37章 国外逃亡犯タクシン免罪法案と改憲に対し、憲法裁の審議中止命令
05月26日(土) | 反タクシン組織の民主主義市民連合(PAD)首脳のソンティは、PADが毎週ルンピニー公園で開いている集会で、反タクシン派テレビ番組の公開収録を行い、久しぶりに姿を見せた。
支持者数百人の前で、「国民和解法案は、タクシンの免罪、収監回避を目的としたもの。」と断固反対する姿勢を強調し、「今回が最後だ。負けたら死ぬ。」と、支持者に反対運動への参加を呼びかけた。国民和解法案の下院審議が開始される30日に国民和解法案に反対を表明すべく、アナンタサマーコム宮殿前で反対集会を開き、その後、国会議事堂までデモ行進する予定。
2005年09月15日~2011年05月10日の間、政治関連の罪に問われた政治家、公務員、一般市民に恩赦を適用するとした国民和解法案は、野党マートゥプーム党党首のソンティ元陸軍司令官によって議会に提出されたもの。緊急案件として30日の31日の両日、下院で審議される。
PAD首脳のソンティは、この法案の通過阻止について、「勝利しようと敗北しようと私にとっては最後の戦い。」と、その後は政治活動から身を引く意向。
タクシン派が下院の過半数を抑えていることから、反タクシン派は国会で和解法案の成立を阻む手段がない。阻止するには、憲法裁判所が法案内容を違憲とする判断を下すか、大規模な街頭デモで法案撤回に追い込むかしかない。そうした意味で、30日のPAD集会にどの程度の人数が集まるかに、法案の運命は大きく左右される見通し。
タクシン3派与党プア・タイ党は国民和解法案への対応を明確にしていない。「和解」と銘打ったものの、内容はタクシンへの有罪判決を洗い流し、帰国への道筋を付けるもので、国会で採決を強行すれば、軍、世論の反発を招きかねない。ソンティ元司令官に法案提出を任せたのもこうした懸念からとみられ、世論、軍、反タクシン派の動向を見て対応すると見られる。
タクシン派と反タクシン派の対立は当初、新興財閥と特権階級の権力闘争と見られたが、「紛争が長引く中、民主化勢力と特権階級の対立に深化した。」という見方がある。タクシン派は2006年のクーデターと同派解党を命じた2008年の司法判断で、2度、政権を追われたが、総選挙では2001年、2005年、2007年、2011年と4連勝中。反タクシン派は軍事クーデター、裁判、街頭デモなどで対抗し、不安定な政局が続いている。 |
タクシンの帰国への道筋を付ける国民和解法案を提出したソンティ・ブンヤラカリン元陸軍司令官は1946年生まれのイスラム教徒。陸軍士官学校を卒業して任官し、2005年、タイ軍の実力トップである陸軍司令官にイスラム教徒として初めて就任。当時、軍の掌握を図るタクシン首相は、軍に強い影響力を持つプミポン国王側近のプレム枢密院議長(元首相、元陸軍司令官)と対立を深めていた。ソンティ司令官は首相が外遊中の2006年09月19日、陸軍部隊をクルングテープに送り込み、首相府やテレビ局などを制圧し、憲法を停止して全権を掌握。同日中にプレム議長同席のもと、プミポン国王夫妻に面会し、軍事政権を樹立した。その後、元上司であるスラユット枢密顧問官(元陸軍司令官)を首相に据えて自らは表舞台から徐々に身を引き、翌年、陸軍を定年退官した。以降、目立った動きを見せていなかったが、2011年の下院総選挙にイスラム系小政党の党首として出馬し、当選。タクシン派が多数を占める下院で、タクシン派と反タクシン派の和解を模索する国民和解検討委員会の委員長に就任し、世間を驚かせた。
ソンティがタクシンに利する法案をまとめ、国会に提出した真意は不明。ソンティが軍を退官した後、短期間軍政トップを務めたチャリット元空軍司令官は2011年05月、枢密顧問官に任命されている。
一方、「和解法案」反対の狼煙を上げた市民団体、民主主義市民連合(PAD)の創設者、ソンティ・リムトーングクーンは支那国民党系の移民2世で、1947年生まれ。大手新聞社マネジャー・メディア・グループ(MGR)を創業し、1990年代に携帯電話、通信衛星へと事業拡大を図ったが、1997年のアジア経済危機で経営が破綻。2001年の下院総選挙では自社メディアを動員し、実業家仲間で年も近いタクシンを支持。タクシン政権発足後はMGRに対する国営クルンタイ銀行(KTB)の債権放棄などで恩恵を受けた。しかし、2005年に突如タクシン政権打倒を掲げ、PADを設立。タクシンを王室廃止を狙う腐敗政治家と糾弾。反タクシン感情を煽り、一大運動を巻き起こした。
PADの活動は成功を収めたが、MGRは経営再建に失敗し、2008年に裁判所が破産を宣告。傘下の新聞、雑誌、衛星テレビ局はその後、スタッフごとPAD系の別会社に移動し、事業を続けている。ただ、新会社でもここのところ、給料遅配が起きているという。
ソンティは「MGRの経営状況を偽りKTBから約11億Bの融資を受けた。」として証券取引法違反に問われ、今年02月、一審のタイ刑事裁判所で懲役20年の実刑判決を受けた。即日控訴し、同日保釈されたが、ほかにもPADによる2008年の空港占拠の損害賠償、名誉棄損などの裁判を抱えている。昨年01月には「ソンティとタクシンがクウェートで密談した。」という消息筋情報がタイ字紙で報じられたが、ソンティは否定。
「金」と「法律」の紛争が目立つソンティだが、PAD支持者には「王室の守護者」として高い人気を誇る。ただ、国民の多くは度重なる街頭デモに嫌気が差しているとみられ、「国民和解法案反対」、「タクシンの帰国反対」でどれだけデモ参加者を集められるかは不透明。 |
反タクシン組織の民主主義市民連合(PAD)が国民和解法制定に強く反対している問題で、国立タマサート大学法学部のキティサック准教授は、05月30日と31日に下院審議が予定されている国民和解法制定案について、「法制定に必要な要件が欠けている。何を目的とした法なのか明確にされておらず、だれが恩恵を受けるかもはっきりしない。」、「国民和解法制定が問題に繋がり、憲法に抵触する可能性がある。」との見方。
反タクシン派は、国民和解法の狙いが国外逃亡中のタクシンの免罪・収監回避などと批判しているが、キティサック准教授によれば、「国民和解法のもとでだれを恩赦対象とするかが明確にされていないのは、起草者が対象の拡大を目論んでいるためと考えられる。」 |
刑法112条に規定された不敬罪については「最高刑禁固15年は重過ぎる。」といった意見が一部から出ているが、市民団体の「刑法112条改正キャンペーン委員会」は05月29日にも下院議長に対し、2万7296人の署名を提出して同条改正を要請する予定。同団体はこれまでに約3万8000人分の署名を集めたが、このうち1万人以上の署名が無効だったことから、残りの署名を提出することにした。法律では有権者1万人以上の賛同があれば法改正を要請できる。
同団体によれば、「禁固3~15年という罰則規定、『誰でも警察署に不敬の訴えをすることできる。』との規定などを改める必要がある。」 |
05月27日(日) | 東北部、北部などの各県で県長(任期4年)選挙。
東北部スリン県では野党プームチャイ・タイ党推薦のキティパットが27万6652票で当選。タクシン派与党プア・タイ党推薦のトンチャイは21万0514票で2位。有権者数は98万9832人、投票率は56%。
北部チエンライ県ではプア・タイ党推薦のサラクチットが34万1611票を獲得し、17万6197票だった現職のラタナー県長を破り当選。有権者数は85万9752人、投票率は66%。サラクチットはタクシンの側近のヨンユット元天然資源・環境相の妻、ラタナーは05月05日のチエンライ市長選で勝利したワンチャイ市長の妻で、激しい選挙戦が展開された。
東北部ロイエット県ではプア・タイ党推薦のマンコンが19万0993票で当選。有権者数97万8986人、投票率57%。
北部ピチット県では現職のチヤムシリーポン県長が12万9424票で再選。有権者数41万3313人、投票率49%。
中部スパンブリ県では現職のブンチュー県長が24万7833票で再選。有権者数61万1014人、投票率58%。 |
05月28日(月) | 反タクシン陣営から「タクシンの免罪が狙い。」といった批判の出ている国民和解法案について、最大野党・民主党のオンアート議員は、「内容が不適切。」、「性急な法制定は憲法違反。」など批判し、ソムサク下院議長に取り下げを要請。
野党マトゥプーム党のソンティ党首(元陸軍司令官)が提出した国民和解法案は緊急案件として30日と31日に下院で審議される予定。また、アピシット民主党党首によれば、「政権党プア・タイ党を率いるインラック首相は、国民和解法案に対する党の姿勢を明確にせず、『議会に委ねる。』としているものの、最多の議員を擁するプア・タイ党が事実上決定権を握っており、理屈に合わない。首相は賛否を明らかにする必要がある。」 |
クルングテープで05月30日~06月01日にかけ、東アジアに関する世界経済フォーラム(WEF)が開催されるが、キティラット副首相兼財務相は、「反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)が30日に予定している大規模抗議活動がWEF開催に影響することはない。」との見方。
国民和解法制定に反対するPADは、制定案の下院審議が開始される30日に都内ロイヤルプラザで抗議集会を行う。WEF会場のシャングリラホテルとロイヤルプラザは直線距離で5㎞ほど離れている。キティラット副首相は、「(PADには)WEFの重要さを理解してもらいたい。」と述べている |
法務省特別捜査局(DSI)のタリット局長は、「高架電車BTSスカイレインの運営権を違法に延長した。」としてクルングテープ都都庁を起訴する方針であることを明らかに。
この問題では、反タクシン派・民主党の影響下にある都庁は「合法」と主張しているが、タリット局長によれば、「内務省から『都庁には運営権延長の権限がない。』」と説明があった。」
タリット局長は06月27日、起訴に向けて、この問題をDSIの特別捜査委員会に取り上げるよう要請。受理された場合、関係者から聞き取りなどを行う予定。 |
05月29日(火) | マトゥプーム党ソンティ党首(元陸軍司令官)の国民和解法案に関する下院審議を翌日に控えた05月29日、 政権党プア・タイ党のケオミーチャイ、ニヨム、ナタウット3議員がそれぞれ和解案を下院に提出。
これら4案はほぼ同じ内容とされるが、ソンティ案には、プア・タイ党の実動部隊、反独裁民主主義同盟(UDD)から反対意見も出ているため、プア・タイ党は所属議員を通じて独自の和解案を提出することで、ソンティ案に距離を置こうとした可能性がある。また、先に「独自案を用意している。」と述べていたプア・タイ党幹部のチャルーム副首相は、和解案を提出しなかった。だが、これまでに提出された4案は、内容の類似性から、下院委員会によって1つの案にまとめられる可能性が高いが、その最終案がチャルーム案に基づいたものとされることも考えられる。 |
不敬罪を規定した刑法112条の改正を求める市民団体「刑法112条改正キャンペーン委員会」が、 約2万7000人の署名とともに同条改正を要求する書面を副下院議長などに提出。
不敬罪規定の改正は、政権党プア・タイ党の実動部隊、反独裁民主主義同盟(UDD)のメンバーも要求しているが、学識経験者らが率いる同団体は、「(政治色のない)一般市民からの要求。」と説明。 |
反タクシン派団体の民主主義市民連合(PAD)は、記者会見を開き、タクシンに対する実刑判決の無効化などを含む国民和解法案の国会審議入りに反対し、30日に都内ラーマ5世広場前で集会を行うと発表。
13時頃、アナンタサマーコム宮殿前に集合し、15時に国会議事堂までデモ行進する予定。反タクシン派の他団体も合流する方針を打ち出している。 |
在タイ日本大使館は、反タクシン派団体の民主主義市民連合(PAD)が、都内で抗議集会を実施することを発表したことを受け、「抗議集会の周辺で交通渋滞や混雑が予想される。」として、在住日本人、旅行者に対し注意喚起。
市民民主化同盟(PAD)による抗議集会の実施(5月29日現在)
1.治安当局等によれば,市民民主化同盟(PAD:通称「黄シャツ・グループ」)は,国民和解法案が国会に提出されたことを受けて同法案に反対するために以下のとおり抗議集会を行う模様です。
●日 時:5月30日(水)午前9時頃~
●場 所:ラマ5世騎馬像前。その後国会議事堂へ向けてデモ行進を予定。
●人 数:5,000人以上が参集する可能性有。
2.つきましては,上記1.のとおり,PADによる抗議集会の影響により,抗議集会が実施される周辺においては交通渋滞や人の混雑が予想されますので,報道等から最新情報の入手に努めるとともに,抗議集会が実施される周辺に近づく場合には,十分に注意を払ってください。
(問い合わせ先)
○在タイ日本国大使館領事部
電話:(66-2)207-8502、696-3002(邦人援護)
FAX :(66-2)207-8511 |
05月30日(水) | 通常国会で、クーデター以降の政治犯に恩赦を与える国民和解法案が審議されることを受け、各地から反タクシン派団体が国会議事堂前に集まり、抗議デモを開始。
2008年にスワンナプーム空港などを占拠した反タクシン派団体の民主主義市民連合(PAD)の動きに連動し、各地から反タクシン派の団体が国会議事堂前に、「和解法案」反対のデモを開始し、数千人が議事堂前に集結。治安当局はデモ隊の進入を防ぐため、国会議事堂の正門を閉じ、周辺の一部道路を封鎖。
一方でタクシン派団体の反独裁民主主義同盟(UDD)も抗議デモに対抗するため、同様に国会議事堂前に集結。
デモを指揮したPAD創設者で実業家のソンティ・リムトーングクンは街宣車の上で演説し、「タクシンの帰国をあらゆる手段で阻止する。」と宣言。「和解法案」を提出したソンティ元司令官、PADが要求しているクーデターによる現政権転覆に応じないプラユット陸軍司令官らを批判。このため警察は、タクシン派と反タクシン派の衝突を防ぐため、900人の警察官を配置し対応に当たった。 |
タクシンに対する実刑判決の無効化などを含む国民和解法案の審議入りをめぐり、国会議事堂の内外で大荒れ。「和解法案」は下院の国民和解検討委員会(委員長、ソンティ・ブンヤラカリン元陸軍司令官)がとりまとめ、24日に下院に提出した。ほかにタクシン派与党プア・タイ党の下院議員らが似た内容の3法案を出し、全部で4法案が審議される見通しとなっている。
下院本会議で、国民和解4法案を緊急議題として31日の審議入りを図ったが、ソムサック下院議長が緊急議題の是非を問う採決を強行したところ、最大野党の民主党の議員らが強く反発。議長を「タクシンのために議長をやっているのか。」などと非難。野党民主党の男性議員が議長に詰め寄り、腕を摑んで椅子から引きずり降ろそうとした。警官が間に入り、この議員は引き離されたが、議長席の周囲で与野党の議員が睨み合う事態となったため、ソムサック下院議長は審議を一時中断。休憩を宣言し、議場の外に出た。
← 警官に守られたソムサック下院議長。
これを見た民主党の女性議員が議長の椅子を持ち上げて議場の外に放り出し、議長の椅子を運びだそうとした。この議員にプア・タイ党の女性議員が摑み掛かった。「議員が顔面を平手打ちされた。」との情報もあったが、当事者は全員否定。最終的には、議長代行が採決を行わずに閉幕を宣言。
タイのテレビのニュース番組は30日の騒ぎを「タイの国会でかつてなかったこと。」と報じた。 |
反タクシン組織の民主主義市民連合(PAD)の呼びかけで、国民和解法制定に反対する大集会がクルングテープ都内ロイヤルプラザで行われた。警察によれば、参加者は約5000人。
この抗議活動は、下院で同日に国民和解法制定案が審議されることから計画されていたものだ。集会でPAD首脳は、「国民和解法は君主の権限に背くもの。」、「司法に影響力を行使しようというタクシンの企み。」などと批判。
PADは31日も午前10時から抗議集会を行う予定。 |
軍事政権下の2007年に解党された初代のタクシン派政党タイ・ラック・タイ党の元役員111人に対する5年間の参政権停止処分が31日で解除されることを祝い、元役員とその支持者らがクルングテープ都内のホテルで式典。式典にはチャトゥロン元タイ・ラック・タイ党党首代行、ポンテープ元法相、スダーラット元保健相、チッチャイ元副首相、ワンムハマドノー元副首相、ポーキン元下院議長ら元役員57人が出席。
タクシンが創設したタイ・ラック・タイ党は2001年から政権を担当し、2005年の総選挙では下院議席の3分の2を占める圧勝を収めた。しかし、2006年09月、タクシンの権力拡大を危惧する特権階級が軍事クーデターで政権から追放。翌2007年、タイ・ラック・タイ党は特別法廷で解党され、役員全員の参政権が5年間停止。
チャトゥロン元党首代行は式典での演説で、軍事政権による憲法や参政権停止などが現在も有効なことに不満を示し、「真の民主主義に向け、不公正な司法制度を改める必要がある。」と主張。
国外逃亡中のタクシンはビデオ電話で参加し、元役員に犠牲に対する感謝と謝罪を伝えた。そして、「選挙を何度やっても我々が勝つ。」、「過去の苦痛を忘れ、前進しよう。」と呼びかけた。
昨年07月の総選挙では3代目のタクシン派政党であるプア・タイ党が過半数を制し、タクシンの妹のインラックが首相に就いた。人材払底気味のプア・タイ党に比べ、式典に出た57人には派閥領袖クラスの大物政治家が多く、プア・タイ党はこうした大物を閣僚や党幹部として迎えると見られている。
一方、タイ・ラック・タイ党元役員の1人であるタマラック元国防相は、「2006年04月の下院総選挙で選挙委員会の職員を買収し、選挙委データベースの改竄を図った。」として、刑事裁判所から懲役3年4ケ月の実刑判決を受けた。タマラックは即日控訴し、保釈保証金50万Bで保釈。
タイ・ラック・タイ党政権は2006年、反タクシン派市民によるクルングテープでの大規模デモを受け、解散総選挙に踏み切り、前年同様、大勝。しかし、野党民主党が選挙をボイコットした上、裁判所が技術的な問題を理由に選挙を無効とし、混乱が深まった。こうした状況の中、当時のタクシン首相は長期間の外遊に出発し、その間に軍事クーデターが勃発。 |
プラサン中央銀行総裁によれば、「ユーロ圏の債務危機と国内の政情不安がこの先1~2年にわたり、タイ経済の成長にとってリスクとなる恐れがある。」これまでにタイ経済を直撃した衝撃については、「タイ経済に免疫ができており、政府も財政・金融政策で対応する態勢を整えている。しかし、反タクシン組織の民主主義市民連合(PAD)が大規模な抗議活動を再開しており、政治的緊張が高まることが予想される。反政府活動がどのような展開を見せるかにも よるが、政情不安がタイ経済の成長にブレーキをかけかねない。」 |
