国防評議会が恩赦案などを取り上げることができないのはわかっているはず。このため、密談を録音したとされる音声ファイルが捏造されたものである可能性がある。」という。
だが、タノンサック国防事務次官は、国会での国防予算の審議における野党議員の質問に答えて「国防相(インラック首相)の要請があれば、国防評議会が恩赦案を審議することも可能。」との見解を明らかに。
07月19日(金)反タクシン派グループ、V・フォー・タイランドはフェイスブックを通じ、21日にタイ各地で反政府デモを行うよう呼びかけている。クルングテープでは14時にショッピングセンター、セントラルワールド前に集合する予定。
デモが予定されているその他の都市は東部チョンブリー市、中部スパンブリー市、アユタヤ市、北部ペチャブン市、ターク市、東北部ルーイ市、ナコンシータマラート市、南部プーケット市、ヤラー市、パンガー市、パタニー市、トラン市。
07月21日(日)8週連続となる反政府デモがクルングテープで行われ、数百人がショッピングセンター(SC)のセントラルワールドからクルングテープ芸術文化センターまで行進。参加者の多くは国際的ハッカー集団、アノニマスなどが使用するガイ・フォークスの仮面を被り、インラック政権打倒、インラック首相の兄のタクシンの影響力排除などを訴えた。
セントラルワールドの運営会社はSC前を立ち入り禁止にしたが、デモ隊はこれを無視して集結。その後、ラーマ1世通を行進し、周辺の交通が麻痺した。クルングテープ芸術文化センター前ではデモ隊が街宣車を駐車しようとして警官隊と小競り合いが起き、何者かが唐辛子スプレーを撒く騒ぎがあった。
デモは反タクシン派のグループ、V・フォー・タイランドがインターネットの交流サイト、フェイスブックを通じ呼びかけた。V・フォー・タイランドのフェイスブックのサイトには21日までに約12万2000人が「いいね!」をクリック。
07月24日(水)范長龍支那共産党中央軍事委員会副主席が来タイ。インラック首相と会談。
インラック首相は会談で、南シナ海の領有権をめぐり、タイと同じ東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国のフィリピン、ベトナムが支那が対立していることに触れ、「タイ政府は問題の平和的な解決を支持する。」と伝えた。
ASEAN加盟国のうち、フィリピン、ベトナムなどは、南シナ海の領有権問題の国際法に基づく平和的な解決を義務付けた「南シナ海行動規範」を支那に飲ませることで、紛争の激化を避けたい考え。支那は領有権問題は2国間で解決すべきとして、「行動規範」策定に難色を示している。昨年07月のASEAN外相会議では、支那から多額の支援を受けている議長国のカンボジアがこの問題で支那を支持し、共同声明が出せない異常事態となった。
インラック首相の兄でタイ政権の最高実力者であるタクシンは昨年10月の米フォーブス誌のインタビューで、「(南シナ海の領有権問題は)2国間で取り扱うべき問題だと(カンボジアの)フン・セン首相に伝えた。」、「私は支那政府と非常に近い関係。」などと述べる支那寄りの支那人。
タクシンは26日に64歳になり、誕生日を香港で迎える予定。タイからは閣僚、与党幹部らが祝賀のため大挙して北京を訪れると見られる。
07月25日(木)複数の反タクシン組織が08月04日クルングテープで大規模な反政府集会を行う計画を明らかに。
最大の反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)東北支部の責任者の1人、タイコンは7月25日、ピタク・サイアム、タイ愛国者ネットワークなど反タクシン組織の代表と話し合い、政権党のプア・タイ党が推す恩赦案の国会審議開始に合わせて集会を実施することで合意。「タクシン政権に反対する人民軍」の名のもとに、複数組織が力を合わせて3万人以上を動員する予定。
関係筋によると、「タクシン派が『政治対立の解消と国民和解の実現のために。政治関連犯に恩赦を適用する口実で、国外逃亡中のタクシンの免罪・帰国を図ろうと企んでいる。』と、反タクシン派は見ている。このため、恩赦案審議でタクシン派がタクシンに便宜を図る姿勢を鮮明にすれば、反タクシン派が一斉に猛反発し、大規模な反政府活動に発展する可能性がある。」という。
毎週日曜日に反政府デモを行ってきた反タクシン派団体、V・フォー・タイランドはインターネットの交流サイト、フェイスブックを通じ、「28日日曜日にはデモを行わない。」と呼びかけた。28日がプミポン国王の長男のワチラロンコン王太子の61歳の誕生日に当たるため。
07月26日(金)国外逃亡中のタクシンの64歳の誕生日である07月26日、クルングテープに隣接するノンタブリ県バンクルアイ郡のケオファー寺では支持者数百人による盛大な祝賀行事。
タクシンは滞在先の北京からの国際電話で、支持者に感謝の意を伝えるとともに「私のことを忘れないでほしい。私は常にタイが直面している問題について考えている。」と呼びかけた。
タクシンの長男パントンテーは、25日夜、「国民和解が最優先。」などと述べて、支持者やタイにいつも思いを寄せていることをアピールするタクシンの動画をユーチューブに投稿。
関係筋は、「タクシンは機会あるごとに『自分は憂国の士』。」と強調する一方、反タクシン派を苛立たせる言動を繰り返しており、「支持者しか眼中にないのは明白。この姿勢が政治対立の解消と国民和解の実現を困難にしている。」と述べた。
07月27日(土)国際テロ組織アルカイダを自称する男らがタクシンの暗殺を予告する動画が、インターネットの動画投稿サイト、ユーチューブに投稿された。動画はすでに削除された。
タイの新聞報道によると、投稿された動画には中東風の服装の男数人が登場し、2004年にタイ深南部で起きたイスラム系住民の弾圧事件について、当時首相だったタクシンを糾弾し暗殺を示唆。動画にはアラビア語、ウルドゥー語、英語が使用された。
タイ政府は今年03月から、タイ深南部の武装勢力の一つであるBRN(パタニー・マレー民族革命戦線)と和平交渉を開始しており、こうした動きに反対する別の武装勢力が作成したという見方もある。タイ深南部はマレー語方言を話すイスラム教徒が人口の過半を占め、タイ語を話す仏教徒が中心のタイでは異質な地域だ。タクシン政権が発足した2001年から、タイからの分離独立を目指すマレー系イスラム武装勢力によるテロが激化し、これまでに武装勢力側のテロとタイ治安当局による弾圧で約6000人が死亡した。2004年04月には、警察派出所や軍基地を襲撃した武装勢力をタイ治安当局が迎え撃ち、01日で武装勢力側108人、治安当局側5人が死亡。同年10月には、住民の逮捕などに反発したイスラム教徒住民約3000人が警察署前で抗議デモを起こし、治安当局による発砲などで7人が死亡、約1000人が逮捕され、逮捕者のうち78人が軍用トラックで収容先に移送される途中、窒息死。
07月28日(日)国際テロ組織アルカイダ系の武装勢力がタクシンの殺害を予告したとされる動画がユーチューブに投稿された件について、国家治安委員会のパラドン事務局長は、動画が偽物との見方を示すとともに、「タクシンは何も心配していない。」と付け加えた。
動画では自動小銃を持ってテロリストの格好をした3人が「タイ最南部のイスラム教徒を殺害した。」などとタクシンを批判し、タクシンの殺害を予告。だが、パラドン事務局長によれば、「最南部の過激派はアルカイダとは繋がりがない。また、3人が真新しい服を着用としていることなどから、反タクシン派が嫌がらせのためにアラブ人にテロリストを演じさせた偽ビデオと考えられる。」という。
07月29日(月)国際テロ組織アルカイダのメンバーらしき男たちがタクシンの殺害を予告した動画がインターネット上に投稿されている件で、プラチャー副首相(治安担当)は、「動画は偽物。」と指摘し、「政府転覆をもくろんでいる者たちの仕業。」との見方。
また、プラチャー副首相は、「動画がタイ国内でアップロードされたものではないため、犯人を捕らえるのは困難。」と説明。また、どの国で動画が投稿されたかには言及しなかったが、「マレーシアではないことは確か。」としている。動画の中では、タクシンを殺害する理由として「(タクシン政権下の)2004年におけるタイ最南部での当局によるイスラム教徒殺害。」が上げられているが、プラチャー副首相は、「タイの政治とアルカイダを結びつけるのは不可能。」と、「アルカイダがタクシン殺害に動き出すことはあり得ない。」としている。
タイ国家安全保障会議のパラドン事務局長は、アルカイダではなく、タイ国内の反タクシン・反政府勢力によるものという見方を示した。
07月31日(水)タイ政府は臨時閣議を開き、治安当局の権限を強化する国内安全保障法を08月01~10日、クルングテープ都内の国会、首相府などがあるドゥシット区、プラナコン区、ポープラープサットパーイ区の3区に発令。
01日に開会する国会で、タクシンらへの恩赦法案が審議される見通しとなり、反タクシン派団体によるデモが予想されるため。恩赦法案はタクシン派与党の下院議員が提出し、07日に審議入りする予定。
同法案に対し、反タクシン派団体は04日に反対集会を開く方針。野党民主党も反対を表明。民主党の重鎮、ステープ議員は、民主党主催の討論会の席上で、「我が党は議会の審議の中で恩赦法案に反対するが、街頭デモを行うこともあり得る。」と、市民組織とともに抗議運動を展開する可能性を示唆。民主党を含む反タクシン派は、「タクシン派のいう『国民和解が目的』は単なる口実。タクシンの免罪・帰国の実現など、タクシン派の利益が本当の狙い」と恩赦法案に強く反発。
タクシンは2006年の軍事クーデターで政権から追われ、一旦帰国していたが、国外滞在中の2008年、汚職で懲役2年の判決を受けて以来、タイに帰国していない。 タクシン派の政府・与党は昨年、タクシンに対する有罪判決の無効化などを含む国民和解法案法案の成立を図ったが、国会議事堂前に反タクシン派の市民数千人が詰めかけ、国会内では与野党の議員がつかみあうなど混乱に陥り、事実上廃案。
国内安全保障法は軍主体の国内安全保障司令部(ISOC)に関係政府機関の動員、特定の建物、地域への進入禁止、外出禁止、集会禁止、移動禁止などの権限を与えるもので、昨年の反タクシン派デモでも発令された。一方、タイ警察は事態の緊迫化を受け、07月27~29日、デモ隊との衝突に備えた訓練を行った。
08月01日(木)08月07日から国会で審議される予定のプア・タイ党ウォラチャイ議員提出の恩赦法案に反対する反タクシン派が、04日から抗議活動を計画。
ウォラチャイ議員は、「恩赦案が原因で騒乱が起きたら、インラック首相は下院を解散すべき。政府は総選挙に向けて恩赦案が誰が恩恵を受けるかを国民によく説明する必要がある。」と明言。タクシン派サイドからは「国民和解を実現するため」として複数の恩赦案が提出されている。
だが、反タクシン派は、「タクシンの免罪・帰国の実現が本当の目的」などと強く疑い、恩赦案に反対する姿勢を鮮明にしている。
これについて、ウォラチャイ議員は、「恩赦案への反対を口実に混乱を引き起こそうとしている。その狙いは軍部による介入(軍事クーデター)。」と批判。
08月02日(金)インラック首相は、テレビを通じて、対立を解消して政治改革を実現するための話し合いに参加するよう関係者全員に呼びかけた。
タクシン派が打ち出した恩赦案が近く国会で審議されることに反タクシン派が反発を強め、大規模な抗議活動に出る構えを見せており、事態がエスカレートするのを避けることが狙いと見られる。
インラック首相は、反タクシン派の市民組織にも話し合いへの参加を求めるとしている。 一方、関係筋は、「恩赦法案を可決させるための時間稼ぎと考えており、話し合いに加わらない可能性がある。」と指摘。
08月04日(日)都内ルンピニー公園で、タクシン派が打ち出した恩赦案とタクシン流政治に抗議する大規模な反政府集会。警察発表では参加者は約4000人。報道により約1000人。
公園内のラーマ6世像前には特別ステージが設けられ、今回の反政府集会を呼びかけたグループ「タクシン流政治を追放するための民主的市民勢力」の主要メンバー、チャイが、鐘を鳴らして集会の開始を宣言。同グループによれば、集会は05日以降も続けられる予定。
「政治対立を解消して国民和解を実現するため、タクシン支持・不支持を巡る政治対立の中で、罪に問われた者たちを恩赦を適用して無罪放免とする。」という恩赦案は、07日と08日に下院で審議されることになっている。だが、反タクシン派は、「国外逃亡中のタクシンの免罪・帰国などタクシン派にとって有利な状況を作り出すことが狙い。」と恩赦案に強く反対。
一方、国内安保法が適用された国会周辺の3区地区には、警察部隊が全国各地から召集され、警戒を強めている。警官隊との衝突は起なかった。
06月からほぼ毎週、日曜日に反政府デモが行われてきた。これまでの反政府デモはインターネットの交流サイト、フェイスブックを活用する団体V・フォー・タイランドが主催したが、今回は退役した軍高官を中心とする団体が呼びかけた。 タクシンは国外滞在中の2008年、汚職で懲役2年の判決を受け、以来、タイに帰国していない。タクシン派の現インラック政権・与党は昨年、タクシンに対する実刑判決の無効化などを含む国民和解法案法案の成立を図ったが、国会議事堂前に反タクシン派の市民数千人が詰めかけ、国会内では与野党の議員が掴み合うなど混乱に陥り、審議は先送りされた。政府・与党は今回、恩赦によるタクシンの帰国を目指している。反タクシン派は昨年同様、タクシンの帰国につながる動きに強く反発し、デモが拡大、過激化する恐れが出ている。
政府はデモの激化に備え、治安当局の権限を強化する国内安保法を08月01~10日、国会議事堂や首相府などがあるバンコク都内のドゥシット区、プラナコン区、ポープラープサットパーイ区の3区に発令した。今回デモが行われたルムピニー公園は対象地区に含まれていない。
反タクシン勢力が政府の推す恩赦案の下院通過を阻止する姿勢を鮮明にしていることから、「反政府活動が暴力に発展する。」、「クーデターが勃発する。」といった噂が広まっている。
暴力については、政府が反政府デモに備えて都内3区に当局に治安対策の強化を可能にする国内安保法を適用したことから、治安部隊とデモ隊の衝突などを懸念する声が出ている。また、社会が混乱に陥ることで、「軍部が政治に介入する。」とする見方もある。また、
国王王妃が先に静養のために入院中のシリラート病院からプラチュアプキリカン県ホアヒンのクライカンウォン離宮に移られたが、「混乱が迫っているため首都から避難されたもの。」との噂も出ている。ただ、関係筋は、「離宮行きは2週間前に予定されていたが、延期されていたもの。反政府集会とは無関係。」と説明。
反タクシン派が反対の姿勢を強めている恩赦案について、プア・タイ党は幹部会議で、これまでの方針通り、ウォラチャイ議員が提出したものを今国会で最初に取り上げることを再確認。ウォラチャイ議員は、国会の承認が不要な政令として恩赦を実現することを条件に恩赦案を取り下げる意向を示していた。
だが、幹部会議では、「すでに最優先議案と決まっているものを変更すべきではない。」との意見が大勢を占めた。
なお、これまでに議会に提出された恩赦法案は合計6つ。
ウォラチャイ案は、タクシン派によるデモを先導した者と、暴力につながった治安対策を命じた者を除き、政治対立関連で罪に問われている者全員に恩赦を適用するとされている。
08月05日(月)タクシンへの恩赦の道を開くと見られる恩赦法案が07日に国会で審議される予定となったことを受け、タイ治安当局は、法案に反対する反タクシン派のデモを阻止するため、国会議事堂、首相府周辺の道路5カ所で一般車両の通行を禁止。 閉鎖されるのはピッサヌローク通、ラーチャウィティー通、ピチャイ通などの一部。
一方、03日に都内のルムピニー公園で集会を開始した反タクシン派団体は06日までルムピニー公園で集会を続ける方針。その後の活動は明らかにしていないが、人数を揃えた後、国会議事堂に向かう可能性がある。
政府は「党派を問わずにあらゆる人々から意見を聞いて政治対立を解消し、政治改革を推進する。」との方針を打ち出し、その具体化の一環として識者からなる諮問評議会を設置しようと企図。
一方、元外交官で実業家としても知られるアナン元首相は、「私は自分が政治的担保として使われることを容認できない。」と述べ、評議会に加わるつもりのないことを明言。
「プア・タイ党は『まだアナンに評議会参加を打診していない。』というが、プア・タイ党幹部からは『プレム枢密院議長やアナンを評議会に加えるべき。』との意見が出ていたことから、アナンは接触に先立ち態度を明らかにしたもの。」という。
政府提唱の「政治改革」については、反タクシン派が強く反対している恩赦法案の議会通過を可能にするための「時間稼ぎ」との見方も出ている。
民主党は、都内でタクシン派が打ち出した恩赦法案などに反対する集会を06日に決行する方針を明らかに。
反タクシン勢力が04日に都内ルンピニー公園で行った抗議集会の参加者数は、「僅か2000人あまり」との警察当局の発表に反発した動きと見られる。警察は当初、「4000人あまり」と発表していた。
民主党の重鎮、ステープ議員によれば、集会はラーチャテウィー区のウルポン高架高速道路下のスポーツグラウンドで06日16時頃から行われ、参加者は翌日朝から国会議事堂前に移動して恩赦案法に反対を表明。
なお、警察が05日、都内3区に適用された国内安保法に基づき、国会議事堂と政府庁舎に続く主要道路を封鎖したため、交通渋滞の悪化が報告されている。
08月06日(火)プア・タイ党のウォラチャイ・タイ議員が提出した恩赦法案が、08月07、08両日に下院で審議される予定。
関係筋によれば、タクシンを含む関係者全員に恩赦を適用するというチャルーム労相の案も、併せて審議されることになった。ウォラチャイ案が最優先だが、同筋は、「議員から要請があり、下院で承認されれば、両案を一緒に審議することも可能。」としている。
だが、チャルーム案の審議については、「タクシンの資産460億Bを没収する。」とした最高裁判決が、無効とされる可能性があることから、民主党が強く反発することも予想される。
民主党の呼びかけで、都内ラーチャテウィ区でタクシン派主導の恩赦法案に反対するための集会が開催された。集会には市民約2500人が参加し、民主党の下院議員も約50人に上った。
同案は下院で07日と08日に審議されることになっているが、アピシット民主党党首は集会参加者を前に、「恩赦法案は、2006年の軍事クーデターから11年の間に市民殺害、手投げ弾攻撃、放火、不敬などの罪に問われた者たちを無罪放免とするもの。」と批判し、民主党が法案の議会通過を全力で阻止する方針であることを再確認。
一方、08月04日から都内ルンピニー公園で恩赦法案に反対する集会を続けている反タクシン派グループは、「今後の行動計画を07日に発表する。」と明らかに。同グループによれば、「これまで行動計画を秘密にしていたのは、当局の妨害工作で目的が達成できなくなる恐れがあったため。」と言う。
タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)が過激な大規模反政府デモの終結を宣言した2010年05月19日、ラーチャプラソン交差点に近いパトゥムワナラム寺で市民6人が射殺されたことについて、クルングテープ南刑事裁判所は、証言や証拠に基づいて「兵士の発砲で死亡した。」との判断を示した。
治安部隊が強制排除に踏み切ったことからUDDはデモ中止を余儀なくされることになったが、治安部隊が同交差点に迫り、デモ参加者が逃げ惑うという混乱の中、同寺院の内外で市民が次々に射殺されることになった。裁判所の説明によれば、「6人はいずれも高速の銃弾に当たって死亡した。銃弾は治安部隊の兵士が使用していた自動小銃から発射されたものと考えられる。」という。
また、デモ隊と行動を共にしていた武装グループの存在を指摘する証言もあったが、裁判所は、「写真や動画もなく証拠に乏しい。」として、市民殺害は同グループの仕業との見方を退けた。
なお、銃弾の速度は、拳銃が秒速240~380m、自動小銃が秒速800~980m程度という。
反政府系団体が現政権への抗議デモを行うことが明らかとなり、在タイ日本大使館より注意喚起。