05月31日(木) | 下院では30日、国民和解法案の扱いを巡って野党議員が激しく抗議して審議が中断したが、31日もタクシン派与党のプア・タイ党はタクシンに対する実刑判決の無効化などを含む「国民和解4法案」を緊急議題とすることの是非を問う採決を強行。ソムサック下院議長が野党議員が強く抗議する中、警官多数が下院議長の周囲を固める異様な状況の中、可決。野党議員らが議長を激しく非難。野党民主党は採決に抗議し、議場内は怒号に包まれた。法案の審議は01日から始まる見通し。
議場内は怒号や書類の束が飛び交い、議長は警察官らに守られて退席するという混乱状態となった。同日の決定に伴い、和解案は06月1日の下院審議で最初に取り上げられることになった。 |
国民和解法案に反対する反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)は前日に引き続き、クルングテープ都内ロイヤルプラザで大規模な抗議集会。
ここで、PADは、集会参加者に対し、06月01日も抗議集会を行うことを伝え、催涙ガスなどを用いた強制排除に備えてガスマスクを持参するよう呼びかけた。
PADとともに同案に反対している市民団体、グリーン・ポリティクスのコーディネーター、スリヤサイ(元PADスポークスマン)は、「(我々が)法案の通過阻止に拘るのは、(タクシン派が)タクシンの免罪を企んでおり、(国民和解法が)司法に打撃を与えるものであるため。」、「(タクシンなどを有罪とした)裁判所の判決を無効とするのは、クーデターを起こすよりはるかに悪い。」と述べた。 |
タクシンに対する実刑判決の無効化などを含む国民和解法案に抗議し30日に国会議事堂前で集会を行った反タクシン派団体、民主主義市民連合(PAD)は集会参加者の一部、約200人が31日も議事堂前に居座り、座り込みの長期化が濃厚となった。現場には調理場や簡易トイレが設営され、集会参加者には食事と飲み物が無料で配給されていた。早朝には反タクシン派の新興仏教団体サンティアソークの僧侶が托鉢に訪れた。警察は国会議事堂前に鉄条網を設置し、警官約2000人を動員し、警備にあたっている。 |
軍事政権下の2007年に解党された初代のタクシン派政党タイ・ラック・タイ党の元役員111人に対する5年間の参政権停止処分が解除され、元役員のうち、ワンムハマドノー元副首相、ワラテープ元副財務相、ウィーラカン元副内相らが、3代目のタクシン派政党であるプア・タイ党に入党。ウィーラカンは2010年にクルングテープ都心部を占拠したタクシン派団体UDD(通称スアデーン=赤服)幹部で、占拠事件後、名前をウィーラからウィーラカンに変えた。 |
06月01日(金)午前 | クルングテープ都サームセーン警察は、サームセーン地区内の学校に午後より臨時休校とするよう命令したことを明らかに。
この命令を受けラーシニーボン学園は正午、セントフランシスソフィア学園、セントガブリエル学園は午後02時をもって休校。
今回の臨時休校命令は、民主主義市民連合(PAD)を中心とした反タクシン派団体が、和解法案阻止のため国会議事堂に突入する恐れが出てきたため、その対策として一部道路が封鎖されることとなったことが理由。封鎖される道路は、ラーチャウィティー通、スコータイ通。 |
| 一時休戦状態となっていたタクシン派と反タクシン派の抗争がタクシンに対する実刑判決の無効化などを含む国民和解法案の国会提出を機に一気に再燃。
下院で多数を占めるタクシン派は国民和解法案でタクシンの免罪と帰国、憲法改正で反タクシン派の政治・司法への影響力排除を画策し、ビルマの民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーのタイ訪問(05月29日~06月03日)とクルングテープでの世界経済フォーラム(WEF)東アジア会議開催(05月31日~06月01日)に合わせ、ドサクサに紛れて和解法案の国会審議入りを図った。しかし、反タクシン派の野党民主党の反発で議場内が乱闘寸前となる一方、国会議事堂周辺では、民主主義市民連合(PAD)など反タクシンの王党派団体が警官隊と衝突し、国会前の道路を封鎖。 |
憲法裁判所は、任命制上院議員や民主党下院議員らの訴えを受け、新憲法案を起草する憲法起草議会を設立するための憲法291条改正案の国会審議を憲法裁が違憲かどうかの判断を下すまで中止するよう命じた。291条改正案の国会審議は第3読会の採決直前だった。 |
06月02日(土) | ソムサック下院議長は、05~ 07日に予定していた和解法案と憲法291条改正案の国会審議延期を決定。
国外逃亡中のタクシンは、クルングテープ郊外で行われたタクシン派集会にビデオ電話で参加し、「憲法裁の命令はタクシン派インラック政権の転覆を狙ったものだ。」と主張。「反タクシン派が法治の枠外で蠢動し、両派の和解は困難になった。」という見方。また、初代タクシン派政党タイ・ラック・タイ党のチャトゥロン元党首代行は、「憲法裁の命令は権限の範囲外で手続き上も明白に違憲だ。」として、「憲法裁による憲法違反。」と批判。
インラック政権は01日、02日に首都警察の司令官と副司令官を更迭。反タクシン派デモ隊に道路封鎖を許したことによる懲罰人事と見られている。 |
下院のチエンマイ県3区補欠選で、タクシン派与党プア・タイ党公認のカセーム候補(48)が7万2385票を獲得し、2位の野党民主党候補に3倍以上の差をつけ圧勝した。有権者数は13万6273人、投票率は74%。
今回の補欠選はタクシンの姪のチンチンチャー・ウォンサワット前下院議員が虚偽の資産報告で失職したため実施された。チエンマイはタクシンの生まれ故郷で、選挙戦ではタクシンの妹のインラック首相も応援に駆けつけた。
タクシン派は選挙に強いことが強みだが、プア・タイ党は04月に行われた中部パトゥムタニー県の下院補欠選と県長選で連敗、05月には北部チエンライ市長選、東北部スリン県長選などで敗れ、退潮ムードが漂っていた。 |
06月03日(日) | チャルン副下院議長は、「下院では予定通りに国民和解法案の第3、最終読会が行われる。」と述べ、憲法裁判所の審議差し止め命令を無視する考え。
憲法裁命令は、法案内容が違憲との訴えに伴うものだが、政権党プア・タイ党の事実上の最高実力者、タクシンなどは、「国民の大多数の支持を得た政権の意向を蔑ろにするものだ。」と強く反発している。チャルン副議長によれば、「法律専門家に検討させたところ、憲法裁の命令で議会を拘束することはできないとの結論に至った。」という。
法案の第3、最終読会は今月08日に予定されているが、上下両院は、審議差し止め命令が議会活動にどのような影響を及ぼすかについても協議する見通し。 |
国民和解法案の審議差し止め命令を政権党プア・タイ党が「越権行為」と批判し、裁判官の罷免請求の構えを見せているのに対し、憲法裁判所のワサン長官は、「法に基づいたもの。」と反論。
プア・タイ党の法律専門家によれば、「差し止め命令は、法案内容が違憲との訴えに伴うものだが、憲法68条では、このような訴えには検察の見解を添えることが必要とされている。」という。だが、ワサン長官は、「命令は憲法68条に基づいたもので違法な点はない。」としている。
また、ソムサック下院議長が差し止め命令無視の意向を示していることについて、ワサン長官は、「法案を最終的に承認するのは国会議員であり、命令は議員で構成される議会にも及ぶことになる。」との見方。 |
憲法裁判所の審議差し止め命令により国民和解法案の第3、最終読会通過が危ぶまれていることから、政権党プア・タイ党は、憲法裁の命令を無視して予定通りに読会を行うべく、国民和解法案に賛成する上下両院議員の署名を集める方針。
コーケウ、プア・タイ党議員によれば、「プア・タイ党は06月05日に開く会議で、与党議員、上院議員に署名を呼びかける予定。」という。しかし、憲法裁の命令に背いて法案の下院通過を強行すれば、同案に反対する反タクシン派が反発を強める可能性は極めて高い。
そのため、最大野党の民主党のアピシット党首は、「法案を巡る緊張、対立は政府が引き起こしたもの。(この上)、裁判所の命令を無視すれば、大混乱を引き起こすことは必至。」と 警告。 |
政権党プア・タイ党が、憲法裁判所の審議差し止め命令にもかかわらず、国民和解法案の第3、最終読会を予定通りに行おうとしているが、憲法裁判所関係筋によれば、「命令を無視しても、これを罰する規定は存在しない。しかし、命令に従わない政党が解党処分となる可能性がある。」
しかしプア・タイ党は、憲法68条では「違憲の訴えは検察の判断を添えて行う必要がある。」と定めているため、「今回の訴えは無効、差し止め命令も無効。」と主張。また、タクシン派寄りとされる、国立タマサート大学の法学者グループ「ニティラート」も、「憲法68条では、『個人・政党による憲法違反を検察、憲法裁に訴えることができる。』とされているものの、国民和解法案に関しては、主体は議会であり、個人でも政党でもない。そのため、違憲の訴えを行うことはできず、差し止め命令も無効。」と主張。 |
政府が、憲法裁判所の差し止め命令を無視して、政府が反タクシン派が反対する国民和解法案の審議を行うかどうかに関心が集まっていたが、ソムサック下院議長(国会議長)は、「08日の上下両院合同会議は予定通り開催するが、和解案の審議や採決は行わない。」と述べ、同案の第3、最終読会を延期することを明らかに。
読会は当初の予定では08日に行うことになっていた。延期の決定は、憲法裁との対決を避けるべきとの判断によるものという。また、ソムサック議長は、「13日と14日 に下院の特別会議を開く。だが、(最近上程された3案を加えた)国民和解4案は協議事項には入っていない。」とも述べた。
政権側は、差し止め命令は無効と主張して、第3、最終読会を強行する構えを見せていたが、ソムサック議長は、「命令無視は危険過ぎる。」として、最終的に延期を決定。 |
06月05日(火) | タクシン派インラック政権は閣議で、スラナン・ウェーチャチーワ元首相府相を首相秘書官長に任命。スラナンは05月末で5年間の参政権停止処分が解除された初代のタクシン派政党タイ・ラック・タイ党の元役員111人のうちの1人。参政権停止中はテレビのグルメ番組のリポーターなどとして活動。野党民主党党首のアピシット・ウェーチャチーワ前首相は父方の従兄。
* スラナン・ウェーチャチーワ
1961年生。米コロンビア大学で国際関係学の修士号を取得。1995年、タクシン派政党タイ・ラック・タイ党の役員に就任。2001年、タイ・ラック・タイ党から下院選に出馬し、当選。2005年から首相府相を務めたが、2006年09月の軍事クーデターで失職し、翌年、5年間の参政権停止処分。 |
タクシン支持派の市民団体、反独裁民主主義同盟(UDD、通称スア・デーン=赤服)」は07日、憲法裁判所が憲法改正に向けた国会審議の一時中止を命じたことに抗議し、国会議事堂前で集会を開く予定。反タクシン派団体、民主主義市民連合(PAD)と衝突する可能性もあり、警察は警備を強化。
議会下院で多数を占めるタクシン派はタクシンに対する実刑判決の無効化などを含む「国民和解法案」を05月下旬に下院に提出する一方、反タクシン派の政治・司法への影響力排除を狙い、憲法改正の準備を進めてきた。しかし、反タクシン派の野党民主党が和解法案の審議入りに猛反発し、国会内は乱闘寸前に。国会議事堂周辺では01日、PADなど反タクシン派団体が警官隊と衝突し、国会前の道路を封鎖した。タクシン派は同法案の審議入りのタイミングを探っているが、強硬な反対を受け、具体的な日程が立てにくい状況。
一方、新憲法案を起草する憲法起草議会を設立するための憲法291条改正案の国会審議は第3読会の採決直前の01日、違憲かどうかの判断を下すまで審議を中止するよう憲法裁判所が命じ、こちらも暗礁に乗り上げた。タクシン派は「憲法裁の権限の範囲外として反発し、一部には採決を強行すべき。」という意見も出ている。
タイの司法はタクシン派と反タクシン派の抗争が激化した2006年以降、タクシン派が勝利した2006年総選挙の無効化、タクシン派政党の2度にわたる解党、タクシン派首相の事実上の解任など、一貫してタクシン派に不利な判決を下している。こうしたことから、「タクシン派内部には、反タクシン派が国際的に批判を受ける軍事クーデターの代わりに、裁判所を使った『司法クーデター』でタクシン派潰しを図っている。」という見方がある。 |
反タクシン組織の民主主義市民連合(PAD)が国民和解法案を「タクシンの免罪が狙い。」と批判して大規模な抗議活動を再開したことから、「クーデターが起きる。」との噂が広がっている。
その背景には、クーデターで痛い目を見たタクシン派がことあるごとに「クーデターが計画されている。」、「クーデターを阻止せよ。」などと支持者に呼びかけており、今回も反独裁民主主義同盟(UDD)幹部らが「政権転覆の可能性」に言及していることがある。
タクシン政権が追放された2006年09月の軍事クーデターは、PADの抗議デモなどでタクシン批判が盛り上がり、混乱が拡大したことが大きな要因とされ、PADの後押しで軍部が政権奪取に踏み切った格好だった。
一方、プラユット陸軍司令官は、PADの動きにイラついているようで、クーデターの可能性を強く否定。しかし、市民の多くは過去の経験から「軍部の行動は先が読めない。」と感じていることもあってか、司令官の否定にもかかわらず、クーデターの噂が広がり続けている。 |
05月30日と31日に開かれた下院会議が国民和解法案を巡って紛糾したことについて、上院議員20人が、「民主党の議員らの言動は問題。」として、オンブズマン(行政機関のありかたを監査する機関)に対し、詳しい調査を要請。
上院議員が問題視した言動は、ソムサック下院議長に退場を迫った、議長のイスを運び出そうとした、議長に書類を投げつけたなど。
一方、政権党のプア・タイ党は同日、 不適切な言葉で国民和解法案を非難するビラがはられたとして、首都圏警察に捜査するよう求めた。「プア・タイ党は、民主党の関与を疑っている。」という。 |
06月06日(水) | 憲法裁判所が国民和解法案の下院審議差し止めを命じたことにタクシン派から批判が出ている問題で、憲法裁は記者会見で、「憲法改正案(国民和解法案)に関する訴えを受理し、国民和解法案の第3、最終読会の延期を命じたのは、裁判所の権限の範囲内。」と説明。同裁判所はまた、訴えが法的要件を満たしていない、命令は越権行為で無効などとする指摘に強く反論。
ワサン憲法裁長官は、「憲法裁の判事は、憲法で許されていないことはできないと十分承知している。」と述べ 、「越権行為はあり得ない。」と強調。 |
06月07日(木) | 憲法裁判所が国民和解法案の審議差し止めを命じたことに政府などタクシン陣営が反対している問題で、命令の根拠となった「違憲の訴え」について、検察当局が「要件を満たしていない。」と考えていることがわかった。
これは、差し止め命令を合法とする憲法裁の見解を否定するものだ。検察が政府・議会を支持する姿勢をとったことで、政権党プア・タイ党などタクシン陣営による憲法裁批判がさらにエスカレートする可能性が出てきた。
検察庁の説明によれば、「これまでに上程された国民和解法案は、憲法に則って憲法を改正しようというもので、立憲君主制下の民主的政府を打倒したり、憲法を否定する形で政権を奪取したりしようとしたものではない。従って、法案審議は行政府による正当な権限の行使であり、審議差し止めは不当。」 |
タクシン支持派の市民団体、反独裁民主主義同盟(UDD、通称スア・デーン=赤服)は、憲法裁判所が憲法改正に向けた国会審議の一時中止を命じたことに抗議し、クルングテープの国会議事堂前で数百人規模の集会。UDD幹部はその後、憲法裁判事7人の罷免を求める文書を上院副議長に手渡し、罷免要求の署名活動を開始した。警官隊や反タクシン派団体との衝突は起きなかった。
憲法裁判所は01日、任命制上院議員や野党下院議員らの訴えを受け、新憲法案を起草する憲法起草議会を設立するための憲法291条改正案の国会審議を憲法裁が違憲かどうかの判断を下すまで中止するよう命じた。291条改正案の国会審議は第3読会の採決直前で、タクシン派与党やUDDは「司法の立法府への介入」、「憲法裁のクーデター」などと批判。 |
06月08日(金) | 国民和解法案(憲法改正案)の審議差し止め命令に検察庁が異議を唱えたことに対し、憲法裁判所は、「検察の認識の如何に関わらず、憲法裁判所には 違憲の訴えを審理する権限がある。」との判断を表明。
違憲の訴えについて、検察は「要件を満たしていない。」と指摘している。だが、憲法裁は、「検察はその権限の範囲内でこのような判断を示したもの。しかし、この判断が、訴えを受理、審理するという憲法裁の権限に影響することはない。」としている。これは、「訴えを受け付けて、違憲かどうかを審理して決定を下すまで下院審議を中止するよう命令したことに法的問題はない。」との憲法裁の見解を再確認したもの。 |
06月10日(日)午後 | 野党民主党は、クルングテープ都内のウォンウィエンヤイで支持者数千人を集めた政治集会。壇上に立ったアピシット党首(前首相)、ステープ前幹事長らは、タクシン派与党プア・タイ党の下院議員などが国会に提出した国民和解法案を、「狙いはタクシンの免罪だけで、和解でも何でもない。」と批判。タクシン派との対立姿勢を鮮明に。
国外逃亡中のタクシンは、在任中の汚職(職権乱用)で禁固2年の有罪が確定していることから、帰国すれば直ちに刑務所送りとなる。ステープ前幹事長によれば、「刑務所送りを回避し政界復帰を可能にすべく、タクシン派は『国民和解』を口実にタクシンなどへの恩赦適用を目論んでいる。」
国民和解法案はタクシン政権を追放した2006年の軍事クーデターを指揮したソンティ元陸軍司令官らが提出したもので、内容は①2005年09月~2011年05月に起きた政治集会や政治的な意見表明による法律違反と、政府によるこれらの取り締まりに際した法律違法について、全ての刑事責任追及を中止し、すでに出た判決を無効とする。②2006~2007年の軍事政権が設置した組織による司法案件の刑罰を無効とする。③役員を務める政党の解党で5年間の参政権停止処分を受けた政治家全員の参政権を回復する。