反政府デモの実施に関する注意喚起(2013年8月6日現在)

1 タイ警察によれば,「ピッタクサイアム」等の反政府グループは、2グループに分かれ各出発地より国会議事堂までの間、反政府デモを計画しています。

【デモ日程】
◎第1グループのデモ実施予定 ・日時:8月7日(水)午前6時~午前9時
・場所:出発地・ルンピニー公園から、国会議事堂までの間
・人数:2,000~3,000人規模の模様
◎第2グループのデモ実施予定
・日時:8月7日(水)午前6時~午前9時
・場所:出発地・ウルポン交差点から、国会議事堂までの間
・人数:4,000~5,000人規模の模様
◎目的:政権与党(タイ貢献党)が提出した「大赦法案」(ワラチャイ議員法案)が国会で審議されることに対する抗議。

2 上記のデモ実施においては,状況に応じて様々な規制が課される可能性がありますので,報道等を通じ,最新情報の入手に努めるとともに,不測の事態に巻き込まれないよう,特に,反政府デモが見込まれる出発地であるルンピニー公園及びウルポン交差点から国会議事堂周辺には可能な限り近づかない等,安全の確保に十分注意を払ってください。

3 また、タイ政府は、バンコク都内3地区(ドウシット区,プラナコーン区,ポム・プラープ・サトルー・パーイ区)に対して,8月1日~8月10日まで国内治安維持法(ISA:Act on Internal Security)を適用していることから、同法の発動により,これら3地区においては状況に応じて,(1)一部交通手段の制限,(2)移動規制,(3)検問所の設置,(4)武器類所持禁止,(5)公共施設への立入制限,(6)安全確保のための電子機器の一時使用禁止等といった様々な規制が課される可能性があります。

(問い合わせ先)
○在タイ日本国大使館領事部
電話:(66-2)207-8502、696-3002(邦人援護)
FAX :(66-2)207-8511
08月07日(水)反タクシン派はタクシンらへの恩赦の道を開くとみられる恩赦法案が07日から国会で審議される予定となったことを受け、国会議事堂前で抗議集会を開くとしていた。民主党は下院の審議で、ウォラチャイ、プア・タイ党議員の恩赦法案の議会通過をあの手この手で阻止しようと試みた。
民主党のアピシット党首(前首相)、チュワン最高顧問(元首相)、ステープ前幹事長(元副首相)、アピラック前クルングテープ都知事ら幹部らを先頭に反タクシン派団体約3000人(報道により1000人以上)が、朝09時過ぎから都内のウルポン交差点から国会に向けデモ行進を開始。だが、国会付近3区に適応された国内安保法(ISA)により、主要道路は封鎖されており、正午前にラチャウェティ交差点で解散を宣言。一方、封鎖を突破しようとして警官と揉み合うなど、デモ参加者5人が逮捕された。
退役した軍高官らが率いる反タクシン派市民グループは都内のルムピニー公園から国会にデモ行進する予定だった。しかし、支持者の多くは民主党のデモ行進に参加したとみられ、ルムピニー公園の集会参加者は一時、数十人まで減少。デモの指導者は「地方の支持者が集結するのを待つ。」、「初日の法案審議の行方を見守る。」などとして、行進を中止。
国会議員だけが国会に向かった。国会では、タクシンらへの恩赦の道を開くと見られる恩赦法案は、13時から国会で審議される。下院で安定多数を占める与党に押し切られる形で、20時頃から最優先議案とされる同案の審議が始まった。今回の審議は第1読会の通過後、第2、第3・最終読会が行われることになる。
民主党は「最終読会が始まった時点で再び抗議集会を決行する。」、「法案の議会通過阻止に向けて最後の最後まで闘いを続ける。」としている。
08月08日(木)プラチャー副首相は、今月10日まで適用されている国内安保維持法について、期限前に解除する可能性を示唆。タイ地元紙によると、今朝方から関係機関が会議を開いており、結果次第で解除される見通し。
午後政権党プア・タイ党のウォラチャイ・議員が提出した恩赦法案は、2006年から続くタクシン派、反タクシン派の政治抗争で投獄、訴追された者に対し、包括的な恩赦を与える内容。下院での審議は民主党の抵抗で長引いたが、賛成300票、反対124票、棄権14票で第1読会を通過。今後、閣僚3人、各党の下院議員32人の計35人からなる委員会で内容を精査したあと、下院が1週間以内に内容を追加修正するか否かを決めて下院で第2読会、第3・最終読会が行われることになる。争点は恩赦の対象で、タクシンが含まれるかどうかが焦点。
なお、民主党が法案に反対しながら内容の精査を拒否しなかったことについて、民主党幹部のチュリン議員は、「民主党が法案精査をボイコットするのは政府の思うつぼ。」と説明。野党民主党は国会では数で負けると認識しており、憲法裁判所で法案の合憲性を争うと見られる。憲法裁は過去数年、タクシン派に不利な判決を下し続けている。
インラック首相は、国会や首相府などがある都内のドゥシット区、プラナコン区、ポープラープサットパーイ区の3区に発令した国内安全保障法を解除。インラック首相は、「反政府デモ隊による国会乱入などの危険が薄らいだ。」と判断。反政府団体による抗議デモが当初の予想より早く沈静化したことが、解除の理由としている。
国内安全保障法は治安当局の権限を強化するもので、政府は反政府デモ対策のため、01~10日に発令。治安当局は解除を受け、国会周辺の一部道路の封鎖を解いた。
タクシン派の政府与党はタクシンらへの恩赦を目的とした恩赦法案を国会に提出し、07日から下院(定数500)で審議が始まった。国会周辺では法案の審議入りにともない、反タクシン派による大規模なデモが予想されていたが、07日に野党民主党が率いる1000人 規模のデモ隊が国会近くまで行進して解散した以外は目立った混乱はなかった。
これに先立つ06日、アドゥン警察長官らは記者会見で、ワチラロンコン王太子に状況を説明し、警備方法について助言を受けたことを明らかにした。「王太子は状況に懸念を示していた。」という。
08月11日(日)インラック首相は、政府が来月開催を予定している国民和解を目的としたフォーラム「未来に向けた結束 お互いの経験から学ぶ」にブレア元英首相やアナン元国連事務総長ら世界の著名人が出席する予定を明らかに。
非公式に「招請を受け入れる。」との連絡があり、「正式な返答を待っている。」という。首相府によれば、同フォーラムは09月02日にクルングテープで開催予定。
インラック首相は、「国際的に知られた著名人が参加するフォーラムを定期的に開催することを考えている。」という。
政府が「国民和解を実現する目的」として世界の著名人を集めたフォーラムを開催するとしていることについて、民主党の広報担当、チャワノン議員は、「反タクシン派が強く反対している恩赦法案の議会通過が狙い。」との見方。
これまでにフォーラム参加を非公式に伝えてきたとされるブレア元英首相やアナン元国連事務総長に対し、「タイ政府が著名人を利用しようとしている。」と説明し、出席を控えるよう求めることを明らかに。
また、同法案の議会通過を阻止すべく、アピシット民主党党首が、民主党の幹部らに、タイ駐在の各国大使や国際機関のタイ事務所に「政府が権限を乱用して恩赦を実現しようとしている。」と説明するよう指示。
国家人権委員会は先に、2010年03~05月のタクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)による過激な反政府デモを「市民の権利を侵害するもの」と結論づけた調査報告を公表。
プア・タイ党の広報担当、プロムポン議員は日、「証拠や情報を部分的、恣意的に取り上げたもので、受け入れ難い。」と同報告に強く反論。
92ページに及ぶ同報告では、「デモは計画性、イデオロギー、明確な目的が欠如していた。一方で、UDD首脳部は結束を欠き、大衆を制御できず、このため、デモは暴動へと発展した。」などと指摘。
また、当時の民主党政権についても、「非常事態法や国内治安法など特別法を適用したことがデモ隊にさらなる圧力をかけ、暴力的な衝突を招くことになった。」と、「対応に問題があった。」としている。
08月12日(月)政府から「政治対立を解消するための政治改革協議」への参加を打診されたことに対し、チャワリット元首相は、「国内が平穏になって初めて協議をする意味があり、平穏を取り戻すのに必要ならば恩赦法案の取り下げも検討しなければならない。」との考えを明らかに。 恩赦法案は、最大野党・民主党など反タクシン派が反発する中、先に第1読会を通過したが、反タクシン派がさらに大規模な抗議運動を展開する可能性があり、混乱に拍車がかかることが懸念されている。
関係筋によれば、「タクシン派の念願は、国外逃亡中のタクシンの免罪・帰国を実現すること。そのために必要なのが恩赦法案の議会通過で、政治改革協議はその環境作り戦術の1つ。従って、タクシン派が協議を成功させるために法案を取り下げることは考えられない。」という。
08月13日(火)インラック政権が09月02日にクルングテープで開催を予定している、世界の著名人などを集めた「政治改革フォーラム」にアナン元国連事務総長が、参加しないことが明らかに。
アナンが理事長を務める基金の担当者によれば、先約があり、「出席しない。」とタイ政府に連絡済み。
民主党のアピシット党首は、同フォーラムについて「タクシンが画策している憲法309条改正を実現するための策略の一環。」との見方を示すとともに、元総長や元英首相など世界の著名人に出席を求めるという政府の決定を「イメージアップが狙い。」と批判。
309条の改正は、2006年09月に軍部がクーデターでタクシン政権を追放したあとに設置された軍事暫定政権が、現行憲法制定の前後に執った措置とそれに付随する措置を合法とする。タクシンは「この条文を改正あるいは削除して、関係当局による捜査、それに伴う有罪判決などを無効とし、自らにかけられた罪をすべて払拭することを狙っている。」という。
08月14日(水)インラック首相が「政治対立を解消するため」として「国内外の著名人による政治改革フォーラム」を提唱していることに対し民主党の幹部、チュリン議員は、「タクシンの野望を実現することだけが狙い。」と厳しく批判。民主党は当初からフォーラム開催に批判的で、政府は「過剰反応」としている。
チュリン議員は、「フォーラム開催が憲法を改正して、タクシンにかけられた罪を帳消しにするための策略の一環であるのは明らか。」と述べている。
08月15日(木)政府は09月02日、世界の著名人などが出席する「政治改革フォーラム」の開催を予定。
一方、「ブレア英元首相に出演料として2000万Bを支払った。」との一部報道について、スラポン副首相兼外相は、「(出席予定者らは)無報酬でフォーラムに参加する意向を伝えて来ている。」と否定。「人権問題の専門家、プリスシラ・ヘイナーについては、日割り計算で日当が支払われる。」という。
フォーラムは、「政治改革で不安定な政局を解消する。」との政府の方針に沿って開催されるものだが、政府は並行して、反タクシン派を含めた関係者全員からなる「政治改革会議」を立ち上げようとしている。
反タクシン派は、「狙いはタクシンの免罪・帰国」などと警戒感を強めており、最大野党・民主党のアピシット党首は、「政治改革会議設置の目的は(タクシンの罪を帳消しにするための)憲法の全面的書き換え。」と改めて政府を批判。
民主党の広報担当者の補佐役、マリカ議員がインラック首相の修正写真をネット上で使用したことを問題視し、法務省特別捜査局(DSI)は、捜査する方針を明らかに。
ただ、タリットDSI局長は、捜査することを決めた理由として「インラック首相は国のトップであるため。」と説明。
市民団体は、「憲法で、国家元首は国王と決められている。」として、「タリット局長の発言は不敬」と厳しく批判。また、民主党は、「修正写真の件を捜査すると決めたタリット局長の判断は問題。」との見方を明らかに。
08月18日(日)反タクシン派のグループ、V・フォー・タイランドがインターネットの交流サイト、フェイスブックなどを通じ呼びかけた反政府デモが、クルングテープのショッピングセンター(SC)、セントラルワールド前であり、約200人が参加。
参加者の多くは国際的ハッカー集団、アノニマスなどが使用するガイ・フォークスの仮面を被り、インラック政権打倒、インラック首相の兄のタクシンの影響力排除などを訴えた。参加者の一部はセントラルワールドから南のルムピニー公園まで、一部は東のクルングテープ芸術文化センターまで行進。
今回のデモには職業訓練校の生徒約50人も参加。首都圏の職業訓練校は銃、ナイフ、爆弾などを使った学校間の抗争事件で知られる。


43章  タクシンの利得論議 改憲・恩赦・2兆B、機動隊出動で強行採決
08月20日(火)憲法改正をめぐる上下両院の合同会議で上院議員選出に関する憲法改正案の第2読会が開始。
与野党が激しく対立し、下院議長が呼び入れた警官と野党議員が揉み合う騒ぎ。議長選任、野党・民主党議員の質疑制限、国会議事堂を警備するための機動隊の出動、強行採決などに民主党議員が強く抗議したことから、審議が繰り返し中断される大荒れ。
合同会議はニコム上院議長を議長として開始されたが、民主党議員はニコム上院議長が改憲支持の署名をしていたことから「中立性に問題がある。」と抗議。このため、ソムサック下院議長が議長を務めることになったが、現在約半数が任命制の上院議員を全員公選制とする改憲案に対し、野党民主党の一部議員が猛反発し、議事進行が困難と判断したソムサック下院議長が、「時間がかかりすぎる。」などの理由で、質疑する民主党議員の人数を当初の57人から2人に減らそうとしたことで民主党が猛抗議。
一部の民主党議員を議場から退出させるため、議場に警官を呼び入れた。民主党議員の一部は退出を拒否して警官につかみかかり、このうちの1人が警官の首を絞めるなどした。議場は混乱状態。
このほか、警察官が議場内でニコム、ソムサック両議長を取り囲んで民主党議員が近づけないようにしたことや、国会議事堂周辺の警備のために機動隊が出動したことにも民主党議員が抗議。このため、合同会議は中断、再開が繰り返されて実質的な審議がほとんど行われないまま21時45分に閉会。
08月21日(水)上下両院の合同会議で、上院議員選出に関する憲法改正案が、賛成349反対157で可決。
この改正は、上院議員が連続して任期を務めることを可能とするもので、官報による発表の翌日に発効する。来年03月07日に任期満了となる上院議員77人(公選)は、上院議員選挙に再び立候補することが可能になる。
前日には、野党議員が警官の首を絞めるなど議場は一時、混乱に陥った。
08月23日(金)2008年にタイ首相府や2空港を占拠した民主主義市民連合(PAD)の創設者で実業家のソンティ・リムトーングクン、チャムロン・シームアン元クルングテープ都知事ら幹部8人が辞任を表明。
ソンティらは辞任について、「テロ容疑などで訴追されて裁判所命令でデモ参加が禁じられたことから、自由に活動できなくなった。また、裁判所の命令に反してデモを率いたとしても、将来的に国・国民のためになるという保証はないため、脱退を決めた。」という。「組織力が弱体化しており、反タクシン陣営の民主党は、人材が豊富で、力もあるものの、政府を批判するばかりで断固たる行動に出るのを渋っている。PADのように犠牲を払っていない。民主党の下院議員は辞職して街頭デモに参加すべき。」と「民主党の存在そのものが、政治を良くするための努力を妨げる要因になっている。」と強く批判。
反タクシン派の中核である特権階級は、PADなど反タクシン派団体、軍、司法、民主党を軸にタクシン派と争ってきた。しかし、軍への影響力は低下が噂され、民主党は2001年以降3回の総選挙でいずれもタクシン派政党に大差で破れた。また、昨年後半にPADが活動停止状態になって以降、反タクシンの街頭デモの動員力は数百~1千人程度に落ち込んでいる。
反タクシン派の力に衰えが見える中、タクシン派のインラック政権は、汚職で実刑判決を受けたタクシンへの恩赦法案の成立を図る一方、政治対立の解消を目指すとした政治フォーラムを25日から開催し、タクシンの帰国、復権に向けた動きを強めている。こうした状況の中、PAD幹部が戦線を離脱し、しかもタクシン派ではなく民主党を強く批判したことは、タクシン派への側面援護となりそう。
タイ字紙が消息筋情報として報じたところによると、ソンティとタクシンは2011年にクウェートで密談したとされる。ソンティは密談を否定したが、その前後に、ソンティが政治集会で「特権階級」を批判する発言を行った。
来年度予算案審議で、民主党は、法務省特別捜査局(DSI)を政府寄りと批判。DSIに割り当てられる予定の予算10億Bを5%削減するよう要求。
ワチャラ民主党議員によれば、「タリットDSI局長はタクシン派に甘く、民主党を含む反タクシンには厳しいため、DSIでは適切な判断に基づいた正しい捜査が行われていない。」
このような指摘に対し、チャルーン下院副議長は、議場にいない者に言及するのを控えるよう要請。また、プア・タイ党の重鎮、チャルーン労相も「ナンセンス。」と反論。
08月25日(日)「政治対立を解消するため関係者全員が協力して政治改革を推進する。」とのインラック首相の提唱により立ち上げられた「政治改革会議」の初会合を政府庁舎で開催。会議に出席したのはインラック首相、バンハーン元首相、チャワリット元首相、タクシン政権を追放した2006年の軍事クーデターを指揮したソンティ元陸軍司令官、ピーチャイ元国会議長(元民主党党首)といった政治家、学識者ら約70人。しかし、反タクシン陣営の2大勢力、民主党と反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)は参加せず、反タクシン派の民主党、上院議員約40人は参加を拒否。民主党は「会議は国民の目を(与党が国会で進める)憲法改正から逸らすためのものだ。」としている。会議出席者からも「このままでは実りある話し合いはできない。」といった声も聞かれた。
会議は今後、政治、経済、社会の3つの作業部会を設置し、政府への提言を取りまとめる予定。
また、タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)の代表として会議に出席したティーダ♀は、「政治的駆け引きのために会議を利用すべきではない。」と述べ、民主党などを暗に批判。だが、関係筋によれば、反タクシン派は、「タクシン派の提唱する『政治改革』も結局のところタクシンの免罪・帰国の実現が狙い。」と強く疑っており、民主党などが政治改革会議に無条件で参加することは考えにくい状況。
タノンサク国防事務次官によれば、プレム枢密院議長は、議長の自宅を訪れたインラック首相や国軍首脳と約15分にわたり話し合い、首相を支持するよう国軍に要請。プレム議長は26日に94歳の誕生日を迎えることから、プラユット陸軍司令官、アドゥン警察長官ら、タイ軍・警察の幹部とともに、誕生日の祝賀のため、プレム議長宅を訪れた。タイのテレビ報道によると、「プレム議長は軍・警察幹部に対し、国益のため、インラック首相を助けるよう述べた。」
プレム議長は、国軍の実質トップ、陸軍司令官を務めたあとに政界入りし、1980年から8年にわたり首相として国政を担当。このため、現在でも国軍内にはプレム氏の信奉者が少なくないとされる。一方、プレム議長は、タンシン流政治に当初から批判的であり、タクシン派から、軍部がタクシン政権を倒した06年9月のクーデターの黒幕との批判を受けたこともある。
だが、インラック政権は、タクシン派の勢力基盤をさらに拡大するには「国民和解に向けた努力」を演出する必要があると判断してか、プレム議長との関係改善を図る姿勢を鮮明にしている。
08月26日(月)反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)からの離脱を表明したソンティは、一定の条件が満たされれば、長年にわたり敵対関係にあるタクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)と手を組むことも可能との考えを明らかに。
ソンティは、「UDDが不平等の解消と国民生活の向上を目指しているのなら、PADと目標は同じであり、協力してゆくことができる。」、ただ、協力の前提条件は、「UDDがタクシンと縁を切り、王室に否定的な態度を取らない。」というもの。
関係筋は「UDDは、タクシンを大ボスとするプア・タイ党を批判することもある。だが、仮にUDD首脳部が脱タクシンに舵を切ったら内部で猛反発を食らうのは必至。ソンティの示した条件を受け入れるのは困難。」との見方。
08月28日(水)上院議員選出などに関連する憲法改正案の第2読会において、民主党のアピシット党首は、「上院議員200人を全て選挙で選ぶのであれば、現行の選挙区を見直す必要がある。」との考えを明らかに。現在は150人が選挙区制で選ばれ、残り50人は指名制となっている。
アピシット党首によれば、「全国77都県を40の選挙区(定数5人)に分割するのが望ましい。」と言う。さらに、「上院と下院の役割は異なる。上院の権限は行政府の役割と直接にはリンクしておらず、上院議員には中立性が必要。」と強調。
08月29日(木)陸軍関係筋が明らかにしたところによれば、プレム枢密院議長(93)が28日夕方、腹痛を訴えてプラモンクットクラオ病院で検査を受けたところ、肺と結腸に異常が見つかったことから、そのまま入院。29日には精密検査が行われた。議長の側近によれば、病院の医師が30日に議長の容体などについて記者発表する予定。
側近は、「プレムは健康そうで、普通に話すこともできる。
政府が「政治対立を解消するため」として立ち上げた「政治改革会議」に反タクシン陣営の2大勢力、最大野党民主党と民主主義市民連合(PAD)が参加拒否の姿勢を崩していないが、アピシット民主党党首が与党チャートタイ・パッタナー党のバンハーン顧問団長(元首相)と会議出席に向けて話し合う用意のあることがわかった。
バンハーンは、政治改革会議のもとに設置された3つの改革委員会を監督する立場にある。アピシット党首によれば、「民主党は門戸を閉ざしたわけではなく、障害が取り除かれれば、政治改革会議に参加することも可能。バンハーン氏とは、どのようにすれば障害を取り払うことができるかを話し合いたい。」とのこと。
08月30日(金)「腹痛を訴えて入院した」と報じられたプレム枢密院議長について、プラモンクットクラーオ病院のチュムポン院長が、記者会見で現在の容体などについて説明。
「プレム議長は19日に定期健康診断のため同病院を訪れ、検査の結果、過去に受けた右肺の手術の痕が炎症を起こしていることが判明したため、29日に入院し手術を受けた。手術は成功し、現在は体調も良く、普段通りに話すこともできるが、あと1週間程度の入院が必要。」
08月31日(土)政府が立ち上げた「政治改革会議」は、反対派欠席のまま始動したが、与党チャートタイ・パッタナー党のバンハーン顧問団長(元首相)は、アナン元首相、マグサイサイ賞受賞者のプラウェートに加え、反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)を率いてきたソンティ、最大野党の民主党の幹部らに会議への参加を要請する考えを明らかに。
ほか、バンハーンは、チャートタイ・パッタナー党の幹部に対し、「チュアン元首相(元民主党党首)に会って会議への参加を求めるよう指示した。」と言う。
09月02日(月)午前クルングテープで開かれた「政治改革フォーラム」で世界の著名人らが「時間をかけて国民の意見を纏めなければ、国民和解は実現しない。」などと指摘したのに対し、タイ政府は、「指摘は政府の基本方針に合致する。」として、反タクシン派の反発にも拘らず、『政治関連犯に恩赦を適用する。』という法案の議会通過を目指す必要がある。「との認識を改めて強調。
「未来に向けて結束 お互いの経験から学ぶ」と題されたフォーラムは、「政治対立を解消するため対話を通じて政治改革を推し進める」というインラック首相の提唱に基づいて、クルングテープ中心部に位置するプラザアテネホテルで国立チュラロンコーン大学安全保障国際問題研究所とテワウォン・ワローパカン国際問題研究所の共催という形で開かれた。
ここでトニー・ブレア元英首相、マルティ・アハティサーリ元フィンランド大統領らゲストスピーカーは、「国民和解は国民全員が共通認識を持って初めて実現する。」、「和解には『信頼』が必要。」などと指摘するとともに、インラック政権の推す「政治対立を解消し、国民和解を実現するための政治関連犯への恩赦適用」にも言及。
これを受け、ポンテープ副首相は、「恩赦が特効薬ではないという意見には同意する。」としながらも、「政府は恩赦実現に向け今後も努力する。」と述べて、政府の方針に変更のないことを再確認。
恩赦法案については、「国民和解が目的。」と政府が説明しているものの、反タクシン派は「タクシンの免罪などが狙い。」と強く反対しており、政府がごり押しすれば、政治対立が再びエスカレートしかねない状況。
タイ訪問中のブレア元英首相が最大野党の民主党のアピシット党首とコーン副党首と会って政治改革について意見を交換。この会談は、ブレア元首相が政府主導の政治改革に民主党が不参加を表明していることを知ったことから、自ら希望し実現したもの。
アピシット党首らはブレア元首相に対し、「インラック政権は政治改革を推進するとしているが、不誠実であり、その言い分を額面通りに受け取ることはできない。」、「(インラック政権の求める)政治関連犯への恩赦適用は、対立の溝を深め、政治システムに悪影響を与えるものであり、民主党は恩赦法案の国会審議を拒否している。」などと説明。会談後、ブレア元首相は英国大使公邸でアピシット党首らと昼食を共にした。
09月08日(日)議会では09月09日から5日連続で上下両院の合同会議を開き、上院議員関連の憲法改正案を審議することになっているが、民主党によれば、「政府は野党議員や上院議員の反対意見を封じ込める戦術に出て審議が大荒れに荒れるのは必至の情勢。」
アピチャート同党議員は、「04日の審議では、民主党議員107人の質疑が予定されていたにもかかわらず、7人が質問に立っただけで議長が審議を終わらせた。プア・タイ党は同じ手を使ってくるだろう」としている。
なお、上院議員関連の改憲案は、13に分けられており、これまでに承認されたのは6つのみ。
インラック首相は欧州4カ国歴訪のため、スワンナプーム空港を出発。
15日までにスイス、イタリア、バチカン、モンテネグロを公式訪問し、各国首脳と会談するほか、スイス・ジュネーヴで開催される国連人権理事会(UNHRC)の本会議でタイの首相として初めて演説する。
「モンテネグロを訪れるのは私的な理由によるもの。」との見方が出ていることについて、インラック首相は、スワンナプーム空港で欧州への出発を前に報道関係者の質問に対し、「招請があったため、モンテネグロを訪れることにした。この訪問はタイの観光業にプラスになるもの。また、タイの国連安保理の非常任理事国入りにモンテネグロの協力を求めるつもり。」と述べて、訪問がタイの国益につながると強調。
今回の歴訪では、モンテネグロが含まれていることが注目されている。モンテネグロは、国外逃亡中のタクシンに便宜を図っており、タクシンはモンテネグロ発給の旅券を所持している。また、タクシンは、モンテネグロのホテルに投資している。このため、民主党などからは、「タクシンとのつながりからインラック首相はモンテネグロ訪問を決めた。」といった見方が出ている。
欧州の小国モンテネグロは、人口が62万4000人(2008年)とタイの約100分の1、面積が1万3800㎢あまりとタイの約4分の1。
09月09日(月)インラック首相が先に開始を宣言したプロジェクト「スマート・レディー・タイランド」に関連して、民主党のアピシット党首が、「仮に『馬鹿な女』のコンテストというものがあれば、インラック首相の右に出る者はいない。」と述べたとされることについて、スラナン首相秘書官は、「アピシット党首は発言に注意した方がいい。その発言で、誰が愚かで誰が賢いかがわかる。」と反論。
スラナン秘書官によれば、「プロジェクトは女性の社会進出を促進するとともに、知性を女性の美しさのひとつと認めるよう社会に呼びかけることを目的としたもの。また、民主党は政権の座にあった際、女性開発のために何もしておらず、プロジェクトを批判する資格はない。」」
09月10日(火)午前タイ国王の諮問機関である枢密院の議長、プレム・ティンスラーノン元首相(93)が、肺炎手術のために入院していた都内のプラモンクットクラウ病院を退院し、都内の議長宅に戻った。予定より数日、退院が遅れたが、術後の経過は順調。
プレム議長は08月19日に健康診断を受けた際に、以前に受けた肺の手術の跡で炎症が起きているのが見つかったことから、手術のために29日から入院していた。93歳と高齢であることから、容体を心配する声も多かったが、「現在は肺の炎症に起因する症状も出ていない。」という。
最高裁判所は、消防車の不正調達疑惑をめぐり起訴されていたプラチャー・マリーノン元副内相とアティラック・タンチュキアット元都庁防災室室長に、それぞれ禁固12年、10年の有罪判決を言い渡した。
サマック元首相(故人)がクルングテープ都知事時代の2004年に、オーストリアのメーカーから消防車315台と消防艇30隻を購入する契約を結んだが、「高い買い物」との批判を受け、関係者が罪に問われることになった。
両被告は裁判所の命令を無視して出廷せず、プラチャー元副内相はテレビ局チャンネル3の運営会社BECワールドなどを所有するマリーノン家の一員で、タイ有数の富豪。判決公判に出頭せず、国外に逃亡したとの見方が有力。
タイ汚職防止撲滅委員会が、プラチャー元副内相、アティラック元都庁消防・救援局長、アピラック・コーサヨーティン前バンコク都知事、ポーキン・ポラクン元内相、ワタナー・ムアンスク元商務相、オーストリアのシュタイル・ダイムラー・プーフ・シュペツィアールファールツオイク社を訴えていた。購入契約当時に知事だったサマック・スントラウェートは死去したため訴追しなかった。
なお、今回の判決で最高裁において大臣在職中の不正で実刑判決を受けたのは、計4人となった。これまでにラキアット元保健相、タクシン元首相、ワタナー元副内相が、在職中の土地取得や廃水処理場建設などに絡む不正で有罪が確定している。
一方、信用状の発行を命じたアピラック元知事と、ボーキン元内務相、ワタナー元商業相には無罪の判決が言い渡された。
契約はシュタイルから消防車315台、消防船30隻を67億Bで購入するというもので、2004年08月、サマックが都知事の任期最終日に承認し、後任のアピラックが信用状に署名。アピラックは内務省など関係機関に確認し、「契約不履行で訴えられる可能性がある。」と指摘され、署名に応じた。
政府は閣議で欧州の小国、モンテネグロの公用旅券保持者を対象に、タイ入国ビザを免除するのを承認。
これに対して、国立チュラロンコーン大学のパニタン講師(国際関係学)は、「私の知る限り、ビザ免除が適用されるのはタイと特別な関係にある国だけ。モンテネグロはそのような国ではない。」と指摘。モンテネグロが国外逃亡中のタクシンに旅券を発給したことから、「ビザ免除は旅券発給に対するお礼ではないのか。」と疑問を呈した。ビザ免除は、外務省が提案したものだが、パニタン講師は、「どうしてこのような提案をしたのか理解に苦しむ。」
また、インラック首相は現在欧州を公式訪問中だが、モンテネグロも訪問先に含まれており、反タクシン派から「正当な理由がない。」との批判が出ている。
なお、パニタン講師は、反タクシン派のアピシット政権(2008~2011年)で首相副秘書官を務めた。
09月11日(水)クルングテープ都庁の消防車・消防艇購入に絡む不正で、先に最高裁判所がプラチャー元副内相とアティラック元都庁防災室室長に有罪判決を言い渡したことを受け、資金洗浄対策室(AMLO)は2人が不正に取得した資産を没収する方針が明らかに。2人は裁判所の命令にもかかわらず、10日の判決言い渡しに出廷せず、プラチャー元副内相は、国外逃亡したと見られる。
シハナートAMLO室長によれば、判決文のうち不正蓄財に関する部分を詳しくチェックし、資産没収が可能か、どの資産を没収するかなどを決定する考え。
また、プラチャー元副内相は2007年09月19日まで観光スポーツ相を務めている。