タクシンは国外滞在中の2008年、首相在任中に当時の妻が国有地を競売で購入したことで懲役2年の実刑判決を受け、その後は投獄を避けるため、タイに帰国せず、主にドバイに滞在。2010年02月には一族の資産約470億Bが不正蓄財として国庫に没収され、これをきっかけに、2010年03~05月のタクシン派市民によるクルングテープ都心部の占拠、死者91人、負傷者1400人以上を出した治安部隊との衝突に発展。タクシンへの実刑判決と資産没収はいずれも軍政が設置した組織による調査の結果で、和解法が施行されれば、②により、無罪放免、資産返還となる見通し。
民主党や反タクシン派団体、民主主義市民連合(PAD)は国民和解法案に強硬に反対し、議場内で乱闘寸前となったり、国会議事堂前で抗議集会が開かれるなど、緊迫した情勢が続いている。 |
| 憲法裁判所が国民和解法案の審議差し止めを命令したことに政権党プア・タイ党などタクシン派が強く反発している問題で、「タクシン派が反タクシン派の反対にもかかわらず、議会の支持をとりつけて国内和解法案の第3、最終読会を強行する。」との見方が強まっている。
これは具体的には、「06月12日の上下両院合同会議でソムサック国会議長(下院議長)が命令に従うか否かの決議を提案。賛成多数で命令無視、読会実施が決まる。」というもの。
だが、「混乱を避けるため国会を速やかに閉幕すべき。」と主張している最大野党の民主党が強く抵抗することが予想され、12日の会議も大荒れとなる可能性。なお、下院の与党院内幹事ウドムデート議員によれば、「国民和解法案は協議事項に含まれていないため、政府が12日あるいは13~14日の合同会議で第3、最終読会と採決を強行することはない。」 |
06月11日(月) | 「タクシン派が憲法裁判所の命令を無視して国民和解法案の第3、最終読会を強行すれば、政治的混乱のエスカレートは避けられない。」との見方が出ているが、政権党プア・タイ党関係筋によれば、「インラック首相は事態の悪化を避けるため読会を延期すべきと考えている。」と言う。これは、06月11日に同党の戦略委員会(議長・ソムチャイ元首相)が「首相の顧問団は首相に読会延期を進言すべき。」との提言を承認し、同提言が同党議員の会合でも取り上げられたことを受けたもの。会合では、ナタウット副農相やコーケウなど反独裁民主主義同盟(UDD)に所属する議員が読会延期に強く抗議したものの、プア・タイ党の重鎮、チャルーム副首相らは延期に同意。 |
06月12日(火) | 上下両院合同会議で、プア・タイ党のソムサック国会議長(下院議長)は、反タクシン派が反対する「国民和解法案に関する今国会における審議を打ち切る。」と宣言。これで、同案の第3、最終読会は次期通常国会に持ち越されることになった。合同会議では、チット上院議員が、「憲法裁判所による和解案の審議差し止め命令に議会が従う必要があるか否かを協議する。」との緊急動議を提出。
議長が動議を採用するかどうかの採決を行おうとしたが、議場にいた上下両院議員644人の約半数が退席。採決は行われ、結果は賛成319、反対1というものだったが、出席議員の半数(322)には達せず、動議は不採用。
これを受け、ソムサック議長は、「国と国民和解にとって最善策」との理由で、「新憲法案を起草する憲法起草議会を設立するための憲法291条改正案の第3、最終読会とタクシンに対する実刑判決の無効化などを含む国民和解法案の審議を次の国会会期まで延期する。」と表明。
両法案には反タクシン派が強く反発しており、インラック首相ら政権幹部は、「審議・採決を強行すれば、政権基盤が揺らぐ恐れがある。」と判断。今国会の会期は19日まで。
憲法291条改正案は第3読会の採決直前の06月01日、違憲かどうかの判断を下すまで審議を中止するよう憲法裁判所が命じ、暗礁に乗り上げた。タクシン派は「憲法裁の権限の範囲外」、「司法クーデター」などと批判し、一部には「採決を強行すべき。」という意見も出た。ただ、憲法裁の命令を無視して法案を可決した場合、法案成立に必要なプミポン国王の承認が得られず、インラック政権が退陣に追い込まれる恐れがあった。
タイの現行憲法は2006年の軍事クーデターでタクシン政権を追放した反タクシン派が制定したもので、任命制の上院議員、裁判官、選挙委員会委員らを通じ、反タクシン派が政治介入しやすい仕組みになっている。タクシン派は改憲で反タクシン派の司法・政治への影響力排除を狙ったが、出鼻を挫かれた形。
国民和解法案法案は05月下旬に下院に提出されたが、反タクシン派野党の民主党や反タクシン派市民団体が猛反発し、国会内は乱闘寸前、国会議事堂周辺では反タクシン派市民が警官隊と衝突する事態に発展。06月上旬には、憲法裁の命令に反発したタクシン派市民が国会前で数千人規模の集会を開き、憲法裁判事の罷免を要求。昨年以降、やや落ち着きを取り戻していた政情が、両派の衝突で一気に不安定化する可能性が出ていた。 |
インラック首相は、憲法を改正する意向を再確認するとともに、「国民和解法案(憲法改正案)の審議は時機を見計らう必要がある。」として、理解を求めた。ソムサック国会議長(下院議長)が「国民和解法案の第3、最終読会を次期通常国会まで延期する。」と宣言したことから、反独裁民主主義同盟(UDD)所属の政権党プア・タイ党議員らが強い不満を表明。
このため、インラック首相は、「憲法改正を断念したわけではない。」と力説して、これら議員を宥めようとしたもの。 |
中央選挙管理委員会は、「(最大野党の)民主党のサマート議員、(野党の)プームチャイ・タイ党のオーチット議員とキアット議員の3人に昨年の総選挙で選挙違反があった。」と判断し全員を議員失職処分としたこと、「クルングテープ都、チャイヤプーム県、ロッブリー県の当該選挙区で補欠選挙を実施する。」と発表。
違反の程度から3人は公民権停止とはならず、補欠選挙に出馬することが可能。サマート、オーチットは、有権者に現金を渡し、キアットは有権者に眼鏡を配ったもの。補欠選の期日は未決定。 |
06月13日(水) | 最大野党の民主党のステープ議員(元同党幹事長)は、新聞社とのインタビューの中で、「タクシンが交渉人を送ってきた。」と明らかに。ステープ議員は、交渉人の氏名を明らかにしていないが、関係筋によれば、「タクシン創設のタイ・ラック・タイ党(2007年05月に解党処分)の役員だった人物で、タクシンの使いとして先週ステープ議員と面会した。」と言う。
だが、ステープ議員は、「話の内容は国民和解だったが、タクシンはすぐに違うことを言出すので、彼と話し合うのは意味がなく、私を支持している人々を納得させることもできない。」と述べており、交渉には応じなかったとのことだ。「交渉人には、『タクシンは憲法改正と自らの免罪を求めるのを止めるべき。』との伝言を託した。」と言う。 |
政権党プア・タイ党の広報担当プロムポンが先に、「アピシット前首相(最大野党・民主党党首)が首相を辞めたにもかかわらず、1600万Bもする防弾装備公用車を返却していない。」と批判したのに対し、シリチョーク民主党議員は、「当局の許可を得て借用している。公用車は600万B程度のもの。」と反論。
アピシット党首が首相を務めていた際、タクシン支持団体の反独裁民主主義同盟(UDD)が過激な反政府活動を展開したことから、治安対策統括センターが臨時に設置され、治安対策統括センターは首相用に防弾装備公用車を提供。すでに解散した治安対策統括センターは、防弾装備車を計20台所有。民主党によれば、「アピシット党首は今も赤服軍団(UDD支持者)の攻撃目標とされており、厳重な身辺警護が必要。」 |
06月14日(木) | 政権党プア・タイ党関係筋によれば、「ヨンユット副首相兼内相(同党党首)が、内閣改造で内相ポストを失う可能性が高まっている。」
その要因としては、①国家汚職制圧委員会(NACC)が先日、当時副内務事務次官だったヨンユットが2002年03月の仏教寺院所有地の民間企業への売却を承認したのは法律違反と判断し、ヨンユットの起訴を検察に要請する方針を示したこと、②ヨンユットの内相としての働きに党内から不満が出ていることなどが挙げられる。
また、内閣改造については、08月以降と報じられていたものの、国民和解法案の第3、最終読会が次期通常国会(08月開幕)に持ち越しとなったことに反独裁民主主義同盟(UDD)が強く反発。これを宥めるため、UDD所属議員の中から閣僚を選ぶ必要があることから、07月とする見方も有力。
ヨンユットは2008年12月からプア・タイ党党首を務めているが、党首選びが難航したことから起用されたもので、影が薄く「暫定党首」との印象が強い。 |
06月17日(日) | タクシン派の政権党プア・タイ党の実動部隊、反独裁民主主義同盟(UDD)は、「抵抗勢力が現政権の転覆を謀っている。」として、これを撥ねつけるべく、絶対君主制から立憲君主制への移行を実現した立憲革命からちょうど80年となる06月24日、民主記念塔で、これまでで最大規模の集会を開催してタクシン派の勢力を見せつける計画。反タクシンの特権階級に挑戦状を叩きつける形で、反タクシン派の反発を呼ぶ見通し。
UDDの首脳陣は、「旧権力層が独立機関を通じて反撃に出てきた。」と感じている。これは、先に憲法裁判所が国民和解法
案(憲法改正案)の第3、最終読会の差し止めを命令したことなどが原因。
なお、関係筋によれば、タクシン派は反タクシン派との対立を「民主化推進派と守旧派の対立」としているが、これについては、「私利私欲を優先した金権政治、汚職、国家ビジョンの欠如などへの批判をかわすためにもっともらしい言い訳をしているに過ぎない。」との見方もある。 |
タクシンが15日から日本を訪問。タクシンの法律顧問であるノパドン元外相によると、「5~7日間滞在して、知人の政治家、実業家らと会い、その後、拠点とするドバイに戻る予定。」という。報道により、8日間に日程で日本を訪問中。
タクシンは2008年に汚職で懲役2年の実刑判決を受けており、日本の入管法では原則として入国が認められない。ところが、昨年07月のタイ総選挙でタクシン派が勝利し、タクシンの妹のインラックが首相に就任したことを受け、日本政府がタクシンの入国を認め、タクシンは08月に訪日。
タクシンは新聞社とのインタビューの中で、「国民和解法案に帰国実現の望みをかけている。」と述べた。タクシンは首相在任中の汚職(職権乱用)で禁固2年の有罪が確定。帰国すれば、逮捕、収監となる。議会に上程された国民和解法案(憲法改正案)では、タクシンを含む政治関連犯への恩赦適用、免罪が求められており、これが実現しないかぎり、タクシンは帰国せずに国外逃亡を続けるものと見られている。
だが、和解案は、タクシンの免罪に反タクシン派が強く反発し、第3、最終読会が次期通常国会に持ち越されることになった。
タクシン派は冷却期間を置き、その間に根回しをすることで和解案の議会通過を図ろうとしているようだが、「反タクシン派が態度を軟化させることはない。」との見方が支配的。 |
06月18日(月) | 最大野党の民主党の重鎮、ステープ議員が先に「タクシンの使者が会いに来た。」と暴露したことに対して、政権党プア・タイ党の議員で、プア・タイ党の実動部隊である反独裁民主主義同盟(UDD)幹部のチャトポンやナタウットなどから「作り事」といった批判が出ているが、アピシット民主党党首は、「タクシン側からの接触について、以前からステープ議員から報告を受けており、党首脳らにも説明していた。」と反論。
ステープ議員によれば、「使者はプア・タイ党と民主党による政権の樹立などを持ちかけてきた。」と言う。これが「2党間の裏取引」と誤解されることを恐れ、ステープ議員は民主党首脳らに報告。
また、プア・タイ党の広報担当プロムポンが「(接触があったというのなら)使者が誰かを明らかにせよ。」と迫っているが、ステープ議員は、「その必要はない。ボス(タクシン)に尋ねれば良い。国民には、私と、チャトポン、ナタウット両議員のどちらが信用できるかということで判断してもらいたい。」と述べている。 |
インターネット検索大手の米グーグルによると、2011年、傘下の動画投稿サイト、ユーチューブに投稿された動画374本について、タイ政府から、「不敬罪に抵触する疑いがある。」として、削除を要請された。削除要請があった動画は上半期225本、下半期149本で、グーグルは上半期の要請分の90%以上、下半期の70%について、タイから閲覧できないようにした。 |
06月20日(水) | 中央選挙管理委員会は、「『昨年07月の総選挙で民主党候補の名誉を傷つけた。』として、プア・タイ党のカルンを議員失職、参政権禁止とし、クルングテープ都12区で補欠選挙を実施する。」と発表。カルンは選挙運動の中で、対立候補だったタンクンを「同性愛者。」、「有権者を見下している。」、「民主党が演説会に参加するよう有権者にそれぞれ300Bを渡した。」などと中傷したもの。
中央選管によれば、「裁判でカルンが有罪となった場合、補欠選実施の費用をカルンが負担する必要がある。」 |
タクシン派の政権与党プア・タイ党は22日から07月03日にかけ、都内の4ケカ所で政治集会を開き、タクシンに対する実刑判決の無効化などを含む国国民和解法案と憲法改正に対する支持を訴える。
会場は22日がドンムアン区役所前、28日がウォンウィエンヤイのタークシン王像前、30日がクルングテープ都庁前、07月03日がショッピングセンターのインペリアルワールド・ラープラーオ前。時間はいずれも午後04時から深夜まで。
一方、タクシン派市民団体反独裁民主主義同盟(UDD、通称スア・デーン=赤服)は06月24日、タイの絶対王政を廃止した1932年の立憲革命から80周年を記念し、クルングテープの民主記念塔で集会を行う予定。 |
06月21日(木) | 米国による東部ラヨーン県のウタパオ海軍飛行場使用について野党・民主党がタイ政府に詳しい説明を求めている問題で、スラポン外相は、「米航空宇宙局(NASA)が『26日までに返答がなければ、飛行場使用の申請を取り下げる。』と伝えてきた。」と明らかに。NASAは、08月から09月にかけて同飛行場でこの地域の気象研究のためにサンプルを採取する予定というが、それには事前に機材を運び込んでおく必要があり、26日がタイムリミット。
スラポン外相によれば、「気象研究にはシンガポールとカンボジアが協力することで合意しており、タイの都合で研究が実施不可能となれば、これら近隣国や米国との関係に悪影響を及ぼしかねない。」
なお、民主党は、タイ政府による事前の説明がなかったことから、「タイ政府は、タクシンの米国入国を許可する代わりに飛行場を使用させる心積りだった。」とも批判。 |
クルングテープ都12区で下院議員補欠選挙が実施される可能性があることから、プア・タイ党のコーケウ議員はこのほど、チャトポンの出馬を党に要請する考えを明らかに。
両氏はともに、プア・タイ党の実動部隊、反独裁民主主義同盟(UDD)の幹部。「チャトポンは先に、立候補資格を欠いていた。」として議員失職。中央選管は20日、昨年の総選挙で「対立候補を中傷した。」として、カルン、プア・タイ党議員を失職とし、クルングテープ都12区で補欠選挙を行う方針を発表したが、カルンは最高裁が名誉毀損で有罪とした後に議員失職となるため、補欠選実施は数ケ月後となる見通し。
このため、「現時点での候補決定には、党内から『時期尚早』との声も出ている。」と言う。一方で、「大派閥の領袖であるヤオワパー(タクシンの妹)がチャトポンに出馬を打診した。」との情報もある。 |
外務省の発表によれば、インラック首相率いる経済使節団が07月17~21日にかけドイツとフランスを訪問。企業経営者など50人ほどからなる使節団は、両国で工場を視察したり、タイからの投資の可能性や欧州債務危機について話し合ったりする予定。なお、インラック首相が首相として欧州を訪問するのは今回が初めて。 |
タクシン派団体の反独裁民主主義同盟(UDD)が、今月24日に都内で集会を行うことを受け、在タイ日本大使館より注意喚起。
反独裁民主戦線(UDD)によるデモ集会等について
(6月21日現在)
1.治安当局等によれば,反独裁民主戦線(UDD:通称「赤シャツ・グループ」)は,立憲革命80周年を記念し,以下のとおりデモ集会等を行う模様です。
●日 時 6月24日(日)10時~24時
●場 所 ラーチャプラソン交差点及び民主記念塔、デモ行進順路は下記参照
●人 数 1万人以上が参集する可能性有
●デモ概要 ・10時~12時,ラーチャプラソン交差点にてデモ集会を行う。
・12時~17時頃,車両に分乗してラーチャプラソン交差点を出発し,民主記念塔を目指しデモ行進を行う。
【順路】
・ラーチャプラソン交差点→ペッブリー通り→(クロンタン経由)→ラムカムヘン通り→(バンカピ経由)→ラップラオ通り→パホォンヨーティン通り→(戦勝記念塔経由)→ラーチャテーウィー通り→(国会議事堂前経由)→ラーチャダムヌーン通り→民主記念塔・17時頃(デモ行進が民主記念塔到着時)~24時,民主記念塔においてデモ集会を行う。
2.つきましては,上記1.のとおり,UDDによるデモ集会及びデモ行進の影響により,同集会及び行進が実施される周辺においては交通渋滞や人の混雑が予想されますので,報道等から最新情報の入手に努めるとともに,同集会が実施される周辺に近づく場合には,十分に注意を払ってください。
(問い合わせ先)
○在タイ日本国大使館領事部
電話:(66-2)207-8502、696-3002(邦人援護)
FAX :(66-2)207-8511 |
06月24日(日) | タクシン支持団体の反独裁民主主義同盟(UDD)は、タイの絶対王政を廃止した1932年の立憲革命から80周年を記念し、クルングテープ都ラチャーダムヌン通の民主記念塔で大規模な集会を行い、民主主義記念塔周辺に集まった大勢の支持者を前に、「最高裁判事の罷免請求に賛同する約10万人の署名が集まった。」と明らかに。演壇に立ったUDD幹部らは集会参加者に対し、タクシン派与党が進める憲法改正への支持を呼びかけた。今回の集会の目的は、タクシン派政権の行く手を阻もうとしている守旧派にタクシン派の勢いを見せつけること。
赤服軍団として知られるUDDは、プア・タイ党の実動部隊。先に政府の支持する国民和解法案(憲法改正案)の第3、最終読会の差し止めを最高裁が命じたことから、同命令に賛成した判事7人の罷免を請求すべく署名集めを行っている。罷免請求には有権者5万人の賛同が必要とされている。
タイの現行憲法は2006年の軍事クーデターでタクシン政権を追放した反タクシン派が制定したもので、任命制の上院議員、裁判官、選挙委員会委員らを通じ、反タクシン派が政治介入しやすい仕組みになっている。タクシン派は改憲による反タクシン派の司法・政治への影響力排除を狙い、新憲法案を起草する憲法起草議会を設立するための憲法291条改正案を国会に提出したが、同改正案は第3読会の採決直前の06月01日、違憲かどうかの判断を下すまで審議を中止するよう憲法裁判所が命じ、改憲の動きは暗礁に乗り上げた。