閣僚に義務づけられた資産報告を行っているが、資産が6億2390万B、債務が37億2000万Bで、妻は資産5590万B、債務無しだった。
09月17日(火)民主党は、議会で審議中の上院議員関連の憲法改正案が憲法に抵触する。」として、違憲かどうかを判断するとともに同案を差し止めるよう憲法裁判所に要請。憲法改正案はすでに第1、第2読会を通過しており、第3・最終読会を残すのみ。
民主党幹部のチュリン議員によれば、「立憲君主の否定や非民主的な手段による政権奪取を禁じた憲法68条に違反する。」
09月19日(木)大型インフラ整備計画のための2兆B借り入れ案の第2読会が開始され、インラック首相は、借り入れの必要性を改めて強調し、「借り入れ案が仮に否決されても下院を解散するつもりはない。」と明言。
民主党のアピシット党首は読会において、「通常予算で賄うべき。」と主張。「借り入れを許せば、この先50年にわたって借金に苦しめられることになる。」と警告。
タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)による2010年の過激な派大規模反政府デモの最中に91人が死亡したについて軍当局の責任を追及する動きがあることに対し、プラユット陸軍司令官は、 「警察の捜査チームがトップ交代に伴い、軍に罪を着せようとこれまでと異なる結論を導き出そうとしている。」などと批判。
司プラユット令官によれば、反政府デモ当時、治安維持の任にあった警察幹部も治安当局によるデモ対策を支持していたはずであり、また、裁判所も「デモ参加者を殺害した者の特定は困難。だが、警察の捜査チームは上層部が交代したことで、軍に責任があると結論づけようとしている。」
タクシン政権を追放した2006年の軍事クーデターから7年。タイ字紙最大手タイラットは国外逃亡中のタクシンとテレビ電話でインタビューを行った。
タクシンは「タイはクーデターで7年を無駄にした。」として、クーデター後に軍事政権が制定した現行憲法の改正、政治抗争による受刑者や訴追されている人への恩赦などを主張した。恩赦で帰国できた場合、政治抗争集結の象徴として、タイ王室財産管理局顧問に就任するという噂については、「それについては内々で話し合った。」と述べた。
タイラットは反タクシン派の野党民主党の重鎮であるステープ元副首相のインタビューも行い、ステープはタクシンへの不信感を露わにし、「タイの所有者は国民だ。(タクシンの)チナワット家ではない。」などと話した。
2001年に発足したタクシン政権は低額医療制度の導入などで、それまで政治に無視されてきた中低所得者、地方住民の圧倒的な支持を受けた。自信を深めたタクシンは特権階級、軍、官僚、国営企業などの利権構造に切り込んだが、これに反発した特権階級はタクシンを反王室の腐敗政治家と糾弾し、軍事クーデターでタクシン政権を打倒。
タクシン派は2007年末の民政移管選挙で勝利し、政権に復帰。しかし、反タクシン派デモ隊による首相府や首都圏の2空港の占拠で追い込まれ、2008年末、裁判所命令で「選挙違反」により政権を失った。その直後、タクシン派から寝返った勢力と民主党の会合が軍基地内で持たれ、両者による新政権が発足。
タクシン派はこうした動きに対し、「特権階級が軍、司法を動かし、民主主義と法治を捩じ曲げている。」と主張。2009年、2010年に反タクシン派政権打倒のデモを実施。010年にはデモ隊と治安部隊の衝突で91人が死亡、約2000人が負傷した。2011年の下院総選挙ではタクシン派が再び勝利し、タクシンの妹であるインラックが首相に就任、現在に至る。
タクシン派と反タクシン派の抗争は当初、新興財閥と既得権益層の権力闘争とみられたが、徐々に、階級闘争や、民主主義と権威主義の対決という色合いが強まった。ただ、不敬罪を使った言論弾圧が存在する上、論理的思考が苦手とされる国民性もあり、国民の間で問題の本質に関する議論、理解は深まらず、好き嫌いの感情論が幅を利かせている。
政治の場では、反タクシン派は軍事クーデター、司法による政権打倒という禁じ手を使ったものの、選挙で勝てず、タクシン派の死命を制することに失敗した。反タクシン派の力の源泉である軍では、現状では時間が経てば経つほどタクシン派が有利という読みがあり、反タクシン派からタクシン派に乗り換える動きが見られる。
ただ、タクシンを担いで従来の権力・利権構造を一部修正した上、維持するという方法も残されている。タクシンがタイ王室財産管理局顧問に就任すれば、こうした形が象徴的に示されることになる。
09月22日(日)市民組織、タイ改革人民会議の幹部、ソムキアットは、「インフラ整備のための2兆B借り入れは憲法に抵触する。」として、法的措置を執る方針。
借り入れ案は20日に下院の第3・最終読会を通過し、数日中に上院で審議、承認される見通し。
タイ改革人民会議では、全国でヒアリングを行って市民の意見に耳を傾けた後に法的措置を執る予定。タイ改革人民会議は、「インフラ整備には反対ではないものの、借り入れとなると通常の予算チェックができず借入金が適正に使用されない恐れがある。」と懸念。
タイ改革人民会議は、57に及ぶ市民団体が先に政府の政治改革会議に対抗して立ち上げた組織。
09月28日(土)議会で承認された憲法改正案について下院議員と上院議員のグループが、それぞれ「違憲」との訴えをソムサック下院議長に提出。だが、ソムサック議長は、「(これらの訴えに基づいて)憲法裁判所に判断を求めるつもりはない。」と明言。
憲法改正案は、民主党の議員が抗議のため議場から退出したあとに採決が行われ、358対2で第3・最終読会を通過。その直後、民主党議員のグループと上院議員のグループが「改憲案は違憲」との訴えを議長に提出したが、ソムサック議長は、「2年前にも同様の訴えがあり、憲法裁に判断を求めたものの、結局受理されなかった。」として、訴えを取り上げない考えを明らかにした。
だが、民主党幹部のチュリン議員は、「国会議長には、憲法に関する国会議員からの訴えを憲法裁に伝える義務がある。」と反論している。
なお、議会を通過した改憲案は、首相が20日以内に承認を得るために国王に提出する必要がある。このため、「憲法裁に判断を求めた場合、国王に承認を求めたあとに違憲判断が下っても、20日以内に承認を求めなかったとしても、インラック首相は罪に問われる。」との見方が出ていた。ソムサック議長の今回の発言は、このような事態を回避しようとしたものと見られている。
議会で承認された政府主導の憲法改正案を「違憲」とする訴えが憲法裁判所に提出されたことについて、プア・タイ党関係筋はこのほど、「改憲案が違憲とされたなら、政府は解散総選挙に打って出る準備を進めている。」と明らかに。
政府は現在、経済状況の悪化という問題にも直面しているが、もし憲法裁が改憲案を違憲と判断したなら、解散総選挙の大義名分となり、「経済政策の失敗による解散総選挙」という形を取らずに済む。また、インラック首相が国民から一定の支持を受けていることもあって、総選挙が実施されれば、プア・タイ党が再び勝利する可能性が高い。
一方、「改憲案が違憲とされた場合、プア・タイ党が解党、党執行委員が公民権停止という処分を受ける恐れがある。」との見方もある。だが、同筋は、「インラック首相は、改憲案審議にほとんど出席しておらず、責任を問われる可能性はない。これは、首相を守るという党の法律専門家チームと戦略委員会の作戦。」としている。なお、タクシン派は過去に党の解散・党執行委員の公民権停止という処分を受けていることから、プア・タイ党の有力議員は執行委員を務めておらず、インラック首相は、党首でも執行委員でもない。
09月30日(月)議会を通過した上院議員関連の憲法改正案を「違憲」とする訴えを、憲法裁判所が受理したことを受け、ポンテープ副首相は、「憲法裁が立法府の権限を侵害することがあってはならない。」と述べ、「憲法裁判所が改憲案を違法と判断することは容認できない。との考えを明らかに。
改憲案を「違憲」とする2つの訴えは、上院議員と下院議員の2グループが憲法154条に則って改憲の発効を阻止すべくソムサック国会議長(下院議長)に提出したもの。これについて、ポンテープ副首相は、「憲法裁は過去に『154条は憲法改正には適用されない。』との判断を示しており、今回もこれに従うべき。」としている。だが、上院議員グループなどは、「どのような法案も適用対象。」と反論。
10月01日(火)反タクシン派団体、民主主義市民連合(PAD)の創設者で実業家のソンティ・リムトーングクンが不敬罪に問われた裁判で、タイ控訴裁判所は、1審の無罪判決を覆し、禁錮3年の有罪判決を言い渡した。だが、被告の証言が有用だったことから刑期を1年減刑し、禁錮2年の実刑を言い渡した。ソンティは即日上告し、保釈保証金30万Bを納め、保釈された。
ソンティは2008年07月、PADの集会で演説した際に、タクシン派の「ダー・トーピドゥー(魚雷)」ことダラニー・チャーンチョエングシルパクン♀が行った国王を批判する演説の一部を引用し、不敬罪に問われた。ダラニーはその後、不敬罪で禁錮15年(報道により18年)の実刑判決を受け服役中。
ソンティは1審で無罪となったが、検察が控訴。控訴裁は「ソンティがダラニーの演説の内容を繰り返す必要性はなかった。」として、逆転有罪判決を下した。
「PADは反タクシン、王室守護という立場で、ソンティが集会で国王批判演説の内容を繰り返したのは、反王室のイメージがあるタクシン派への的外心を煽ることが狙いだった。」と、一般的には見られている。ただ、「不敬罪に問われた演説に不必要な毒がちらついていた。」という見方もあり、控訴審の逆転有罪判決は、こうした見方に与したとも取れる。
王室に関する不適切な発言や書き込みは、引用も不敬とされる可能性があるため、マスコミでそのまま報じられることにない。
ソンティは自ら創業した新聞社の経営状況を偽って国営銀行から約11億Bの融資を受けたとして証券取引法違反に問われ、2012年、1審のタイ刑事裁判所で懲役20年の実刑判決を受けた。即日控訴し、保釈されたが、他にもPADによる夜2008年の空港占拠の損害賠償、名誉棄損などの裁判を抱えている。
民主党のタウォン副党首は、「検察はタクシンをテロ罪で起訴するのを見送った。」と述べた。
この容疑は、タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)による2010年の過激な反政府デモに国外逃亡中のタクシンが関与していたというもの。検察関係筋によれば、検察は09月、嫌疑不十分で不起訴とすることを決めたとのこと。また、01日にそのポストに就任したアタポン検事総長は、「就任したばかりで何も聞いていない。タウォン副党首の指摘が事実なら、いずれ部下から報告があるだろう。」と述べた。
10月02日(水)憲法裁判所は、国王に上院議員関連の憲法改正案の承認を求めるのを差し止めるよう求めた訴え2件を「要求に従う合理的理由が存在しない。」として却下することを決定。
議会を通過した憲法改正案は、01日にインラック首相が署名し、国王の承認を得るための手続きが執られていた。また、憲法裁は02日、改憲案を違憲とするピラパン民主党議員の訴えの受理を明らかに。
ピラパン議員によれば、「改憲案の採決で政権党プア・タイ党の議員数人が欠席した議員の代わりに票を投じており、憲法に違反する。」という。訴え受理を受けて、民主党は、インラック首相に対し、「改憲案が違憲とされる可能性がある。」として、国王が承認する前に憲法改正案を取り下げるよう要求。なお、法律では、「国王による法案承認は、法案提出から90日以内。」と規定。
10月03日(木)反タクシン陣営が反対している政府支持の憲法改正案について、アムポン内閣官房長官は、「内閣官房は、国王による承認について現在も王室と調整中であり、改憲案をまだ提出していない。」と発表。
インラック首相が01日に改憲案に署名し、「承認を得るために憲法改正案を国王に提出する手続きが取られた。」と報道されていたが、「議会で承認されたあと20日以内に首相が陛国王に提出し、国王は提出から90日以内に承認。何らかの理由で国王の承認が得られなかった場合、上下両院が承認し発効する。」と法律で定められている。
だが、改憲案を違憲とする訴えを憲法裁判所が受理したことから、改憲案が無効とされる可能性が出てきた。その場合、「違法な法案に国王の承認を求めたことでインラック首相が罪に問われる。」との指摘もあり、政府は承認の請求に慎重になっている。
10月04日(金)午後不敬罪で投獄されていた元タイ共産党員でタクシン派団体、デェーン・サヤーム(レッド・サイアム)幹部のスラチャイ(70)が恩赦で出獄。
スラチャイは2010年にクルングテープやチエンマイなどで開かれたタクシン派の集会でタイ王室を批判する演説を行ったとして、2011年02月に逮捕され、保釈を認められないまま、2012年02月に禁錮7年6ケ月の実刑判決を受けた。スラチャイは控訴せず、プミポン国王に恩赦を嘆願し認められた。
一方、インターネットの掲示板に国王を侮辱する言葉を書き込んだとして、ノッパワン・タングウドムスック♀が不敬罪などに問われた裁判で、2審のタイ控訴裁判所は02日、1審の無罪判決を覆し、禁錮5年の実刑判決。1審では「ノッパワンが書き込んだ確証がない。」として無罪だった。
不敬罪はタイ国王夫妻と王位継承者への批判を禁じたもので、違反した場合、1件につき最長15年の懲役が科される。人権保護団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW、本部ニューヨーク)によると、1990年から2005年にかけ、不敬罪の裁判は年4、5件程度だったが、反王室のイメージがあるタクシン派と特権階級を中心とする反タクシン派の抗争が激化した2006年以降は累計で400件以上に上る。タイでは殺人容疑でも保釈されるケースがあるが、不敬罪の容疑者は、有力者、著名人、反タクシン派でない限り、保釈がほとんど認められない。
チャルーム・ユーバムルング労相が、クルングテープ都内のラマティボディー病院に入院し、硬膜下血腫で緊急手術を受けた。術後の経過は良好で、食事をしたり、話したりできる。
チャルーム労相は1948年生。警察勤務を経て、1990年代前半から複数の政権で閣僚を務めた。国会討論や演説に強い。国外逃亡中のタクシンに近く、「タクシンの帰国を実現する。」と度々発言。今年06月の内閣改造で副首相から労相に転任した。アーターン、ワンチャルーム、ドゥアンチャルームの凶暴息子3人は暴行、殺人の犯行で逮捕されたが、チャルームの圧力により証拠不十分でいずれも無罪。
10月06日(日)プア・タイ党関係筋によれば、国外逃亡中のタクシンが1人息子の長男のパントンテー・チナワット(33)を、自分の後継者とするため、プア・タイ党から下院選に立候補させることを考えている。
タクシンは首相在任中の汚職(職権乱用)で禁固2年の有罪が確定した犯罪人だが、プア・タイ党の実質的オーナーであることは周知の事実。
パントンテーは最近になってSNSフェイスブックへの書き込みを通じて現政権、父であるタクシン、その実妹のインラック首相をたびたび擁護するなど政治的な言動が目立っており、政界入りが濃厚。
同筋は、「タクシンは今のところパントンテーを生まれ故郷でタクシン支持者の多い北部チエンマイから出馬させるか、比例代表で出馬させるか決めかねている。」と述べている。また、「タクシンは来年09月に定年退官するカムロンウィット首都圏警察長官を、プア・タイ党から下院選に出馬させることも検討中。」という。
10月07日(月)インラック首相が提唱した政治改革に反タクシン派などの協力が得られない状況が続いている。与党の チャートタイ・パッタナー党のバンハーン顧問団長(元首相)は、「複数の要人に直接会って政治改革会議への参加を呼びかけたが、誰も首を縦に振らない。この先、しばらくは要人への働きかけはしない。」と明言。
政府は先に立ち上げた政治改革会議に様々な分野の代表に出席してもらい、「実のある話し合いによって政治対立を解消したい。」として、08月にバンハーンに対し、反タクシン派やリベラル派の大物に会議出席を打診するよう要請。だが、アナン元首相、反タクシン派のソンティーやチャムロン元クルングテープ都知事、マグサイサイ賞受賞者のプラウェート、チュアン元民主党党首(元首相)などから出席の約束を取り付けることはできなかった。
関係筋によれば、タクシン派以外は、「『政治改革を通じて政治対立をなくし、国民和解を実現する。』という政府の説明に懐疑的。」という。
最大野党の民主党のアピシット党首などは「目的は他にある。」と批判し、協力しない姿勢を明らかにしている。
国外逃亡中のタクシンの長男のパントンテー・チナワットは、「タクシンが息子を政治家にさせようとしている。」との報道に対し、フェイスブックに「政治は嫌い。自分で選択できるなら、選挙には出ない。」などと書き込み、政界入りに消極的な考えを明らかに。
パントンテーは、「本当の民主主義が実現して父(タクシン)が晴れて帰国できるまで、(叔母に当たる)インラック首相をボディーガードとして支えることを望む。」と述べた。
また、プア・タイ党のプムタム幹事長は、「現政権は任期がまだ2年ほど残っており、近い将来に総選挙が実施されることはない。」、「パントンテーを候補として擁立することは考えていない。」と明言。
クルングテープのルムピニー公園で2ケ月にわたり座り込みを行っていた反タクシン・反政府派の市民グループが、首相府前に集会場所を移動。人数は数十人から200人程度で、王党派の退役将軍らが中心的な役割を担っている。目的や今後の行動は明らかにしていない。警察はこれを受け、首相府周辺の一部道路を進入禁止にし、警戒態勢を強めている。
10月08日(火)現政権に批判的な市民団体などが政府庁舎前で続ける座り込みが、長期化する可能性があることから、警察当局は政府庁舎の警護に当たる警察官を増員する措置。新たに動員されたのは首都圏警察、チョンブリ県警、ラヨン県警に所属する機動隊員など。
08日時点で座り込みを続けているのは約250人。
大型インフラ整備計画のために2兆Bを借り入れるとの案が上院の第1読会を賛成86反対41で通過。これを受け、第2読会に向けて内容を精査する委員会が設置された。
また、審議が18時間に及んだ第1読会では、「借入案は政府にどんなプロジェクトの実施も可能にするもの。」などと批判する意見が出たが、チャチャート運輸相は、「財務省に借入を許すというもの。インフラ・プロジェクトの実施承認は案に含まれていない。」と反論。
タクシンは、インターネットの交流サイト、フェイスブックに、「私と私の国(1)」と題した回顧録を書き込んだ。
話の前半は2001年のスワンナプーム空港の建設をめぐる日本との交渉。当時首相に就任したばかりだったタクシンはスワンナプーム空港の旅客処理能力を当初の計画の年3500万人から4500万人に増やすため、設計をやり直すよう指示。スワンナプーム空港の建設に円借款を供与する予定だった「日本政府はこれに驚き、当時の駐タイ日本大使がタクシンのもとに駆けつけ、計画変更に強硬に反対した。」という。タクシンは「大使は入札のやり直しで日本企業が外されることを恐れている。」と判断。「日本政府が円借款を供与しないなら、タイ国内の国営銀行から資金を調達すればいい。」として、計画変更を推し進めた。「結果として、建設コストは大幅に下がり、日本大使はその後、円借款を使って欲しいと頼み込んできた。」という。タクシンはスワンナプーム空港の旅客数がすでに処理能力の限界に達していることも指摘し、自らの交渉術と先見の明をさり気なく誇示した。
タクシンは支那滞在中の2008年に、タイで汚職で禁錮2年の実刑判決を受け、以来、タイに帰国していない。主にドバイに滞在しているが、フェイスブックへの書き込みによると、現在は北京に滞在し、支那政府要人との会合やゴルフで日を送っているようだ。


44章  支那李克強訪タイ名目で国内治安法 反タクシン抗議集会拡大
10月09日(水)タイ政府は臨時閣議で、クルングテープ都内の一部に国内治安法の適用を決定。反タクシン反政府派の市民グループが07日から首相府前で座り込みの抗議集会を開始したほか、11~13日には支那の李克強首相がタイを訪問することが理由。
適用されるのは、首相府、国会などがあるドゥシット区、プラナコーン区、ポムプラプサトゥルーパイ区の一部。適用期間は18日まで。庁舎の警護に警官隊1200人を動員する。 政府庁舎近くのピサヌローク通では、ルンピニー公園で約1ケ月前から座り込みをしていた者たちが移動してきて07日から座り込みを続けている。
国家治安委員会(NSC)のノパドン事務局長によれば、「座り込みをしている者たちは56に及ぶ反タクシン・グループに抗議への参加を呼びかけており、座り込みが長期化する恐れがある。このため、国内治安法適用は正当化できる。」とのこと。
タイ政府・与党が進める上院の全議席を公選制とする憲法改正法案について、野党下院議員142人と上院議員68人が憲法裁判所に上院議員関連の憲法改正案を違憲とする2つの訴えを却下。これらの訴えは憲法154条の規定を理由に起こしていたもの。だが、憲法裁は、「憲法291条は、改憲に関する訴えは憲法150条、151条、154条に基づかねばならないと規定している。」として訴えを退けた。
憲法改正法案は09月28日に国会で可決された。国会で承認された法案は可決から20日以内に首相が国王に署名を求めることが憲法で義務付けられているが、政府は憲法裁の判断を待ち、国王への法案提出を遅らせていた。
軍事政権下の2007年に制定された現行憲法では、上院は定数150で、77議席はタイの全77都県から各1議席を選挙で、残る73議席は憲法裁長官、最高裁判事、選挙委員会委員長らからなる委員会が選ぶ。最高裁判事、選挙委員会委員らは上院で選ばれるため、軍事政権下で任命された反タクシン派の上院議員、裁判官らが互選で権力の座に居座ることが可能。2011年の下院総選挙で政権に復帰したタクシン派はこうした仕組みを打破するため、上院全議席を公選とし、定数を200増員する憲法改正案を国会で通過させた。反タクシン派は国会での抵抗は困難と見て、司法の場で巻き返しを試みている。
10月10日(木)都内ルンピニー公園から政府庁舎周辺に移動して座り込みを続けていた反タクシン団体は、警察との話し合いの結果、退去を決定。
支那の李克強首相がタイを公式訪問するとともに、警察が「座り込みについて罪に問わない。」と約束したことから、退去することに合意。
座り込みをしていた者たちの一部は移動を始めたが、約300人が退去するのを拒み、庁舎からやや離れたウルポン交差点に陣取り、渋滞を引き起こした。
李首相のタイ訪問が終わり次第、庁舎周辺での座り込みを再開する予定。
10月11日(金)02時頃都内ラーマ6世通のウルポン交差点で行われていた反政府集会に火炎瓶が投げ込まれ、2人が軽い怪我をしたほか、テントと駐車中のタクシー1台が破損。
犯人は現場上の高速道路から、ドリンク剤の瓶にガソリンを入れた火炎瓶4本と「渋滞を起こしている。別の場所に行け。」などと書いた紙を投げ落とした。
反政府集会を行っていたのは反タクシン派の市民グループ。07日からタイ首相府前で数十~300人規模の座り込みの反政府集会を行っていたが、11日から支那の李克強首相がタイを訪問するため、タイ政府の説得を受け、10日午後、一部がウルポン交差点に移動していた。
検察が2010年の過激な大規模反政府デモに関連して罪に問われたタクシンを不起訴したことについて、09月30日に検事総長を定年退官したチュラシンは、下院政治開発マスコミ小委員会で、「タクシンは当時タイ国内にいなかったからだ。」などと釈明。
タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)によるデモでは、国外逃亡中のタクシンも「過激な行為を煽った。」などとして送検されることになった。
また、タクシンの不起訴については先に民主党議員が指摘したことを受け、10月01日に検事総長に就任したアタポンが10日、「検察が不起訴としていた」と認めた。
チュラシンによれば、「タクシンはデモを扇動する発言をしていたものの、国内にいない者をタイの司法当局が裁くことはできない。また、タクシンの指示などがあったとしても、デモの最中のテロ行為は国内にいた者たちが自らの判断で行ったものであり、責任はこれら実行者にある。」
10月12日(土)インラック首相は、「反政府デモが脅威でないと判断したなら、早期に解除する用意がある。」と述べた。治安当局の権限強化を可能とする国内治安法は18日まで適用されることになっているが、治安当局の判断で数日中に解除される可能性が出てきた。
デモ隊は警察との話し合いの結果、政府庁舎周辺から退去した一方、退去に反対する参加者が庁舎からやや離れたウルポン交差点で座り込みを続けている。これについて、パラドン国家治安委員会(NSC)事務局長は、「座り込みは参加者が少なく長続きしないだろう。」との見方。
10月13日(日)首都圏警察は、「反タクシングループが政府庁前などで座り込みをする恐れがある。として、庁舎の周辺道路にコンクリート製プレートを設置するなどして封鎖する措置を執った。同地域は治安対策における当局の権限強化を可能にする国内治安法の適用対象地区で政治集会などが禁止されていることから、首都圏警察は道路封鎖を合法としている。
一方、政府庁舎からやや離れたウルポン交差点では、座り込みを続けていた反タクシングループに反タクシン派の市民が加わり人数が増強されることになった。
同グループの代表は、「我々は政府庁舎周辺に戻って座り込みをするつもりはない。」と明言。警察による道路封鎖については、「地方の住民が座り込みに参加するのを阻止することが狙い。」と批判。
また、同グループが政府に要求は、国外逃亡中の犯罪人タクシンに連絡を取らない、テロ容疑でのタクシン不起訴に反対する同グループの意見に耳を傾ける、不起訴を決めたチュラシン前検事総長を政治的な役職に就けない、の3つ。
このほか、政府庁舎周辺からルンピニー公園に戻って座り込みを続けている反タクシングループは、「ウルポン交差点の座り込みに参加するかは未定。」としながらも、「我々もタクシンへの恩赦適用に反対し、タクシン派政権(インラック政権)を終わらせようとしている。目指すところは(ウルポン交差点のグループと)同じ。」と表明。
10月14日(月)クルングテープ都内ウルポン交差点で座り込みを続けている、反タクシン派の集会への参加者が増加。
事態を重くみたスポン首相副秘書官は、「都民から集会を終わらせてほしいとの要望が出ており、スクムパン都知事には責任がある。」として、交通渋滞を解消すべく集会を終わらせるよう要請。副秘書官によれば、都庁は電気、飲料水、移動式トイレなどを提供しており、間接的に反政府集会を支援しており、これが集会継続の要因となっている。
また、警察庁のピヤ報道官は、「ウルポン交差点の集会について事前に都庁に許可申請があったかを、文書で都庁に問い合わせた。」ことを明らかに。これに対し、ワサン都知事顧問は、「許可申請は来ていない。」と述べ、「今になって都庁の対応を疑問視するのは理解に苦しむ。」と反論。また、飲料水などの提供については、「都庁にはどのような抗議集会であれ、参加者の便宜を図る義務がある。」と説明。都庁による要請に関しても「集会参加者の要求は政府に対するもの。都庁は無関係で、交渉することはない。」としている。
10月15日(火)ウルポン交差点で反政府集会を続けている反タクシン派の代表、ウタイは、「政府庁舎に向けデモ行進することを計画している。」との噂を否定。
集会場所を移動するのは、「ウルポン交差点が危険と判断した場合のみで、この場所で座り込みを続ける。」と述べた。現在、大勢の市民が交差点の片側車線を占拠しているが、「集会参加者が増加しても、反対車線を封鎖せずに対処する。」と付け加えた。
また、警察が集会場所をスパチャラサイ競技場近くに移すよう要請したことに対し、ウタイは、「集会場所として安全なのは警察庁本部と首都圏警察本部の敷地内だけ。」と述べて、警察の求めに応じない考えを示した。現在、政府庁舎周辺に国内治安法が適用され政治集会が禁止されているが、「解除されたなら、集会場所を政府庁舎近くに移す可能性がある。」という。
なお、パラドン国家治安委員会(NSC)事務局長によれば、ウルポン交差点の反政府集会は現在、参加者が400~500人で、当初に比べ倍増している。
10月17日(木)支那が今後5年間にわたり年間100万tのタイ米を輸入するとの政府の説明について、国会審議で、ヤンヨン副商業相は、「支那との間で正式に合意されたものか。」とのワロン民主党議員の質問に対し、「まだ正式合意には至っていない。」と述べて、現段階ではまだ非公式であることを認めた。
「政府間取引での年間100万tの米輸出入は、先にタイを公式訪問した支那の李克強首相がインラック首相に伝えたもの。」という。ただ、ヤンヨン副商業相は、「支那政府首脳の言葉は覚書より拘束力がある。」としている。
これに対し、ワロン議員は、「政府は想像を現実であるかのように語っている。政府が昨年11月に『支那は2013年からの3年間で500万tのタイ米を輸入す。と発表したのと同じ。(今回の年間100万t輸出も)国民に誤解を抱かせるもの。と批判。
外国や国際機関との条約締結における議会の承認などを規定した憲法190条の改正案が16日の上下両院合同会議で第2読会を通過したことについて、民主党のアピシット党首は、「議会承認を必要とする条約を限定するという改正は、議会によるチェック、すなわち国民によるチェックを軽視するもの。」と批判。
「改正によって、条約を締結するまで、その中身が国民に知らされないという事態が懸念される。」という。また、現在EUとの間で自由貿易協定締結に向けた話し合いが進められているが、アピシット党首は、「(改憲によって議会のチェックが弱められた結果)EUの求める知的所有権の保護強化をタイが受け入れ、タイ国民が高い医薬品を買わされかねない。」なお、憲法190条改正案の最終・第3読会は11月初めに行われる見通し。
10月18日(金)パラドン国家治安委員会(NSC)事務局長は、期限を迎えるクルングテープ都内3地区に適用中の国内治安法を来月30日まで延長。
治安対策における当局の権限強化を可能にする国内治安法は、政府庁舎周辺での反政府デモがエスカレートする恐れがあったことから、政府がドゥシット区、プラナコン区、ポムプラムサトゥルーパイ区の都内3区に10月09~18日に適用することを決めていた。
パラドン事務局長は、「政府庁舎に近いウルポン交差点で反政府集会を続けている者たちが、国内治安法の解除に伴い政府庁舎前に移動する恐れがある。このため、適用期間を延長することになった。」と説明。
第1読会を通過した恩赦案を精査していた下院委員会は、修正を加えた恩赦案の内容を承認。
だが、修正がタクシンへの没収資産返却などを意図したものと見られることから民主党が「修正は憲法違反。」などと強く反発。
プア・タイ党のウォラチャイ議員が提出した恩赦案は、先に第1読会を通過。第2読会に向けて内容を精査する委員会が設置されたが、同委員会は精査の過程でプラユット、プア・タイ党議員の提案を入れて内容を一部修正し承認。
「タクシンが恩恵を受けるのは明らか。」といった批判が出ており、アピシット民主党党首は、「修正された案が議会を通過すれば、政治家にも恩赦が適用される。これは原案の目的を逸脱するもの。」としている。
10月19日(土)先に下院委員会がプア・タイ党の意向に沿った恩赦案修正を承認したが、プア・タイ党の実動部隊、反独裁民主主義同盟(UDD)のティーダ議長は、「UDDが修正恩赦案を支持することはない。」との見方。
恩赦案は、過去数年間に起きた政治絡みの事件、とりわけ2010年のUDDによる大規模反政府デモに関連して罪に問われた者たちに恩赦を適用して政治対立の解消し、国民和解の実現を図ろうというもの。また、修正は、国外逃亡中のタクシンの免罪などを可能にするため恩赦対象を政治家にまで拡大することが狙いと見られている。
だが、大規模反政府デモで大勢の死傷者を出したUDDは、「当時の当局者の責任を追及すべき。」としていることから、当時の民主党政権首脳などの政治家に恩赦を適用することに否定的な立場を取っている。ティーダ議長は、「最終的に誰が恩赦対象となるかを見極める必要があるが、UDDの支持者たちは修正恩赦案に反対するだろう。」と述べた。
10月20日(日)恩赦の適用対象を拡大するとした恩赦案が先に下院委員会で承認されたことに対し、人権弁護士協会のパイロート会長は、「修正は、プア・タイ党がタクシンの免罪を狙ったもの。」と指摘。「プア・タイ党は数の力に頼り、反対派と妥協することを拒んでおり、反対派の反発がエスカレートするのは避けられない。」との見方。
また、国際的な人権NGO、ヒューマン・ライツ・ウォッチのスナイも、「2010年の大規模反政府デモで大勢の死傷者を出した反独裁民主主義同盟(UDD)は、政府が責任者を裁くことを望んでいるが、この願いに対する裏切り行為」と指摘し、UDDの反発も必至との考えを明らかに。スナイによれば、「プア・タイ党は、恩赦対象を拡大することで軍部、タクシン、大規模反政府デモ当時の政権党の民主党も喜ぶと考えているようだが、民主党を含む反タクシン派は修正に抗議する動きを見せており、修正のせいで政治対立が激化するのは避けられない。」
10月21日(月)民主党は、インラック政権の汚職体質を暴くとした2ケ月間に及ぶキャンペーン「パブリック・アジェンダ・パート2」を開始。アピシット民主党党首によれば、「インラック政権は大型プロジェクトの入札などで透明性の確保を怠っており、国家予算の多くが汚職に消えている。大型治水計画では投入予算の30~40%が政治家、役人、業者などの懐に入ることになる。」という。
午後プア・タイ党のチャルーム労相が、労働省内で国家麻薬制圧委員会のポンサパット事務局長と会談中に倒れてラマティボディ病院に緊急搬送。診察した医師によれば、「チャルームは手が硬直した状態だが、意識もはっきりしているが、しばらく入院して経過を観察する必要がある。」という。
なお、チャルームは先に硬膜下血腫が見つかり手術したばかり。数日後に退院して公務に復帰したが再度の入院となった。
10月23日(水)国外逃亡中のタクシンが与党の修正恩赦案を支持していることが判明。タイ字紙とのインタビューの中でタクシンは、「政治対立を乗り越えて国を前進させるもの。」と修正恩赦案を評価。タクシンはプア・タイ党幹部に電話を入れ、一部議員の反対意見に耳を傾けずに「プア・タイ党議員は恩赦案の第2読会、第3・最終読会で賛成票を投じなければならない。」と主張。 反タクシン派からは、「修正はタクシンの免罪などが狙い。」との批判意見が出ているが、「私のための恩赦案修正ではない。」と反論。
また、タクシンは、「(争いあっている)私たちはそのうちこの世を去る。私たちの子どもたちが、私たちのせいで傷ついたこの国に住み続けなればならない。」と述べ、このような状況から抜け出すためには修正恩赦案によって国を仕切り直す必要があるとの見方。
プア・タイ党の実動部隊、反独裁民主主義同盟(UDD)に所属する議員らは、恩赦案に反対。修正恩赦案では、「政治家も恩赦対象に含める。」との修正が加えられており、2010年の大規模反政府デモ鎮圧に関連して、罪に問われている当時の民主党政権首脳も恩赦対象に含まれることになる。大勢の死傷者を出したUDDは、「デモ鎮圧を命じた当時の民主党政権首脳の免罪は許されない。」と反発。
関係筋によれば、「UDD所属議員らは、「タクシンへの恩赦適用には賛成。だが、当時のアピシット首相(民主党党首)とステープ副首相(民主党議員)も恩赦で免罪とするのは反対。」と説明したが、タクシンは意に介さなかった。タクシンは、「UDD所属議員が少数であるため無視できる。」と考えているようだが、すでにUDD支持者から強い抗議・不満の声が上がっており、この動きがエスカレートすることも予想される。
また、民主党は「濡れ衣を着せられた。」としており、民主党首脳やタクシンを含む関係者全員に恩赦を適用することには反対。
タクシンの主張とは裏腹に、修正恩赦案が政治対立の激化を招きかねない状況。
10月26日(土)タイ政府によると、タイとカンボジアの国境紛争地域の領有権に関する国際司法裁判所(オランダ・ハーグ)の判決が11月11日に下される。タイ政府は判決後に国境周辺で軍事衝突が起きないよう、カンボジア政府と事前協議を進めている。また、自国民が判決内容を理解できるようにするため、判決の様子を国営テレビの2つのチャンネルで放送する方針。
両国が争っているのはクメール王国が9~11世紀に建立したとされる山上遺跡カオプラウィーハン(プレアビヒア)の周辺地域。カオプラウィーハン本体は1962年に国際司法裁がカンボジア領とする判決を下したが、周辺地域の領有権については判断を示さず、紛争の火種が残った。
カオプラウィーハンは2008年、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産に登録された。これを機に頻繁にカンボジアと武力衝突を起った。2011年には砲撃・銃撃戦で双方の兵士、住民ら30人近くが死亡、100人以上が負傷し、周辺地域の住民10万人以上が一時避難。紛争激化を受け、カンボジアは同年04月、国際司法裁にカオプラウィーハン周辺の国境未画定地域の領有権に関する判断を求めた。
タイでは同年07月に行われた総選挙で、カンボジアのフン・セン首相と個人的に親しいタクシンの政党が政権に復帰。タクシンの妹のインラックが首相に就任し、両国関係は急速に鎮静化。
タクシンの長女ピントーンター・チナワット・クンナーコンウォンが社長を務めるタイ企業レンデはクルングテープ都心で高級ホテルを開発し、2017年に開業予定。名称は「ローズウッド・バンコク」。高架電車BTSプルンチット駅に直結し、33階建て、客室数146。運営は支那の不動産会社、新世界中国地産傘下の米ホテル会社ローズウッド・ホテルズ&リゾーツに委託。
タクシンが東京で安倍首相と昼食を会食。タクシンは、フェイスブックの自らのページで、安倍首相と会ったことに触れ、アベノミクスで日本経済が好転した。」と評価。タクシン氏自身が首相に就任した際も矢継ぎ早に政策を打ち出して景気を好転させたとして、自分の過去の業績と重ね合わせた。
15日以内の短期滞在で日本を訪れるタイ人に対し、07月から日本が査証を免除したことについては、「ビザ免除後も日本に不法滞在するタイ人が大きく増えたわけでないことを確認した。」として、安倍首相も「(不法滞在を)懸念しておらず、ビザ免除を止める考えはない。」と述べた。
タクシンはタイのインラック首相の兄。国外滞在中の2008年に汚職で禁錮2年の実刑判決を受け、以来、タイに帰国していないが、インラック政権の最高実力者。
フェイスブックによると、タクシンは09月22日にシンガポールでF1を観戦し、シンガポールのリー・シェンロン首相、ブルネイのボルキア国王らと会見。その後、北京でしばらく過ごし、支那政府の要人らと会い、南朝鮮、シンガポールを経て来日。
10月27日(日)恩赦案が議会での第1読会通過後に修正され、「タクシンへの恩赦が狙い。」といった批判が出ている。全国77都県から都内タマサート大学タプラチャン・キャンパスに集まった反タクシン団体の代表らは、「恩赦案が下院の第3・最終読会を通過し次第、大規模な抗議集会を決行する。」と明らかに。
今回の会合開催においてまとめ役を務めた、反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)の元幹部、スリヤサイは、「我々は恩赦案が上院で承認されるのを待たずに下院で承認され次第、抗議行動に出ることを決めた。抗議集会には、タクシン政権下(2001~2006年)でのPADによる反政府集会を上回る大勢市民が参加するだろう。」と述べた。
なお、修正恩赦案の第2読会、第3・最終読会は11月に行われる見通し。
タクシン支持団体、レッド・サンデー・グループ」の呼びかけで都内ラートプラソン交差点に集まったタクシン支持者約200人は、修正恩赦案に反対を表明し、1万人規模の抗議集会を行う方針を明らかに。
タクシン支持団体では、プア・タイの実動部隊、反独裁民主主義同盟(UDD)が最もよく知られているが、レッド・サンデー・グループなど中小規模のものも存在。
修正恩赦案では、恩赦対象が拡大されてタクシンも恩恵を受けるとされている。だが、タクシン支持者の間からは、2010年の大規模反政府デモにおいて治安部隊との衝突などでタクシン派に大勢の死傷者が出たため、「デモ鎮圧を命じた当時のアピシット首相(民主党党首)らにも恩赦を適用することは許されない。」とする強い恩赦案反対意見が出ている。
10月28日(月)検察当局が、2010年の大規模反政府デモ当時のアピシット首相(民主党党首)とステープ副首相(民主党議員)を、殺人罪で起訴する手続きを取ったことが、10月28日までにわかった。
当時の民主党政権は、タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)による過激な反政府デモを鎮圧するため、治安部隊を出動させ、90人以上が死亡した。裁判所は、数人が治安部隊側からの発砲で死亡したとの判断を示している。
法務省特別捜査局(DSI)は、「治安対策の最高責任者であった当時のアピシット首相とステープ副首相に責任がある。」と結論づけており、「検察が両者を殺人罪で起訴することになった。」と説明。
だが、アピシット、ステープ両氏は、デモ鎮圧の正当性を主張するとともに、「政府は、民主党に恩赦案を受け入れさせるために我々に濡れ衣を着せようとしている。」として、裁判で争う構え。
恩赦対象を拡大した修正案に対し、反タクシン派などから「国外逃亡中のタクシンの免罪が狙い。」といった批判が噴出。
プラユット陸軍司令官は、「政府が2010年の大規模反政府デモ鎮圧における軍の役割を問題視し、軍に恩赦案を受け入れさせようとしている。」との記者の質問に対し、「自身を含め軍人は恩赦を望んでいない。」と明言。また、裁判所が「デモの最中に兵士の発砲でデモ参加者が死亡した。」との判断を示し、軍人に批判的な意見が出ていることに対し、プラユット司令官は、「人々は実際に何が起きていたかを語ろうとしない。兵士たちも(デモ隊側から)発砲を受けていた。」と述べた。
タイとカンボジアの領有権争いに国際司法裁判所が11月11日に判決を下すのを前に、両国の外相が、カンボジアのポイペットで話し合いを行い、いかなる判決が出ようと両国が関係改善に向けて努力を続けることで意見が一致。
問題となっているのは、世界遺産跡カオプラウィーハン(プレアビヒア)の周辺地域4.6㎢の領有権。
タイのスラポン外相とカンボジアのホー外相は、国境の街ポイペットで約40分間会談したあと、タイ東部サケオ県アランヤプラテートのホテルで記者会見し、会談での合意内容を説明。なお、カンボジアのフン・セン首相は、タクシン派と良好な関係を維持する一方、最大野党・民主党などの反タクシン派には敵対的な姿勢を取っている。
反タクシン派が周辺地域の領有権を強く主張しているのに対し、インラック政権を含むタクシン派は、領有権問題に積極的に取り組む姿勢を見せておらず、反タクシン派から「領土を切り売りしようとしている。」などと批判を浴びている。
タクシンは、インターネットの交流サイト、フェイスブックの自らのサイトに、「2014年からタイと支那が相互にビザを免除する。」と書き込んだ。
タイと支那の相互ビザ免除は中国の李克強首相が10月中旬にタイを訪れた際に提案。タイは支那人の旅行先として人気が急上昇中で、今年01~08月にタイを訪れた支那人は前年同期比88.4%増の322.1万人に上る。タイでは観光収入の増加を歓迎する一方、支那人旅行者のマナーの悪さを厭う向きもある。支那人に対するビザ免除については、タイ国内で、「支那人の急増で欧米などからの旅行者が減る。」、「支那人の不法滞在が増える。」といった懸念も出ている。ただ、タイ政権の最高実力者であるタクシンが明言した以上、実現する可能性が強まりそうだ。
10月29日(火)民主党は、下院議長が「恩赦案の第2読会を行うため、31日09時30分から下院会議を開く。」と各党に通達したことを受け、反対集会を全国各地で行うことを決定。
クルングテープでは31日夕方からサムセン駅前で集会を行う予定。地方では、地元出身議員が集会を呼びかけ、集まった人々をクルングテープに上京させることになっている。
また、2010年の大規模反政府デモで治安部隊による発砲などで大勢の死傷者が出たとされる問題で、検察が先に当時のアピシット首相(民主党党首)とステープ副首相(民主党議員)を殺人罪で起訴すると決めたことに対し、アピシット党首は、「最高裁まで争う用意がある。」と、恩赦案を受け入れない考えを改めて明らかに。
「殺人罪での起訴は民主党に恩赦案を受け入れさせるための策略」との見方もあるが、これは今のところ奏功していないようだ。
プア・タイ党の本部前でタクシン支持者約200人が「タクシンを帰国させよ。」などと書かれた垂れ幕を手にプア・タイ党議員や他のタクシン支持者に恩赦案支持を呼びかけた。
恩赦案は、政治家を含めた関係者全ての免罪を求めるもので、国外逃亡中のタクシンの免罪・帰国も実現すると見られている。だが、タクシン派が「2010年の大規模反政府デモで同派に大勢の死傷者を出した張本人」と非難している当時のアピシット首相(民主党党首)らにも恩赦が適用されることから、タクシン陣営内でも恩赦案に強く反対する意見が出ている。
今回の呼びかけは、「タクシンの免罪・帰国の実現」を強調することで、タクシン派内における恩赦案反対の沈静化を図ったものと見られる。
10月30日(水)2006年から続くタクシン派と反タクシン派の政治抗争で投獄、訴追された人に包括的な恩赦を与える修正恩赦法案の第2読会が31日から行われるのに合わせて、民主党など反タクシン派は街頭デモなどで徹底抗戦する構えで、クルングテープで緊張が高まっている。
恩赦法案はタクシン派与党の賛成多数で08月に第1読会を通過し、その後の委員会での審議で、恩赦対象がタクシンを含む包括的なものとなった。タクシンは2008年に汚職で禁錮2年の実刑判決を受けて以来、タイに帰国していない。恩赦法案が成立すれば、帰国が可能になることから、反タクシン派は反発を強めている。
民主党は第2読会が始まる31日に、クルングテープの国鉄サムセン駅で恩赦法案に反対する集会を開く計画。コーン元財務相ら民主党の副党首4人は、デモに参加するため、副党首を辞任した。今回の集会には大勢の市民が参加するとの見方も出ており、治安機関の代表とインラック首相、関係閣僚らが、政府庁舎で対応を協議。
国家治安委員会(NSC)のパラドン事務局長は、集会がどの程度の規模になると予想しているかには言及しなかったが、「治安当局には集会をエスカレートさせない自信がある。集会参加者がこの時点で国会議事堂に押しかけることはないとみている。」と、大きな問題に発展することはないと述べた。
反政府集会対策として、都内3区に治安当局に集会禁止などの権限を付与する国内治安法が適用されているが、協議では、サムセン駅を含むパヤタイ区への同法適用を決定するには至らなかった。
反タクシン派の別のグループは10月10日から、クルングテープ都内のウルポン交差点で座り込みの集会を続けている。
一方、2010年04、05月に、クルングテープ都心を占拠したタクシン派市民と治安部隊が衝突し、91人が死亡、約2000人が負傷した事件で、最高検察庁は31日、当時首相だったアピシット民主党党首と治安担当の副首相だったステープ前民主党幹事長を「治安部隊にデモ隊の排除を命じたことで多数の死傷者が出た。」として殺人容疑で起訴する予定。
アピシットとステープは「恩赦は不要で裁判で争う。」と明言。民主党支持者は「起訴のタイミングを見れば、政治的なものであるのは明らか。」として、不快感を示した。
チエンマイ県の学者グループが、政府の支持する修正恩赦案への反対を表明。
第1読会通過後に恩赦案に加えられた「関係者全てに恩赦を適用する。」との修正は、「『一般のデモ参加者のみに恩赦を適用する。』とした原案を根本から手直しするものであり、受け入れられない。」という。また、同グループは、「修正は大ボスのため。」、「国外逃亡中のタクシンの免罪が目的であることは明白。」としている。チエンマイは、タクシンの出身地であり、タクシン支持者が多数を占める。
10月31日(木)クルングテープ都内中心部で、反政府団体が抗議集会を行うことが明らかとなったことから、在タイ日本大使館より注意喚起。