タクシン派は「(憲法裁の)権限の範囲外」、「司法クーデター」などと憲法裁を批判し、一部には命令を無視し採決を強行すべきという意見も出た。しかし、「法案可決を強行した場合、法案成立に必要なプミポン国王の承認が得られず、インラック政権が退陣に追い込まれる恐れがある。」と判断し、今国会での採決を見送った。
一方、憲法裁は21日、UDD幹部のチャトポン前下院議員の保釈取り消しを刑事裁判所に要請。チャトポンは「憲法裁による保釈取り消し要請は法的な根拠がない。」と反発。チャトポンは2010年04~05月のUDDによるクルングテープ都心部占拠を指揮し、テロ容疑などで逮捕された。昨年07月の下院選で当選したが、投票当日は拘留中で投票できなかったことから、憲法裁が先月、議員資格がないとする判決を下し、チャトポンは下院議員を失職。
憲法裁などタイの司法はタクシン派と反タクシン派の抗争が激化した 2006年以降、タクシン派が勝利した2006年総選挙の無効化、タクシン派政党の2度にわたる解党、タクシン派首相の事実上の解任など、一貫してタクシン派に不利な判決を下している。 |
06月26日(火) | ウタパオ海軍飛行場を気象研究のために使用するとの米航空宇宙局(NASA)の要請を08月開幕の次期通常国会で審議することが閣議で決まり、NASAが要請を取り下げる可能性が出てきたが、これについて、スラポン外相は、「国益を考えない野党に責任がある。」と述べて、最大野党の民主党を非難。
民主党は、政府が事前に詳しい説明していなかったこともあって、いくつかの疑問点を指摘。このため、憲法の規定に従って国会で審議することになった。だが、これでNASAが示していたタイムリミットには間に合わなくなった。政府の対応にも批判が出ているが、スラポン外相は、「(国会審議を経ずに閣議で要請受諾を決めていたら)憲法裁判所に(民主党が)提訴していただろう。」と述べ、「責任は全て民主党にある。」としている。 |
06月27日(水) | 米航空宇宙局(NASA)がウタパオ海軍飛行場を拠点にこの地域の気象研究を行うというプログラムの実施が不可能となったことについて、政権党プア・タイ党が「責任は民主党(最大野党)にある。」としているが、アピシット民主党党首は、「我々は熟考と情報の開示を政府に求めたにすぎない。批判の矛先をわれわれに向けるのは馬鹿げている。」と強く反論。
また、民主党の広報担当チャワノンは、スラポン外相が「野党のせいでタイ政府がプログラムに許可を与えることができなかった。」としていることについても、「事実を捩じ曲げ、国民に嘘をついている」と批判。 |
06月28日(木) | ソムサック下院議長は、「憲法改正については国民の間で広く議論する必要がある。」として、08月01日開幕の次期通常国会で最初に取り上げられる予定の国民和解4案(憲法改正案)を全て取り下げることを提案。
和解案のうち、弱小野党のマトゥプーム党のソンティ党首が上程した案は第3、最終読会を残すのみだったが、憲法裁判所の差し止め命令が出たことで、次期通常国会に持ち越されることになった。また、他の3案は与党議員らによって上程。
だが、民主党や反タクシン組織の民主主義市民連合(PAD)が「タクシンの免罪が狙い。」などと和解案に強く反対しており、国会で和解案が取り上げられれば、再び強く反発し、政治が混乱するのは必至。このため、ソムサック議長は、「和解案をいったん取り下げるのが望ましい。」との認識を示したもの。 |
06月30日(土) | タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)幹部のコーケウ、プア・タイ党議員は、クルングテープ都庁舎前のランコンムアンプラザで行われたUDDの集会で、約500人の支持者を前に、「国民和解4案の国会審議を延期するのが望ましい。」との考えを明らかに。これは、4案をいったん取り下げるという先のソムサック下院議長の提案を支持するもの。
UDDはこれまで、憲法裁判所の審議差し止め命令で政府が和解案の第3、最終読会の次期通常国会持ち越しを余儀なくされたことに強く反発。「国会開幕後に直ちに和解案の審議を行うべき。」としていた。
しかし、コーケウは、「政治状況が落ち着いてから和解案を審議するのが良い。」と提言。「和解案の議会通過を急げば、反タクシン派が強硬に抗議するのは必至で、これによって混乱が生ずるのを回避する必要がある。」と訴えた。
ただ、コーケウは、「憲法裁が和解案に関して『不当な判断』を示した場合、これに抗議してUDDは大規模集会を決行する。」としている。先の差し止め命令は、和解案の内容が違憲との訴えがあったことから、これに憲法裁が判断を下すまでの暫定措置となっているが、コーケウによれば、「憲法裁が訴えを認めて違憲との判断を下すことは、不当であり、受け入れられない。」 |
タクシンに対する実刑判決の無効化などを含む国民和解法案の国会審議が先送りされる公算が強まった。同法案はタクシン派が05月下旬に国会に提出したが、反タクシン派の反発が予想以上に強く、法案可決を強行すれば、タクシン派インラック政権が転覆しかねないという懸念が浮上。06月末になり、タクシン派幹部から「当面は審議を見送るべき。」という意見が相次いだ。
タクシン派政権与党プア・タイ党は和解法案の05月末の国会審議入りを目指したが、反タクシン派が激しく反発し、下院で与野党議員が乱闘寸前となったほか、国会議事堂前の道路を反タクシン派市民団体が封鎖。結局、同法案の審議入りは見送られ、06月19日に下院は閉会。
タクシン派はその後、08月01日に開会する次期国会で和解法案の成立を目指す方針を示したが、06月28日にソムサック下院議長が「法案の取り下げが望ましい。」という考えを表明。29日にはUDD幹部のナタウット副農相が法案審議を「先送りすべき。」と述べた。06月30日にクルングテープ都庁前で開かれたプア・タイ党の政治集会でも、UDD幹部らから、法案審議の先送りを支持する発言が相次いだ。 |
07月01日(日) | 憲法裁判所が07月05日と06日に国民和解法案の合憲性を検討する予定であることから、タクシン派の政権党、プア・タイ党とその実動部隊、反独裁民主主義同盟(UDD)が違憲の判断を下させまいと憲法裁判所を牽制する構えを見せている。
UDDが勢力を持つ県の1つ、東北部ウドンタニー県では、UDD支部の幹部が01日、「憲法裁が和解案反対派の肩を持つ判断を示した場合、これまでで最も大規模な抗議集会を決行しよう。」と支持者に呼びかけた。
また、プア・タイ党は同日、反タクシン派とされるアナン元首相を合憲性の検討の場に参考人として招致しないよう憲法裁判所に要求。これは、違憲の判断を下させないための作戦と1つと見られている。
なお、憲法裁が国民和解法案の合憲性を検討することになったのは、国民和解法案を違憲とする訴えがあったことによるもの。この訴えに伴い、国民和解法案の国会審議の差し止めが命じられた。 |
国民和解法案に反タクシン派が強硬に反対していることから、ソムサック下院議長が先に国民和解法案をいったん取り下げるべきと発言。これに同調する意見がタクシン派内で増えているようだが、タクシン派の政権党プア・タイ党に所属するチャトロン元タイ・ラック・タイ党副党首もこのほど、和解案取り下げに賛成する姿勢を明らかに。
タクシンが創設したタイ・ラック・タイ党は、2007年05月に解党処分を受け、党役員111人が公民権5年停止となった。公民権停止が今年05月末で解けたことから、チャトロンは先にプア・タイ党に入党。
チャトロンによれば、「国民和解4法案は、誰に恩赦を適用するかなどが明確ではない。対立が生ずる恐れがあり、これらの案には最初から反対だった。」という。 |
07月02日(月) | 国民和解法案を巡る問題で、憲法裁判所が国民和解法案を違憲と判断した場合、政権党のプア・タイ党が解党処分を受ける可能性があることから、プアダーマ党のワンロップ党首(元パラン・プラチャーチョン党議員)はこのほど、「プア・タイ党議員を受け入れる用意がある」と表明。
プア・ダーマ党は2010年08月23日に選管に登録された政党。また、パラン・プラチャーチョン党はプア・タイ党の前身。ワンロップは、2007年12月の総選挙にパラン・プラチャーチョン党から出馬し当選が、パラン・プラチャーチョン党は翌2008年12月に幹部の選挙違反のため解党処分を受けた。ワンロップは、「わが党の方針に従うなら、プア・タイ党議員を引き受ける。」としている。
なお、プア・タイ党の支持する国民和解法案については、国民和解法案で求められている憲法改正が「憲法68条に抵触する」といった訴えが出ており、憲法裁は合憲性に関する判断を下すため5日と6日に参考人から意見を聞くことになっている。憲法68条では、「立憲君主制のもとでは、個人や政党が憲法によって付与された権利などを、民主主義の原則を覆すために使うことを禁ずる。」とされており、これに違反した政党は解党処分とし、党役員を公民権5年停止に処することができる。 |
07月03日(火) | 国民和解法案に賛成した議員と閣僚計416人に対し、憲法裁判所がその理由を説明するよう命じたことがわかった。これは、「『和解案は憲法68条に抵触する。』との反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)幹部のチャムロンの訴えと同様の内容で、計5件を1つの訴えとして処理可能かを判断するのに必要なため。」という。
だが、これに対しては、「司法による立法への干渉。」といった批判。政権党、プア・タイ党のピラパン議員(法律専門家)は、「『憲法裁には訴えを直接受理する権限がない。』との指摘が以前からある。それにもかかわらず、憲法裁は前例のないこととすることで、権限を拡大し、立法府に影響力を及ぼそうとしている。」と批判。 |
弱小野党のラック・プラテート・タイ党のチューウィット党首は、「(クルングテープ都内)ペッブリ通のカジノのオーナーは、ドバイ在住の男の親族。」と述べて、タクシンの近親者が違法賭博に関与していることを示唆。
警察官の不正を暴露することに心血を注いでいるチューウィットは、これまでに何度か違法賭博場の存在を暴露している。
02日には、「ペッブリ・ソイ5にカジノがある。」として、支持者や報道関係者とともに踏み込もうとしたが、近隣住民などに阻止され、揉み合いになった。
チューウィットは、「インラック首相(タクシン氏の実妹)に違法賭博場について知っている親族がいないか聞いてみたい。」と述べている。2006年のクーデターで国外追放されたタクシンは、現在はドバイを拠点に活動している。 |
タクシン派の政権与党プア・タイ党とタクシン派市民団体「反独裁民主主義同盟(UDD、通称スア・デェーン=赤服)」は、都内のショッピングセンター、インペリアルワールド・ラープラーオ前で集会を開き、集まった数百人の観衆に、憲法改正の必要性などを訴えた。
タイの現行憲法は2006年の軍事クーデターでタクシン政権を追放した反タクシン派が制定したもので、任命制の上院議員、裁判官、選挙委員会委員らを通じ、反タクシン派が政治介入しやすい仕組みになっている。タクシン派は改憲による反タクシン派の司法・政治への影響力排除を狙い、新憲法案を起草する憲法起草議会を設立するための憲法291条改正案を国会に提出したが、同改正案は第3読会の採決直前の06月01日、違憲かどうかの判断を下すまで審議を中止するよう憲法裁判所が命じ、改憲の動きは暗礁に乗り上げた。
この問題について、憲法裁判決で下院議員を失職したばかりのチャトポン前議員は集会で、「慈悲のない人に慈悲を求めてもしょうがない。」と述べ、タクシン派による憲法裁前での抗議集会は不要という考えを示した。
憲法裁などタイの司法はタクシン派と反タクシン派の抗争が激化した2006年以降、タクシン派が勝利した2006年総選挙の無効化、タクシン派政党の2度にわたる解党、タクシン派首相の事実上の解任など、一貫してタクシン派に不利な判決を下し、タクシン派と特に憲法裁との対立が深まっている。 |
07月04日(水) | ソムサック下院議長が「遠くにいる人と話し合って、批判が高まるのを避けるべく、憲法改正案(国民和解法案)の国会審議を急がないことにした。」と述べていたことが判明し、最大野党の民主党などから議長の辞任を求める声があがっている問題で、政権党プア・タイ党の広報担当プロムポンは、「議長としての発言でなく、個人的な意見。議長が辞任する必要はない。」との認識。
この発言は、近しい支持者約50人との会合の中で出たものという。「遠くにいる人」とは国外逃亡中のタクシンを指すとみられており、ソムサックが先に国民和解法案取り下げを提案したのもタクシンの入れ知恵だったことを示唆している。なお、「タクシンの意向」を持ち出すことについて、関係筋は、「タクシン支持者を説得するには有効。だが、現政権が犯罪人のタクシンの言いなりであることを示すものでもあり、反タクシン派は政府批判を強めることになる。」 |
チューウィット、ラック・プラテート・タイ党党首が07月02日に「都内の違法賭博場をタクシンの親族が関与している。名前の頭文字はY。」と述べたことに対し、タクシンの法律顧問ノパドンは、「タクシンの妹ヤオワレートのことを指しているなら、チーウィット党首を告訴する。」と述べた。
ノパドンによれば、「チューウィットから『20年以上前から違法賭博場を所有している。』と指摘された男性の兄弟がヤオワレートの別れた夫という。このため、Yがヤオワレート(インラック首相の姉)を指すのは容易に想像できる。」ノパドンは、「ヤオワレートはカジノに一切関与していない。」、「関与を再び仄めかすことがあれば、名誉毀損で訴える。」としている。 |
07月05日(木) | 憲法裁判所で政府が推進する憲法改正案に反対する参考人からの意見聴取。憲法改正案については、「違憲」などとする訴えが5件あったことから、憲法裁は06月01日、訴えの受理を決めて、憲法改正案の合憲性に最終判断を下すまでの間、第3、最終読会の差し止めを命じた。意見聴取は最終判断を下すための過程であり、06日には賛成派の参考人から意見を聞くことになっている。
05日の聴取では、国立タマサート大学のスラポン教授などが、「現行憲法は、タイで初めて国民投票で承認された憲法であり、その改正にも国民投票を実施する必要がある。」といった、憲法改正案の内容に否定的な見解を述べた。なお、参考人は反対派7人、賛成派8人の計15人。 |
ソムサック下院議長が「タクシンの意向に従って憲法改正案の取り下げを提案した。」と発言していたことが報じられたことについて、タクシンの実妹であるインラック首相は、「内閣は外部からの影響を受けていない。憲法改正は議会の仕事。」と強調、「政府を牛耳っているタクシンが憲法改正でも政府に指図している。」などとする批判を全面的に否定。
このほか、インラック首相は、「ソムサックが実際に発言したかは疑問として、ソムサックによる説明が必要。」との見方を示した。また、タクシンの法律顧問ノパドンは、「タクシンは命令などしていない。助言を与えているだけ。ソムサック議長がタクシンに相談したとしても不思議ではない。」と述べて、「タクシンの指示通りに政府が動いている。」との見方を否定。
しかし、関係筋によれば、「タクシンが政権党プア・タイ党の事実上の最高実力者であることは周知の事実。その『助言』は助言以上の意味を持つ。」 |
07月06日(金) | 憲法裁判所は、憲法改正案の合憲性に関する参考人からの意見聴取を全て終えたことを受けて、「最終的な判断を13日に示す。」と発表。
合憲の判断が下されれば、憲法改正案は議会で審議続行となるが、違憲とされれば、憲法改正案は無効となり、憲法改正案を支持した政権党プア・タイ党は責任を問われ、解党処分を受け、党役員が公民権5年停止となる可能性もある。 |
ソムサック下院議長が「憲法改正案と国民和解法案について国外逃亡中のタクシンに相談した。」旨の発言したされる音声クリップが存在することについて、ソムサックは、自身の発言であると認め、「(発言が外部に漏れたことには)驚いたが、心配はしていない。」と述べた。
報道によれば、音声クリップは、「憲法改正を急ぐタクシンに対し、改正支持の声を盛り上げるため、憲法改正案の審議を3~6ケ月遅らせるよう強く提言した。」との内容。ソムサックは、「この発言は国民の利益を最優先に考えた結果であり、問題はない。」としている。
しかし、最大野党の民主党は、発言内容について、「憲法の改正と和解案の議会通過を図るという政府の動きの背後にタクシンがいることを示している。」として、ソムサックの責任を追及する構えを見せている。 |
07月08日(日) | タクシン派内では、「対立・混乱を回避すべく、国民和解法案と憲法改正案をいったん取り下げるべき。」とする意見が目立ち始めている。
政権党プア・タイ党所属のチャワリット元首相(元同党顧問団長)も取り下げに賛成であることが、新希望(クワーム・ワング・マイ)党が発表した声明で明らかに。新希望党はチャワリットが創設し、党首を務めた政党で、現在新希望党に所属する下院議員はいない。
声明の中で、チャワリット(80)は、「世論調査でも両案を断念すれば、現政権は4年の任期を全うできるとする意見が50%に及んでいる。」、「プア・タイ党は和解4案の審議を取り下げ、憲法改正案の議会通過を強行すべきではない。」と述べた。 |
07月09日(月) | カンボジアはタイとの間で領有権争いが起きている国境地域から撤兵するとしているが、タイ軍関係筋によれば、「カンボジア軍が計画しているのは、地域内の兵士移動に過ぎない。その狙いは、国際司法裁判所の命令に従ったように見せかけること。」という。
国際司法裁判所は昨年、世界遺産カオ・プラウィーハン(プレアビヒア)や国境未画定区域4.6㎢を含む17.3㎢の地域から撤兵するようタイ、カンボジア両国に命じた。
同筋は、「カンボジアがエリア内に配備している兵は5000人あまり。そのうちカオプラウィーハンを警備している兵を移動させるだけで、その代わりに投入される警察官も一部は兵士ということが考えられる。」 |
「最大野党の民主党のステープ議員(民主党元幹事長)の息子タンがサムイ島で国有地を不正に取得した疑いがある。」として、法務省特別捜査局(DSI)が捜査を進めていることについて、森林局のスウィット局長は、「問題の土地が保護林でなく、森林局の管轄外であることから、森林局がタンを訴追することは考えていない。」と述べた。ただ、DSIが「『不正があった。』と判断した場合、森林局が問題の土地の扱いを検討する必要がある。」という。