抗議集会デモの実施に関する注意喚起(2013年10月31日現在)

1 タイ警察によれば,反政府グループは,本日(10月31日)より,バンコク都内ルンピニー公園,ウルポン交差点及びサムセン駅で,恩赦法案等に反対する抗議集会デモの実施を計画しています。
*31日正午現在,集会主催者は実施時間及び場所については正式な発表を行っておりません。

2 既に10月18日にお知らせしております通り,バンコク都内3地区(ドウシット区,プラナコーン区,ポム・プラープ・サトルー・パーイ区)の一部の区域に対しては,国内治安法(ISA:Internal Security Act)が適用されています。今回の集会デモは,いずれも上記3地区の外側に位置していますが,集会デモの実施においては,状況に応じて様々な規制が課される可能性があります。報道等を通じ,最新情報の入手に努めるとともに,不測の事態に巻き込まれないよう,特に,抗議集会デモが見込まれるルンピニー公園,ウルポン交差点及びサムセン駅には可能な限り近づかない等,安全の確保に十分注意を払ってください。

(問い合わせ先)
○在タイ日本国大使館領事部
電話:(66-2)207-8502、696-3002(邦人援護)
FAX :(66-2)207-8511
2006年から続くタクシン派と反タクシン派の政治抗争で投獄、訴追された人に包括的な恩赦を与える恩赦法案の第2読会が国会で始まった。
恩赦法案はタクシン派与党の賛成多数で08月に第1読会を通過し、その後の委員会での審議で、恩赦対象がタクシンを含む包括的なものとなった。タクシンは2008年に汚職で禁錮2年の実刑判決を受けて以来、タイに帰国していない。
民主党のアピシット党首とステープ議員が、検察庁に出頭し、2010年の大規模反政府デモで死者が出たことに関連して2人にかけられた殺人容疑の説明を受けた。
アピシット党首とステープ議員は当時それぞれ首相、治安担当の副首相だったことから罪に問われることになったものだが、両人はともに「濡れ衣」と容疑を否認している。また、検察庁は2人の起訴を決めているが、現在国会で審議が行われている最中であることから、両人の弁護士の要請を受け入れ、裁判所への起訴状提出を12月12日まで延期。
「タクシンの免罪が狙い。」などと修正恩赦案を強く批判している民主党が、都内サムセン駅近くで反対集会を開始。し、法案はタクシンの帰国、復権を可能にするものだとして、反対を訴えた。集会参加者と警官隊の衝突はなかった。
集会には午後から市民が集まりだし、報道によれば、最終的な参加者数は2万人に上った。また、集会で民主党幹部のステープ議員は、「インラック首相が恩赦案を取り下げるまで何があっても集会を続行する。」と宣言。今後の状況次第では議員を辞職して抗議デモを先導する用意のあることを明らかにした。
警察関係筋によれば、「集会参加者のために用意された食料品の量などから判断すると、反対集会が長期間に及ぶことが予想される。」という。
17時頃修正恩赦案に反対する病院スタッフなど医療関係者約500人がラマティボディ病院に集まり、ウルポン交差点に向けてデモ行進。その後、デモ参加者は20時頃までにサムセン駅近くの恩赦案反対集会に合流。
デモ行進の呼びかけ人、プラムアン医師は、「我々は正義を維持するために立ち上がった。法の乱用は許せない。(修正恩赦法案に対する医療関係者による)抗議活動は今回が初めてだが、これが最後ではない。」
11月01日(金)
未明まで
2006年から続くタクシン派と反タクシン派の政治抗争で投獄、訴追された人に包括的な恩赦を与える恩赦法案が1日下院の第2読会、第3読会を通過。上院に送られた。
民主党は同法案がタクシンの帰国、復権を可能にするものだとして反対を表明し、議場で抵抗したほか、クルングテープ都内で2万人(報道により数千人)規模の集会を開き、支持者に徹底抗戦を訴えている。
インラック政権の推す修正恩赦案に反対する動きが広まりつつあり、クルングテープが街頭デモによる交通渋滞などで混沌状態に陥る恐れ。
民主党は恩赦に抗議する人々に対し、11月04日午前10時に都内サムセン駅近くの民主党主催の反対集会に参集するよう呼びかけている。民主党関係筋によると、恩赦を阻止すべく、大勢の市民を動員して街頭デモを展開して都内の交通を麻痺させることが狙い。
また、03日にはルンピニー公園で座り込みを続けていた反タクシン派約2000人が、ウルポン交差点で続けられている反政府集会に合流し、参加者は約3000人に増加。
ほか、04日には、タマサート大学の学生連盟による恩赦反対表明(午前09時)、ビジネス街シーロムでのビジネスグループによるデモ行進(午前11時30分)が予定されている。さらに、05日にはチュラロンコーン大学の教職員と学生が恩赦反対を表明し、06日にはマヒドン大学の教職員と学生が恩赦に反対するため、マヒドン大学からウルポン交差点にデモ行進する予定。
11月04日(月)修正された恩赦案に反対する最大民主党の呼びかけで、反対の派市民が各地でデモ行進。
クルングテープ都内各所で政府への抗議集会。シーロム地区、戦勝記念塔(アヌサーワリーチャイサモーラプーム)地区、ラーチャダムナーン地区などで行われている集会は、タクシン派与党プア・タイ党によって下院通過した恩赦法案へ抗議するもので、1万人以上が参加。

恩赦法案に反対しデモ行進するチュラロンコーン大学生ら → 

民主党のアピシット党首をはじめ、党幹部のステープなどが抗議集会に参加。ステープは、ラーチャダムナーン通を封鎖し、「勝利するまで抗議を続ける。」と宣言。徹底抗戦を訴えた。
サナームルアン(王宮前広場)にいたるラーチャダムヌン通を占拠し、ビジネス街シーロムでも市民が街頭デモ。反対派が恩赦に抗議活動を活発化させている。
また、民主党の支持基盤であるクルングテープのみならず、地方でも弁護士らが反対声明を発表するなど、デモが拡大の様相を呈している。
また、「上院で修正恩赦案が否決される。」との情報があることについて、「信用することはできない。審議が終わるまではなにが起きてもおかしくない。」と述べ、「恩赦阻止のために政府に圧力をかけ続ける必要がある。」との考えを明らか。
ラーチャダムヌン通に集まった市民の人数について、民主党は「数万人」と主張。一方、治安当局は「1万人程度」と推定しているが、「約2万人」としている新聞もある。
12時半頃タクシンらへの恩赦に反対する市民数千人がクルングテープのビジネス街シーロム通をデモ行進し、笛を吹き鳴らして抗議。デモには反タクシン派の野党民主党のアピシット党首(前首相)、コーン元財務相らが参加した。参加者には昼休み中の会社員と見られる人も多く、クルングテープの中産階級の間でタクシンへの反感が根強いことを示している。

BTSサラデン駅前に集まった反政府集会参加者(11時30分)→ 

恩赦に反対する集会は、都内のウルポン交差点などでも行われ、参加者はシーロム通とほぼ同時刻に笛を吹き鳴らした。また、民主党は都内の国鉄サムセン駅で行ってきた集会を、官庁街に近い都内ラチャダムヌンクラーン通の民主記念塔に移動。「恩赦法案が撤回されるまで座り込みを続ける。」と宣言。
恩赦法案はタクシン派と反タクシン派の政治抗争で投獄、訴追された人に包括的な恩赦を与える内容で、タクシン派与党が国会に提出し、今月01日、賛成多数で下院を通過した。11日から上院で審議される見通し。
民主党は同法案がタクシンの帰国、復権を可能にするものだとして反対を表明。街頭デモで圧力をかけ、上院を通過した場合は法案を違憲として憲法裁判所に提訴する方針。タクシンは2008年に汚職で禁錮2年の実刑判決を受けて以来、タイに帰国していない。
チュラロンコーン大学、タマサート大学など25校以上の大学の学長が修正恩赦案について協議し、「悪しき前例を作ることになる。」として反対する声明を発表。学長らは、恩赦に反対する理由として「汚職をした者も恩赦で免罪となれば、人々は『汚職は大した罪ではない。』と考えるようになる。これまでの汚職根絶の努力が無駄になる。」と説明。
タクシンの妹であるインラック首相は、2010年のタクシン派デモ隊と治安当局の衝突で死亡した市民の遺族と会い、「国家を前進させるため、互いに許しあうべきだ。」と述べ恩赦の必要性を訴えた。
プア・タイ党関係筋によれば、「プア・タイ党の実質的最高実力者、タクシンが現在、来年初めの解散・総選挙も視野に入れてプア・タイ党が取るべき対応を検討している。」憲法裁判所や国家汚職制圧委員会(NACC)がプア・タイ党に不利な判断を示す可能性が高いことが理由。
同筋は、「政府の推す修正恩赦案、他の改憲案、大型インフラ整備のための財務省による2兆B借り入れは、憲法裁によって無効とされる見通し。米買い上げ制度や 3500億Bの大型治水計画に関する不正に絡んで、政府がNACCによって罪に問われる可能性がある。」と述べ、「判決などは11月~12月初めにかけて下される。」との見方。
また、プア・タイ党は先に、タクシンからの指示で、総選挙に備えて北部・東北部でプア・タイ党議員の支持率を調査したところ、68人の議員が落選する公算が大との結果が出た。プア・タイ党への不満が広がっていることが原因と見られる。このため、タクシンは、新党2党を立ち上げて、これら議員を新党から出馬・当選させたあと、プア・タイ党が新党を吸収合併するというシナリオも考えている。
2004年から現在までに政治関連の罪に問われた者全員を、免罪とするとした修正恩赦に対する批判・意見が日々強まっている。
一方、タマサート大学のパリンヤー副学長はこのほど、「憲法裁判所が恩赦案を無効とする可能性が高い。」との見方。民主党は、「恩赦案が上院を通過し次第、憲法裁に提訴する。」としている。パリンヤー副学長によれば、「恩赦案は、現行憲法の根幹をなす309条の効力を失わせるというものだが、憲法裁がこれを受け入れることは考えにくい。」という。
現行憲法は、2006年09月の軍事クーデターで憲法が廃止されたあと、2007年に制定された。
修正恩赦案に対する反対意見が強まっていることを受け、タイ商工会議所(TCC)とタイ工業連盟(FTI)、タイ銀行協会(TBA)が今後の対応を協議。しかし、3団体として同案に反対・賛成の明確な意見をまとめることはできなかった。
TCCは、「上院が反対意見に耳を傾けて恩赦案を修正する可能性がある。恩赦反対は時期尚早。」と表明する一方、FTIとTBAは、「会員とまだ話し合っていない。」という理由で態度を保留。
11月05日(火)政府の推す恩赦法案の撤回を求め、数千人の市民らが都内各地で抗議活動を行うなど反発の声。
これに対して、インラック首相は、「上院議員はそれぞれの考えに従って自由に判断してほしい。」と初めてこの問題に言及し、決定を上院に一任し、政府として恩赦法案を取り下げる考えのないことを再確認。同時に「寛容さに欠け、暴力を欲している。」などと反対派を批判。「恩赦案は立法府が提案したもの。私はこれに極力介入しないよう努めている。」と述べ、「首相は恩赦案を強く支持している。」との見方を全面的に否定。
首相の発言を受けて、ニコム上院議長は、「上院は恩赦案を否決する。」と明言。民主党の重鎮、ステープ議員は、「議長はなぜ上院議員の代表みたいにそんなことが言えるのか。実際に否決されるまで議長は信用しない。」と批判。
修正恩赦案は先の下院通過を受けて、上院で11日にも第1読会が行われる見通し。
仮に上院で否決されても180日経過後に下院で承認されれば、恩赦は実現することになるため、今回のインラック首相の発言は、譲歩ではないとする意見も出ている。
反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)の元幹部、スリヤサイによれば、「『上院議員の自由な判断に任せる。』と態度を軟化させたふりをして、政府が恩赦実現のために水面下で上院議員に恩赦案支持を働きかけるのは想像に難くない。」
反タクシン派は06日から07日にかけ、クルングテープ都心でタクシンらへの恩赦に反対する集会を開催する予定。集会が予定されているのは、06日12時半頃、シーロム通のBTSサラデーン駅前、07日12時半頃、アソーク通のBTSアソーク駅周辺、07日17時頃、ラーチャプラソン交差点。
反タクシン派は05日現在、民主党が都内ラーチャダムヌンクラーン通の民主記念塔で、別の一派が都内ラーマ6世通のウルポン交差点で、座り込みの集会を続けている。
反タクシン派などが強硬に反対している恩赦案は下院通過を受けて、上院で11月11日にも第1読会が開始される見通し。
しかし、ある上院議員からは、「2004年以降に罪に問われた者を全て免罪するというのが恩赦案の最重要ポイント。だが、これは受け入れ難い。従って、第1読会で承認、第2読会に向けて内容を一部修正ということも考えられない。可決には過半数の賛成が必要だが、反対票を投ずる上院議員が150人中70~80人に上る。」という見方。政府が上院議員に恩赦支持を働きかけているものの、これまで政府案に賛成票を投じてきた上院議員も「全員恩赦はやり過ぎ。支持できない。」と感じている。
「祖国を愛する裁判官」と称する裁判官63人が、「法の精神に反し、悪しき前例を作ることになる。」として、修正恩赦案に反対を表明。
「政治的動機で罪を犯した者、汚職など不正に手を染めた者の罪を恩赦によって帳消しにすることは、国民を守り、平和・秩序を維持するという法の役割に反するものであり、修正恩赦案は直ちに廃案とされる必要がある。」という。
なお、裁判官は、今回の表明について「個人の見解を示したもので、所属する裁判所とは無関係。」
タクシン派と反タクシン派の政治抗争で投獄、訴追された人に包括的な恩赦を与える恩赦法案がタイの議会上院で否決される可能性が高まってきた。
タクシンは2008年に汚職で禁錮2年の実刑判決を受け、以来、投獄を避けるため、タイに帰国していない。修正恩赦法案はタクシン派の政府・与党がタクシンの帰国、復権を狙ったものとみられ、今月01日、議会下院を通過し、上院に送られた。上院は修正恩赦法案を11日に審議する予定。
反タクシン派の野党民主党はこの法案に反発し、都内で座り込みの抗議集会を開始。04日と06日には都心のビジネス街シーロム通でも抗議集会が行われ、周辺の会社員など数千人が参加した。タクシン政権(2001~2006年)の元閣僚、大学学長、裁判官らからも相次いで反対の声が上がっている。
こうした状況を受け、タクシンの妹のインラック首相は、法案の可否は上院次第と発言。ニコム上院議長は、恩赦法案を否決する考えを表明。
ただ、法案は上院が否決した場合、下院に送り返され、180日後以降に下院で再可決された場合、国王の承認を経て、法律となる。反タクシン派の民主党のアピシット党首(前首相)はこの点を指摘し、政府・与党の動きを「時間稼ぎ」と批判。
反タクシン派の野党民主党はタクシン派と反タクシン派の政治抗争で投獄、訴追された人に包括的な恩赦を与える恩赦法案に反対し、04日から、都内ラーチャダムヌンクラーン通の民主記念塔で座り込みの抗議集会を続けている。
アピシット党首(前首相)、ステープ元副首相らが演説し、数千人が参加。ステープ民主党議員は、「恩赦案を廃案にするまで、抗議を続ける。」と述べ、民主党が都内ラーチャダムヌン通の反対集会を継続する方針であることを再確認。また、「恩赦案には関与していない。」とのインラック首相の発言を強く非難。
アピシット民主党党首によれば、「プア・タイ党が、恩赦の実現に拘っていることは、プア・タイ党議員の間から『修正恩赦案が廃案になっても、同様の法案を提出すればよい。』との声が出ていることからも明白。民主党としては、このような悪しき恩赦に最後まで反対してゆく方針。」
11月06日(水)国家安保委員会(NSC)のパラドン事務局長はこのほど、当局が集会禁止令発令など治安対策強化の権限を付与する国内治安法の適用区域を拡大する予定のないことを明らかに。
国内治安法は、政府庁舎周辺での反政府集会などを禁止するため、10月からドゥシット、プラナコン、ポムプラプサトゥルーパイの都内3区に適用されている。また、修正恩赦案に反対する大規模集会が行われている区域のうち、ラーチャダムヌン通は適用対象エリア内だが、ウルポン交差点は対象外。
パラドン事務局長によれば、「抗議集会は暴力的なものではなく、今のところ国内治安法を発動したり、適用対象地区を拡大する必要はない。」という。 なお、関係筋によれば、「07日に政府庁舎に向けてデモ行進することが計画されている。」との情報があり、当局が治安対策を強化中。
プア・タイ党によって下院通過した恩赦法案へ抗議するもので、都内各所で反政府集会。タイ地元紙によると、ラーマ6世通のウルポン交差点からシーアユタヤ交差点にかけて反政府集会。民主党主導でラーチャダムナーンクラン通の一部でも同様の集会があり道路が封鎖。
シーロム地区でもサラデーン駅近くでも昨日に続き昼頃、周辺の会社員らが集まって大規模な抗議集会。
反政府グループによる恩赦法への抗議集会が、アソーク地区で開催されることが明らかとなったことを受け、在タイ日本大使館より注意喚起。