林野法では、傾斜角35度以上の傾斜地は民間の所有や開発が禁止されているが、タンが取得した土地にはこのような急勾配の傾斜地が含まれる。 |
タクシンの法律顧問であるノパドン元外相によると、「タクシンが04、05月に米国のビザを取得した。近く渡米する模様。」
タクシンは2008年に汚職で懲役2年の実刑判決を受け、以来、日本、英国、米国などが入国を拒否していた。しかし、昨年07月のタイ下院総選挙でタクシン派が勝利し、タクシンの妹のインラックが首相に就任したことを受け、日本、英国はタクシンの入国を認め、タクシンは昨年から今年にかけ、両国を訪れている。 |
07月10日(火) | 憲法裁判所が07月13日に国民和解法案(憲法改正案)の合憲性に関する判断を下すことになっているが、タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)の首脳の1人、ニシットは、「UDDの幹部たちは、憲法裁が肯定的な判断(合憲判断)を示すとは考えていない。」と悲観的な見方を示し、「判断が下されたあとどのような行動をとるかについては、UDD首脳からの合図を待つよう全国の支持者に伝えた。」と述べ、UDDが違憲判断に抗議する大規模な行動に出る可能性を示唆。
政権党プア・タイ党の支持する和解案では、憲法改正を規定した憲法291条の改正が求められているが、これに関しては、憲法68条に抵触するとの訴えが憲法裁に提出されたことから、憲法裁は和解案の審議差し止めを命じ、同案の合憲性を判断することになった。違憲とされた場合、68条に基づいて、プア・タイ党が解党、党役員が公民権5年停止に処される可能性がある。 |
2010年05月19日に反独裁民主主義同盟(UDD)が大規模反政府デモの終結を宣言した直後にUDD支持者らによってセントラル・ワールドが放火された事件で、法務省特別捜査局(DSI)のタリット局長は、「黒服の男たちの関与を示す証拠は見つからなかった。」と明らかに。「黒服の男たち」とは、戦闘用銃器などで武装した者たちのことで、UDDのデモ隊と行動を共にしているのが何度か目撃されている。当時治安担当の副首相だったステープ民主党議員は、「黒服の男たちが放火に関わった。」と指摘していた。だが、DSIの捜査では、この指摘を裏付ける証拠は出て来なかったという。
この放火事件は、治安部隊による強制排除でUDDがデモ中止を余儀なくされたことから、やけになったUDD支持者らがデモ拠点のラーチャプラソン交差点に位置するセントラル・ワールドに侵入して火を放ち、商品を略奪したというもの。DSIによれば、被害額は80億Bを超える。 |
2011年05月、ナコーンラーチャシマー県で逮捕され、同年12月に不敬罪で懲役2年6ケ月の実刑判決を受け服役していたタイ系米国人のルーポング・ウィチャイカムマット(ジョー・ゴードン)(55)がプミポン国王(84)による恩赦で10日夜に釈放されたことが明らかに。恩赦適用前に、「釈放されたら速やかにタイを離れるべきと言ってくれた人もいる。しばらくタイに留まりたいとも思っているが、政治状況や身の安全を考えると心が定まらない。」と述べた。米国大使館は、「プライバシーに関することであり、男性が今後どうするつもりかは明らかにできない。」としている。報道により、近く米国に向け出国の予定とも。
ルーポングは米コロラド州在住の自動車セールスマン。米国在住中の2007年から2010年にかけ、タイ国内で発禁となっている米国人ジャーナリストによるプミポン国王の評伝「ザ・キング・ネバー・スマイルズ」の一部をタイ語に訳して自分のブログに掲載し、昨年05月にタイを訪れた際に逮捕された。保釈を認められないまま実刑判決を受けたため、拘留・服役期間は計1年2ケ月に上る。
不敬罪はタイ国王夫妻と王位継承者への批判を禁じたもので、違反した場合、1件につき最長15年の懲役刑が科される。特権階級を中心とする反タクシン派と反王室のイメージが強いタクシン派の政治抗争が激化する中、不敬罪は頻繁に適用されるようになり、タクシン派市民の投獄が相次いでいる。昨年11月には、携帯電話で王室を批判するショートメッセージ4通を送信したとして、アムポン・タンノップパクン(61)が懲役20年の実刑判決を受け、このアムポンは今年05月獄死。
不敬罪で外国人が服役した事例は、国王のポスターに黒ペンキをスプレーしたスイス人オリバー・ルドルフ・ ジュファーが2007年に懲役10年、著書で王室を批判したオーストラリア人ハリー・ニコライデスが2009年に懲役3年の実刑判決を受け、いずれも数ケ月服役した後、恩赦で出獄しタイを出国。 |
07月11日(水) | ルーポング・ウィチャイカムマットの恩赦が行われた翌日、交流サイト、フェイスブックの在タイ米国大使館のページに「自由とは、あらゆる場所で人権が至上であることを意味する。フランクリン・D・ルーズベルト、第32代米国大統領」という投稿があった。これに対し、反タクシン派とみられるタイ人から「裁判所の判決から逃げる自由か?」、「何をやってもいいということか。」といった批判的なコメントが寄せられた。 |
憲法裁判所が07月13日に政府支持の憲法改正案を違憲と判断し、政権党プア・タイ党が解党、党役員が公民権5年停止に処される可能性があることから、タクシン支持団体の反独裁民主主義同盟(UDD)幹部のコーケウ、プア・タイ党議員は、「(違憲判断が出た場合)憲法裁の判事らを国家反逆罪で訴える。もし警察が彼らを逮捕しないなら、われわれが捕らえる。」などと述べ、違憲判断を受け入れず、あらゆる可能な手段を使って抵抗するという強硬姿勢。
プア・タイ党首脳からは、「どのような判断であれ受け入れる。」という意見も出ていたが、コーケウは、「市民(UDD支持者)は民主主義のために闘う。インラック政権もその支持者も違憲判断を受け入れない。」と述べている。
また、コーケウによれば、「UDDが判事を捕らえようとすれば、特権階級(反タクシン派)が支持者を動員して阻止に出る。 両者が衝突すれば、軍部が政権を奪取する。」これに対し、「UDDは最後まで兵士と戦い、タイは内戦状態に陥る」。 |
07月12日(木) | 反独裁民主同盟(UDD)幹部のコーケウ、プア・タイ党議員の「憲法裁判所が政府支持の国民和解法案に違憲判断を下せば、国内が内戦状態に陥る。」などという過激な発言に各方面から非難の声。
ソムチャイ上院議員は、「不適切な発言で、保釈条件に違反する。」として、コーケウの保釈取り消しを検察に要求。また、与党のチャート・タイ・パッタナー党のソムサック議員も、「外国投資と外国人観光客の誘致に努めている政府の横っ面を引っぱたくようなもの。」と批判。 |
「タイ・カンボジア国境上空で民間機がカンボジア軍から威嚇射撃を受けた。」との情報があったが、関係者の発言が食い違っており、実際に何が起きたかわからず仕舞いとなっている。
カンボジアと国境を接するサケーオ県のサニット知事は、「スワンナプーム空港を飛び立った民間機が悪天候のためコースを外れた。視界不良と情報伝達が不十分だったせいで、カンボジア兵は偵察機と勘違いして威嚇射撃した。だが、民間機はシェムリアップ空港に無事着陸した。」と説明。しかし、シェムリアップに乗り入れている唯一のタイの航空会社、バンコク・エアウェイズでは、「航空機が威嚇射撃を受けた事実はない。」と報告。
一方、チャチャイ副運輸相によれば、「バンコク・エアウェイズ社から『威嚇射撃はなかった。』と報告を受けたものの、シェムリアップに向かったバンコク・エアウェイズ社航空機は、シェムリアップ空港には着陸せず、スワンナプーム空港に引き返した。」 |
07月13日(金) | 政権与党プア・タイ党などタクシン派が国会で進める憲法改正の動きに対し、反タクシン派の野党民主党などが「改憲は立憲君主制の転覆を狙った違憲なものだ。」などとして、憲法裁判所に改憲の国会審議中止とプア・タイ党の解党を求めた裁判で、憲法裁判所は、野党民主党が中心となって憲法改正審議の即時中止を求めた裁判で、「改憲自体は合憲で、立憲君主制の転覆が狙いという訴えは証拠が不十分だ。」と訴えを退けた。
タクシン派との対立が目立った憲法裁がこうした判断を下したことで、政局が一気に不安定化する危険は回避された。ただ、憲法裁は「新憲法の制定には国民投票が必要」と釘を差しており、改憲の方法、行程については国会で再度審議される見通し。
だが、現行憲法は国民投票によって承認された憲法であり、その改正においても国民投票が必要などとする条件を付けたことから、政権党プア・タイ党内でも、「08月開幕の次期通常国会に和解案の第3・最終読会を行うのは困難。」といった見方が出ている。関係筋によれば、憲法裁は「和解案を合憲としてタクシン派(現政権)の求める改憲をすべて認める。」あるいは「和解案は違憲。タイ貢献党は解党、党役員は公民権停止。」という勝ち負けのはっきりした判断を下すと予想されていた。だが、示された判断は、和解案を合憲としたものの、同案に反対する反タクシン派の意見を一部入れて、タクシン派が予定していた改憲にハードルを設けるものとなっている。
和解案に関する憲法裁判事8人(本来9人だが1人欠席)の賛否は以下の通り。
①憲法68条に基づいて憲法裁が訴えを受理できる-賛成7反対1。
②憲法を全面的に書き換える場合、起草委員会を設置し、国民投票を行う。議会には部分的な書き換えの権限しかない-賛成8反対0。
③現政権が改憲で立憲君主制の廃止や非合法的手段による権力奪取を狙っているとするには証拠が不十分-賛成8反対0。
また、訴えでは「憲法裁は、プア・タイ党を解党、党役員を公民権停止とする処分を検討すべき。」とされていたが、憲法裁は、「プア・タイ党の支持する改憲は合憲であり、処分を考慮する必要はない。」とした。
タイの裁判所はタクシン派と反タクシン派の抗争が激化した2006年以降、タクシン派が勝利した2006年下院総選挙の無効化、タクシン派政党の2度にわたる解党、タクシン派首相の事実上の解任など、一貫してタクシン派に不利な判決を下してきた。特に憲法裁は強引ともいえる憲法解釈が目立ち、タクシン派市民の間で司法への不信が強まっていた。
タクシンを海外に追放したクーデター政権が制定した憲法を、現与党プア・タイ党が改正しようと国会審議が行われていたが、野党民主党が憲法改正を国家転覆罪と結びつけ、憲法裁判所に訴えていた。今回も憲法裁がタクシン派に不利な判決を下し、タクシン派市民のデモなどで政情が不安定化するという懸念が出ていた。
タクシン派団体の反独裁民主主義同盟(UDD)は判決前、改憲禁止、プア・タイ解党となれば、数十万人規模の反対集会を開くと警告。プア・タイ党の下院議員は「内戦が勃発する。」、「憲法裁判事はタクシン派市民に逮捕されるだろう。」などと、脅迫とも取れる発言をしていた。前日からUDDが集会を行なっている。
← 憲法裁判所前でデモ中の反独裁民主主義同盟(UDD)。支那の人民服、人民帽を被った支那の手先。
タイの現行憲法は2006年の軍事クーデターでタクシン政権を追放した反タクシン派が制定したもので、任命制の上院議員、憲法裁、選挙委員会などを通じ、反タクシン派が政治介入しやすい仕組みになっている。タクシン派は改憲による反タクシン派の司法・政治への影響力排除を狙い、新憲法案を起草する憲法起草議会を設立するための憲法291条改正案を国会に提出したが、憲法改正案は第3読会の採決直前の06月01日、違憲かどうかの判断を下すまで審議を中止するよう憲法裁が命じ、改憲の動きは暗礁に乗り上げていた。
タイでは過去数年、地方住民、中低所得者が多いタクシン派と特権階級を中心とする反タクシン派の抗争が続き、政治・社会が混乱している。反タクシン派はタクシンを反王室、腐敗政治家と糾弾。一方のタクシン派は「特権階級が軍官財界を動かし民主主義や法治を捩じ曲げている。」と主張。
タクシン派は2006年のクーデターと同派解党を命じた2008年の司法判断で、2度、政権を追われたが、総選挙では2001年、2005年、2007年、2011年と4連勝中だ。激しい政争の中、2006年、2008年には反タクシン派、2009年、2010年にはタクシン派による大規模なデモがあり、2010年にはデモ隊と治安部隊の衝突で、市民、兵士ら91人が死亡、1400人以上が負傷。 |
07月11日にスワンナプーム空港を飛び立ったバンコク・エアウェイズの旅客機が国境地帯上空で悪天候のためにルートを変更したところカンボジア側から威嚇射撃を受けたとされる問題で、「カンボジア軍関係者がその事実を認めた。」と報じられているが、スカムポン国防相は日、「カンボジア当局も否定している。被弾したわけでもなく、威嚇射撃が実際にあったか確かめるのは困難。これ以上私から言うことはない。」と述べた。インラック首相も同日、「両国軍や地元当局に問い合わせたが、威嚇射撃の事実は確認できなかった。バンコク・エアウェイズも否定している。」と述べ、「威嚇射撃はなかった。」との見方を示した。
なお、報道によれば、「国境地帯の警備に当たっているカンボジア軍部隊の責任者は、『夜間で飛行機の種類を判別できなかったが、何度も旋回していたので機関銃で18発射撃した。だが、飛行機の速度が速く、命中しなかった。』と発砲の事実を認めている。」 |
アラブ首長国連邦(UAE)ドバイからの報道によると、UAEの著名法律事務所幹部の45歳のKMとだけ報道された弁護士がタクシンに対する背任罪で禁固3年の判決。
この弁護士KMは2008年にタクシンが英サッカーのイングランド・プレミアリーグのクラブ、マンチェスター・シティを中東の投資会社に約2億£で売却した案件をタクシンの弁護士として取りまとめた。入金された1億5千万£のうち約6000万£(3億4100万ディルハム)を自身の別荘購入などに充てたと昨年起訴された。 |
07月14日(土) | 政権党プア・タイ党の望む現行憲法の全面書き換えが、憲法裁判所の「国民投票が不可欠」との判決により困難になったことから、プア・タイ党は、憲法68条を改正して憲法裁の権限を削減することを検討中だと明らかに。この条件は、政府の支持する国民和解法案(憲法改正案)を違憲とする訴えが憲法裁に上がったことによるものだが、プア・タイ党は、憲法裁がこのような訴えを直接受理できないよう68条に「検察経由でのみ訴えを受理できる。」と明記すべきとしている。 |
07月15日(日) | タマサート大学の法学者グループ、ニティラートが、「憲法裁判所が職権を乱用して立法府に干渉している。」として、憲法裁判所を解散してそれに代わる司法機関の設置を要求。
ニティラートはこれまでの主張からタクシン派寄りと見られているが、ニティラートのウォラチェート、チャンチラ、ピヤブット3人は、タマサート大学で行った記者会見で、「憲法の全面書き換えには国民投票が必要」とした先の憲法裁判断を「クーデターに等しい。」などと厳しく批判し、「憲法裁が違法な手段で現政権を妨害している。」との見方。
同判断は、タクシン派のプア・タイ党の支持する憲法改正案を違憲とする訴えがあったことから憲法裁が下したもの。同案には反タクシン派が「タクシンの免罪・帰国が狙い。」などと強く反対しているが、タクシン派は、違憲の訴えを受理したこと、結果が不確実な国民投票の実施を突きつけられたことから憲法裁への反発を強めている。プア・タイ党は、憲法の部分改正で憲法裁の権限削減を図る考えを明らかにするなど、反撃に出る構えを見せている。 |
憲法改正案の合憲性に関する憲法裁判断について、反独裁民主主義同盟(UDD)幹部のコーケウ、プア・タイ党議員が過激な発言をして各方面から批判を浴びている問題で、刑事裁判所は、「コーケウの保釈取り消しを16日に検討する。」と発表。
コーケウは、一昨年の大規模な反政府デモに関連してテロなどの罪に問われ、現在は保釈中の身。憲法裁が判断を示す前の11日、「(違憲判断が出たら)われわれは国家反逆罪で憲法裁判事を訴える。警察が逮捕しないなら、我々が判事を捕らえる。これに反タクシン派が抵抗し、タクシン派と反タクシン派が衝突。軍部がクーデターを起こす。 これにタクシン派はあくまでも抵抗し、内戦状態に陥る。」などと発言。
これに対しては、政府内からも不適切との批判が出たが、最大野党の民主党のニピット議員が「保釈条件に違反する。」と訴えたことから、刑事裁判所が保釈取り消しを検討することになった。 |
中央選挙管理委員会のソットシー委員によれば、憲法裁判所が先に「国民投票が憲法全文改正の条件」との判断を示したが、「選管は必要があれば、国民投票を実施するための準備に今すぐにでも入ることが可能。」という。ただ、ソットシー委員は、「国民投票を憲法草案作成の前か後、あるいは前後の2回実施すべきなのかはっきりしない。憲法裁はこの点を明確にする必要がある。」としている。「国民投票は、準備を含めると約4ケ月掛かり、総費用は24億Bあまりに上る。」という。 |
07月16日(月) | 憲法裁判所が先に「憲法の全面的な書き換えには国民投票が不可欠。」といった判断を示したことから、「政府が求めている憲法改正が困難になった。」との見方が出ているが、政権党プア・タイ党の広報担当プロムポンは、「憲法改正を求めて行く。」というプア・タイ党の方針に変わりのないことを再確認。
ただ、08月開幕の次期通常国会で憲法改正案の第3、最終読会を行うかどうかについては、憲法裁が先の判断に関する正式見解を文書で示した後で、その内容を詳しく検討して決定する。
また、プロムポンによれば、「プア・タイ党は今でも、憲法裁が改正案を違憲とした訴えを受理し、立法府による憲法改正の手続きに口を挟んだのは越権行為であると考えており、この点を今後追及して行く。」 |
タクシン政権による全国的な薬物一斉摘発(2003~2004年)の下で、現場の警察官が処刑などで2500人あまりを殺害した問題が再浮上。
先に放送されたテレビ番組の中でチャルーム副首相が、「クーデター後(タクシン政権崩壊後)の検証で、カニット(元検事総長)率いる調査委員会は、『処刑はなかった。』と結論づけた。」と発言したことに対し、カニットが、「事実と異なる。」として、インラック首相に抗議の書簡を提出。この問題を調査するため2つの委員会が設置されたが、その1つを取り仕切ったのがカニット。
カニットによれば、「チャルーム副首相の発言は、タクシンを擁護し、汚名を払拭することが狙いと見られるが、委員会は、『タクシン政権の薬物対策の結果として人道に反する犯罪が起きた。』と報告しており、副首相は報告書をよく読み返してみる必要がある。」 |