アソーク駅周辺他での反政府デモ集会の実施に関する注意喚起(2013年11月6日現在)

1 タイ警察によれば,反政府グループはバンコク都内数ヶ所にて恩赦法案等に反対 するデモ集会を計画しています。特に明日(7日)は,本日までにデモが行われていた3ヶ所に加え,BTSアソーク駅周辺でもデモが予定されています。デモ集会実施においては,状況に応じて様々な規制が課される可能性がありますので,報道等を通じ,最新情報の入手に努めるとともに,不測の事態に巻き込まれないよう,抗議集会デモが見込まれる地域周辺には可能な限り近づかない等,安全の確保に十分注意を払ってください。

【デモ集会日程】(別添地図参照)
◎アソークグループのデモ集会実施予定
・日 時:11月7日(木)午前11時から午後2時までの間
・場 所:BTSアソーク駅周辺
・人 数:1000人規模の模様

◎ルンピニグループのデモ集会実施予定
・日 時:11月7日(木)午前7時頃
・場 所:ルンピニ公園周辺
・人 数:50人規模の模様

◎ウルポングループのデモ集会実施予定
・日 時:11月7日(木)午前7時頃
・場 所:ウルポン交差点周辺
・人 数:500人規模の模様

◎民主記念塔グループのデモ集会実施予定
・日 時:11月7日(木)終日
・場 所:民衆記念塔周辺
・人 数:数千人規模の模様

2 また,既にお知らせしておりますとおり,タイ政府は,別途バンコク都内3地区(ドウシット区,プラナコーン区,ポム・プラープ・サトルー・パーイ区)に対して,11月30日まで国内治安法(ISA:Internal Security Act)を適用していることから,同法の発動により,これら3地区においては状況に応じて,(1)一部交通手段の制限,(2)移動規制,(3)検問所の設置,(4)武器類所持禁止,(5)公共施設への立入制限,(6)安全確保のための電子機器の一時使用禁止等といった様々な規制が課される可能性があります。