07月17日(火) | 警察によれば、07月13日に憲法裁判所前で国王の肖像画に向かって不適切なしぐさをしたとして、不敬罪で訴えられたニュージーランド在住のタイ人女性ティティナント・ケウチャントラノント(63)に精神疾患の疑いがあることから、ガラヤ・ラチャナガリンドラ病院で検査を受けさせることになった。
ティティナントは17日にタイ国際航空のフライトでニュージーランドのオークランドに帰国する予定だったことから、スワンナプーム空港では約200人(報道により数十人)がティティナントを帰国させまいと待ち構えていたが、ティティナントが病院での検査のため姿を見せず、肩すかしを食らった格好。ティティナントの夫(ニュージーランド国籍)は予定通りに帰国。
なお、関係筋によれば、「ティティナントが搭乗予定だったフライトの機長は、『ティティナントが乗るなら安全上の理由で乗務できない。』と述べていた。」 |
07月18日(水) | タイ、カンボジア両国軍が、国境の紛争地帯からの撤兵を開始。これは、世界遺産カオ・プラウィーハン(プレアビヒア)や国境未画定区域(4.6㎢)を含む同地帯(17.3㎢)を非武装とするという昨年07月の国際司法裁判所の命令に従ったもので、紛争地域には近く、インドネシアの停戦監視団が入る予定。
カンボジアのフン・セン政権とタイの前政権は両国国境にある世界遺産の山上遺跡カオ・プラウィーハン周辺の領有権をめぐり、国境で武力衝突を繰り返し、昨年02月と04月には砲撃・銃撃戦で双方の兵士、住民ら30人近くが死亡、100人以上が負傷。周辺地域の住民10万人以上が一時避難。
紛争激化を受け、カンボジアは同年04月、国際司法裁にカオ・プラウィーハン周辺の国境未画定地域の領有権に関する判断を求めた。国際司法裁は同07月、訴えを受理するとともに、暫定措置として、紛争地域に非武装地帯を設定し、両国に即時撤兵するよう命じた。最終判断は来年09月もしくは10月に下される見通し。 |
07月19日(木) | タクシンの法律顧問であるノパドン元タイ外相によると、タクシンはインドネシアを訪れ、16日、ジャカルタでインドネシアのユドヨノ大統領、マレーシアの野党連合・人民同盟(PR)のリーダーであるアンワル元副首相らと、タイのタクシン派と反タクシン派の和解などについて意見を交換。タクシンは24~26日に香港を訪れ、26日の自身の63歳の誕生日を香港で祝う予定。
タクシンは国外滞在中の2008年に汚職で懲役2年の実刑判決を受け、以来、服役を避けるため、タイに帰国していない。 |
スカムポン国防相が「アピシット民主党党首(前首相)の徴兵忌避を裏付ける確固たる証拠がある。」と述べたことに対し、アピシット党首は、「徴兵を忌避した事実はない。」と、国防相を名誉毀損で告訴する考えを明らかにし、国防相の発言が「裁判中のチャトポン元プア・タイ党議員(反独裁民主主義同盟(UDD))を擁護しようとしたもの。」との見方を示した。
アピシット党首の「徴兵忌避問題」は、タクシン派が過去に何度か攻撃材料として取り上げたことがあるが、アピシット党首はそのつど否定。これまでに関係当局が「徴兵忌避があった。」と認定したことはない。チャトポンは先に、集会などで「徴兵を忌避した。」と発言したことから、アピシット党首が名誉毀損で告訴し、現在裁判が進められている。 |
国外逃亡中のタクシンはこのほど、シンガポールのテレビ局とのインタビューの中で、「国民和解が実現しなければ帰国できない。急いで帰国するつもりはない。」と述べて、政治対立の解消が帰国の条件との考えを改めて示し、タクシンは、「私の帰国が、我々が被ってきた問題の解決に繋がらなければならない。」と語った。
だが、関係筋によれば、「タクシンが望んでいるのは免罪・帰国であり、反タクシン派がこれを容認することは考えにくい。タクシン派の現政権が免罪・帰国のお膳立てに躍起になっているようでは、政治対立の解消は望めない。」 |
07月21日(土) | 研究集会に出席するため、チエンマイ県を訪れたアピシット民主党党首の乗った車に反独裁民主主義同盟(UDD)支持者らが石を投げつけるという事件があった。
チエンマイ県はタクシンの出身地であり、タクシン支持団体UDDの支持者が多いことで知られている。また、UDDは政権党プア・タイ党の実動部隊とされていることから、アピシット党首は政府に対し、UDDが政敵に過激な行動を取らないよう自重を求めるよう要請。
民主党関係筋によれば、アピシット党首の一行は空路でチエンマイ入りし、研究集会の開かれる村に車で移動したが、その間中、赤服軍団(UDD支持者)が妨害行為を繰り返し、また、村から帰る際にも、ピックアップトラック2台で行く手を塞ごうとした。アピシットの車はこれをなんとか切り抜けたが、その際、石を投げつけられた。ホテルに戻った一行は身の危険を感じて裏口から逃げ出したという。 |
07月23日(月) | タイの英字紙バンコク・ポストは、「汚職で実刑判決を受け逃亡中のワタナー・アサワヘーム(馬裕炎)元副内相が支那河南省洛陽市に自費でタイ仏教寺院を建立し、20日、落成式を行った。」と報道。同寺院は、敷地の使用許可をワタナーが許可を取得し、私費2億Bを投じて建設したものと言われる。式典にはタクシンと親しい実業家・政治家のポンサック元工業相、タクシンの元義弟のバナポット・ダーマーポンら数百人が出席。
ワタナーは1935年生。何らかの方法で巨額の財を成した後、政界入りし、1990年代前半に副内相などを務めた。1995年の下院総選挙では副党首を務めるチャート・タイ党が第1党となったにもかかわらず入閣を逃し、「ワタナーの『事業』を問題視する米国から圧力が掛かった。」と報じられた。
ワタナーはその後も地盤のタイ中部サムットプラカン県で強い影響力を振るったが、同県内のクロンダン産業排水処理場の汚職事件で起訴され、2008年の最高裁判決直前に行方を眩ました。最高裁は「ワタナーが副内相当時に処理場建設用地の偽の土地証書を政府の関係部署に発行させた。」として、禁固10年の実刑判決を下した。クロンダン産業排水処理場は日本の政府開発援助(ODA)など約240億Bを投じ建設されたが、環境アセスメントの不備や汚職疑惑で完工直前に計画中止。ワタナーの消息は2008年以来、ぷっつり絶え、今回の報道で初めて居場所が明らかになった。
タイの著名な逃亡者には、2008年に汚職で実刑判決を受けたタクシン、チョンブリー県などタイ東部一円の実力者であるソムチャーイ・クンプルームら。ソムチャーイは1937年生。何らかの方法で巨額の財を成し、東部政財界のボスとして君臨した。しかし、汚職、殺人などで実刑判決を受け、2006年から逃亡中で、「地元に近いカンボジア西部に潜伏している。」という噂がある。不在中も影響力は健在で、チョンブリー県長、パタヤ市長といった重要ポストはソムチャーイの息子らが抑えている。
タイの映画祭「バンコク・インターナショナル・フィルム・フェスティバル(BKKIFF)」をめぐる収賄疑惑で捜査を受けたタイ観光庁(TAT)のチュタマート元総裁と娘は起訴前にタイ国外に出国し、タイ当局によると、行き先は不明。2人に贈賄した米国人夫婦は2010年に米国で実刑判決を受けた。米当局の捜査でチュタマートの娘らの銀行口座に約180万ドルが振り込まれたことが明らかになっているが、その後、タイでのチュタマートと娘に関する捜査はほとんど進展していない。 |
政権党プア・タイ党幹部のサノ議員は、「タクシンは、憲法書き換えのハードルを乗り越えるのには憲法の部分改正が最善策と考えている。」と明らかに。これは、先に香港を訪れた際にタクシンから直接聞いたものという。
政府の支持する改憲案は、現行憲法の全面的書き換えを意図したものだが、憲法裁は先に「全文改正なら国 民投票が必要。部分改正なら国民投票は不要。」との最終判断を示した。このため、次期通常国会で改憲案の第3、最終読会を行い、議決まで持ち込むのは困難との見方が支配的。
タクシンは最初、憲法裁の判断に強く反発していたが、サノ議員によれば、今は態度を軟化させ、「これまでのことは忘れて、いくら時間が掛かっても憲法を部分ごとに改正してゆくのが良い。」と述べている。 |
タクシン支持団体の反独裁民主主義同盟(UDD)幹部のチャトポン元プア・タイ党議員の保釈取り消し請求について刑事裁判所は「07月23日に判断を示す。」としていたが、同日、「保釈条件に違反する言動があったか現時点では不明確であり、さらに詳しい検討が必要。」との理由で、判断を08月09日まで延期することを決定。
チャトポンはUDDによる一昨年の大規模反政府デモに関連してテロの罪に問われて逮捕され、現在は保釈中の身。また、先の改憲案に関する憲法裁の判断を批判したことから、憲法裁判所が「不安を煽らない。」といった保釈条件に違反したとして、保釈の取り消しを刑事裁判所に請求することになった。
なお、チャトポンは、「政治的意見の表明は憲法で保障された権利。」と述べ、「保釈条件には抵触しない。」と主張。 |
07月24日(火) | 政権党プア・タイ党の閣僚や議員などがアピシット民主党党首の「徴兵忌避疑惑」を蒸し返していることについて、プラユット陸軍司令官は、「陸軍は1999年に調査を行い、徴兵忌避を裏付ける証拠はないと結論づけていた。」と述べた。また、プア・タイ党が「軍関係者が徴兵忌避を手助けした。」と批判していることに対し、プラユット司令官は、「協力者の氏名を明らかにせよ。」と要求。
関係筋によれば、プラユット司令官の発言は、国軍の名誉を守ろうとしたものと見られるが、プア・タイ党は、「アピシット擁護」と受け止めている。そのため、プア・タイ党のコーケウ議員は、「1999年の調査が適正に行われなかった可能性がある。」として、スカムポン国防相に調査報告書の公表を求めている。 |
プア・タイ党首脳のチャルーム副首相は、独自の改憲案を明らかに。だが、その目的が、「タクシン派のさらなる勢力拡大を妨げている目の上のたんこぶ排除」と見て取れることから、反タクシン派が強く反発することが十分予測される。
チャルーム副首相の唱える憲法改正のポイントは、①上院議員全員を公選制とする、②オンブズマン(行政機関のありかたを監査する人や制度)を廃止する、③憲法裁判所と行政裁判所を合体させて最高裁判所のもとに置く、④選挙管理委員会に付与されている当選無効宣告の権限を削除する、⑤中央選管と国家汚職制圧委員会(NACC)の委員は下院が選出してその任期を4年とするというもの。
なお、チャルームは、この改憲案について、「個人的な意見であり、また、(国外逃亡中の)タクシンを助けようとしたものではない。」とも述べている。 |
07月25日(水) | プリアオパン警察庁長官が香港でタクシンに会ったことで批判を浴びている問題で、チャルーム副首相は、「何が不適切なのか。処分を検討するつもりもない。」などと述べて長官を擁護。タクシンの元妻ポチャマンの兄であるプリアオパン長官は先に香港を訪れ、タクシンの誕生祝いに出席。
これに対し、「タクシンは在任中の汚職(職権乱用)で禁固2年の有罪が確定した犯罪人であり、警察庁長官はなぜ逮捕しなかったのか。」、「法の執行人である警察官が犯罪人に会いに出かけるのはけしからん」といった批判が出ている。
しかし、チャルーム副首相は、「香港はタイの法律が適用できない外国であり、警察庁長官が職務怠慢に問われることはない」としている。
また、ワンチャイ上院議員(タイ弁護士協会幹部)は、「タイ当局の発行した逮捕状で犯罪人を外国で逮捕することはできない。外交チャンネルを通じて当該国に逮捕してもらう必要がある。」と述べて、チャルーム副首相の反論にも道理があるとの見方を示したが、「プリアオパン長官が香港でタクシンと会ったのは法律違反ではないが、公務員としては重大な倫理違反。非常に不適切。」と批判。 |
スカムポン国防相は、香港でタクシンに会って国軍関連の人事について相談したことを認めた。タクシンは、国防事務次官にタノンサク陸軍司令官補佐、空軍司令官にプラチン空軍司令官補佐を選んだ。
関係筋によれば、「国防相にとって、プア・タイ党の事実上の最高実力者であるタクシンに相談するのは当然なのだろうが、首相経験者とはいえ、現在は犯罪人であり、その意見を国軍関連の人事に反映させたことに対しては、厳しい批判が出る可能性がある。」 |
タクシンらが関与したとされる官営クルンタイ銀行の不正融資疑惑に関する訴えを最高裁判所が受理したことが25日までにわかった。この疑惑は、2006年09月の軍事クーデターによるタクシン政権崩壊後にタクシン政権の不正を暴くために設置された調査委員会が指摘していたもので、捜査から起訴に至るまで6年掛かったことになる。
起訴状によれば、クルンタイ銀行はタクシン政権下で融資を受ける資格のなかった不動産大手のクリサダマハナコン社に関連会社を通じて総額115億8000万Bを迂回融資したもので、これに当時のタクシン首相やクルンタイ銀行役員など27人が関与した。
最高裁での初公判は10月11日に予定されている。タクシンの法律顧問ノパドンは、「タクシンの関与を示す証拠も存在しないため心配していない。」と述べている。 |
07月26日(木) | 国外逃亡中のタクシンは63歳の誕生日を香港で迎えた。妹のインラック首相らを通じ、政権を事実上操っているものの、反タクシン派の抵抗で帰国のめどは立っておらず、4年連続して国外で誕生日を迎えることになった。
香港のタクシンのもとには、家族のほか、タクシン派与党プア・タイ党の政治家らが押し寄せ、猟官運動を繰り広げているという。元義兄の「プリアオパン警察長官も香港を訪れた。」と報じられ、現職の警察トップが汚職で有罪判決を受けたタクシンと会ったとして、反タクシン派が批判。プリアオパン長官に関しては、「09月末に定年退官した後、入閣する。」という噂が広がっている。
63歳の誕生を迎えたタクシンは、首相府の職員や記者らにドーナツが送った。箱には微笑むタクシンの写真と「We are together」という言葉が印刷され、配送はキティラット副首相兼財務相が手配した。ドーナツは全部で6万4000個で、タイ全土で配られるという。
タクシンの現在の懸案は、タクシンの免罪を軸とする国民和解法案と、タクシン派勢力の立法、司法からの排除を狙った憲法改正だが、どちらも先行きは厳しい。和解法案に関しては、法案に反対する反タクシン派市民団体が街頭デモを予告。野党民主党も徹底抗戦の構えだ。改憲に関しては、憲法裁判所が今月、全面改正には国民投票が必要との判断を下し、道のりが困難となった。
タクシンに近いチャルーム副首相は改憲について、国民投票が不要な、国会での条項ごとの改正を進めるべきという考えを示している。具体的な変更点としては、約半数が任命制となっている上院の全議員公選制への移行、オンブズマンの廃止、憲法裁判所、行政裁判所の事実上の廃止、選挙委員会の権限縮小、選挙委員会と国家汚職防止撲滅委員会の委員の下院での選出などを挙げた。いずれも2007年の軍事政権下で制定された現憲法に盛り込まれている特権階級の権力維持の仕組みを壊すもので、反タクシン派の中核である特権階級の反発は必至。
こうした中、タイ検察庁はタクシン政権時代に行われた国営クルンタイ銀行による不正融資疑惑でタクシン、クルンタイ銀のウィロート元社長ら27人を起訴し、25日、最高裁判所が受理した。2006年に開港したスワンナプーム空港の周辺の土地を、当時債務不履行に陥っていた不動産会社がクルンタイ銀行から融資を受け、開港前に買い漁ったというもので、タクシンは汚職、権力乱用の罪に問われている。 |
タクシン、プア・タイ党本部に集まった支持者に対し、香港からビデオリンクを通じて「そう遠くないうちに帰国する。」と伝えた。
プア・タイ党本部では、タクシンの63歳の誕生日(07月26日)に因んだ「タクシン・チナワット図書室」が開設され、これを祝うために大勢の支持者が訪れた。
また、タクシンは、「民主党の諸君にも図書室に来て書籍を読んでもらいたい。そうすれば、金でなく、知識が力であることがわかる。民主党は私の資産の60%を奪い取ったが、これは、『金が全て』という誤った考えによるものだ。」と述べ、タクシンに「汚職まみれ」などとの批判を浴びせてきた反タクシン派への反撃を繰り広げた。 |
反タクシン派が国民和解法案(改憲案)に強く反対していることから、国民和解法案を取り下げるべきとの意見がプア・タイ党幹部の間からも出ているが、プア・タイ党関係筋によれば、「党内には予定通りに改憲手続きを進めるべきとの意見もあり、08月開幕の次期通常国会で国民和解法案が取り上げられる可能性がある。」という。
これに関連して、ソムサック下院議長は、「08月01日の国会初日には和解法案を取り上げない。」と述べたが、同筋は、「取り下げを意味するものではない。」としている。最大野党の民主党や民主主義市民連合(PAD)など反タクシン陣営は、「タクシンの免罪・帰国を実現するための憲法改正であり、容認できない。」と、和解案の議会通過を阻止する構えを見せている。 |
国家汚職制圧委員会(NACC)は、「ステープ民主党議員(元民主党幹事長)が副首相時代に越権行為を犯した。」との判断を示した。「これは憲法に違反する行為であり、公民権停止の処分を受ける可能性がある。」という。
NACCによれば、「民主党政権(2008~2011年)で副首相を務めていた際、民主党議員など19人を文化省で働かせるよう文化相に要求。文化相はこれを拒否したが、要請自体がすでに副首相の権限を越えたものであり、憲法に抵触する。」という。
NACCは近く、上院議長に対し、ステープ議員を公民権停止とするとともに、過去に遡って副首相罷免とすべくステープ議員の訴追を請求する予定という。 |
07月27日(金) | プリアオパン警察庁長官が先にタクシンの誕生祝のために香港を訪れたとされることに厳しい批判が出ている問題で、プリアオパンは、「タクシンには会わなかった。祝いもしなかった。」と述べ、報道内容を否定。
新聞などは、「タクシンが26日に63歳の誕生日を迎えることから、長官が予め休暇をとって、誕生祝のために24日にスワンナプーム空港から香港に向かった。」と報じていた。
だが、プリアオパンは、「香港に行ったのは職務上の用事があったため。」と説明。タクシンに会わなかった理由については、「タクシンとは意見の合わないところもある。彼は、私のことが好きではないだろう。」と述べた。 |
07月29日(日) | 憲法改正案の合法性についての憲法裁判所の判断に反独裁民主主義同盟(UDD)などタクシン陣営から批判の声があがっているが、憲法裁は、政治集会などにおけるUDD幹部のプラシット、プア・タイ党議員やコーケウ議員らの発言が名誉毀損、脅迫に当たるとして、近く警察に被害届を提出する予定。
憲法裁では、「憲法の全面書き換えには国民投票が必要。」などとしており、タクシン派の政権党プア・タイ党の望む憲法改正に高いハードルを設けるものとなっている。
また、タクシン陣営は、「この判断に問題がある。」として憲法裁判事を警察に訴えている。しかし、憲法裁は、「訴えは虚偽に基づいたもの。」反論。 |
クルングテープ都内で開催された野党民主党の政治集会で、アピシット民主党党首(前首相)が民主党と対立するタクシン派のシンボルカラーである赤いシャツ姿になり、話題を呼んだ。アピシット党首は集まった観衆に、「タイ人はみな同じ権利を持っている。分断するのは止めよう。」と呼びかけ、喝采を浴びた。
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07月30日(月) | 刑事裁判所は、2004年07月にキアッティサック・ティットブーンクロング(17)の殺害容疑で逮捕された東北部カラシン県警察本部の警察官6人のうち、アングカン・カムモーンナ、スティナン・ノンティング、パンシン・ウッパナンの3人に死刑、残り3人は、モントリ・ブーンルーに終身刑、スミット・ヌンサティットに禁固7年、サムパオ・インディーに無罪を言い渡した。
タクシン政権が2003~2005年にかけ全国展開した麻薬一掃キャンペーンでは、薬物容疑者など2500人以上が警察官に処刑された。
キアッティサックはオートバイ窃盗容疑で逮捕され、保釈されたが、その数日後に東北部ロイエット県チャンハン郡の小屋の中で首を吊って死んでいるのが見つかった。麻薬一掃キャンペーンでは、現場の警察官による容疑者殺害が横行していたとされるが、キアッティサックの遺族が「警官に殺害された。」と訴えたことから、関与が疑われた警察官らが逮捕されることになった。タクシン政権下でカラシン県では、10代の20人(男17人,女3人)が同じように警察に殺害されている。そのうち、7~8件を調べたが、目撃者の犠牲者の親類は、報復を恐れて証言を拒んだため、不起訴に終わっている。
捜査に乗り出した法務省特別捜査局(DSI)は、6人全員がキアッティサック殺害に関与したと結論づけていたが、刑事裁判所は、保釈を家族に電話で伝えた警察官については、「職務を遂行したにすぎず、殺害に関わっていない。」と判断しサムパオを無罪とした。 |
国外逃亡中のタクシンの法律顧問、ノパドンは、タクシンが08月に米国内を回って実業家らにタイへの投資を呼びかける予定を明らかに。
タクシンは現在、香港に滞在中だが、いったん生活拠点の中東ドバイに戻り、英国を訪問。その後、米国の東海岸から西海岸まで縦断し、ハワイにも足を伸ばす考え。
また、米国では、「タイの政治家や報道関係者にも会う予定。」という。なお、ノパドンは、タクシンが米国のどの都市を訪れるかについては言及を避けた。 |
07月31日(火) | プア・タイ党のプロムポン議員(広報担当)は、「政府は憲法改正を急がないことで意見が一致した。」と述べた。これは、「政府が現在、改憲の必要性を国民に説明する広報キャンペーンを展開中であることなどが理由。」という。
現行憲法の改正を巡っては、政府が支持する改憲案に反タクシン派が強く反対しており、改憲をごり押しすれば、政治対立がさらにエスカレートする恐れがある。また、憲法の全面的な書き換えには、国民投票が必要なことから、政府は、まず国民に改憲の必要性を理解させる必要があると考えている。
このほか、政治対立の再燃を懸念してタクシン陣営からも改憲案を取り下げるべきとする意見が出ていたが、プロムポン議員は、「改憲案の国会審議を遅らせることはあっても、取り下げることはない。」と明言。 |
2004年07月のキアッティサック殺害事件で07月30日に有罪判決を言い渡された警察官5人の保釈が、31日に認められた。これに対して、身の危険を感じたキアッティサックのおばのピクン・プロームチャンら3人は、当局に身辺警護の継続を要求。ピクンは、「証人の1人のスラサック・プーンクラングは法廷で証言する前の2009年末に事故で殺された1」と述べている。
この事件を捜査した法務省特別捜査局(DSI)は、犯人の警察官らに不利な証言をしたキアッティサックの親族らの身辺警護を行っていたが、30日に有罪判決が出たことから打ち切られた。だが、犯人らが保釈されたことから、親族らは仕返しを恐れ、DSIに身辺警護の継続を要請する意向。 |
08月01日(水) | タクシン支持団体の反独裁民主主義同盟(UDD)幹部のチャトポン元プア・タイ党議員の保釈取り消し請求に対し、刑事裁判所が08月09日に判断を示すことになっているが、取り消しが決まった場合、UDD支持者が抗議することが予想されることから、刑事裁判所は、法廷内や裁判所の敷地内で騒ぎを起こすことなどを禁止する旨を明らかに。さらに、「これに反した場合は法廷侮辱罪で禁固6ケ月までの刑が科せられる。」と警告し、UDD支持者に自制を求めた。
チャトポンは一昨年の大規模反政府デモに関連してテロなどの容疑に問われ逮捕され、現在は保釈の身。だが、政府の支持する改憲案の合憲性に関する07月13日の憲法裁判所の判断を批判したことから、憲法裁判所が、「保釈条件に違反する。」として、保釈の取り消しを刑事裁判所に請求、UDDはこれに強く反発している。 |
開幕した通常国会で、重要10案件を今国会で優先的に審議することが決定。国民和解法案4件はそのあとで審議される見通し。
和解案に対しては、最大野党の民主党や民主主義市民連合(PAD)など反タクシン陣営が、「タクシンの免罪が狙い。」などと強く反対しており、民主党は01日の国会でも、「インラック首相が和解案に対する態度を表明するのが先。」などと主張して、和解案の取り下げを要求。政府内でも「政治対立のエスカレートを回避するため取り下げるべき。」との声が一部から出ていたが、政府首脳は現在、取り下げずにころあいを見計らって今国会で審議することで意見が一致している。 |
08月02日(木) | 反タクシン組織、民主主義市民連合(PAD)幹部のチャムロン元クルングテープ都知事は、記者会見を行い、「国会で政府の支持する和解案が審議されるようなことがあれば、PADは大規模な抗議活動を展開し、インラック政権に退陣を迫る。」と表明。
PADや最大野党の民主党などの反タクシン陣営は以前から、「国外逃亡中のタクシンの免罪・帰国の実現が狙い。」と和解案に強く反対している。
チャムロンは、「国民和解を実現するには、(和解案で求められている政治関連犯への恩赦適用でなく)悪いことをした者に法律を厳格に適用するしかない。」としている。 |
タクシンの法律顧問であるノパドン元外相が明らかにしたところによると、タクシンは03日までモスクワに滞在し、03、04日に英国を訪れ、その後、米国を訪問。米国には約2週間滞在し、実業家、政治家からと会う予定。
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08月05日(日) | 民主党の広報担当、チャワノンは、「インラック政権は、誕生から1年が経過したにもかかわらず、主要政策のほとんどを実現できていない。」と指摘、その責任を国会で追及する方針を再確認。「例えば、政府は国民和解を最優先課題の一つに掲げているが、批判があるにもかかわらず、敢えて憲法を改正しようとしており、和解がさらに遠のく結果を招いている。」という。
また、民主党が不信任案を提出して政府批判を強める作戦を検討していることについて、タクシンの法律顧問、ノパドンは、「民主党が取り上げようとしている問題は以前から存在するもので、驚くに値しない。」と述べて、野党攻勢でタクシン派・インラック政権が打撃を受けことはないとの見方。 |
08月06日(月) | 最大野党の民主党のアピシット党首は、インラック政権が発足から1年間の実績を発表し、来年度予算案が議会を通過する前に、不信任案を提出する考えのないことを明らかに。
民主の広報担当、チャワノンは先に、「米買い上げ計画に絡む問題、最南部のテロなど5つの論点について政府の責任を追及する。」と述べていたが、アピシット党首は不信任案審議では、個人攻撃をせず、政府の仕事ぶりに照準を合わせて問題点を指摘し、政府の国政運営がいかに間違っているかを明らかにしていく方針。 |
08月07日(火) | 最大野党の民主党が内閣不信任案を提出して政府の責任を追及する構えを見せていることについて、インラック首相は、「私に対する質問には自ら答弁する。」と明言。これまで国会審議では、野党議員などからの質問に対し、インラック首相は副首相や関係閣僚に答弁させることがほとんどだった。だが、不信任案の審議でも、答弁しなければ、逃げ腰と見られかねないことから、方針を変更したものとみられる。なお、民主党は不信任案の審議で、「インラック政権が掲げている目玉政策に照準を合わせて政府批判を展開する。」としている。 |
与党設置の憲法改正戦略委員会の初会合が開かれ、ポキン元国会議長を委員長に選出。副委員長には、タクシン創設のタイ・ラック・タイ党(2007年05月解党)の役員だったポンテープが選ばれた。
憲法改正戦略委員会はまず、政府支持の和解案の合憲性に関する憲法裁判断について、与党議員の意見を参考にしながら詳しく検討することになっている。なお、政府は今国会での和解案の議会通過を目指しているというが、憲法裁が「憲法全文改正には国民投票が必要。」と判断を下している。国民投票で有権者の過半数が改憲を支持するか定かでないことから、性急な和解案の議会通過で墓穴を掘る恐れがある。このため、改憲実現に向けた戦術を練る戦略委員会を設置することになった。 |
08月09日(木) | 刑事裁判所は08月09日に下されるとみられていた、チャトポン元プア・タイ党議員など反独裁民主主義同盟(UDD)関係者19人の保釈取り消し請求に対する最終判断を22日まで延期を決定。
一昨年の大規模反政府デモに関連してテロの罪などに問われて逮捕され、現在保釈中のチャトポンらは、先の国民和解法案の憲法裁判断に関して不適切な言動があったとして民主党議員らが保釈取り消しを請求。これに対する最終判断が09日に下されると予想されていた。
しかし、19人のうちの1人が、「民主党議員が不適切な言動の証拠として提出したVCDの内容に改竄がある。」と指摘し、さらに多く参考人から意見を聞くべきと要求したことから、裁判所は最終判断を延期することにしたもの。 |
08月10日(金) | 深南部でタイからの分離独立を目指すマレー系イスラム武装勢力によるとみられるテロが活発化していることについて、タイ陸軍のダーポン副司令官は、「国連が介入して住民投票が行われれば深南部を失うことになる。」と述べ、警戒感を示した。「武装勢力の取り締まりに夜間外出禁止令が有効。」との考えも示した。 |
サンフランシスコを訪れた逃亡者タクシンは、メディアとのインタビューで、「真の民主主義を追い求める私の闘いは平和裏に終わろうとしており、新たな軍事クーデターによって物事が振り出しに戻る可能性はきわめて低い。」、「軍部はこれまでに国内の混乱や汚職蔓延などを理由にクーデターを起こして政権を倒してきた。だが、現在「ほんとうの民主主義」を実現しようと努力しているタクシン派が勢いを増しており、軍部といえども、これを無視してタクシン派、インラック政権を打倒することは難しい状況にある。」と述べた。
なお、関係筋によれば、タクシン派は、タクシン政権を倒した2006年09月の軍事クーデターによって民主主義が破壊されたとして、タクシンの有罪取り消しを含む原状回復を求めている。一方、反タクシン派は、「汚職まみれ」といった批判、国内の混乱、クーデターを招いた責任はタクシン政権にあるとしている。だが、タクシン派はその責任を認めようとしていない。このような状況の中で、タクシン派は、思いを遂げるために支持者を大量動員して、「これこそが真の民主主義」などと主張しているが、これは反タクシン派にとっては受け入れがたい「民主主義」である。 |
08月12日(日) | 逃亡者タクシンは、アメリカのビザを得て、サンフランシスコ、ニューヨークシティー、ヒューストンでタクシン派の赤服(反独裁民主主義同盟(UDD))を動員して、集会を開いて移動していた。
ロサンゼルスでも、ハリウッド通のタイランド・プラザ・フードコートで、地元メディアや赤服を集めて「タクシンと気楽なお喋り」という集会を予定していたが、これに反対する約2000人の黄服(民主主義市民連合(PAD))などの反タクシン派が会場に集まり、タクシンは会場に近づけず、イベントは中止。タイランド・プラザでは、駐車スペースにステージを仮設し、18時(現地)から記者会見、夕食をとりながらの支持者との懇談会、20時からスピーチが予定されていた。
17時半頃には約300人の遠く離れたラスベガスやコロラドなどからも集まって来た反タクシン派は、会場前の通りの両側に陣取り、「暴漢罪(thung-sin)、地獄に落ちろ、刑務所に入れ」、「有罪判決の逃亡者」、「指名手配犯」などという悪意のこもったプラカードを掲げ、さらに何人かは侮辱の言葉を浴びせる抗議を行なった。その数は19時には約2000人に膨れあがり、反タクシン派の黄服だけではなく、多くのアメリカ人がタクシンに反対して加わった。
赤服の幹部で2010年のタイ暴動を指揮したダラニー・クリットブーンヤライなどの姿も見られたが、赤服との衝突は報告されていない。
抗議は続いたが、21時頃のサーヤム・タウン・米国・ニュース・ウェブサイトによれば、タイの与党のプア・タイ党の幹部でタクシンと親しい、ソムポング・アモーンウィワットが、地方警察からの要請があり、安全上の理由により集会を行わないと赤服の集会で述べたことを伝えた。
職権乱用による土地取引で2年の刑から逃げるため、2008年の終わりに国外逃亡したタクシンを乗せた車は反タクシン派のピケのために会場には入れず、数時間後にタクシンから支持者のもとに「会場に近づけず、行けなくて申し訳ない。」という断りの電話があった。
タクシンの法律顧問のノッパドン・パッタマは、「タクシンは1週間米国で留まり、タイの国外追放者や何人かのアメリカの政治家との会談を行う。」と述べたが、アメリカの有力な政治家はタクシンとの会談を避けている。
環境保護グループと黄服の幹部のスリヤサイ・カタシラは、「抗議活動は、求められているタクシンへの『社会的制裁』を実行をしただけでなく、タイと逃亡犯引き渡し条約を軽視している米国当局に恥をかかせる役目をした。」と絶賛し、「タクシンに司法手続きが下されるまで、社会的制裁がますます増大するだろう。米国のタイ人が力を示し、世界に真実を知らせるようにしたことを感謝する。」、「実際、刑事罰を犯したタクシンが政治犯であるかのような、事実を歪める捏造がある。」と述べた。 |
08月14日(火) | 国外逃亡中のタクシンが米国を訪れていることに対し、最大野党の民主党のテープタイ議員は、「米政府は、『タイから身柄引き渡しの要請がないため、タクシンの入国を許可した。』と説明している。これは、タイの外務省、検察、警察がやるべきことをやっていないことを示している。」と非難。タクシンは、首相在任中の汚職(職権乱用)で禁固2年の有罪が確定した犯罪人。このため、タイ政府は、犯罪人交換条約を結んでいる米国に対し、タクシンの身柄の拘束・引き渡しを要請することができる。
テープタイ議員は、「タクシンの居場所がわからないとは言わせない。」、「これまでのように『所在不明で身柄の拘束・引き渡しを要請できない。』という言い訳は通用しない。」と述べた。 |
08月16日(木) | プラユット陸軍司令官は、一昨年の大規模反政府デモの際のデモ参加者などの死亡について、治安部隊員を犯人扱いするような発表を控えるよう法務省特別捜査局(DSI)に申し入れたことを明らかに。DSIは、これまでに何度か、「治安当局に責任がある。」といった中間報告を行ってきた。
プラユット司令官によれば、「デモ関連死については裁判が進められており、兵士などを非難する発表は控えるべき。」と言う。この申し入れに対し、タリットDSI局長は、前向きに検討すると約束し謝罪。 |
憲法裁判所の敷地内に掲げられる国王陛下の肖像画に向かって不敬な言動をしたとして身柄を拘束されているニュージーランド在住のタイ人ティティナント・ケウチャントラノント(63)に「精神疾患」の結果。憲法裁判所が政府支持の改憲案の合憲性に関する判断を下した07月13日に言動があった。
「ティティナントは精神障害の既往歴があり、この障害が不適切な言動の原因の可能性がある。」という。この結果は警察に報告される予定だが、今回の検査とは別に、ティティナントの裁判所での不敬な言動が精神疾患によるものかどうかを確かめる検査も行われる。 |
08月20日(月) | 関係筋によれば、「法務省特別捜査局(DSI)が一昨年の大規模な反政府デモの際のデモ参加者・治安要員などの死亡を捜査していることに、軍部が不信感を強めており、これまで比較的良好だったインラック政権と軍部の関係が険悪化しつつある。」という。
プラユット陸軍司令官は先に、DSIが捜査の中間報告の中で、「治安要員が関与している(兵士の発砲でデモ参加者などが死亡した)。」との見方を示したことに対し、「デモ関連死の裁判が行われている最中」との理由で、治安当局の責任に言及するのを控えるよう要請し、タリットDSI局長が謝罪したばかり。
同筋によれば、「『捜査は、当時のアピシット首相とステープ副首相(治安担当)の責任を問うこと。』との説明を軍部は受け、これまで捜査に協力してきた。だが、DSIは、治安要員の責任を明らかにすることに力を入れているように見えることから、軍首脳部は、『自分たちも標的なのではないか。』と疑い始めている。」 |
08月21日(火) | 訪米を終えたタイのタクシンが17日から20日まで、タイの洪水対策事業について話し合うため、南朝鮮を訪問。今回の訪問は、南朝鮮の李明博政権が進める4大河川事業をモデルにして、タイの洪水対策を進めることを視野に協議を行うのが目的。
タクシンは「水資源管理分野での協力強化を望んでいる。」と述べ、南朝鮮水資源公社がタイの関係当局と計画立案を進めていることを説明。南朝鮮勢では、南朝鮮水資源公社やGS建設などがタイの洪水対策事業への参入を狙っている。
タクシンはまた、「支那企業が技術競争力を付けてきており、南朝鮮企業は技術力だけでなく、価格競争力を備えるべきだ。タイ政府は技術力と価格競争力の双方を評価することになる。」と述べた。タクシンの法律顧問であるノパドン元タイ外相によると、タクシンは訪韓後、北京に向かった。