(問い合わせ先)
○在タイ日本国大使館領事部
電話:(66-2)207-8502、696-3002(邦人援護)
FAX :(66-2)207-8511
恩赦法案に対するデモ活動が拡大する中、インラック首相は、政府主導で修正した恩赦法案の正当性を主張。
修正恩赦法案はプア・タイ党の議員が提案したものだが、下院の第1読会を通過した後、恩赦対象者が「デモなどに参加した一般市民」から「国外逃亡中のタクシンを含む関係者全員」に拡大する修正が加えられたことから、反タクシン陣営が猛反発。
また、インラック首相は、「タイ国民は互いに愛し合い、団結することを望んでおり、過去に経験したような痛みを味わいたいとは思っていない。」と述べ、恩赦法案による「全員免罪」が不可欠との考えを示した。
だが、反タクシン派は、長年にわたる政治対立・国民不和の元凶はタクシンとの基本姿勢を崩していない。タクシン派が、「タクシンを含めた関係者全員の罪の帳消し」を訴えれば訴えるほど、反タクシン派が反発し、国民和解がさらに遠ざかるという状況を招いている。
国外逃亡中のタクシンが、法律顧問のノパドン元外相のフェイスブックに修正恩赦案への批判に反論する書き込み。
修正恩赦案に対しては、反タクシン派などから「タクシンを免罪し、没収資産をタクシンに返却することが狙い。」といった批判が浴びせられている。
だが、タクシンは、「恩赦は対立を解消し、2006年09月の軍事クーデターの『犠牲者(タクシンを含む)』に正義を齎し救済することが真の目的。」と主張。修正恩赦案への批判を「虚偽」と批判。
さらに、タクシンは、「私が最も願っていることは、タイ国民がより良い生活を送り、将来に希望を持てること、そして、タイが世界の変化に後れを取らないこと。しかし、一部の政治家は嘘を並べて私を非難している。非常に嘆かわしいことだ。」と書き込んでいる。
しかし、反タクシン派は、「軍事クーデターを招いたのも、国民の間に深刻な対立を生じさせたのも、タクシンのせい。」としており、タクシン免罪の可能性が消えない限り、反タクシン派が恩赦に賛成することは考えにくい。
プア・タイ党の実動部隊、反独裁民主主義同盟(UDD)の東北部ウドンタニー県支部の代表、クワンチャイは「、ウドンタニー支部が東北部全県で修正恩赦案を支持する集会を開催する計画だ。」と明らかに。
修正恩赦案には反タクシン派などがクルングテープで大規模な抗議活動を展開し、マスコミでも大きく取り上げられている。このため、ウドンタニー支部は、反対派に対抗して恩赦支持の声を上げる必要があると判断したもの。
また、クワンチャイによれば、ウドンタニー支部は支持者を動員してクルングテープのテーパサディン競技場で08日に予定されている恩赦支持集会に参加させることを計画。この集会ではプア・タイ党議員がタクシン支持者に対し恩赦案の目的について説明することになっている。
都内ラーチャダムヌン通で大規模な恩赦反対集会を続けている民主党の重鎮、ステープ議員は、プア・タイ党に対し、「11日午後6時までに恩赦案を取り下げよ。」と要求。期限が過ぎた場合は、抗議をエスカレートさせる考えを示した形。
インラック首相は、フェイスブックに「恩赦案が上院の第1読会で否決されたなら、政府はそれ以上恩赦を求めない。」と書き込んで、反対意見の拡大に配慮する考えを明らかにしている。
ただ、上院で恩赦案が否決されても、180日経過後に下院で承認されれば恩赦は実現することになることから、民主党は、「信用できない。」としている。
11月07日(木)昼タクシンらへの恩赦に反対するデモが都心の高架電車BTSアソーク駅前で行われ、周辺の会社員、学生ら数千人が参加した。このデモで、幹線道路のスクムビット通、アソーク通の交通が一時麻痺。
恩赦に反対のデモは夕方、BTSチッロム駅周辺でも行われる予定。
14時過ぎインラック首相が「修正恩赦法の申請を全面的に撤回する。」と声明。
修正恩赦法案が下院を通過したことを受け、都内各地で連日反政府デモが開催され、オフィス街の中心でもあるアソーク地区で大規模な抗議デモが行われていた。
インラック首相は、「二度と恩赦法及び和解法を検討することはしない。」、「抗議デモは国家に悪影響を及ぼすため、一刻も早く解散してもらいたい。」と語った。
修正恩赦案に反対する勢力は、政府庁舎にほど近いラーチャダムヌン通やウルポン交差点などで抗議集会を続けている。うち約2000人が、政府庁舎に向けてデモ行進を開始し、タマサート大学の教職員や学生など約5000人も合流。
デモ隊は途中、警官隊に行く手を阻まれたが、警察側との交渉で警官隊が30mほど後退した隙に規制線を突破。だが、政府庁舎の手前にあるランサン橋に厳重なバリケードが設けられていたことから、それ以上庁舎に近づくことはできなかった。
クルングテープ中心のスクムビット・アソーク交差点も、大勢の反対派市民で埋め尽くされた。
修正恩赦案に反対する大規模な抗議集会が続けているラーチャダムヌン通の周辺に位置する4校が、学童・生徒の身に危険が及ぶ恐れがあるとして、08日を休校とすることを決定。
また、抗議集会がさらに続く可能性があるため、これらの学校は「今後の状況をみて11日も休校とするかを決める。」としている。
インラック首相は、「批判が出ている法案は全て取り下げた。私を信じてほしい。」と訴え、修正恩赦案に反対している市民に対し、抗議活動を中止するよう改めて呼び掛けた。
勢いを増すデモを懸念するインラック首相は、「上院で否決されて下院に戻されても、プア・タイ党)は国民の意見を重視する形で、数の力に頼って恩赦案の承認する考えはない。」と公言。
政府寄りのニコム上院議長も、下院を通過して上院で審議される恩赦案を「否決する。」と明言。
政府の推す複数の憲法改正案に反タクシン派から批判が出ていたが、恩赦案への抗議をこれ以上拡大させないため、下院で07日、改憲6案を取り下げることが決まった。だが、恩赦に強く反対する民主党などは、「抗議の早期沈静化を図ったその場凌ぎの対応。」と見ており、今のところ抗議を中止する姿勢を示していない。
高等教育委員会事務局は、現在の政治状況を協議するため全国の大学100校の学長を集めた会議を開催。
会議の席で学長たちからは、「修正恩赦案に賛成票を投じた下院議員は謝罪すべき。」、「汚職を犯した者を免罪すべきでない。」、「与党は、修正恩赦案が上院で否決され、下院に戻された場合、修正恩赦案を承認しないことを約束すべき。」といった意見が出た。 今回の会議はチャトゥロン教育相の要請で開かれたもので、ポンテープ副首相、ワラテープ首相府相、サマート下院副議長も出席。
チャトゥロン、ポンテープは、「恩赦案の復活がないことを国民に約束する方法についてさらに話し合う必要がある。」と、前向きな姿勢を示した。
タイの議会上院のニコム議長は、タクシン派と反タクシン派の政治抗争で投獄、訴追された人に包括的な恩赦を与える恩赦法案の審議を当初予定の11日から08日に前倒しすることを明らかに。08日午後02時から審議を行う予定。
ニコム上院議長が、11日に行われることになっていた「上院での修正恩赦案の第1読会を、08日に前倒しする。」と発表したことから、反対派の上院議員が反発。「反タクシン派の上院議員で構成される『グループ40人』が、デモ拡大の責任をとって下院を解散するようインラック首相に求めているため、ニコム議長が政府の意向を受け、デモの早期終結を図って読会の前倒しを決めた。」との見方がある。
なお、同グループなどが欠席すれば、定足数を満たすことができず、読会は当初の予定通り11日に行われる可能性が高い。
11月08日(金)上院のニコム議長は、タクシン派と反タクシン派の政治抗争で投獄、訴追された人に包括的な恩赦を与える恩赦法案の審議を11日に延期。恩赦法案の審議は当初、11日に予定されていたが、議長が07日、08日に前倒しした。反タクシン派の一部議員がこれに反発し、08日の審議を欠席したほか、外国や地方に出かけていた議員もあり、出席者が定足数に足りなかった。
プミポン国王(85)の次女のシリントン王女(58)は、発熱と腹痛のためチュラロンコーン病院で検査を受け、尿路結石であることが判明。鎮痛剤と抗生物質による治療を受けられており、しばらく入院し、公務も控える予定。
シリントン王女は国王の代理として多くの公務をこなし、閣僚らが足を踏み入れない山間部の村など遠隔地の視察にも積極的。気さくな人柄で知られ、国民の人気は高い。語学に堪能で、英語、フランス語、支那語を話す。支那語は書もこなす。昨年12月には胸部の微細石灰化の手術を受けた。
民主党や反タクシン組織が恩赦法案に反対する抗議集会やデモ行進を継続する中、プア・タイ党の実動部隊、反独裁民主主義同盟(UDD)は、全国各地で恩赦支持集会を行う方針を表明。恩赦法案を巡って賛成派と反対派の市民が衝突する恐れ。
UDD内には、「2010年の大規模反政府デモ当時のアピシット首相(民主党党首)とステープ副首相(民主党議員)の免罪は許せない。」との理由で恩赦に反対する意見がある。
だが、プア・タイが07日、「大規模反政府デモで犠牲になったUDD支持者らに配慮する。」と約束したことで、UDDが恩赦支持の方針を確認。
11月09日(土)プア・タイ党など与党4党の代表は、「修正恩赦案が上院で否決され、下院に戻された場合、修正恩赦案を承認しない。」と発表。
「連立政権は、恩赦案の復活を試みないと明確に示すべき。」との大学長らの要請に応えたもので、同代表は合意書に署名。
政府は、「恩赦断念の姿勢を示すことで抗議活動が終息に向かうと期待している。」というが、恩赦反対派は依然、「圧力を弱めれば、政府は次の手を打ってくる。」と警戒し、抗議活動を中止する構えを見せていない。
なお、恩赦案は11日に上院で第1読会が行われる予定だが、第1読会で否決される可能性が高い。
タイ・ジャーナリスト協会が開催した政治セミナーの席上、タマサート大学のナカリン副学長は、「現在の政治的緊張が暴力に発展するのを回避する方法について「下院解散が最善策。」との見解を明らかに。
「下院解散が政治対立の解消につながるとは考えにくいものの、事態が政治システムを通じての問題解決に向けて動き出すことが期待できる。」という。
11月10日(日)恩赦を巡る親・反タクシン派の対立が、複数の要因が重なり、さらに激化する恐れ。11日には、上院で同案の第1読会が行われるほか、国際司法裁判所がタイ-カンボジア国境にある世界遺産カオプラウィハーン(プレアビヒア)周辺地域の領有権に関する判決がある。
都内ラーチャダムヌン通で恩赦反対集会を続ける民主党の重鎮、ステープ議員は11日18時までに修正恩赦案を完全に取り下げるよう要求。
11日正午頃から、BTSサラデーン駅前、アソーク駅前、アーリー駅前、地下鉄MRTラーマ9世駅前などで、タクシンらへの恩赦に反対するデモ行進を行う予定。サラデーン駅からはシーロム通、ラーマ4世通、パヤタイ通を経て、BTSラチャテウィー駅周辺で、アーリー駅から行進する一団と合流する予定。アソーク駅、ラーマ9世駅からはペッブリー通などを経て、ラーチャダムヌン通を目指す。
タイ・カンボジア両国間の領有権争いでは、反タクシン派が「カンボジアに譲歩しようとしている。」などとタクシン派を批判しており、カンボジアに有利な判決が下れば、反タクシン派が反発を強めるのは必至。
一方、タクシン派のプア・タイ党の実動部隊、反独裁民主主義同盟(UDD)が反タクシン派に対抗してノンタブリー県を皮切りに全国で恩赦支持集会を行う構えを見せており、反タクシン派との衝突を懸念する声が強まっている。
ノンタブリー県ムアントンタニーのサッカー場SCGスタジアム近くで開かれたUDD集会の参加者数は、主催者側発表で10万人、新聞報道では5万人(報道により数千人)。
バス約40台を使い、地方からも支持者を動員。反タクシン派のデモがクルングテープで頻発していることから、対抗する狙い。
午後タクシン派は、クルングテープ中心部ラーチャプラソン交差点に集まってプア・タイ党への支持を表明。「政府はすでに修正恩赦案の廃案を決めている。」として、恩赦に反対し続けている反タクシン派に抗議集会を中止するよう要求。
報道によれば、ラーチャプラソン交差点に集まったタクシン派は約100人(報道により約5000人)。気勢を上げたあと、ノンタブリー県に移動し、ムアントンタニーのサッカー場SCGスタジアム近くで行われていた反独裁民主主義同盟(UDD)の集会に合流。
11月11日(月)都内ラーチャダムヌン通で恩赦反対派が大規模な抗議集会を続けていることから、関係当局は周辺の15校について11月11日を臨時休校を決定。このうち4校は基礎教育委員会、11校は都庁管轄。また、政府庁舎に向けてデモ隊が行進することなどが予想されるため都庁舎近くに位置する1校はすでに13日まで休校とすることを決めている。
報道により、臨時休校となるのはプラナコーン区、ドゥシット区、プーンプラーブ区の3区にある24校。
反タクシン派の集会が、シーロム地区、アソーク地区、ラチャダーピセーク地区など数ケ所で行われており、街中をデモ行進しながら、ラーチャダムナーン通に向かう予定。
上院議会で下院議会を通過した恩赦法の審議及び、タイとカンボジアの国境紛争に関する国際司法裁判所の判決が下される予定となっており、抗議デモの規模が大きくなっている。
恩赦法案に反対する抗議集会を続けている反タクシン派の4団体がこのほど、「インラック首相、ソムサク下院議長、ニコム上院議長を追放すべく抗議活動を拡大する。」との共同声明を発表。
声明によれば、「現政権は、タクシンによる、タクシンのための政権であり、この状態を首相や上下両院議長が許していることでタイは数々の大問題を抱えることになった。」と、市民にラーチャダムヌン通パンファ橋に参集するよう呼びかけた。
タクシン派の政府・与党はタクシン派と反タクシン派の政治抗争で投獄、訴追された人に包括的な恩赦を与える修正恩赦法案を国会に提出したが、世論の反発が強く、議会上院で廃案が濃厚。修正恩赦法案の上院審議が始まった。
10時50分頃タイとカンボジアの国境紛争地域の領有権に関する国際司法裁判所(オランダのハーグ)の判決が11日に下るのを受け、タイではタクシンらへの恩赦をめぐり、クルングテープで反政府デモが頻発しており、「国際司法裁がタイに不利な判決を下した場合、反政府デモが拡大すると恐れがある。」として、政府は警戒を強めている。
国防省前に市民約1500人が集まり、タイに不利な判決が出た場合、判決を受け入れないよう求める文書を国防省に提出。
午後都内の高架電車BTSサラデーン駅前とBTSアソーク駅前を出発した反タクシン派市民は、BTSサイアム駅前で合流。
BTSアーリー駅前と地下鉄MRTラーマ9世駅前からデモ行進した反タクシン派はBTSラーチャテウィー駅で合流。
人数は数千人で、いずれも反タクシン派の民主党が座り込みの抗議集会を続けているラーチャダムヌンクラーン通の民主記念塔に向かう模様。
反タクシン派などから強い批判を浴びているタクシン派と反タクシン派の政治抗争で投獄、訴追された人に包括的な恩赦を与える修正恩赦法案が、上院で12時間に及ぶ審議の末、141対0で否決。
民主党の重鎮、ステープ議員は、「財政関連案として恩赦法案を廃案に追い込む。」という戦術を取ったが、聞き入れられなかった。
上院での否決にともない、恩赦法案は下院に送り返され、180日後以降に下院で再可決された場合、国王の承認を経て、法律となる。法案を提出したタクシン派のインラック政権・与党は再可決を行わない方針を示し廃案を約束しているものの、反対派は信用しておらず、抗議活動の先行きは不透明なままとなっている。
ラーチャダムヌン通周辺で続けられている恩赦への反対集会を主導するステープ民主党議員は、民主党議員8人とともに議員辞職して抗議活動を指揮することを宣言。また、国民に対し、13~15日にゼネストに踏み切り反政府集会に参加するとともに、納税を拒否するよう呼びかけた。民主主義記念塔があるラーチャダムヌン通で開催されている集会への参加者はさらに増加しており、ステープは「10万人に達した。」と見ている。
修正恩赦法案に反対する大規模な集会がクルングテープ各地で行われていることについて、キティラット副首相兼財務相はこのほど、「短期的に経済に影響が及ぶだろう。」と述べ、「抗議が衝突に発展しなければ、影響は限定的。」との見方。キティラットによれば、「投資家が最も懸念しているのは衝突・暴力であり、民主的な形でデモが行われている限り、投資家の信頼を大きく損なうことはない。」
国際司法裁判所は、タイ-カンボジア両国が領有権を主張している、世界遺産カオプラウィハーン(プレアビヒア)の周辺地域4.6㎢について、「遺跡の周辺の高台一帯のみがカンボジア領」との判決。タイに対し、高台一帯から兵員、警官を撤退させるよう通告したが、紛争地域のそれ以外の部分については判断を示さなかった。また、「両国は国際社会と協力して世界遺産を保護する義務がある。」と指摘。
タイは今回の判決を受け、高台一帯からの兵員、警官の撤退を迫られる。
カンボジア領とされたのが周辺地域のごく一部だったことから、タイは、「カンボジアは要求の一部が叶えられたに過ぎない。」と評価する姿勢。スラポン副首相兼外相は判決について、「カンボジア領とされたのは紛争地域のごく一部。タイ、カンボジアの双方が判決に満足している。」と述べた。カンボジアのハオ・ナムホン副首相兼外相も満足感を示し、具体的な国境の画定に向け、2国間協議を進める考えを明らかに。両国政府の関係は現在良好で、判決を柔軟に受け止め、外交問題化を避ける姿勢が目立つ。識者からも領土紛争の激化を回避できるとして「タイ、カンボジアのどちらか一方に周辺地域すべての領有権を認める判決よりずっとまし。」といった肯定的な見方が出ている。
ただ、タイ国内には今回の判決を敗訴と受け止める向きもあり、すでにクルングテープで活発化している反政府デモが勢いづく可能性もあり、反タクシン派の間からは反発の声が上がっている。反タクシン3団体は判決を前に、インラック首相兼国防相やプラユット陸軍司令官に判決の結果にかかわらず、拒否し、「タイの領土」(周辺地域)を守るよう求めて国防省に向けデモ行進。
11月12日(火)ステープ元副首相ら民主党の下院議員9人は議員辞職。街頭デモで党が法的責任を問われる事態を避けるためと見られる。辞職した議員のうち8人は選挙区選出で、補欠選挙が行われる。
タクシンは2008年に汚職で禁錮2年の実刑判決を受け、以来、投獄を避けるため、タイに帰国していない。恩赦法案は政府・与党がタクシンの帰国、復権を狙ったもので、今月01日、下院を通過し、上院に送られた。
民主党や反タクシン派団体はこれを受け、クルングテープで街頭デモを開始し、都心のビジネス街シーロム通やアソーク通などで、会社員、学生ら数千人が参加した。恩赦法案は世論調査でも反対が強く、政府・与党は廃案に向け舵を切った。
王室管理事務所の発表によれば、腎結石で11月08日から都内チュラロンコーン病院に入院していたシリントン王女が、経皮的腎結石摘出術を受け、右腎の結石が取り除かれた。快方に向かっているが、しばらく入院が必要。
国際司法裁判所が11日に世界遺産カオプラウィハーン(プレアビヒア)周辺の高台をカンボジア領とする判決を下したが、インラック首相は、「周辺高台」の線引きについてカンボジア側と協議する意向を示し、両国間で意見の一致をみるまで遺跡周辺地域から兵士を撤退させない考えを明らかに。
「判決が大まかなもので、詳細についてはタイ・カンボジア両国が話し合って決める必要がある。」と、国際司法裁判所が判断したことが背景にある。
インラック首相は13日にも議会で判決について説明する予定。
世界遺産カオプラウィハーン(プレアビヒア)寺院遺跡近くのタイ-カンボジア国境地域で、両国軍の現場レベルの指揮官が顔を合わせ、軍事衝突が起きないよう意思疎通を図った。国境周辺は平穏で、混乱は起きていない。
国家治安委員会(NSC)のパラドン事務局長は、「上院が恩赦法案を否決し、政府が下院での同案再可決を否定したことに加え、国際司法裁判所が下した(カンボジアとの領有権紛争の)判決に国民のほとんどが満足しているはず。」として、抗議集会の参加者が減少に向かうとの見通しを明らかに。
また、先に議員辞職し、デモの継続を宣言している民主党幹部のステープについて、パラドン事務局長は、「恩赦阻止という目標は達成されたのに、新たな口実で抗議を続けようとしている。」と批判。「第三者による反政府的な動きを懸念し、警備体勢を維持・強化しなければならないものの、軍隊を出動させる必要は今のところない。」と付け加えた。
11月13日(水)朝都内ラーチャダムナーン通で抗議集会を続ける反政府グループは、昨夜上院議会で否決された恩赦法案の成立阻止を目的に集会を続けていたが、「今後も集会を継続する。」と発表。
民主党のステープは、「打倒政府を掲げ反政府集会を継続する。」と、13~15日にかけて市民に一斉ストライキを行うよう呼びかけている。集会参加者は1000人程度。
反政府グループによるデモ集会だが、上院議会で修正恩赦法案が否決されたことで、徐々に解散の流れ。マカワーン橋近くや民主党のステープなどが中心となって民主記念塔で行われている集会参加者が100人程度となっており、各地から集まった他の参加者はほぼ解散。
反タクシン派の民主党が呼びかけた13~15日のゼネストは、民主党の地盤である南部のサトゥン県、ナコンシータマラート県などで一部の学校、役場が一時閉鎖に応じただけで、概ね不発。
民主党はタクシン派と反タクシン派の政治抗争で投獄、訴追された人に包括的な恩赦を与える修正恩赦法案に反対し、10月末からクルングテープで街頭デモを開始。タイの主要大学の学長やタイ工業連盟、タイ商業会議所といった財界団体も修正恩赦法案に反対し、法案は11日、上院で否決され、廃案がほぼ確実となった。
民主党はその後もバンコク都内の民主記念塔で反政府集会を続行し、タクシン派インラク政権打倒に向け、ゼネストや納税拒否を呼びかけていた。
財界団体はこうした動きに反対を表明。大学もゼネストに応じなかった。タイ国際航空は、「一部の社員が休んだとしても運航に影響は出ない。」と発表。
カオプラウィハーン(プレアビヒア)の裁判を担当したタイのウィーラチャイ駐オランダ大使は帰国。タイ首相府でインラック首相に報告。インラック首相は「判決に満足している。」と述べ、カンボジア政府と詳細を協議する考えを示した。
インラック首相は、議会で「まだ判決を受け入れたわけではない。」とタイ政府の姿勢を明らかに。両国政府の関係は現在良好で、判決を柔軟に受け止め、外交問題化を避ける姿勢が目立つ。ただ、タイ国内には今回の判決を敗訴と受け止める向きもあり、タイ政府は状況を注視。
民主党院内幹事のチュリン民主党議員は、民主党が来週にも閣僚の不信任決議案を提出する方針を明らかに。民主党は攻撃材料を集めてからインラック首相以外の閣僚の不信任案を提出する予定。
関係筋によれば、「民主党を含む恩赦反対派からは、下院解散をインラック首相に求める声が出ている。だが、憲法では、『首相の不信任案が提出された後に首相が下院を解散することはできない。』と規定されている。このため、首相以外の閣僚をまず不信任の対象とするが、それでも解散に踏み切らない場合、首相の不信任案を提出する戦略。」
反タクシン派の民主党はタクシンらへの恩赦法案が11日に上院で否決された後も、目標をタクシン派インラック政権打倒に切り替え、バンコクで反政府集会を続けている。
会場の民主記念塔では、ステープ元副首相(前民主党幹事長)らが政府打倒に熱弁を奮ったほか、反タクシン派の歌手、俳優らが次々にステージに上がった。聴衆を飽きさせないようにと、京劇まで演じられた。また、テント、簡易トイレが準備され、食事、水が無料で振る舞われた。
国民の反発を買った修正恩赦法案が事実上廃案になったためか、人数は以前より少ない。ステープ元副首相は夕方から民主記念塔で大規模集会を開くと宣言し、巻き返しを誓った。ステープは、「15日にさらに多くの市民にラーチャダムヌン通に集まってほしい。」と呼びかけた。15日はステープが先に呼びかけた3日間の大規模ストライキの最終日に当たる。インラック政権への圧力を強めることを目的に、ステープは「市民から意見を聞き、今後の抗議活動をどう展開するかを決める。」としている。。
なお、13日のラーチャダムヌン通の集会参加者数は、主催者側の発表で約4万人、警察が約6000人、新聞報道が約2万人。
一方、ステープが呼びかけた13~15日のゼネストには、民主党の地盤である南部ナコンシータマラート県の学校9校が応じ、臨時休校に入った。また、南部の14県の県自治体が「職員が休暇を取ることを支持する。」と表明。それ以外の地域や政府機関、企業は応じていない。
11月14日(木)学生を中心とする反政府グループ約300人が都内でデモ行進。マカワン交差点からビジネス街のシーロム通に進み、その後、ラーチャプラソン交差点に向かった。
プア・タイ党のウォラチャイ議員は、「民主党幹部のステープと結託して政権転覆を画策している。」と憲法裁判所の裁判官2人を非難。反タクシン派が批判する恩赦法案の原案を議会に提出したウォラチャイ議員は、「ステープが議員辞職し、裁判官らと密談したのは、政権打倒計画の一環。」と指摘。
一方、「政府の推す上院全議席を公選制とする憲法改正案を違憲とし、憲法裁判所がプア・タイ党の解党などを命ずる可能性があり、ウォラチャイ議員の発言は憲法裁判所を牽制する狙いがある。」との見方も。
タイ世界遺産委員会のピタヤ委員長はこのほど、「現状ではカンボジアがヒンズー寺院カオプラウィハーン(プレアビヒア)の管理計画を世界遺産委員会に提出するのは容認できない。」との考えを明らかに。
「遺跡にごく近い周辺地域はカンボジア領。」とした先の国際司法裁判所の判決が大まかなもので、両国が協議して「カンボジア領の周辺地域」を画定する必要がある。この作業が完了しない段階で、カンボジアが遺産管理計画を提案した場合、タイはあらゆる手段を用いて反対する。管理計画の提出は世界遺産委がカンボジアに義務づけているもの。
2011年にはカンボジアが計画に沿えて提出した地図に、当時のアピシット民主党政権が異議を唱えて計画に強硬に反対したため、世界遺産委は計画の検討を見送った経緯がある。
修正恩赦法案に反対する反タクシン派が、閣僚などに向けて笛を一斉に鳴らすという戦術に対して、プロートプラソップ副首相は、「唾を吐きかけられたような気分だ。」と不快感を露わにした。
その直前にプロートプラソップ副首相の側近が「笛攻撃」を受けており、プロートプラソップは報道陣を前に、「これは抗議活動を止めろという合図。」と言って、自ら笛を取り出して吹いた。
尿路結石で08日から都内のチュラロンコーン病院に入院していたシリントン王女(58)が退院。医師団によると、治療の経過は良好。昨年12月に胸部の微細石灰化の手術を受けた。
11月16日(土)恩赦法案の下院通過を端に発した反政府活動が終息の兆しを見せていない。ウォラポン警察庁副長官は、クルングテープのラーチャダムヌン通の反政府集会が長引くようなら、国内治安法の適用期間延長で対応する考えを明らかに。
夜間外出禁止やデモ隊の移動禁止などの権限を治安当局に付与する国内治安法は、10月09日からドゥシット、プラナコン、ポムプラプサトゥルーパイの都内3区に適用され、「反政府活動がエスカレートする恐れがある。」との理由で18日に適用期間が11月30日まで延長。
ウォラポン副長官は、ラーチャダムヌン集会が11月中に中止されないようなら適用期間延長を閣議に申請する考え。
タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)のティーダ議長は、クルングテープ都バンカピ区ラチャマンカラ国立競技場(フアマーク)で20~21日に集会を開く予定を明らかに。
憲法裁判所が20日、政府の推す上院議員関連改憲案の合憲性について判断を下す予定で、改憲案が違憲とされ、プア・タイ党に解党処分が下るのを阻止すべく、憲法裁に圧力をかける動きと見られる。
集会に参加するタクシン支持者は約10万人に上るとの見通しだが、ティーダ議長は、「憲法裁を牽制することが狙いではない。」と述べた。
11月17日(日)プア・タイ党の広報担当、プロムポン議員は、民主党がインラック首相やチャルポン内相に対する不信任決議案の提出を受けて、プア・タイ党が19日にプア・タイ党議員を集めて対策を協議する予定を明らかに。
ただ、プロムポン議員は、「民主党は不信任を求める理由を文書で提出していない。」として、ソムサック下院議長が不信任案審議の日程を決めていないのは正当と説明。
反タクシン派による「笛攻撃」に閣僚の一部から批判的な意見が出ているが、インラック首相は、「笛を吹いて意見を表明しようとしたもので、(政府は)介入できない。」と、取り締まる考えのないことを明らかに。
閣僚や官僚に対し一斉に笛を吹き鳴らすという反政府派の戦術に対しては、プロートプラソップ副首相は、「唾を吐きかけられたような気分。」と不快感を露わにしている。
民主党幹部のステープは、都内ラーチャダムヌン通に集まった約2万人の群衆を前に、「タクシン政権からタイ国民を解放する最後のチャンス。」と、24日により多くの市民にラーチャダムヌン通に集結するよう呼びかけた。ステープは、「タクシンの影響を排除することは次の世代のために不可欠。」と強調し、少なくとも100万人の参加を期待。
タクシンの関連企業の製品とサービスのボイコットも呼び掛けており、ステープは「11月30日までに目標は達成できる。」と自信を示した。
11月18日(月)インラック首相は11月26、27日にシンガポール、12月08~10日にロシア、12月11日にビルマ、12月12~15日に日本を訪問。ビルマ訪問は東南アジア競技大会の開会式出席のため。日本では日本・東南アジア諸国連合(ASEAN)特別首脳会議に出席。
インラック首相は2011年08月の就任以来、50回近い外遊をこなし、外遊の成果も上がらず物見遊山の税金の無駄使いとの批判も出ている。
日にはタクシン派インラック政権・与党が進める上院の全議席を公選制とする憲法改正について、憲法裁判所が違憲かどうかの判断を下す。憲法裁は両派の抗争で、ほぼ一貫してタクシン派に不利な判決を下している。
プア・タイ党に解党処分を下す可能性があることから、タクシン派が牽制の動きを見せている問題で、プア・タイ党戦略委員会のアピワン委員はこのほど、「戦略委員会が内容の如何にかかわらず憲法裁の判断・決定を受け入れないことで意見が一致した。」と明らかに。
アピワン委員によれば、「憲法改正は国会議員に付与された権限の範囲内であり、憲法裁が上院議員関連改憲案の是非に口を挟むことは立法府(国会)への干渉であり、受け入れられない。」
このほか、タクシン支持団体の中には、憲法裁の介入に抗議するため「19日にクルングテープで大規模集会を行う。」、「20日に憲法裁前で集会を決行する。」と表明しているところもある。都内のラチャマンカラ国立競技場で集会を開き、憲法裁に圧力をかける方針。
一方、バンコク都内の民主記念塔で座り込みの反政府集会を続けている反タクシン派の野党民主党は24日に大規模な集会を開き、インラック政権の打倒を目指す。
反政府派が閣僚などに対し一斉に笛を吹き鳴らすという戦術について、法務省特別捜査局(DSI)のタリット局長は、「法律違反」との認識を示してホイッスルを吹いた者らに法的措置を執る構えを明らかに。
この「笛攻撃」は、都内ラーチャダムヌン通の大規模反政府集会の呼びかけ人である民主党幹部のステープがインラック政権と「タクシンの家来」を非難するために呼びかけたもの。
タリット局長によれば、「(局長自身は)笛を吹かれても平気だが、このような行為は、騒音公害を禁じた刑法370条(最高刑:罰金100B)、誹謗中傷を禁じた刑法397条(最高刑:禁錮1ケ月、罰金1000B)に抵触する。」
民主党の重鎮、ステープが、ニコム上院議長に対し、修正恩赦案に賛成票を投じた下院議員310人の罷免を請求する考えを正式に伝えた。
罷免請求には有権者2万人の賛同が必要なため、ラーチャダムヌン通で続けられている反政府集会では署名集めが行われており、ステープによれば、「20日にも2万人以上の署名を添えて罷免請求を上院議長に提出できる。」罷免請求の理由について、ステープは、「恩赦案は憲法違反であり、恩赦案を支持した下院議員は責任を取る必要がある。」と説明。
なお、恩赦案は与党が下院で安定多数を確保していることから下院を通過したものの、反対運動が拡大し、政府が恩赦を断念。これを受けて恩赦案は上院の第1読会で否決された。
11月19日(火)憲法裁判所が政府の推す上院議員関連改憲案の合憲性に関する判断の20日の前日、プア・タイ党の実動部隊、反独裁民主主義同盟(UDD)が都内ホアマークのラチャマンカラ・スタジアムで開催中の政府支持集会において、上下院議員約30人がタクシン支持者約6万人を前に、「国会議員には憲法を改正する権限がある。改憲案を支持した上下院議員312人は憲法裁判所の判断を拒否する。」と表明。
上院議員関連改憲案は議会通過に伴い、インラック首相が10月01日に国王の承認を得る手続きを取ったものの、同案を違憲とする訴えが憲法裁に起こされたことから、王室サイドは同案の扱いを決めるべく憲法裁の判断を待っている状態。
なお、学識者からは、「憲法裁判断を拒絶するとの表明は憲法違反。上下院議員312人は罷免に値する。」との意見も。
都内ラーチャダムヌン通の大規模反政府集会の呼びかけ人、民主党幹部のステープは、インラック首相からデモ対策を一任されたチャルーム労相が「30日までにデモをやめさせる。」と明言したことを受け、「29日までにインラック政権を崩壊させる。」との新しい目標を打ち出した。また、ステープによれば、「チャルームは勇敢ではないものの、悪徳警官とつながりがあり、反政府デモを潰すためにあらゆる手段を用いてくる可能性があるため、注意が必要。〔 この他、国家治安委員会(NSC)のパラドン事務局長は、「ラーチャダムヌン通のデモは11日の10万人がピーク。今は減っている。」と述べた。また、「治安当局がステープに危害を加える。」との見方があることに対し、パラドン事務局長は、「誤った情報を流して嫌悪感、不信感を煽ろうとしたもの。深南部の過激派がよく使う手口。」と反論。
民主党が先に提出したインラック首相とチャルポン内相の不信任決議案について、ソムサック下院議長は、「このままでは不信任案は受理できない。」と述べ、民主党に対し、不信任要求の根拠を具体的に明示するよう要求。
これに対し、民主党は、「不信任案審議において首相と内相が厳しい責任追及を受けることがないよう民主党に手の内を明らかにさせようとしたもの。」と反発。
また、ソムサック議長は、民主党が先に提出したインラック首相、チャルポン内相、プロートプラソプ副首相の罷免請求について、罷免請求の具体的根拠を記した文書を21日午後16時30分までに提出するよう要求し、「不信任案と罷免請求はセットで提出されるべきもの。」と指摘して、文書が提出されなければ、不信任案審議を行うことはできないとの考えを明らかに。今国会は28日に閉幕する予定。
英有力誌「エコノミスト」は最新号のタイでの販売を取り止め。掲載されているタイに関する記事がタイで不敬罪に問われる恐れがあるため。
問題の記事はタクシン派と反タクシン派の抗争を分析したもので、将来起こりうるシナリオに言及。「エコノミスト」はタイでこれまでに数回、不敬罪に抵触する恐れから販売が中止。



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「タイランド通信」、「バンコク週報」、「newsclip.be」、「タイの地元新聞を読む」
「キャプローグ」、「NNA(エヌ・エヌ・エー)」、「週刊タイ経済」
「สำนักข่าว กรมประชาสัมพันธ์(NNT)」、「ไทยรัฐ(Thairath)」、「เดลินิวส์(Daily News)」、「โพสต์ ทูเดย์(Post Today)」
「The Nation」、「Bangkok Post」
「AFP」、「BBC」、「CNN」
「産経新聞」、「朝日新聞」、「讀賣新聞」、「毎日新聞」
「時事通信」、「共同通信」、各種地方紙、「Rapporteurs Sans Frontières(国境なき記者団)」
「タクシンの政治」、「Kaan Muang Thai -タイの政治- 」
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