南朝鮮が侵略中の日本固有の領土、竹島に酋長不法侵入、支那人が日本固有の領土、尖閣諸島の魚釣島に不法上陸。これらは、ロシアが侵略中の日本固有の領土、択捉島に酋長の再侵入を許したためこんな事態になった。こんな時期に南鮮や支那を訪れるタクシンが反日なのは言うまでもない。また、インラックはタクシンの操り人形に過ぎない。 |
08月25日(土) | サティエン国防事務次官が同次官の後任選びでスカムポン国防相の「越権行為」を批判し、この件を話し合うためインラック首相に面会を申し入れたことがわかった。
国防相は17日の軍幹部との会合で、国防省の事務方トップである事務次官に陸軍司令官補佐のサノンサク大将を推す意向を表明。
だが、サティエン次官によれば、「軍幹部の人事は法律に厳格に従って行われる必要があり、年功序列に従ってチャトリー副次官を次官に昇格させるべき。」 |
08月26日(日) | スラポン外相は、インラック政権発足からのこの1年における自身の実績を報道関係者に説明し、「タクシンを帰国させ、刑に服させる権限も、関係当局にタクシンの身柄引渡しを外国に請求させる権限も外務省にはない。」との認識を改めて示した。「外務省にできるのは、関係当局の犯罪人身柄引渡し請求を外交チャンネルを通じて、外国に伝えることだけ。」と付け加えた。さらに、「犯罪人の所在がはっきりしている場合に限られる。」という。
なお、先にタクシンが米国を訪問した際、最大野党・民主党は、「所在不明とは言わせない。」と引渡し請求を政府に迫ったが、政府は結局、何も手を打たなかった。 |
国防事務次官の後任人事を巡ってスカムポン国防相とサティアン現事務次官が対立している問題で、スカムポン国防相は、「決定を国防評議会に委ねる。」と述べた。
サティアン次官は、「自分の後任は年功序列などからチャトリー副次官を次官に昇格させるべき。」と主張し、国防相がタノンサク陸軍司令官補佐を推していることに強く反発。
これに対し、国防相は、「陸海空3軍の司令官も同意している。」と反論。 |
08月27日(月) | スカムポン国防相は、国防事務次官の後任人事で国防相の人選に異議を唱えていたサティアン次官(大将)、チャートリー副次官ら国防省の高官3人を更迭。国防省内の問題を口外したなどの理由で、国防相室付の補佐役という閑職に左遷。
09月末に定年退官するサティアン次官はチャートリー副次官を後任に据えようとし、10月の定例人事異動で親タクシンとされるタノンサック陸軍司令官補を定年退官するサティアン大将の後任に推すスカムポン国防相らと対立。政治家による「軍への干渉」と反発して、国防相を非難する手紙をインラック首相、反タクシン派の黒幕とされるプレム枢密院議長(元首相、元陸軍司令官)らに送ったり、スラユット枢密顧問官(元首相、元枢密顧問官)に面会して助力を求めるなどし、物議を醸していた。こうした人事をめぐる対立が今回の電撃解任に繋がった。しかし、国軍最高司令官、陸軍司令官、海軍司令官は国防相を支持しているとされることから、国防相は、軍部の反発はないとみて、サティエン大将の排除に踏み切ったもの。
反タクシン派が実権を握る軍はタクシン派のインラク政権とギクシャクした関係で、次官更迭で両陣営の亀裂が深まるという見方もある。ただ、テレビ局チャンネル7のニュース番組は、タノンサク陸軍司令官補の国防次官就任を希望したのは軍の事実上のトップであるプラユット陸軍司令官だとしており、その場合、話は軍の内輪もめで、政権への影響は限定的となる見通し。
プレム議長は例年、08月26日の誕生日に、軍・警察の現役の最高幹部を自宅に迎え、祝賀を受けるが、今年は行わなかった。
タイ軍は憲法上、国王が最高司令官で、政府からは半ば独立した存在。2008年には3軍の司令官と国防次官、国防相らの委員会が軍幹部の人事を決める制度が法制化され、政府からの独立性がより高まった。 |
一昨年の反独裁民主主義同盟(UDD)による大規模反政府デモで多数の死傷者が出た問題で、当時それぞれ首相、副首相(治安担当)だったアピシット民主党党首、ステープ議員が、法務省特別捜査局(DSI)に出頭して、「当局によるデモ隊排除は正当だった。」と証言。DSIは、デモ隊と治安部隊の衝突などにおける当時の政府首脳の責任を追及すべく、2人を呼び出し証言させたものだが、アピシット党首は、「事実に基づいて証言した。」、「現時点では何も心配していない。」と述べた。 |
08月28日(火) | タクシン政権下(2001~2006年)下、スワンナプーム国際空港に装備された手荷物X線検査装置「CTX」の調達で不正があったされる問題で、国家汚職制圧委員会(NACC)はこのほど、当時のタクシン首相やスリヤ運輸相など関係者28人を汚職で訴追するには嫌疑不十分との判断。この疑惑は、米当局が製造元である米企業などについて捜査したことが発端。
ウィチャイNACC委員は、「米FBIから証拠が提供されたものの、NACCとしては、関係者が不正に関わったとは立証できなかった。タクシンを助けようとしたものではないし、証拠も改竄していない。」と述べている。 |
2010年の大規模反政府デモで90人以上の死者が出たことの責任の所在を明らかにするための捜査が現在、法務省特別捜査局(DSI)によって進められているが、当時副首相(治安担当)を務めていたステープ民主党議員がタリットDSI局長の関与に言及したことから、DSIでは、「組織のトップであるタリットDSI局長からも聞き取りを行う可能性がある。」という。
ステープ議員によれば、当時治安作戦を一元的に指揮・監督するために設置されたセンターのメンバーだったタリット局長は、「『(デモによって)暴力が発生した場合、非常事態宣言を発令すべき。』と提言した。」とのこと。
また、アピシット民主党党首とステープ議員に対する聞き取りは、それぞれ7時間、12時間に及んだ。ステープ議員は、「聞き取りの中で、兵士が自動小銃でデモ参加者に発砲しているとされる映像を見せられ、これを『デモ隊への銃撃』と認めるよう求められたが、断った。映像では銃撃の標的がわからなかったからだ。」と明らかに。
DSIは、「映像はYouTubeにアップロードされたもの」と説明したというが、ステープ議員は、「これまでに見たことのない映像だった。」としている。 |
スカムポン国防相は、省で記者会見し、国防省の事務次官や副事務次官など高官3人を閑職に左遷したことについて、「3人の存在が国防相としての職務遂行において障害となっていたため。」、と釈明。3人は、国防事務次官の後任選びで国防相と意見が対立していた。
スカムポン国防相は、サッカーに例えて、「わたしはチームマネジャー、事務次官はコーチ。コーチが不適任としたら、チームはなかなか勝てない。コーチを交代させるのは当然。」と述べている。
また、事務次官から左遷されたサティアン大将があと1ケ月ほどで定年退官することについて、国防相は、「異動は望ましくない。だが、異動せざるを得ない理由があった。そして、私には異動の権限がある。」と説明。 |
08月29日(水) | 国防事務次官の後任選びを巡ってスカムポン国防相と対立したことで、先に国防相秘書局局長から閑職に追いやられたピンナート大将が、花などを手に国防相の執務室を訪れ、これまでの言動を謝罪。
その後、ピンナート大将は、報道陣に対し、「国防相が出した異動命令は適切な措置であり、大臣の権限に基づいたもの。私は罪を認め、自分の行いを悔いている。」と述べた。
スカムポン国防相によれば、「異動命令は撤回しないが、大将に個人的な恨みはない。」 |
08月30日(木) | 下院で、最大野党の民主党のキアット議員が、「虚偽発言」についてキティラット副首相兼財務相に説明を求めた。だが、財務相が公務で外遊中であることから、タヌサック副財務相が説明しようとしたが、キアット議員は、本人の説明が必要と主張。このため、キティラット財務相が来週、下院で釈明することになった。
財務相は先に、「今年の輸出成長目標15%は達成可能。」との主張を虚偽だったと認めた。このため、財務相は、各方面から「国民を騙していた。」との厳しい批判を浴びることになった。
キティラット副首相兼財務相の「虚偽発言」、スカムポン国防相の「高官3人左遷」を問題視する見方もあるが、インラック首相は「これら不手際を理由に内閣を改造するつもりはない。」としている。 |
09月03日(月) | 行政裁判所がサティアン大将国防事務次官の左遷に絡み、スカムポン国防相に陳述を求めていることが、09月03日までにわかった。これは、事務次官を解任されたサティアン大将がサティアン裁判所に不服申し立てをしていたことによるもの。左遷は事務次官の後任選びで両者の意見が対立したことが原因だが、サティアン大将は不当な人事だと訴えている。 |
09月04日(火) | 政府は閣議で、内務省と法務省の高官数人を異動することを決めたが、与党政治家絡みの不正疑惑で政府批判が強まっていることに対処しようとしたものと見られる。だが、政治家の関与が疑われる複数の不正疑惑を先頭に立って捜査してきたドゥサディ政府汚職対策委員会(PACC)事務局長が法務副事務次官に異動することになったことから、「捜査を終わらせ、不正を隠蔽することが狙い。」といった批判的見方。
最大野党の民主党は、「ドゥサディの異動は、汚職を暴こうとする者を排除することが目的であり、政府が汚職に手を染めていることの証し。」と非難。なお、PACC事務局長には、法務省特別捜査局(DSI)のプラウェート副局長が任命される見通しだが、2010年の大規模デモで大勢の死傷者が出たことについて、副局長が現政権の意向に沿う形で、「大勢の死傷者が出たのは当時の民主党政権の責任。」との前提でDSIの捜査を陣頭指揮したことに対する褒美と考えられる。 |
タイの野党プームチャイ・タイ党のチャワラット・チャーンウィーラクーン党首(76)が辞任することが明らかになった。後任の党首にはチャワラットの長男のアヌティン元保健相(45)が有力視。
チャワラットは地場ゼネコン(総合建設会社)大手シノタイ・エンジニアリング・アンド・コンストラクションの創業者で、2008~2011年の反タクシン派アピシット政権で内相を務めた。シノタイはこの間にバンコク首都圏電車網建設工事の一部を受注。
プームチャイ・タイ党は2008年末に憲法裁判所命令で解党されたタクシン派政党パラン・プラチャーチョン党から分離して発足。アピシット政権で反タクシン派の民主党と連立政権を組んだ。現在の下院(定数500)議員数は34人。昨年07月の総選挙でタクシン派インラック政権が発足したことを受け下野。
次期党首に名前が挙がっているアヌティンはタクシン政権(2001~2006年)で保健相を務めた。軍事政権下の2007年に5年間の参政権停止処分を受け、今年05月末に処分が解除されたばかり。タクシンとの関係は現在も悪くないと言われ、「最近、シンガポールでタクシンと会った。」と報じられた。 |
09月05日(水) | 政府汚職対策委員会(PACC)で、職員20人以上が喪服姿で出勤し、ドゥサディPACC事務局長の異動に抗議。ドゥサディ事務局長は10月の定例人事異動で法務副事務次官に就任することが先の閣議で決まったが、ドゥサディ事務局長が与党政治家絡みの汚職疑惑に次々にメスを入れようとしたことが原因との見方も出ている。
また、法務省では、タクシン派の現政権が事務局長の後任に「タクシン派寄りとされるプラウェート法務省特別捜査局副局長を起用する。」といった内容のビラが見つかった。これは、PACC事務局長の交代で与党政治家絡みの疑惑の捜査が骨抜きにされるのを懸念したもの。 |
09月07日(金) | カムロンウィット首都警察司令官がタクシンとの親密な関係を野党民主党など反タクシン派に追求されている。
カムロンウィット司令官は、03日午前05時30分頃、世界的に人気があるドリンク剤「レッド・ブル(クラディン・デーン)」の創業者のチャリアウ・ユーウィタヤー(88で死亡)の孫のウォラユット・ユーウィタヤー(27、仇名:ボス)がクルングテープ都スクムビット通ソイ47付近で、灰色のフェラーリを運転中にパトロール中の警官ウィチェアン・グランプラセート(45)を約200m引きずって死亡させ、フェラーリは現場から走り去るという轢き逃げ事件で、翌04日、執務室に記者団を招き入れ、質問に応じた。その際、部屋の中にタクシンとカムロンウィット司令官が2人で写った写真が飾られていたことから、インターネット上に「タクシンは逃亡犯だ。なぜ逮捕しない。」といった反タクシン派市民からの批判のコメントが殺到した。民主党はオンブズマンにカムロンウィット司令官の資格調査を要請する方針。
問題の写真には、「愛する後輩へ。おめでとう。」などと書かれており、タクシンの自筆とみられている。室内にはカムロンウィット司令官が書いた「今日があるのは先輩のおかげ。」という標語もあった。カムロンウィット司令官は今年07月に現職に就任。
反タクシン派の批判を受け、07日朝、首都警察本部に警官数百人が集まり、カムロンウィット司令官への支持を表明。
タクシンは2006年の軍事クーデターで政権を追われ、事実上亡命。2007年末に行われた民政移管のための総選挙でタクシン派が勝利したため、2008年02月に帰国したが、同年08月に出国し、不在中の10月、首相在任中に当時の妻ポチャマンが国有地を競売で購入したことで懲役2年の実刑判決を受けた。その後はタイに帰国せず、主にドバイに滞在。 |
09月11日(火) | クルングテープの飲み屋街を店主らの同意を得ずに取り壊したとして、ソープランドチェーン元オーナーのチューウィット下院議員ら131人が器物損壊、監禁などの罪に問われた裁判で、2審の控訴裁判所は、チューウィットらを無罪とした1審判決を破棄し、チューウィットに懲役5年、その他の被告66人に懲役10ケ月から5年の実刑判決を言い渡した。64人は無罪。チューウィットは最高裁判所に上告する方針。
飲み屋街はスクムビット通ソイ10にあり、2003年01月26日未明、100人以上の男と重機により1晩で取り壊された。地権者のチューウィットはこの土地にホテルの建設を計画していたが、店舗数十店が立ち退きを拒んでいた。事件後、チューウィットは政界に転身し、飲み屋街の跡地には「チューウィット公園」が作られた。 |
09月12日(水) | 中央行政裁判所は、「国防事務次官を解任されたのは不当。」とするサティアン大将の訴えを、サティアン大将が「不当さ」を立証するために提出した書類や署名が偽物との理由で却下。
事務次官の後任選びでスカムポン国防相と対立していたるサティアン大将は、先にスカムポン国防相によって、「人事に関する情報を口外した。」として、事務次官から閑職に左遷となった。
一方、るサティアン大将とともに、国防副事務次官から左遷となったチャトリー大将については、中央行政裁判所は、「国防相の直属の部下でなく、(左遷理由の)服務規程違反の内容も不明確。」として、チャトリー大将の異動を差し止めとし、これを国防省に伝えた。 |
09月13日(木) | 政府汚職対策室(PACC)のドゥサディ事務局長が10月01日付けで法務副事務次官に就任することが決まったが、与党政治家絡みの不正疑惑を次々に取り上げてきたことから事務局長ポストから外されることになったとの見方が強い。
後任には、現政権寄りのプラウェート特別捜査局(DSI)副局長が有力候補に挙がっているが、プラウェート副局長はこのほど、「論争を引き起こしたくない。」として、「PACC事務局長ポストには固執しない。」と明言。
プラチャー法相によれば、「事務局長の後任は法務省の選考委員会によって選ばれることになるが、同委員会はまだ設置されていない。」 |
09月14日(金) | チャルーム副首相は、「シンガポールで09月下旬にF1レースが開催されることから、タクシンが09月23日にシンガポールを訪れる予定だ。」と明らかに。また、チャルーム副首相は、「タクシンは帰国を希望しているが、いつになるかわからない。」と述べた。
タクシンは、汚職で禁固2年の有罪が確定した犯罪人であることから、最大野党の民主党などは、インラック政権に対し、「タクシンを帰国させ刑に服させよ。」と求めている。だが、タクシン派のインラック政権は、有罪判決を表立って批判するのは避けているものの、「タクシンを捕らえて監獄に入れるつもりなど毛頭ない。」というのが大方の見方。 |
09月15日(土) | タクシン支持派の市民団体、反独裁民主主義同盟(UDD、通称スア・デェーン=赤服)は、タクシン政権を崩壊させた2006年09月19日のクーデターから6周年を迎えるのを記念して、クルングテープの民主記念塔で集会。3000人の支持者が集まり、幹部のウェーン(下院議員)らが設置されたステージ上で演説。警察は1000人体制で警戒したが、周辺の一部道路が封鎖され渋滞が起きたほかは、大きな混乱はなかった。 |
09月17日(月) | 刑事裁判所は、「反独裁民主主義同盟(UDD)が大規模反政府デモを展開していた2010年05月14日にタクシー運転手の男性が死亡したのは治安部隊による発砲が原因。」との判断を示した。
これを受け、法務省特別捜査局(DSI)のタリット局長は、「治安部隊にデモ対策を指示した当時のアピシット首相(民主党党首)とステープ副首相(民主党議員)が殺人容疑で訴追される可能性がある。」との見方を示した。 |
タクシン支持団体、反独裁民主主義同盟(UDD)による2010年の大規模反政府デモの検証のため設置された独立機関、真実和解委員会(TRC)は、2年に及ぶ調査の結果をまとめた報告書を明らかに。
TRCは報告書の中で、「デモの際に92人が死亡したのはUDD(赤服軍団)と軍(治安部隊)の双方に責任がある。」とし、「デモの最中に狙撃され死亡したタクシン派の軍人、カティヤ少将と、デモ隊と行動を共にしていた黒服の武装グループとの間に繋がりがあった。」と指摘。
TRC調査小委員会のソムチャイ委員長は、「TRCにより大きな権限が与えられていたら、さらに多く事実が明らかになっただろうが、報告書は最も信頼性、信憑性の高い記録して扱われるべきもの。」と述べている。 |
刑事裁判所は、「反独裁民主主義同盟(UDD)が大規模反政府デモを展開していた2010年05月14日にタクシー運転手の男性が死亡したのは治安部隊による発砲が原因。」との判断を示した。
これを受け、法務省特別捜査局(DSI)のタリット局長は、「治安部隊にデモ対策を指示した当時のアピシット首相(民主党党首)とステープ副首相(同党議員)が殺人容疑で訴追される可能性がある。」との見方を示した。 |